タイトル:【FC】雷光、貫くマスター:植田真

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/07/16 15:24

●オープニング本文


●翔の記憶
 ――能力者。
 言うまでもなく、その存在は人々の希望だった。

 だけどワタシにとってのそれは、他の人々とは違う意味合いがあった。
 空に憧れて、空を飛びたいと願い‥‥しかしそれはワタシ自身の能力故に叶わない。
 だけど、能力者は超人的な能力とともにKVと呼ばれる可変戦闘機の搭乗権が得られる。
 能力者になれればワタシも空へ行ける、と‥‥そう思った。

 でも現実は残酷で、ワタシには能力者としての適性は備わっていなかった。
 それならせめて、空を飛ぶモノの近くにいたいと考えたワタシは、整備士の資格を取った。
 それが、4年程前のこと。

●BF艦内
「振り切れないのか?」
「難しいですね。この艦は元々足は速くありませんし。それに‥‥」
「荷物を積みすぎた、か‥‥」
 BFの艦橋で頭を掻きながらゲイン・クロウ(gz0487)はそう呟いた。
 ラルフ・ランドルフに基地を明け渡す際、不要な物資や傷ついたHWなどを積み込めるだけ積み込んだ。
 この時に照屋ミウミの水中戦力、榊原アサキの陸上戦力はミウミの水中要塞に移動させてある。だがそれでも物資量はBFの搭載能力を上回るものであった。
 沖縄では、少なくとも当初はバグア全体の関係は良好であった。だが、四国に行っても同じ関係を維持できるかは限らない。そういう意味でも、沖縄からの古参は可能な限り手元に置いておきたかった。
 今後のことを視野に入れたその判断は妥当であったと信じているが、今はそれが足かせとなってしまった。
「だが、かといって今から艦を降りろとも言えんし、何か手を打たないとな。しかし‥‥」
 そこでゲインは口ごもった。
 実を言うと、迎撃作戦の案自体はあった。
 だがそれらを行うには多数の兵力を必要とし、かつそれを捨てることになる可能性が高かった。
 弾薬等も可能であれば使いすぎは避けたかったところであるし、そういった前提条件を課すと名案もそうそう浮かばない。
 あるいはこの際改造HWの温存を第一にして一般機にはAIでも乗せて犠牲にするというのも‥‥
 そんな時だった。この艦の主が声を上げたのは。
「私が迎撃する」
 艦橋にいた全員が、山城カケル(gz0492)の方へ顔を向ける。
 確かにカケルとその愛機を以ってすれば、追撃部隊の撃破はともかく撃退ぐらいならそう難しくはないだろう。
 但し、それはティターンの状態が完璧であれば、だ。
「現在の整備状況では50%程度の性能しか発揮できないはずです。その状態では‥‥」
「黙って。あなたは私の部下で、私の出撃を止める権限はない」
 出撃を止めようとするゲインに、カケルはきっぱりと言い放った。
 こうまで言われてしまってはゲインには口出しすることはできない。カケルの出撃は決定事項となった。
「‥‥作戦などはおありでしょうか?」
「攻撃して、落とす。それだけ」
 本格的に頭痛を覚えたゲイン。
 とにかく、このまま出撃させてはまずい。ただでさえこちらは撤退中の身だ。指揮官機が落とされては士気に関わる。
 結局『作戦はゲインが考える』『その作戦には必ずカケルの出撃を組み込む』といったところで折り合いがついた。
 そしてもう一つ‥‥
「できれば俺の機体をそろそろ使わせていただけませんか?」
「‥‥そうね。そろそろ実戦テストもしたかったし、あれはあなたに返す」
 但し、戦闘データは必ず提出するようにと言い残して、カケルは愛機の下へと向かった。
「‥‥生き残ることが出来れば、そうさせてもらいますよ」
 ゲインはその背中に向かって小さく呟きつつ作戦を練る。
 敵との接敵までそう時間は無い。敵の視野に入る前にまず1手目を打つ必要があった。


