タイトル:玄関口の招かれざる客マスター:植田真

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/11/16 06:52

●オープニング本文



 無能な指揮官とはどこにでもいるものだ。
 例えば、明らかに戦力不足なのに補給を回さない。
 補給を頼んでも戦略的に価値がないという理由で後回しにされる。それならいっそ撤退させればいいものをそうしない。さらにこちらが撤退を進言したら逆に攻撃を命令する。
 ちょうど、俺の上司に当たる人物がそうだった。
 ‥‥だった、と過去形で語るのは理由がある。俺が命令通り攻撃を仕掛け、何とか戦果らしきものを上げて後方まで撤退したら、なんと上司が更迭されていたのだ。
 ちなみに更迭された後上司がどうなったのかは俺は知らない。まぁ戦線が宇宙に広がっているらしいし、小型衛星の指揮官にでも回されたのだろう。
 さて、上司が更迭されたということは俺の上司は新しい人物に変わったということでもある。俺はこれからその新しい上司に会わなければいけない。撤退して早々呼び出されたのだ。
「ゲイン・クロウ、ただ今参上しました」
「来たか、入れ」
 指示に従いドアを開ける。その先には、ただデスクの上に横たわる一匹の狼がいるのみだった。
「よく来た。座るがいい」
 あー‥‥やっぱりあれが新しい上司か。残党部隊の指揮官にわざわざなるなんてよっぽどの変人なのだろうと思っていたのだが‥‥まさか人ですらないとは。
 まったく‥‥とことんついてない。
 そう思いながら俺は、促されるままソファに腰を下ろす。
「実は、一つ考えていることがあってな。貴様の意見を聞かせてもらいたい」
 そういうと、このケダモノ上司は考えていること、これから行う作戦について俺に説明を始めた。


 グリーンランド前線基地。
 大規模作戦の影響もあり、その戦力の幾分かをアメリカ方面に回している。
 そこを狙っての襲撃。全く持って厭らしいタイミングだ。
 だが、だからと言って戦力が無いのかと言えば、そんなことあるはずがない。
「戦闘状況はどうだ?」
「おおむねこちらが優勢です」
 基地からは10数機のKVを出撃させ、基地から1km程に防衛線を張らせた。
 あの程度のHW部隊、迎撃するのは容易い。敵集団の中に一機、異様に戦闘力の高いタートルワームがいるが、いざとなれば傭兵に出てもらうこともできる。
(‥‥負けることはあり得ない)
 そう考えていた矢先のことだった。
「レーダーに反応! 高速移動する物体が複数確認されました!」
「何? くそ、このタイミングを狙ってか‥‥」
 いやらしいタイミングだ。KV戦の最中で能力者が出払っていて人手が足りない。かといってKVを何機か戻すというわけにもいかない。自然こちらの迎撃手段も限られてしまう。
「とにかく迎撃だ、能力者は防衛に回ってくれ! 格納庫で待機している傭兵にも出てもらう!」
 KV戦の方が付けばそちらの連中も援護できるようになるはずだ。
 確認された敵はそれなりの数をそろえている。対してこちらの数は少ないが、ラストホープの傭兵がいるし、それで何とか‥‥
「‥‥私も、迎撃に出ますか?」
 そう申し出たのは青髪の女性。補助要員として一時的にこの場に赴任していたオペレーターだ。
「そういえば、君も能力者だったか‥‥すまんが、よろしく頼む」
 頭数が多いに越したことはない。今は猫の手でも借りたいところだ。
 「了解しました」と短く告げると、そのオペレーター。シルヴィア・久遠は立ち上がり迎撃に向かった。
 

「向こうは上手く接近できたみたいだな」
 これで作戦の一部は成功だ。後は適度にKV隊を引き付けて基地の方に向かわせなければそれでいい。
 俺はプロトン砲を放ちつつ、ケダモノ上司の話を思い出す。

