タイトル:協奏への追撃戦マスター:植田真

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/12/08 23:01

●オープニング本文



「‥‥ビッグフィッシュだと?」
 グリーンランド某所の前線基地。
 ここに海岸沿いを偵察していた部隊から連絡が入った。それによると3機のビッグフィッシュが停泊しており、そこに大量の兵員や物資が行き来しているというのだ。
「補給か‥‥にしては規模が大げさな気もするな‥‥あるいはグリーンランドから撤退する気か?」
 なんにせよ、放っておくわけにもいかないだろう。基地司令官はKVに出撃準備をさせる。
 しかし、その作業は基地内に響くアラート音で中断されることになる。
「狼の集団が基地に接近してきます、例のガウルとか名乗るバグアと思われます!」
「何!? まずいな、こんな時に‥‥」
 この基地は先日同じ狼キメラの集団に襲撃を受けており、復旧作業に追われている。その為、兵員そのものは以前と比べ多くなっているのだが、その中には非戦闘員が多く含まれている。
 しかし、だからと言ってビッグフィッシュを逃すわけにもいかない。
(現在の戦闘員数自体はこの間の数倍は確保できている‥‥しかし非戦闘員もその分増えて‥‥ビッグフィッシュとこのタイミングでの攻撃の関係は‥‥)
 一瞬の逡巡の後、司令官は決断を下した。
「‥‥仕方ない、傭兵のKVだけでも出せ! ビッグフィッシュとそれに追随する戦力を可能な限り損害を与えてくれ!」
 基地を防衛しつつ、ビッグフィッシュを取り逃がさない、これがぎりぎりのバランスだと、司令官は考えた。


 時間は少し遡り、グリーンランド北部海岸沿い。
 ゲイン・クロウは切り立った崖の上から一人、氷塊の揺蕩う極北の海を眺めていた。
 この地で戦ってもう何年になるだろうか。始めは人類側の軍人として。そして今はバグアの強化人間として。どちらにしても。あまり実りのない戦場だった。
 だが、この1か月程度。ガウルの指揮下に入った短い期間だけは違う。
 その指揮能力は高く、指示は明確かつ適切。
 先日実行した前線基地への攻撃も見事に成功をおさめ基地に十分な打撃を与えた。その後の小規模戦闘においても一定の戦果を上げた。
 それだけではない。良いところは褒め、直すべきところは指摘する妥当な評価。意見も良く聞いてくれた。もちろん自身の戦闘力も高い。
 最初こそ「ケダモノ上司」と心の中で罵っていたものの、今ではそんな気持ちはさらさらない。
 あれ程優秀な指揮官に出会えたことを幸運に思うほどだ。
 
 ‥‥だからこそ、こうも早くガウルの指揮下から離れなければいけないのが残念だった。
(もうそろそろか‥‥)
 手元の時計を見る。もうそろそろ迎えのビッグフィッシュがやってくるはずだ。
 ゲインが言い渡されたガウルからの最後の命令は
『部隊を率いてグリーンランドから撤退しろ』
 とのことだった。
 ガウル自身は、その撤退を支援するために例の狼たちを率いて再度基地攻撃を仕掛ける。 
 もちろん、ゲインも残るといった。だが、ガウルは狼たちだけの方が潜伏するにも有効だといった。
『それに、私の体はこの地に残れ、と‥‥そう言ってる気がするのだ』
 それはガウルのヨリシロとなった狼の記憶がそうさせるのだが、ゲインには知る由もない。
「‥‥しかし、どうやって書いたんだろうな」
 懐から一通の封筒を取り出すゲイン。ガウルと別れる際持たされたものだ。これから向かう撤退先は日本、沖縄。そこには多少見知った指揮官がおり、そいつに宛てた手紙だとガウルは言っていた。
 日本語で書かれた宛名の主は「山城カケル」
 沖縄を拠点とする、いわゆる3姉妹の次女である。
『この手紙を渡せば、多少融通は聞かせてくれるはずだ。貴様の実力ならあちらでも無難にやっていけるだろう』
 ふと、氷塊が割れる音が辺りに響く。ビッグフィッシュが到着したのだろう。
 ゲインは封筒をしまいつつ崖下まで走り出した。

