タイトル:【KM】決戦の島Bマスター:対馬正治

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 8 人
リプレイ完成日時:
2010/02/13 13:43

●オープニング本文


●2010年2月〜ソロール諸島・フロレス島
 上空からフレア弾爆撃を狙い急降下したS−01改の編隊が、タートルワームやレックス・ワームからの対空砲火を受けて次々と炎に包まれる。敵の砲火に装甲を削られつつも強硬着陸した雷電改部隊が、ヘビーガトリングとグレネード・ランチャーを撃ちまくり、地上に展開したバグア軍ワームやキメラ群を制圧。
 UPC東アジア軍、及び南方軍(ただし実質的には機能していないため、インドネシア軍を主力とした有志連合となっているが)によるカメル本土侵攻作戦「ガルーダ」はその第1段階であるフロレス島攻略戦を開始していた。

 最初の数日間、沿岸部に空爆と空挺作戦で攻撃を仕掛けた人類側KV部隊はバグア軍守備隊の頑強な抵抗に阻まれた。だがスラバヤ方面から到着した別動の第2艦隊が同島西部への攻撃を始めたことから戦況は一変。2正面作戦による消耗を避けたバグア軍は内陸部へ後退し、替わって人類側の陸軍部隊が海岸部から続々と上陸を開始する。
 後退するバグア軍を追い、さらに島の内陸部に侵攻したバイパー改パイロットの目に、立ちこめる硝煙の奥から同じ人型形態の機影が映った。
「こんな所に友軍機? ‥‥まさか鹵獲機か?」
 警戒のためディフェンダーを構え、改めて無線で所属部隊の確認を求めるパイロット。
 だが次の瞬間、煙の中から現れた「赤いバイパー」は初期機体と思えぬ素早い動きで接近してくるや、腕に装備したロンゴミニアトを無造作に繰り出し、UPC軍KVの機体を搭乗者もろとも粉砕していた。

●フロレス島沖合〜UPC空母艦内司令室
「『蟹座』がカメルに移動したという情報を聞いてから嫌な予感はしていましたが‥‥いよいよ現れましたな。FR並みに厄介な相手が」
 総司令官グナワン・ムハマド中将を筆頭に、ガルーダ作戦を指揮する陸・海・空の司令官、そしてその参謀達が作戦卓を囲み、予想以上の抵抗を続けるバグア軍守備隊への対応を協議していた。
「件の鹵獲バイパー‥‥『妲己』は、元はULT所属傭兵の愛機だったと聞きますが?」
「おいおい、敵さんの鹵獲改造KVなんて今に始まった話でもねぇだろうが? 別に元の持ち主のせいでもあるまいし」
 参謀の1人に話題を振られた松本・権座(gz0088)少佐が、顔をしかめて手を振る。
 特殊作戦軍将校である彼は、今回L・Hから参戦する能力者傭兵部隊を指揮する立場にあった。
「しかしあれは特別だ。ただでさえ最高レベルに改造されたバイパー改が、さらにバグア側の技術で強化されて‥‥現時点でも正規軍の被害はバカになりませんぞ?」
「‥‥つまり落とし前は同じ傭兵達に付けさせろってことかい?」
「『妲己』パイロットは敵司令官エリーゼ・ギルマン(gz0229)の腹心、フィリップ・ガーランドだったな?」
 ムハマド中将がおもむろに口を開いた。
「敵はそれだけフロレス島防衛に重きをおいているということだ‥‥ならば、なおのこと一刻も早くあの島を奪回する必要がある」
 中将は席を立ち、空母の艦橋から遙かに望むフロレス島を見やった。
「西側に上陸した別動隊とも連携し、一気に総攻撃を実施する。その際、傭兵達による少数精鋭部隊でガーランドの立てこもる敵司令部に強襲を仕掛けて欲しい。松本少佐、傭兵からの志願者を募ってくれるかね?」