 沖縄からさらに北東部。丁度四国との中間地点にあたる海上付近。
 この位置を飛行するBFを傭兵たちがキャッチしたのはつい先ほどだ。
 傭兵たちの目的はそのBFに対し多少なりとも損害を与えることにあった。沖縄から離れてくれる分にはこちらも願ったりかなったりだが、ただ逃がすのも‥‥ということなのだろう。 
 だが、そんな傭兵たちの前にBF方面から飛んできた敵が目の前に立ち塞がった。
 敵の数は5‥‥うち4機は一般的な小型HWの様だ。
 だが、うち1機は極めて特殊だった。
 見た目は若干ゴツイが普通の中型HWの様に見えなくはない。
 だが、問題なのはその上部。そこには地上でよく見かけるワーム、タートルワームが乗っていた。
 その背には大型プロトン砲を2門背負っている。
『‥‥あー、傭兵の諸君。悪いがあんたらをここから先に行かせるわけにはいかない』
 唐突に入った通信。
 そこからは若い男の声が聞こえる。
『月並みな表現だが、ここから先に行きたければこの俺を倒してからにしてもらおう』
 TWのプロトン砲にエネルギーが集束していくのが見える。
 同時にHW4機が煙幕弾を射出。傭兵と、バグア側の間に煙の壁が形成された。
 ここで傭兵たちは選択を迫られる。この敵を放置してBFへ向かうか、あるいはこの敵を倒すべきか、と。

●参加者一覧

榊 兵衛(ga0388
31歳・♂・PN
終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
アルヴァイム(ga5051
28歳・♂・ER
飯島 修司(ga7951
36歳・♂・PN
エリアノーラ・カーゾン(ga9802
21歳・♀・GD
レイミア(gb4209
20歳・♀・ER
美具・ザム・ツバイ(gc0857
18歳・♀・GD
ミルヒ(gc7084
17歳・♀・HD

●リプレイ本文


「油断ならない相手ですから‥‥気を引き締めていきましょう」
 そう言った終夜・無月(ga3084)はブーストを使用。
 それにアルヴァイム(ga5051)、飯島 修司(ga7951)も続く。
「こう『何かありますよ!』的に煙幕を張られると『それがどうした!』と突っ込んでいきたくなりますね」
『油断ならない相手です。どんな手で待ち構えていることか‥‥』
 そう話しながら彼らは煙幕へ。そしてその先にいるビッグフィッシュに向かって突撃する。
 無論煙幕の中を突っ切るわけではない。その煙幕を迂回してだ。
「まずは挨拶代りに一発っと」
 修司はルート上の煙幕に対してK−02を発射。
「四国で戦う友軍の為にも、ここで出来うる限りの戦力を削っておくべきだろうな」
「こちらも援護します」
 これにあわせ榊 兵衛(ga0388)、ミルヒ(gc7084)も同様にミサイルを撃ち込み、煙幕の向こう側に位置するHW群に攻撃する。
 だが、手応えはない。
「敵HW、やや後退しているようです」
『煙幕を壁にしてこちらの攻撃を躱そうってことかしら‥‥なんにせよレイミア、あなたは私の後ろにいなさい』
 レイミア(gb4209)の言葉にエリアノーラ・カーゾン(ga9802)が自身の予測を付けて返す。そのままエリアノーラはレイミアの盾になるように前に出つつも、十分に距離を取る。
「なるほど。ミサイル対策でしょうかね‥‥では、これならどうですかね」
 だが、その間にさらに上昇。上方に迂回した修司。
 煙幕の上からTW、HWを視界に捉える。しかしそれはTWに読まれていた。収束プロトン砲による一撃が修司を撃ちぬき、白く塗装された下部の装甲を焼く。
 それでも修司の機体は頑強であり、その攻撃にも耐え切り逆襲のK−02を上方から打ち下ろす。
 この攻撃でTWに1割、HWに3割前後のダメージを与える。
「そんな煙幕に隠れていないでもっと前に出てくるのじゃ、ゲイン!」
 美具・ザム・ツバイ(gc0857)が撃った超大型ミサイルは周辺を無差別に吹き飛ばす。
 これによって途絶えかけた煙幕が一気に霧散する。
 HWは慌てたかのように煙幕を張りなおすが、その間にアルヴァイム、無月は修司の逆側、すなわち下方から一気にBF方面へ駆け抜ける。
 修司も上方からすでにBFに向かって飛んだ後だ。
 TWたちは追撃を‥‥しない。眼前の敵をまずは落とすつもりなのだろう。