『命令は、確かに受領いたしました。ただ俺としては、もう一度あなたに指揮していただけたらと願う次第です』
『‥‥そうだな。それはお互い生きていたらとしておこう』

 この戦況だ。もう会うことはないであろう最良の指揮官の期待に応える為にも、なんとか部隊を撤退させたい。
 そう考えるゲインであった。

●参加者一覧

アルヴァイム(ga5051
28歳・♂・ER
リヴァル・クロウ(gb2337
26歳・♂・GD
澄野・絣(gb3855
20歳・♀・JG
アンジェラ・D.S.(gb3967
39歳・♀・JG
テト・シュタイナー(gb5138
18歳・♀・ER
不破 霞(gb8820
20歳・♀・PN
D・D(gc0959
24歳・♀・JG
御鑑 藍(gc1485
20歳・♀・PN

●リプレイ本文


「敵機発見、水上すれすれを飛んでいるようですね」
 不破 霞(gb8820)が仲間に伝達する。
 高空から目標とするポイントに侵入した能力者たち。
 眼下にとらえた敵数は5。MWが4機に中型HWに乗ったTWが1機。そしてその先にはおそらく、目標としているBFも存在しているだろう。
「基地に向かってきたのはやはり陽動ですか‥‥戦力的には厳しいかもしれませんね」
「特に、あのタートルワーム、ただでは抜かせてくれないだろう」
 リヴァル・クロウ(gb2337)は御鑑 藍(gc1485)の言葉に同意しつつ眼下の敵を眺めた。
「それでは、各機手筈通りに」
 アルヴァイム(ga5051)の指示で、各機はそれぞれの役割に沿って行動を開始した。

 対空班、すなわち水上のMWおよびTWに対応するのは澄野・絣(gb3855)、テト・シュタイナー(gb5138)、霞、藍の4名。とはいえ高空からでは狙いも付けずらい。4機は低空まで降下を開始しする。
 この際他より機動性が高いテト機は若干早いタイミングで低空域に入る。その為か、TWから狙撃される。放たれた集束プロトン砲を、一射目はかわすものの、二射目が直撃。一気に装甲が3割削られる。
「くっ、やってくれたな。お返しだ!」
 先制された能力者だが、無論このまま黙っておく必要はない。
 直後、降りてきた各機からミサイルが放出される。
「さて、残らず受け取りなさい!」
 絣はGP−7ミサイルポッドを全弾使用。さらにEBシステムの併用により命中精度、非物理火力とも半端ではない。
 彼女の愛機、ディアマントシュタオプ「冰輪媛」はこの戦いが初陣だ。頭からつまずくわけにはいかない。始めから全開でいく。
「こちらも、合わせて発射します」
 藍が発射するのはK−02小型ホーミングミサイル。言わずと知れたマルチロックオン兵装だ。
 テト、そして霞は空対空ミサイルを手近なMWに。
 この間、高空を左右に分かれて移動する4機。対艦班であるアンジェラ・D.S.(gb3967)とD・D(gc0959)。加えてそれらの直衛としてついているアルヴァイム、リヴァルだ。
 右翼を行くリヴァルはこのミサイル攻撃に乗じる形で、可能な限り高度を落としてK−02を発射する。
 敵から見て正面と左方上空から放たれたミサイル。その反撃は妥当だが、総数は尋常ではない。
 空を覆い尽くすミサイル、ミサイル、ミサイル。
 目標5機に対し、一度に撃ち込まれたその弾数は700発を超え、もはや敵が哀れになるレベルだ。
 マンタワームは慌てふためき水中に潜り込もうとするが、間に合わずに次々と被弾。
 対しタートルワームは回避行動を取りつつも上方に拡散プロトン砲を発射。しかし、数が圧倒的すぎる。迎撃しきれず、回避しきれず、被弾が嵩んでいく。
 さらに、このミサイル迎撃の際意識が左方に寄ったことで、TWは右方への注意が甘くなる。
 この隙を逃さない。味方左翼、アルヴァイムが電磁加速砲をによる砲撃を行う。高速、高威力の砲弾がタートルワームに突き刺さり、その態勢を崩す。
「こっちは任せな。その代わり、デカブツは頼んだぜ!」
 空対空ミサイルを撃ち込みながらテトが言う。
「了解。空戦ほど派手ではないが、実利を獲らせて貰うか‥‥」
 それに従い、D・Dはじめ高空の4機はそのままTW後方、BF迎撃の為飛ぶ。
 対しTWとMWに対応する4機は、それぞれ低空での戦闘に入っていた。