●カメル共和国〜駐留バグア軍司令部
「計画通り後退に見せかけ、敵軍を島内に引きずり込みました。今後は長期持久戦に持ち込み、カメル本土に辿りつく前に地球人どもの兵力を消耗させてご覧に入れます」
 空間投影式スクリーンに映るサングラスの男――ガーランドが通信を介して報告した。
「うむ。私は本土防衛指揮のため動けないが、首尾良く敵軍をフロレス島へ張り付けたら出来る限りの増援を約束しよう」
 エリーゼはそう答えた後、素早く司令官席の周囲、オペレーターとして黙々と働く青服の少年少女達――NDFに視線を走らせ、さりげなくバグア本星語の会話に切替えた。
 すなわち、ここから先は友軍であっても「純粋なバグア以外に聞かれては不味い話」ということだ。
『極東ロシア戦のことを憶えているか?』
『といいますと?』
『あの中国の寒村で、私とおまえは結麻・メイ(gz0120)にさらわせてきた能力者2人をヨリシロとした』
『ええ。自分にとっては、この惑星に降りて最初のヨリシロです』
『器を乗り換えて半永久的に生き永らえるのは、我らバグアが持つ最大の能力だが――それは同時に致命的な弱点でもある』
『承知しております。一度ヨリシロに憑依した後、一定の期間が過ぎるまで乗り換えはできないのですから』
『そういうことだ。仮にいま器を壊されれば、私もおまえも本当の意味で消滅する‥‥くれぐれも気を付けろよ』

●参加者一覧

御坂 美緒(ga0466
17歳・♀・ER
リヒト・グラオベン(ga2826
21歳・♂・PN
漸 王零(ga2930
20歳・♂・AA
霧島 亜夜(ga3511
19歳・♂・FC
櫻小路・なでしこ(ga3607
18歳・♀・SN
月神陽子(ga5549
18歳・♀・GD
井出 一真(ga6977
22歳・♂・AA
風間・夕姫(ga8525
25歳・♀・DF
レティ・クリムゾン(ga8679
21歳・♀・GD
シャーリィ・アッシュ(gb1884
21歳・♀・HD

●リプレイ本文

「はいはーぃ、か弱いお猿さん乗りのお通りでーっす」
 敵味方、合わせて200機近いKVとHWが入り乱れて激突するフロレス島上空を、時折飛んでくる流れ弾を避けつつ、楽(gb8064)の骸龍が飛ぶ。
 やがて同機の高性能カメラが、島内中央の山岳地帯にUPC側の予測通りバグア軍守備隊司令部らしき陣地を捉えた。

 楽機からの連絡を受け、妲己撃破の特命を帯びた傭兵KV部隊も動き出す。
「敵陣の各所には陸戦ワームサイズの塹壕が掘られ‥‥まあ、まるで迷路ですわね」
 転送された地形データをモニターで確認し、櫻小路・なでしこ(ga3607)は驚きの声を上げた。
「ああ‥‥奴と戦いたい‥‥その為にも邪魔な狐はここで‥‥」
 漆黒の雷電改2「闇天雷」の機上で漸 王零(ga2930)は逸る闘志を抑える。
 奴――カメル本土で待ち受けるバグア司令官エリーゼ・ギルマン(gz0229)。
 だがその前に、まず倒さねばならぬ敵がいる。
「あの子はこの戦いで必ず沈めます‥‥」
 朱塗りのバイパー改「夜叉姫」を駆る月神陽子(ga5549)は、言葉少なだった。
「人々を守るための騎士が、人々を苦しめる悪夢となったのはやはり、わたくしの責任なのでしょうね‥‥」
 ならば、自らの蒔いた種は自らで刈り取るのみ。
 人型形態を取った仲間達のKVと共に、陽子は黙々と敵陣に向けて移動する。
 そんな彼女の機体を、同じく朱塗りのウーフー「緋閃」の操縦席から霧島 亜夜(ga3511)が気遣わしげに見やった。
「あの時の後悔は忘れない‥‥」
 己の考慮の不備が招いた、夜叉姫鹵獲という屈辱。
 だからこそ決めたのだ。夜叉姫を、陽子を、自分自身が盾になっても護り抜く「緋色の誓い」を。
「カメル攻略への第一歩か‥‥」
 四足形態を取った阿修羅改「蒼翼号」に搭乗の井出 一真(ga6977)の脳裏に、マリア・クールマ(gz0092)の面影が過ぎった。あの国でNDF計画が続行される限り、彼女が心から笑って過ごすことは難しいだろう。
「躓くわけにはいかないな」
「敵の主力の一つを潰せれば、カメル解放に一歩近づく。なんとしても成功させなければ」
 理由は違えど、「ガルーダ作戦」成功に賭ける意気込みはレティ・クリムゾン(ga8679)も同じだ。過去にカメル関連の依頼に関わったという事もあるが、己丑北伐の戦闘においてはあの地で戦友の傭兵が命を落しているのだから。