『我々も他の部隊同様グリーンランドから撤退する』
『そもそも、すでに戦況が決している地にここまで居座り続けていたことがありえないことだ』
『基地への破壊工作を行えば、基地機能を回復させるまでにそれなりの時間が必要になるだろう。その間に他の残党部隊との連絡もつけて、まとめてグリーンランドを離れる』
『ついでに、以前キメラプラントで製造したキメラの能力をテストしたいと思っている』
『そこで、HW部隊の指揮を貴様に一任する。』

 俺は今まで本当に上司に恵まれない、と。そう思っていた。だが‥‥
「テストも兼ねるからといっても‥‥まさか指揮官自ら出撃するとはな」
 指揮官が自分から進んで危険な戦場に首を突っ込む。普通はあまりよろしくないのだろう。
 だが俺はその様子を見て、少なくとも前任者の時よりも数倍やり甲斐のある指揮官だと、そう考えを改めた。

●参加者一覧

時任 絃也(ga0983
27歳・♂・FC
新居・やすかず(ga1891
19歳・♂・JG
旭(ga6764
26歳・♂・AA
ブレイズ・S・イーグル(ga7498
27歳・♂・AA
美空(gb1906
13歳・♀・HD
各務・翔(gb2025
18歳・♂・DG
ルノア・アラバスター(gb5133
14歳・♀・JG
エレナ・ミッシェル(gc7490
12歳・♀・JG

●リプレイ本文


「安心しろ、キメラどもは任せておけ」
 各務・翔(gb2025)が兵に安心感を与えるために自信たっぷりに告げる。
「お前さんらは非能力者の護衛を勤めてくれ、可能なら同じようにロケット弾等の対処をしてくれ、
もし抜けた敵がそっちに向ったら頼む」
「これ、敵が、突破、した、時の為に。宜し、ければ、お預け、します‥‥」
 それに続くように時任 絃也(ga0983)ルノア・アラバスター(gb5133)が軽く指示を出す。それを聞いたシルヴィアは、ルノアから閃光手榴弾を受け取りつつ「了解しました」と短く告げた。
「おいでなすったか‥‥大概な数だな」
 ブレイズ・S・イーグル(ga7498)は煙草を銜えつつ呟いた。その様子は今までと何ら変わりはない。はたからみたら、誰も気づかないだろう。彼の命に『リミット』が課せられている、なんてことは。
「行けるよね?」
 その横に立つ旭(ga6764)。彼はブレイズの友人。体が弱っていることなど分かっている。
「ああ‥‥問題ない」
「‥‥オーケー」
 だが、ブレイズはいけると言う。ならそれを信頼するのみ。旭は静かに剣を構えなおす。
 もうすぐ敵はこちらを射程内に入れるだろう。