 
「くそっ、しこたま撃ち込みやがって! 何で俺の相手は毎度毎度化け物ばっかりなんだ‥‥」
 ミサイルと砲弾によって崩された態勢を立て直しつつ悪態を付くゲイン。お返しをしてやろうとTWのプロトン砲の照準を、砲撃してきた機体に‥‥と、ここでその機体、つまりアルヴァイムの字と一緒に飛んでいた機体が目に入った。
「あの機体は、確か‥‥」




 対空班の4機は低空での戦闘に入る。
 その相手となるのはMWとTW‥‥の、はずだったが、MWは水中に逃げ込んでから浮上してこない。空中からの索敵は困難だ。
「マンタは水から顔を出さない、か‥‥まぁいい。ならば本命に仕掛けるか」
 霞は呟く。MWはいないが、TWは未だ水上に存在している。ならばこちらを落とせばいい。ただそれだけのこと。
「了解、プロトン砲には注意してください」
 藍が注意を促す中、それぞれが自身の間合いに入り攻撃を仕掛ける。
「そう簡単に逃がさないわよ!」
 絣機、冰輪媛はHBフォルムを起動。高速移動と旋回性を重視した形態を取り、これにブーストを加えて急加速。ミサイルとレーザーキャノンで牽制を仕掛けつつ間合いを一気に詰めていく。
 これを支援するのは藍。2種類のライフルを射程に応じて使い分けながらTWを攻撃する。この際もTWの射線に注意を払うことは忘れない。
「‥‥アプローチを無下にはしてくれるなよ?」
 霞は絣の逆方向から攻撃。プラズマライフルの射程に標的を捉え連射し、装甲を削る。
 テト機は全体を見渡せる上空から俯瞰する位置で、TWを捕捉。攻撃する味方機をバルカンで援護する。
 こうして4人は四方八方に飛び回りTWを翻弄しつつ攻撃を続ける。が、TWもやられてばかりというわけではない。拡散プロトン砲の命中力は絶大であり、致命傷は負わないまでも、各機は確実に損害を加えられていく。
「埒が明かないな‥‥よし、ここらで仕掛けるぜ! 準備はいいな!」
「了解、こちらに注意を引き付けます!」
 テトはそう合図をすると煙幕を展開。TWは煙幕ごとテトを撃ちぬこうとプロトン砲を向ける。
 しかし、それを制するために空中から藍がライフルで援護。TWの上部を狙った攻撃で注意を引き付ける。
 これに合わせるように、絣はHBフォルムによる急激な加速を利用し敵機の死角に回り込み、HBシステムで火力を上げたプラズマライフルを連射。
「私の全力よ。受けきれるかしらね?」
 強固なFFに守られたTWだが、さすがにこうも連続した攻撃を受けると装甲にもダメージがいく。それを嫌うかのように拡散プロトン砲を発射。
 絣、藍両者に数発が命中し、機体が揺らぐ。が、これで隙は十分作れたはずだ。
「そーら、ノロマな亀に戻してやんよ!」
「今の私と、黒椿の全開‥‥受けられるものなら受けてみるがいいっ!!」
 上方からは霞。スレイヤーの本領である空中変形を利用。全能力を使用してTWの砲身を狙って白桜舞を振り下ろす。
 下方からはテト。同様に空中変形を行うとエアロサーカスを使用。霞とタイミングを合わせ煙幕から飛び出し、HW下をすり抜けるようにラーヴァナをHWに向かって振り上げる。
 狙いも、タイミングも、すべてが整った一撃、いや、二撃。その攻撃がTWのFFを切り裂き、その刃が装甲に喰らい付き、食いちぎる。。
 TWが揺らぐ。特に下部からの攻撃は効果があったのか、斬撃を受けた箇所がスパークを起こしている。大きなダメージを与えることが出来たようだ‥‥が、この時、2人は一つ大事な要素を見落としていた。
 それは‥‥ここが海上であるということ。
「え?」
 下方から攻撃に入ったテト機。そのモニター前面が黒い影で覆われた、と思った瞬間、強い衝撃が加えられる。
 下部のHWがこちらの攻撃によるダメージで小爆発を起こした衝撃、だけではない。HW自体が直接ぶつかってきたのだ。スレイヤーは大型の機体ではあるが、攻撃直後であったこともありその衝撃に耐えきれず機体が落ちる。完全な空であったら、それで終わり。態勢を崩されたにとどまっていただろう。だが‥‥
「テト!」
 霞が声を上げた時には、テト機は水の中に半身を突っ込んでいた。TWはそのままテト機を押し付けるように、諸共に水中へと沈む。
 そして一瞬の後、水中で大きな爆発が起き、水しぶきが舞い上がった。
「テトさんの、機体反応が消失‥‥」
 水中では通常KVは攻撃はおろか、防御も回避も、すべての行動に制限を受ける。そんな状態でTWの至近にいたことになるのだ。恐らくはプロトン砲の直撃を数発受けて撃破されたのだろう。
 TWは‥‥上がってこない。これ以上こちらと交戦する必要が無いと判断したのか、あるいはこちらの意図に気づき水中部隊を叩きに行ったのか‥‥
「私は爆雷でビッグフィッシュに仕掛けます。2人はテトさんを!」
 そう言うと藍は対艦班の向かった方角へシリウスを飛ばす。
 対水中戦装備を持たない霞と絣は、敵が空に敵が出てこない以上攻撃手段がない。その言葉に従い、テトの救助に当たることにした。