 通常KVでは離着陸の難しい地形、REX−CANON(RC)の対空砲火への警戒から、近傍の平地に着陸後、地上から敵司令部を強襲するというのが傭兵側の作戦である。
 だが敵将ガーランドの籠もる塹壕へ接近する前に、地形を利して妨害してくる護衛ワームを排除せねばならない。
 敵陣に近づくにつれ、KV各機のレーダーが乱れ、能力者達を激しい頭痛が襲う。
 敵司令部上空を覆うように展開したCWの怪音波だ。
 上空支援を担当する鈴葉・シロウ(ga4772)の雷電改がCWの掃討にかかった。
「私がキバる分だけ陽子さん達に楽がいくと思えば、これもまたひとつの愛の形」
 同じく上空支援のアルヴァイム(ga5051)、砕牙 九郎(ga7366)、鹿嶋 悠(gb1333)らもCW狩りと敵航空戦力の警戒にあたる。
「これで少しでも本隊が楽になれば良いですね」
 スラスターライフルの猛射で手近のCWを墜としつつ、悠はちらっと眼下の友軍を見やった。
 近づいてくるHWに対しては、九郎の雷電改がヘビーガトリングの弾幕で足止め。
 その間、アルヴァイム機はジャミング濃度分布、及び敵の動向などのデータを本隊の各電子戦機へ送り続けた。
 バグア陣地からRCの対空プロトン砲がさかんに発射される。だがそれは、結果的に地上への警戒を疎かにし、本隊の陣地接近を助ける事となった。

 上空のCWが見る間に数を減らし、怪音波の影響が軽微になった所で、今度は地上の支援部隊が陽動を開始する。
「陽子の機体、か。あの恐ろしさはよく知ってるわよ。でも、あの癖の強い機体を使いこなせるのかしらね?」
 ファルル・キーリア(ga4815)のS−01Hを含む陸上支援班は戦闘正面を避け、側面に迂回して敵陣に接近、最大射程距離まで迫ったところで陽動砲撃を開始した。
「引きつけられればそれでよし、引きつけられなければそのまま突入してしまえば良しといった所ですけれど‥‥、さすがに無謀ですかしらね?」
 カタリーナ・フィリオ(gb6086)は呟きつつ、ゼカリア主砲・420mm大口径滑空砲のトリガーを引く。
 塹壕から上半身を出したゴーレムが、陽動部隊にスナイパーライフルで応戦を開始した。
「OK.食いついてきたわね」
 アンジェラ・ディック(gb3967)は頃合いを見計らい、イビルアイズのBRキャンセラーを起動。
 それは本隊突入へのGOサインでもあった。

「幻霧、いきます。範囲から外れないように気をつけて!」
 シャーリィ・アッシュ(gb1884)の翔幻「アヴァロン」が機体得能を発動、僚機に合図を送る。
 司令部攻略を目的とする本隊10機のKVは、シャーリィが展開した幻霧に身を隠す形で一丸となって突撃した。
 こちらの意図に気づいたか、前衛に位置するゴーレム、RC部隊が目標を変更する。
 だがその時点で、既に有効射程範囲内へと距離を詰めたシャーリィを始め王零、御坂 美緒(ga0466)らがワームへの攻撃を開始していた。
「足止め? いや‥‥妲己の撃破を待つまでもありません。殲滅してこちらから合流するつもりでいきましょう」
 シャーリィはヒートディフェンダーを振りかざし、ゴーレムの1機へと果敢に斬りかかる。
「漸王零‥‥推して参る!!!」
 塹壕から飛び出し、近接戦ではゴーレム以上の攻撃力を誇る噛み付きと前肢の爪で襲いかかってきたRCを、闇天雷の腕に握られた大太刀グレートザンバーが半円の弧を描く様に薙ぎ払う。
 胸の辺りを真一文字に切り裂かれた恐竜型ワームが、悲鳴の様な咆吼を上げた。
「強敵揃いですけど‥‥ラクスミ様達を助ける為です。頑張りますよ♪」
 斉天大聖を操縦する美緒はジャミング中和や逆探知機能により友軍を電子支援する一方、シャーリィが戦うゴーレムを狙いMSIハンドマシンガンで援護射撃。
「ゴーレム如きで‥‥私とアヴァロンを止められると思うなっ!!」
 ヒートディフェンダーをリロードする合間を狙いBCアクスで白兵戦を挑んできたゴーレムに対し、至近距離から強化型ショルダーキャノンを叩き込み撃破する。
 見れば、別のゴーレムが脇をすりぬけ美緒機を狙っている。
「『盾の騎士姫』の名において‥‥ここは通さん。通るのならば私を倒すか骸となってだ!」
 ブーストで素早く回り込み、リロード済みのヒートディフェンダーで斬撃。
「恋する乙女の全力防御なのです!」
 美緒もまたKVライトスピアで敵の動きを牽制、シャーリィや王零の攻撃しやすい位置へと巧みに誘い出した。

