タイトル:【DS】その一歩の価値マスター:津山 佑弥

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/11/09 06:15

●オープニング本文


「うーん、予想出来たといえば出来たけどー‥‥」
 天鶴・岬はその景観を見て悩ましげに腕を組む。
 ギターケース片手に旅を始めること、もうすぐ一年。
 以前欧州を訪れた時には戦争だ何だといった問題でタイミングが悪く行けなかったスペインに、今は来ている。
 スペイン北部の都市・ビトリア。
 約一年半ほど前に行われたヨーロッパ攻防戦時、この都市はバグアによる襲撃を受け壊滅状態になった。
 ちなみにその件は今は賞金首となっているある者の存在が関与しているのだけれど、一般人にはその情報が伏せられているため岬は知らない。
 彼女に分かっていることは、それ以後のビトリアは特に大きな事件もなく復興の道を歩んでいるということと――。

 その一方で、人々の生活はなかなか豊かになっていないということ。

 名古屋育ちの岬だって、被災の影響は身を以って知っている。
 父親を失い、住んでいた家は跡形もない、とまでは言わないまでも住めるような状況ではなくなった。現在母親は仮設住宅で暮らしている。
 ただ、それでも自分は恵まれているのだとこの場に来て改めて思い知った。

 そんな彼女の荷物の中に、今ギターケースはない。

 ――ちょっと目を離した隙に、近所の子供たちが掻っ攫っていったのだ。それなりに大切に扱っているから、売れば金になると思われたのか。ただ単にギターが欲しかっただけ、という可能性もないわけではない。
「Hold it!」
 裏道へ逃げ込んでいく子供たちの背中を見つけ、岬は叫ぶ。
 ただ、スペイン語は話せないため英語で警告するしかないのが仇になった。
 恐らくまだ英語を学習していないのだろう、叫びなど全く気にすることもなく裏道に消えていった。
 地の利は相手にある。追いかけても追いつけるわけがなかった。

「どうしよう‥‥」
 警察へ行こうか、とも一瞬思った。
 けれど、子供たちが金ないし物品欲しさに盗みに走ったように、今もなおビトリアの人々の生活は豊かとは言えない。
 それを理解しているはずの警察が、果たして日本人の盗難被害に耳を傾けてくれるだろうか――。
(「正直期待する方が間違ってるよね」)
 岬は首を振った。
 スペインの警察がどれだけ機能しているか知らないけれど、ある意味でお役所仕事っぷり全開である日本の警察を顧みると期待する気にはなれなかった。
 ただ、泣き寝入りだけはしたくない。
 ――お金よりも大切な、いろいろなものが詰まったギターなのだ。

(「‥‥ちょっと卑怯かも、だけど」)
 悩んだ末、岬は文書をしたため始めた。
(「‥‥まぁ、ほかにもあるしいいかな」)
 盗んだことを責めるつもりはない。
 むしろ、何か彼らのために出来ることがあるならしてあげたいくらいだ。
 そして、自分に出来ることと言えば一つだけ。

 ――宛先はラスト・ホープ、以前かの地へ赴いた時に知り合ったオペレーターの名に。

●参加者一覧

伊佐美 希明(ga0214
21歳・♀・JG
ハンナ・ルーベンス(ga5138
23歳・♀・ER
エミリア・リーベル(ga7258
20歳・♀・EL
秘色(ga8202
28歳・♀・AA
澄野・絣(gb3855
20歳・♀・JG
橘川 海(gb4179
18歳・♀・HD
リスト・エルヴァスティ(gb6667
23歳・♂・DF
音無蒼真(gb8787
18歳・♂・FC

●リプレイ本文

「持てる人間には、持たざる人間の気持ちはわからない‥‥。
 アンタには頼れるものがあるが、あの子達には自分達しかないんだろうな」
 依頼遂行開始直前。
 伊佐美 希明(ga0214)が口にした言葉に、岬は目を丸くする。
 その反応を見た希明は、「あ、いや、水を差して悪ィ」手をひらひらと横に振った。
「長い事傭兵をやっていると、こういうのに慣れちまっていけねぇや。
 ――でも、今のアンタに奏でられるのかい? あの子達の気持ちをさ」
 その問いに――岬は言葉を選ぶように視線を虚空に彷徨わせながら、答える。
「それは‥‥ねえ」

●ツメアト
 移動艇から降り立った橘川 海(gb4179)は、ふとスペインの空を見上げる。
 澄み切った青空は、見慣れたものと大差はないように見えた。この空は日本にも繋がっているし、カンパネラにも繋がっているのだから、当たり前といえば当たり前のことかもしれない。
 けれど。
 空から見下ろす景色は、きっとどこにしたって違うのだ。
 それぞれの景色には幸せもあれば、決してそうとは呼べないものもある。
 言葉にするのは簡単なことだけれど、その本当の意味を知ろうとするならば――。
 ――今見上げているこの空は、その意味を教えてくれるだろうか。
「海さん、行きますよ」
 親しい仲である澄野・絣(gb3855)に隣から声をかけられ、海は「はいっ」と視線を前に戻す。
 ――崩壊から立ち直りきれていない街の姿が、海の視界に映った。

