タイトル:コスプレ聖夜マスター:対馬正治

シナリオ形態: イベント
難易度: やや易
参加人数: 23 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/01/02 22:45

●オープニング本文


●ラスト・ホープ軍港〜空母「サラスワティ」艦内
「なにっ。兄上がL・Hに来る、じゃと?」
 艦長室のデスクで書類に目を通していたプリネア王女にして「サラスワティ」艦長のラクスミ・ファラーム(gz0031)は仕事の手を止め、驚いたように顔を上げた。
「兄上」とは他でもない。ラクスミの実兄、プリネア皇太子のクリシュナ・ファラームである。
「はっ。先ほど本国より通達があり‥‥何でも、昨今のアジア地域における戦局について、UPC軍上層部と意見交換されるご予定とかで」
 デスクの前に背筋を伸ばして立つ副長・シンハ中佐が報告した。
「クリシュナ殿下におかれましては非公式のご来訪ゆえ、あまりお時間もとれないようですが、折角の機会に本艦にもお召しになるとのご意向であります」
「ふむ‥‥そういうことなら、本艦としても何か歓迎の支度をせねばならぬのう」
「御意。ちょうどこの季節ですし、クリスマス・イブの夜会などは如何でしょうか?」
「クリスマス? いわれてみれば、もうそんな時期であったか‥‥」
 卓上カレンダーに視線を落としたラクスミは、ハッとして頭を抱えた。
「――いかん、もうこんな日付か!? お節の件に気を取られて、何の準備もしておらなんだっ!」
「先日釣り上げた魚の余りを艦の冷凍庫に貯蔵してありますが‥‥いっそ日本から職人を招いて、スシ・パーティーなど催しては?」
「‥‥全然、クリスマスらしくないのう‥‥」
 ちょうどそのとき艦長室の扉が開き、どこか人形のような無機質さを漂わせた士官服の少女、マリア・クールマ(gz0092)が入室してきた。
 何やら分厚い書類袋を小脇に抱えている。
「クルーの人たちから、クリスマス艦上イベントの企画書‥‥ぜひ艦長に見て欲しいって」
「おお、ちょうど良い! 手間が省けたぞ」
 無表情のままマリアの差し出す書類袋を嬉々として受け取ったラクスミは、一瞬不思議そうに小首を傾げた。
「『サラスワティ福利厚生組合』? ‥‥そんな組合、本艦にあったかのう?」
「知らない。いつの間にか、出来てた‥‥」
「まあ良いわ。この際クリスマスらしい企画なら、何でも‥‥」
 上機嫌で中身の企画書を一読したラクスミは――。
 間もなく、デスクに突っ伏しゴツッと額をぶつけた。

『ドキッ! セクシーサンタガールズだらけの仮装聖夜祭☆』

「‥‥な、何じゃ‥‥これは?」
「仮装舞踏会というやつですな。つまりその、際どいサンタ衣装を着た若い婦女子の‥‥」
「たわけーっ!! 仮にもプリネア皇太子を招いた夜会じゃぞ? そ、そのように破廉恥な――」
「でも、みんなすごく楽しみにしてる。『この企画が通らなかったら除隊して田舎(くに)に帰る』『甲板から身投げする』『艦内食堂のアイスを全部ヤケ食いする』っていってた‥‥」
「ううっ‥‥‥‥シンハ! そなたからも何か言ってやれ!」
「全くけしからん事です。いくらクリスマスといえ、王族主催のパーティーで婦女子がみだりに肌を晒すなど、言語道断!」
 一歩進み出た中佐が、自らの養女でもあるマリアの華奢な肩をガシッと掴んだ。
「よいかマリア? もしミニスカサンタをやる時は、忘れずタイツかストッキングを履くように」
「ハイニーソじゃだめなの? お義父さん‥‥」
「違ーうっ!!」
 拳を振り上げ喚くラクスミ。
 とはいえ、今から企画を練り直している時間もない。
「う〜む‥‥」
 しばらく悩んだ末、手元にあったサインペンで企画書の一部を修正した。

『サンタだらけの仮装聖夜祭☆』

「どうじゃ? これなら何となく体裁も良かろうが」
「セクシーは禁止ですかな?」
「そこまでは、わらわも口出しせぬ‥‥まあ招待客の自己判断じゃな」
 何となく疲れた顔で答えると、ラクスミは幹事役にマリアを任命するのだった。

