タイトル:雷鳴はより激しくマスター:植田真

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 7 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/09/02 22:27

●オープニング本文



「う〜む‥‥」
 プチロフカンパネラ支部。
 その支部長は悩んでいた。
 手元にはプチロフの主力KVたるPT-062グロームの資料が置かれている。
 その横にはもう一つの資料。それには『グロームVU計画案』と書かれていた。
 そう、彼の悩みとは、上から任されたこのグロームのVUについてだった。
 現状部下や技術者連中から出ているプランとしては‥‥

・IRSTの細部見直しによる命中精度強化
・装甲の増加による生存性の強化
・人工筋肉増加による搭載能力強化
・装甲の材質を見直し、防御性能を維持しつつ余剰スペースを確保
・宇宙への戦域移行を見越した継戦能力強化措置

 以上5つ。
 これらを全て実行することが出来れば、かなりの戦力アップが見込める。
 まさにプチロフ主力に恥じない性能を確保できることだろう。
 だが、現実問題そんなのは不可能だ。
「VU費用だって馬鹿にならんということを、連中は分かっているのか‥‥?」
 しばらく計画案とのにらめっこが続けた彼は、結局‥‥
(‥‥まぁ、こう言う時は実際に乗ってる者。傭兵連中に意見を聞くのが一番だろう)
 という結論に達した。
 となると、どこに人を集めるか‥‥
 ラストホープは攻撃を受けたばかりだからやめた方がいいだろう。
 かといって社内では‥‥まぁ支部とは言え色々外部の人間に見せたくないものもある。
「カンパネラ学園の会議室でも借りるか‥‥」
 カンパネラだったら学生の目にも触れる。
 次代を担う若者にプチロフの名前をアピールするのも悪くないだろう。
「それに、学生なら何か面白い意見を出してくれるかもしれないしな」
 まぁ、それは他の傭兵も同じだろうが、と。
 ここまで考えた支部長は、早速秘書を呼び出し、UPCへの依頼書の作成を行った。
 ただ、この際いくつかの問題が発生した。
「参加者はグロームの所有権を持つ者に限る、では駄目なのか?」
「もちろん駄目と言う事はないと思います。ですが‥‥」
 今回の改良対象であるグロームのパイロットだけを集める。
 そうすると、乗機の話だ。より親身になって考えてくれることは疑いない。
 だがそれ故に、いわゆる高望みな要望だけが増えてしまう危険性もある。
 そこで、持ち主以外も広く参加を呼び掛けることで、より客観的な意見も聞くことが出来るのではないか。というのが秘書の提案だった。
「なるほど、君の言う事も一理ある。そうしてくれ」
 支部長はその意見を取り入れた。
 かくして、グローム改良に関する依頼が、本部に出されることになった。

●参加者一覧

クラリッサ・メディスン(ga0853
27歳・♀・ER
終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
比良坂 和泉(ga6549
20歳・♂・GD
番場論子(gb4628
28歳・♀・HD
ハンニバル・フィーベル(gb7683
59歳・♂・ER
レティア・アレテイア(gc0284
24歳・♀・ER
リック・オルコット(gc4548
20歳・♂・HD

●リプレイ本文


 カンパネラ学園の会議室。
 これから始まるグロームに関する意見聴取に参加する為、7人の能力者が集まっていた。
「グロームはまだまだ発展性のある機体だともいますわ」
 と、述べたのはクラリッサクラリッサ・メディスン(ga0853)だ。ユーザーではない彼女だが、グロームにはある程度期待してもらえているようだ。
「俺は知り合いにグローム乗りがいたんでちょっと気になってな」
 クラリッサに続いて、ハンニバル・フィーベル(gb7683)はニッと笑みを浮かべながらプチロフ社員、今回の意見聴取を担当する担当者と握手を交わした。
「グローム乗りとしての経験は浅いですが、それなりに手をかけた相棒です。これを機により頼れる存在になってもらいたいものです」
「私は現状でさりとて不満が有る訳でもないですが、VUする事でより精度が増せたら良いですね」
 比良坂 和泉(ga6549)と番場論子(gb4628)、この2人はグロームの持ち主だ。
「ユーザー目線からの意見を期待させてもらいますよ」
 担当者はそう挨拶をかわす。
「義勇PT同志技師会主任、リック・オルコット(gc4548)だ。ファンクラブの会長とでも思いね」
 そう言ってリックは手土産に持参したウォッカを差し出した。
「一本はアンタに。残りは本国の技術者に」
「これは‥‥わざわざありがとうございます。頂いておきます」
 担当者は頭を下げつつウォッカを受け取った。
 こうして予定されていた参加者が集まったところで、意見聴取が始まった。


