タイトル:猛り輝く残光マスター:植田真

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2013/03/26 21:19

●オープニング本文



 大型BF内部格納庫。ティターンの前で腕組みしたゲインの元に、グリーンランドのバグア、ガウルの死が伝えられた。
「‥‥一応確認するが、その情報は正確か?」
「はい、間違いありません。昨日の未明、傭兵に討たれたとのことで」
「そうか‥‥あの人がな‥‥」
 瞑目しながらゲインは思う。あれだけの上官にはこの先、生きていても巡り合うことは無いだろう。言うなれば、部下思いで作戦能力が高いカケルみたいなものなのだから。これでゲインは、短時間に2人の上官を失うことになってしまった。
「‥‥っ!」
 不意に、咳き込むゲイン。口を抑えた手には‥‥決して少なくない量の血がついていた。
(‥‥俺も、そろそろ限界なのかもしれないな)
 強化人間は定期的な調整を行わないと生きていくことは出来ない。残念ながら、このBFにはそれ用の設備は整ってはいなかった。
 他の強化人間も、恐らく似たような状態だろう。
「‥‥準備不足も甚だしいが、仕掛けるならもう仕掛けないと時間がなくなるな‥‥」
 そう言ってゲインは、カケルの愛用していた‥‥今は自身の愛機となったティターンを見上げた。


 宇宙、崑崙を臨むデブリ帯。そこには戦闘態勢を整えた
「主砲は発射態勢のまま待機。各レーダー、状況確認怠らないように」
「‥‥やはり、艦長がいると艦全体が締まりますね」
「そうかい? 誰がやったってそう変わるもんじゃないと思うけどね」
 エクスカリバー級巡洋艦アヴローラ。その艦橋には副官のボロディンと‥‥グリーンランドの戦闘が終わってから2日後にはもう宇宙に戻ってきたアレクセイ・ウラノフ艦長がいた。現在に至るまではそこからさらに4日程度。アレクセイとしても出来れば休みが欲しかったところではあったが、上層部からの命令とあれば仕方ない。
「いや、やはり私ではこうは行きません‥‥して、どう攻めますか? 数度の攻撃で敵も弱っていますし、ここは一気に‥‥」
「‥‥それで藪蛇になると怖いな。敵の指揮官は優秀らしいし、とりあえずは様子見と行こうか」
 そう言うと、アレクセイはモニターに映る艦影‥‥大型BFを見ながら、手元の資料を取り出した。
 現在艦を預かっているのは、ゲイン・クロウという強化人間に断定されている。随分な策士だと聞いている。だが、その割には小競り合いばかり、しかも宙域を大きく変えることも無く一定の範囲を出ようとしない。
 人類側に何かしようというのなら、もっと戦場を変えるなりしてこちらの索敵の網から逃れるなり、補給線を断つなり‥‥手はありそうなものだ。
 だが、あえて動かない。
 それがアレクセイには気にかかっていた。
「‥‥敵BF、前進してきます!」
「よし、各KV行動開始。アヴローラは射程入り次第主砲を使用する‥‥敵のティターンは出ているかい?」
「‥‥いえ、現在のところ確認されていません」
「そうか‥‥」
 ティターンの存在が気がかりではあった。だが、今は目の前の敵に集中しなければならない。
「念のため、対策は打ってある‥‥後は野となれ山となれ、か」
 そう言って気合を入れるためか、あるいは疲れを振り払うためか‥‥アレクセイは自分自身の両頬を打った。