●参加者一覧

/ リディス(ga0022) / 白鐘剣一郎(ga0184) / 鷹見 仁(ga0232) / 御坂 美緒(ga0466) / 時任 絃也(ga0983) / 水理 和奏(ga1500) / 麓みゆり(ga2049) / リヒト・グラオベン(ga2826) / 寿 源次(ga3427) / 櫻小路・なでしこ(ga3607) / アイリス(ga3942) / イレーネ・V・ノイエ(ga4317) / クラーク・エアハルト(ga4961) / 勇姫 凛(ga5063) / 井出 一真(ga6977) / Cerberus(ga8178) / リュドレイク(ga8720) / ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751) / 櫻小路・あやめ(ga8899) / 二条 更紗(gb1862) / 姫咲 翼(gb2014) / 美環 響(gb2863) / ディアナ・バレンタイン(gb4219

●リプレイ本文

●南太平洋上〜空母「サラスワティ」甲板上
「福利厚生組合長として、このパーティーを開けた事を嬉しく思います♪」
 ブリッジ全体をクリスマスツリーに見立てたイルミネーションでライトアップし、全長250mに及ぶ飛行甲板を照明で煌々と照らした艦上パーティーの会場で、ミニスカサンタ姿(ストッキング付き)の御坂 美緒(ga0466)がマイクでスピーチすると、周囲を取り巻く空母クルー達が一斉に拍手喝采した。
「今後も組合員一丸となって、時節毎のイベントを企画し、この艦の士気を盛り上げて行きましょう♪ 合い言葉は『美女・美少女は国の宝!』なのです!」
「うおぉーーっ!!」
 各々「団結勝利」「要求貫徹」等と大書された鉢巻姿の組合員(クルー)達が拳を突き上げ雄叫びを上げる。
 ‥‥もはやパーティーなのか、何かの決起集会なのかよく判らないが。

「‥‥向こうは、何やら盛り上がっておるのう」
 こちらはコスプレではなく、プリネア民族衣装のドレスをまとったラクスミ・ファラーム(gz0031)が不思議そうに首を傾げた。
 非公式なイベントといえ、本国から皇太子を迎えてのXmasパーティーである。ホストとして招待客への応対も、王女であり艦長でもある彼女の役目だ。
「長らくご無沙汰しておりました、王女。お元気そうで何よりです」
 招待客の1人、白鐘剣一郎(ga0184)が微笑と共に挨拶してきた。
 服装は白タキシード上下、ファーマフラー、白の手袋&皮靴に赤の三角帽と、リアルタイプのサンタならぬ「スノーマン」。
「おお、久しいのう。夏の水泳大会以来か」
 ラクスミも微笑みを返すと、傍らに立つ民族衣装の青年――実兄のプリネア皇太子、クリシュナ・ファラームを紹介した。
「お初にお目に掛かります、クリシュナ殿下。以後お見知りおきを」
「そなたが傭兵きってエースと名高い白鐘殿か。大規模作戦での活躍、かねて聞き及んでおるぞ。縁あらばぜひ『サラスワティ』にも搭乗し、不肖の妹を手助けしてやって欲しいものだ」
「『不肖』は余計じゃ、兄上」
 ちょっとむくれるラクスミには構わず、若き皇太子は鷹揚に笑いつつ剣一郎に握手を求めた。
 その剣一郎の横には、サンタコスを白衣ナース風にアレンジした、妙にマニアックな出で立ちのナタリア・アルテミエフ(gz0012)が同伴している。
「み、御坂さんのお奨めでコーディネイトしたのですけど‥‥どうでしょうか?」
「似合っているとも。皆に見せるのが勿体無い位だ」
 そんな会話を交わしつつ、2人は腕を取り合ってパーティーの人混みに消えていく。

