タイトル:【G3P】試験艇護衛マスター:対馬正治

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/04/05 13:44

●オープニング本文


「防戦一方ではこの戦いに勝てません。今こそ思い切った攻勢で戦局を打開すべきでしょう」
 MSIのCEO、ダニエル・オールドマン(gz0195)が静かな情熱を込めて語る。
 同席するスーツ姿の男達も、同意する様に頷いた。
 それぞれ奉天北方工業公司、銀河重工トップの代理として派遣された重役である。
「‥‥そのために、あなた方の出した結論がこれという事ですな?」
 UPC東アジア軍中将、椿・治三郎(gz0196)は、卓上に置かれた書類に視線を落とした。
「既に我々の意志は決まっております。もはや国家や企業の利害に拘泥している時ではありません」
「左様。このままでは座して死を待つも同然!」
「ぜひ、UPCからも全面的に協力を願いたい!」
「‥‥」
 椿中将は即答を避け、腕組みしてじっと瞑目する。

 アジアを代表する3大メガコーポレーションの連名で提出された極秘計画書――その表紙には、ただ『G3P』とだけ大書されていた。

●ラスト・ホープ〜未来科学研究所
「君、ちょっとテストパイロットを引き受けてくれんかね?」
 上司の蜂ノ瀬教授から気安くいわれ、ナタリア・アルテミエフ(gz0012)の顔が微かにひきつった。
 能力者でありながら、幼少期のトラウマから彼女が大の飛行機恐怖症であることは(ごく一部で)有名だ。といってもKV操縦は基本的な部分をエミタAIがサポートしてくれるので「全然操縦できない」というわけでなく、あくまで「乗るのが苦手」というメンタル面の問題だが。
「あ、あの‥‥いま、ちょっとエミタの調子が悪くて‥‥」
「おや? 確か昨日メンテを受けて、『絶好調ですわ♪』とかいってなかったかね?」
「え? それは、その‥‥」
 上司の前で余計な事を口走るものではない。
「ええと、でも‥‥やっぱりこういう重要な任務は、正規軍か傭兵の専門パイロットにお願いした方が‥‥」
「本来ならそうしたい所なんだがね。今回は銀河重工本社直々の依頼で、『機密保持のため、テストパイロットはあくまで研究所関係者にしてほしい。試験データやコクピット内で見たものについても、一切外部には漏らさないように』との注文なのだよ」
「ずいぶん、厳重なんですわねえ」
「うむ。何でも、試作潜水艇の航走試験との話だが‥‥」
(「潜水艇‥‥?」)
「といいますと‥‥水中を走るわけですか? 空を飛ぶのではなく」
「当然だろう? 潜水艇なんだから」
 ナタリアは内心で胸をなで下ろした。
 海に関して特にトラウマはない。水中用KVの操縦は未経験だが、能力者ならばバーチャルシミュレータでの訓練により短期間で習得できるはずだ。
「そういうことなら、お引き受けいたしますわ♪」
「おお、そうか。助かるよ、うんうん」
 上機嫌で何度も頷く蜂ノ瀬。頭の中では、この機会に銀河重工に新たな「貸し」を作って研究所への援助資金増額を引き出す事までちゃっかり計算しているのだろう。
「それはともかく、銀河重工も水中用KVの開発に乗り出したのですか?」
 現在非量産型も含め3つのメガコーポが生産・販売する水中用KVだが、そのバリエーションの少なさから、まだまだ新規参入の余地はある市場だ。海洋国である日本の銀河重工が水中用KVの開発に乗り出しても不思議はない。
「それが、どうもよく判らんのだな‥‥あちらにいわせれば『次世代水中エンジンの基礎研究』との説明なんだが‥‥今回実験するのはSES機関の超伝導水流推進エンジンだけ。それも、ビーストソウル(BS)の機体に新型エンジンの試作品を搭載した実験艇だそうだ」
「BS? ということは、MSIが協力しているのですか?」
 これにはナタリアも首を傾げた。
 高性能水中用KVとして評価の高いBSだが、販売元のMSIがわざわざライバルになると知りながら銀河重工の水中用KVの開発に協力するものだろうか?
 もっとも最近はドロームとカプロイア社の共同開発によるA−1ロングボウなど、メガコーポの枠を超えた協力体制も徐々に始まりつつあるが。
「さあねえ? ま、それは銀河やMSIの企業戦略であって、我々研究者が詮索する事ではないな」
「はあ‥‥」
 上司に渡された資料に目を通すと、今回テストに使用される試作潜水艇『しおさい』は機体こそBSの流用品だが、武装や人型変形機構はすべてオミットされ、内部機構もだいぶ簡素化されている。
 本当に「新型エンジンのテスト」だけを目的に造られた試験艇のようだ。
「試験航行の日は一週間後。場所はL・H近海を予定している。それまでに、シミュレータで一通りの操縦をマスターしておいてくれたまえ」
「大丈夫でしょうか? 試験艇のテストとなると、ひょっとしてバグア側の妨害が‥‥」
「L・Hの近くならUPC海軍が哨戒しているし、水中ワームに襲われる心配はあるまい。ただ、哨戒網をすりぬけた水中キメラが出る可能性はあるな‥‥まあそれについてはULTに護衛依頼を出しておこう」

