タイトル:【BV】轟竜號、北へマスター:対馬正治

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/02/26 19:29

●オープニング本文


「しかし広いよなあ。とても潜水艦の中だなんて思えないぜ」
「ああ。そのぶん、艦内のルートを覚えるのも一苦労だったがな」
 そんな会話を交わしながら、自動小銃を担いだ正規軍警備兵2名が広大なKVハンガー内を並んで巡回していく。
 彼らのいる場所は、UK参番艦・通称「轟竜號」の艦内。
「己丑北伐」の戦闘後、台湾沖の専用ドッグ内で艦体の修理・整備・補給などを終えた同艦は、現在太平洋の水面下約200mを北へ向けて航行している。バイオステアーとの戦いで負った損傷は深かったが、大きな破損箇所はほぼ修理を終え、戦闘や航海に直接支障のない部分は内部から修理作業を続けながらの「見切り発車」である。
 目的地について、一般クルーには今の所「北極海に存在が確認されたバグア基地への攻撃」とだけ伝えられているが、真の目的地はグリーンランド。現在同地の人類側拠点ゴットホープにおいては「バレンタインデー」を名目にしたお祭り騒ぎのような模擬戦イベントが開催されているが、それはバグア側に悟られぬよう傭兵達を同基地に集結させるカモフラージュであり、UPCはその陰で次なる大規模作戦の準備を着々と進めていた。
 今回、参番艦を用いた大規模な資材輸送もその一環である。
「どうやら異常はないようだな」
 ハンガー内には数十機に及ぶ水中KVが整然と並び、その周囲では整備兵やパーツを積んだリフト車が動き回っている。その光景だけ見れば、ここがL・Hの地下ハンガーだといわれても信じてしまう広さだ。
「あたりまえだ。本艦の戦闘能力は単体でももの凄いらしいぜ。並みの水中ワームなんぞ、まとめて攻めて来たって撃退してやるさ」
「‥‥その割には、これまでの大規模じゃあんまりいいトコがなかったなあ」
「だから、今回こそ汚名返上――」
 そこまで続いた兵士達の会話は、ハンガーの一角から上がった悲鳴に遮られた。
 ツナギ姿の整備兵達が、恐怖に顔を歪めてこちらへ走ってくる。
「た、助けてくれーっ!!」
「おい、どうした?」
「キメラが‥‥キメラが出たーっ!!」
「何だとぉ!?」
 警備兵たちは我が耳を疑った。
 だが一人の整備兵が指さす先を見ると、そこにはフナムシをそのまま巨大化させたようなキメラが、逃げ遅れた整備兵の一人を捕らえ、口から吐く強酸でたちまち骨まで溶かしていく無惨な光景があった。
「非常事態発生! 艦内にキメラ侵入を確認、至急増援を求む!」
 警備兵たちは無線機に向かって怒鳴りながら、自動小銃の銃口をキメラに向けフルオートで射撃を開始した。

●艦内戦闘指揮所
 情報が集まってくるにつれ、しだいに敵キメラの勢力と艦の被害状況が明らかになってきた。
 オペレーターがモニターの映像を外部カメラに切替えると、そこには水中用KV発進口付近にびっしりと群がる水中キメラのおぞましい光景がありありと映し出されていた。
「何だ!? こいつらは!」
 UPC士官が呻くように叫ぶ。
「コードネーム『デス・リギア』――北九州攻防戦でバグアが使用した水陸両用キメラとデータが一致します。おそらく発進口ハッチと艦体の僅か隙間を強酸で溶かし、強引に中へ侵入したものと」
「バカな! 何でこんなに接近されるまで気づかなかった!?」
「奴らの1匹1匹はせいぜい体長2m程度の中型キメラです。おそらくその大きさから、ソナーが捕捉しても戦術コンピューターがマグロの回遊と誤認したものと‥‥」
「襲われてるのはKVハンガーか。あそこのKVで奴らを駆除できないのか?」
「無理です。あそこに収容されているのはどれも整備中の機体で‥‥たとえ動いたとしても、水中用兵器しか搭載していないので役に立ちません」
「ならば、艦内の警備兵、それに能力者の傭兵部隊を向かわせろ! 周辺の隔壁は閉鎖。これ以上の被害拡大を食い止めるのだ!」
「外装甲に群がっているキメラは如何致します?」
「航海班に要請して艦を水深50mまで緊急浮上。別の発進口から水中用KVを出撃させて、まとめて始末させろ!」