 続いてラクスミに謁見を求めたのは、がっしりした体躯をサンタ服で包んだ時任 絃也(ga0983)。
「少し時間を割いて貰って構わないだろうか? 俺の友人を紹介させて貰いたいんだが」
 同行してきた水理 和奏(ga1500)、クラーク・エアハルト(ga4961)、Cerberus(ga8178)らを初対面のラクスミへと紹介する。
「わ、すごいなマリアさんもそうだけど僕よりちょっと上ぐらいだっ」
 王女の前で思わず緊張する和奏を、背後から絃也がトンと押し出してやる。
「傭兵部隊【シャスール・ド・リス】所属の元空挺隊員、クラーク・エアハルトです」
 聖歌隊の衣装をまとったクラークが、一同を代表するように挨拶した。
「えっと、王族相手の挨拶の仕方が解からないんですが‥‥ラクスミ閣下とお呼びすれば良いのですか?」
「まあ、そう気を遣わずともよい。今宵は無礼講じゃ」
 ちなみに女性王族(皇族)の正式な尊称は「内親王殿下」なので、ラクスミも日頃は「殿下」と呼ばれる事が多い。ただし彼女の場合プリネア海軍提督の肩書きもあるので、「閣下」でも間違いではないが。
 ともあれ、王族の御前に立つ滅多にない機会――ということで、和奏は仲間達に手作りプレゼントの「わかな勲章」が贈った。
 その光景を、王女ラクスミも微笑ましく見守っている。
 その間、絃也はファラーム兄妹の傍らに控えるシンハ中佐と話していた。
「少し遅い話だがマリアを養女に迎えた聞いたのだが、上手くいっているのだろうか? 人一人養うのは大変と聞いたので」
「まあ当時は急な話で自分も驚きましたがね。今では、戦死した倅の生まれ変わりの様に思っております。もしこの戦争が終わったら‥‥ぜひ故国プリネアの地を見せてやりたいものですな」
「一つマリアに伝えて欲しい事がある、南洋の依頼では対して手伝ってやれんで申し訳ないとね」
「いえ、その節はお疲れ様でした。何しろあのイベントは大盛況でしたからなあ」
「王女殿下、縁あればまたこの艦と貴女と共に轡を並べたいと願います、ではいずれかの機会に」
「頼もしき言葉じゃ。その時はまた、よろしく頼むぞ」
 最後にラクスミとクリシュナへ一礼すると、絃也は仲間達と共にパーティーを楽しむべくその場を立ち去った。

 リヒト・グラオベン(ga2826)の生地ロシアは正教のため、ユリウス歴に従いクリスマスは1月7日とされる。すなわち、彼にとって本来クリスマスと新年を祝うことは同義なのだ。
(「何時の日かまた…故郷のクリスマスを過ごしたいものです。‥‥ん、今は皆さんと供に、この一時を楽しむとしましょう」)
「どうかされたかな? リヒト殿」
「いえ。ちょっと考え事をしていましたもので」
 訝しげに尋ねるラクスミににっこり微笑むと、サンタ衣装のリヒトは白い布袋に詰めたプレゼントを取り出し、日頃親交のあるサラスワティ関係者へと贈った。
 ラクスミにはロンググローブを。李・海狼にはダッフルコート、妹の李・海花へはニットワンピース。そしてシンハ中佐にはカプロイア製羊皮紙。
「おお、気が利くのう」
 能力者のプリネア軍人とはいえまだ幼い双子の兄妹も、思わぬプレゼントに大はしゃぎしている。
「マリアさんはこちらにいらっしゃらないのですか?」
 彼女に渡すつもりだったエンジェルスエッグの箱を手に、リヒトはシンハ中佐に尋ねた。
「そういえば、さっきまで知り合いの女性傭兵と一緒にいた様ですが‥‥はて何処へ行ったかな?」
 広いパーティー会場を見渡し、中佐も首を傾げるばかりであった。

「はじめまして、美環 響(gb2863)と申します。ご招待頂きありがとうございます」
 赤を基調とし白のアクセントがあるスーツ姿の、少女と見まがう美少年が優雅に一礼した。何が入っているのか、腰には小さな白い袋を付けている。
「ほう、そなたとは初対面じゃな。何ぞ特技でもあるか?」
「ふふっ‥‥それはまた、後ほど」
「櫻小路・あやめ(ga8899)と申します」
 サラスワティへは初の来艦となるエキスパートの少女は、同艦から借りたサンタ風ドレスを身につけ、深々と頭を下げた。
「櫻小路? その名字、そなたひょっとして‥‥」
 何か思い当たる様子で尋ねるラクスミに、顔を上げて本題を切り出すあやめ。
「クリスマスのパーティに不躾で申し訳ありませんが、こちらで姉がお世話になっていると伺い参りました」
「あやめちゃん!?」
 背後から呼びかける声に驚いて振り返ると、そこに彼女が捜していた生き別れの姉、櫻小路・なでしこ(ga3607)が、呆気に取られた面持ちで立っている。
 背中と胸元がやや大きめに開いたサンタ風イブニングドレスをまとったなでしこは、やはりファラーム兄妹に謁見するためその場にやって来た所だった。
「なでしこ姉さん!」
 バグア襲来の混乱の中で離ればなれになっていた姉妹がひしと抱き合う。
「あやめちゃんです。ラクスミ王女、妹のあやめちゃんです」
 目に涙を浮かべて妹を紹介するなでしこであったが、やがてはっと我に返り赤面した。
「も、申し訳ございません。突然の事でしたのでつい‥‥」
「何の、恥ずかしがる事などない。めでたいではないか? 今宵は姉妹水入らず、ゆるりと聖夜の宴を楽しむがよい」
 日頃本国の家族と離れて暮らす自らの立場も重ねてか、王女も心なしか瞳を潤ませ、自ら櫻小路姉妹の両手を取って握らせた。
 その場に居合わせた響が粋な計らいで、得意のマジックを披露する。どこからともなく湧きだした色とりどりの紙吹雪が舞い、姉妹の周囲を包み込んだ。
「汝らの魂に幸いあれ」
 歳に似合わぬ大人びた表情で、響は静かに見守るように微笑する。
「サンタ様は本当にいらっしゃるのですね。この様な素敵なプレゼントを頂きました」
 まるで花吹雪の様に幻想的な光景の中、なでしこはあやめと腕を組み、改めて涙ぐむのだった。