 BFも全力で逃げるがそれを追ってきた3機の性能は尋常ではない。
 いずれも速く、そしてその戦闘力は言うまでもなく高い。
 みるみるうちにBFとの距離を詰める。しかし、その巨体を射程に入れたところで3機のパイロットは不意の頭痛に襲われる。
「これは‥‥CWのジャミング? 油断ならないとは思っていましたが‥‥」
 今迄幾度となく経験したが、未だ慣れることの無いその感触に無月は言葉を漏らす。
 BF内には多数のHWが搭載されており、そのほとんどが特殊改造された機だ。
 その中の一つにはガーダー2、所謂CWと同様のジャミングを行う機が存在する。それが内部からジャミングを行っているのだろう。
「ですが、こんなものでは止められるとは思わないでいただきたいですな」
 だが、そんなのは関係ないとばかりに、修司を始め3機が攻撃を仕掛ける。
 ジャミングで狙いが多少甘くなるが相手は何しろ巨体だ。攻撃を当てるのは容易い。
 無論BFの方もただ撃たれているわけではない。搭載された対空砲で迎撃を行う。
「邪魔だな‥‥まずはあれからか」
 アルヴァイムは砲座の破壊を優先。
 ミサイルはBFからの迎撃に加えジャミングの影響を受けるため、バルカンを優先して使用。
 弾幕を張って丁寧に破壊していく。
「この状況では、やはり火力が落ちますね‥‥」
 無月の機体は非物理兵装が装備の主軸だ。ジャミング影響下ではその性能を100%発揮することは出来ない。
 しかし、アハトアハトの狙撃やプラズマライフルの弾幕などで着実にダメージを与えているかのように見える。
 特に高威力の粒子砲。一射毎に冷却が必要とはいえその威力は本当に減衰しているのかと思わせるほど。
 そして、極めつけは修司の猛攻だ。
「弾幕の隙‥‥そこですね!」
 アルヴァイムの破壊した砲台。それによってできた隙を縫ってツングースカを乱射しつつBFの至近まで飛び込む修司。
 BFの装甲は堅い。だが特殊能力を併用した彼のディアブロ、そしてそれから放たれるリニア砲はその堅さを無視するかのように装甲をえぐり飛ばす。
 戦況は圧倒的に優勢だった。だが‥‥
「‥‥ん?」
 後方にもその意識の一部を向けていたアルヴァイムは、この時ふと機器の処理能力が低下したのを感じた。
 

