タイトル:汎用攻撃型KV【飛竜】マスター:対馬正治

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 1 人
リプレイ完成日時:
2009/07/30 12:14

●オープニング本文


●銀河重工〜熊本支社
「まっ『NMV計画』コンペの結果発表はまだ先だが‥‥うち(銀河)としちゃ、のんびりKV開発業務を休んでるわけにもいかなくってね」
 半袖のYシャツにノーネクタイ、第2ボタンまで空けたその男は、汗ばんだ顔を団扇でバタバタ煽ぎつつ、気さくな口調でいった。
「あ、暑いでしょ? 悪いね。いま部屋のクーラー故障しちゃってて‥‥麦茶でも飲む? ま、楽にして楽にして。いやどうもお疲れさん、わざわざL・Hから来て貰って」
 そういいながら能力者達に椅子を進める男の名は明石小源太。銀河重工熊本支社のKV開発部主任である。
「――あ、こちら未来研にいる先輩の紹介で来て貰ったナタリア・アルテミエフ(gz0012)博士。えーと、今は結婚してナタリア・シロガネさんだっけ?」
「いえお気遣い無く。公の場では旧姓を使ってますから‥‥よろしくお願いしますわ」
「そう? んじゃ、早速本題に入るとすっか」
 一般的に「生真面目なサラリーマン」のイメージが強い銀河社員とはちょっとズレた雰囲気の明石主任は、会議室のテーブルを囲む能力者たちの顔を見渡した。
「今日こうして集まって貰ったのは他でもない。例によってUPCに提案する新型KVの開発プランってわけだけど‥‥正直、うちも今ピンチなわけよ。何しろクルメタルの『シュテルン』、ドロームの『フェニックス』と立て続けに高級KVを出されたもんで、主力商品だった『雷電』がすっかり霞んじゃってねえ」
 とほほ――と言いたげに肩をすくめる主任だが、すぐ真顔に戻ると、
「‥‥でもまあ、ピンチはチャンスっていうしね。今のKV業界みてると、搭乗権価格を抑える代りに一芸特化させる‥‥ピーキーってやつ? あと支援機みたいのが流行ってるようだけど。うちとしちゃ、やっぱ王道で勝負していきたいわけよ。まあ現行のKVでいえばMSIさんとこの『ディアブロ』。発売から1年以上経つけど、まだ新人さんからエース級まで愛用してる傭兵さん多いでしょ? つまりそれだけ完成度が高かったってことね。そんな名機のシェアに真っ向勝負を挑めるような攻撃型KVをね。そこで今候補に挙がってるのが――」
 手元のビデオを操作すると、壁際のモニター画面にCGで描かれた飛行形態KVの画像が映し出された。
 これまで武骨な印象の強かった銀河のKVに比べるとやや細身でスマートな機体に、大きめの後退可変翼。
「開発コードXF−09B。愛称は一応『飛竜』って呼んでる」
 今の所あくまで「構想段階」と前置きしてから、明石主任は新型機のコンセプトを語り出した。

・空戦/陸戦を問わず攻撃を重視。
・回避・命中はやや高め。
・防御は中程度。ただし抵抗・生命を高めに設定し生存性を図る。
・コスト削減のため阿修羅、ミカガミのような内蔵兵器は付けない。
・装備、兵装スロットは最低でもバイパー並を確保。戦術のバリエーションを広げる。
・想定価格は250万C前後