●参番艦・艦底付近
 水中巨大母艦だけあって、KV発進口も複数が存在している。直接キメラ侵入を受けた箇所より一番近い別の発進口から、行動可能深度に浮上するのを待って傭兵たちの水中用KV部隊が海中へと発進した。
「やれやれ。目的地に着く前に手間かけさせやがって」
 毒づきながらキメラ掃討に向かった傭兵達の機体を、淡紅色の光線がかすめた。
「――プロトン砲!?」
 予め待ち伏せをかけていたのか。
 KVの水中センサーが、こちらに向けて加速してくる水中型ゴーレムの機影を捉えていた。

●参加者一覧

青島・遼平(ga0258
22歳・♂・GP
榊 兵衛(ga0388
31歳・♂・PN
ゴールドラッシュ(ga3170
27歳・♀・AA
井出 一真(ga6977
22歳・♂・AA
須磨井 礼二(gb2034
25歳・♂・HD
夏目 リョウ(gb2267
16歳・♂・HD
アーク・ウイング(gb4432
10歳・♀・ER
真山 亮(gb7624
23歳・♂・ST

●リプレイ本文

「行くぞ『蒼影』、武装変だっ!」
 出撃命令を受けるなりAU−KVパイドロスを素早く身に纏った夏目 リョウ(gb2267)は、その姿でリヴァイアサン「蒼炎」へ飛び乗った。
 AU−KVとKVコクピットがAIにより機械的に連動、生身と変わらぬ操縦環境をセッティングする。
「2つの蒼が重なる時、新たな力が生まれるのさ」
「ああもう、このまま何事も無ければ楽できたのに」
 対照的にゴールドラッシュ(ga3170)は面倒そうにぼやきながら、水中発進口のハッチからリヴァイアサンで海中に滑り出した。
 確かに何事もなければ、寝ていても報酬の転がり込む依頼――だが世の中そう甘くない。
「これだけ大きいと見つからないわけにもいかないかぁ」
「なんかまあ、この艦、最近よく襲撃されるよなぁ? これだけデカイと流石に探知され易いって事かね?」
 同じくリヴァイアサン搭乗の井出 一真(ga6977)、ビーストソウル(BS)の「ヴァイキング」搭乗の青島・遼平(ga0258)も後に続く。
 全長だけを比べればギガ・ワームにさえ匹敵する人類側最大級の超巨大潜水空母。
 いかに深海を密かに航行するといっても、この巨艦をバグア側の監視網から隠し通すのはあまりに難しい。
「参番艦‥‥また襲われてるのか。なんとも難儀な艦だ。だが、今回もキッチリ守りきってみせるさ」
 先の大規模作戦ではカメル戦線から帰還途中の同艦護衛任務にもついた真山 亮(gb7624)がアルバトロスで出撃。
 しかしこれだけ目の仇にされるのも、逆に考えればバグア側が轟竜號の存在にそれだけ脅威を感じている証拠ともいえる。
「轟竜號をこれ以上傷付ける訳にはいかないからな。味方が『フナムシ』を片付けている間に俺たちはゴーレムの相手をする事としようか」
 朱漆色にカラーリングしたリヴァイアサン「興覇」の機内から、榊兵衛(ga0388)が通信で僚機に呼びかけた。
 艦内指揮所からの報告では、直接ハンガー内に侵入した「フナムシ」、すなわち水陸両用キメラ「デス・リギア」の数はそう多くなく、発見が早かったのも幸いし死傷者や損害は最小限で食い止められそうだという。
 だが艦外の発進口付近にへばりついたキメラ群を排除しない限り、内部からの破損口修理もままならず、新たに侵入してくるデス・リギアを殲滅するのに手一杯というから、状況は必ずしも楽観視できない。
「この前と同様、参番艦のピンチだね。こんなところで参番艦を沈めさせる分けにはいかないから、敵をさっさと倒さないと」
 アーク・ウイング(gb4432)が操縦席で呟き、
「厄介ごとが千客万来ですねぇ、轟竜號は」
 須磨井 礼二(gb2034)はいつも通りポジティブ思考でニコニコ笑いながらいった。