●潮風に吹かれて〜南洋のイブ
「メリー・クリスマス!!」
 胸元を大胆に開けた2ピースの臍出しミニスカサンタコス&網タイツ&ロングブーツというお揃いのスタイルでリディス(ga0022)、イレーネ・V・ノイエ(ga4317)、そしてマリア・クールマ(gz0092)がスポットライトを浴びて手を振ると、会場内にひときわ大きな喝采が起こった。
「メリークリスマス、と‥‥ミニスカサンタ3人娘参上♪ 希望にはお応えできたかな? あ、お触りは禁止な」
 普段は戦闘服姿の多いイレーネのこういう格好も珍しいが、これもいわゆる「ギャップ萌え」というものか。
「たまにはこういうのも、と言いたいところですが‥‥なんで私たちはこんな格好をしているんでしょうね?」
 と素朴な疑問を呈しつつも、結構ノリノリで笑顔を振りまくリディスの背後に隠れるようにして、
「こ、こんな格好‥‥いいのかな? 艦長のお兄さんも来てるのに‥‥」
 片手で白い布袋を背負い、空いた方の手でスカートの裾を押さえ、頬を染めて俯くマリア。
「まあ良いのではないですか? こういう格好にしておかないと、福利厚生組合とやらがうるさいそうですし。ここは一つ皆で協力しましょう。満足させればこちらの勝ちです」
(「しかし、マリアさんも変わりましたね。最初出会った頃とは大違いで‥‥安心します」)
 まだいくらかぎこちなさは残るといえ、かつてカメルの戦場で出会った「DF−04」――あの戦闘マシーン同然だった同じ少女を思い浮かべ、しみじみと感慨を覚えるリディス。
「そうそう、マリアさんにプレゼントを‥‥これをどうぞ」
 とポケットから出した「思い出のキーホルダー」を手渡した。
「貴女にはきっとこれから沢山の大切な思い出が出来ます。その思い出を、写真にでもしてそのキーホルダーの中に入れて大切にしてください。きっと、貴女にとってかけがえのないものになるはずですから」
「あ、そうだ。自分からも、簡単なものだが‥‥本場のだから美味しいと思うぞ」
 と、イレーネもチョコの詰め合わせをマリアに贈る。
「ありがとう。‥‥私からも、リディスとイレーネに‥‥メリー・クリスマス」
 そういうと、マリアは2人に透明な小箱に収まったミニツリーを贈った。
「おーい、俺たちには何かくれないのかよー?」
 周りではやし立てる空母のクルー達にリディスとイレーネが向き直り、
「もちろん用意してありますよ? メリー・クリスマス」
 布袋の中から何やら封筒の束を取り出し、1人1人に配っていく。
「何だ? こりゃ」
「貴公らの今月の給与明細だ。そうそう、ラクスミ艦長からの伝言だが、今夜のパーティー費用の一部は『福利厚生組合員』の給与からしっかり天引きしてあるそうだぞ?」
 中身を開いた一部クルーの間から「ひぃーっ!?」「げぇーっ!!」と悲鳴が上がる。
 まさに阿鼻叫喚のクリスマスだが、プレゼントだから返却は不能だ。

 ディアナ・バレンタイン(gb4219)のコスチュームはさらに大胆だった。
 赤地に白いファー付きのサンタビキニにサンタ帽。
「暖かい南の海がパーティー会場で助かったわ」
 彼女の周りにも男性クルー達がワッと集まったが、元よりお祭り好きな彼女のことである。
「えっと‥‥これでいいのかしら? 他には注文はある?」
 とリクエストに答えてポーズを取り、写真撮影にも快く応じる。
(「これだからお調子者って言われるのよね」)
 とはいえ、日頃女っ気の少ない軍艦で勤務に励むクルー達には何よりの目の保養であった。
 その隣を、頭に角、鼻には赤い鼻飾りをつけたトナカイコスの姫咲 翼(gb2014)に牽かせるソリに乗った二条 更紗(gb1862)が通り過ぎる。
 彼女のサンタコスはセクシーに上はチューブトップ、胸の上側はファー付き、胸の前でボタン止めで臍出し。下はローライズのショートパンツ、靴もファー付きブーツという出で立ち。その上にマントを羽織っていた。

