タイトル:【FC】空に響く鎮魂歌マスター:植田真

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/10/27 16:21

●オープニング本文


●BF艦内、カケルの私室
 通信から響く三姉妹の声。そのトーンは誰が聞いてもわかるくらいには沈んでいた。
 それもそうだろう。四国バグアの首領たるミスターSが敗死し、最早この地に残る有力なバグアは自分たちを残すのみとなっていたのだから。
『言いたくはないけど、これ以上の抗戦は難しいわね。とにかく四国からは撤退するより他ないわ』
「そうね‥‥それじゃ一度合流して‥‥」
『駄目、それは駄目だよカッキー。四国がほぼ敵に落ちた以上、今集まっても一網打尽にされる可能性があるから‥‥そこで、うちが考えた作戦なんだけど‥‥』
 そう言ってミウミが提示した作戦はこうだ。
 ミスターSの旗下にいた兵士、それらはまだ残存している為、それらをまとめて大規模な攻勢に出る。
『そいつらを合わせれば、多分うちが一番多くの戦力を持ってるはずだから、二人はその間に脱出して』
 そう言われて、カケルは考える。
 元々多数の改造HWを要するカケル。だが、その性能自体は中堅程度。この隊の主戦力となっていたのは2機の精鋭機である。
 だが、その2機のうちカケルのティターンは両腕を斬り落とされ、練翼の放出機構にも異常がある。
 もう1機、部下であるゲインのタートルワームも、以前の戦闘での損傷が修復されていない。
 満身創痍。
 それが自身の陣営を語るにはふさわしかった。
「‥‥わかったわ。任せる」
 だから、指揮官としては多分その案に乗るのが正しい。そう考えた。
『そうね。ミウミ姉さん自身も離脱成功できる算段があるなら、乗るわ』
『その点については安心して、ちゃんと考えてあるから!』
 殊更明るく言ったミウミ。
 こうして2人との通信は終わった。
「‥‥これがあるいは、最期の‥‥」
 カケルは、音を発さなくなった通信機に向かって、ポツリとそうこぼした。
 ミウミのことは信頼しているつもりだ。アサキも。だが、自分もまた部下を抱える身であり、彼らを護るためにその義務を果たさなければならない。
 昔は‥‥少なくとも地球に降りるまではそんなこと考えることは無かっただろう。
(この思考も、もしかしたらこのヨリシロの影響なのかしら‥‥)
 カケルはしばらく無言で、通信機を見つめていた。

●BF艦内、格納庫
 格納庫では慌ただしく整備兵が作業を行っている。出撃が近いのだ。
 その様子を、パイロットスーツに身を包んだ山城カケルはぼおっと眺めていた。
「‥‥カケル様があれだけ声を張るのは初めて見ましたよ」
 そのカケルに声をかけてきたのは、カケルに代わり艦の指揮をとるゲイン・クロウだ。
「この体の記憶では、こう言ったら皆言う事を聞いてたみたいだからそうしただけ‥‥別におかしいことはしていない」

 ――数十分前
 それは、先程行われた作戦会議の時のこと。
 撤退は方針としてすでに決している。その撤退先は宇宙。
 出力を後部ブースターに回せばBFの大気圏離脱自体はそう難しく無い。一気に宇宙に出てしまえば追撃を一時的にでも振り切れるだろう。
 だが、問題は追撃部隊への対処だ。
 AI操作のHWだけではどこまで持たせられるか分からない以上、有人機が足止めに出る必要がある。
 当初、その役目は作戦を提案したゲインが自分で行うつもりだった。だが、それに異議を唱えたのはカケルだった。
「この艦内で一番操縦技術が高いのは私。だから私がやる」
 これにはゲインはじめ全員からの反発があった。
 指揮官自ら危険な任を負わせ、それで部下が逃げ延びる。それじゃあまりにもみっともないだろうと。
 だが‥‥

