タイトル:【FC】不可解な敵機マスター:植田真

シナリオ形態: ショート
難易度: 不明
参加人数: 5 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/09/11 22:25

●オープニング本文


●翔の記憶
 整備士とはいえ、前線に出る機会も多く‥‥
 特に戦争初期、蹂躙される側だった人類はその命を散らせていった。
 ワタシの先輩や上官も前線に行っては帰らぬ人となり、いつしかこの地区ではワタシが最もベテランの整備士になっていた。
 後輩たちには「姐さん」なんて呼ばれたりもして‥‥そんなに年齢が離れているわけでもないだろうにと苦笑しつつも、それはそれで悪い気分はしなかった。
 だけど、ワタシの心の中にはそれでもモヤモヤとした何かが渦巻いていた。
 そういう思いを忘れたくて、ワタシは一掃仕事にのめりこむ。
 
 ――そんな時だった。
 やや後方に位置していたはずの基地に、バグアの襲撃があったのは。

●四国某所、BF格納場所
 BFに帰還したカケルはやけに満足げだった。
 どうもトリイや嘉手納で思うように戦えなくてフラストレーションが溜まっていたらしい。
 そういう気分やらなんやらで戦われても困るものだ。
 その上、戦闘データを渡したら、援軍の指揮官に挨拶もせずさっさと自室に引きこもってしまった。
 向こうはあまり気にしなかったようだが、四国ではあくまで新参者。
 特に周りとの関係に気を使っていかないと最終的に戦場で意図的に取り残される、なんてこともあるかもしれない。
「しかも今回は作戦から外されてるからな‥‥」
 戦闘直後ということもあったのだろうか。榊原アサキに出撃命令はあったものの、カケルには特に指示を与えられてはいない。
 尤も、そのおかげで損傷を受けたビッグフィッシュの修理やら機体の整備、物資の整理諸々行うことが出来ているわけだ。
 沖縄に到着してからここに至るまで連戦続きであった。短い休暇が貰えた‥‥
「わけではない、か‥‥」
 ゲインは弾薬やHWのリストを確認しながら、デスクワークに明け暮れる。
 それでも化け物みたいな傭兵やらと戦うよりはずっとましだ。
 それと、カケルの行動に付き合う事よりも‥‥
「‥‥なぁ、カケル様の姿を見てないんだが、また部屋に引きこもってるのか?」
 ふと、胸騒ぎを感じたゲインはリストを持ってきた整備士に聞いてみた。
「え、ご存じないんですか? 1時間ほど前に修理したティターンのテストをしてくると言って出撃を‥‥」
 ガタッと立ち上がる。その顔の色を自身からうかがい知ることは出来ないが、きっと蒼白だったに違いない。
 独断専行は普通に考えればご法度だ。
 しかも、直近にバグア側による軍事行動があったことから、人類側の警戒レベルも上がっているだろう。周辺の警戒を行っていた敵機に見つかり、運が悪ければ撃墜‥‥四国に来てすぐそれでは非常にまずい。
 急いで連れ戻す必要がある。問題は‥‥
「どこにいるかだが‥‥どうなんだ?」
「はぁ、大凡の位置は特定していますが、途中で、その‥‥見失いまして‥‥」
「見失った‥‥?」
 ゲインは無言でデスクの引き出しから胃薬&頭痛薬を取り出し、数錠を飲み込む。
 そして、ふぅっと溜息を吐いた。
「このままじゃ埒が明かない、か‥‥」
 結局ゲインは、足の速いHWを中心に部隊を構成、出撃命令を発する。その目的はカケルの身柄確保だ。
 だがよほど焦っていたのだろう。彼にしては珍しく、それによって発生しうる状況までは想像していなかった。