 一方、高空から移動した4機は低空域に降下。D・Dは先にソナーを投下する。これによりBFの位置と速度、そして進行方向を把握した後、対艦班のアンジェラとD・Dは直衛が周囲を警戒する中着水する。この際、念には念をいれD・Dは煙幕を展開する。
「ソナー感度良好‥‥ん?」
 潜航を開始する際、D・Dはソナーの反応を確認するが、どうも様子がおかしい。
「どうしたの?」
「敵が増えている‥‥全部で7機確認」
 アンジェラの問いに答えるD・D。情報ではBFの数は3であり、先程確認できていたのも3。つまり、敵が新たに4機増えている。増援かとも思われたが、その正体はすぐにはっきりした。
「あれは‥‥マンタワームね‥‥」
 BFとともに接近してきていたのはMW。
 高空を移動中その姿を確認したときはTWとともにミサイル攻撃を受けていたはずのこれらが、なぜかBFの護衛についていたのだ。
 実は、これはゲインの指示。能力者たちは知る由もなかったが、彼は高空から砲撃を受け空を見た際、その視界にパピルサグを捉えていた。パピルサグが水中戦闘が可能な機体であることを以前の戦闘で思い知らされていたゲインは、能力者たちの意図を推測し、MWを動かしていたのだ。
「くっ、こうなることは想定外だな‥‥」
 とはいえ、やることに変わりはない。少しでも敵の足を止めることだ。
 アンジェラはブースト。さらにアサルトフォーミュラーを起動してセドナを発射。
「とにかく、目前の敵を攻撃するとしましょう」
 加えてD・Dはエキドナを連射。艦前方を狙って、その速度を緩めることが目的だ。
 護衛についているMWは、その攻撃に即座に反応。レーザーで弾幕を張って迎撃。だが、その精度は甘く、高速のセドナは迎撃されずそのままBFに直撃。エキドナも多弾頭ゆえにすべてが迎撃されることはなく、半数以上がBFに命中する。
 それでも、BFは前進を止めない。愚直に突破を試みるようだ。
 アンジェラはセドナをもう一発撃ちこむと、ブーストを活かして接近。
 そうはさせないと間に割って入ってきたMWを高振動する爪で切り裂く。やはりミサイルによるダメージが色濃いか、その一撃でMWは爆発する。
「強行突破か。そうはいかない」
 D・Dはアサルトフォーミュラーを起動、セドナを発射。火力で抑え込む算段だ。
 高威力の魚雷が正面に命中し、BFの巨体がわずかに揺らぐ。
 さらにセドナを撃ち込むことで畳み掛けようとするが、MWが魚雷を撃ちD・Dを牽制。回避性能が皆無なD・D機は魚雷を連続で受け、態勢を崩してしまう。
 この間にBFは2機を突破していく。
「ここから先は通行止めだ。撃沈されてもらおう」
 しかし、その先には対艦班よりさらに先に着陸し潜航していたリヴァル、アルヴァイムの2機が待ち構えている。
 対艦班と直衛班による挟撃態勢が整った。尤も、対艦班の方にはMW2機が接近してきていたため容易には攻撃できないが。
 BF正面の直衛班、アルヴァイムはライフルでBF護衛の為に残っていたMWを攻撃、数発の射撃でMWは爆発する。
 この間にリヴァルはBFに対しガウスガンを連射。さらに、距離が詰まってきたらところにBFの正面からドライバーに武装を切り替え吶喊。ガウスガンで脆くなっていた装甲部分に穴を開け、そのまま艦の側面を削りながら抜けていく。
 かなりのダメージをBFの船体に与えられたと思われるが、まだBFは動いている。
 ここで、後方でも2つの爆発が発生。対艦班の2人がMWを撃破したところだ。
 この時点でBFの防御戦力は0。対し味方は4機健在。位置取りは、アルヴァイム機が未だBF正面。他3機がBFのすぐ後ろといった状況。
 もうすぐ海底深度も深い場所にさしかかる。が、攻撃を集中させれば撃破は十分可能だ。
「よし、このまま押し切r「3人とも、後ろです!」
「‥‥! ソナーに感? しまった!」
 アルヴァイムの警告と、D・Dがソナー反応に気づくのはほぼ同時で、そのどちらも遅かった。
 後方から放たれた集束プロトン砲が、MWとの戦闘で損傷のあったD・D、アンジェラ両機を2射で貫く。
 両機は、ほぼ同時に爆発した。