「厄介ごと」はキメラだけではない。
 8機の水中用KVが発進を終えるやいなや、深海の一角から淡紅色のプロトン光線が放たれてきた。
 KVの水中センサーが捉えた敵影は、水中用ゴーレムが5機。
 バグア軍とてこの程度の戦力で轟竜號を撃沈できるとは考えていないだろう。ゴーレム隊の目的は、おそらくKVによるキメラ排除作業の妨害と思われる。
 予期された事態に、傭兵達も素早く戦力を二分した。

 水中ゴーレム対応班(搭乗機)
 ・一真(リヴァイアサン)
 ・リョウ(リヴァイアサン)
 ・アーク(リヴァイアサン)
 ・礼二(リヴァイアサン)
 ・兵衛(リヴァイアサン)

 デス・リギア対応班
 ・ゴールドラッシュ(リヴァイアサン)
 ・亮(アルバトロス)
 ・遼平(ビーストソウル)

「数の上では互角ですね。一撃だけでも敵1機に集中攻撃を行い、彼我の戦力バランスを早くにこっちに傾けましょう」
 ゴーレム部隊に向けて進路を取り、一真は同班の僚機に提案した。
 さらにセンサーの捉えたゴーレムを、轟竜號側に近い機体からA〜Eとナンバリング。5機のゴーレムは中央の1機を先頭に左右に2機ずつが展開するデルタ態勢を取っていた。
 射程の長い敵のプロトン光線、さらにガトリング砲の砲撃に耐えつつ、こちらの有効射程距離まで引きつける。
「目標選定、諸元入力。スーパーキャビテーション魚雷発射!」
 5機のリヴァイアサンは一斉に魚雷や水中ミサイルを発射、先頭のゴーレムAに集中攻撃を浴びせた。
 母艦からの電子支援もあり、海中に白い航跡を曳いて放たれた魚雷やミサイルは狙い違わず目標に命中。飽和攻撃で大ダメージを与える。
「この艦をやらせるわけには行かない‥‥行くぞ『蒼炎』、大武装変だっ!」
 動きの鈍ったゴーレムAを狙い、ガウスガンを撃ちつつ接近したリョウはそこで「蒼きサムライ」を人型形態に緊急変形させた。
「熟練した槍斧の技、お前達に見せてやるぜっ!」
 生身の戦闘で愛用するインサージェントを扱うかのごとく、水中機槍斧「ベヒモス」を抜き放ち、ゴーレムAに斬撃を加える。
 動きをとめたゴーレムは水底深く沈み込み、そこで海水を震わせ自爆の水泡が広がった。
 まずは1機を撃破。そこから先は、各KVが最低1機のゴーレムを押さえる形での個別戦闘だ。
 兵衛の「興覇」もまた、左翼先頭のゴーレムBに接近、近接戦闘の間合いに入ったところで人型変形。エンヴィー・クロック起動。
「『槍の兵衛』の名がダテではない事を水中戦においても実証しなくてはならぬからな。悪いが、とことん付き合って貰うぞ」
 敵ゴーレムが振り下ろすBCアクスの知覚攻撃をかいくぐり、水中機槍斧「ベヒモス」の刺突を加えた。
 ただし槍一本やりではなく、敵との距離に応じてガウスガンによる牽制やBCアクスの間合いを外し、さらにゴーレムのプロトン砲が轟竜號に向かないよう自機を反対の方向へと回り込ませる。
 水中での闘いにおいても、変幻自在の槍使いは健在であった。