●四国某所、UPC基地
「バグアが動いてる?」
「はい、目撃情報が出ています」
 士官の1人が地図を広げながら説明する。
「このあたりでティターンを発見したそうです。外見情報から、恐らく山城カケルのカスタム機と思われます」
 士官が言うには、付近の空を飛びまわっていたそうだ。別に何をするでもなく、ただただ。
 付け加えるなら、その像はどうにもぼやけて映っていたそうだ。機動性の高さゆえ‥‥というわけでもないらしく、どうも光学迷彩のようなものを搭載しているのではないかと考えられた。
「まぁ、一般人でも視認できるレベルみたいだし、戦闘にはそう問題にはならんか‥‥その後の動向は?」
「はっ、地上に降りていく様子が確認できたそうなのですがその後の情報は無く‥‥」
 そういった士官の話を聞いている上官は頭を捻る。この辺りには確かレジスタンスがらみの小さな村があったはずだが、別段重要な場所という事も無い。正直言ってバグアの目的はさっぱりだ。
「緊急事態です!」
 だが、そうも言ってられない状況が、慌てて作戦室に飛び込んできた下士官から告げられる。
「HWの発見報告が例の村から! 数は‥‥20以上!」
「20以上!? くそっ、あんな小さな村をそんな大軍で殲滅する気なのか?」
 基地には現在KVが10機程駐留している。数の上ではまだ不利だが‥‥該当地域の近くには他の基地から偵察に出ている傭兵部隊も存在している。
「彼らと合流すれば数の不利は十分補えるはずだ。目の前の村を、みすみす焼かせるわけにはいかない! 行くぞ!」
 上官は、すぐさま出撃命令を下した。

●参加者一覧

ジョー・マロウ(ga8570
30歳・♂・EP
ソーニャ(gb5824
13歳・♀・HD
美空・桃2(gb9509
11歳・♀・ER
美具・ザム・ツバイ(gc0857
18歳・♀・GD
ドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751
18歳・♂・DF

●リプレイ本文


「こんな時期にバグアが動いているじゃと!?」
 地上に存在していた主だったバグア。それらは先日の北米での敗北により大打撃を受けたのは間違いなく、それ故に地上でのバグアの活動はおとなしくなるだろうと踏んでいた。そう思った矢先のバグアによる軍事活動だ。
 基地からの援軍要請を受けた美具・ザム・ツバイ(gc0857)は思わずそう言った。
「バグアも地上から一掃されたと思ってたのにいるところにはいるでありますね」
 その美具の言葉に同意するようにつぶやくのは美空・桃2(gb9509)。
 美空は美具からの緊急要請により急遽戦場にはせ参じた彼女の妹だ。
「行きはよいよい帰りは怖いというのはこの国が語源の筈だが‥‥何て事だ!」
 ドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751)はコクピット内で呟いた。彼らは警戒任務にあたっていたため飛行により練力を多少なり消費している。
 ここからさらに戦域まで向かうことを考えると、確かに帰れるのか不安になってくる部分はあるか。
「でも、エルシアンは制空型戦闘機、継戦能力に問題は無いよ!」
 ソーニャ(gb5824)はそう言ってブーストを起動。それに続くように仲間たちもそれに続く。なんにせよ、救援要請が出ている以上それを捨て置くわけにもいかない。
「やれやれ‥‥さて、いつものお守りってね」
 参加者に大人の女性がいないことに若干の不満を感じつつも、これから起こるであろう戦闘に備え、ジョー・マロウ(ga8570)はコクピット内でGooDLuckを使用しておく。
 ブーストを使用して移動する5機の目前には戦闘域が迫っていた。


 村民はみな慌てていた。レジスタンスは避難誘導に追われている。
 そんな状況の中、ツナギを来た女性は缶ジュースを手にぽつんと立ちつくし、ただ空を眺めていた。
「騒がしい‥‥」
 空には複数の黒点が見られる。かなり高い位置にいるようだが、彼女にはそれがバグアのHWだという事がすぐに分かった。
「バグアが攻めてきとうみたいでよ。おまはんもはよ避難しい」
 呟きが聞こえたのだろう。大荷物を担いだ老婆はそう言いつつ急ぎその場を離れていく。
 彼女、山城カケルは老婆の言葉を聞き流し、やはり空を眺めていた。


