タイトル:【学園】学園祭招待マスター:冬斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/04/21 15:39

●オープニング本文


 九龍国際学校。
 香港特別行政区、九龍半島に位置する教育施設である。

 主にバグアによって居住区を追われた人民で構成された施設である同校は、『国際』の名に違わず多国籍の生徒、教師を内包。
 校風も比較的自由で宗教、思想等の統一もない。
 年齢も幅広く、初等部から大学部までの生徒を在籍させており、生徒総数約5万人のマンモス校。
 九龍学園。
 その多様性から、この学校はそういった呼称をされている。


 クリスマス。
 世界においては正月より重要な行事である。
 それは世界各地からの疎開先となっている九龍学園においても当然の事。
 この学園では毎年恒例の「学園祭」と称したクリスマスパーティが行われていた。

「九龍学園、シンシア・モリスンから依頼です」
「依頼って――巡回なら学園祭に合わせて予定してるぞ?」
「それなんですが――依頼というよりは招待状ですね。ラストホープの傭兵達に学園祭に遊びに来て欲しいって」
「? 宛名はないのか?」
『傭兵達』といっても、LHに一体何人の傭兵がいることか。
「ないですね。今まで巡回に行った傭兵だけでも結構いますし、――それにどうも本当に宛名はないみたいです」

『LHの傭兵達へ』
 シンシアの依頼内容は本当にそういうことらしかった。
 今まで仲良くした傭兵でも、まだ会った事のない相手でも構わない。
『今までありがとう、そしてこれからもよろしく』

「報告聞いた限りじゃ人見知りってイメージ強かったんですけど――成長したってことなんですかね」
「さあね。でも、彼女実行委員まで買って出てるらしいじゃないか。それだけ気合入ってるって事だろ?
 こりゃあ楽しむ方も気合入れなきゃだな

 ――あと、護衛の方も忘れずにな」



「――予算はとりあえずこんなところで。B区画とD区画は代表に任せて大丈夫ね。後は――」
 実行委員として学園祭に臨むシンシア・モリスン。
 当日、傭兵達と楽しむつもりなら裏方を引き受けるのは得策ではない。
 だというのに彼女は自分から決して楽ではないこの役目を買って出た。
 それが彼女の性分。
 自分が誇りを持って見せられるものを気持ちを込めて贈りたい。
 子供っぽいプライドかもしれない。
 でも、それでも見せたかった。
 これが自分の学校だと。

●参加者一覧

柚井 ソラ(ga0187
18歳・♂・JG
セシリア・D・篠畑(ga0475
20歳・♀・ER
鐘依 透(ga6282
22歳・♂・PN
百地・悠季(ga8270
20歳・♀・ER
リオン=ヴァルツァー(ga8388
12歳・♂・EP
澄野・絣(gb3855
20歳・♀・JG
橘川 海(gb4179
18歳・♀・HD
ゼクス=マキナ(gc5121
15歳・♂・SF

●リプレイ本文

●女三人寄れば‥‥
「お久し振りです、シンシアさんっ!」
「ご招待‥‥ありがとう‥‥」
 シンシアとの再会を喜ぶ柚井 ソラ(ga0187)とセシリア。
「本当に‥‥一年くらいでしょうか‥‥?」
「そ、そう? そんなに経ってたかしら‥‥?」
 苦笑いのシンシア。年月なんて些細な問題だろう。きっと。
「元気そうでなによりです」
 握手を差し出す鐘依 透(ga6282)。
「おーっと」
 その手を何故かシンシアは後ずさって拒否。
「あ、あれ‥‥? なんか拙い事したかな、僕‥‥?」
「そういう訳じゃないんだけどね透、悪いけど今回貴方をこの中に入れる訳にはいかないのよ」
 シンシアはソラとセシリアの肩を仲良さげに抱く。
「シ、シンシアさん‥‥嬉しいですけど‥‥とーるも入れてあげて、友達なんだから‥‥」
 嬉しいようなくすぐったいような表情をしながらもソラが咎める。
「いーやーよ、だって――」
 顔がくっつくくらいにぎゅっと二人を抱き寄せ