「マリアさんのお誘いなら、参加しますとも。いつも大規模作戦で援護してもらってますからね」
 マリアとは【若葉隊【弐】】の小隊仲間でもあるリュドレイク(ga8720)の衣装はなぜか「僧衣」。サンタクロースのモデルとなった聖人「サン・ニコラウス」にちなみ、東洋の聖人すなわち「僧」のコスプレというわけである。
「でも、これだけじゃ面白みにかけますね‥‥」
 いやもう充分面白いと思うのだが、今ひとつ物足りないリュドレイクは弟のユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751)をメールでパーティーに誘った。
 とある地域にクリスマスに対応して1月6日に新年を祝う「エピファニア」という行事がある。そのエピファニアの夜に、まるでサンタクロースのように良い子には玩具やお菓子を、悪い子には炭を配る魔女「ベファーナ」がおり、一説には「サンタクロースの奥さん」ともいわれている。
 というわけで、弟のユーリにベファーナの仮装(女装)をさせ、公式のパーティーマナーに則り「夫人同伴」で参加しよう、というのがリュドレイクのプランであった。
 哀れなのは事前に何も知らされず、差し入れに白いブッシュ・ド・ノエル持参で空母に乗艦したユーリである。
「‥‥はぃ? ベファーナ!? ちょ、そんな話聞いてないよリュー兄!!」
 血相を変えて抗議するも笑顔で押し切られ、結局は渡されたベファーナの衣装(黒いドレスとマント・三角帽子)を着る羽目に。ユーリ自身が細身で顔立ちも整っているため、これがまた違和感なく似合ってしまう。
(「‥‥知り合いに、ばれませんように」)
 切実に願いつつ、僧と魔女という異色(?)のアベックで兄と行動。
 本物の女性と思ったパーティー客に名前を問われても、
「魔女のベファーナですっ!」
 と押し切るのだった。

 そんなパーティー会場の一角に、大人の背丈より大きいのクリスマスツリーが人知れずぽつねんと置かれていた。
「おや? こんな所にツリーなんか飾ってあったかな‥‥?」
 パーティーの最中も艦内を警備する海兵隊員が一応チェックしようと近寄ると、突然ツリーがひょこっと立ち上がった。
「うわぁーっ!?」
 よく見ると枝の影から顔と両手が見える。
【OR】クリスマスツリーの着ぐるみを着たアイリス(ga3942)であった。
「今日のために用意した、新しい衣装なのですよ〜」
 その場に腰を抜かした警備兵の脇を通り過ぎ、会場の中央へとトコトコ歩き出すアイリス。
 じっとしてると、本物のツリーにしか見えない。これはカモフラージュにも良いかもしれないと思ったのだが、実際に着てみると動きにくいし、動くと枝がガサガサ揺れて結構うるさい。
「便利かと思ったですけど、意外とそうでもないのですよ」
 何よりクリスマス限定なので、間違っても実戦向けとは言い難い服装である。
「そこにいたの? アイリス」
 歩くツリーを発見したマリアが、動じる気配もなく声をかける。
「何かあったらお手伝いするですよ」
「助かるわ。なら、この取り皿を料理のテーブルに運んでもらえる?」
 それからちょっと考え、
「‥‥できるだけ会場から離れないでね。艦内の通路は複雑だから‥‥」
「アイリスだって、最近はあんまり迷子になったりしないですから、きっと大丈夫なのですよ〜」
 自信たっぷりに請け合うと、取り皿を預かり料理コーナーの方へ歩き出すアイリス。
「――はわっ、ここは何処でしょう?」
 前が見辛い衣装だけに、いつの間にか艦内通路で迷子になった彼女が警備兵のマウアー上等兵に発見されて戻ってきたのは、その30分後の事であった。

 勇姫 凛(ga5063)はこのパーティーにチェラル・ウィリン(gz0027)を誘っていた。
「‥‥あっ、そうだ、後クリスマスらしく、プレゼントの交換もしない? 凛、チェラルに贈る物を持っていくから」
「OK。じゃー、当日に例の空母でね♪」
 と、予め電話で約束しての参加である。
 凛自身は半ズボンにおヘソが出ている感じの活動的なサンタ衣装。更にいつものローラーブレードで空母の甲板上を移動する。スラッとした生脚と、チラッと覗く鎖骨が魅惑のアイドル風美少年サンタ。
 マネージャーさん(推定腐女子)に頼んでおいたら、なぜかこんな衣装が出来上がってきたのだ。
 対するチェラルはサンタ帽に大きく胸の開いたミニスカサンタコス‥‥いう所まではマリア達と同じだが、色合いは全て迷彩柄、背負った袋は陸軍用の土嚢袋である。いったい何を運んでくるサンタなのか、想像するとちょっと怖くなるが。