「重装甲KVとしてはもう『雷電』、高回避は『ミカガミ』シリーズがあるしね。それにワームの攻撃手段はどちらかといや非物理攻撃が多いから、抵抗は高いに越したこたぁない。いや防御を軽視してるわけじゃないよ? それについてはまた後で説明するとして――」
 明石は再びリモコンを操作し画面を切替えた。
「こいつが歩行形態の方だ。まだイメージCGだけどね」
 モニターに現れた変形後の「飛竜」は、2足歩行なのは確かであるが「人型」というには少々語弊があった。有り体にいえばそれは2足歩行の肉食恐竜――ティラノサウスというよりはもう少し俊敏そうなヴェロキラプトルを思わせる。
「まあ恐竜型は敵さんのワームに先を越されちまったが、この尻尾は飾りじゃない。挌闘戦時には運動性を補完するスタビライザーに、大火力兵器発射時には地面に設置させてストッパーの役目を果たす。あ、残念だけど攻撃には使えないよ? これSES兵器じゃないから」
 再び画面が切り替わる。今度は実写映像だ。
 どこかのUPC軍演習場。歩行形態をとった阿修羅に、同じく歩行形態のミカガミB型が高分子レーザー砲を照射している。ダミーではなく本物だ。
 レーザー光線を浴びた阿修羅の機体表面に青白い放電光が走り、攻撃が終わった後の同機の装甲には傷ひとつついていなかった。
「――で、これが機体特殊性能の候補。『雷電』の超伝導アクチュエータの改良を研究してたら、実は防御目的にも転用できることが判ってね。まだ試作段階だけど、敵の攻撃エネルギーをごく短時間ながら物理・非物理問わず約50%減衰できる。いわば『超伝導コーティング』といったとこかな?」
 そこまで話し終えた明石主任は、改めて傭兵達に向き直った。
「とまあ、長々話してきたわけだが――今の所は殆ど机上のプラン。こいつはまだ卵から孵ってもいないひよっこ‥‥じゃない恐竜の子ってわけだ。というわけで、おたくら傭兵さん達からも色々話を聞いて、試作機の開発まで持っていきたいと思ってる。どう? 協力してもらえないかな?」

●参加者一覧

ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
明星 那由他(ga4081
11歳・♂・ER
千道 月歌(ga4924
19歳・♂・ST
井出 一真(ga6977
22歳・♂・AA
M2(ga8024
20歳・♂・AA
ルナフィリア・天剣(ga8313
14歳・♀・HD
時枝・悠(ga8810
19歳・♀・AA
アーク・ウイング(gb4432
10歳・♀・ER

●リプレイ本文

「コゲンタ君、このコーティングを無効にする装置はあるかね〜?」
 一通りの説明を終えた銀河重工開発主任の明石・小源太(gz0281)に、ドクター・ウェスト(ga0241)が小声で尋ねた。
「それはさすがに企業秘密だなぁ‥‥でも、何でそんなこと知りたいの?」
「FFさえ無効化できれば、ノーマルであってもキメラに、いやバグアですら対抗できるはずなのだ〜!」
 民間研究者として個人的に対バグア兵器の研究を続けるウェストは、かねてよりバグア軍ワームやキメラが装備するフォースフィールド対策に興味を抱いていた。
 彼個人の信念として、「能力者だけでなく、一般人向けのSES兵器にもワームやキメラに対抗できるだけの装備を開発するべき」という考えがあるからだ。
「ああ、なるほどね。判る、判る。あのFFってやつぁ、こっちから見りゃホント反則技だからなあ」
 Yシャツをはだけた胸元をバタバタ団扇で煽ぎつつ、小源太は苦笑した。
「ま、この試作型超伝導コーティングも『銀河版FF』といえなくもないけど‥‥ただし、バグア側のFFとはそもそも原理が違うんだよねぇ」
 たとえばバグア側にもFRなど一部人類側技術を取り入れた兵器は存在するが、FFやプロトン砲など「バグア本来の軍事技術」については未だにULTや未来研でさえ完全な解析はできていない。ただこれまでの実戦データから「能力者が使用するSES兵器で対抗できる」ことが判明しているだけだ。
「実際、君ら能力者の力を借りずにバグアのFFを無効化できる技術があるなら、こっちが教えて欲しいくらいだよ」
「物理・非物理のダメージを約50%減少できると聞いたけど、これは敵の攻撃がどれほどの威力があっても約50%減少できるの?」
 件の超伝導コーティングについて、アーク・ウイング(gb4432)が質問した。
「ああ、それは保証しよう。もっとも試作段階だけにかなりの練力を食うし、使用できるのは1ミッションで2、3回が限度といったとこかな?」