 連続してまかれる煙幕。ミサイルの爆風で吹き飛ばすのにも限界がある。
「やはり、先にあのHWを落とす必要があるようじゃな」
 重力弾をばらまきながらTWの攻撃に備える美具。その言葉に従ったというわけではないが、各機は先にHWを落としにかかる。
「自分に出来る範囲で‥‥お手伝いします」
 元々HWへの対応を中心に考えていたミルヒはガトリング砲を掃射。HWの注意を引き連携を断とうとする。
 それに続き兵衛がAAMを発射し追撃。すでに修司の攻撃で多大なダメージを負っているHW。その動きはやや鈍いか。
 だが、それでもただやられるHW、そして黙って見ているTWではない。
 HWは向かってくるミサイルを迎撃しつつなおも煙幕を追加。徹底的にこちらの目を潰す策か。そしてプロトン砲の狙いを付けるTW。
 HWに対する攻撃が結果的にTWをフリーにすることになったのはまずい。
 狙われたのは‥‥ミルヒ。
 電子戦機であるレイミアの機体とは距離があり、またその間にはエリアノーラの機体が壁になるように存在している。 また、兵衛の機体は堅く、大型ミサイルの装備で機動性の落ちている美具は後回しでいいという判断だろう。
 連射されたプロトン砲。その初弾はなんとか躱す。新型ゆえか機動性は高い。無論レイミア機からの支援、ヴィジョンアイによる影響も無視できないものではあるが。
 しかし、次弾は直撃。
「くっ‥‥やはり強い‥‥」
 なんとか耐えきるミルヒ。
 だが‥‥コクピット内ではアラームが鳴り響き、数か所の装甲がすでに破壊され溶解している。早くも後が無い。
「ただで落とされるわけにはいかない‥‥」
 数的不利は未だ継続中。
 この状況を打開するために、ミルヒは再度ロヴィアタルを発射。ただし、煙幕に撃ち込んだ時とは違う。特殊能力も使用した攻撃だ。
 連射されたミサイルの数は600発。それらの一部はフェザー砲により迎撃されたものの、大多数が直撃。すでに多数の攻撃を受けているHW4機は虫の息だ。
 そのまま追撃を行うためにミルヒはラージフレアを展開。回避を補助しつつ踏み込むつもりだ。
 だが、この一撃が転機となった。HWたちの動きが変わったのだ。
 引き気味に戦っていたのが急に前掛かりに、ぶつかるように突進してくる。
 同様踏み込もうとしていたミルヒはその突進を避けきれずに衝突。
 それと同時に強烈な光がHWから放たれる‥‥跡形もなく自爆した。
 至近で爆発に巻き込まれたミルヒの機体も装甲を吹き飛ばされ炎上。そのまま海へと落下していく。
「くっ‥‥落ちろ!」
 同様に兵衛に接近するHW2機。
 しかし、機動力の点で他に勝る兵衛とその愛機忠勝。レーザーライフル&キャノンで接近前に1機を叩き落とす。しかし、それでもなお2機同時に相手をするのは難しく、残り1機には突撃を許してしまう。強烈な衝撃が機体を揺らす。装甲の7割近くが持って行かれた。だが兵衛の機体は原形をとどめたままだ。装甲も並ではない。
 そして最後の1機は美具の下へ。突撃、そして爆発‥‥
「甘いわ! こんな程度でやられはせんぞ!」
 HWの体当たりを受けた美具であったが、天の特殊能力である装甲のパージを行う。
 パージされた装甲がいい具合にデコイとなって、難を逃れていた。
 ミルヒが犠牲となったものの、これで残す敵はTWのみとなった。圧倒的有利な状況。
「‥‥え、新たな反応?」
 だが、易々と敵もこちらを勝たせる気はないようだ。
 HW全滅の直後、レイミアは新たな敵機の存在を確認。その位置は‥‥
「私たちの真上、高速で接近してくる敵が‥‥っ!」
 その言葉は最後までつむがれることはなかった。
 自身が上方から攻撃されることを想定していなかったレイミアは空から降ってきた雷光‥‥カスタムティターンからの攻撃をまともに受けることになった。
 降下しつつ打たれたライフルはレイミア機の機関部を直撃。態勢を崩したところに至近からショットガンの連射。エリアノーラが迎撃する間もなく、レイミア機は墜落。
「そんな‥‥レイミアァッ!」
 レイミアを急いで救助しにいかなければ、という考えがエリアノーラの頭をよぎるが、今はそれどころではない。
 ティターンはその場に浮遊すると、今度はその銃口をエリアノーラへと向けていた。


 エリアノーラは良く戦っていた。
 機動力に差があり攻撃をまったく回避することが出来ない。だが、ブーストによる疑似慣性制御を利用して機体を制御し、コクピットを始めとした重要部位の直撃を避けている。
「やられてばかりじゃないわよ!」
 慣性制御をフルに活かして接近し、至近からショットガンでの接射を試みるティターンに対し、ブーストからのソードウィングによるカウンター。
 正面装甲を吹き飛ばされる代わりにティターンの腹部を切り裂く。
 しかし、ティターンには自己再生能力が備わっておりその傷もすぐに修復していく。以前の戦闘データと比べると確かに動きは悪いようだが、やはり1対1では分が悪い。
 このままではじり貧になるのが目に見えている。
「‥‥どうやら急ぐ必要があるか」
「同意じゃ。仕掛けるぞ兵衛殿!」
 カスタムティターンはエリアノーラとの交戦状態に入った。1対1では分が悪いのは明らかだ。すぐに援護に向かうためにも、まずは目の前の敵を落とす。
 兵衛と美具は左右からの同時攻撃を敢行。TWの狙いを分散させつつ攻撃するつもりだ。
 TWは接近させまいと命中力の高い拡散プロトン砲で美具を狙う。だが美具はさらに装甲をパージ。
「今度こそ引導を渡してやるのじゃ、ゲイン!」
 HWを狙いブーストを使用。重力弾を散布しつつマルチロックミサイルで攻撃する。
 これに逆側の兵衛からの攻撃も合わされば理想的な挟撃となる‥‥が、ここでひとつの誤算が。
 マルチロックミサイルも万能ではなく、ひとつの対象を同時にロックすることはできない。そのため、撃ったミサイルの半数以上が無秩序に撒き散らされることになり、結果TWをはさんで逆方向にいた兵衛も、味方のミサイルを回避する必要ができてしまったのだ。
 これをチャンスとばかりに、TWはミサイルに紛れプロトン砲を連射。TW自身もミサイルは多数受けるものの兵衛に対するダメージのほうが大きい。
 無論これによって美具は攻撃対象から外れていることがわかる。その間に対艦ミサイルを発射。狙いを分散させるのには成功した。そして、HWさえ落とせばTWも機動的な動きはとれない。
 それらの考えは‥‥正しい。
 だが、彼の機体も今まで以上に強化されていた。
「‥‥? 注意しろ、美具!」
 TWが慣性制御を利用して機体を傾かせ、丁度HWの下部を美具に向ける。
 そこには穴が‥‥いや、これは砲口だ。
「しまっ‥‥」
 そこから放たれた光。
 ペインブラッドのフォトニック・クラスターと呼ばれる範囲攻撃。それに似た広範囲を埋め尽くすプロトン砲が、ミサイルもろともに美具の機体をも包み込む。
 装甲をパージした天は脆く、機体は爆発を起こしながら墜落していく。
 残されたのは兵衛。そしてティターンと戦うエリアノーラ。
「な、ちょっとどこいくのよ!?」
 ここにきてティターンが急旋回。ライフルを兵衛の機体に向け撃ち込む。
 不意の攻撃に態勢を崩す兵衛はティターンとTWの攻撃にさらされ撃墜される。
 そのままTWとティターンは加速、BF方面へと向かう。
「速い‥‥追いつけない」
 エリアノーラも後を追うが、機動力が違いすぎる。その距離はどんどん離れていく。
 