「‥‥ガタガタ抜かしてんじゃないよ!」

 同時に、ドンッと壁を叩く音が響いた。
 この音と怒声をカケルが発しているというのに気付くのに、部下たちは数瞬を要した。
 そしてその表情も普段の無表情とは違う。怒っているというか、意見を容れさせるような凄味がある。
「指揮官は私だ、あんたらは黙ってきびきび従う! 大体、私がそう簡単にやられるとでも思ってんのかい!」
「い、いえそんなことは‥‥」
「なら何の問題も無い‥‥さっさと準備はじめなっ!」
 その言葉でその場にいた者全員がはじけるように作業へ散っていった。

 ――そうして、今に至る。
「それにしても‥‥本当にあの機体で出撃を?」
「改造もしてあるし、今の被害状況を加味したら一番優秀。問題ない」
 準備されているのは5機。うち4機はHWだが、その中に1機だけ場違いな機体が紛れ込んでいる。
 色こそティターンと同じく赤に染められてはいるが、その姿はバグアの物ではない。だが、バグアのみならず、能力者たちにとっても見知ったものであるのは間違いない。
 この機体こそがカケルの乗機。
「しかし『S-01』とは‥‥よくこんな旧式を保存していましたね」
 S-01。
 戦争の最初期において活躍したKVだ。無論、今のKVと比べればその性能には雲泥の差があるが、未だに名機と呼ばれる機体である。
「‥‥このヨリシロの記憶に最も強く残っていたKVがこれだった。だから‥‥」
 カケルのヨリシロとなった女性はこの機体に一度諦めた夢を見て、そして再びそれを失った。それをカケルは知っていた。勿論、他人にそんなことは話していないし、話す必要もないと思っているが。
「それじゃ、後のことはお願い」
 そう言って、カケルは出撃の最終調整を行うためS-01に向かう。実戦投入はこれが初めてだ。短時間のうちに調整すべき点は山ほどある。
「それはもちろん承知しています、しかし‥‥」
「部下を護るのは上司の勤めなんでしょ? それに‥‥何て言えばいいのかしら‥‥」
 振り向きながらそう言ったカケル。ゲインはその時初めて見た。カケルが微笑んでいるところを。
「最期まで『ワタシ』は空を飛ぶパイロットであるべきだって‥‥そう思うの」

●徳島市上空1万m
 BFが四国軍の索敵網に引っかかってから数十分が経過していた。BFはその高度をどんどん上げていく。
 これを撃墜するために編成された追撃部隊は、もちろんこれを逃すつもりはなかった。
 だが、彼らの前に現れた1機のKV‥‥S-01が、その状況を一変させた。
『これ以上の追撃を許すわけにはいかない‥‥消えて』
 S-01のパイロットはそう言うと一方的に追撃部隊に攻撃を仕掛けてきた。
 本来味方である筈の機体からの攻撃は奇襲に等しく、加えてその火力と機動力は旧式のそれとはわけが違う。
 さらに、それを援護するかのようにBFから4機のHWが出撃してくる。
 追撃部隊は一気に劣勢に立たされることになった。
『‥‥レーダーに反応、援軍が来てくれたみたいです!』
「そうか‥‥我々は入れ替わりで後退する、損傷した機体を優先して離脱!」
 入れ替わり敵機へ向かうのはラストホープから来た傭兵で構成された部隊だ。
 これを放置してはBFどころの話ではない。後退していく友軍が逆追撃を受け撃墜される可能性だってある。
 そうさせないためにも‥‥傭兵たちは目の前の敵へ攻撃を開始した。

●参加者一覧

榊 兵衛(ga0388
31歳・♂・PN
新居・やすかず(ga1891
19歳・♂・JG
赤崎羽矢子(gb2140
28歳・♀・PN
佐賀十蔵(gb5442
39歳・♂・JG
ソーニャ(gb5824
13歳・♀・HD
佐賀繁紀(gc0126
39歳・♂・JG
美具・ザム・ツバイ(gc0857
18歳・♀・GD
ヨハン・クルーゲ(gc3635
22歳・♂・ER