「まずはこちらで既に提案している案に関して、意見をお願いします」
 プチロフ側が用意しておいた能力上昇プランは主に5つ。
 まずは命中精度強化について。これを推したのは7人中6人。
「グロームは対地攻撃に当たり、他のKVに対して優位性を有する機体です」
 クラリッサはそう切り出した。
「対地攻撃に当たっては目標への命中精度が低下する以上、機体そのものの命中精度をなるべく高めておく必要があるでしょう」
 ということだ。
「爆撃は戦略の基礎ですからね‥‥」
 終夜・無月(ga3084)もその意見に賛同する。
 爆撃の基本と成り最も大事なのは目標を狙い撃つ命中能力。加えて、たとえ絨毯爆撃を行う際で在ろうと巻き込むべきでない対象を避けるべき。その為にも命中能力は必要だろうということだ。
「命中は高いに越したことはないですね、基礎が高いと安定感も出ますし」
「確かに、せっかくの対地攻撃も当たらないと空しいしな」
 それに続いて、和泉、リックが賛成の意見を述べる。
「命中は正確な攻撃のキモだが伸ばしにくいからな」
 通常戦闘でもあって困るもんじゃない、特に大火力低命中な銃器を使う時は。と、ハンニバルは他の意見を聞き、頷きながら言った。
「あたしも、命中精度の向上には賛成です」
 レティア・アレテイア(gc0284)はそれに伴い次の様な要望を出した。
「グラスコックピット化、HOTAS概念の導入。加えて新型兵装搭載管理システムの搭載、新型データリンク装置、位置評定報告システムの導入等です」
「なるほど、意見は承っておきます。ですが‥‥」
 ただ、それらは既にエミタAIのフォローである程度対応出来ている部分もある。また「新型」システムはそもそも開発自体が行われていなかったり、これら全部を容れると改良では済まなくなってくる可能性がある。
「いや、ほぼ確実に費用が超過するでしょう‥‥なので、採用するにしても次に開発する機体に多少反映できる程度になるかと思います」
 そう言いながら担当者はメモを続けた。

 次は生存性の強化について。これは5人の賛同を得た。
「対地攻撃時は対空砲火にさらされるから、生存性の向上は必須だと思う」
 今回はリックがまず意見を述べた。
「確かに、生存性は大事ですね。対空砲火だけでなく、敵の攻撃を受け切れるようになると良いと思います」
 和泉もその意見に頷きながら賛同する。
 この点は、クラリッサ、無月も同様。やはり対空砲火の脅威から自身を守る必要性を感じているようで、賛同した。
 また、装甲に関しては、レティアがこんな要望を。
「サヴァーの可動シールドの技術をグロームの翼に転用し対地攻撃時におけるプロトン砲等の対空砲火に対して耐え抜いて攻撃が継続出来る様になればと思っていたりはします」
「翼を可動盾のように動かすのはもちろん難しいですが‥‥コーティングを施すぐらいなら何とか。まったく同じとはいかないでしょうから簡素なものになると思いますが」
 まぁ、これに関しては不可能ではないだろう。抵抗能力上昇の役に立つはずだ。
「‥‥ところで、生存性の向上に関してですが、どこを特に優先すべきか意見はありますか?」
 生存性の向上、という点に関してはある程度の意見一致をみた。だが、防御・抵抗・生命のどこを上昇するか、という点に関しては意見が分かれた。
 全体的に抵抗重視な意見が聞かれたが、それも圧倒的多数というわけではなかった為、これに関しては持ちかえって検討することになった。

 次は兵装搭載能力に関して。これは装備力と搭載余剰合わせて聞かれることになった。
「兵装搭載枠というものは、他の能力に比して強化がしづらい部分です」
 命中、生存性に関しては静観していた論子は、ここぞとばかりに意見を出した。
「当然の如く兵装枠が増えるほど攻撃手段が増える訳です。爆撃を行うにしても、その弾数は少ないわけですし、やはり考慮すべき処はここでしょうかね」
 その意見に対してはレティアも命中性、生存性ほどではないものの、賛成の意を示した。
「やはり強化しづらい部分ですし、メガコーポの方で強化してくれるならありがたいと思います」
 これに絡んで、論子は装備力に着いても触れる。
「やはり積める枠が増えるならば、量も大きくした方が宜しいでしょうし。この点に目をつけて強化すべきでしょうかね」
「俺も装備は出来れば上げたいな」
 これに関してはハンニバルが意見を出す。
「人工筋肉にスロット食われたくねぇが、重い爆弾かかえて飛ぶにゃ余裕が足りん」
 ま、どちらかと言えば伸ばしやすいから優先度は少し下がるがな。と、ハンニバルは締めた。