 すでに戦闘は始まっていた。
 高度は約80m付近といったところか。
 10機のシラヌイと20機のHWは互いに高速を維持しつつも入り乱れ、バルカンやらフェザー砲を撃ちあっている。
「すっかり乱戦状態だね‥‥」
『敵の侵攻目的探知を要請するつもりでありましたが、これでは難しそうでありますな』
 その様子を見て呟くソーニャに美空はそう続いた。
「とりあえず、あの連中と協力して村の防衛かな。あの数相手に殲滅は無理だろ」
 所長ならやるだろうけど、と言う言葉を呑み込みながら、ジョーはパンテオンの発射態勢に。
「様子見‥‥でもいいけど、やっぱり今は数を減らした方が賢明か。準備は?」
『こちらは問題ないのじゃ!』
「よし、ミサイル一斉発射!」
 ドゥの指示に従い、各機がミサイルを一斉に発射。
 HWに向かってマルチロックミサイルを始め大量のミサイルが飛ぶ。
 さらに、美空がフィーニクスの真骨頂であるプロトディメントレーザーを発射。長大な光線が戦場を貫いた。
 爆発。それと共に爆煙が周囲を満たす。
『うわ!』
『くそ、もう少しちゃんと狙ってくれ!』
 同時に、無線内を味方の悲鳴が満たす。
 高速移動するHW「ランサー」
 その得意技はフォースフィールドを纏った体当たりだ。それゆえ敵味方の距離は縮まっていた。加えて、低空戦に置いては距離による命中精度低下が著しく、それたミサイルが味方に命中‥‥とまでは行かないもののその至近で爆発することも多かった。
 さらに一直線上に放たれるプロトディメントレーザーは、乱戦下では言われてからでも回避は難しかっただろう。
「むぅ‥‥もう少し敵味方を引き離してから使うべきでありましたか‥‥」
 とはいえ、まったく成果が上がらなかったというわけではない。
 2機のHWが墜落していく様が能力者たちの視界に入った。
「これで‥‥19対15かな? 久しぶりにワクワクする厳しさだね」
 ソーニャは高速を維持しながら乱戦下に飛び込む。既に起動されているアリスシステムによって、その機動性は非常に高い。
 そのソーニャに突っ込んでくるランサー。FFが赤く輝いている。接触すればダメージは必至だろう。しかし、ソーニャはそれをロール起動であっさりと回避。
 すれ違いざまに目標を見失ったランサーはすぐさま方向転換‥‥したものの、さすがに速度が落ちる。
「照準は外さない‥‥そこは俺の距離だっ!」
 ドゥは動きの鈍ったところを見逃さず、ライフルで狙撃。機関部を撃ちぬかれたのか、HWは即座に爆発した。
「さすが‥‥こいつは威力、性能共に高すぎる!」
 そのままドゥは手近なHWにライフルを連射しつつ急速に移動、一撃離脱を計る。
 当然HWは追い縋ってくるが、そこは味方のシラヌイが攻撃し、きっちりと抑える。
「‥‥何か探している、か?」
 各機が機動的に戦闘をこなす間、ジョーはミサイル発射後から敵の動きを観察していた。元探偵としての癖と言ったところだ。
 その洞察力はおおむね正しかった。そして、その探しているのが前情報も合わせるとティターンであることは容易に見当がついた。
「ま、今は関係ないか」
 とはいえ、この状況になっても姿を現さない敵機を気にしていてもしかたない。それよりも正面からHWが接近してきている。
 まずはこれへの対処が急がれた。


