タイトル:あーかむ冒険つあーマスター:Urodora

シナリオ形態: イベント
難易度: やや難
参加人数: 13 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/04/01 03:14

●オープニング本文


 やれやれだ。
 そう、やれやれだ。
  

 伝わる大気の感触が違う。
 街を行く人々の顔はどこか明るい。閉塞したこの状況下でも季節の移ろいは確かにある。
 この街に越してきてから、どれくらいの月日が経つのか、男は思い出そうとした。
 黒鏡の向こう、射す温もりに眠気を感じる。きっと世界がどれほど変わろうとも、この感覚は変わらないのだろう。
 何気なく、男は懐を探る。指先に当たった箱、まさぐる先には擦れた紙の感触、取り出した棒状の筒は薄い金属紙に包まれている。
 気の進まぬままに剥がしてくわえ、空いた手でいつもの動作を続けてみるが──炎はない。
「チョコも飽きたな」
 口腔に広がる苦みと甘さが、余計渇きを覚えさせた。
「ジュードおじさん」
 かけられた声に振り返ると、少女がいた。
 最初、目に入ったのは緑。
 くすんだ金髪にとび色の瞳、雑に切りそろえられたボブカット、その下にそばかすと幼さを残す笑顔がある。
 揃えた服装の色彩は、明らかに春を意識し若草の匂いがする。彼女にスカートは似合わない、デニムのジーンズ、伸びた脚先には、古びた白いスニーカーが陽を浴びていた。
「ケイトか、おじさんと呼ぶのはやめろと、あれほど」
「歳は関係ないよ、どっちにしろおじさんに変わりないし」
 ケイトはジュードの姪だ。
「聞き分けの無い若さは罪だな」
「聞く耳を持たない老いは罰だよ」
 そう、互いに言い返すと微笑んだ。
 街に張り巡らされた見えない免罪符は、平和という状態を擬似的に固定化させている。この地にバグアの脅威は強く感じられない。なぜならば、バグアと取引した者が支配する街だから。 
「シティに、用がある。行って来るよ」
 ジュードは、そっけなく言った。だが、その言葉の意味が何をするか、ケイトは察し、
「大丈夫! 独りだよね?」
 声がうわずる。
「問題ない。ただの調査だ」
 彼方で、かすかに鳴る鐘の音が聞こえた気がする。
 ジュードはその源、中央区画へと視線を向ける。彼の瞳に映るのは、立ち並ぶ低き徒を睥睨するかのごとく立つ、一本の巨大なビル。
「ルルイエ。実に狂った名だ。ま、人の事を言えないか」
 高き咎をしばらく見つめた後、銀色の包み紙を乱暴に箱へとねじ込み。
 傲慢の証を目指し、ジュードは歩き始めた。   
 
 

 【アーカムシティガイド】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「シティ中央部」

●ルルイエ・タワー

 アーカムの支配者バロンの所在地。
 タワーの内部に入れますが、現在、展望台にしかいけません。
 展望台にあるレストランは、どこかのカフェから直輸入したレシピで作るバグアパフェと、お子様KVランチが名物のようです。
 パフェは不定期交換、今のバグアパフェは、ヘルメットワームパフェです。
 

●ユグドラシル研究所

 博士と怪しい事情。
 博士のお供はボンテージな拘束鎧を着た、変なお姉さんという噂です。
 タワーの中にあります。


「周辺部」 


●マッティパッド・ストリート

 アーカムで一番の繁華街です。
 一人だと絡まれるよ、お友達と行こう。
 お土産は、アーカムクラッカーと怪しい黒表紙の本ですが、ただいま絶賛売り切れ中!

●タイムリープ

 ラピッドQという、若いのが運営している情報屋です。
 つんつん髪と懐中時計がトレードマーク、反抗的な若者像を嫌な感じに具現化しつつ、
 ニット帽の真ん中に可愛い兎が笑ってる。


●三日月兎

 BARです。街の噂はたいていここに集まります。マスターは妖艶な感じの女主人。 
 一度お相手願いたい。いい女。
 プールバーです。


「外れ」


●ダニッチ館

 古びた洋館。少し前にちょっと猟奇的な事件が起こりました。こびりついた血糊など見れます。
 見てどうなるかというと、普通は気分が悪くなる。人によっては?