●参加者一覧

鯨井昼寝(ga0488
23歳・♀・PN
須佐 武流(ga1461
20歳・♂・PN
刃金 仁(ga3052
55歳・♂・ST
威龍(ga3859
24歳・♂・PN
ソフィア・アナスタシア(ga5544
18歳・♀・FT
美海(ga7630
13歳・♀・HD
龍深城・我斬(ga8283
21歳・♂・AA
マグローン(gb3046
32歳・♂・BM

●リプレイ本文

「しおさい」及び護衛のKVを搭載した銀河重工所有の実験母船(改造タンカー)がL・Hの港を離れたときから、傭兵達の関心は今回の航走テストの目的、及びその名前のみが公表されている某計画との関係に向けられていた。
「所でG3Pとはなんぞ?」
 刃金 仁(ga3052)が口に出し、首を捻った。
 銀河重工、MSI、そして奉天公司。アジア地域を代表する3大メガコーポによる合同大型プロジェクト「G3P」――ただしその具体的な内容は未だ非公開だ。
「MSIの機体に銀河のエンジン‥‥水中戦用試作機の開発‥‥か?」
 潮風に吹かれつつ、須佐 武流(ga1461)も呟く。
「G3P計画ってのは‥‥MSIと銀河の局地専用機開発、もしくは新型機開発の共同プロジェクト‥‥なのか?」
 今回の「しおさい」試験がその一環であるとすれば、何らかの水中兵器に関する開発計画である可能性は高い。
「次世代水中エンジンか、そのうちオミット無しでも獣魂に乗せられる様にって‥‥依頼主が銀河重工だと? MSIが獣魂を提供したってのか?」
 やはりG3P絡みの別依頼でMSIの技術発表会にも参加した龍深城・我斬(ga8283)も、詳しい依頼内容を知らされた時は首を傾げた。
「この前の技術発表会で移動力強化希望なんて出したから、新型エンジンの発注を銀河にとか?」
「銀河が何を考えているのか分からないが、新型の水中戦闘機が開発されるのなら頼もしい味方になることは間違いないしな。この任務を必ず成功させて、弾みを付けることにしようか」
「今か今かと待ち望んでいる次世代水中機、その心臓部になりえる可能性のあるエンジンのテストを間近で見られる機会に巡り合えました事に感謝しましょう」
 威龍(ga3859)やマグローン(gb3046)も口を揃えていう。
「どこのメーカが開発しようと、強く使いやすい水中機体が登場することは大歓迎よ」
 と鯨井昼寝(ga0488)。
 銀河側からはっきりした説明はないが、「やはり新型水中用KVの開発計画では?」と予想する傭兵達は多かった。

