タイトル:【RAL】悪趣味な姫君マスター:津山 佑弥

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/04/09 21:09

●オープニング本文


 モロッコ北東、ナドル――。
「‥‥いよいよモロッコにも来たのか」
 南にあるウジダがUPCにより攻められ始めた、という一報を聞き、司令官は静かに瞼を閉じた。
 動きを見る限り、どうにも人類は空港を制圧しにかかっているらしい。ウジダよりは小規模ながらもナドルも空港を有していること、そして同じくアルジェリアとの国境線に近い場所に位置していること――遅かれ早かれ、彼らの手がここにまで伸びてくることは目に見えていた。
 更に言えばナドルは、元からそれほど重要視されてきた場所ではない。戦力は西の首都ラバトは勿論のこと、ウジダやジブラルタル海峡にもっとも近い都市タンジェにも劣る。仮にウジダと同じ戦力でかかられたら、ここで妙案か援軍でもない限り勝つことは難しい。
 妙案――ではないが、ここも国境線沿いではある。援軍くらいはあるのではないか。
 寧ろ今のうちに頼んでおくべきではないか。
 司令官がそう考えたとき――
「司令、総司令部から通信が入っております」
 司令官室に入室してきた部下の強化人間がそう告げた。
「ちょうどいい、此方も総司令部に用があったところだ」
 司令官はそう言いつつ腰を上げたが、複雑な表情を浮かべる部下が口にした言葉は司令官のかすかな希望を打ち消すものだった。
「いえ、それが――ここだけでなく、ウジダ以外の全ての司令に向けられたもののようです」

 通信室の椅子に腰をおろす。
 目の前の画面に映し出されたのは小柄な人物だった。
 ロールがかかった薄紅色の髪に、くりくりと見開かれた赤い瞳。服装はといえば白を基調とした、フリルのつきまくったロリータ風ドレスだ。それに合わせたヘッドドレスも忘れてはいない。
『はーい、皆元気ー? アフリカ軍総司令補佐のロアだぞ☆』
 画面の中でそう声を上げ、愛嬌のある笑顔のままウインクをする。
 あんな姿だが、総司令補佐なのは事実だったりするから現場は頭が痛い。
 ちなみに画面の端には、アフリカ方面軍の総司令官が怒っているような困っているような、兎に角複雑な表情を浮かべて椅子に腰掛けているのが見える。二人の位置関係からして、ロアがいるのは総司令室のテーブルの上らしい。
『早速だけどここで天気予報の時間ー。最近無駄に力をつけた低気圧人類がモロッコ方面に接近してるんだー』
 怖いねー嫌だねー、と口では言うものの表情はあくまで明るい。
『そんなわけで、対策は各自しておいてねー。
 特に空港を防衛してる人たちは注意するように。真っ先にやってくるだろうから』
 普通の通信なら、ここで用件は終わるところだ。
 ――だがロアが連絡事項を送ってきた場合、そうではないことは誰もが知っている。
『あぁそうそう、個人的にも空港は護ってほしいんだよねー』
 必ず余計な用件がついて回るのだ。
『人類ってさー、歌に力をもらってるっていうじゃない?
 それに敬意を表して、っていうの? こっちでもそれをやってみようと思ってねー。折角だからエアポートライブ。
 一人じゃ無理だってさっぴーが言うし、メタとかヴィクにも頑張ってもらおうと思ってるの。ユニット名も『ABA48』に決まってるんだよ! ルトやラファにも別の形で協力してもらおうと考えてるしねー。
 そう言ったらさっぴーも渋々って感じだったけど了承してくれたし、その辺護れないなら生き残ってもBANG☆だぞ♪』
 ツッコミどころ満載だが、突っ込める者はいない。脅し文句は防衛の為には利には適っているので、今も画面の端で渋い顔をしている総司令官も反対はしきれなかったのだろう。プロトスクエアを総出で引っ張り出せるならそう簡単に落ちないだろう、というのもある。
 ついでにロアが連呼した「さっぴー」というのはその司令官の愛称だったりする。恐れ多くて使っているのはロアしかいないが。
 ――あちら側の楽しみなどは兎も角、現場として言えることは「より必死になれ」の一点だけだ。
 負けて生き延びても殺されるだけ。身体に仕掛けられた爆弾のスイッチなど簡単に押されるのだから。