 依頼主たる岬と対面した折、
「お姉ちゃん色んな匂いがするぅ〜‥‥いい匂い‥‥」
 エミリア・リーベル(ga7258)は自らの習性から、岬に顔を寄せて彼女の匂いを嗅いだ。
 岬は当然ながら吃驚したようだけれど、いい匂い、といわれて悪い気はしないらしい。
 そんなことがありつつ――岬からもう少し子供たちに関する詳細な情報を仕入れた後、能力者たちは行動を開始した。

 ■

「僕は目付きが悪いから橘川さんがやったほうが良いよ」
 海とペアを組んだ音無蒼真(gb8787)はそうは言ったものの、『この辺の子供達のグループのリーダーを探している』という意味のスペイン語を書いた紙を用意していた。海も海でスペイン語の表現を学べるデータをカンパネラの教師に作ってもらい、移動艇の中で聞いていた。その手の準備は万端である。
 そうして現地の人々に聞き込みを開始した二人は、あえてギターのことは話題に出さなかった。あくまで子供たちのことに主眼を置き、片言ながらスペイン語で丁寧に応対する。
 ――何も子供は四人だけではないのだから、情報も多少は錯綜する。その中でも『四人とも少なくともテント暮らしである』ということに確信を抱いたころ――。
「橘川さん、あれ」
 テントの並ぶ更地を居住区の並びに沿って歩いていた二人を、一人の少年が居住区の陰から見つめていることに蒼真が気づいた。
 近づこうとすると――岬や人々の話に出てきたうちの一人に似たその少年は、逃げるように居住区に姿を消す。
 二人は顔を見合わせ、無線で連絡を入れる。
 そして、追跡を開始した。

 六×六の碁盤状に走る道。
 子供がいた場所が幸いし、海と蒼真は手筈通りもっとも北東寄りの道から居住区に侵入出来た。
「ちょっと卑怯かなっ?」
 海は呟く。
 それでも、脚力はともかく地の利という武器を持っている相手に二人で追走を続けるのは賢くない。
 挟み撃ち――その意を伝えると、蒼真は肯いて次の十字路を右に外れた。子供と海は、直進。
 子供が十字路を曲がる様子はない。が、このまま南まで突っ切ることもないだろう。
 ――海は一つ肯き、覚醒する。
 身体能力を向上させた海が疾走した跡には、残像を残すように赤い蝶が舞い散っていく。後ろをちらりと見た子供がそれを見てぎょっとし、あわてて軌道を右に変える。
 かかった。
 子供を追って海もまた十字路を曲がり、加減しつつも更に距離を詰める。
 もう一度子供が十字路を曲がろうとして、たたらを踏むのが見えた。
「捕まえたよ」
 直後、曲がろうとした道の先から現れた蒼真が子供の肩を叩いた。

 ■

 子供たちも生きる為にやったことなのだろうが、その為ならば何をしてもいいというわけではない。
 ギターは返してもらわなければならない、が――。
(「それにしても‥‥バグアの爪痕は、何処も痛々しいわい」)
 周囲の状態を見渡し、秘色(ga8202)は思う。

 秘色が身に纏っている着物が現地の人間には物珍しく映るらしく、人々の視線は彼女と、ともに行動しているエミリアの方へよく向いた。
 ――相手が此方に興味を抱いているとなれば、情報も仕入れやすい。
「ねぇねぇ〜♪ おっきなケース抱えた子とかこの辺で見かけなかった〜?」
 エミリアがそう尋ねた後、
「ちと、大切なギターを誤って持っていかれての。
 返して欲しいゆえ、探し出したいのじゃよ」
 秘色は相手に事情を説明する。今のところ分かっている、子供たちの情報も踏まえて。
「大きなケース‥‥ギター、か。‥‥そういえばさっきそっから居住区に入っていったな」
 相手の男性が居住区への入口を指し示した。

 居住区に入る。
 秘色とエミリアはそれのやや西寄りの道を北側から入って行き――。
「あ」
「――!?」
 ある十字路を通過したところで、一人の子供と出くわす。
 子供は見慣れぬ姿の異邦人に吃驚したのか、それとも別の何かを感じたのか、すぐに踵を返した。
 ‥‥一人ではあるけれど、その姿は岬から聞いた子供、それもリーダー格の子の特徴と一致している。
「Espera!」
 静止せよ――その意味を込めた秘色の叫びに子供は一瞬肩を震わせたけれど足を止めることなく、近くの十字路の陰に姿を消した。
「エミと遊ぼうって言うんだね〜? 手加減しないよ〜♪」
 エミリアの瞳がきらん、と輝くのを秘色は見逃さなかった。