●ミスカトニック探偵事務所

 泣く子も黙らぬジュードこと、J探偵の事務所。
 入口に飾ってあるイアイア君人形は、コレクターアイテム。
 キモカワ好きは激兆的に必見。キミの心をげっとはーと、ユゴスの彼方にヘッドロック。
 これを見に来るだけの来訪者もいます。たいていディレッタントですけれど。
 イアイア君は、おなかを押すとふたぐん♪ と鳴きます。

 アーカムに関して、様々な調査を個人的に依頼できる事もあるようですが、今回は関係ありません。


●無貌工房

 イアイア君シリーズというぬいぐるみ人形を製作した職人のお店。
 店主は意外にも理知的な青年らしい。ただし顔全体を覆う黒い仮面を被っているので怖い。
 彼はフルートとヴィオルがお気に入りのようで、よく公園で演奏している姿が目撃されます。
 店はたいてい閉まっているので、行くたび、なぜか物悲しい気持ちになります。



●その他
   
 アーカムは主に中央と周辺の二つの区画にわかれます。
 コアの部分・中央区域はシティと呼ばれます。シティは基本的にヤヴァイ奴らがいます。
 タワーのセンター区、研究所は警備が異様に厳重なため、見学には特殊な身分証明書が必要です。
 ミスカトニック探偵事務の所ある周辺部の外れは、比較的治安の良い平和な場所です。

 巻末


『あーかむ☆ツーシン一号』

 無貌工房にてイアイア君のレプリカ製作未定? たぶん、限定品。
 みんな楽しくイアイアすると、色々電波がやってきてトリップ‥‥‥できるらしい。
 いらない? 普通はそうだよな、俺もまだ違う世界にはいきたくないぜ。
 おっと、それではよいアーカムの旅を。


                          文責 アーカム通信社 

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

●参加者一覧

/ 水上・未早(ga0049) / ジーラ(ga0077) / ドクター・ウェスト(ga0241) / 綾峰・透華(ga0469) / キーラン・ジェラルディ(ga0477) / 鯨井昼寝(ga0488) / 鯨井起太(ga0984) / 愛紗・ブランネル(ga1001) / 流 星之丞(ga1928) / 冥姫=虚鐘=黒呂亜守(ga4859) / 勇姫 凛(ga5063) / 佐伯 (ga5657) / 阿木 慧斗(ga7542

●リプレイ本文

●承前


『ああ、何かが私の足を‥‥‥隙間から見えた開口部には‥おお神よ私を救う‥‥‥』
 持て余していた暇を潰すため、途中買った怪奇小説を読んでいた男は、ありきたりの展開に欠伸を一つすると本を閉じて鞄に仕舞った。
 照らし出された陽は春の温もりを感じる。
 射す明かり、サングラスをかけ直した男は、アーカムへの第一歩を踏み出す。
 全ては、その男流星之丞の元に突然送付されてきた包みに始まる。

 差出人は、
「父」
 と、のみ書いてある。
 包み開いてみるとそこには、
「Arkhamで待つ」
 そう記された書置きと地図、そして明瞭不可解な文字が羅列された手記が同封されていた。
「死んだはずの父が、どうして?」
 流星之丞は、地図に記されていた街、アーカムシティへと向かうことに決めた。
 なぜか、計ったようにちょうどよくツアーも行われるらしい。
 これはきっと神の意思だろう。
 こうして、ある意味お約束的展開でツアーが開始された。



●旅客名簿

水上・未早(ga0049
ジーラ(ga0077
ドクター・ウェスト(ga0241
綾峰・透華(ga0469
キーラン・ジェラルディ(ga0477
鯨井昼寝(ga0488
鯨井起太(ga0984
愛紗・ブランネル(ga1001
流 星之丞(ga1928
冥姫=虚鐘=黒呂亜守(ga4859
勇姫 凛(ga5063
佐伯 (ga5657
阿木 慧斗(ga7542



 言い忘れていましたが、宿泊、お食事、アーカムパスポートセットで、参加料金は一万クレジット。チーン。破格、破格。


●はじめに紹介

 こんにちは、ニャルタンです!