『ばいばーい』と一方的に通信は切られ、司令官は溜息をついた。
 あのような脅しの言葉をかけられたのでは、弱気に援軍など頼んでも無駄だろう。
 ――人類の強襲が告げられたのは、そう考えた直後のことだった。
 敵はKV多数。そのうち傭兵は八機と推測されている。
「――私も出よう」
 負けたらどうせ死ななければならない。ならば勝ってみせよう。
 司令官は頭痛を覚える頭をさすりながらも立ち上がった。

●参加者一覧

榊 兵衛(ga0388
31歳・♂・PN
セシリア・D・篠畑(ga0475
20歳・♀・ER
ケイ・リヒャルト(ga0598
20歳・♀・JG
終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
フォルテ・レーン(gb7364
28歳・♂・FT
D・D(gc0959
24歳・♀・JG
ドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751
18歳・♂・DF
美空・火馬莉(gc6653
13歳・♀・ER

●リプレイ本文

●不退転の覚悟
 戦闘の幕開けは、早々と空を切り裂いたレーザーにより告げられた。
「閃光は闇を裂き滅する‥‥御覚悟を‥‥」
 終夜・無月(ga3084)のその言葉通り、彼のミカガミ改の高分子レーザーライフルからリロードを挟んで放たれたレーザーは、ちょうど傭兵たちの正面にいた本星型HWの周囲を回るCWを二体ともあっさりと沈めることに成功した。
「まあ、今回の相棒は無月だし、俺も僚機に恥ずかしくない働きを示さなくてはなるまいな」
 続いて、無月とロッテを組む榊 兵衛(ga0388)機のスナイパーライフルD−02の弾丸が、向かって右側の本星型周囲のCWのうち一体に命中する。
 未だ距離は大きく開いており、CW群のジャミングの影響を受けずに済んだからこそ出来たことでもあったが――脅威の対象ともなりうるCWの数を早めに減らせる算段が立ちつつあり、傭兵たちの中では言葉には表さないものの若干の楽勝ムードが早くも漂い始めようとしていた。
 だが――先制攻撃のお返しは、思わぬところから飛んできた。
 KV群から最も遠いところにいた敵機体――司令官機のタロスが、プロトン砲を立て続けに三発放ってきたのだ。
 誰もこの段階で司令官自ら動き出すとは踏んでいなかった為回避行動を取ることも出来ず、無月機が二発、兵衛機が一発被弾する。
 更にはその前方の本星型も時を同じくして動き出した。向かって右側――戦闘開始直前にD・D(gc0959)によりAとナンバリングされたHWがプロトン砲を連射し、C――向かって左側の機体もやはりプロトン砲を放ちながらも、Aやタロスを護るようにそれらのやや前方へ。付け加えれば、プロトン砲を放つのを三発で抑えたタロスはといえばAよりも若干前にきている。
 そしてB――中央のHWは一気に加速し、それまでの間にも若干縮まっていたKVとの距離をかなり詰めにかかった。此方に関しては接近戦仕様なのか、この段階では攻撃を仕掛けてくることはなかったが。
「‥‥大丈夫ですか?」
「まぁまだな」セシリア・D・篠畑(ga0475)の問いかけに兵衛が応じた。
 タロスだけでなく、本星型AやCが放ったプロトン砲全てが無月機や兵衛機を狙ったものだったが、幾らかは回避出来たこともありまだそこまで損壊は酷くはない。
「それにしても‥‥随分動き出しが早いものので‥‥」
「いつも以上に手は抜けないわね‥‥」無月の言葉に肯くようにケイ・リヒャルト(ga0598)は言う。
「――だけど、空港は返して貰うわ‥‥」
「空港奪還なのでありますぅ。空戦は得意ではないでありますが、勝って見せるのでありますょぅ」
 自分に続いて美空・火馬莉(gc6653)が言うのを聞きながら、ケイはコックピットの中で僅かに笑みを浮かべた。
 相手の本気がどれほどのものかは分からないが、自分たちの本気を舐めてもらっては困る――。
 考えつつ、スナイパーライフルのトリガーを絞る。
 一機だけによる射撃ならば都度リロード分の間が空いてしまう。
 けれどもその空白の時間にはセシリアが同じCWにやはりスナイパーライフルの弾丸を浴びせ、その衝撃が収まる頃にはケイの方がリロードが完了している。親友ならではの阿吽の呼吸でその射撃を続け、最初に兵衛が攻撃を加えたCWを撃墜したどころか同じ本星型周囲にいたもう一体にも狙撃を加えるに至った。
(――積もる言い文はあるけど、それは後)
 ドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751)は一瞬だけ美空のヨロウェルを視界の端に映した後、すぐに思考を切り替えた。
「んじゃ、打ち合わせ通りにお願い」
「わかってる」
 ロッテを組むフォルテ・レーン(gb7364)のスナイパーライフルと同時、2連装ロケットランチャーを本星型Cの周囲に張り付くCWを狙って放つ。ところが幾らかは本星型自身が庇ったらしく、立て続けの射撃と砲撃が終わった後もまだCWは堕ちていなかった。
 そして美空機はブーストをかけ、誰よりも本星型Bに接近する。自然、Bの機首が美空機を意識するようにそちらへ向いた。
 先ほどは意気揚々と宣言した美空だったが、その実不安もあった。
 ヨロウェルは本来地上に於いて強力な知覚砲撃を実行する機体と認識している。そういう意味では決して今回の任務に適しているとは言えないし、それに付随して一つ誤算もあった。その誤算こそがドゥにとっての『言い文』に繋がっていることを美空自身は知らなかったが、もうこうなった以上は自分に出来ることを懸命にやるしかないという思いがあった。
 その出来ること――潤沢な練力を活かしてブースト等による高機動を繰り返すこと。
 それにつられ本星型Bの照準が完全に美空機に絞られたのをD・Dは直感しながら、自分はそのBを狙い――スナイパーライフルとロングレンジライフルのトリガーを立て続けに引いた。
 命中。だがBは本星型の最大の特徴――強力なフォースフィールドは使っていないようだった。考えて見れば先程のCもだ。
 機体の能力に頼るのではなく、有人機ならではの判断による行動を起こす――バグアなりの本気が、この僅かな間に垣間見えた。