 狼たちは前進しつつロケット弾を斉射。
 移動しながらのロケット弾は絃也が出していた指示に従った能力者たちの働きもあり迎撃される。
同時に、後衛についていた能力者が反撃する。
「ガウル‥‥はずいぶん後方ですね。まずは正面の敵からいきましょう」
 戦力が手薄な時期を狙い、陽動を行った上で一点突破を図る‥‥どうやら力押しだけの指揮官ではないようだ。角のついた個体をその視界に捉えながら新居・やすかず(ga1891)はそう考えた。だが、まずは自分の仕事をこなす。やすかずは先頭の狼を銃撃。制圧射撃を行うにはまだ間合いが遠い。通常の射撃でその動きを制限する。
「ふふふ、狼さんたちは美空とタンゴを踊ってほしいのでありますよ」
 美空(gb1906)はガトリング砲で敵の侵攻ルート上の地面へと猛射。攻撃に易々と当たるほど狼たちの動きは悪くないが、これにより敵の前進をある程度阻止することが出来ている。
「こういう時に役立つのは〜‥‥じゃじゃーん! ましんがーん!」
 そう言うと、エレナ・ミッシェル(gc7490)は大型のマシンガンを構える。
(拠点防衛‥‥なんてどっかのゲームでありそう)
 そう思いつつ、狙いはロケットランチャーを狙った支援型。近づかれる前に数を減らしたい。
 ――発射!
 大量の弾丸が瞬時に飛び出し狼に向かう。攻撃は見事に命中するかに思われた。
 しかし、この攻撃を通常の狼が庇った。
「ふむ、機動型の前衛が支援型を防衛‥‥あれはカバー要員ということでありますね」
 ツーマンセルな狼という組み合わせに警戒感を抱いていた美空。先の動きでその意図は読み取れた。ならばと、美空も支援型を狙い火力を集中させていく。
 この間に前衛部隊は迅雷、瞬天速などを利用して接近を開始。
 絃也は迅雷を使用しつつ武器をガトリング砲に持ち替える。そして、射程内に入ると同時に制圧射撃。
「その足、止めさせてもらう」
 狼たちの動きは制限される。敵の動きが鈍った‥‥が、ここで絃也は冷静に後退しつつ武器をリロード。突出を避けるようにしつつ再度射撃を行う。
 狼たちは絃也を追おうとするが、それを阻止したのは瞬天速で飛び込んできたルノアだ。
「制圧射、いきます‥‥」
 向かってきた狼はルノアの制圧射撃でさらに足止めを食うことになる。
 彼女ら同様に迅雷で飛び込んだ旭は制圧射撃で怯んだキメラたちに向かう。後方に撃たれたロケット弾はどちらかといえば山なりの軌道を描く。ならばこちらは低く、直線的に走りこむ。
「まとめて吹き――飛べっ!!」
 こうして懐に入り込んだ旭はその武器を地面にたたきつける。するとそこから十字の衝撃波が走る。
 攻撃範囲には3組の狼。エレナの時と同様に、通常型の狼が支援型を庇うようにしてその範囲から押し出す。しかし、旭の一撃は強烈の一言に尽きる。十字の波動を受けた通常の狼キメラのうち1匹は耐えきれず倒れ、残り2匹もかなりのダメージを負った。
 旭はそのまま追撃しようとするが、支援型がロケット弾を至近で撃ち込む。難なく防御する旭だが、その間に態勢を立て直した狼は距離を取った。
 瞬天速で接近してきたブレイズも接近戦に入る。
 旭程ではないものの、その大剣による一撃は驚異的破壊力を持つ。しかし敵の動きも速い。
「チッ、ちょこちょこすばしっこい野郎だ‥‥」
 ブレイズはそう呟くと、もう一度瞬天速を使用。狼の死角へ回り込むと、その大剣を見舞い大きなダメージを狼に与える。
「狼達に一つ言っておく!」
 戦闘状況を眺めていたガウルに声が届く。竜の翼を使用して前衛に追いついた翔だ。
「ロケランは前衛支援に合わん上に美しくない。重機関砲にすべきだったな!」
 そういってライフルで射撃。前衛に立っていた通常型の狼に命中する。
「‥‥なるほど、以後の参考にしよう」
 人の声、しかし仲間のものではない。
(あそこか‥‥)
 その声から、翔は位置と姿をはっきり確認する。
 以後、その動向に注意しつつ、なにか仕掛けてきそうならその警告を発する。翔はそう予定していた。


 まずは能力者が優勢、といったところだろうか。しかし、この状況を黙って見逃すガウルではなかった。
 
 ――ウォォォォッ!
 