 知らない君のために、ニャルタンがクトゥルフの基本を最初に教えるね。
 クトゥルフは変な邪神さんが、地球をえいえいおーするお話だよ。
 たまに邪神さんを信仰してたり、コンタクトをとろうとするマッドさんが地上にいてイアイアすると神さまが覚ますの。
 でも神様は、起こされるとなぜかたいてい不機嫌で、そんなことしったこっちゃないぜ、俺が神? 神というより地球外生命体なんだよ、うるさい木っ端ども好きにさせろ!
 って感じで、大暴れ。
 たいてい出てくる人が、消えちゃうか、喰われちゃうか、正気を失って精神病院に収監された後、失踪する。
 もう、ドキドキの冒険活劇なんだ!
 え、どこが冒険活劇? 
 狂気なあたりが、スーパーアドベンチャー!

 それじゃ、次にクトゥルフ文の基本を教えるね。
 
 私は慄然たる思いでこの街に足を踏み入れた。そこに戦慄の音色と共に突然異形、白い顔した住民が現れ、凝視する先に立っていたのは、ぬらぬらとした油塗れの球体と立方体を数個重ね合わせたとしか思えない体躯をしている住人、頭部には二つの円形の物体があり、物体の奥から狂気じみた瞳を宿し、それはこちらをじっと見つめていた。
 その瞬間何かが背を這いずり回るような冒涜的な感覚、名状しがたきもの、そうだ、まるで数世紀経った今でも内部に淀む血を、深淵より叫ぶ鼓動をおぞましい、ああ、おぞましい。時空より来る超越した漆黒、奇怪な袋状のものを提げた女だ。そう女だ。あの女だ。駄目だ。もう駄目だ。誰か、お願いだ。混沌が、神よ‥‥‥。

 ──その後、彼の姿を見たものは誰もいない。
 

 通りで買い物袋を提げている眼鏡のおばさんに会ったのを、クトゥルフチックに書いてみました。
 でも、この文体はいじょーに疲れるから使わないよ。
 普通の感覚だと? だけど、はまると面白いから一度読んでみてね。
 たいてい物凄く読みにくてわけわかんないけど、頑張って! 
 ニャルたんは入門に「インスマウスの影」をおすすめしちゃうぞ。

 じゃ、ここからは普通になるよ♪

 アーカムの旅をどうぞー!


●なぜかバス

 ツアーというと、バス。
 他にもあるだろう? いや、バスがいいんだ。バスに乗りたい。
 適度に揺れる車内。お供の二人の挨拶より始まる。
「本日はアーカム冒険ツアーによく来た、物好きさんたちめ」
 Jが投げやりに言った。やりたくないらしい。
「ケイトです。みんな、こんにちは! ツアー楽しもうね」
 ケイトはやる気だ。こういう明るさにはいろいろ救われる。
「ケイトちゃん、これ必要なんとちゃう?」
「ありがとう! 佐伯さん」
 早速一部ファン? からメガホンが贈呈された。 
「そういえば、事務的な質問なのだが、のっそりお兄さんの口調はどちらを採用するのが妥当なのだい」
 その質問に首をかしげた佐伯にJは言った。
「きっとこの分だと、語調の統一性の無さに何回かつきあたる気がするからね、好み、使いやすいほうを指定だけしていたほうがいい。特殊な口調の場合、語尾を指定しておいたほうが無難なものさ」
 これはニャルタンのヒント、書くほうの気持ちになってみると、きっといい事あるよ!
「それでは、今日の‥‥‥」 
 ケイトが観光について説明している、後方あたりの座席。
 固まっている集団は女の子が多い、こういう旅行はトランプかU○Oが必須! 今回はトランプのようだ。
「ちょっとジーラちゃん! それ反則でしょう」
 カードを引いた透華がジーラに向かって声を上げた。
「ボクは、戦略的に重要な作戦をとっただけだよ」
「難しい言葉で誤魔化しても駄目です」
 未早がたしなめるが、ジーラはだんまりを決め込む。頬ふくらませるあたりが可愛い。
「つぎは愛紗のばんです、はっちーどれにしよう」
 はっちーというのは、愛紗が抱いている怪盗パンダ紳士だ。当然聞いてもぬいぐるみなので答えないはずなのだが、
「愛紗ちゃん、はっちーしゃべったよ」
「え、どれ、お兄ちゃん」
 答えたのはケイトで慧斗のアイドル慧斗、彼は自分のカードを差し出し、
「これがいいパン、愛紗ちん」
 はっちーのしゃべり方は分からないので創造だ、もちろん慧斗である。 
「えい」
 愛紗が引いた。しかし、はっちーの魔力か!
「あがりー」
 あがった。
「なんで!?」
 慧斗は愕然とした。
(「はっちーほしい」)
 次のプレイヤーである凛は勝負よりも、はっちーに興味があるようだ。
 さて、そのうちに順の最後はキーランという男。座席が近くだったので、断り切れなかったらしい。
 今彼は、敗北という現実に追いつめられていた。
(「この勝負、負けるわけにはいきません」)
 負けたものは、車内カラオケでイアイア音頭という歌を力強く斉唱するという罰ゲームが待っている。
 キーランのイメージからして、それだけは避けなければいけない。
 だが、
「凛、これでおわりー!」
 凛がカードを差し出した。
 それは彼女の最後のカードである。そして何かをやり切ったような満足げな笑顔。
 キーランは異様なプレッシャーに襲われた。これは罠だ、しかし分かっていても回避できない。
 震える指で触るカード、引いたものは?
「J・O・K・E・R。ジョーカー!」
 ──ゲームセット。