「――やっぱり女の子同士でないと出来ない話ってあるじゃない?」
「‥‥」
「‥‥」
「‥‥」
 ほっぺにすりすり。異性相手には少し大胆だ。
「‥‥‥‥シ‥‥シンシアさんっっっ!!!」
 ようやくソラくんもからかわれているのは自分である事に気が付いたようで。

●学祭へ
「もう‥‥酷いですっ!」
 温厚なソラもすっかりむくれてしまった。
「聞いてた通りの人ですね〜。あ、はじめまして。私、橘川ウミっていいます!」
 ソラの友人、橘川 海(gb4179)も釣られてからからと笑う。
 本当は違った。
 話ではここまで明るくない。寂しがり屋の少女だと聞いていた。
(「ソラ君達のお陰かな」)
 きっとそうに違いない。ちょっと自分の事のように嬉しかった。
「こっちは悠季と絣さん」
「チャオ、よろしくね」
 涼やかに笑みを浮かべる赤毛の女、百地・悠季(ga8270)。
「澄野絣っていいます。私もよろしくですー」
 薄桜色の着物を着た澄野・絣(gb3855)が続いた。
「みんなで鐘学三人娘なのです! シンシアさんもどうです? ガールズトークしましょうよ〜」
「こらっ、『四人娘』でしょ? ソラを除け者にしちゃ――」
「シンシアさんっ!!」

「立ち話もなんだし、中に入らない? カンパネラ以外の学校なんて久し振りよあたし」
 悠季はウインク一つすると一足先に校門へ。


 人混みの中、転びそうになるセシリアを透が支える。
「大丈夫?」
「は‥‥はい‥‥」
「? セシリア、汗かいてない? 今、冬よ?」
「ごめんなさい‥‥私暑がりで‥‥」
 下手な嘘を不審に思ったシンシアはすぐにセシリアの包帯に気付く。
「ちょっ‥‥それ‥‥怪我――」
「シンシアさん」
 制止をするように呼びかける透。それ以上は何も言わない。
 言わずとも伝わった。
「――もう、暑いならはしゃぎ過ぎちゃ駄目よ」
 その言葉にも無表情なセシリア。
 だけど、シンシアには――彼女が笑って見えた気がした。

●寂しがりの兎達
 学園祭の盛況とは少し離れた中庭。
 ぽつりと置かれている大きめの石ころ。
 よく見れば石碑に見えなくもないその前でリオン=ヴァルツァー(ga8388)は手を合わせ――。
「君達も久し振り‥‥なかなか来られなくて‥‥ごめんね‥‥」
 後ろでは透達もそれに倣う。
「季節違いだけど、お盆みたいなものだね。一年振りだし」
 ウミ達三人も手を合わせていた。
「ごめんね‥‥君達まで、付き合せちゃったみたいで‥‥」
「何言ってるんですかっ! リオンさん達のお友達なら私達の友達ですっ!」
「‥‥海さん、しー、ですよ‥‥」
「墓参りなんだから空気読みなよー」
「ふええ‥‥いいこと言ったのに〜」
 くすくすと笑うリオン。
 それでいい。兎は寂しがりだ。静かなのはきっと望まないから――。


「ケバブか‥‥学園祭の出し物にしては凝ってるな、一つ貰おうか」
 一人で出店見物をするゼクス=マキナ(gc5121)。
 白衣を纏い、中のジャケットは首まで覆い、口元にはマスクをつけている。
 肌が弱い為らしく、手にも手袋を着用している。夏もこの格好だと実に暑そうだ。
「一つ千円です」
「高い。300円が妥当だろう」
 値段交渉開始ーッ!

