タイトル:孤高の老人−コイの幻想マスター:雨龍一

シナリオ形態: イベント
難易度: 易しい
参加人数: 9 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/07/15 21:23

●オープニング本文


 真夏の太陽、魅惑的な青い海。
 そして弾け飛ぶ、パラダイス!!
 あぁ、なんと素晴らしき青春の色。
 この色に染められ、あの子も私の色に染め上げ、そして・・・・そんな妄想に駆られる若者が昨今多くなっとると聞いておる。
 確かに。
 夏は薄着になりおってなんとも視線の行き先が困ると思う時期だのう。
 だが・・・・だがだぞ?
 そんな不埒な思いを昇華させようという強者はこの頃いないのか!!
 しかたないのぉ。
 わしがおぬしらの希望の星になってやろうではないか。
 ふふふ・・・・
 任せておれ。
 ここにとっておきの開発薬があるのじゃ。
 まぁ、まだ試作段階だし、人間には投与したことはないがな・・‥
 お、そういえば・・‥
 あそこに頼んだらどうだろうか。
 あそこにもまだまだ青い血の気の溢れた若者どもが頓挫する場だ。早々に鬱憤もたまっておろう。
 ふむ、ひとまずは試薬を試すことに役に立ってもらおうかのう。


*******************************************

 痘痕もえくぼとはよく言ったもの。
 どんな人でも恋をすれば幻想という魔法に掛けられちゃうのです。
 そして・・・・
 夏は出会いの季節。
 そんな謳い文句を手にマッドサイエンティスト・ミハイル氏が今回もよからぬ事を企んでいる模様です。
 その名もコイの幻想薬。
 夏のあなたにひとつの夢を。
 今宵集ったメンバーたちで幻想世界に落ちちゃってください。
 えっと、保険手続きしても、保険は降りませんよ?
 あくまでも研究材料の試作品を試すのですから、リスクは付き物です。

●参加者一覧

/ 花=シルエイト(ga0053) / ナレイン・フェルド(ga0506) / 篠原 悠(ga1826) / 鳥飼夕貴(ga4123) / エレナ・クルック(ga4247) / UNKNOWN(ga4276) / シャレム・グラン(ga6298) / ツァディ・クラモト(ga6649) / レティ・クリムゾン(ga8679

●リプレイ本文

「ミハイル先生、この度の実験体ツアーの参加者リストですわ」
 そうやってミハイルに資料の束を差し出したのはシャレム・グラン(ga6298)だった。
「ほう、シャレム。おぬしも参加しおるのか。ふむ」
「何を言ってるんですか、先生。私は秘書兼助手ですのよ? 参加というよりはむしろ手伝いですわ」
 そういって口元に手を当てつつ、手元の書類から覗かせる眼は笑っていた。
「まぁ、よい。で、今回は喰らいつく者はいたのかのぉ」
「ええ、人数は多くはありませんが‥‥みな、それなりに名の知られた強者ですわ」
「ふぅむ、どれどれ‥‥」
 シャレムから資料を受け取るとミハイルは微笑をもらした。
「これはこれは‥‥面白い結果が出るといいのぉ」
「ええ、サンプルの採取には最適かと思います」


***************

 実験体ツアー当日。会場はミハイルの研究室ではなく、本部近くにある施設の一室にて行なわれることになっていた。
 部屋の中はアットホームな感じで会場作りがなされていて、ちょっとした茶飲み会のような感じとなっていた。センターには敷物を引き、座布団やらクッションが用意されていた。部屋が少し間切りされているものの、それほど狭くはない。
 座位用のテーブルが用意されており、その上には色々な飲み物、食べ物が用意されていた。