 ガウルが長い、遠吠えのようなものを発する。すると、キメラたちの動きが急速に変化する。
 まず味方後方に撃っていたロケット弾のうち半数が前衛に浴びせかけられる。
 後方に撃たれたロケット弾は、先程と同様に一般兵と後衛についた能力者によって迎撃されるが、前衛はそうもいかない。
 旭は狼からのロケット弾を躱すことが出来ず受ける。が、ダメージ皆無。攻撃力だけでなく、防御力にも優れている。
 しかし、攻撃を受けていたところを後方に回り込んだキメラに、やはりロケットランチャーで攻撃され態勢を崩される。反撃の為に刀を投げる。それはしかし狼に叩き落とされる。
 計3匹の狼が旭を囲んでいた。接近してくればやりようはあるのだが、敵はロケット弾で集中砲火を浴びせかけて近づこうとしない。先ほどの攻撃を学習したといったところだろうか。支援が欲しいところだが…
 一方ブレイズ、こちらにも2匹の狼が攻撃。撃ち込まれたロケット弾を防御するブレイズだが、ロケット弾の爆煙に身を隠し別の狼が飛びかかってくる。
「そうそうやらせるかよ‥‥!」
 しかし、ブレイズは冷静に剣を振り下ろし、それを叩き落とす。天地撃だ。
 地面にめり込んだ狼は無防備。ブレイズはそのまま追撃を図る‥‥が、叩き落とされた狼を支援するかのように、ロケット弾が撃ち込まれる。爆風で態勢を崩しつつも剣を振り下ろすが、間一髪態勢を立て直したキメラに回避される。
 絃也、ルノアは引き続き制圧射撃を使用してその動きを制しようとするが、狼はその弾幕を掻い潜り突っ込んでくる。
 突っ込んできたキメラの体当たりを受け、絃也は態勢を崩す。
「こうなれば致し方ないか‥‥」
 こうまで接近された以上は接近戦をせざるを得ない。絃也は態勢を整えつつ爪に持ち替える。
 無論狼もそれを黙って見過ごしはしない。ロケット弾を撃ってくる。しかし絃也は迅雷で加速、瞬時に懐に飛び込む。
「射撃武器は厄介だからな。早々に消えてもらう」
 加速状態からの突き。さらに自身を地面と平行に回転させつつ放った爪撃の連続攻撃。その動きはまさしく疾風の如し。不意を突かれた支援型は弾き飛ばされた。
 一方ルノアは小銃で敵の軌道をずらして受け流そうと試みるも、敵の動きが速すぎる。受け流すことは出来ず、突っ込んできた狼に弾き飛ばされる。
「くっ‥‥そう、簡単に‥‥」
 やられるわけにはいかない。ルノアは射程内に入った支援型に至近距離から銃撃。接近戦になってもその狙いはぶれず、銃弾はミサイルランチャーに直撃する。ルノアが飛び退いた直後、大きな爆発。
「‥‥やった‥‥?」
 しかし、その爆風の晴れた先には、狼が一匹。キメラにはFFがある。多少ダメージは負ったようだが、一般的なロケットランチャーの爆発程度ならその損害も許容範囲。
 そして、ルノアはそれとともに、このキメラの速さを解き放ってしまった。
 狼は機動力を増して、ルノアに襲い掛かった。
 
 現状、1人に対し1組の狼が対応を行っている状況。旭は戦力的に脅威と見たのか、他よりも一匹多いが。
 そして、余った計4組の狼は後方に駆け抜けていく。
「何という美しくない行動だ」
 翔は龍の瞳を使用。AUKVの頭部がスパークするとともに命中力が向上。加えて、離れていくキメラは高速と言っても背を向けている。攻撃は確実にヒットする。しかし、その動きを止めるには至らない。
 さらに悪いことに、後方に気を取られている間に別の狼ペアに接近を許してしまった。
 突っ込んでくる狼。武器が銃だけの翔にとって接近戦は不利だ。だが、翔は冷静。向かってくるキメラに対しカウンター気味に体当たり。
「あらゆる状況に対応できる俺は、やはり美しいな」
 竜の咆哮が付加されたそれは敵にダメージは与えられなかったが、その身を吹き飛ばすことには成功する。
 ‥‥が、吹き飛ばした後それをカバーするように狼から放たれたロケット弾の連射が翔に直撃した。