 アヴローラとBFが戦闘を開始したころ。
 とあるデブリ帯にティターンは潜んでいた。デブリを抜けた先には復興作業の進んでいる宇宙要塞カンパネラが小さく見える。
 ティターンの横に控えるのはアーチャーとランサー。強化人間がパイロットを務める両機には、高威力広範囲の強力な爆弾が積んである。
「ここまでは問題なく来れたな‥‥後は一直線だ」
 これを至近で爆発させれば、復興中のカンパネラに大きなダメージを与えることが出来るだろう。死に際の盛大な花火‥‥もしかしたら、あの世に行っても見えるかもしれない。
「これなら、カケル様もまぁ納得してくれるだろうさ」
 問題は、時間だ。
 本来であればもう少し戦闘の余波が落ち着いてきたころにこの作戦を取りたかった。せめて1年もあれば‥‥しかし、ゲインたちにはそれだけの時間は無い。
 生きるだけならまだ問題ないだろうが、その頃に戦闘が可能な状態に体があるとも限らない。
 今ですらガタが来始めているのだ。
 結局、BFを囮にするというちんけな策を取るしかなかった。
 気の利いた人間が一人でもいれば作戦は看破され‥‥
「‥‥た、みたいだな」
 不意の反応。レーダーに映ったのはKVのようで、すでにこちらを見つけているようだ。
『‥‥ですが、敵は少数の様です。恐らく、単なる偵察部隊でしょう。運が悪いことではありますが』
『なら、報告される前に殲滅してやればいいだけです。やりましょう!』
 部下2人はそう言ったが、事はそう簡単ではない。偵察ルートなどを加味して、ゲインはルートを選んでいる。それがこの位置で察知されたという事は、こちらの奇襲の可能性を最初から織り込んで行動している人間の仕業だ。
「‥‥あぁ、その通りだ」
 だが、ゲインはあえてそれを口にすることは無かった。部下たちも、分かっててあえて言ったのだろう。
 どちらにせよ選択肢は無いのだ。
 退けば、また再度同じ作戦を取るまでにかなりの時間が必要になり、その時今と同じコンディションにあることはありえない。
 また、行って倒したとしてもだ。恐らくは戦闘を行った時点で防衛部隊に察知される。目の前の敵がそうやすやすと倒されるとも思えないし、戦ってるうちに迎撃準備が整ってしまうだろう。
 少し考えてから、ゲインは僚機に全武装の使用制限を解除を指示する。
 切り札の爆弾を抱え落ちては勿体ない。何にせよ、これが最後の戦いになりそうなことだし、悔いは残したくないし、残させたくなかった。
「さて、それじゃやるか‥‥まぁ、カケル様を倒したのは元々傭兵なんだ。これも弔い合戦には違いないしな‥‥行くぞ!」
『了解!』 
 そう言うとゲイン達は機体を加速させた。

●参加者一覧

ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
榊 兵衛(ga0388
31歳・♂・PN
赤崎羽矢子(gb2140
28歳・♀・PN
美具・ザム・ツバイ(gc0857
18歳・♀・GD
ヨハン・クルーゲ(gc3635
22歳・♂・ER
村雨 紫狼(gc7632
27歳・♂・AA

●リプレイ本文


「アレクセイの読みは当たったな」
 美具・ザム・ツバイ(gc0857)のレーダー上に映る3機。この機影は間違いなく、例のBFから来たものだろう。
 その3機から、それぞれ一発ずつミサイルが発射される。
「カンパネラ‥‥じゃない! 狙いは私達だよ!」
 赤崎羽矢子(gb2140)が通信で注意に従うように各機が回避行動を取る。
 完全に避けたと思われたミサイル‥‥しかし、それらが爆発。その規模は彼らが想定していた以上。敵が準備してきた特殊爆弾だ。
 唯一攻撃を想定していたのはドクター・ウェスト(ga0241)ぐらいだったが‥‥
「浮上回避‥‥は無理かね〜」
 広域戦闘では特に何もなければ飛行形態。加えてドクターはラージフレアの使用も頭に入れていた。必然、歩行形態でしか使用できない浮上回避は使用できない。結局、全員が爆発の余波を受けることに。
 爆発の光が収まった時、その反対側から一機が突っ込んでくる。
「あれは、ランサーですか‥‥」
 ヨハン・クルーゲ(gc3635)が言った通り、向かってくるのはランサー。機体はFFに包まれているようにみえる。ランサーお得意の攻撃だ。
「みなさんは先にアーチャーの方を!」
『了解した、そちらは任せるぞ!』
 ラヴィーネを前方に向かって発射した後、ヨハンがすぐさま対応へ向かう。榊 兵衛(ga0388)はそれを見送りながら機体を爆発の余波から立て直す。
「くそっ‥‥初っ端から手加減無しか‥‥!」
 そう言いながらも、村雨 紫狼(gc7632)はその行動がどこか分かる気がした。
(彼らにはもう、時間が無いんだ‥‥)
 だから、行動する意味も乏しいのにこうして攻撃を仕掛けてきた。それを救う、なんて言葉は彼らへの非礼にあたる。
「だから俺が、彼らを殺して! その業から解放してやる!」
 そう言って紫狼は気合を入れ目の前を見据える。そこには、アーチャーから撃ち込まれたであろう、無数のミサイル群が迫ってきていた。