 可愛いヒゲ着用のサンタ服着用の麓みゆり(ga2049)は、兵舎【飛行クラブ】の仲間達――和奏、クラーク、Cerberus、絃也らと立食パーティーを楽しんだ。
「今年一年世話になったな。今後の【シャスール・ド・リス】の繁栄に乾杯」
 Cerberusの音頭でまずは一同が乾杯。
「自分が動けないからと負い目を感じているのなら、それは間違いだ。もう少しシャスールを作った者として自信を持て‥‥前にもいったが貴様には笑顔でいてもらいたい」
 小隊長として大規模作戦の指揮に悩んでいた様に見えたみゆりを労い、Cerberusは肩を叩いて笑いかけた。
 その言葉に励まされたのかどうか。一通り食事やドリンクを味わった後、みゆりは笑顔で手作りのスコーンを小箱に詰めたプレゼントを取り出し、年齢の若い順から「いつもありがとう」の言葉を添えて仲間達に手渡していった。

「あの船上パーティーからもう一年が過ぎたのか‥‥」
 クラークと歓談を交わしていた寿 源次(ga3427)が、しみじみ呟く。
「相変わらず膠着状態で希望が見えたり隠れたりしてる、決して明るくは無い戦況。ま、今宵くらいは」
 そういう彼の衣装は一見何の変哲もないサンタ服一式。
 ――だがそれは、世を忍ぶ仮の姿。
 サンタ服を脱ぎ捨てるや、その下から現れ出でたるは執事服、赤白ストライプのネクタイ&サンタ帽でクリスマスをイメージ、鼻眼鏡で鋭い眼光を隠した混沌のサンタ風執事。
「我が字は混沌‥‥またの名を執事エージェントG!」
「こ、寿さん!? その格好は――」
「『さん』付けするなGと呼べ!」
 そう叫ぶや素早くシャンパンの瓶を取り、仲睦まじいカップルを羨ましげに眺める独り者の客の傍へすーっと近寄るやすかさずお酌。
「お一人ですか、寂しゅう御座いますな。は、私めもですが何か?」
 まさに混沌執事の名に恥じぬ献身ぶりである。

「‥‥そうか、あれからもう一年も経つんだな」
 鷹見 仁(ga0232)にとっても、その思いは同じだった。
 謁見の客の列が途切れ、やや手すきになった王女ラクスミの方へと歩み寄る。
 ちょっと照れくさそうに「よっ」と笑いかけると、ラクスミは兄クリシュナに何事か耳打ちすると、その場を離れて仁に招かれるまま会場の隅へと移動した。
「長いようで短い一年だったな」
「‥‥そうじゃな」
 ちょうど一年前、この甲板上で出会った時は、まさか相手が一国の王女とは夢にも思わなかったが。
 その日、仁は付けヒゲなども付けた本格的なサンタ衣装で参加していたが、実は背中の袋にサンタとトナカイの衣装一式ずつを用意していた。
「よかったら、どちらか着てみないかい?」
 もしラクスミがサンタを選べば、自分はトナカイに着替えるつもりでいたのだが。
「そうじゃな‥‥わらわはこちらを着てみようか」
 王女が選んだのは、なぜかトナカイの衣装だった。
「どうじゃ、似合うか?」
 トナカイの着ぐるみを着込み、はしゃいだようにクルリと回る王女の笑顔は――。
 どこか寂しげだった。

 そうこうするうち、会場では目玉企画の一つ、ビンゴ大会が始まる。
 招待客の全員に一枚ずつカードが配られると、中央ステージで李兄妹が抽選器のガラガラを回し、なでしことあやめの姉妹が1つずつ数字を読み上げていく。
 間もなく会場のあちこちで「リーチ!」の声がかかり始め、そしてその結果は――。

 1等賞:懐中時計(美環 響)
 2等賞:シシマイ(Cerberus)
 3等賞:アフロカツラ(アイリス)
 4等賞:紅白饅頭(麓みゆり)
 5等賞:餅(クラーク・エアハルト)