「今更潜水艇でありますか? いったい何なのでありますかね〜?」
「海の娘」を自認するほどの海戦スペシャリスト傭兵・美海(ga7630)にとっても、今のご時世に変形機構も持たない「新型潜水艇」の開発は不可解に思えた。
「海に関しては美海の知らないことがあるのは気持ち悪いであります」
 護衛任務の必要上――との理由から依頼主の銀河側に申請し、何とかテスト直前の最終チェックを受ける「しおさい」実物を見学する許可を得た。
 もっとも機体はBSからの転用なので、見た目は「白くカラーリングされたBS」としか映らない。
「試作エンジンと操縦系統、パイロットの生命維持機能などは残して、武装や変形機構は取り外してあります。外見は同じでも、完全にBSとは別の船ですわ」
 直接「しおさい」に乗り組み、テストパイロットを務める未来研のナタリア・アルテミエフ(gz0012)が説明した。
「つまり完成したエンジンは、別の機体に乗せるのでありますね〜」
 BS航走形態そのままのスマートな流線型ボディを見上げ、興味津々の美海。
「多分そうなりますね。それがKVか、別の水中用兵器なのかは私にも判りませんけど‥‥」

 やがて母船は予定の海域に到着し、テストにさきがけ試験艇と母船を護衛する傭兵達のKVが順次クレーンで海中に下ろされていった。
「ビーストソウルでの初陣だし、気合いれていこう」
 傭兵としても初依頼となるソフィア・アナスタシア(ga5544)が、張り切って出撃待ちのBSに乗り込んでいく。
「水中戦なら人並み以上に戦えるはず、精一杯やらせてもらうよ」
「予想される敵戦力はワームではなく海棲キメラ数体程度。マトモにぶつかるのであれば、それほど難しい仕事ではないわね‥‥」
 KF−14改で出撃する昼寝は、それでもなお慎重だった。
「キメラの中には情報収集を目的としたタイプもいるようだし‥‥油断は禁物ね。相手がそれほど強くはないのであれば、いかに迅速に処理するかが重要になるわ」
 キメラ自体の知能は高くないといえ、偵察用カメラなどを移植されスパイ任務で放たれた奴がいないとも限らない。昼寝はそれを警戒していた。
 一方、我斬はこたつむりを着たままBSに搭乗した。見かけは炬燵だが、実は背負ったまま氷点下の戦場でも戦えるという特殊防寒装備である。
「重いし電源が要るからあまり実戦向きじゃないが‥‥KVの中なら問題あるまい」
 実際、やや狭苦しいものの操縦に支障はなさそうだった。
 コクピット内のコンセントに電源ケーブルをつないでスイッチONにすると、ポカポカして実に心地良い。
「俺は今最強に暖かい!」
 手元にみかんと漫画雑誌でもあれば何時間でも引きこもれそうだ。
 ‥‥さすがに任務中そういうわけにもいかないが。
「おや、あなたハヤブサ乗りで?」
 水中用キット改装備のKVをクレーンの方へ移動中の武流に、銀河社員の一人が声をかけてきた。
「ああ。1年以上使い続けて‥‥そこそこに戦果も出してるからな?」
「いや実は私、当時そのKV開発に関わった一人で‥‥近頃は新型のKVも次々と発売されてますが、そうやって長く愛用して頂けるのは有り難いことです」
 そういって、銀河の技術者らしき男は嬉しげに何度も頷くのだった。

 護衛のKV全てが着水し、周辺海域の安全を確認した後、最後にクレーンで「しおさい」が降ろされ水飛沫を上げて海中に潜った。
「こちら、鯨井機。そちらからはモニターできてる?」
 KF−14改の操縦席から、昼寝は母船へと確認の無線を送った。
『こちら母船。水中センサー、画像データ共に良好。各機の位置も確認済みです』
「よかった。今回の依頼には現在流通してる水中用KVが全種類揃ってるから。もし戦闘が起きたらよく見ててね? きっと参考になるわ」
『了解。よろしくお願いします』

 傭兵達の任務は航走試験の最中、母船と「しおさい」の双方を護衛することになる。
「元々水中用じゃない俺の機体は潜水艇の護衛向けじゃないな‥‥」
 そう考えた武流は母船近くでの直衛を選択。
 同じく昼寝、W−01改搭乗の仁、マグローンも母船周囲の護衛に就く。
「同じ箇所に留まり護衛、と言われず助かりました‥‥水中では動き回って居ないと落ち着かない体質でしてね」
 マグローンが苦笑しながら潜航を始めた。
「しかし‥‥水の抵抗は想像以上に強いのだな‥‥ここまで動きにくいとは予想外だ‥‥」
 このとき武流は試みにハヤブサの翼面超伝導流体摩擦装置を起動させてみた。ひょっとするとこの機体得能で水圧抵抗を減らし、水中用キット改の性能以上の深度に潜れるかもしれない――と考えたからである。
 結果として水中での起動自体に問題はなかったものの、潜航深度を稼ぐまでには至らなかった。やはり行動可能なのは水深50mまでに限られるようだ。