●重すぎた荷
 司令官には実のところ、自ら早く動き出したことにそれほど深い狙いがあったわけではない。
 ただ、手を拱いて戦況を眺め、いよいよ不利になったときになって自分が動き出すのでは遅い――何となくそんな直感があったのだ。

 人類とバグア、それぞれの初動が終わった後、無月と兵衛がまず動く。
 元より彼ら以外のロッテは本星型を一機ずつ担当、彼らは遊撃を担当することになっていたので、タロスが早々と動いてきた以上は前に出ざるを得なかった。尤も、タロスを取り巻くCWは他より多い。加速しながらも、射撃で撃ち落さんと試みることも忘れない。
 その分タロス本体へはまだ攻撃が届くことはなかったが――相手からの攻撃は勿論そのようなことはない。
 元より、タロスや本星型AなどはKVに比べ高い空に位置していた。故に彼我が接近すればするほど、その攻撃は撃ち下ろしに近い角度になる。
 撃ち下ろし――即ち、回避困難。
「‥‥っ」衝撃に無月が若干顔を顰める。
 未だ距離は少しある中、今度はミサイルが飛来してきたのだ。人類側の兵器でいうなら螺旋弾頭ミサイルに近い形状のそれは無月機、兵衛機ともに二発ずつ叩き込まれる。
 まだまだ戦えはするが、こう撃ちこまれっ放しの状況は宜しくない。とはいえ事を急いてもいけない。二機が既にタロス周囲のCWのジャミングの領域に入り込んでいるのは、頭痛が証明している。
 更に、タロスには攻撃させまいと考えているのか。本星型AやCも長距離バルカンやレーザーで二機に攻撃を仕掛けてきた。これらはすぐに他のロッテが相手取るだろうが、今は我慢するしかない。
 一方で二機と入れ違う格好になった本星型Bは、攻撃範囲内で最も近いところにいる機体――美空機を(彼女の狙い通りに)標的としたようだった。尚も移動を繰り返す美空機を牽制するようにミサイルポッドやマシンガンを立て続けに放っていく。
 それを横目に、ケイとセシリアは先ほど同様にスナイパーライフルの交互射撃でCWを叩き落す。一方、美空とD・Dが相手取る本星型B以外は背後を取ることが難しいと判断したドゥは、自分たちの標的となった本星型Cよりも上空へ上がってから――フォルテと連携し、先ほど同様にC周辺のCWを狙い撃つ。一体は撃墜し、もう一体にも若干ながら弾丸を浴びせることが出来た。
 そして美空はというと、追われる格好になりながらもわざとタイミングを外した射撃を行った。そうして本星型Bの攻勢の気を削ぎ、その攻撃の合間にバレットファウストを起動したD・Dがロングレンジライフルで狙い撃つ。
 攻撃しやすい位置にいるのは美空機だが、だからといってD・D機を無視するわけにもいかなくなり、本星型Bの動きに若干の迷いが生じ始めた。その間に美空機は一旦後退し――合流しかけたD・D機とすぐに左右にばらけるように旋回する。
 それでも尚本星型Bが美空機を追いかけまわす状況を見過ごせなかったのは、ドゥ。
 自分より下の空にいる本星型Bに向かって容赦なくロケットランチャーを叩き込む。強化FFをまだ張っていなかった機体は若干沈むように態勢を崩した。
「あとで説教だ。君の隊長もLHで待ってる」――ドゥはそう美空へ通信を寄越した後D・Dの追撃が入ったのを確認し、自分は本来の相手を倒すべく機首を再び上げた。

