タイトル:【Tr】コスプレ接待開始マスター:冬斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/07/23 12:12

●オープニング本文


 その日、ULTに軍人が尋ねてきた。
 別段、珍しくもない光景だ。天爪竜斗を名指しで指名してきた事も大して珍しくもない。
「天爪君、君アニメとかに明るいんだって」
「いや、全く」
 だからこのやりとりについて珍しい光景というわけではなかった。


 ナイトフォーゲル・コンペティション。
 7月に予定されている新型を選ぶ為のイベントが近日開催されるという話は天爪も聞いている。
 ドローム、MSI、メルス・メスの三社が参加。それに伴い、各社の重役や開発に携わる者達も顔を出すとか。
「そこに重役達の息子連中も来るらしいんだ。社交会を兼ねて」
「セレブってのもまた大変ですね。で、それとアニメと何か関係が?」
「日本のアニメに興味のある者が多いらしい。ほら、軍としても彼らは大事なゲストだ。粗相があってはいけない。そこで――」
「軍の方々にもそういうの詳しい人いるんじゃないんですか?」
「天爪君! バグア共との戦闘で疲れているのは傭兵達だけだとでも思っているのかね!? 大変なのは君等だけではないのだよ!」
 それはこっちのセリフだと言い返してやりたかったが、やめにした。どちらにせよ依頼を斡旋するのが自分達の仕事だ。
 なに、ようはセレブのボンボン達の接待をすればいいのではないか。予算は充分だし、むしろ願ってもない好依頼だ。そうだ。そうに違いない、ははは‥‥。
 最後の方が言葉に出ていた事に気付かない天爪さん。ちょっと疲れているのかもしれない。

●参加者一覧

ミオ・リトマイネン(ga4310
14歳・♀・SN
阿野次 のもじ(ga5480
16歳・♀・PN
古河 甚五郎(ga6412
27歳・♂・BM
櫻杜・眞耶(ga8467
16歳・♀・DF
美空(gb1906
13歳・♀・HD
上杉 怜央(gb5468
12歳・♂・ER
小野坂源太郎(gb6063
73歳・♂・FT
日野 竜彦(gb6596
18歳・♂・HD

●リプレイ本文

●天爪リュウトの憂鬱
「コスプレ完了」
(「控室で鏡を見つめミオ・リトマイネン(ga4310)が呟く」)
「地でいけるのが楽。あまり改変しないでいい」
(「ミオが扮するのはラノベ原作の人気アニメ『鈴宮ハヒルの躁鬱』のクール系美少女『永戸由貴』。
  うん、確かに似合ってる」)
「今回は得意のお色気は控える。キャラにも合っていない」
(「――だそうだ。
  個人的には少し見てみたかった気もする。きっとそう考えているゲスト達も少なくはない気がするが、彼女がそう判断したのなら仕方のない事だ。残念」)
「あの‥‥天爪さん?」
「何をブツブツと内に篭っとるのですか貴方」
「――と、うわっ! こ、これは失礼。ちょっとリハーサルをば――ほう、なかなか似合ってますね」
 早口で小言をまくし立ててた天爪 竜斗(gz0059)は上杉 怜央(gb5468)と古河 甚五郎(ga6412)の声に我に返る。
 そして怜央のセーラー服姿に感嘆する。元からセーラーだった気もするが。
 内容は『カードレセプターさくや』のヒロインさくや。
「ど、どうですか‥‥? 頑張ってみたんですけど‥‥」
「ばっちり似合ってますよ。やっぱりコスプレは女の子が映えますね!」
「は、はにゃー! ボ、ボク男ですっ!」
「はっはっは、名演技ですよとても小学生とは思えない」
 はて、そんなセリフさくやにあったっけ?、と思いつつ細かい事は気にしない天爪。
「貴方が小さな女の子を愛でていると何か危険な香りがしますなあ‥‥」
「貴方にだけは言われたくないです」
 古河と天爪。ふたりともいいおとな。