 僚機がゴーレム部隊を足止めしている間、対キメラ班3機は艦内指揮所からの誘導に従い、問題の発進口付近へと向かった。
「うっわ、何匹いるのよこのお化けフナムシ‥‥」
 轟竜號の艦体と発進口水密ハッチのちょうど境目部分に黒山のごとくたかって蠢くデス・リギアの大群をモニターで確認し、ゴールドラッシュが呆れたように声を上げた。
 本来なら中型キメラごときに侵入を許すヤワな外装甲ではないはずだが、あのカメル戦で受けた損傷により生じた僅かな隙間を狙われたのだろう。
 これだけの巨艦を完全修復するには、やはり日数が足りなかったのだ。
「さて、それじゃあ船体掃除を始めるとしようか。ヴァイキング、行くぜ!」
 遼平はKVを人型変形させ、水中ガトリングの有効射程に入るなり、キメラ群に対して掃射を開始した。
 艦体へ損害を与えないよう注意を払い、角度を浅く取って薙ぎ払うように弾幕を張る。血と肉の破片と化したデス・リギア多数が消し飛んで海の藻屑と化すが、わずかに覗いた轟竜號の外壁損傷部へ、生き残りのキメラが再び押し寄せた。
「さあ、行くぞ。アルバトロス。リヴァイアサンに遅れを取るなよ?」
 いつも通り火を点けないままの煙草をくわえた亮は、指揮所からのデータと自機のモニターでキメラの存在位置を確認後、WH−114長距離バルカンによる掃射を開始した。
「さって。バルカンで剥がれてくれるかね?」
 キメラの排除じたいは水中バルカンで充分だったが、ガトリング砲に比べるとやや威力不足は否めない。
「折角直った参番艦を、またキズだらけにする訳にはいかないっての!」
 そこで効率よく作業を進めるため、比較的ダメージの少ない外縁部に張り付いている奴らから狙い、ガウスガンの攻撃に切替えた。
「緊急事態である以上、多少の破損は許してもらいたいわね。かといって不要な損害を与える必要も無い。修理だなんだにかかる経費は抑えるに越したことはないでしょうし」
 と、しっかり金勘定をしながらゴールドラッシュはWH−114バルカンでキメラを掃射、艦体から弾き飛ばされてもまだしぶとく息のある奴らにガトリングでとどめを刺す。
 水中ガトリングの掃射を続け、移動しつつキメラ排除を行っていた遼平は、最もキメラ群の密度が濃い水密ハッチの破損口付近に来ると、兵装をキングフィッシャーに持ち替える。ハッチをこれ以上壊さないよう細心の注意を払いながらフナムシの怪物を押し潰し、引きはがす。
 3人の奮闘により、風呂場のカビのようにしぶとく張り付いていたキメラの大群も、徐々にその数を減らしつつあった。

 当初ダメージを負ったゴーレムAを狙いリヴァイアサンを加速させた一真は、その前に敵機が撃破されてしまったので、目標を右翼先頭のゴーレムCに変更。
 ガウスガンで牽制しつつ距離が詰まると、2種類の機体得能を一気に発動させた。
「SESフルドライブ。エンヴィー・クロック、インヴィディア、アクティブ! 一気に決める!!」
 敵の脚側に潜り込み、頭上に向けてベヒモスを繰り出す。
 ゴーレムの腰部分に機槍斧の刃が深々と食い込んだ。一真はベヒモスを持ち替え、敵の足を払う。水中ゆえにややスローモーな動きで体勢を崩したゴーレムに、大上段から振りかぶって追加ダメージを与える。
 ゴーレムCも至近距離からの重機関砲、BCアクスにより必死に反撃してくる。
 機関砲の砲弾はアクティブ・アーマーで受け、知覚攻撃の斧は回避を図る一真。
 敵の砲撃も油断できぬ威力だが、能動装甲による受防はそれをよく耐えた。
「流石リヴァイアサンだ、何ともないぞ」
 先制の一斉攻撃で撃ち残した対潜ミサイルR3−0を放ちゴーレムDにダメージを与えたアークはガウスガンと敵重機関砲の撃ち合いの末、互いに距離が詰まった段階で兵装をレーザークローに切替えた。
「こんなところでモタモタしてられないんだよね」
 残り練力に注意しつつ敵のBCアクスをエンヴィー・クロックで回避、お返しとばかりシステム・インヴィディアで強化したレーザーの爪でゴーレムの外装甲を斬り裂く。
 リョウは変形を繰り返しつつ移動してゴーレムDを翻弄し、なおかつベヒモスの旋回で水流を乱して敵が轟竜號を射程を収めにくいよう牽制した。
 熱血ヒーローのノリで戦う一方で、リョウは常にモニターで母艦と蒼炎、そして敵ゴーレムの位置を冷静に把握しつつ、巧みに回避と受けを使い分け轟竜號を守る配慮も忘れない。
「アクティブアーマ展開‥‥やらせるかっ!」
 重機関砲の砲弾を能動装甲で弾き、BCアクスの斬撃を回避。
 ゴーレムが見せた一瞬の隙を見逃さず、すかさずシステム・インヴィディアを発動、ベヒモスを横薙ぎに振るい渾身の一撃を叩きこんだ。
「輝け蒼き燐光‥‥蒼炎斬・大旋風!」
 ゴーレムDは腰の部分で両断され、海底に2つの水中爆発を巻き起こした。