「ところで、何で陸戦形態が『恐竜型』なんでしょうか?」
 井出 一真(ga6977)が尋ねた。
 同じ銀河製KV「阿修羅改」を愛機とする一真は、「飛竜」の開発コンセプトを聞き「阿修羅の後継機」かと思い参加したという。
 ただし陸戦形態に4足歩行の獣型を選んだ阿修羅に対し、飛竜の場合は2足歩行。
「同じ二足歩行とはいえ恐竜型では動作モーションなどで一般的な人型とは一線を画す物が必要になってくるでしょう。関節部の機構などによっては共用できるパーツも減るのではないですか?」
「その心配はもっともだね。それでもあえて恐竜型を選んだのは‥‥」
 小源太は油性マーカーを取り上げ、会議室のホワイトボードにKVの戦闘機型、人型、恐竜型――3形態の大まかな比較図を描いた。
「俺自身が、KVを『空を飛べるロボット』じゃなくて『地上でも戦える戦闘機』とみなしてるのが一番の理由かな。ほら、恐竜は絶滅したんじゃなくて、さらに進化を遂げて現代の鳥類の先祖になった――って仮説があるじゃない? それと関係あるかは知らないけど、実際にコンピュータでシミュレートしてみたら‥‥陸戦形態から戦闘機形態への移行は、小型肉食恐竜のフォルムを取った方が効率的なんだよね、これが。だから変形機構はそれだけ簡素化できるし、変形時の負担やパーツの数もその分抑えられるって理屈」
「なるほど。そういうことだったんですね」
 感心したように頷く一真。
「とりあえず他の機体にない有用な特性を持ち、スペックが高く、かつ価格に見合ってりゃ売れる筈」
 雷電を例外として銀河製KVの伝統ともいうべき「軽戦闘機重視路線」に批判的なルナフィリア・天剣(ga8313)としては、より汎用的な重戦闘機を目指すという今回のプランをそれなりに評価している。
 そのため、彼女なりにかなり具体的な提案を用意していた。

・回避は削ってもいい。低過ぎない程度でOK。
・知覚も出来ればある程度は欲しい。攻撃重視の機体は既に出てるし独自性が欲しい。代わりに他の能力を若干下げるとかでコストダウン。
・出力系の切替で攻撃・知覚、もしくは攻撃型・防御型で切替を行える機能の搭載。
・僚機とのデータリンク。前衛機からの距離減算で後衛が攻撃できるとか。群れでの狩りのイメージ。
・特殊能力連続発動を前提に練力を強化。もしくは能力の燃費を徹底追求。
・素体は汎用型。能力値よりも改造で伸ばし難い部分を増強。
・雷電以上の拡張性を持たせ、装備品で方向性を変えられる様に。
 希望:装備650、副兵装5、アクセ5とか。
・移動は4欲しい。
・瞬間的大火力でなく、継続的に脅威となり続ける機体というコンセプト。