●リプレイ本文


「来るぞ!」
 サヴァーの索敵装置を用いて敵陣容を確認していた佐賀十蔵(gb5442)の声が通信上に響く。
 S−01は傭兵たちに向かって突撃。その目標は十蔵。まずは電子戦機からという事か。ライフルとショットガンを撃ち込んでくる。
 十蔵は可動シールドを使用して防御。だが、S−01の火力は非常に高い。機体の身代わりとなった盾が吹き飛ぶ。
「頑丈に出来ていて‥‥正解だな」
 空中でも攻撃を受け止められるサヴァーの真価が発揮された結果といったところか。
 とはいえ、これ以上攻撃されると危険な状態。しかし、S−01はそれ以上の攻撃を仕掛けずそのまま飛び去る。
「集中攻撃を避けるために距離を取る、一撃離脱戦法に出たという事か‥‥」
 呟く榊 兵衛(ga0388)に突撃してくるランサー。兵衛はそれを回避。機動性が高くとも正面からでは見え透いている。
 ランサーはその勢いを維持し今度は新居・やすかず(ga1891)へ突撃。やすかずはDFバレットファストを起動。防御性能は低下するが、その代りに高い機動性を得る。
 やすかずはさらにランサーの機首を見てその攻撃方向を予測して回避。多少かすったが許容範囲か。そのままBファストを活かした急速旋回。
「そんな単調な動きで‥‥!」
 リニア砲の砲口をランサーに向ける。狙いは後部のブースター。高速で発射された弾頭は狙い違わず直撃。同時に小規模な爆発を起こすブースター。ランサーの機動性が目に見えて低下する。
 この間に兵衛はマルチロックミサイルを使用。
 すでに距離をとったS−01と後方にいるハンター。このどちらも射程外。ならばと射程内のランサー、ガーダー2、アーチャーを目標に攻撃。
「まずは足並みを乱させる‥‥こちらも撃ち込みます」
 これに合わせる形でヨハン・クルーゲ(gc3635)もラヴィーネを発射。本来はアーチャーの攻撃後の爆風に紛れて攻撃するつもりであったが、敵の態勢を崩すという目的を達するには動きを待っていてもしょうがない。
 降り注ぐミサイルで3機、特にすでに損傷の大きかったランサーは非常に大きなダメージを受ける。
 苦し紛れに飛ぶランサーは再び兵衛に突撃してくるが、それをさせまいとやすかずが再び狙撃。
 その攻撃で急速に速度が低下したランサーは突如巨大な爆発に包まれた。
「クッ‥‥これは自爆だね。各機注意して!」
 ジャミングで途切れ途切れではあるが、赤崎羽矢子(gb2140)の声が無線を通じ各機に伝わる。
 やすかずは最速機動による急速離脱で難を逃れるものの、距離が詰まっていたこともあり、兵衛は機体に多少の損害を負う。
 だが、そこで止まっているわけにもいかない。爆発の余波で震える機体を制御しつつ、最後のK−02を放出した兵衛は、すぐさま機首をS−01の方へ向ける。
 すでにS−01にはソーニャ(gb5824)、美具・ザム・ツバイ(gc0857)が追撃をかけている。
 特にソーニャはアリスシステムと共にマイクロブースト、ブーストを同時に起動させ、圧倒的速度を発揮してS−01を追う。
 一方美具は兵装がその機動性を減じている。ミサイルを撃ってから追った兵衛が追いぬく。
『先に行くぞ!』
「了解、後詰は任せてもらうのじゃ」
 尤も、元々目標を包囲する算段だった美具にとってはそれでも問題ない。兵衛とソーニャが両側、自身が後方からS−01を抑えればいいのだから。
 その間、ソーニャはS−01を射程に捉えていた。
「いい機体だね‥‥」
 皮肉ではない。ティターンの様に浮遊して移動する存在とはわけが違う。今カケルの駆る機体は、ソーニャの愛機エルシアンと同じ風と共にいる存在だ。
(これが、君が望んだ本当の空。それをボクが証明してあげる)