「モルモットになりに来た鳥飼だ、邪魔をする」
「こんにちは〜♪ ナレインで〜す。お久しぶり♪」
 最初に現れたのは黒髪の美女(?)鳥飼夕貴(ga4123)と、銀髪の美女(??)ナレイン・フェルド(ga0506)だった。
「邪魔をするよ‥‥銀の君も、黒の君も久しぶりだね」
 続いてUNKNOWN(ga4276)が、その後ろからニコニコと手を振って駆け寄ってくるのは篠原 悠(ga1826)のようだ。遅れずにレティ・クリムゾン(ga8679)が入ってくる。
「にゃー!! 姉さま〜」
「お邪魔します」
「皆さん、こちらへとどうぞ‥‥UNKNOWNさん、コートはお預かりしますわ」
「すまないね、宜しく頼むよ」
 すでに主催者側へと転身を遂げたシャレムが部屋内へと案内した。
 席に着くか着かないかの時分で他の者達も部屋へと入ってきた。全部で8人‥‥いや、総勢9名の実験体が現れたことにミハイルは心を躍らせていた。

「ごほん‥‥いやいや、この度はわしの実験に付き合ってくれるとのこと。誠に感謝しておる。早速‥‥と言いたいところではあるが、比較データであるおぬしらの普段が判らぬと話にならないのでのう。茶の席を用意しておる。存分に寛いでくれたまえ」
「既に飲み物や軽食に関しましては席の方にご用意してあります。足りなくなりましたならおしゃってください」
 ミハイルの横に控えたシャレムが説明を始める。
「えっと‥‥持込OKだよね?」
 ナレインの手元にある柿ピーチョコに目をやりつつ、月森 花(ga0053)が質問をする。
「はい、問題ございませんわ。‥‥それでは先生もご参加しましょう」
「な、わしもか!? ま、まあ良い。若いもんの話を聴くのも良いかもしれんしの」
 少し頬を掻きつつ、シャレムに従いミハイルも輪に加わることとなった。


 敷物の上で自然と輪になって座っていた。
 真中には用意されていた軽食やお菓子などが並び、各自持ってきた飲み物等も混ざっている。ミハイルは進められるがままUNKNOWNが持ってきた酒に舌を鳴らしていた。
「きょうの実験の内容をまだ聞いてないのですけどみなさんご存知ですか?」
 最初はうつむくようにしていたエレナ・クルック(ga4247)も寛いできたのだろう、少し頬を染めつつ質問してきた。
「媚薬って話だったような‥‥」
「そうそう! なんか危険な香り? 思わず参加書にサインしちゃった♪」
 思い出したようにつぶやいたツァディ・クラモト(ga6649)にナレインが背後から乗り出しながら絡む。
「それよりも♪ ねぇ、あなたは何で参加したの?」
 頭に圧し掛かるようにしながら、下敷きになってるツァディにそのまま聞く。
「自分? 暇だったから‥‥かな」
 少し考えるように答えたツァディに対し、
「ボクは何だか面白そうだったから! 普段とは違うボクが見られるかもだし!」
 元気いっぱいに月森は宣言をする。
「みなさんほんとに美人さんですよね〜憧れちゃいます〜」
 その様子を見ていたエレナはじーっとナレインや月森たちを潤んだ瞳で見つめていた。
「エレナ‥‥君も充分魅力的だよ」
「あ、あんのんお兄様〜」
 すっと脇から軽食と用意されいてたチーズセットを差し出しながら、UNKNOWNは場所を移ってきた。
「皆魅力的だよ。シェリ、君も‥‥」
 エレナの反対側に座っていたレティに視線を向け、微笑む。
「わ、私は別に‥‥」
「あかんあかん。たのしまな!」
 その反対でジュースを飲んでいた篠原がレティに腕を絡ませつつ自分の元へと引き寄せる。それによってよろめきながらレティは慌てて返した。
「そ、そうだったな‥‥」
「はっはっは。どうせもう後には引けないんだし、楽しもう」
 すっかり出来上がり宜しくといった感じで持参の日本酒を飲みつつ鳥飼は場を再び談笑の輪に戻した。
 その様子をシャレムともどもミハイルはにこやかに見守っていた。