 最後は継戦能力強化措置について。
 これに関して熱心だったのはハンニバルだ。
「低軌道上の【アレ】やらバグア本星やらに攻撃かける場面がこの先出てくるだろう」
 ハンニバルはそう前置きして話し始めた。アレ、とは恐らくバグアの攻撃衛星の事だろうか。
「空飛ぶチューレ基地じゃ底面に対地攻撃がかけられなかったが、場所が宇宙ならそんな制限はない。対地攻撃が得意なKVとしちゃ、活躍の場を逃すべきじゃねぇはずだ」
 なるほど。宇宙空間では上下の別はない。その気になればどこでも地上になると言うわけだ。
「だが地上兵装を宇宙で使うにゃ、専用アクセでスロットが食われる」
 宇宙には当然ながら空気が存在しない。それ故、宇宙での行動には専用のアクセサリを付ける必要がある。これに関しては奉天の方で研究を行っていたはずだが、それに関してハンニバルは知っていたようだ。
「防御や抵抗は強化で伸ばしやすくアクセサリも豊富な一方、ブーストしねぇとまともに攻撃できねぇのに大容量な練力タンクは入手しにくくて重い」
 この機会にこそ伸ばすべき箇所だろう、という事だ。
「確かに先々の事を見通して考慮してるならば増やしても良いと思いますね」
 元々結構ある箇所ではありますが、垂直離着陸能力複数使用で利便性も増すでしょうし、と。論子が賛同の意を示した。

「皆さんありがとうございます。時間も丁度良いみたいですし、ここらで昼休みとしましょう」
 そう言って参加者に休憩を与えた担当者は、現在までの意見をまとめた。
 賛成の数が多いのはやはり「命中精度の強化」「生存性の強化」辺りのようだ。他の部分についての意見もしっかりしていたが、やはり数の点でその2つが優勢だ。強化するならやはりこの辺りになるだろう。


 休憩をはさんでからは、プチロフから提示した以外のプランについて検討することになった。
「せっかくの機会ですので、スキルに関しての見直しをお願いします」
 和泉がそう言って見直しを求めたのは「斜め45度改」についてだ。
 VTOL機能や対地照準システムはともかくとして、斜め45度改は、効果や使用制限のせいかやや不安定な印象があるとのこと。
「こちらをサヴァー搭載のコーティング系スキルに置き換え出来ないか提案します」
 常用スキルが出来れば練力の無駄も抑えられ、より安定して運用できる、ということだ。
 しかし、それにはリックが待ったをかける。
「いやいや、あの能力は必要だよ。これまでに二回。コンソール叩いたら復帰したよ」
 可能なら、俺のグローム運用データを渡したいぐらいだ。と、リックは続けた。
 「提示していただけるなら助かります」と、担当者はリックに会釈しながら答えつつ、和泉の提案には難しい顔をして答えた。
「‥‥まず、斜め45度に関してですが、これはそもそもスキルというよりロシア軍人の中で流行りのジンクスみたいなものでして。オルコットさんが実際再起動したと言う事ですが、我々がそういう機能を追加している訳ではないのです」
 また、サヴァーのコーティング系のスキル‥‥というと、ジェレゾの事だろう。あれは盾のコーティングを活性化させるものだから、まず固定兵装としてあれと同じものを追加する必要がある。が、そうするとコスト面がかさんでしまう。
 改良にかかる費用というのも無限ではない。加えて和泉以外にこのスキルの修正を求めるものもいなかった為、これに関しては見送られることになった。
「あ、スキルに関しては俺も」
 ハンニバルも別のスキルに関して意見した。直離着陸能力と空対地攻撃支援能力を、宇宙対応版にしてほしいというものだ。
 ただ、具体的にどう対応させるという意見が無かった為、担当者はとりあえず持ち帰って検討してみる、にとどめた。
 