「みんなー! キーランさんが、歌をうたってくれるそうです」
 添乗員のケイトがアップテンポではあるが、どこか妙にズレタ感じのする変な太鼓の音が響く曲をかける。
 カラオケの画面では、カワイイ邪ごっどたちがくねくねと踊っていて、ずっと眺めているとトリップしそうだ。

『アーカムミュージックボックス最神曲』

 ジャンル  「ダーク夏祭り」
 曲名    「イアイア音頭」 
 作詞作曲  「ORESAMA」
 歌唱難易度 「羞恥心を捨てる必要あり」

 イントロ

 ダダダダダダダ、ダッドンドン、フフフフフフフ、フタグングン!
 イエイエアイアイ、イアドンドン!

「キーラン・ジェラルディ、歌います。イアイア音頭」
 勝利者からの熱狂的な拍手と、その他のまばらな拍手の中、いつもより目つきを鋭くしてキーランは歌ったという。
 ──さらば遠き日。

 というかんじで、バスで移動する一行。
 名所案内ということで、まずルルイエにしよう。
「みなさーん、こっちにきてくださーい! 整理券を配ります」
 ケイトがメガホンで叫んでいる。
 たいていの人が車内から出たのだが、寝てる起太。起こす、昼寝。
「おきなさいよ、起太」
 いいのか? 何しに来た、いや起太が起きた。
「これが流流家! 結局塔であることは問題ではないよね。塔というから塔、だから世界は塔の群れ、さあ、みんなエレベーターで上下してみようよ」
「意味不明すぎるわ、起太。いくわよ」
 この二人はきっといわゆるメフィストあたりの出身な気がひしひしとする。
 それはいい。
 バスから下りるなり、狂気に襲われた男が一人。
「許せないね〜! こんな街、即刻破壊してしまおう〜!」
 ドクター・ウェストが発狂した。もとよりマッドだし放置しておいても、問題ない気もするが、
「けひゃひゃひゃ〜核で街ごと消してしまおう!」
 ピーポー、ピーポー。
 ドクターは能力者であることをバラす違反行為、というより意味不明なこと口走った。
 よって、アーカム防衛隊、ナイトゴーントが出現。
「アーカムに対する、敵対行為と見なす」
「我が輩は、ドクター・ウェストだぞ、ハーバート四代」
「拘束」
「けひゃひゃひゃ〜、鳥だ、鳥がいる、ここは混沌」
 連行されていくドクターを横目で見た冥姫は、
「喜劇とはいえ、哀れな偶像の一つしかすぎんな」
 そう言った。
 ということで、ドクター・ウェストは今後、当分出てきません。

 ──ルルイエの共通見学を終えたあと。

「探偵、一つ聞きたいことがある」
 冥姫はJに声をかけた。
「なんだい、綺麗なお嬢さん」
「本だ」
「本か?」
「定義する存在としては、古を欲する」
「古本屋なら、マッティパッドにあるよ。図書館はシティだ、博物館と併設されている」
 そこまで言葉を紡いだあと、Jは冥姫の瞳を見つめ、
「君の瞳には、透明な獣が宿っているね」
 言った。
「詮無き事を」
「認識の外に住みたがる者ほど、自らを枠から外しているつもりになっているもの。だが結局、それさえも観察しているものがいてこそ、顕在する? 違うかな」
「矛盾は条理、現実は不条理だ」
「やれやれ、今日はツアー。楽しんでくれ」
 意味深な言葉を残し、Jは去っていった。