 僚機が量産ワーム部隊を足止めしている間に敵前衛を突破したKV7機の前に、眼前の塹壕から浮き上がるように2体のタロスが立ちはだかった。
 濃緑色に機体を染め、小さな蟹座のエンブレムを付けていることから見て、エリーゼがウランバートルから連れてきた直卒部隊であろう。
 リヒト・グラオベン(ga2826)のディアブロ改「グリトニル」は、敵の振り下ろすハルバードを真ツインブレイドの刃を回転させながら受け止めた。
 かなり重い一撃である。だが先だってフロレス海で相見えたNDFのタロスに比べると、若干動きが鈍いように思えた。
(「流石は直衛を任せられている者‥‥しかし、プレッシャーを感じる程ではないですね」)
 いなすように引いて二つ目の刃で斬りつけた後、リヒトは斜め後方からレーザーガトリングで援護射撃にあたっていたなでしこのアンジェリカ「白姫」に無線で呼びかけた。
「なでしこ、『アレ』をやります。準備は良いですか?」
「了解です!」
 グリトリルは右手に機刀セトナクトに持ち、刃先を大地と水平に倒す。左手を相手に向けPフォースを発動すると、練力を注がれた機刀が金色に輝いた。
 ショルダーキャノンの砲火でタロスを牽制しつつ突撃、左手を引く反動で機体を捻りながら平突きを繰り出す。回避を図った相手に対し、横凪ぎの斬撃に切替えた。
 タロスの脇腹に深々食い込んだ機刀を手放し、そのまま横に下がる。
「今です、なでしこ!」
「SESエンハンサー起動――白姫、参ります!」
 間髪入れず、白姫の機体から迸ったM−12強化型粒子砲のビームがタロスの破損箇所を直撃。敵ワームに再生の暇を許さず大ダメージを与えた。
「お前の相手はこちらだ」
「これがやばくなると飛んで逃げるタロスって奴か」
 レティのディアブロ改「Pixie」と亜夜の緋閃がもう1機のタロスに立ち向かう。
 緋閃からジャミング中和とレーザー砲の援護を受け、重機関砲の攻撃を機盾で凌ぎつつ、タロスに接近したPixieは振り下ろされてきた敵のハルバードをかわした後、機槍グングニルの刺突をかけた。
「お前はここで墜ちろ。妲己の側へは行かせん」
「悪いが、早くあっちに行かないといけないんでね。最初から飛ばしてくぜ!」
 機槍によるダメージの回復を急ぐタロスに対し、亜夜は一気呵成にDR−2粒子砲の連射を浴びせた。
 よろめいたタロスを再びPixieのグングニルが貫く。
 再生能力を上回る被弾を浴び続けたタロスは、やがて動きを止めて自爆した。