「しおさい」の護衛は威龍&ソフィア(A班)、我斬&美海(B班)がペアを組み、4機のBSが2班編制で行う。ただし両者の距離があまり離れると護衛機の負担が大きくなるため、「しおさい」の行動範囲は「母船を中心にした半径およそ100m圏内」と予め決められていた。
 まずは母船を中心に円を描くような航路で、深度30mの浅海を巡航速度による航行テスト。
 新型エンジンといっても、巡航速度で走っている限りは通常のBS航走形態とさして変わりない印象だった。船内ではナタリアがエンジン作動状況や燃費などについてのデータをチェックし母船に転送しているはずだが、その内容はデジタル暗号化されて護衛のKVにも中身を知ることは出来ない。
 続いて左右にターンしたり潜航・浮上を繰り返したりと運動テストに入る。
「あまり回避は高くなさそうだなあ」
「本当に普通の潜航艇でありますね〜」
 その様子をサブアイカメラのモニターで見守りながら、我斬と美海が通信をかわす。
 いくら潜航艇として優れていても、肝心の運動性が低ければ水中戦闘機として小回りの利くキメラやワームと戦うのは難しい。わざわざMSIの協力まで仰いで、いったい銀河は何を造るつもりなのか‥‥?
 傭兵達の疑問をよそに、
『巡航速度によるテスト終了。続いて最高速度テストに入ります』
 ナタリアからの通信が入った。
 そこでA班2機が先回りし、テストコースのゴール予定地点まで移動した。
『SES超伝導水流推進システム、出力全開です!』
 ナタリアの合図からものの十秒と経たぬうち――。
 傭兵達が搭乗するBSのモニターに、白い水泡に包まれロケットのごとく水中を突進する「しおさい」の映像が映った。
 そのスピードはブーストオンしたBSの倍以上はある。
「おいおい、実験機であの速度かよ? 専用の機体が出来たらどれだけの物になるのやら‥‥」
 思わず声に出して驚く我斬。
「こういうのが量産されれば水中戦も少しは楽になるってもんだね‥‥」
 ソフィアもまた、素直に感心して頷く。
 離れた場所で母船の護衛につくマグローンも、航走テストの模様をモニターしつつ、
「素晴らしい。バショウカジキ(地球最速魚類)をも凌ぐスピードですね。これは今後に期待出来そうです」
 と感動したように呟いた。
 どうやら銀河の開発した新型エンジンは、その高出力と加速性において現行の水中用KVを遙かに凌駕するようだ。BSの機体を転用したのも、水中でこれだけの速度を出すには同機の耐水圧装甲が必要だったのだろう。
「む〜、謎なのでありますよ‥‥もしかしたら水中機の航続距離向上用のブースターなのでありましょうか?」
 美海は深まる疑問に首を傾げた。
 M0.3超という脅威の水中速度をマークした後、減速した「しおさい」がUターンして引き返してきた時。
 護衛KV各機の水中センサーが、深海から浮上してくる何者かの「影」を探知していた。大きさは小型の鯨並み。しかしその姿は――。
「水中キメラ‥‥シーサーペントだ!」
 威龍が警告を発し、4機のBSは「しおさい」を庇う形で迎撃態勢を取った。
 超伝導エンジンの作動音を聞きつけたのだろうか? 伝説の大海蛇を模したようなキメラが3匹、細長い動体をくねらせ接近してくる。
「初お披露目に襲ってくるなんて野暮な連中だね‥‥うちのお姫様には近づけさせねぇ」
 ソフィアを始め、BS各機は有効射程に入ったシーサーペントを狙い、一斉に熱源感知ミサイルや魚雷、ガウスガンといった水中兵器を発射した。
 練力を注がれた弾体が白い航跡を引いて走った先で、相次いで命中し水中爆発を起こす。
「水中用の武装の威力は伊達じゃないよ!」
 遠距離兵器を撃ち尽くした後は、さらにガウスガン等の中距離兵器による弾幕を展開。水中型ワームに比べれば脆弱な水棲キメラの群は、この段階でほぼ虫の息と化していた。
「けもたまの水中格闘能力を試す良い機会かと思ったが‥‥そこまでの相手でもなかったな」
 レーザークローを実体化させた威龍が、身もだえする海蛇キメラの1匹にとどめを刺す。
「精々俺の水中戦闘経験に貢献して貰おうか!」
 我斬はツインジャイロを振り上げ、なおも抵抗するシーサーペントの土手っ腹を抉った。