●フリータイム


 ここからは、個人別の行動、ほぼ場所別行動かも。


 【アリスのおうち】


 アリスは、ダニッチ事件という事件の生存者の一人である。
 その元に未早とジーラが訪れる。未早はアリスに対して多少のトラウマに近いものを感じたが、すぐに消えた。
 ジーラはお土産のアーカムチョコを差し出したが、よく考えるとアーカム住人にアーカムのお土産を渡しても、何かちょっともの悲しい。
「そんなにたいしたものじゃないけどね」
「ありがとう! お姉ちゃん」
 だが、アリスはとても嬉しそう、はしゃぎ受け取った。
 その後三人は、未早の提案でルルイエタワーのレストランへ向かうことにした。
 アリスの家族はどうやら、健在らしいが自宅にはいなかった。
 許可をとるためにアリスに彼女達が話をしたところ、アリスが連絡を取り外出することが許可された。

 

 【ルルイエタワー展望レストラン】
 

 ジーラと共にアリスをレストランに連れて行く途中、未早はルルイエの様子を探った。
 ルルイエは入り口に検問所のようなものがあり、そこで武器に類するものは一時預かられる。
 二機の巨大な直通エレベーターが展望台への観覧希望者を運んでいるようだ。
 探る彼女、一階四方には何かしら黒いボックスのようなものが見えたが、すぐに上に移動するよう指示されたため、詳しく内部は探れない。

 レストランに着くとキーランが二杯目のヘルメットパフェを食べているところだった。
 ジーラ達に見つかったキーランは、かなりばつの悪そうな表情を浮かべ、こちらに来るよう促したあと、ひさしぶりにあったアリスに挨拶する。
 アリスはパフェの盛られた普通のヘルメットに注目した。
「おいしい?」
「良かったら、食べませんか、アリス」
「はい」
 ということで、キーランはスプーンであーんしてあげた。その後、展望台からやってきた愛紗と慧斗も合流する、
「腹が減っては、戦は出来ぬっていうでしょ?」
「誰と戦うの愛紗ちゃん?」
 愛紗は慧斗につっこまれたため、もぐもぐ口ごもった。
 ひとまず愛紗はお子様KVランチを頼み、慧斗はヘルメットパフェの大きさにまたもや愕然とした。
「これさ、未早が作った奴だよね」
 ジーラがバグアパフェを見つめて言った。
「え、さっきからそうなんじゃないかなと。そう、そうです。私があの時、もうマスターってば言ってくれればいいのに、ロイヤリティなんて取らないのにな」
 それを確認するのが目的で、未早はここにやってきたのにとりあえずとぼける。
 ジーラの発言にパフェ愛好家の熱い? 眼差しが未早に行く、未早はちょっと誇らしげな気持ちになった。
 そして慧斗は帰り道、もう一度展望台に寄り街の光景を眺める。
 ここでドクター・ウェストが失敗したサニティチェックがあるわけだが、時間の都合で成功させることにする。


 【タイムリープ】

「いらっしゃい」
「こ、こんにちわー」
 透華は内心どきどきしつ、その店内に入り込んだ。
 雑然とした店内の片隅には「邪神創世記クトルー・Cゲーム化決定!『惑星ユゴスの謎』」など意味不明なポスターか張ってある。どうやら情報屋の表の顔はおもちゃ屋さんのようだ。
「君みたいなかわいい子が、来るなんてめずらしい。うれしいな、何を買いにきたの、安くするね」
 兎マークのニット帽を被った青年は、とても気さくで優しそうだった。
 聞いていたイメージとの違いに驚きつつも透華が、情報屋について口にした瞬間。
「ちっ、裏の仕事かよ、何、何かようなの」
 青年はニット帽を脱ぐ、すると隠していた髪の毛が逆立った、スパーク!
「この街のルルイエ・タワーのユグドラシル研究所ってトコ、何の研究をしているかって分かります。って、ご、ごめんなさい! お店を間違えました」
 いや、間違っていないと思う。
「ここが情報屋か」
 逃げだした透華とは入れ違いに、入ってきた佐伯を見たラピッドQは、
「なんかようおっさん? うざいんだよオヤジは、だめだよ運動しないと、メタボじゃん」
 いきなり罵倒された佐伯はへこんだと言う、しかし一応ラインは創った。