 ■

「売って金にするなら、買う人間も当然居るよな。その辺を当たってみるか。
 まぁ、ギターケースもった子供なんて目立つだろうから、聞きまわっていりゃ直ぐわかる」
 希明はそう提案した。
 流石に楽器店は、今のビトリアでまともに営業するのは難しいだろう。
 ということはやはり、子供よりは金を持ち歩いているであろう街の大人か。
 更地にテントを張る者は家がないからそうするのだけれど、家がない理由は何も先立つものがないからとは限らない。実際、テント暮らしの者たち全員が必ずしも身なりが整っていないわけではないのは見ていてわかった。――例の子供たちの立場は、さておくにしても。
「私達の友人が、ギターを持ち去られて困っております‥‥。
 見慣れぬギターを持った十歳前後の少年達を見かけたら、私達にお知らせください‥‥」
 ハンナ・ルーベンス(ga5138)はそう人々に呼びかけた。そうした子供たちの存在は広めておいて損はない。
 ギターを買いそう――買う余裕のありそうな人々をあたりながら、途中、サッカーボールと幾らかの食料を買う。
 ――間もなく二人は、そのボールを遠くから注視する子供の存在に気がついた。
 岬から聞いたうちの一人の特徴と合致している。
「あいつか」
「そのようですね‥‥」
 二人の視線に相手も気がついたのだろう。そそくさと、居住区に逃げ込んでいった。
 ――奥まで逃げるつもりかと思いきや、
「‥‥引っかかるかっての」
 追走の脚に急ブレーキをかけた希明は肩を竦める。一歩遅れて追いついたハンナもふぅ、と安堵の息を吐きだした。
 逃げたはずの少年は、先の十字路を曲がり、更に次の十字路で再び曲がったところで壁際に這って待機していたのだ。
 子供は再び逃げ出すようなことはせず、やや反抗的な目で二人を見上げる。
 ちょっと待っていてください、とハンナは一度踵を返し、すぐに地元の大人を連れて戻ってきた。通訳となるらしい。
「楽しいものが欲しかったんだ」――そんな弁明が、子供の口から返ってきた。
 ビトリアは音楽の街である。今は音楽に興ずる生活的余裕はないにしろ、子供たちにとっても楽器は幾分親しみやすいものだったのだ。
 けれども、外で遊ぶことを知っている子供たちにとっての魅力的なものはそれだけではない。
「こいつと交換っつーなら、文句ねぇだろ」
 サッカーボールを突きだしながら希明が放ったその言葉の意味を、子供はすぐに理解したようだった。
 
 ■

(「戦いしか知らない俺に、何が出来るだろう?」)
 リスト・エルヴァスティ(gb6667)は考える。
 復興しているといっても豊かにならないこの街と、寒い故郷・フィンランド――どちらか安全かといえば、間違いなく故郷の方だ。
 ずっと護ってきた故郷を出てきたことでそれを痛感し、だからこそ、考える。
 戦い以外に出来ること――。

「――あの子じゃないですか?」
 絣がそう言ったのを契機に、リストは思考から立ち戻る。
 聞き込みをしていたのは主にリストだったから、探すのをさぼっていたわけではない。つい考え込んでしまっただけだ。
 ちなみに、この二人もギターのことは隠しながら聞き込みを行っていた。それも海や蒼真とは異なり、情報を聞き出す相手も子供たちだ。
 屈んで目線を子供たちに合わせ、怖がらせないよう、親しげに話しかける――。
 対象は残念ながら件の子供たちの一人ではなかったけれど、思いがけない情報を手に入れた。

「居住区の中に子供たちの隠れ家になっている場所があるらしい」
 リストは無線でそう仲間たちに伝える。
 居住区の一角に、壁が崩れたまま放置されている箇所があるという。
 情報によると、そこでは時たま件の子供たちを始め地元の子供の多くが集まって遊ぶことがあるのだそうだ。
 居住区で何かをするなら決まってあそこ――。
 そう聞いた後、二人の行く先は決まっていた。
 否、二人だけではない。
「だから子供たちはそこに向かうと思う。見失わないようにしつつ着いていってくれ」
 そう言ってリストは無線を切る。
「私たちも行きましょう。‥‥まだ一人は見つかってないようですし、もうそこにいるのかも」
「そうだな」
 絣とリストは肯きあい、駆けだした。
 
 ■

 秘色とエミリア、海と蒼真のペアは、ほぼ同時にその場所へ到着した。海と蒼真のほうには、勿論捕まえたばかりの子供もいる。
 道を挟んで向かい合った五人の目の前に、他の子供たちの姿はない。
 けれど――その道の途中、壁の一部が扉部分もろとも壊れている箇所があった。