「あんまり当たったことないんですよねビンゴ‥‥って、ビンゴ!?」
 と驚くクラーク。もっとも彼の食生活で餅を食べる習慣があるかは定かでないが。

●ラスト・ダンスは貴方と‥‥
 ビンゴ大会の喧噪が一通り収まると、会場の照明がにわかに暗くなり、スピーカーからムーディーな曲が流れ始めた。
 パーティー終盤のダンスタイムに入ったのだ。
 ディアナは早速お目当てのクリシュナにダンスを申し込んだ。
(「ふふふ、これでもダンスは踊れるのよね。貴族の習い事として社交ダンスは基本だもの」)
 一見奔放に見える彼女だが、実はかなりの名家のお嬢様でもある。本人としてはブレイクダンスの方が好みなのだが。
 クリシュナも彼女の手並みにはすぐ気づいたのか、
「ほう‥‥傭兵というのは戦いだけでなくダンスも嗜むのか」
 と、感心したようにステップを合わせた。

 そのすぐ隣では、妹のあやめが男役となって姉のなでしことダンスを踊る。
 お互い積もる話は山ほどあるが、今はただ南洋の星空の下、流れるメロディに体を預け、無言のうちに久々の再会となる姉妹の絆を確かめ合っていた。

「一曲踊ってくれないか? それほどダンスが得意というわけではないが‥‥」
 Cerberusがみゆりを誘い、手を取って踊り始める。
 ダンス自体はフランス育ちのみゆりの方が巧そうなので、その辺りは足を引っ張らないよう立ち回る。
「ボディガードというものは誰かに必要とされないといらないものだ。シャスールに俺が必要といわれたときは嬉しかったよ。これからもよろしく頼む、小隊長」
 一曲終わると微笑みながら一礼し、クラーク達と一杯引っかけるべく、再び立食コーナーへと戻っていった。
 みゆりの次のダンスパートナーは、ちょうどクラークと踊り終えた和奏。ダンスタイムに入ってから、和奏は彼女が【飛行クラブ】以外の男性に誘われないか気が気でなかった。
(「本当なら僕、みゆりさんと誰かが幸せになれるように応援しなきゃなのに‥‥」)
 和奏は思う。それでも、彼女を誰にも取られたくない――という気持ちを抑えられなかった。
(「女の子なのに、どうして‥‥!」)
「性別を超えた恋をしてしまった」ことに、幼い彼女はまだ気づいていない。
 だがみゆりの方は、そんな和奏の思い詰めた表情をそれとなく察し、ただそっと優しく抱き締めてやるのだった。

 リヒトはマリアの姿を見かけると、先刻渡し損ねたプレゼントを贈ると共にダンスを申し込んだ。前から気になっていて、きっかけがあればゆっくり話してみたいと思っていたのだ。
 言われるがままに、マリアも踊る。しかしどこかその表情は硬く、リディスやイレーネら同性の友人達と一緒の時ほど楽しんでいるようには見えなかった。
 曲が終わると、続いて「サンタの格好をしたトナカイ」の衣装を着た井出 一真(ga6977)がマリアにパートナーを申し込んだ。
「良ければ一曲お願いできますか?」
「‥‥うん‥‥」
 一真も社交ダンスに堪能というわけでないので、お互い周囲の見よう見まねで、ぎこちなくステップを踏む。
 ダンスの最中、一真はプレゼントとして用意した【OR】あんじぇりかのキーホルダーを手渡した。
 プリネア軍のマーキングと自らの搭乗機に合わせてカラーリングされたミニKVのキーホルダーを見て、マリアがようやく少し微笑む。
 が、その碧い瞳は何処か遠く――南の方角に向けられているようでもある。
(「マリアさんが本当に過去から自由になるには、シモン(gz0121)との事に決着をつける必要がある――」)
 一真はいつしか、少女から話した手をぐっと握り締めていた。
(「俺は‥‥そのお手伝いを全力でするつもりです」)

 パートナーの翼と踊っていた更紗は、前半はフォークダンスっぽいノリで、後半は大人しくチークダンスのステップを踏んだ。
 翼が恥ずかしがるのを承知で腕を組んだり抱きついたりして、あたふたするその反応を楽しんだりする。
「え、寒いのか? ‥‥どこか、暖かい場所は‥‥?」
 と初めこそ鈍感な反応を示していた翼も、そのうち気づいたか。
「っ!? ‥‥お前、俺の反応を楽しんでるだろっ‥‥?」
 図星を付くが、結局腕は振り解かない。
「楽しくないですか?」
「‥‥べ、別に不満は無い‥‥楽しいよ。今日はありがとな‥‥」
 やがて曲が終わった時――。
「プレゼントは無しの心算でしたけど」
 更紗は翼の腕を引き、体勢が崩れた瞬間、頬に触れるか触れない程度に口づけした。
「‥‥!」
 甲板の隅の方へ小走りに駆け出した少女は、後を追ってきたパートナーに振り返り、微笑を浮かべた。
「メリークリスマスです、ツバサくん」

