タイトル:【協奏】円舞曲1.真偽マスター:植田真

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 7 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/05/20 21:56

●オープニング本文



 UPC沖縄軍が基地を設置したと聞き、風祭・鈴音(gz0344)の表情を曇らせた。
「ラルフ、次の一手を」
 不意に放たれた言葉にも動じず、ラルフ・ランドルフ(gz0123)は「ハッ」と答えた。
「UPC沖縄軍に、俺の部下を紛れ込ませた。今頃は連中が流した情報の真偽を確かめるべく、出撃の準備を整えている」
 敵軍にスパイを送るなど、ラルフにとっては朝飯前だ。
「嘉手納基地に上等な餌を用意しておいた。これを3姉妹に迎撃させる」
「あなたは、何もしないの?」
 鈴音の疑問はもっともだ。しかし彼は、不遜な態度で「いいえ」と言い放つ。
「その隙を突いて、俺が直々に‥‥ソウジ・グンベを殺す」
「いいでしょう。3姉妹の手配は任せます」
 鈴音は作戦の概要だけを聞き、後はラルフに作戦の遂行を任せた。
 実は今、鈴音の愛機「フォウン・バウ」は手元にない。3姉妹の次女・山城カケルによるチューンナップが終わっていなかった。だからこそ、ラルフに全権を委任したのだ。
「どんな曲が奏でられるのかしらね、今回は」
 黒煙と鮮血の楽章は、誰も知らないところで幕を開けようとしていた。


 時を同じくして、UPC沖縄軍は嘉手納基地の攻撃準備を整えていた。目指すはバグアの前線基地。敵の数も尋常ではない。
 上層部は作戦部と連携し、進軍を開始するギリギリまで計画を練っていた。
 ここまで方針が定まらないのには、理由がある。「嘉手納基地には、風祭鈴音に関するの機密が保管されている」という情報の取り扱いで揉めていたからだ。
 不確定な情報に惑わされて、虎口に飛び込むのは絶対に避けたい。だが、士気の高い状態ではそうもいかない‥‥堂々巡りは続く。
 そこでソウジ・グンベ(gz0017)が、最低限のルールだけ定める提案をした。
「全軍撤退の合図だけ決めましょう」
 ソウジは前線での指揮を任されており、精鋭を率いる立場だ。彼は上層部の混乱を回避すべく、「これだけは譲れない」と強く出る。
 彼の提案が承認され、UPC沖縄軍はようやく作戦を実行に移すことになった。


 山城カケルの拠点であるビッグフィッシュ。その格納庫では現在出撃準備が行われていた。
「別に俺が出ても構いませんが‥‥」
「いい。私が直接出る。新しい武器のテストもしたいし‥‥」
 新しい武器。それは今ティターンの持つ巨大なライフルの事だ。
 圧倒的な長射程、後部の練翼と直結させることで可能となる高威力に加え、高倍率スコープにより最大射程でも直撃をとることが可能である。
「まぁ遠くを狙えるからこその弱点もあるけど。練翼も‥‥この状態じゃ使えないし」
 そう言って巨大なライフルを装備したティターンを見上げつつ‥‥カケルは目に見えて不機嫌だった。
 まぁ当然だろう。自分より下の人間に良いように使われて良い気がするはずもない。
(だが、そんなイライラをぶつけられる周囲の身にもなってほしいんだがなぁ‥‥)
 ヨリシロとした人間は肉体的にはそれほど強くないとはいえ、カケルはバグアだ。ちょっとしたことででそのイライラを発散しようと殴られたりしたら致命傷では済まない可能性もある。
 それは生身の戦闘力でいえばほぼ一般的強化人間であるゲイン・クロウも同じことだ。
(だから、その「この空気何とかしてください」みたいな目で見るんじゃねぇよ畜生‥‥っ!)
 その心の声は会話する2人の様子を遠巻きに見る整備員達に向けられたものだが、そんな声は当然聞こえるはずもなく。
「‥‥まだ何か用?」
「え、いや、その‥‥」
(やばい、プレッシャーがやばいっ‥‥! 考えろ俺! 何か‥‥‥‥お?)
 その時、ふとゲインの頭にアイディアが浮かんだ。
「確か‥‥カケル様が言われているのは基地の防衛『だけ』ですよね?」
「そうだけど? それが何?」
「だったら1つ、作戦ってほどのものではありませんが‥‥」
 数分後、そのアイディア‥‥ラルフにちょっとした嫌がらせが出来て、かつ基地防衛がしやすくなり、失敗してもこちらに対してデメリットの無い作戦を聞いたカケルは少しだけ機嫌が回復した。