 ちょうどその頃、母船を護衛していたKV部隊も別方向から出現したシーサーペント2匹と交戦状態に入っていた。
 最初に気づいたのは、事前に入手した海図情報を頼りに護衛がてら周囲の海底地形や潮流などを観測していた仁だった。
「やらぬよりはな、足元が見えないのに戦うのは辛かろう‥‥む?」
 限界深度近くまで潜ったW−01改の水中センサーに、さらに深海から浮上してくる2つの影。
「しばし騒がしくなるだろうな」
 直ちに上方にいる母船護衛班に連絡。
「了解、ただちに向かいます」
 マグローンを始め同班KV部隊が駆けつけ、4機で迎撃態勢に入る。
「しおさい」護衛班同様、飛び道具を持たないキメラへの対処としてまず遠距離からの魚雷や誘導ミサイルによる攻撃。
「ふむ当ったか、では次じゃ」
 続いてガウスガン、ニードルガン等の中距離射撃で敵の耐久を削る。
「時間をかけるのもバカらしいわね。一気に勝負をつけるわよ!」
 キメラどもの動きが殆ど止まったのを見て、昼寝がKF−14改で接近、レーザークローを叩き込んだ。
「腹から掻っ捌いて‥‥蒲焼にして食ってやる! ‥‥ってな?」
「海蛇型‥‥となると、頭を潰しておけば確実でしょうね」
 武流とマグローンも各々の近接兵器でシーサーペント達を切り刻む。
 仁は万一キメラが防衛線を擦り抜けた時は機体を盾にしてでも母船を守るつもりで警戒していたが、幸いその必要もなく勝負は付いた。
 キメラの群はテスト妨害を図ったというより、たまたま付近を遊泳していて母船のスクリュー音を感知して襲ってきた――というのが真相らしかった。


 途中でキメラ乱入というアクシデントはあったものの、無事一連のテストを終えた「しおさい」と護衛のKV部隊は再び母船に収容された。
 L・Hへ帰港の途上、傭兵達は船内の休憩室でナタリアや銀河側スタッフらと共にお茶を飲んでくつろいだ。
 当然、話題は今回のエンジンテストの目的、そして「G3P」との関連について、銀河の技術者に質問が集中する。
「やはり新型の水中用KVですか? それくらいは教えてくれてもいいでしょう」
 威龍の問いかけに対し、
「実は『しおさい』の新型エンジンについては、我々も上から降りてきた仕様書に基づき設計しただけで、最終目的は知らされていないんですよ」
 技術者の1人が弱った顔で答える。
 一見無関係な複数プロジェクトで各々必要な技術や装置を開発し、最終的に1つの「完成品」として組み上げる。全体像を知るのは、一握りのトップだけ――これは巨大軍事プロジェクトにおいてしばしば取られる手法である。
「わざわざ、銀河にMSIがのう‥‥」
 仁の脳裏につい「宇宙」のイメージが過ぎったが、口には出さず独り思索を巡らす。
 だが「あくまで個人的な見解」と断ったうえで、技術者は声を落として続けた。
「ご覧の通り、あのエンジンの性能は素晴らしいものですが‥‥現行の水中用KVに搭載するにはかさばりすぎるんですよね。おそらく完成版はさらに大型になるでしょう。となると、使用するのはKVより大きな、たとえばUPC海軍で使う潜水艦とか――あ! これはここだけの話にしといて下さいよ?」
 そういって、技術者は慌てたように手を振るのだった。

<了>