 ソーニャは機体をロールさせつつミサイルを発射。それらを回避するS−01だが、このミサイルは牽制。接近するソーニャは近距離からレーザーを連射。
 距離を取ったことでジャミング影響下から遠のいたことがプラスに働いたか。レーザーはS−01に確かなダメージを刻む。
 さらに後方から追い縋る兵衛。ジャミンググレネードを使用させることを目論みミサイルを撃ち込む。が、その攻撃は外れる。
 彼らの後方から迫っていた狙撃機、ハンター。ライフル狙撃で機体の態勢が若干崩れたのが原因だ。
 さらにハンターはソーニャに向かって狙撃。これをソーニャは機体の速度を維持しつつロール機動によって回避‥‥
「っ‥‥!」
 次の瞬間、機体が衝撃で大きく揺れる。直撃だ。
 ハンターからの攻撃は回避した。なら攻撃をしたのはS−01。
 今の機動は前回ティターンとの戦闘においてソーニャが見せた機動と同じだった。だからこそ、S−01はその機動を予測したということだろう。
「やっぱり、一筋縄じゃいかないね‥‥さぁ、楽しもうじゃないか、飛翔を!」
 この間に、羽矢子と十蔵はガーダー2へ攻撃をしかける。
「ちょっと予想外かな‥‥」
 彼女の予想に反して、ガーダー2はかなり前に出ている。それを好都合と攻撃を仕掛ける羽矢子は、バルカンを連射して接近しつつソードウィングの一撃。堅い、確かに堅いが‥‥その翼によって斬りつけられた装甲には確かなダメージが刻まれている。倒せなくはない。
 だが、その攻撃の手を遮るのはアーチャーの撃った大量のマルチロックオンミサイルだ。同様のミサイルを使用した兵衛やヨハンと数も射程も比較にならない。ロングボウを基にした機体だけのことはある。
「撃ってきたか。全部撃ち落としてやる」
 佐賀繁紀(gc0126)はアーチャー対応。ニェーバの特殊能力であるリーヴィエニBでミサイルを迎撃しつつロケット弾で仕掛ける。この時リーヴィエニBの真骨頂ともいえる、他者防衛にまで考えを向けなかったのは一つのミスだったか。そして、当然リーヴィエニの圧倒的弾幕であってもミサイル全てを迎撃することは出来ない。弾幕を抜けたミサイルが次々命中する。それでも5割いかない程度のダメージで収まったのはニェーバの装甲ゆえか。
 アーチャーの攻撃は繁紀以外にも4機の目標へ向け猛威を振るう。
 やすかずはファランクスと共にガトリング砲で弾幕を形成してなんとか持ちこたえる。
 ハンター攻撃のため移動していたヨハンは防御兵装乱波を展開。
「凄い量ですね。とにかく、今は回避に専念を‥‥」
 羽矢子はPRMによる防御強化で対応する。同時に羽矢子はガーダー2が前に出てきた理由も理解した。
 電子戦機を早々に落とそうとするのは双方にとってセオリーの一つだ。だからこそ、あえて前に出すことで敵を誘導。ミサイル射程範囲に収めやすくする目論見だろう。
 実際はバグア側に応じる形で味方も分散傾向にあるが、S−01を除けばガーダー2に人数は割かれている。
 その片割れ、十蔵にもミサイルは当然のように襲い掛かる。もはや防御手段もない十蔵機にミサイルは次々直撃する。
「電子作戦機とは言えプチロフ製だ。ジンクスはあるはずだぁぁぁぁっ!」
 絶叫しながらコンソールを叩く十蔵。だが、現実は非情だ。サヴァーはその叫びに応えることなく爆発する。
 墜落してく唯一の電子戦機、十蔵の機体を視界に捉えた羽矢子。この後の苦戦を考え憎々しげな表情を浮かべた。
 その様子を同様に見ていた繁紀はロケット弾を連射。復讐とばかりに攻撃を加えていく。ガーダー2の影響が強くなったためか、精度はあまり高くないが、アーチャーの機動性も大したことは無い。攻撃は命中。それでもアーチャーは健在だ。
(だが、手ごたえはあったな)
 繁紀は畳み掛けるように機体をアーチャーに向かい前進させた。