「ふう‥‥結局150円か。まあ味は悪くなさそうだ」
 何故交渉開始時より安くなっているのか。そしてそのマスクでどうやって食べる気なのか。
 オープンカフェ風の自由席に座るゼクスの横にポリボトルが置かれる。

「忘れてるわよ、チリソース」
 シンシアだった。少しだけ意外そうなゼクス。
「ごめんね、お墓参りは苦手だった?」
 そうではない。
「俺は兎を知らない。だから用がなかっただけだ」
 本当にそれだけ。共に行動する理由がなかった。それだけの事。
「ならもう大丈夫よね。はい、チリソース」
 その空気をあえて読まずにシンシアは接した。
(「本当に変わったな‥‥シンシア‥‥」)
 リオンが嬉しそうに二人を見つめる。
「ちょっと待った。ケバブにはヨーグルトソースよ」
 割り込む悠季。
「えー? お肉に甘いものなんて意味わからない!」
「スイカに塩とかカレーにチョコとか知らないの? これだからイギリス人は‥‥」
「あ! 今なんて言った!? 最後なんて言ったの!?」
「ケ、ケンカしないでください〜! 悠季も〜!」
「お、俺は結構好きですよ、チリソース」
 ウミやソラが必死に宥めている。そのやり取りすらも楽しそうで――、
「ゼクスさんも一緒に回りませんか? 迷惑でなければ」
「――断る理由は特にない」
 チリとヨーグルトの混ざったケバブを口にするゼクス。
 いつもと違う味がしたのは、きっとソースが混ざっていたというだけの理由ではなかったろう。

●地獄極楽巡り
 靴音が嫌に響く。
 遠くからは砂嵐のようなノイズ音。
「ひ‥‥」
 視界は足元しか照らさない。一同が受け取ったランタンは遠くを照らさない
 足音だけが響く。人の気配はない。


 腰のところで目のない子供が見上げていた。


「「「――――ひぁ‥‥‥‥!!」」」
 本気の恐怖に悲鳴は出ない。
 涙目の三人は膝を震わせていた。
「うわ、すっごいわね。今マジで驚いたわよ‥‥」
 本気で怖がった人はそんな感想言わない。ウミは恨みがましそうな視線を悠季に向ける。
「みんな怖がりですよねー。私もびっくりしましたけどー」
 絣の『みんな』とは結構広い範囲で言ってるんだろう。
 ゼクスの方は心底不思議そうに、
「というか、墓参りをしていたのに霊が怖いのか? ああいうのは霊を供養するものだと聞くが」
「兎は‥‥こんな怖いところに、出てこない‥‥」
 てゆーか出ないで、とリオンは表情で語る。
「‥‥今の子供‥‥どうして眼球が無いのでしょう‥‥?」
 眼球って言うな、怖いから。
「『目』は人間の意思を伝える最も重要なツールの一つだからね。ソレを失わせることによって親しみのもてる『子供』を異質なモノとしているんですよ」
 セシリアと透は場違いな談義。これはこれで楽しんでいるのかもしれない。
「‥‥フツーに怖がってあげなよあんたら‥‥」
 悠季が突っ込むが、ソラは心底羨ましそうだ。
「うんうん、わかる。やっぱり悲鳴上げてこそ乙女よねー」
 シンシアがからかうが、ソラにはもう言い返す気力もない。
「僕‥‥探査の眼、使っても‥‥いいかな‥‥?」
 物凄くなさけない能力者っぷりを見せるリオン。
「さ、賛成です。リオンさん頑張って‥‥!」
 ソラもウミの横でこくこくと頷いている。
「いいけど‥‥今のホログラフィだから気配とかないよ?」
 広さといい、無駄に金と手間をかけたお化け屋敷だ。


「怖かったですねー」
「クセになりそうね、後でまた入ってみる?」
「‥‥もう二度といきたくない‥‥」
 鐘学三人娘約一名グロッキー。
「‥‥お昼、食べよ‥‥? ここのカレー‥‥おすすめ‥‥」
 忘れたい一心で話題を変えるリオン。
「でもいつもと違いますよね‥‥」
 外来客が多いのは当たり前だが‥‥何か異質な雰囲気が漂う。禍々しいというべきか。ソラは不安に駆られる。
「ああ、それね‥‥」