 無理やりつけた電燈が照らすその部屋の中には、二人の少年の姿があった。うち一人は先ほどまで秘色たちが追いかけていたリーダー格だ。
 リーダー格は秘色たちが追ってきた理由を悟っていたのか、ギターケースを背負っていた。岬が探しているものだ。
 もう終わりだ、とでも海たちが捕まえた子供が言ったのか、うなだれるリーダー格。
 その頭を秘色はぽんぽんと叩いた。直後、
「なんだ、もう終わってたのか」
 希明とハンナが子供を連れて現れた。二人もやはり、捕まえた子供にこの場所を教えられたのだった。

●伝えたいモノは
 事件はひとまず一件落着。
 ――それは、その後の話。

 ■

「それは‥‥ねえ」
 言葉を選んだ為少し返答に時間をおいたけれど、岬の答えは最初から決まっていた。
「確かに、あたしはあの子達とは違うよ。
 だからあの子達の気持ちの全部をわかってあげられるなんて思ってないし――たぶんって思うところはあるけど、それは勘違いをしているかもしれない。
 けど‥‥どんな形にしろ気持ちっていうのは伝えようとしなきゃ、伝えたい人に届くわけがないじゃない?
 それにどんな勘違いも、正さなきゃずっと勘違いのままだよ。
 間違ってなきゃちゃんと届けばいいし、勘違いしていれば正して欲しい――誰かの気持ちを考えるっていうのは、そういうことじゃないかな」

 ■

「お、出てきたね」
 作曲の為部屋にこもっていた岬が外に出てくるのに、最初に蒼真が気づいた。
 そこには能力者たちの他に、子供たち、そして周辺の――主にテント暮らしの人々が集っている。
 人の多さが予想外だったのか岬は一瞬目を瞠ったようだったけれど、すぐに気を取り直して用意された椅子に腰かけた。
 ギターをゆっくりと構え――指が、動き始める。

 ――曲の始まりは、長いアルペジオ独奏。

「スペイン語がわからないなら、無理に唄にする必要なんてねぇさ。
 詞は頭で理解するが、音色はここで理解するもんだろ?」
 ――そう言った希明が親指で自らの心臓のあたりを指し、にやりと笑ったのを思い出した。
 伝えたいこと。
 日常。それが、常に岬にとっての歌のテーマだ。
 そこには楽しいことも苦しいこともあるし、喜びも悲しみも悩みも葛藤もある。
 決して良いことばかりじゃないけれど、だからこそ明日を楽しみに――。
 抱えたそれらの想いを積み上げるように、穏やかな音色が紡がれていく。

 ――暫くして、弦を爪弾く指が止まる。
 残響音が消え去る、その直前――岬は、

  瞳曇らぬよう 陽光に顔を上げ
  青い空吸い込み 心に風送ろう

 声を――歌を、紡ぎ出す。
 歌詞のほとんどは、能力者に考えてもらったものだ。
 少しだけ自分の言葉も入れたけれど、岬の役割は、ピースを繋ぎ合せ形にすることにあった。

  太陽は力を分けてくれる 風は癒してくれる
  海は希望を見せてくれる

  強風に足を挫いても いつか必ず立ち上がろう
  嵐の後の晴天は きっと何より心地良い

  遠い街にいる友よ 今はどうしていますか
  貴方の空は輝いていますか

 間奏に入る。
(「エミ‥‥今‥‥歌で楽しい気持ち‥‥」)
 ハミングで歌いながら、エミリアは不思議な感覚にとらわれていた。
 本当、不思議だ。――歌は嘘ばかりで、嫌いだったはずなのに。

  友との繋がりを 踏み出す力に
  明日へと歩む その道を

  石を一つ積み上げる そんな幸せも有る

 再び間奏へ入り、新たな音色が放たれる。
 絣が奏でる横笛の音。
 問題がなければ、と彼女は控えめに言っていたけれど、その音は場を包む雰囲気を更に暖かなものにしていた。

  流れ行く日々の中 変わり行く物多すぎて
  歩くスピード分からず 足が絡まることもあるけど
  そこら中溢れる小さな幸せ 気づける人になりたい
  見上げた空 きっと明日は明日の風が吹く

  故郷の街よ 人よ 私は生きて行きます
  ――幸せを取り戻せるように

 演奏が、終わる。
 徐々に大きくなる拍手の中、岬は安心したようにはにかんだ。

「世界を旅するっていうのはどんな気分なんだ?」
 リストは岬に問う。
「なんだろー‥‥いろいろあることで、自分が少し変わっていくのを感じられるのが楽しい、かな?
 今回のことにしたって、旅を始めた頃のあたしだったら、皆に頼るにしても多分泣いてたと思うしね」
 リーダー格の子供を見て苦笑しつつ、彼女はそう答えたのだった。