「――で、貴方は結局何をしとったのですかな?」
「何って‥‥私の演目ですよ。基本、皆さんにお任せしているとはいえ、現場に出るのならば私も何かに扮しなければ――」
「ああ、それなら――」
「――と思ってクォンのナレーションを担当しようかと思ったのですが‥‥これ、現場でやるとただの危ない人ですね」
 発音しづらそうな名の主人公だ。
「丁度――」
「そうだ、櫻杜さん」
 4444の因子を体内に潜ませる彷徨の女吸血鬼。ゲーム『夜月鬼』のフィーオ・カオスに扮する櫻杜・眞耶(ga8467)。
 夜闇を思わせる漆黒のドレスに身を包んでいる。
「主人公の瀬貴君やらせて貰っていいですか? ほら、眼鏡かけてるし」
「いや天爪はん、年考えてくださいね?」
 この上なくダイレクトに却下された。確かに30代の学ラン姿は痛々しいにも程があろう。
「あ、じゃあ日野さん、貴方の兄上の役で――」
「あ・ま・つ・め・さ・ん!?」
「この際第一皇子でも――」
「そんなに嫌ですか、自分の相方は?」
「小野坂さんに倒されるモヒカンの雑魚でも――」
「衣装も既に用意してありますよ」
「いやじゃあ! 昔の収録で実家から『お前は火を吹くしか能がないねえ』とか言われたんじゃー!!」

「‥‥天爪さんがこわれた」
「察してあげるのであります」
 怜央の肩をぽんと優しく叩く美空(gb1906)なのであった。

●俺達のバトルシティは終わらない
 会場の来客数は4、50名程。
 事前にパーティの内容は知らせてある。
 つまりは『そういうのが大好きで期待している』御子息様方という事だ。
 開会の挨拶に日野 竜彦(gb6596)。黒マントに黒の仮面。
「来場の諸君! 我等黒の華撃団主催のパーティに来て頂けた事、心より感謝する!」
『こいつ頭大丈夫か?』と疑いたくなるような大仰な身振りで壇上を仕切る。ムカつく事に結構格好いい。
「私の名はセロ! 黒の華撃団総隊長を務めている! 今宵は大いに楽しんでくれたまえ!!」
 セロとはスペイン語で0を意味する。霊圧をかめ○め波のように撃ったりはしないのであしからず。
「では、セロの名において命ずぉぶは!?」
 それは一瞬だった。
 セロの足元に開いた穴が演説者を飲み込む。
「――ふむ、それでは選手交代だな」
 扇子の似合う黒髪美少女、但し胸はあまりない阿野次 のもじ(ga5480)。
「華撃団会長の黒上のもじだ。セロに引き継ぎ貴様等を歓迎する」
 総隊長と会長はどちらが偉いのだろう。すちゃっと掌を顔に掲げガンジムW・ヒーロのポージング。
「これより華撃団主催、コンペティション慰労パーティを開会する!」
「私のセリフーーーー!!」
 穴の底よりセロの怨嗟の声がこだましていた。


「ふぬぅああああああああああ!!!」
 小野坂源太郎(gb6063)の衣服が千切れ飛ぶ。
 無論、通常衣服が破ける事などありえない。能力者ならではの覚醒効果である。
「てめえらに明日を生きる資格はねえ!!」
 ゲスト達に言っている訳ではない。世紀末覇者ケンタロウのアピールだ。そういえばゲンタロウと名前も似ているが今は置いておこう。
 反応は概ね良好のようだ。流石は日本の屈指の名作。海外でも評価は高いらしい。
 なにより生の服破りなど滅多に見られるものではない。

「ウケてますね、小野坂さん。古いネタなので心配でしたが」
「心配無用。マッチョとバイオレンスは海外でも共通言語だ」
 腕組みをしながら顎に手を当て感心する天爪の背後で同様のポーズでフォローを語るのもじ。
「‥‥そう思うなら阿野次さんはどうしてそんなドマイナーキャラを?」
 いや、マイナーとかそういう問題ではない。『めなかBOX』はつい最近週刊連載が始まったばかりで海外で通じる人など少ないのではなかろうか?
「それも無用だ。私はキャラセレクトでウケようなどとは思っておらん」
 上体をありえないほど反らし、バレリーナのように天を仰ぎつつもカメラ目線。
「阿野次のもじがウケをとれれば――それでよい」
(「第二部ジュディス‥‥メリケンサックのシーン‥‥」)
 ていうかそれコスプレの意味ないんじゃね?
「――とりあえず‥‥そろそろ私の出番かな」
 既に着替えを済ませていた天爪は源太郎のパフォーマンスに参戦。