『来たぞ、各機注意するのじゃ!』
 言いつつ、美具が攪乱の為に煙幕弾を発射。煙幕は広範囲に広がり味方を包む。
 だが、敵は今までのAI機ではない。エース仕様である。煙幕を展開してなお、正確に標的を狙ってくる。
 その攻撃を、狙われた各機はブーストや特殊能力を使用してなんとか回避していく。
 特にドクターは機体の装甲をパージ、それらの排除装甲を障害物にして盾にする。煙幕下ではその効果もかなり高いと見え、ほぼ完全にミサイルの被弾を防ぐ。
「けっひゃっひゃっ、コノ程度のGなら楽だね〜」
 通常はもっと厳しい機動を取っての回避を行う分、操縦にも多少余裕があるように見える。
 こうして、それぞれ被弾をかなり少なくしながら攻撃を躱すが、前に出なければ攻撃のしようがない。
「このままミサイルを撃たれてはジリ貧だ、一気に行くぞ!」
 唯一の大気圏用機体を操る兵衛。常時発動しているブーストの効果で、その移動力は格段に伸びている。一気に加速してアーチャーへ‥‥
「‥‥っ!」
 反射的に操縦桿を切る兵衛。歴戦の勘というやつだろうか。アクチュエータのお陰で機体の反応も良い。回避直後、今まで自機が存在していた空間をプロトン砲が突っ切っていく。
「プロトン砲? ティターンは逆方向から狙ってきてるのか‥‥」
『でも今はアーチャーが優先だな、行くぜ!』
 兵衛に応えるように言った紫狼。
 ティターンの方は羽矢子が牽制している。まずは強力な制圧能力を持つアーチャーの撃破が先決だろう。


 爆光を突っ切ってきたランサーに対するのはヨハン。
「カンパネラに向かう‥‥というわけではなさそうですね」
 ランサーの軌道は、明確にヨハンへと向かうもの。先にこちらを殲滅してから向かうという事なのだろう。
 そのランサーに対し、ヨハンは接近戦を避ける。アリスシステムを発動させ、機動力を高めながら、中距離を維持した戦法だ。
「まずは‥‥これでどうです?」
 連射されるレーザーライフル。直線軌道を取るランサーに直撃、直撃。ダメージはそこそこ入っているか。しかし、敵も何もしないわけではない。フェザー砲を乱射しながらの突撃。その衝撃で手元が狂うか、3射目のレーザーは外れる。
「ちっ、リロードを‥‥うわっ!?」
 強い衝撃が機体を襲う。ランサーが装備した剣翼による斬撃がヨハン機を大きく切り裂く。
 そのままランサーはヨハン機後方まで駆け抜け、慣性制御による方向転換。再び急加速して突撃してくる。
「何度も受けられませんね‥‥」
 敵はやはりというか、接近戦仕様の様だ。その上移動力も高い。近距離の間合いに入られるのは必然か。
 ヨハンは歩行形態に変形し、練機刀での防御を選択する。
 ‥‥しかし、これは悪手。
 敵の移動力は、繰り返すが凄まじい。変形し終わった時には敵が目の前にいた。
「この距離は‥‥まずい!」
 HMBを起動して回避を‥‥そう考えるのと衝撃は同時。先ほどの剣翼と違い、今度の攻撃はランサー機首に備えられた練機槍。
 加速と、武装の大出力がヨハン機胴体部を深々と貫き、しかしなお止まらない。
「機体が‥‥もう‥‥」
 次の瞬間、エンジンが爆発。ランサーの突き抜けた後には、わずかな光と共に、ばらばらと周囲に散らばっていく機体の破片だけが残っていた。


「宇宙ならではのやり方というのを見せてやろう」
『おう、こっちも合わせていくぜ!』
 兵衛、紫狼は同時に遠隔攻撃機を発射。ひたすら距離を取ろうとするアーチャーには、超長距離を何のペナルティもなく攻撃できるこの武器は非常に効果的。
 邪魔だと判断したアーチャーは、再びマルチロックミサイルを発射。今度はこの遠隔攻撃機を狙う。
 発射されたミサイルは遠隔攻撃機を正確に捉え、破壊する。
「だが、間合いには入り込めたな。喰らえ!」
 その間に接近した兵衛。高精度のミサイルをアーチャーに連射し、次々に命中させる。
「ナイス! さぁこっちも全力で‥‥叩っ切る!!」
 兵衛の攻撃で態勢を崩し、動きが一時的にでも止まるアーチャー。そこに突っ込んでくる紫狼。超伝導RAで自動機銃を防ぎながら、至近で変形。二天一流の使い手である紫狼。KVでもその動きを活かし、二刀を振るう。一刀で堅い装甲に傷をつけ、もう一刀がそこにさらなる攻撃を加え、装甲を切り裂いた。
「こちらも行くのだよ〜。切り裂けシンジェ〜ン!」
 その後ろから追撃をかけるドクター。機銃を再度の装甲パージで壁を作り防御。そこから変形しつつ潜り抜けるように重練機剣を振るう。
 2人の連携攻撃でかなりのダメージを与えたか。しかし、まだ攻撃は終わらない。
「もう一度ミサイルを打つ機会‥‥そんなものはもう無い!」
 追撃をかける美具。必殺の電磁加速砲から雷光を纏った弾丸が放たれる。高速の弾丸はアーチャーを過たず穿った。
 しかし、それでもなおアーチャーは健在。さすがはエース仕様といったところだ。
 とはいえ‥‥もう一歩。
(もう一歩で撃墜できる‥‥いける!)
 その手ごたえを一番感じていたのは最後に攻撃した美具だろう。
 今まで幾度と戦ってきたゲイン一派。あのゲインと、その仲間たちを討つまでは彼女にとっての終戦は無い。そこまでの決意で今回の討伐に臨んでいた。
「このまま一気に押し‥‥」
『狙われてる! 避けて!!』
 不意に、羽矢子からの警告が飛んだ。