 ちなみにキーランが来た時は、
「お久しぶり、元気にしていましたか?」
「やべえ、あの時の兄ちゃんかよ、俺の貞操はまだやらねーぞ」
 にっこり微笑むキーランに対して、よく分からない返しをしたらしい。
 
 ジーラはアリスと公園で遊んでいたため、こられなかったようだ。

 
 ひとまず手に入った情報は、ユグドラシルでバロンがキメラに関するなんらかの実験を行っている。
 バロンは、元この街の裏組織の幹部の一人である。
 なぜその彼が街の支配者に成りえたのか? それは裏にある教団が糸を引いている。
 そして、バロンは最近ある部隊を結成したらしい。
 そんな話を手に入れた。
 

 【マッティパッドストリート】

 
 父の行方を探る流星之丞は、いかにも怪しい見本市で、怪しい道具を発見した。
「これは星?」
 みょうにデカイその宝石には星の刻印がされている。
「きっと、父の手がかりに」
 ならないと思うが、とりあえず彼はそれを買った。しかしその石はアーカムを出るさい煙のように消える。
 彼は、父の墓があるという郊外へ向かった。

 
「古書店、代わり映えしない場、一つの個体」
 冥姫はたいていこんな感じらしい。枠の外にいるのも大変である。枠の外にいるようになると性格が観察者になったあげく、最後は元にもどるのが常のようなものだ。
 とどのつまり外にいることにさえ飽きて、枠の中に安らぎを感じるようになる。
 世界というのは結局、永遠に続く輪の重なり、どこまで行っても初か無しかない。
 よって考えるだけ無意味なことに気づくか、自らで無を選んで消えるか、そのどちらかの選択を選ぶこと。
 それが最悪の放棄でありながら、最善の救いなのだ。
 冥姫が凍った世界で、一人冷ややかな獣であり続けるのか、それとも新しい答えを見つけるかは、彼女の問題。
 

 【ダニッチ】

 ジーラはダニッチを訪れていた。 
 彼女にとっては、因縁の深い地である。
 ジーラがちょうど館に入ったころ。無表情で本を片手にやって来た女がいる冥姫だ。
「好奇心、それだけだ」
 どうやらただの散策のようだ。
 ジーラは館の中で、あの事件について考えていた。
 いまでは名残は血の跡程度だが、いったいあの光景は何のために行われていたのだろう。しかし、答えらしい答えはでなかった。
 その帰り道、ジーラはある人物とであう。
「あら可愛い子ね。お散歩かな? ここは危ないから帰りなさいね」
 妙に肉感的な雰囲気の女性は、ジーラに微笑みかけるとダニッチへと向かって歩いていった。


 【無貌工房】

 ここは無貌工房。
 漆黒塗りで店なのか黒箱なのかよく分からない。
 とてもナイスティシュールハウスである。
 そこに、やってきた双子。
 起太と昼寝。
 二人は伝説のアイテムイアイア君を購入しにきた、もう二人くらい後からやってくるのだが、とりあえずこの二人を先にしておこう。

 ──スタート。

 普通に店に行く。
「箱だ」

 時間差で店に行く。
「窓もない」

 帰ったと思わせてまた行く。
「入口がない」

 ノックする。呼び鈴を押す。店主の名を呼ぶ。
「届かない」

 新聞配達員を装う。牛乳屋を装う。宅配便業者を装う。訪問販売員を装う。
「入れない」

 秘密の入り口がないか周囲を探す。地下通路から進入できないか地面を探す。
「壁だ。コンクリートだ」

 おもむろに手持ちのアイテムを使ってみる。
「何の効果もなかった」

 周囲に人がいれば話を聞く。
「この店は一年に数日しか開いてないね」

 コマンド総当たり的に色々試しつつ、中に入る方法を模索。
「そのコマンドは禁止されています」

 結果入れれば良し。入れなければ物悲しい気持ちになりつつ、やがて爆発。
「だぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

 昼寝が蹴った。
 ででーん。
 説明しよう無貌工房は、実はアーカムで最怖の場所なのである。ルルイエなど足元にも及ばない。この工房に危害を加えたものは、たいてい悲しい末路を遂げる。
 突如、昼寝の脳内にイアイアエコーが鳴り響いた。
「なにこれ」
 イアイアイアイアイアイア。イアイアイアイアイアイア。イアイアイアイアイアイア。
「起太? 何この音」
「? 何も聞こえないけど」
「いや、こんなのって、イアイアイアイアイアイアイアイアイアイア君」
「それをいうなら、イヤイヤ君、だね」
 ──お後がよろしくないようで。