 まずはひたすらCWを殲滅することに専念し、その後でロッテ単位で本星型或いはタロスを相手取る。
 傭兵たちの取った戦法はある意味では分かりやすく、また効果的なものでもあった。
 計算違いを挙げるならば、敵も敵で己が役割を果たす為の動きを取り、自分たちの戦略に付き合わなかったことだろうか。ケイとセシリアのロッテに狙われた本星型Aも、ドゥとフォルテに狙われた本星型Cも、自分を狙い続ける者たちは無視するかのように、最も早くタロスに接近した無月機や兵衛機を狙い続けている。唯一異なるのはタロスで、此方はその二機だけでなく、最後方から徹底援護を見せる本星型Aを狙うケイ機やセシリア機もミサイルの標的に定めていた。指揮官機らしく命中性能に優れているのか、これをかわすのは四機とも容易な話ではなかった。
 どちらにせよ、無月たちだけが集中的に狙い打たれる状況は看過出来るものではない。故に、戦略とは異なる個々の戦法を実行する為には此方のロッテもある程度ばらばらにならざるを得なかった。
 次に急激な接近を図ったのはケイ。ただしセシリアは――勿論最初に比べれば接近しているが――尚もスナイパーライフルによる射撃を繰り返している。
 その段になって、遂に本星型Aが強化FFを張ったのをケイもセシリアも視界に捉えた。序に、それまでひたすら無月たちを狙っていた本星型Cが攻撃対象をケイたちに切り替える。かのHWが放つレーザーはG放電装置宜しく抜群に命中性能に優れたものだったが、攻撃性能も似たようなものだった。構うことなく、ケイはブーストをかけ空を駆け抜ける。
 一方、本星型はAよりも先にBの方が危うい状況に追い込まれていた。
「飛ばしすぎたみたいですぅ」美空がその言葉で指し示すのは、自機ではなく最初自分を追い回していたHWの方だ。
 途中で追い回す対象をD・D機に切り替えたりしたものの、それならそれで美空に嫌なタイミングで狙い撃たれその間にD・Dに威嚇を兼ねる反撃を食らう。逆にしても同じなのは最初の段階で分かっており、その判断に迷う間に追い詰められあえなく強化FFを張らざるを得なくなったのだ。
 だがだからといって本星型Bにとって状況が好転するわけでもなく、ジリ貧になるのが少し先延ばしされただけの話。FFが切れてしまえば、もう先は見えていた。
『くそ‥‥』初めて本星型Bのパイロットが怨嗟の声を漏らした。その苦しみを示すかのように、D・D機を追い回す射撃も外れることが非常に増えていた。
「必死なのはお互い様‥‥堕ちてもらおうか」
 撃墜を確信しながらD・Dは反転し、射撃。次いで
「防衛機と思って油断したでありますねぇ?」
 ――完全に本星型Bの背後を取った美空が、レーザーガトリング砲を叩き込む。