 時はほんの少し遡る。
「あたしは赤崎羽矢子。山城カケルを討った傭兵よ!」
 ティターンの狙いを自身にそらすために、羽矢子はそう名乗りを上げた。本来は開戦前に行うつもりだったが、敵に先手を打たれたため、このタイミングとなった。
『‥‥へぇ、おまえがそうなのかい?』
 返答を期待していたものではなかった。だが意外にも、ティターンはその声にこたえるように動きを止める。
 ティターンの方では両肩のプロトン砲台に光が集束しつつある。さらに、両腕のガトリング砲は羽矢子を狙っている。
『それじゃ、そのまま仇を討たれに来てくれたってことかな?』
「いいえ‥‥もちろんそんなわけにはいかない。ただ、自分たちだけで向かってくるあなた達の意志には敬意を持ってる。だから‥‥」
 言いつつ、羽矢子はETPを発動する。
「‥‥それを受け止めるのが、カケルを討ったものとしての、あたしの役割だ!」 
 その言葉を皮切りに羽矢子はアハトでの攻撃を開始。リロードを挟みながらではあるが、威力はお墨付きだ。牽制としては十分だろう。
 その攻撃をティターンは回避。ダメージを避けるためなのか、銃口を向けながらも、攻撃を仕掛けず回避に専念している。
『一つ聞かせてくれ‥‥カケル様を討ったのはおまえ一人か?』
「‥‥いいえ。あたしと、あたしの仲間たちの力よ」
 それどころか、更に会話を続けてくるティターン。その意図がつかめないまま、羽矢子は返答する。
『そうか‥‥それなら、お前一人を相手にするのは不公平じゃないか?』
「え? ‥‥しまった!」
 不意に、ティターンが加速。さらにティターンのプロトン砲台。明らかに先程より強いエネルギーが集束している。
(回避に専念していたのはエネルギーを充填するため? そして、狙われているのは‥‥)
 砲台の向きから想定される射線にはアーチャーと戦闘する味方がいた。
「狙われてる! 避けて!!」
 ライフルでその動きを牽制しようとする羽矢子。しかし、ティターンの動きはその攻撃より速かった。