「さて‥‥皆で飲むか」
 その場はすでに寛いだ雰囲気によって笑いやら今までの戦歴についてなどに花を咲かせていた。 UNKNOWNの一言が合図となり、集まりの本来の目的が動き出す。
 すかさず運ばれてくる三本の瓶。それぞれが盆に載り、各自の前へと置かれる。
 瓶に入っている液体の色は赤・黄・緑と色鮮やかである。
「‥‥ふーん」
 ツァディは盆の上から緑色の瓶を取り上げると蓋を取って匂いをかいで見る。
 それは爽やかなハーブの香りがし、気分を少し清々しくしてくれる。
「このジュース、きれいな色していますね〜? もらっちゃってもいいですか?」
 エレナは説明を受ける前に手を伸ばし、おもむろに口へと運んでいた。その色は黄。
 見る見るうちに飲み、そしてにこやかな笑顔で告げる。
「このジュース美味しいですよ〜」
 なにやらご満悦になったようで、つつつとUNKNOWNの横へと小瓶を片手に寄っていく。
「飲んでみませんか〜?」
 少し上目遣いで、それでも恥ずかしさは残っているようで伏せ目がち‥‥そんなエレナの様子にUNKNOWNは苦笑しつつ、にこやかに応対する。
「ありがとう、だがエレナの分を飲んでしまうのには忍びない。私の方にも同じ薬があるから、私はそちらを飲む事にしよう」
 その様子にさらにエレナは頬を染めて小さく返事を返した。

「あは☆ 綺麗な色〜」
 瓶と一緒に用意されていたコップに赤と黄の薬を入れていた月森は、そこから生まれた新たなオレンジ色に目を輝かせていた。
 その近くでは右側から順に飲み干していく鳥飼の姿がある。
 その飲みっぷりも見事であるが、同時に視界の端には常時ミハイル氏を捕らえ放さない。隙でも見せようものなら、この手にしている薬を彼に飲ませようという魂胆がヒシヒシと伝わってくる。
 しばし匂いを嗅いでいたツァディも一気に飲み干した。
「あ、意外とウマい」
 なんとも的確、かつ端的な感想である。
「あんのんさん、ちゃんと飲んではる?」
「あぁ、篠原。私は混ぜて飲もうと思ってね。どうだい? 緑と赤を混ぜると‥‥深紅に近い色になっただろう?」
「ふーん。まぁええわ。あたしは黄色をのもっと。あ、レティは赤やろ?」
「ああ、その予定だ」
「シェリ‥‥大丈夫だよ」
 レティの顔が瞬時に赤く染まる。
「べ、別に緊張など‥‥いや、してたかも知れないな。どのような効果が出るだろう」
「飲んでみればわかるで、きっと」
「そ、そうだな‥‥」
 篠原は黄を、レティは赤、そしてUNKNOWNは血のように深紅の色へと変わった薬を飲んでいく。UNKNOWNの飲む姿は、まるで極上のワインを堪能する者のようで、観ていて一枚の絵のような、それでいて捕らわれるような雰囲気が流れていた。
 その姿に思わず鳥飼の喉が鳴る。
(や、やばいって‥‥それだから女の子たちが惚れちゃうんだよ‥‥)
 そっと横目で見ると案の定エレナの目がとろーんと蕩けた様に変化していた。

「飲むって決めたんだから、ここは男らしく決めるわ♪」
 ナレインがオレンジへと変えた薬を一気に口元へと持っていく。
 暫く回りの様子を見ていたのだが、味も見た目も悪いところはなさそうだ。そして、まだ一様に変化は感じられない。
(媚薬って聴いたんだから、せめて魅惑のオーラでも出ますように!!)
 なにやら強く念じるように目を瞑り一気に飲み干す。
 ごくん‥‥
 飲み干し終わってうっすらと目を開くも、どうも様子がおかしい。
「ナ、ナレインちゃん?」
 その様子を心配した鳥飼は側によってきて覗き込む。
 うっすらと開いた目は、少し潤みがあり、覗いていた鳥飼はなにやら胸がやけに早まるのを感じた。
「何だか‥‥体が変な感じ、頭がぼぉ〜っと‥‥」
 そういうとナレインは放心した様子で、フラフラと歩き出した。
 そこに同じように目が潤んだツァディが立ち尽くしており、ぶつかる。
「「あ‥‥」」
 反動で転びそうになったナレインを受け止めるツァディ、そしてそれは強く抱きしめるようにと変わり‥‥
「いい匂いがする‥‥」
 ナレインの首元へと顔を鎮め、なお強く抱きしめる。
「あっ」
 思わずナレインの目が見開かれる。
「柔らかい‥‥」
 ツァディの腕は解かれる事なく、なおも強まるばかりであった。

