●リプレイ本文
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「はぐれキメラが航路上に流れてくるとは‥‥宇宙は油断できないな」
「まったくだ。報酬、弾んでもらわないとな」
愛機のコクピットに乗り込まんとする白鐘剣一郎(
ga0184)の言葉に同意しつつリック・オルコット(
gc4548)も同様にコクピットへ。
ここは宇宙要塞カンパネラ。彼らは本来別の案件でここにいたのだが、緊急の出撃要請があったため、こうして各々のKVを準備しているところだった。
その目的は高速輸送艇の救援。そしてその中身とは‥‥
「輸送艇に乗っているのは、やはり新型か‥‥」
カークウッド・五月雨(
gc4556)は内心で、誰もかれも新型に走りおってからに、などと考えていた。とはいえ、助けを求める声を無視するわけにもいかない。手早く準備を進める。
「まぁ、丁度いいと言えば丁度いいか。宇宙戦の実戦テストもしたかったしな」
そう言いつつゲシュペンスト(
ga5579)はスレイヤーのコクピットへ。大気圏内での運用が主となるスレイヤー。その機が宇宙ではどのように動くのか。それは実際に確かめてみるまでは分からない。
「それにしても、こんな時に襲ってくるとはな‥‥」
「敵にはこちらの事情なんて関係ありませんからね。さて‥‥安全は確保しませんと」
敵に対し悪態を付くニーオス・コルガイ(
gc5043)に諭すように言うティームドラ(
gc4522)。二人は同じ小隊仲間であった。
こうして準備を整えた各機は、輸送艇救出の為に出撃していった。
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遡ること数十分前。
宇宙要塞カンパネラ内の一室では流通予定のニェーバ推奨装備に関して、仕様書を見つつ意見調査が行われていた。
(ふん、やはりS−02の方が価格が安いうえに使いやすいではないか‥‥)
アメリカ人だから、だろうか。ロシア製はあまり受け付けないのだろう。仕様書を見つつカークウッドはそんなことを思ったがさすがに口に出すことは無かった。
そんな中まず意見を述べたのは剣一郎。
「配備型のスペックを見せて貰ったが、興味深い機体に仕上がったな。宇宙での頼りになる護り手となることを期待している」
そう言って提案したのは弾速と貫通力を最優先とした4連ガトリングキャノン。銃器としてはやや小口径に収まることになるだろうが、その分携帯弾数を多くしたいということだ。
このような弾幕を張れる兵装に関しては他にもこのような意見があった。
「重量はあるが弾幕を張れて威力も高い銃器は重宝されるだろう」
そう言ってカークウッドが提案したのは宇宙用のGPSh−30mm重機関砲。
「俺も似た様なものだが‥‥こんな感じかな」
ニーオスが提案したのも系統は似ている。弾幕形成に適した大口径ガトリングだ。
「俺としては、弾幕を張れるのはいいんだが‥‥」
リックの提案は少し変わっている。可能ならミサイル迎撃と敵機攻撃機能が兼用できるような追加の機関砲群をということだった。
これは、片方に関してはニェーバの特殊能力で賄えるものであるが、オーブラカは弾数が限られている。そちらに弾数を割かないようにするための配慮だろうか。
「後は、対艦攻撃用のミサイルか‥‥またはロケットランチャーかな。人型で使えるものがいい」
「そうですね。私としてもその意見には賛成です。撃ちっぱなしで構いませんので、そういたものがあればいいのではと思います」
続けて提案したリックに、ティームドラも賛同の意を示した。
「一番欲しいのは高性能な戦銃剣かな」
話は射撃武器から近接よりの武器に関する話に移る。
ゲシュペンストが提案するのは銃剣。カプロイア社で例のある銃としても剣としても使える武器のことだ。
「もしくは銃と槍が一体化したガンランスとか。敵に突き刺してゼロ距離射撃とかロマンだよな」
そう話すゲシュペンスト。確かに使い方としては面白いだろう。イメージとしてはロンゴミニアトのような爆槍の亜種に当たるか。
また、この武器には一本で射撃と格闘両方こなせるという利点がある。兵装の節約にはかなり役に立つだろう。
同系統の武器としては、リックが格闘用のクローの付いたシールドを挙げた。こちらの方が、防御力の高いニェーバにはあっているかもしれないとイヴァンなどは考えた。
続けてゲシュペンストが挙げたのは、先の案よりはかなり突飛な案。
「次に、蹴りで攻撃する高威力兵装だな」
ゲシュペンスト曰く、両手がふさがってても使える近接攻撃手段はあれば便利かな、ということだ。尤も、他になんらかの理由がありそうではあるが。
だが、これは結果として却下されることになる。
「脚で攻撃する武器ですか。コーティングぐらいなら可能かもしれませんが高威力となると‥‥」
技術的には不可能ではないだろうが、多少の研究が必要になるとのことだった。また、ニェーバは元々機動力が高い機体ではないため、蹴りにおける間合い取りが多少難しいだろうというのも却下の一因となっている。
「正直な話、これに関しては他社で提案していただいた方がいいかもしれませんね」