 嘉手納基地上空。
 UPC沖縄軍のKV部隊と、嘉手納基地を防衛するバグア軍が正面から衝突しようという時、能力者たちはそのバグア軍の後背をついていた。
 目的は2つ。遠距離から観測された赤いティターン‥‥恐らくは空戦部隊の指揮官を勤める山城カケルの機体を抑えるためだ。
 また、その周辺には複数の重装甲HWガーダーの姿も確認されていた。
 情報によるとガーダーには電子戦機として改造された、ガーダー2と呼称される機体があるという。部隊前面に立て代わりとして並べるのがセオリーなはずの重装甲HWをあえて後方に置いているという事は、そういうことなのだろう。
 この撃破も、能力者たちの任務となっていた。
 だが、敵部隊を射程に捉えようという時、能力者たちは妙な通信を耳にする。
 ジャミングが発生したため通信はすぐに途絶えたが、彼らは確かに聞いていた。
『それでは、ソウジ・グンベ少佐暗殺。その支援の為出撃します』
 ‥‥と。

●参加者一覧

アルヴァイム(ga5051
28歳・♂・ER
飯島 修司(ga7951
36歳・♂・PN
美具・ザム・ツバイ(gc0857
18歳・♀・GD
カグヤ(gc4333
10歳・♀・ER
黒木 敬介(gc5024
20歳・♂・PN
アルテミス(gc6467
17歳・♂・JG
BEATRICE(gc6758
28歳・♀・ER

●リプレイ本文


「‥‥今の通信は?」
 アルヴァイム(ga5051)は機内でそう呟いた。急速に強まったジャミング。その直前に傍受されたソウジ・グンベ暗殺。これはどういうことなのか‥‥
「っ! ‥‥次から次へと小賢しいHWを作りおってからに‥‥」
 急激に強まった頭痛に顔をしかめながら 美具・ザム・ツバイ(gc0857)は苦々しく言葉を吐き出す。
(欺瞞工作などに惑わされてなるものか‥‥!)
 美具は先ほど傍受された通信をそう断じ、操縦桿を倒した。
 確かに、手放しでこの情報を信じることは出来ないだろう。
「機器の故障? ‥‥いや、本当にそうか?」
 黒木 敬介(gc5024)も同様、一瞬の通信に作為を感じ取る。だが、これが真実だったらどうなるのか‥‥そう考えないものも少なくなかっただろう。だがその誰しも、挙動は前を向いている。
 指揮官狙いは戦闘の定石であり、指揮官であるソウジ・グンベもこれぐらいのことは予想し、対策を講じているだろう。
(まぁ、駄目なら死ねばいいさ‥‥)
 それぐらいの対応が出来なければ指揮官としては失格だろう。そんな人間が死んだところで戦場の趨勢は変わらない。
 敬介はある種非情な思考を浮かべ、しかしそれはあり得ないだろうと思っていた。
 信頼、しているということなのだろう。
 そして、きっとソウジの方でもこちらを信頼してくれているはずだ。それに応えるためにも、能力者たちは敵を見る。
「堅いCWといったところですか‥‥」
 頭痛に耐えながら、BEATRICE(gc6758)はそう分析し、どう戦うかを頭の中で考える。
「凄いライフル‥‥こっちも狙撃で破壊してやりたいな」
 一方アルテミス(gc6467)は敵指揮官であるティターンの方を見据えながらそんなことを呟く。と言っても、彼の担当はその前方にいるHW群なわけだが。
 そのティターンは、接近してくる能力者たちに目もくれず長大なライフルを構え一射。その方角は戦場となっている嘉手納基地方面。あの武器で戦場を害するつもりなのだろう。
「煙幕使用するの。狙撃妨害になるけどこっちの攻撃も当たりにくくなるから注意して」
 カグヤ(gc4333)はすぐさま煙幕弾を射出。ティターン周辺の空域が煙に包まれる。それに合わせ各機がそれぞれの役割に従い行動を開始した。
 ことの真偽はともかくとして、この情報を司令部に届けるにはこのジャミングをどうにかしなければならない。その為にも、今は眼前の敵を倒すよりほかないのだ。