「この案だとヴェロキラプトルというよりはユタラプトル辺りだろうか。アロサウルスは‥‥違うか」
「『恐竜型』とはいっても、KVのアームには兵装を扱うマニピュレーターの役割もあるしね。両腕に関しては、もう少し人型に近い形状になると思う。昔のTVによく出た着ぐるみ怪獣みたいな感じかな? ハハハ」
 冗談をいいつつも、小源太はルナフィリアの提案を自分のビジネス手帳に1つ1つメモしていった。
「さっきの説明では触れなかったけど、知覚については最低でもディアブロ改より上に設定するつもりだ。当然移動も同レベルは維持する。他のKVと編隊行動を取る時に不都合がないようにね。装備650は‥‥ちょいと難しいかな? そこまで増やすと、たぶんシュテルン並の価格になっちゃうだろうからなあ」
 装備やスロット数についてはバイパー改〜雷電の間くらいを想定している、とのことだった。
「データリンクとか、出力系切替えについてのアイデアは面白いと思う。ただ技術的に可能か、コストの範囲内に収まるかこの場じゃ即答できないから‥‥このへんは開発スタッフとも協議したいし、今日の所は宿題ってことにさせてくれ」
「物理攻撃だけでなく知覚も重視して欲しい。どちらか一方に特化した機体は多いが、攻撃と知覚を両立した機体は一部の高級機くらいしか無いので、特色になると思う」
「汎用と呼べる基本的な能力はしっかりと持たせるという前提で‥‥阿修羅以上の攻撃力を持たせる攻撃強化機か‥‥ディアブロ並の攻撃力とバイパー改並の装備力・スロット数を持たせた多種攻撃機が良いと考えます」
 時枝・悠(ga8810)、明星 那由他(ga4081)も各々の立場から意見を述べた。
「そうだな。現状のプランだと、攻撃力は現行KVの中でも最高レベルになるはずだ。といって知覚を切り捨てるつもりもない。『汎用攻撃型』を謳っているのも、物理・知覚・空陸を問わず、目標により大きなダメージを与えうる機体を目指してるわけだからね」
「全体的なコンセプトについては掲示された傾向で異論ないが‥‥これで価格帯が250万C前後だとすると、『NMV計画』の機体と被るのではないか? そうなると、後発だけにいくらか不利になるような気もするが」
 と悠。
「それなんだよねぇ‥‥」
 小源太はボールペンの尻で頭をかき、弱ったように眉をひそめた。
「実は例のコンペの話が出たとき、俺としちゃぜひ飛竜を出したかったわけよ。ただUPCの意向じゃ随分急ぎの計画だってことで、銀河(うち)からは試作機の製造までこぎつけてた真ミカガミとシラヌイがエントリーされたってわけ。だからあのコンペの結果次第じゃ、飛竜の方も改めてコンセプトを見直す必要があるかもなぁ」
「高価過ぎるのは問題だが、もう少し高値‥‥あるいは逆でも良いかも」
「それも一案だな。もっとも高級機の方も雷電、シュテルン、フェニックス、ゼカリアと一通り出揃った感があるし‥‥価格についても、やっぱりNMVコンペの結果次第だね」
「奉天の斉天大聖みたいに、改修で攻撃型(攻撃優先)から知覚型(知覚優先)に性能を変更できないかな? 必要に応じて元の性能に戻すこともできたり」
 アークが提案した。
「あれかあ‥‥ありゃ奉天さんだから出来たシステムで、うちじゃ難しいだろうなあ。偵察用KVと戦闘型KVじゃ勝手も違うし」
「やはり恐竜のイメージは『強力な攻撃とすさまじいタフネス』ですから回避を少し下げて攻撃・知覚を高めに設定して防御・抵抗は特殊能力で補える事を考えればそこそこでいいから生命を高めに設定してほしいですね。あと特殊能力の事を考えれば練力も多くしてほしいですね」
「恐竜型」というイメージから夢を膨らませるのは千道 月歌(ga4924)。
「うん。概ねその方向で考えてるよ? 大きな声じゃいえないけど、なぜか生命の低いKVばかり出したがるのは、うちのエライさん達の悪い癖だからなあ‥‥」
 冗談混じりにいって笑う小源太。もっとも彼が熊本支店まで飛ばされたのも、案外そのあたりで本社上層部とソリが合わなかったからかもしれないが。