 シンシアによると学園祭を手伝いに来た傭兵の一人が怪しげなカレー屋を広げたとか。
「‥‥『あの人』‥‥ですか」
「『あの人』なら仕方ないね‥‥」
 セシリアも透も何故か納得してる。
「『あの人』のカレー‥‥興味あるな、僕、貰ってくる‥‥」
「俺も一緒に行きますよ、『あの人』はカレー仲間ですからね」
 リオンに続いてソラもカウンターに。
 てゆーかなんだ『あの人』って。サッカー漫画の悪役か? WT11か?
 結局8人で新カレーにチャレンジ。
「‥‥8人?」
 絣が不思議そうにシンシアを見る。
「わ、私はその‥‥ほら、小食だから‥‥」
「ダイエット? 無理はしないようにね」
 悠季がくすりと笑う。


『Verm○nt of the spicy witch』
 いらっしゃいませ。
 激辛の魔女はあなた方をお待ちかねです。
 難易度は殺辛。
 魔女はあなたをいきなり屈服させるつもりです。


「――死ぬかと思いました‥‥」
「シンシアさん、ひどいです」
 ソラに水を飲ませながら恨み言を呟くウミ。
「い、いや‥‥ごめん、止められる雰囲気じゃなくて‥‥」
 準備期間に試食をしたのだろう。とっても気まずそうなシンシア。
「口直しに甘いもの食べましょう! それがいい!」
 露骨な誤魔化しだったが皆、想いは同じだった。

 ――メイド喫茶。
 日本発祥の近代芸術的飲食店。
 その文化は留まることを知らず、世界各地へと羽を広げ、ここ香港九龍学園にも波及していた。
「いいわねー。あたしも着てみようかしら」
「悠季さんならすごく似合いますよー」
「ありがと。絣は和風メイドかしらね。海も特殊な趣味の人にウケそうよ」
「そ、そこまで幼くないもんっ!」
「あら、別に歳の話をしたつもりはないけど?」
「〜〜〜〜〜っ!!」
 実に楽しそうな三人娘。
 それを小耳に挟んだセシリア、
「‥‥透さんもこういう女の子、好きなんですか‥‥?」
(「わぁお‥‥!」)
 セシリアの問いかけに妙に期待を膨らませるシンシア。
「え、いや、そうでもないけど‥‥でも‥‥シンシアさんのメイド姿は可愛いだろうなぁ‥‥ッ――!?」
 何故かシンシアに殴られる透。
(「ちょっと、透! あなた気を利かせなさいよね!」)
(「え? え?」)
「‥‥そうですね、シンシアさんもとても似合いそうです」
(「えええっ!? あんたらなんなの、その会話!?」)
 照れと戸惑いでパニックになるシンシア。
「そ、それならソラの方がよっぽど似合うわよっ!!」
「うわああぁぁんっ! 絶対言うと思ったぁぁぁぁっ!!!」