 機体を立て直したソーニャはすぐさまS−01に機首を向ける。だが、その時すでにS−01は反転、他の味方機へ突撃していった。
 意図を掴みかねるソーニャと兵衛。とにかく追わないわけにはいかないだろう。
 S−01の移動方向。その進路上にいるのは美具。
「来たな‥‥喰らうのじゃ!」
 美具は巡航ミサイル、対艦ミサイルの2つを時間差で発射。S−01の逃走方向を制限し、高命中ミサイルであるイースクラでの必中攻撃を狙う。
 だが、S−01は加速しつつジャミンググレネードを放出。爆発とともに広がるチャフがS−01への照準を狂わせ、同時に拡散するフレアがミサイルを別方向へ誘導。ミサイルは2発とも別方向に逸れていく。
「くっ、厄介な兵器を使いおって‥‥」
 美具はとっさに防御兵装乱波を展開して攻撃に備える。だが、S−01は美具に攻撃することなくそのまま飛行。
 狙われたのはやすかず。損傷機を先に落とし数的優位を覆すつもりか。
 それを察知したやすかずは追ってこいとばかりに機首を上に向けブースト。
 追撃すれば他の味方に機体の腹を見せることになる。同時に宇宙に逃げていくBFに向かうと見せることでこちらに対応しなければいけないという状況を演出。
 S−01は若干機首を上げると、ライフルでやすかずを狙撃。機関部に直撃し、機体が火を吹くがまだ飛べる。ショットガンの射程はそこまで長くはないはずだし接近してくるはず‥‥
 だが、やすかずの思惑は外れ、S−01は上方に逃げるやすかずを追わない。
 動きの意図を察せられたか、大気圏内用の機体であるやすかず機ではBFを撃沈まで持ち込むことが出来ないと判断されたのか。
「くっ‥‥それなら少しでもダメージを!」
 やすかずはBファストの効果を活かし急旋回し降下、S−01を牽制しようとする。が、その前に機体をライフルが貫く。ハンターからの狙撃だ。
 この攻撃で機能が完全に停止したやすかずの機体は墜落していった。
「やってくれますね‥‥これ以上は許しませんよ!」
 ハンターに対し攻撃を仕掛けるのはヨハン。ハンターはヨハンの攻撃を回避しようとはするものの、反撃はしてこない。
(ならばここは短期決戦に!)
 HBフォルムと共にEBシステムを起動させたヨハンはレーザーとミサイルで攻撃。どちらも非物理兵器ではあるが、EBシステムの効果でどうにか通常通りの威力を発揮する。特にミサイルは全弾が命中し、かなりの損害を与えたと思われる。
 一方、S−01から次の目標とされたのは羽矢子。電子戦機を護ろうということか。
 ガーダー2の相手をしている為レーダー機能が著しく低下していることからS−01の接近を察知するのが遅れた。羽矢子は、苦笑いしながらも緊急避難的にPRMを使用。
「S−01は反抗の象徴みたいな機体だった。それとこういう状況でやりあうのは皮肉だね」
 防御力を高めたところにショットガンの2連射。装甲がはじけ飛び、一挙に30%程度まで削り取られる。PRMを使わなければ即撃墜の可能性もあった。
 そのまま飛び去るS−01を追撃していくのはソーニャと兵衛。ガーダー2がいなければ羽矢子もアハトアハトで攻撃しようもあったが、現状知覚兵装はその効果を十分に発揮できない。
 今はとにかくガーダー2を撃墜する必要がある。
 バルカンを撃ち込みながら剣翼で攻撃。効果はあるようだが、ガーダー2はその特殊能力で防御力を向上させ対応。特に剣翼が直撃するのに合わせてアッシェンプッツエルと似たリアクティブアーマーを使用して防御。まだ撃墜には至らない。
 その間、繁紀はオーブラカの弾幕によるリーヴィエニAと併用したガトリング砲、機銃で攻撃。しかし、アーチャーはそれらに耐えきり、再度のミサイル攻撃を行う。
 目標となったのは羽矢子、ヨハン、繁紀、美具、兵衛。
 アーチャーから距離のあった兵衛はその技量も相まって攻撃を回避。S−01を追いながらAAMを連射するが、それらは再び放出されたジャミンググレネードで逸らされる。
 繁紀はすでにリーヴィエニAを使用しておりミサイル迎撃に特殊能力を用いることが出来ない。無数のミサイルが次々に直撃し、ダメージが嵩む。
「今‥‥今、落ちるわけにはいかんのだぁぁぁぁ!」
 繁紀は最後の頼みの綱である、例のジンクスに頼ってコンソールを叩くが、無情にもその行動は効果を発揮せず、さらなるミサイルの直撃を受け撃墜。
「くそ、回避しきれない‥‥!」
「これ以上は‥‥」
 同様に、ミサイルの直撃を多数受けたヨハン、羽矢子も共に撃墜される。
 美具も大量のミサイル直撃を受けるがすんでのところで装甲をパージ。その破片を隠れ蓑に難を逃れる。
「何とか持ったの‥‥しかし、この状況は‥‥」
 この時点での残存機数は人類側3機、バグア側4機。
 機数の有意差は傾いた。