 装甲にはすでに多数の穴があいており、数十秒足らずで行われた攻撃の激しさを物語っている。
「もらった!」
 放たれた無月の粒子砲が、装甲ごとBFを撃ちぬく。慣性制御装置にでも異常が出たのか、BFの高度がどんどん下がっていく。
 それを追い3機も高度を下げ始める。だがそれを妨げるように一本の光条が奔る。
 BFの防衛の為に戻ってきたのだろうTWとティターンだ。
 2機はそのまま最も装甲の薄いと思われる無月の機体へと攻撃を仕掛ける。
「くそっ‥‥この攻撃は‥‥」
 TWが砲撃で動きを制限し、その間にティターンが接近して攻撃。その動きは瞬時に読み取れた。
 だが、ジャミングの影響による操縦性の低下。そして敵の動きの精度の高さゆえに対応が出来ない。
 集中攻撃を受けた無月はそのまま撃墜されることになった。
「先にBFを落としてしまえば‥‥」
 この間に修司はツングースカとリニア砲を駆使し、降下するBFへさらなる攻勢をかける。
 アルヴァイムも同様。こちらは艦橋に狙いを定め攻撃することで自身をティターンへの囮にする策だ。
 攻防はBFが着水した後もしばらく続いた。
 だが‥‥
「あと一歩というところで‥‥」
「‥‥撤退するしかありませんか」
 四国方面から複数の機影を確認。バグア側の援軍だ。
 あと一歩のところではあった。それだけに悔いの残る結果となった。
 急速に後退する2機を、バグアは追おうとはしなかった。


 後退する修司、アルヴァイムはエリアノーラと合流した。彼女が無事なのは敵が彼女を置いてBFに向かったからというのが大きい。
 おそらく敵は援軍の来る時間がおよそ見当がついていて、あそこでBFに向かってもエリアノーラが攻撃に参加できないと計算したのだろう。
「この辺りは、ゲインの考えでしょうか‥‥」
「ですかね。それにしても‥‥」
 ――被害が大きい。
 その言葉を修司は飲み込んだ。
 味方8機中5機が撃墜。対し敵の被害はHW4機。しかし、自爆させたところを見ると、敵にとって重要な戦力ではないだろう。TWにはそれなりのダメージは与えたもののティターンはほぼ無傷。
 作戦は失敗と言うほかはない。
 敗因はやはりティターンの存在。傭兵たちの視界に入る前に、すでに出撃していたのであろうその位置を予測しきなかったのが不味かった。煙幕も今思えば正面にひきつける囮だったのかもしれない。
「とにかく、敵がもう少し離れたら救助に向かいましょう」
 撃墜された5機のパイロット。その生存は確認されている。
 それだけが、唯一の救いだった。