すでに脚甲「シュリガーラ」などの開発物が存在するMSIや、固定兵装の一つとして練脚が提案されたこともあった英国等の方が、これに関しては採用の芽があるだろうとレイラは続けた。
「アクセサリに関してだがな‥‥予備弾倉というのはどうだ」
武器から、今度はアクセサリに意見が移る。カークウッドが提案したのは多少重めでもいいから、武装の弾を補充する予備弾倉をということだった。
だが、これに関しては却下。有用ではあると思われるが宇宙戦は地上戦と比べ短期で戦闘が終了する場合が多い。弾薬補充の必要性があまり高くないのが理由として挙げられた。
「後はそうだな‥‥欠点を補う物より長所を伸ばす物の方がいいんじゃないか」
ゲシュペンストは燃料タンク付の増加装甲を提案。これは有用だろうと思われた。
「後は、開発した装備をショップに流通させる事に力を入れて欲しい」
どれだけ強力な装備を作ってもそれが広く普及し、より多くの手に渡らなければ無いも同然。
「それじゃ作る意味も半減だからな」
ゲシュペンストはそう締めた。
その言葉は至極もっともであり、レイラ、イヴァンともできればそうしたいと考えた。が、2人の持つ権限とは装備の開発までであり、それらがどう流通するかまで口出しすることは難しい。後は上の判断に任せるよりほかないのだ。
「それでは、他に何か意見は‥‥え?」
そんな時だった緊急の出撃要請がかかったのは。
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そして時は今。カンパネラ周辺宙域。
「究極ゥゥゥゥゥッ!」
ゲシュペンストのスレイヤーが変形、と同時に脚部がドリル状に変化。
「ゲェェシュペンストォォォォォッッ! キィィィィィィィッック!!!!」
螺旋の一撃がキメラに食いつき、穿ち、食い破った。空戦最強の呼び声高いスレイヤー。その能力は宇宙であっても衰えは無い。
剣一郎とゲシュペンストの2人は地上機故に常にブーストの使用が必要になってくる。その速度を活かし、先行して吶喊する。
先制攻撃を決めたゲシュペンストに続き、剣一郎はバルカンで牽制しつつ変形し、最伸状態にした機棍にて、キメラを貫く。
本来は旧式となっているシュテルンであるにも関わらずその破壊力は‥‥異常。
身体を貫いた棍により逃げることの出来ないキメラを、至近から機拳での一撃で、まさしく粉砕した。
「こちらでキメラに対応する。この間にカンパネラへ。急いでくれ」
『了解! すまないが、後は頼む!』
その言葉に従い、急ぎその場を離れようとする輸送艇。だが、それを許さないとキメラが砲撃形態をとる。
「輸送艇には近づけさせませんよ」
『おうよ! くたばっちまいな!!』
そこに追いついてきたラスヴィエート、ティームドラと二―オスがミサイルポッドを連続発射。
砲撃形態に移行中のキメラは隙だらけだ。ミサイル弾幕により次々と被弾していく。
「よし、仕掛けるぞ」
このミサイル攻撃による隙を見計らって、カークウッドが接近。アグレッシブファングを起動させてレーザーライフルを連射。
高威力のレーザーが直撃し、キメラを一瞬で焼き尽くした。
だが、キメラも黙っているわけではない。別のキメラがすぐさま反撃の砲撃を放つ。
その攻撃をカークウッドは回避。元々一撃離脱を念頭に置いていたが故に、距離が離れたのが良かった。
カークウッドがキメラから距離を取った際、キメラと輸送艇の間に立ち塞がるように位置したリック。残った全キメラがその射程に収まっている。そして‥‥味方もその意図を察しすぐに距離を取る。
「‥‥さぁ、デビュー戦。華々しく飾るとしようか」
リックの乗るニェーバ、その内蔵機関砲群のすべてが開放される。同時に、発射される3000発もの弾丸。
キメラたちは一機のKVから発射された無数の弾丸を回避することも出来ず被弾していく。
「敵の動きが鈍ったな。畳み掛けるチャンスだ!」
ライフルを猛射するゲシュペンストの言う通り。ニェーバの特殊能力である飽和攻撃はただ攻撃するだけではない。その圧倒的弾幕により、標的となったものの動きを一気に鈍らせることが可能だ。
砲撃形態をとっていたことでただでさえ敵決めらの動きは鈍っていたところにこれだ。もはや回避もままならない。
「死角に敵影も無し‥‥これまでだな」
カークウッドのレーザーが撃ち抜き
「逃がしはしませんよ」
ティームドラのガトリング砲が蜂の巣にし
「残りも全弾もらっときな!」
ニーオスが残ったミサイルを全弾打ち込む。
「これで‥‥最後だ!」
一匹だけ、その嵐のような攻撃から抜け出たキメラ。それも剣一郎のシュテルンが放ったライフル弾によって撃破。キメラたちは為すすべなく全滅することとなった。
撃破後、能力者たちはカンパネラ方面に向かっていた輸送艇に合流。
「荷物は無事か?」
『大丈夫だ。援護感謝する! さすがはラストホープの傭兵だな!』
ニーオスの質問に返された通信。この言葉通り輸送艇には傷一つない。これも能力者たちの素早い動きがあったればこそだろう。
こうして、輸送艇とそれに積まれたニェーバ4機は無事、カンパネラに送り届けられたのだった。