「熱くなってきたな‥‥」
 UNKNOWNは首元を緩め、シャツのボタンを半ばまで外した。
 開かれた胸元からは逞しい素肌が現れる。
「おかあさーん‥‥」
 少し舌っ足らずになった月森がUNKNOWNに寄りかかるようにしがみついてきた。その様子を見たレティも反対側の手にしがみつく。
「UNKNOWN‥‥」
 甘えるよう、少し伏せ気味に視線を投げかけてくる。
 それに合わせる様に篠原がレティに寄り添う。
「可愛いな、シェリ。篠原も花もエレナも‥‥」
 着かず離れずのように見つめるエレナを手で招き寄せつつ、しがみつく両者を見ながら柔らかな笑みを浮かべていた。
 そして、微かに震える手で優しく優しく二人の髪を梳いてやる。
「いいかい‥‥、キスには意味があるんだ‥‥」
 ゆっくり言い聞かせるように、囁くように‥‥
「手に尊敬のキス」
 そういって花の手に一つキスを落とす。
「額に友情のキス」
 レティには額に軽く口付‥‥
「頬に満足感のキス」
 側によって目の前に座ったエレナを引き寄せ、頬にまた一つ、
「唇に愛情のキス」
 目配せをしつつ、ウィンクでごまかし、
「瞼に憧憬のキス」
 篠原の目の上に優しく落とし、
「掌に懇願のキス」
 再び花の手を取り、
「腕と首に欲望のキス」
 首元に近づくも少しとどまり、レティの腕へと軽く落とす。
「さてその他はみな狂気の沙汰」
 そう言ったUNKNOWNはにこやかに微笑んで‥‥



*******************************

「先生、本日は大変有意義なデータが取れましたね」
「ふむ、真じゃ」
 実験が始まって4時間後、なにやら狐に抓まれたように意識を取り戻した一同に解散を告げていた。会場に残っているのは数人の片付けに呼んだもの達と、今回進んで助手を務めたシャレムとミハイル氏だった。
 今回中々薬の効かなかった鳥飼と、最初から記録係に専念していたシャレムを除き他の者たちは本当に様々な姿をミハイル氏に見せてくれた。
 欲望に忠実になったり、新たな人格を発症させたり、はたまた普段の空気をさらに濃厚にし撒き散らすものもあったほどだ。
「本当。中々個性的な方々でしたわね」
「確かにのぉ。最後にも落ちを忘れてくれないものだったしのぉ」

 そう、それは解散間際の事である。
 すっかり薬の効果が抜けた一同が帰ろうとしたときそれは起こった。
 月森が何を考えたのか再び薬を飲み干したのである。

 しかも今回はUNKNOWNが飲み干したと同じ‥‥赤と緑色の薬を混ぜたのである。 言うまでもなく、月森が炸裂。
 正気を取り戻した後に見る変貌振りに、一同は慌てて取り押さえたり水を飲ませたりして薬の効果を早く薄めようと試みた。
 数々の行動の結果月森も無事に意識を取り戻し、自らの行動に頬を染めていたほどである。


「それにしても‥‥おぬしは参加せんでよかったのか?」
「そうおっしゃる先生こそ‥‥」
「そうじゃな‥‥どうせなら全部飲んでみろ、見てやる」
「はい‥‥」
 もとは参加者として応募したのだ、最初から飲みたくないなどは言わない。
 ただ裏方に回って傍観者としてのほうが面白いと思っただけである。
 ミハイルの手によって混ぜられる鮮やかな薬たち‥‥
 そして‥‥三種混ざったものはというと‥‥
「マスター‥‥流石にこれは‥‥」
 
「ふぉっふぉっふぉ」


 その目の前に現れたのは、異臭を放つ黒々とした液体であった。