 さて、後からやってきた二人、愛紗と凛が工房にたどり着く、硬直している起太とブツブツ呟いている昼寝の姿を発見した。
「え、何、何なのこれ。凛はべつにぬいぐるみが欲しくてきたわけじゃないのに、こんなの嫌だ」
 欲しくてやって来た気がするが、
「はっちー怖い」
 二人はとりあえず無貌工房の主の捜索に向かった。
 
 【無貌さん】

 愛紗と凛は店主がよく現れるという公園に行った。
 フルートの音色が聞こえる。どうやら居るようだ。
「無貌‥‥‥紳士‥‥‥?」
 なぜ愛紗がそんな単語を知っているのか分からないが、呟いた。
「凛、イアイア君人形が欲しいんだ、お願いだから作ってくれないかな?」
 凛がいきなり、その人物に直談判した。
「了解。材料無い、待て」
 無貌さんはそのいかつい雰囲気と片言口調は別として、取っ付きやすい人だった。
「愛紗もほしいです」
「パンダさん、良い。イアイア君も良い」
 とりあえず今回は作れないらしい。


【ミスカトニック】

 ケイトの部屋に行った子たちは後回し。 
 佐伯はJと静かに呑んでいた。冥姫はイス資料館に向かった、深夜前には戻るだろう。
「そういえば、三日月兎に用があるんじゃなかった? のっそりしたお兄さん」
 確かに、だが佐伯は詳しい場所が分からなかったようだ。
「途中道にまよってね、わしも歳だな、歳」
「じゃいこうか、まだ宵の口だし大丈夫だろう。ケイトー! ちょっと出てくる」
 奥のほうで、
「はーい! 晩御飯は抜きね」
 ケイトが叫んだ。抜きらしい。
「やれやれ、誰の稼ぎで食べていると思っているのやら」
 その様子を見た佐伯はなぜか、Jに微妙な親近感を感じた。
 こうして、二人は三日月兎に向かう。
 ちなみに晩御飯はカレーだった。

 夕飯を事務所食べたあと、イアイア君の前に人影がある。
「これ、ジュードお兄ちゃんの趣味なの? でも、イアイアってなぁに?」
「そうおじさんの趣味、趣味悪いよね? イアイアは何かの掛け声なんだって」
 愛紗の質問に、ケイトがすっぱり言い切った。
 凛はイアイア君を見て、触るかどうか迷っていた。
「べっ、別に何でもないんだからなっ」
 凛はいわゆるツンデレ路線らしい。
「ふふふふふふたふたふたふたぐん♪」
 透華が連続押しを敢行した。
「できたー!」
「僕も!」
「ふたぐん♪」
 慧斗も押した。
 なかなか踏み出せない凛より先に透華、慧斗、愛紗がイアイア君を押しまくった。
 みんなレベルがちびっ子である。
 それを見て凛もおそるおそる押す。
「ふたぐん♪」 
 

【三日月兎】

 流星之丞はカウンターで一人呑んでいた。
 結局あれは、本当に父の墓だったのだろうか、そんな想いにふける。
 彼は墓に花を手向けたあとふらり、バーを訪れていた。
「ストレートで」
 黄昏つつ呑む酒は男にとっては、格別なものだ。
 何の気なしにサングラスのを取り、カウンターに置いたとき、彼に声がかけられた。
「お、カチっのお兄さんじゃないか?」
「あれっ? 貴方は添乗員さんとツアーのお仲間さん、その節はお世話になりました」
 佐伯に気づいた丞は軽く会釈した。
 
 どうやら、三日月兎の女店主は、外出しているらしい。
 そうそう慧斗は未成年のため入れなかった。
 三人で語っているうちに、佐伯の興味であるアーカムの地名についての話が出た。
「ああ、元々ここは普通の街だったのだけどね、今の支配者のバロンという男が、好き勝手名前を変えたからこうなのさ。のっそりしたお兄さんの言うとおり、事の始まりは反バグア派だった前市長をルルイエの前で磔にして焼き殺した。それが全ての始まりだったなセーラムの再現だね、アーカムの由来は元々それだからね」
 