 カグヤ機の撃ち込んだ煙幕弾。それを嫌がるように後退するティターン。その煙を切り裂くように突進する3機。 
 指揮官機、ティターンへ向け攻撃を開始する。
 味方機の攻撃を支援するために、まずは敬介が仕掛ける。タマモのFETマニューバを起動させ突っ込む敬介の、その目的は妨害。
「沖縄は返してもらう‥‥」
(‥‥沖縄には特に思い入れもないけどさ)
 口中で呟いた言葉は、無論ジャミングで周りには聞こえることは無い。
 勿論、沖縄を守りたくて戦っている人間もいるだろう。だが、戦う理由なんて人それぞれだ。敬介の戦う理由はただ一つ。それは‥‥
「‥‥ただ、家族の為だけに!」
 言葉とともに放たれたライフル弾。しかしそれを、ティターンは容易に回避する。機体の性能差もあるだろうが、それ以上にジャミングがきつい。
 しかし役割は十分果たしている。当てる必要は無いのだ。
 その間に、下方からはすでに飯島 修司(ga7951)のディアブロがティターンを射程内に収めている。
「HW‥‥には間合いが遠いですが、まぁいいです」
 修司は小型ホーミングミサイルを下方から一射。
 ジャミングの影響故かその攻撃のすべてが当たることはなかったが数発当たれば機体に多少の影響は出る。その隙を突くように修司は上昇加速。常とは違うカラーリングを施されたディアブロは、しかし普段と変わらぬ高性能を発揮。ライフルのグリップを握っていないティターンの腕に向かい、特殊加工された翼が煌めく。しかしピンポイントを翼で狙うのは至難の業。修司の翼は回避行動を取ったティターンの横を掠めるにとどまった。
「成程。厄介極まりない‥‥」
 ティターンは回避しつつもライフルを嘉手納方面に向ける。あくまでも至近の敵を相手にするつもりはないらしい。
「撃たせないの」
 しかし、その行動は離れた位置でHWと戦闘を行うカグヤ、そのカグヤによる煙幕弾によって阻まれる。
 ティターンは先と同じように急加速し、煙幕の展開された地点から離れる。
 この間に、連携を意識したアルヴァイムは敬介とは逆方向からティターンに迫り、十字砲火の中心点にティターンを置く。
 煙幕から抜け出し、ライフルを構えたティターン。アルヴァイムはそのライフルをライフルで狙撃する。高いレベルで強化されたアルヴァイムの機体である。攻撃はティターンのライフルに直撃し、その態勢を大きく崩す。その状態で発射されたライフルは弾道をずらされあさっての方向に飛んでいった。
 さらに敬介もライフルによる攻撃。十字砲火に晒されたティターンはたまらずその場を移動し距離を取ろうとする。
 そこに合わせるのは、反転降下、再加速した修司のディアブロ。
「これならどうです!」
 ブースト、パニッシュメント・フォース、そして降下によって得られた加速力。それらが合わさった剣翼突撃は強力無比。
 しかも敬介、アルヴァイムの援護でティターンは動きを抑制されている。
 回避することもできず、ティターンは翼の一撃をその身にうけ、後部の大型翼に一文字の斬撃が刻まれた。