 自分たちの後方で敵機反応が一つ減ったのを確認しつつ、それでもドゥとフォルテは安堵の息をつけなかった。
 本星型Aを後方援護型、Bを強襲ドッグファイト型とするなら、Cは重装甲型だった。CWも早い段階で殲滅し本星型に攻撃を加え始めたのだが、強化FFを張ってもいないのになかなか損壊を見せない。
 本星型Bが堕ちたということはつまり、Cにとっても相手をすべき機体が増えたということ。安心するどころか、とうとうドゥたちも攻撃の対象になった。
 ――ところでフォルテにとってタロスが放つプロトン砲はトラウマになっていた。
 それを克服すべく臨んだ戦いでもあるが――プロトン砲を使えると分かっているのがタロスだけではないと分かっている以上
「アレだけは、アレだけはもうゴメンなんだよ!!」
 標的の砲口に集約し始めた光の正体に、過敏な反応をみせざるを得ない。それが功を奏し回避に成功したものの、安心も何も出来なかった。
 とはいえ、次の瞬間には美空とD・Dも対本星型Cに参戦し、状況はかなり好転したのだが。

 強化FFを張ってからも尚もタロスの援護として無月たちを狙い続けていた本星型Aだったが、援護に徹していたのが命取りになった。
『――下から来るぞ!』
『え』
 指揮官機の警告に聞き返し――次の瞬間にはそんな自分に後悔したに違いない。
 セシリアによる度重なる射撃が強化FFを消滅させた瞬間、至近距離にまで接近していたケイ機はHWに高分子レーザー砲で大打撃を浴びせる。ケイ機はそのまま本星型Aよりも上に駆け抜け離脱――その後背を流石にAは追撃したものの、次の瞬間には再度セシリアが完全に隙を見せた敵に痛手を与える。
 そして――肉薄したケイは、その場で空中変形。
「甘く見てもらっちゃ困るって、言ったでしょう?」加虐的な響きを込めた言葉。
 練剣を振りかざし、丸腰の装甲へ致命的な一撃を与え――自身はすぐさま再変形し、離脱。次の刹那、爆発が起こった。

「そろそろ決着のようですね‥‥」
『まだ終わらせん‥‥』
 無月の言葉に対し、司令官はミサイルを放ちながらそう返す。とはいえ早々とCWを全滅させられ、タロスもその頃には既に自己修復を使わざるを得ないほどに被害を受けていた。
「その意地は買うがな」兵衛は苦笑する。
 タロスは損壊とともに命中精度も落ち、かわすことも出来るようになっていた。無月機に比べ若干前にいた兵衛機は、攻撃をかわすとスラスターライフルでタロスを狙う。
 その前に、セシリアのパンテオン二連発とケイのドゥオーモが着弾。タロスの機体が大きく揺らぎ――
「――やはりこれで終わりだ」
 最後の一撃を叩き込む。

 八対一。この状況は流石に固い防御を誇る本星型Cでも如何にかできるものではなく――。
「ここが俺の勝負時!!」
 スキルを併用し最大火力を叩き込んだフォルテの一撃で、撃墜。
 それから――傭兵たちは無理をしない範囲で、周囲の戦闘に参加し始めた。

 かなり離れた空域から、その一部始終を見守っていたHWの姿があった。
 とはいえ中は無人。ただ、遠隔通信用のモニターのみが常時起動されている。
「やっぱ駄目だよねー、あんな戦力じゃ」
 その遠隔モニターで戦闘を見ていたロアは、画面の向こうの幾重もの爆発を見てからからと笑う。
「まぁ、他に楽しむ方法見つけたしそれでいっかー」
 そう言って、総司令官室の机の上から飛び降り――軽やかなステップで扉へ向かう。
 どこへ行くつもりか、総司令官も知っている。だから止めはせず――ロアが扉の向こうに姿を消した後、静かに溜息を吐いた。