「見つけた‥‥逃がさんぞ、そこの亀野郎!」
『美具、突出しすぎなのであります!』
 乱戦の最中、その指揮官であろう機体、TWは後方に滞空していた。
 それめがけて、美具は接近しつつ巡航ミサイルを撃ち込む‥‥が、TWはあっさりと回避。
 長射程、高威力のミサイルではあるが、やはり低空域ではその性能を生かし切れないか。
 それに対しTWは‥‥何もしない。
 その場にただ滞空しているだけ‥‥
(というわけではあるまい。やはり何かあるのじゃろうか‥‥)
 尤も、今はそれを洞察している時間は無い。今は攻撃あるのみ。
 美具は全力で移動、TWとの距離を詰めようとする。当然追いすがってくるHWもいるが、それは間隔をあけてそれに追従する美空の射程内。
 レーザーで牽制を行い注意を引く。それにつられればすれ違いざまに剣翼を叩き込んでやるつもりだ。
 だが敵の速度は早い。こちらを無視して美具へ突進していく。
『こっちは無視でありますか‥‥避けるでありますよ、美具!』
 その言葉に反応し、乱波を展開しつつ大きく回避する美具。HWの突進は空を切る。
 美具機の前へ出たHWはすぐさま反転。フェザー砲を乱射してその行く手を遮ろうとするが、美具の撃ったミサイルが直撃。態勢を崩している間に美具は再びHWを突破しTWへ。
 再度反転し追おうとするHWだったが、今度こそ追いついた美空。その剣翼に切り裂かれ墜落した。
 これで二人を追う敵はいない、目の前の敵のみだ。
「今度こそ、落ちてもらうぞ!」
 美具は三度ミサイルを発射。TWは回避行動を行うものの、ミサイルは直撃。
 距離が詰まったことで、誘導性が十分に発揮され始めたと見える。
 さすがに直撃となっては敵も不干渉ではいられないか。TWは砲口を接近する美具に向け、プロトン砲を発射した。
 その攻撃を美具は回避。とりあえずは回避に専念しつつ、下部のHWへ攻撃を集中する。
 下部のHWへの攻撃は、当然敵も読んでいるだろう。だが、HWを撃破すればTWの機動性は大幅に減じられるのは間違いない。
 HW下部からの拡散プロトン砲を警戒しつつも、美具は美空からの援護を受け、攻撃を集中させた。
 

「ちぇ、追いかけてくんなよ‥‥」
 HWに追われたジョー。さすがに敵の機動性は高く、すぐに追いつかれそうだ。
 そこで、HWとの接触直前に、ジョーはラージフレアを展開しつつ急上昇。宙返りしてHWの後ろを取る。そして、そのまま対戦車砲を連射。
「お、当たった。ラッキー!」
 対戦車砲の直撃を受け、HWの態勢は大きく崩される。
 そこを味方シラヌイがライフルで狙撃して撃墜した。
 だが、今度は狙撃したシラヌイの知覚外からHWが狙う。
「く、間に合え!」
 必要とあらば超伝導RAを使用して味方を庇う事も想定していたドゥ。実際それを実行に移した。
 だが、敵は連続したロール起動でドゥを躱すとそのままシラヌイに突撃。FFを纏った体当たりは装甲を一気に抉り取り、シラヌイは爆発四散した。
「やはり空戦では厳しいか‥‥だが、撃墜された味方の借りは返させてもらう!」
 機体のフレームを輝かせながら、ドゥはライフルを連射、即座にHWを血祭りに上げる。
『後ろ、気を付けて!』
 攻撃後の隙を狙って、別のHWがドゥを狙う。だが、ここはソーニャからの警告がありすぐさま回避機動。
 先程までドゥがいたその場所を、ピンポイントでHWが駆け抜けていく。
 そのHWはソーニャがそのままレーザーを撃ちつつ追撃。マイクロブーストを使用しながらではあるが、移動性能の高いHWに追従しているあたりはさすが英国製機体か。
「そっちは任せた! 俺はこっちを‥‥!」
 ソーニャを追うHWを発見したドゥは、簡易ブーストを利用した疑似慣性制御により照準をHWへ。
「狙い撃つ!」
 三度連射されるライフルはHWに三つの穴を穿ち、破壊した。
 ‥‥と同時に、ドゥの後方で爆発。
『油断禁物、ってね』
 吹き飛んだのはHW。ドゥの後方をとっていたHWは、上方のジョーに気づかなかったと見える。アサルトアクセラレータが付加されたミサイルは十分以上に威力を発揮し、HWを撃ち落としていた。
 このように、傭兵たちは周辺の味方とも連携しつつこの乱戦を上手く立ち回ってはいた。だが、正規部隊はというとそうはいかない。
 この時点ですでに三機が撃墜されている。
『これ以上落とされてはだめよ!』
 ソーニャの叫びが無線内に響き渡る。
 数が減れば減るほど味方が危険にさらされる。そして‥‥それは敵にも言えることだ。
『敵を分断して各個撃破に持ち込むのよ! そして、確実に数を減らすの』
 そう言いながらも攻撃の手は休めないソーニャ。
 能力者たちは、数こそ敵に劣るものの、互角以上の戦いを繰り広げた。