 ティターンと3機のKVが戦っている最中、ガーダー2とその後衛機には4機のKVが相対していた。
「カグヤも、できることをやるの」
 カグヤはジャミング収束装置を使用するためにバルカンで牽制射を行いつつ前へ。その間も常にティターンの動きを観察し、ライフルを構える様子があれば煙幕弾を撃ちこむ。
 煙幕弾の使用は最も簡単に、しかし最も効率よくティターンの行動を阻害することが出来たと言える。尤も、その影響で対ティターンと対HWの間に壁が出来てしまったことも否定はできないが‥‥
「狙撃屋さんは狙撃がお仕事♪」
 通信などは全く働かない状態ではあるが、カグヤの動きを見て僚機であるアルテミスも前に。頭痛に耐えながらもどこか陽気に、スナイパーライフルをHWへ向けて撃ち込む。カグヤ機の牽制射撃を回避するHWを狙っての攻撃だ。加えてTFハイサイトも使用した狙撃はほぼ必中であった。だが、あまりダメージは無いように見える。
「かなり‥‥質が悪い気がしますね‥‥」
 過去の戦闘データによれば、ティターンはほぼすべてのミサイルを無力化するグレネード弾を所持している。それに加えこのジャミングだ。
 BEATRICEは距離を取り、ロングボウのお家芸であるミサイル誘導システムを起動。ジャミング効果の薄い遠距離から螺旋弾頭ミサイルを発射する。
 ミサイルは、BEATRICEの予想とは裏腹にこれといって妨害されることもなくガーダーに直撃していく‥‥が、その攻撃によってガーダーは軽くその身をゆすられた程度。
「なるほど、堅いCWといったところですか‥‥」
 だが、HWたちはミサイルに対してこれといった対応行動をとってこない。ファランクスや、ティターンの持つグレネードと同様の物がないかと警戒したが、これならミサイルを使用して言っても問題は無さそうだ。
「嫌な敵は‥‥早めに片づけないと‥‥」
 BEATRICEはそう言うと、小型ホーミングミサイルを連射する。
「まとめてあの世に送ってくれるわ!」 
 美具は初撃から容赦なし。ブーストを起動させると同時にマルチロックオンミサイルを開放。ガーダー2と護衛機を纏めて攻撃。BEATRICEの物も合わせ、大量のミサイルが飛び交う中護衛機は忙しなく機動を行いそれらを回避する。
 しかし、当然すべてを回避することは出来ず、アルテミスの援護射撃も合わさりこの攻撃で2機のHWが撃墜された。
 一方ガーダー2はそれらの攻撃を受ける。厚く張られた装甲と、表出するFFによって大部分の攻撃が防がれてしまっている。
 だが、それだけで美具の攻撃は終わらない。
 美具はマルチロックミサイルを撃ち込む最中に死角に移動。高命中力を誇るイースクラを続けて撃ち込む。機動性が低く防御力が高いガーダー2に対してこの攻撃はあまり有効とは言えない。が、重要なのはその後。美具はミサイルとともに自機もガーダー2に向けて突っ込ませ、直撃するミサイルに続き剣翼を叩き込んだ。
「どうじゃ!」
 この攻撃はさすがに高防御力のガーダー2とはいえかなりの痛手になっただろう。その飛行状態を見るに撃墜寸前と言ったところか。
 だが、位置取りが悪い。他がやや後方に位置しているのに対し、美具だけが突出する形になってしまった。
 ガーダー2はフェザー砲を美具機に集中。さらに他の護衛HWも美具を攻撃。
 一瞬でダメージが超過した美具の機体は各所で爆発を起こし、沖縄の大地に墜落して行った。
「っ‥‥これはまずいかもしれないの‥‥」
 次に狙われたのはカグヤ。ジャミング収束装置の範囲は狭い。効果範囲に味方を置くには必然前に出ることになる。
 周囲からフェザー砲の集中砲火を浴び、一気に損害が増す。
(このまま落とされるわけには‥‥)
 カグヤは後退する。撃墜されてジャミング中和が行えなくなるよりはましだ。
 それを追撃しようとした護衛HWをアルテミスが至近からのショットガンで撃破。さらにこの間に品詞となっていたガーダー2をBEATICEが螺旋弾頭ミサイルで撃破している。
 この時点で、残された敵はガーダー4機とHW7機。
 対し味方はBEATRICEとアルテミスの2人。通信が効かない状態ではティターンと戦っている味方に援護を要請することも不可能。
「それでも、そう簡単にやられたりはしないよ!」
 アルテミスはライフルを連射しながら果敢に攻める。
 それはBEATRICEも同様だ。
 だが‥‥2対11の結果は火を見るより明らかだった。