 銀河側の提示した開発プランでは「内蔵兵器を装備する方針はなし」とのことだったが、これには何人かの傭兵から異論が出た。
「ワイバーンは命中と機動力(行動)が売りの機体だ〜、内蔵兵器が無くとも兵装で補えるだろう〜。ただ今回は恐竜型の汎用攻撃機だ〜。ならば格闘武器くらい付けた方が良くないかね〜」
 ウェストが提案したのは内蔵兵器「ディノクロー」。
 恐竜型で使用可能。腕の部分に練力消費0で巨大な爪(攻撃10)を展開。単体でも射程0の武器として使用可能だが、近接武器の攻撃を+10する。
「搭載予定は無しとのことですが、ナックル・フット(テイル)コーティングくらいでもコストや能力を圧迫してしまうでしょうか?」
 那由他もコーティングにより機体の一部の兵器化を提案する。
「人型の利点が人と同じ動きが出来ることとすれば、恐竜型や獣型の利点は恐竜や獣と同じ動きが出来ることです。飛び掛るという動作に関しては人型より向いている形状だと思いますし‥‥」
「折角だから、恐竜っぽい内蔵兵器を付けましょうよ。俺は脚爪が良いなと思うんだけど、どうだろう?」
 というのはM2(ga8024)。
「ビームコーティングだと尚良し。でもこれ付けると、値段高くなるかなぁ‥‥」
 ただしこれには、悠の様に反対する者もいた。
「形状を生かした内蔵兵装も欲しい気がするが、値段が張るなら無くてもいい。『汎用』攻撃型KVを謳うのなら、特殊能力や内蔵兵器を増やすよりは性能を底上げした方が良いと思うな」
「‥‥あまり値段に響く様なら、後付けの推奨兵器でもいいかな?」
 少し考え直し、M2がいう。
「いや俺も、最初に構想を練ってる時はそういうのも考えたさ。やっぱり恐竜型KVで爪や尻尾を挌闘戦に使えるってのは浪漫だし。‥‥たださ、それやると阿修羅やミカガミと同じく陸戦特化機になっちゃうんだよねえ」
 腕組みした小源太が、難しい顔で天井を仰ぐ。
「最近じゃゼカリアみたいに固定兵装を本体とは別に強化できるKVも発売されたけど‥‥あれは陸戦限定、しかも戦車型KVだからね。コンセプト的に飛竜とは正反対だし」
「さっきの話では両腕に兵装を装備できるとのことでしたけど、尻尾の先にもハードポイントを設定したらどうでしょう?」
 折衷案の様な形で一真が提案した。
「尻尾の先端部に格闘武器を装備し、尻尾ごと振り回すとか‥‥恐竜型らしい戦闘が出来そうですが」
「ああ、それなら可能だな。ついでに両肩にもハードポイント付けて、ショルダーキャノン2連装とか‥‥おっと、敵さんのワームにそんなのがいたっけ」
「あの‥‥機体特殊能力なんですけど、超伝導コーティングだけなんですか?」
 おずおずと那由他が尋ねた。
「いや。これもコストとの兼ね合いになるけど、もしかしたらもう1つくらい追加できるかもしれない。これについては今検討中だけど」
「この『超電導コーティング』はいい性能だと思いますね。今までにない防御性能ですね‥‥なんか雷電向きな能力な気がしますがね」
 と月歌。
「元々雷電の超伝導アクチュエータ改良試験中の産物だからね。ただ残念ながら、現行の雷電に追加装備はできない。それこそ機体設計を一からやり直さなきゃならないよ」
「『超電導レインフォース』‥‥命中と攻撃か知覚を一時的に向上させる特殊能力なんてふうなのはどうでしょう? そうすれば汎用攻撃型と銘打つ機体にふさわしいと思いますよ」
「コーティングがアクチュエイターから派生しているなら、回避と防御に切り替えて使えるようには出来ないかな? 飛竜の場合はまだ設計段階でしょう?」
 これはM2の意見。
「ああ‥‥あと『飛竜』というと他のメーカーの『ワイバーン』とイメージが被る気がするので何かほかの名前にした方がいいかと思います」
 ふと思い出したように、月歌がいった。
「おっと、そうか。そこまでは気が回らなかったなあ」
「そうですね‥‥『舞竜』なんてどうでしょうか?」
「語尾に『竜』が付くと奉天の龍シリーズと被ってる気がする」
 ルナフィリアが反対する。
「何か別の‥‥雷電の次って意味を込めて『震電』?」
「まあ『飛竜』ってのはあくまで開発中の愛称だから。今日は色々と意見も聞けたし、新しい愛称も含めて‥‥設計を詰めていくとしますか」
 そういってビジネス手帳を閉じる小源太。
「あ‥‥それとこの機体とは別件ですが他のメーカーの最新鋭機によって雷電が霞んできてると思うなら、それは改良を行う時期が来たとということだと思います」
 席を立ちかけた小源太に、月歌が声をかけた。
「私もそう思う。ぜひ担当の部門に伝えてくれ」
 ルナフィリアは、傭兵仲間である漸 王零(ga2930)からのメッセージを託されていた。

『銀河乗りの一人としての意見だ。
 この能力は銀河の魅力になるだろう。あと、攻撃型というなら切替式で攻撃・知覚のどちらかを上昇できる能力を追加した方がその名に恥じないと思う。
 別件だが最新機体が出てきて雷電が霞んだと思うなら改良を行う時期が来たという事だと思う。できるだけ大勢の意見が聞く集会形式での開催を希望したい』

「なるほどね‥‥」
 暫くじっと考え込んでいた小源太であったが、やがてパンッ! と両手を打った。
「判った! 雷電バージョンアップの件については、この明石・小源太、責任を持って本社に要請しましょ。ま、場合によっちゃ飛竜は後回しになるかもしれないけど‥‥その時は、またよろしくっ!」


 会議終了後、記念の粗品を受け取り、銀河重工熊本支社のビルから出た傭兵達の頭上を、梅雨明けの暑い陽射しがカッと照らす。
「いろんな会社からいろいろと新型機が提案されているけど、日の目を見れるのは少しなんだよね。今回の機体がどうなるか分らないけど、できるなら世に出て欲しいよね」
 眩しげに眼を細めつつ、アークは呟くのだった。

<了>