「‥‥何故あいつは褒められて泣いているんだ?」
「な、なんでだろうね‥‥」
 首を傾げるゼクスに苦笑でしか応えられないリオンだった。


 甘いものは別腹だが、流石に立て続けではシンシアでなくとももう入るまい。
 腹ごなしも兼ねて一同は食べ物以外の露店を回る。
「へえ、いいの揃ってるじゃない」
 学園祭といえばバザーが定番だが、ここに出ている露店は業者から直接卸したような品揃えに溢れていた。実際そうしたのだろう。
「うん、海はオレンジが似合うわね。『海辺の夕焼け』ってトコかしら?」
「も、もう、褒めても駄目だよ! 私まだ怒ってるんだからっ‥‥」
 頬を膨らませつつもまんざらではなさそうなウミ。
「絣は碧かな、上品な高嶺の花って感じよね」
「そんなことないですよ。家ではよくはしたないって言われます」
 うん、きっとその『はしたない』は自分ちの『はしたない』とは全然違うんだろーなーとか遠い目で考えてしまうウミ。
「悠季はやっぱりピンクかな」
「お、あたしの見立てをするとは生意気な
 ――シンシアは‥‥シルバーもいいけど、ブルーかな?」
「え?」
 いきなり話に加えられてびっくりするシンシア。
「僕も‥‥ブルー、おそろい、だね‥‥」
「わー! おそろです! ひゅーひゅー!」
「子供か!」
 怒鳴りつつも顔は赤い。
「ゼ、ゼクスはシルバーよね?」
 とっさに話題を逸らす。
「‥‥‥‥」
 ゼクスは応えない。
(「ま、無理に付き合わせたようなものだし――」)

「――紅だ」

「え?」
 一言だけ。
 それが彼女らに応えた彼なりの親愛だとは考え過ぎだったろうか。

●宴もたけなわ
 広場では夕日を肴にダンスパーティー。
「海にゃん、踊る?」
「私はシンシアさんと踊るの、ごめんねー」
「あらあら、ソラ君フラれちゃったわねー」
「え? ソラってそっちのケあったの?」
 ‥‥もう突っ込む気も起きない。
「落ち込まない落ち込まない、私がお相手しますよー」
 いじられっこのフォローはウミで慣れているらしい絣。

「ほら、あんたも壁の花気取ってないで、踊りくらい出来るわよね?」
「‥‥やった事はないな」
「マジ? 仕方ないわね‥‥」
 やれやれとゼクスの手を取る悠季。

 そして透とセシリアはすでにダンスの真っ最中だった。
「今日は‥‥楽しかった?」
「‥‥はい‥‥とても‥‥楽しかったです‥‥」
 絵になる美男美女。嬉しそうに見つめるシンシア。
「ひゃー、そうだったんだそうだったんだあの二人‥‥!」
「あの‥‥シンシアさん?」

 曲が変わるタイミングで二人がシンシアの所に向かってくる。
「シンシアさん、本当は帰りに渡そうと思ったんだけど――」
 透が手に収まるくらいの長方形の包みを渡す。セシリアも大きめのスケッチブックサイズの包みを。
「え? え?」
「――透さんと‥‥選びました」
 プレゼントはその場で開けるのがマナーだろう。
 中からは腕時計とカーディガン。
「わあ、素敵――」
 覗きこんだウミが感嘆の声を漏らす。

「――あり‥‥がとう――」
 声が震える。みっともないと思ってても抑えられない。
「時計、僕らも買いました。お揃いです」
 透達の腕にはシンシアのと色違いの時計が。
 色だけじゃない。そこにはそれぞれの名前が彫られていた。
『Cynthia Morrison』
『Tohru Kaneyori』

『Cecilia Diels Shinohata』

「――え?」
 セシリア・D・篠畑(ga0475)。
「‥‥あ、そう‥‥私、結婚したんです‥‥」

「えええええええええ!!?」


「――全く、そうならそうと早く言いなさいよ、紛らわしい」
「‥‥結構、みんな、何度か、言おうとしたんだけど‥‥」
 苦笑で返すリオン。
「‥‥今日は、ありがとう‥‥」
 慣れないステップを踏みながらリオンは微笑む。
「僕、学校とか初めてで‥‥こんなに楽しいの‥‥」
「――それはこっちのセリフ」
「え‥‥?」
 こんなに楽しいのは――こんなに学校が楽しいと思ったのは――、

「ほら、ソラ! 踊るわよ!」
「‥‥女同士で踊って楽しいんですか?」
「あーもう拗ねない! 悪かったわよ、お詫びに付き合いなさい!」
 お詫びの意味が逆の気もするのだが――。

 ――自分もああいう顔をしてるのかな――。
 ソラの手を引くシンシアの横顔を見ながら、なんとなくリオンは思うのだった。