 と話す奥の方で、玉を突く音が聞こえる。
 それはどうやらキーランのようだった。
  

 
【ミスカトニックの夜】
 
 イス資料館から戻った冥姫と他のメンバーを交えてその夜は呑んだ。
「あのクラッカー、アーカムクラッカーも‥‥食べ物なのかアメリカン・クラッカーなのかさては破壊者であるクラッカーなのか」
「その問いの答えは、君の前にあるぞ、綺麗なお嬢さん」
 冥姫の前にクラッカーがある。
「どうやら、食べ物のようだな」
 彼女は一枚食べた。
 少し、しょっぱかった。
 その間、佐伯はルルイエの概観を撮影した写真を見ていた。
 よくある普通のビルなのだが、気になることが一つあった。
「窓が」
 生きている窓が極端に少ない。
 元々窓だった場所もかなり潰されているか、変わった曇り硝子が埋め込んであるのだった。

 「ケイトの部屋」

 たいていの子が、みんな寝静まった頃。
 慧斗とケイトは話している。透華はトイレのついでに大人の事情を探りに行った。
「女の子の部屋に泊まるなんてちょっと恥ずかしいね」
 慧斗がどこか照れくさそうにケイトに言った。
「私、そんなに女の子って感じじゃないから」
「でも、僕も慧斗って書いてケイトだから、驚いた」
「そうだよね、偶然ってすごいよね」
 名前が同じことで親近感が沸いた二人。
 ケイトは、最近学校で起きた出来事を慧斗に話したようだ。
「あ、そうだ」
 ケイトは、自分の写真が載ったアルバムを机に取りに向かう。傍らでは、はっちーを抱いた愛紗の寝息が聞こえた。
 探し物を見つけ、胸に抱き戻る途中、
「いあいあー」
 凛が寝言を言った。
「え!?」
 驚いたケイトは体勢を崩し、寝ている凛を踏まないように動く、ふらつく足元、前のめりになったケイトはその勢いで慧斗に倒れこむ。
 転がり、重なる二人の体と鼓動、慧斗の猫のフードにケイトの息がかかる。女というほど成熟した膨らみではないが、確かに慧斗の顔にそれは触れた。
 息を呑んだ彼は、どうするか迷った。そのまま抱きしめてしまえば良いの‥‥‥。
「二人ともいい感じのところ悪いんだけどー! 何やってるわけわけわけ」
 はい、良いところで鬼が来ました!
 透華は、こういうラヴリーな場面を許す事ができない。なぜなら彼氏がいないからだ。
「僕はべつに」
「じ、事故だって」
「ふーん」
 透華が睨んだ。
 二人は、なぜか照れた。
 何かよくあるラブコメっぽいが気にしない。なんとなくニャルタンが書きたかった。  
 まあ、こんな感じでミスカトニックの夜は更けるのでした。


【キングスポート】

「けひゃ、ここは?」
 ドクター・ウェストが意識を取り戻すと、なぜか船上だった。
 彼は、あの言動以後、キュッと首を絞められ、麻酔を打たれ、ロープで拘束、麻袋に入れて、箱に詰められて船倉につっこまれた。
 クトゥルフの場合、たいていこの後、海の藻屑となる定めであるが、それをやってしまうと死亡フラグなので大人しく強制送還である。
「ひ、一つ判ったことがあるね〜。か、貨物室は寒い〜」
 そんな彼の前に黄金のダイスがなぜか落ちている。
「きひゃひゃひゃ〜これは!」
 ドクターは思わず振った。
 コロ。
 三がでた。
「お・わ・り・だ」
 どこかでそんな声がした。
 ドクター・ウェストは、その声を聞きながら意識を失い。
 ラストホープへと送られていくのだった。



「あーかむ冒険つあー」 Mission Complete! 評価S
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 ●追加マップ

 ・キングスポートが追加されました。
 ・イス資料館が追加されました。


 ●取得情報

 ・ユグドラシルで行われている、なんらかの計画についての話を手に入れました。

 ・黒い小隊の噂を手に入れました。

 ・ミスカトニックが解放されました。
  今後調査を依頼できます。危険度とJの興味によって料金は変わります。

 ・バグアパフェの創設者は「水上未早」女史であることが発覚しました。
 
 ・無貌工房に仇なすと、禍事が起きるようです。

 ・イアイア君は、春先あたりには出来るかも。
  
 ・無貌工房の主は、無貌さんです。意外と取っ付きの良い人でした。
 
 
 
 ●Next Scenariword


 「死の諸侯」
 「バグア支配値」


 END

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