「何だ!?」
 攻撃から逃げるように距離を取ったアーチャー。それを追うために再度飛行形態に変形した紫狼。その機体を極太のエネルギー光が包む。ティターンからのフルチャージプロトン砲だ。紫狼機は最大出力の攻撃を浴び、すぐさまダメージが超過、爆発する。
「これは‥‥ティターンの‥‥」
 同射線上にいたドクターは歩行形態だったため、すぐさま浮上回避を使用。フルチャージの直撃は免れるが、掠っただけでもかなりのダメージを負う。装甲を全パージした影響が出ているのだ。
 さらに追撃。今度は回避しきれない。
 先程よりも威力は低いとはいっても、その出力は強大。すぐに機体は爆発した。
「くそっ! くそぉっ!!」
 ティターンを追う羽矢子。だが、背後から強い衝撃が機体に走る。
「‥‥ランサー?」
 すぐさま羽矢子はETPを再起動し、連続での被弾を回避する。このランサーの出現は、すでにヨハン機が撃墜されたことを示していた。
「そんな‥‥これで半数が撃墜されたっていうの‥‥?」
 反転、突撃してくるランサー。しかし、ETPを起動した羽矢子機は高い回避力を発揮。維持するだけなら難しくないだろう。
 だが、戦力は数だけですでにイーブン。総合的な戦闘力では‥‥すでにバグア側の方が上回っている。維持するだけでは厳しいか。
「くっ‥‥まだじゃ! 今はとにかくアーチャーを落とす!」
 そう言って美具は電磁加速砲を再度発射。アーチャーは距離を取りながら回避行動を取る。
 だが、その間に兵衛がフルブーストでアーチャーに接近。再度のミサイルとスナイパーライフルで一気にダメージを重ねる。
 最早これまでということか。最後にアーチャーは初動で発射した特殊爆弾を多数のマルチロックミサイルと共に発射。ブーストとアクチュエータを利用した機動をとる兵衛は、その攻撃を多少被弾しつつもなんとかかわし切る。
「これで‥‥うぉっ!?」
 アーチャーの方は後一撃か。しかし、そうはさせまいとティターンからプロトン砲が撃ちこまれる。先程紫狼に放ったのと同様、フルチャージの一撃だ。装甲の厚さゆえに致命傷とはならないが、それでもかなりのダメージを受ける。
「兵衛殿!」
『こっちは大丈夫だ、それよりもアーチャーを‥‥』
「分かっておるのじゃ!」
 移動能力ではアーチャーにも劣る美具。しかし、美具は遠隔攻撃機を発射。紫狼や兵衛も使っていたこの武器なら、多少離れていても問題ない。そして、アーチャーには最早迎撃する武器が火力の低い機銃のみ。
 この攻撃で、アーチャーのダメージは限界を超過。その動きを止めた。


「速いけど、まったく避けられないわけじゃ‥‥うわっ!?」
 ランサーの攻撃を回避した羽矢子。しかし、回避直後を狙うようにプロトン砲の直撃を受ける。これを羽矢子はDIMCを使用して防御する。致命傷にはならないが、態勢は大く崩される。
 それでも何とか機体はもっている。だが、これ以上の被弾は避ける必要があるか。
 ティターンはランサーに援護の一射を行った後、美具、兵衛と相対する。
「ここで決着をつけるのじゃ、ゲイン!」
 美具は乱波を展開しつつ遠隔攻撃機で攻撃を行う。
 その攻撃機を、ゲインは後退しつつガトリング砲で丁寧に撃墜していく。
「これまでの因縁を断ち切るためにも‥‥全力で当たらせてもらう!」
 ブースト機動を活かした疑似慣性制御でティターンに喰らい付いていく兵衛。ライフルによる弾幕が確実にヒットするあたり、さすがといわざるを得ない。
 反撃するティターン‥‥但し、狙いは美具。ゲインは兵衛、美具、どちらとも交戦経験がある。機体性能的に狙われるのは致し方ないか。
「そう易々とはやられんぞ!」
 美具は再度煙幕弾を発射。さらに乱波を放出し防御を固める。それに対しティターンはプロトン砲をチャージ。
 兵衛の攻撃を回避、あるいは防御して耐えながらフルチャージで煙幕ごと薙ぎ払う。
 煙幕が晴れた時、そこにあったのは美具機の残骸。
 残されたのは兵衛機と羽矢子機のみ。
『勝負あった‥‥といっても、どうせ続けるんだろ? こっちも‥‥ゴホッ‥‥もう時間がないんでな‥‥さっさと落ちて貰おうか‥‥一機ずつな』
 ゲインは咳き込みながら通信を切り、羽矢子の方へ向かう。機体性能が低い方から連携を取って確実に落とすつもりだ。
 状況的に敗北は必至。しかし、それでも兵衛はティターンを追った。
 

 戦闘開始から2分。この方面を警戒していた傭兵部隊は全滅した。
 ティターン、ランサーはともに健在であり、カンパネラ方面へ向かった。だが、それをカンパネラから出撃してきた防衛部隊が阻止。兵衛が戦闘開始直前に通報しておいたお陰で、対応が早かったようだ。加えて、傭兵たちとの戦闘で全力を出しつくしたからか、バグア機はどちらも動きが鈍くなっていた。
 だが、どちらも撃墜間際に特殊爆弾を使用。これが防衛部隊を多数巻き込んで爆発。敵は全滅したものの、防衛に出撃していたKVが多数撃墜。損傷を受けた機体は大小合わせて数十機にも上った。
 この報告を、BFを撃退したアヴローラの艦橋でアレクセイは受け取っていた。
「傭兵の皆はよくやってくれた。敵が悪かったのかもしれないね」
 カンパネラに被害は無い。そう言う意味で作戦は成功だ。
 だが、防衛部隊に出た被害は傭兵たちが撃墜できていれば出なかった被害だ。
 傭兵たちにとってこの作戦は失敗に終わった。