「‥‥ん? 敵の動きが変わったぞ?」
 激しい戦闘の最中、ジョーが言う通り敵の動きが戦闘から、後退する動きに変わった。
 HWはフェザー砲を乱射した後慣性制御を利用した急反転から、一気に戦場離脱を計っているようだ。
 そのHWの殿を務めるのは、指揮官機であるTW。
「何しに来たかしらんが、帰るならさっさと帰れ、バグア。おっとお前は残れ、そこの亀野郎じゃ!」
 美具は逃走するHWには目もくれずTW下部のHWへ攻撃を続行。しかし、美具の攻撃はミサイルに偏っている。TWは拡散プロトン砲を放ちそれらのミサイルを迎撃する。
 だが、この間にHWという足かせが無くなった機体、特に機動性の高いソーニャがTW側面をつく。
 ミサイル迎撃に集中していたTWは高速で接近するソーニャのレーザーを回避しきれず、被弾。
『落ちるであります!』
 さらに逆側面からは美空。再充填の終わったプロトディメントレーザーがHWと、その上に乗るTWを同時に焼く。
 3方からの集中攻撃とあってはさしものTWも無傷というわけにはいかない。
 装甲部に多数黒く焦げた跡が散見される。そして、その飛行状態もややフラフラとしたものに変わっていた。
 TWは拡散プロトン砲を周辺にまき散らしながら一気に後退していく。
「逃がすか!」
『待って、深追いは無し』
 それを追撃しようとした美具を、ソーニャが引き止める。
「何故‥‥!」
『HWの向かう先を見てください』 
 ドゥが言った方向。そこにはHWの集団を先導するように飛ぶ、ティターンの姿があった。
「攻撃は‥‥してこないみたいでありますね」
 とはいえ、さすがに仕掛ければ応戦はしてくるだろう。練力もかなり消費したうえ、味方機にも損害が出ている。
『あれと戦うのはさすがに骨が折れそうだしな。今回はこれで良しとしておこうや』
 こうして、能力者たちは基地へと後退を開始した。
 結果として、敵機の半数以上を撃破し、敵指揮官機であるTWにも多少以上の損傷を与えた。
 だが、同様に味方部隊にも半数を超える撃墜機を出している。
 基地の防衛力が低下することは間違いなく、それ故基地から有事の際兵力を出すわけにもいかなくなっただろう。
 とはいえ敵の戦力をかなり削ったのは間違いないのだ。
 そして何より、下の村に被害は出ていないようだ。これならば、作戦は成功と言って問題ないだろう。


「くっ‥‥あの天のパイロットも少しは腕を上げたな‥‥」
 ゲインはコクピットでそう漏らす。TWの損傷は著しいが、それ以上にHWがかなりのダメージを負っていた。
『何で来たの?』
 そのゲインに、ティターンのパイロットであるカケルが通信を入れてくる。
 戦闘による不必要な損害もあって、この時点でゲインのイライラはピークに達していた。
「何で‥‥何でですって!? この緊迫した状況下で勝手に出撃されちゃ困るって分からないんですか!?」
 言ってから、ゲインは血の気が引くのを感じた。
 カケルは、どちらかと言えば冷徹な部類のバグアだ。これまでにも使えない部下をあっさりと切り捨てていると、整備士連中から聞いている。
 それがこれだけの批判を受けて、それを言った相手を生かしておくだろうか‥‥
『‥‥ごめんなさい』
 だが、カケルの口から出たのは意外な言葉だった。
『ただ機体のチェックをしたかっただけなんだけど‥‥私の思慮が浅かった』
「い‥‥いえ、分かっていただければ、いいんです‥‥」
 以後、BFに到着するまで二人に会話は無かった。その間ゲインは考えた。
(この人は‥‥以前とは変わってきているのではないだろうか‥‥)
 バグアには、ヨリシロとした人間の人格が影響を及ぼすことが多いと聞く。カケルにもそれと同じことが起きているのか‥‥
 付き合いがそれほど長くないゲインには、その答えをすぐに出すことは出来なかった。