 4組、計8匹の狼が前衛を突破して向かってくる。
「ここは突破させるわけにはいきません」
「味方に当てないように気を付けて‥‥制圧射撃、いくよー!」
 やすかず、エレナは敵の突破を阻止すべく順次制圧射撃を使用。
 その間にリロードを終えた美空が接近してくる敵の先頭に攻撃を仕掛ける。
 だが、狼たちもその程度で前進を止めるわけもない。支援型はロケット弾を撃ち、こちらの動きを制しようとする。
 無論こちらも一般兵や能力者のお蔭であらかた迎撃はできている。お陰で3人は敵の迎撃に集中できるのだが‥‥
「‥‥弾切れでありますか。早くリロードを‥‥!」
 美空も弾幕を張るが、いかんせん弾切れが早い。これは瞬時に大量の弾丸を撃つ制圧射撃を使用している他の2人も一緒である。
 狼たちはその隙を逃さず接近してくる。
 弾幕を張って足止めしても、リロードの隙に接近される。その繰り返し。
 味方能力者はロケット弾の迎撃で手一杯。一般兵もそれは同じである。
 近接戦の射程に入られたら圧倒的に不利になる。
「けど‥‥前衛のみんなが帰ってくれば挟み撃ちのチャンスだよね」
 この状況すら楽しむかのようなエレナの言葉。だがその通りだ。前衛が戻ってくれば何とかなる。
 そう思っていた矢先、飛び交う弾幕の向こうにこちらに向かう影を見た。
「‥‥敵‥‥か」
 やすかずはそう力なくつぶやいた。向かってきたのは無情にも敵の増援。後で分かったことだが、それはルノアと翔を倒した2組、計4匹だった。
 これで後衛に向かってきた敵の数は12匹。弾幕を張って抑えることのできるような数ではない。
 一気に距離がつまり、後衛の能力者たちは接近戦に入らざるを得なくなった。
「クソッ! こっちに来るなぁっ!」
 エレナは接近してきた狼に重機関砲を斉射。それで一匹は抑えた‥‥が、エレナは元々背金銭の備えをしていない。別の方向から襲い掛かる狼に懐に入り込まれ、その爪に引き裂かれる。
 それでも負けじと重機関砲を振り回すが、乱戦になると自由に弾を撃つこともできない。じわじわと、そのダメージは拡大していた。
「知恵のついた狼さん程厄介な敵はいないのであります‥‥でも、美空の眼の黒いうちは、ここを通さないでありますよー!」
 美空はそういうとガトリング砲の砲身で近づいてきた狼を叩き伏せ、そのまま拳銃に持ち替え。
 一般兵を守るために、その身を盾にして押し返そうとする。
 だが、多勢に無勢というやつだ。AUKVに無数の傷がつけられていく。それでも美空は、守るために狼たちに立ち塞がる。
 やすかずは、さすがに上級職だけあるのか、多数の狼からの攻撃もなんとか受ける。
 そんな中、やすかずは視界の端に、基地内に入っていく狼を一組見た。後ろから追撃‥‥しようにもこの混乱した状況下では難しい。
 正規軍の能力者も一般兵を守るのが精一杯。ルノアから預かった閃光手榴弾を使う暇もない様子。
 少しの間の後、基地内で大きな爆発が起こった。大勢は‥‥決した。
 

 爆発音が前衛まで響いた。そして、それを待っていたかのようにガウルが再び遠吠えを発する。
「っ‥‥! どうしたんだ!?」
 旭は丁度最後の狼を切り倒したところだ。投剣も使い果たし距離をとる相手に苦戦したが、最終的に残った練力を惜しまずに、迅雷を使うことで距離を詰め、撃破に成功していた。
 対し絃也、ブレイズはまだ戦闘を継続していた。しかし、その遠吠えを聞いた狼たちは、一斉に彼らから距離を開け、そのまま撤退を開始しているようだった。
 この時、すでに狼の一部が基地内に侵入。火薬庫を爆破していた。先ほどの爆発音はそれだ。
 追撃‥‥しようにもすでに満身創痍という状態の彼らには、どうすることもできない。
 何が不味かったのか。戦力を分散したことか、それとも敵と自分たちの連携密度の差か。それは今の疲れた頭では判断がつかない。
 その場にはまだルノアと翔が倒れている。彼女らの治療を行う必要がある。
 だから、彼らはガウルたちが悠々と撤退する様を見送るしかなかった。



 火薬庫の爆破。KV格納庫の破壊。
 正規軍の能力者は軒並み重体。
 その他重軽傷者多数。その中にはラスト―ホープの傭兵4名の重傷も含まれる。
 これが今回の戦闘における被害である。
 奇跡的にも死亡者は無し。これは敵が作戦目標を絞っていたこともあるが、その身を張って一般兵を守ろうとした美空を始めとした能力者たちの功績でもある。
 しかし、基地そのものが受けた被害は決して小さいものではない。
 かなりの期間、基地機能が低下することになるのは否めないだろう。