 美具の天はパージにより防御力は低下したものの、その機動性は格段に上昇している。
 だが、S−01はそれを上回る機動性で突撃してくる。美具は防御兵装で回避し、致命傷を避けようとするも、S−01は距離を取った状態でショットガンを放つ。広域に広がる弾丸はいままで多数の機体を撃墜した火力は無いものの確実なダメージを与える。
「クッ‥‥こんなものでは‥‥!」
 防御力の低下した機体がその攻撃で揺らぐ。そこを狙い撃つS−01のライフル。光は機体を貫き、同時に爆発を起こす。爆煙からバラバラになった機体の残骸が落ちていった。
 追撃してくるソーニャ。それを背にするように飛び回るS−01。
 兵衛は逃げるS−01へミサイルとライフルで攻撃、ソーニャを援護する。
 しかし、その兵衛にハンターが接近しつつセミオートライフルで攻撃を仕掛ける。
「ちっ‥‥邪魔をしないでもらおうか!」
 思わぬ横やりが入ったが、それを回避しつつ邪魔者を蹴散らすように兵衛はスラスターライフルを連射。すでにヨハンとの戦闘で息絶え絶えだったか、ハンターは攻撃を回避することもできず‥‥いや、回避できないのではなく、していない。
 危機を察知し距離を取ろうとした兵衛だったが、その前にハンターが自爆。装甲が焼け、機体が大きく揺らぐ。だが、まだ持つ。さすがは雷電といったところだ。だが‥‥
「後ろか!?」
 レーダーに反応があった時にはもう遅い。後方から接近してきていたアーチャーが接触。同時に起こる爆発が機体を破壊する。
 墜落していく兵衛機。残されたのはソーニャただ1人となった。
「劣勢だね。でも‥‥!」
 それでもソーニャは飛び、S−01を追う。
 この時点で1対2。ただのHWならソーニャはそれでも勝っただろう。
 だが、残された2機は、エース機と‥‥CWと同等の性能を持つジャミング機。
 ‥‥数十秒後、その両翼と心臓部を撃ちぬかれたエルシアンは地上へと一直線に落ちていった。

 空に響いた鎮魂歌。
 その終幕を飾るのは追撃部隊の悲痛な叫び。
 S−01は後退していた追撃部隊を逆追撃。
 すでに損害が大きかった部隊は次々に撃墜され、全滅した。
 戦力の分散、改造HWに対する認識の甘さ。それとも‥‥
 結果に対するいくつもの理由が浮かんでは消えていく。いくつかの原因が重なってこの状況を生み出したということなのだろう。
 S−01と生き残りのガーダー2はその後レーダーに映らなくなり、BFも宇宙に離脱。
 カケル旗下の部隊は全て四国からその姿を消した。