「提案が一つ」
 次の意見はリックから出された。
「対地ミサイル等の対地攻撃用兵装の充実を図ってくれないか?」
 グロームは対地攻撃機。だが、販売時に推奨装備として対地兵装の追加が行われていない。これに関しては、担当者も疑問に思っていた部分だ。
「対地ミサイルは機体的に趣旨が合致してますし、賛成ですね」
 論子は以前対地攻撃に際し多弾数ミサイルを使用した時の事を話しながら、新たに開発しても良いのではないか、と続けた。
 この他にも、クラリッサ、無月、レティアがリックの意見に賛同し、対地攻撃兵装の充実を求め、具体的な案を提示してきた。
「現在対地用兵装として活用されているのは主にロケット弾ランチャーですが、これに関しては命中性が好ましいものではありません」
 と、前置きしたクラリッサは誘導性の高い対地ミサイルを求めた。
 ロケット弾ランチャーぐらいしかないと言うのはレティアも同意見。
 そこで、弾頭交換式対地ミサイルを提案する。
「先ず誘導は赤外線とテレビ誘導式、弾頭として現在のフレア弾を小型化したモノ及び通常弾頭。後はクラスターミサイル方式です」
「此方の研究にも力を入れて頂きたいですね‥‥」
 最も豊富な意見を提示したのは無月だ。
 まずはリロード可能な対地兵装。具体的には対地用に組んだ火気管制システム搭載長距離仕様のバルカンやガドリングや大口径機関砲等。
 次いで、知覚効果の対地兵装。味方支援型の、ラージフレアの様なものを仲間に狙い撃つことで支援効果を出す兵装など。
 その中で、担当者が気になったのは限定的でも弾数の多い範囲攻撃兵装。
 フレア弾やGプラズマ弾等の様な広範囲爆撃では無く10m位の幅で良いので弾数5〜10以上の兵装。範囲を限定する事で逆に細かく狙った範囲を爆撃可能と成り戦略の幅が広がるとのことだ。
 これに関しては担当者も実現できれば面白いと思った。
 ただ、地上10m程度の範囲を狙うのもかなりの精度が必要だ。特に多弾頭の爆撃武器では、高度によって範囲が広がって効果が出にくいだろう、とも考えられた。

 これとは別にハンニバルは装備に関してこんなものを提案した。
「陸戦専用KVが大規模で使う飛行ユニットあるだろ?貸出品で良いからあれの宇宙版がほしい」
 こないだ撃墜されたロケットエンジンつけた下駄に回避能力持たせた地上用KVを戦闘宙域まで飛ばすんだ、ということだ。尤も、宇宙空間まではロケットでも何でも飛ばす手段はあるだろうし、宇宙ではむしろデッドウェイトになりそうだが。


「皆さん、数々のご意見ありがとうございました。対地兵装に関する多数の意見も参考にさせていただきます。ただ‥‥」
 担当者の所属はKV開発部門であり、武装の採用について可否を定めることは自分の裁量では出来ない。
「ですから、これらが必ずしも開発される。されたとしても店頭に並ぶということに関して確約はできません。それに関してはご了承いただけたらと思います」
 そう言って担当者は頭を下げた。
「その辺は仕方ないよな。とにかく、グロームがより良い機体になることを祈ってるよ」
 それと、出来れば高級機の販売も考えてくれると嬉しいな。とリックは希望を述べる。それに乗っかる形でレティアも‥‥
「あたしは対地攻撃特化KVというものが登場しても良いのではないかと思います」
 と希望をだした。
「KV開発に関しては、現在色々調整を行っているところでして‥‥まぁ企業秘密という事で、ご理解ください」
 と、言ったところでこの日の意見聴取は終了した。


 データまとめと会議室の片づけを終えた担当者が帰ろうとした時、声をかけてきた人物がいた。論子だ。
「ちょっとよろしいですか?」
 彼女は先日プチロフが行った打ち上げ計画に関することが気になっていたようだ。
「こちらの末端では本国でどんな事情が有ったか承知ではないでしょうが‥‥打ち上げ計画を遂行する兆候として何かしらの物流変化は有りましたか?」
 担当者は少し困った顔をした。
「‥‥申し訳ない、それに関しては‥‥私もよくわからないんです」
(企業秘密ではなく「わからない」か‥‥)
 プチロフは旧ソビエト連邦内の多数の工場施設や研究施設が複合している連合体だ。それ故、どの部署でなにをやっているのかまで正確に把握するのは難しいのだろう。
 これ以上聞いても、回答は同じだろう。分かりました、と言って論子はその場を立ち去った。