 陽子、一真と共にシュテルン「ヴァナルガンド」で敵陣のほぼ中央まで到達した風間・夕姫(ga8525)の眼前に、塹壕の縁から音もなく陸戦形態の妲己が浮き上がった。
 夜叉姫の鏡像のごとく瓜二つの赤い機体に、鹵獲KVと知りつつも、つい傍らの陽子機を確認してしまう。
「フィリップ・ガーランド、お前の顔も見飽きた‥‥そろそろ退場願おうか」
「同感だな。ただし退場するのは貴様らだが」
 相変わらず無機質なガーランドの通信と共に、チェーンガンと自動バルカンの凄まじい弾雨が傭兵達めがけ降り注いだ。
 その威力と命中精度はタロスなどの比ではない。
 夕姫と一真は機体性能を駆使して回避を図るが、陽子のみは機盾をかざしじりじりと妲己へ近づく。
「その子に、これ以上、世界に悲しみを生み出させるわけにはいきません。貴方は、今、ここで、必ず止めてみせます!!」
「そうはいかん。これはいい機体だ。地球人ごときが使うには勿体ないくらいのな」
 2機の赤いバイパーは互いの機槍を振りかざし、中世の重装騎士による決闘の如く激突した。双方の装甲を抉る赤い破片が、FFとSESの火花と共に激しく飛び散る。
「くっ、やはり地力では向こうが上ですか‥‥」
 操縦桿を握り締め、一般人ならその場で即死する程の衝撃に陽子は耐える。
「ごめんなさい、20秒‥‥いえ、10秒で構いません、あの槍を止めて下さい。それだけあれば、相打ちになってでも、妲己は沈めて見せます!!」
 陽子の言葉に応え、一真の蒼翼号が鋼鉄の獣のごとく跳ねる。
「SESフルドライブ! ソードウィング!!」
 極限まで研ぎ澄まされた剣翼が、そして防御不能のクラッシュテイルが、続けざまに妲己を打ち据える。鉄壁の防御を誇るバグアKVも一瞬ぐらついたが、己の槍は機盾で巧みにガードする。
「中国で遭った奴だな。貴様の機動力は既に把握済みだ!」
 同じ手は2度食わぬとばかり慣性制御で先回りし、チェーンガンの銃口が吠えた。
 一瞬にして機体生命の半分近くを削り取られる。
「まさか!? 蒼翼号でさえ避けきれないなんて‥‥」
 その頃になると護衛のワームやタロスを倒した仲間達のKVが集まり、そして上空はCWを駆逐した支援部隊が抑え、妲己殲滅の包囲態勢は整った。
 だがKV部隊が放つあらゆる攻撃は物理・非物理を問わず跳ね返され、あるいは軽微な損傷しか与えられない。
「T−E−F−S臨界‥‥Sublimation(昇華)‥‥終わらせる」
 ブーストオン、超伝導アクチュエータ起動。闇天雷の全能力を込めた一撃が妲己の機盾を砕く。だがその代償に、カウンターの翼刃と自動バルカンをまともに浴びてしまう。
「むう。我の装甲すら斬り裂くとは」
 だが盾を失った妲己に対し、PRMで防御を強化したヴァナルガンドがすかさず飛びつき、その機槍を抱え込んだ。
「今だ! こっちはそんなには保たない! 早くやれ!!」
 振り下ろされる翼刃にみるみる機体を破壊されながら、夕姫が必死で叫ぶ。
「すみません、風間さん!」
 改めてロンゴミニアトを構え直し、チャージの態勢を取る陽子。
 しかし一瞬遅くシュテルンの機体は打ち砕かれ、爆炎の向こうから妲己のチェーンガンが撃ち込まれてきた。
「無駄だ‥‥貴様らにギルマン隊長の守るカメルの土は踏ません」
「それはどうかな?」
 夜叉姫と妲己の間に割り込むように、第3の機影が飛び込んだ。
「何ぃ!?」
 とっさに矛先を変えたバグア機槍が赤いウーフーの機体を貫く。
 だがそれは、己の槍を釘付けにする事でもあった。
「今こそ、積年の思いを果すぜ! 穿て、緋閃!」
 ガトリングナックルが敵の機槍を、妲己のチェーンガンが緋閃の機体をほぼ同時に粉砕する。
(「あとは任せたぜ‥‥姫様」)
 自ら機盾を捨て、夜叉姫は一陣の赤い風と化した。
 がら空きになった妲己のコクピット付近を、ロンゴミニアトが深々と穿つ。激しく火花が飛び散る中、とどめとばかりもう一方踏み込んだ。
 妲己が動きを止め、地響きを上げて跪く。
 機体の裂け目から、機槍に半ば押し潰された男の姿が覗く。否、輪郭が崩れ異形の姿に変貌していく「それ」は、もはや男でも人間でもない。
「ガーランド‥‥最後に、彼女に何か伝える事はありますか?」
「ソノ必要ハナイ。オマエハ、ワタシト――」
 再起動した妲己が、至近距離から夜叉姫に組み付いた。
「‥‥!」
 咄嗟に脱出ボタンを押す陽子。
 自爆の閃光と爆風が、周囲のKVさえなぎ倒した。

「ようやく‥‥終わり‥‥ましたね‥‥」
 撃墜された機体から負傷者を救出しながら、シャーリィが呟く。
 担架に乗せられた陽子に、回収してきた妲己の破片をレティが無言で手渡した。
「お帰りなさい。ゆっくりお眠り‥‥」
 破片を胸に抱き、傷だらけの少女の瞼から涙が零れた。
「‥‥甘い夢を見るのはもう終わりだ、エリーゼ‥‥」
 応急手当を受けながら、夕姫も負傷の痛みを一服の煙草で紛らわせる。
「私が‥‥私たちが‥‥お前を眠らせてやる…」

 守備隊長の戦死を知ったバグア軍ワームはカメル本土へと撤退。取り残されたカメル軍将兵は戦意を喪失し続々と投降した。
 人類軍はしぶとく抵抗する一部の洗脳兵、及びキメラの掃討戦に移り――。
 およそ一週間後、UPCはフロレス島の完全奪回を宣言した。

<了>