 立食パーティーではチェラルと他愛のないお喋りに興じていた凛は、会場が暗くなると同時に勇気を出して彼女をダンスに誘った。
「うわぁ〜‥‥ボク、社交ダンスなんて踊ったことないよぉ」
 相手がUPC軍エースといえ、ことダンスにかけては現役アイドルの凛の方が遙かに上手だ。怖じ気づくチェラルをリードし、2人は星空の下で踊り始めた。
 触れ合う手と手、心の中では二人っきりの舞踏会‥‥互いの心臓の鼓動が聞こえてくるかのようだ。
 ダンスを終えた後、凛はチェラルを舷側へ誘い、持参したプレゼント――手袋とマフラーにクリスマスカードを添えて贈った。
「ここは暖かいけど、寒い季節なんだから‥‥風邪ひくなよっ」
「アハハ、どーもありがと。ボクからもつまんないモノだけど‥‥」
 と、L・Hのショップで買ったミニツリーを渡すチェラル。ふと思いついた様に、
「そうそう。これ、昔UPCが何かのキャンペーンで配ったブロマイドらしいんだけど‥‥よかったら、貰ってくれる?」
 チェラルは(以前、失踪した彼女の捜索にも使われた)例の写真をポケットから出し、プレゼントに加えた。
 そして、再び2人して南洋の星空を見上げる。
「綺麗な星だよね‥‥」
「そうだねえ。日本じゃ雪が降ってる頃かな?」
「あっ、流れ星?」
「えーっ、どこどこ!?」
 思わず身を乗り出すチェラル。
「――危ない!」
 ふと気づくと、足を滑らせかけた彼女を、凛はぎゅっと抱き止めていた。

「武術の足運びとの違いでさすがに苦労したが‥‥」
 互いの手を取ってナタリアと踊りつつ、剣一郎が苦笑した。
「いいえ、とってもお上手ですわ」
「君に恥を欠かせない程度には何とか、な」
 元々研究一筋で社交に疎いナタリアも、恋人の剣一郎に安心して身を委ねるように踊り続ける。
 ひとしきりダンスを終えた2人は、再び立食コーナーのテーブルに戻りカクテルで乾杯を交わした。
 そして一息ついたタイミングを見計らい――。
「ナタリア、これを君に受け取って欲しい」
【OR】比翼の指輪を手渡した。
「俺の妻としてこれからを共に歩んでくれないだろうか?」
 まさに前置きなしの剛速球である。
 一瞬ポカンとした表情で剣一郎を見上げたナタリアだったが。
 やがて眼鏡を取って涙を拭い、小声で答えた。
「‥‥‥‥はい」

 申し込まれるままに何名かの女性と踊っていたクリシュナが、最後にダンスパートナーとして選んだのは美緒だった。
「そなたとは例の叙勲式の時以来だな。いつも妹とこの空母が世話になっている」
 ドキドキする美緒の手を取り、優雅にリードしつつステップを踏むプリネア皇太子。
「そういえば近況をお知らせした手紙は受け取って貰えたのでしょうか?」
「うむ。先日は日本の紅葉を押し花にして送ってくれたな‥‥返事も出せずに申し訳ない」
「ご、ご迷惑でなかったら、お手紙のやり取りをしたいなあと思うのです」
「私もなかなか忙しい身だが‥‥手紙ならば、妹を通して送ってくれぬか?」
 思わず心の中でガッツポーズを取る美緒。
(「このロマンスが実ったら、ラクスミさんを義妹と呼ぶ日が来るかもなのですよ♪」)
 いやそれは、いくら何でもまだ早いという気がしないでもないが。

 そんな光景を遠目に眺めつつ――。
「なるほど確かに一人身には苦行となるイベントだ」
 ダンスの輪から離れ、独り酒杯を傾ける絃也。
「明日からはまたこの空と大地を取り戻すための戦いに赴かなければな、だが今この時はひと時の安らぎを満喫しても罰は当たるまい」
 グラスを星空に掲げたのち、一気にその酒を呷る。
 それから己のサンタ衣装に気づき、
「このカッコでは締まらん台詞だな」
 独り苦笑いを浮かべる。
 そんな孤独な男達1人1人に執事サンタとして酒を勧めつつ、源次もまた星空に向けて盃を上げた。
「未だ混迷の続く、この地球と言う戦場。一見ふざけて見えようと、ほんのひと時でも安らぎの時間になれば良いじゃないか。――この場に居る、皆に幸あれ。乾杯!」

<了>