「スマイル、スマイラー、スマイレージ〜♪」
 ゴーレムEに立ち向かった礼二は近接戦闘の間合いに入ったところでエンヴィー・クロック&システム・インヴィディアを同時発動。
 水中練剣「大蛇」を実体化させると、機体得能で威力を増幅された超濃縮レーザーの剣で初撃のダメージをお見舞いした。
 さらにレーザークローで敵のBCアクスとやりあっていると、ゴーレムBを片付けた兵衛の興覇がガウスガンで援護射撃を加えてきた。
「おっと。すいませんね、榊君」
 そのまま礼二のレーザークロー、兵衛のベヒモスでゴーレムの耐久力を削り、ついには自爆へと追い込む。
 ゴーレム部隊を全滅させたところで、5機のリヴァイアサンはブーストをかけ轟竜號の元へと引き返した。

 対ゴーレム班5機が合流したことでキメラ排除の作業スピードは一気に速まり、間もなく発進口付近に群がっていたデス・リギアを全滅させることに成功した。
 だが、まだ気は抜けない。
「さて、もう他には居ないだろうな?」
 外部カメラのモニター画像に目を凝らして遼平が呟く。
 巨大な轟竜號には複数のKV発進口、そして整備目的などの水密ハッチが存在し、そのどれかに別口のキメラが張り付いてないという保障もない。
 そこで傭兵達は、残り練力の許す限り母艦の周囲を巡回点検、キメラの索敵を開始した。
「どこに隠れてるか分からないからな。警戒は怠らず‥‥っと」
 艦から転送されるCGの全体図と首っ引きで、亮は構造上死角になりそうな部分を念入りに調べていく。
 案の定、外装甲部でも僅かに歪みや隙間のある場所にはデス・リギアの群れがいた。
 殆どは数も少なく、水中ガトリングの一連射で片付けられたが、中には銃撃の届きにくい凹部にぎっしりキメラが詰まっている場所もあった。
「しぶとい連中ねえ。こんな場所にまで‥‥」
 ゴールドラッシュはやむなくスクリュードライバーを使い、穴から掻き出すようにして水中に放り出し、あとはバルカンとガトリングの一斉射撃で始末する。
『ご苦労だった。艦内に侵入したキメラも全て殲滅が完了し、今は破損した発進口ハッチを内部から修理にあたっているところだ』
 指揮所からUPC軍士官の連絡を受け、傭兵達も母艦に帰投すべく手近の発進口へと向かう。

 かくして一つの危機を乗り切ったUK参番艦は、再び深度200mまで潜航し、逆に遅れを取り戻すべく速度を上げた。
 向かう先は氷に閉ざされた北極海。
 待ち受ける戦場で、今度こそ轟竜號がその眠れる力を開放させるのか。そしてその力はどれほどのものなのか――それは、まだ傭兵たちにすら判らなかった。

<了>