 アルヴァイム、リヴァルとも、その機体性能は異常と言ってもいいレベルだ。
 だが、こと水中においてはその機動性は活かされず、大きなハンデとしてのしかかる。
 BFの後方に位置していたリヴァルは前進するBFを追い切れず、ガウスガンの射程まで離れられたらそれ以上のことはできない。
 TWはそんなリヴァル機を完全に無視し、アルヴァイム機に対応する。と言っても、最初にプロトン砲を撃って以降は魚雷の迎撃とライフル射撃の妨害に終始していたが。
 そうこうしている間にアルヴァイム機の射程からもBFは離れていく。
 BFは3機とも残存。そう、敵も味方も思っていた。ところが‥‥
「深度、座標確認‥‥投下します」
 BF直上の空から、一つの爆雷が静かに投下された。藍だ。
 TWはアルヴァイムの相手に手一杯でそれに気づかない。
 爆雷は最も損傷の激しいBFに直撃。分裂爆発する爆雷に巻き込まれ、BFの装甲が爆ぜ、やがて爆発した。
 残ったBF2機は、TWに守られながら海底深くに潜行していく。能力者たちにはこれ以上攻撃手段はない。 

(もう、爆雷は落とされない、か‥‥危なかった)
 上部からの攻撃を一応警戒しながら、ゲインはTWのコクピットで溜息をついた。
 爆雷と水中部隊、その両方にもっと連携を取られていたらこちらの手が足りずさらに被害を増やされていただろう。

 やがて、水深200m地点を超えたBFからは煙幕が発射され、そこで反応はロストした。
 戦果はMW4機撃墜、BF1機撃墜。対し味方の損害は3機大破。
 少ない戦力ながらも十分な戦果を上げられたとの評価を受けることになった。