 ティターンの動きは目に見えて鈍っていた。
 修司の剣翼による一撃が効いたのか、敬介やアルヴァイムによる攻撃で動きを封じられているのか、あるいはその両方か。
 どちらにせよ圧倒的に有利な状況であると言えた。
「‥‥しまった!」
 だが、やがて煙幕が晴れ、アルヴァイムが視認した先には戦っているはずの味方はすでに無く、多少損害は受けているものの、戦闘継続に問題はなさそうな11機のHWがそこにいるだけだった。
 ティターン1機に人数を割きすぎたか。
 このままでは挟撃される恐れがあった‥‥が、その前にティターンは後退を始めていた。
「あの様子なら放っておいてよさそうですかな‥‥?」
 そう呟くと修司はHWへと向かう。
 修司の動きに呼応し、アルヴァイムと敬介も反転。HWも同様に向かってくる。正面からの撃ちあいだ。
 HWは各々フェザー砲を斉射。対し修司は残ったホーミングミサイルを射出。アルヴァイムは敬介の牽制で態勢の崩れたガーダー2に電磁加速砲を撃ちこむ。
 この攻撃でガーダー2が1機と小型HWが1機撃墜されていった。が、こちらも敬介機がフェザー砲の直撃を多数受ける。このまま戦闘が行われれば撃墜の可能性が高い。
 ‥‥だが、すれ違ったHW群はそのままティターンに追従するように戦場を離れていく。
 追撃することも可能。だが‥‥
「下に落ちた味方を救助しないといけませんね‥‥」
 アルヴァイムはそう言って降下を開始。戦域からジャミング機が離れてくれれば目的は達せられる。
 となれば深追いは無用だろう。その意図を察した他の2機もその高度を下げていった。


「これ‥‥やっぱり使い勝手悪い‥‥」
 飛行ユニットにも若干の異常をきたしているらしく、フラフラと飛行するティターン。
 手に持つライフルはその性能を全く生かすことが出来なかった。遠距離用の高倍率スコープは遠くを見るには適しているが、近くを見るには倍率が高すぎる。この武器が近距離戦で使われなかった所以である。
 今回の戦闘ではその為に戦線から離れた場所で行動していたが当てが外れてしまった。
「でも、全機撤退‥‥どうして?」
 その言葉は、通信の先にいる相手。ゲイン・クロウに向けられたものだ。戦場にはまだガーダー2も数機が健在であり、HWの包囲攻撃を駆使すれば、いかに強敵とはいえ3機のKVぐらいは殲滅できるはずだ。
 だが、ゲインはそうは考えなかった。
『最大望遠での確認なので断言はできませんが‥‥残った3機のうち、1機は見覚えがあります。もう1機もエース格でしょう。負けないまでも被害は嵩みます』
 また、基地上空での空戦に関しても数機の降下を許しており、後は消耗戦になるだけだろうということだ。
 つまり、この辺りで全機引いておくのが最大限の戦果を挙げた状態であろうと、ゲインはそう言っているのだ。
「‥‥わかった。暗殺の方はどうなったかしら」
 溜息を付きつつも、カケルはとりあえずこの場は納得して、BFへと進路を取った。

「そう‥‥よかったの」
 戦線から大きく後退したことで通信が回復したカグヤは、すぐさま軍司令部に情報を伝達。暗殺計画は事実であったことがそれで判明した。
 尤も、それらは現地にいる味方の力で無事処理されたことも同様に伝えられた。
 主戦場での戦闘も集束に向かっているらしい。
 嘉手納基地攻略、その空での戦闘は概ね人類側の勝利といってもよさそうだと、カグヤは考えた。