「そこまでだ! 凡骨拳闘士めが!」
 眼鏡を外し、茶色のウィッグをつけ、白いコートを翻し、左手には半円状の円盤のような装置を装着している天爪。
『芸♪夢♪王』の永遠のライバルキャラ河馬(かわば)志人。ケンタロウに秘孔突かれたみたいな名前って言うな。
「ここからはオレのターンだ! ドロー! モンスターカード!」
 紅眼の碧龍(ルビーアイズグリーンドラゴン)召喚。覚醒した古河があんぎゃーと咆える。
 興奮する場内。クリーチャーも海外共通言語だ。
「ふはははースゴイぞーカッコいいぞー!!」
 御満悦の河馬社長。なかなか痛々しい姿ではあるがリュギでなければ構わないようだ。勿論古河の配役である。
「ふぉ〜〜あたたたたたた!!」
 一子相伝の暗殺拳・冬斗神拳でルビーアイズを攻撃するケンタロウ。迫力の割に名前が弱そうだ。
「バカめ! 行け、ルビーアイズ! 退廃のパーストストライク!!」
「しゃぎゃー!」
 ノリノリで源太郎にマジ真音獣斬を叩き込む古河。危ないから絶対真似スンナ。

●あいまい3インチ
 バイオレンスな時間は終わりを告げ、お食事タイム。
 フィーオの黒ドレス姿の眞耶が配膳をしている。
 基本バイキング形式で配膳は裏方の仕事だが、折角のコスプレを見せないのも勿体無いとこうして給仕をしている。
 それにしても――、
「ふふ‥‥私の衣装、気に入っていただけましたか? 凝った甲斐がありました」
 いや、衣装ではなく中身である。
 ミステリアスな東洋美女に普段接待慣れしてる彼等ですら息を呑む。
 そして流石に元舞妓。動作の一つにもソツがない。
 その彼女が混沌の女王、フィーオの姿をするものだからミスマッチ振りがまた凄い。
 ちなみに彼女の名誉の為に解説すればフィーオは影から混沌を生み出す。身体は変形させないので誤解なきよう。え? 何の話?
 そして眞耶が一人接待にいそしんでいる頃、裏方では――、

「絶対『奪取あそばせ、セーラー服!?』であります。皆でやる振り付けとしてリズミカルさでも大人気! ペコペコ動画でも絶賛であります!」
「『バラバラ愉快』も皆でやれる。それに『奪取〜』は一部多人数が必要。天爪竜斗を入れても9人。全然足りない」
 美空とミオが演目について口論してる。
「は、はわ〜二人とも喧嘩はやめて〜」
 仲裁の役にはあまり立っていない怜央。怜央とミオは裏方でも役に入り切っている。プロ根性――というよりは単に楽しんでいるだけか。
 それにしてもこいつらこの土壇場にまだ演目決まってないのか。
「人数の話するなら『バラバラ〜』は5人、『奪取〜』は基本4人であります! 更に『バラバラ〜』は男性キャストも必要! 女の子3人で踊るには『奪取〜』の方が適切なのでありますよ!」
「あ、あのボク男ッ‥‥」
「足りてない時点で4人も5人も同じ。『バラバラ〜』はどうしても男子が必要な訳じゃない」
「はうはう‥‥」
 二人の間で必死に虚しい自己主張をする男子小学生怜央君。余計可愛いからやめなさい。


 などと熾烈な打ち合わせの結果、演目は『バラバラ愉快』に決まった。
 やはり見せ場の一つのチアガール団体演舞が出来ないのがネックだったとか。
『時間がない訳でもなし、両方やればいいのでは?』という天爪のフォローにも
(『敗者に情けは無用なのでありますっ!』)
 という美空の訳のわからない意地で却下された。
(『ふむ、勝った者が全てを手にする事が出来る。世界の真理だな』)
 客のいない楽屋で無駄にポーズを決める竜彦。

『ある晴れた日のこと♪ バラッバラ〜の死体が〜♪
 捕まるぞ、隠さなきゃ♪ 不可能じゃないさ〜♪』

 とても直前まで揉めていたとは思えないほど息の合う3人。
 ちなみに美空は『羅紀星』青髪メインヒロインの姿で中央で踊っている。
 怜央はさくやの姿で未来人ポジション。
 それにしてもこの三人ノリノリである。
 客ウケはとてもいい。
 休憩用の椅子に座っていた4人組の外国人は半腰に立ち上がってガッツポーズをとりながら叫んでいる。
 そんなに興奮してるなら最前列に立てばいいと思うのだが、このポーズが由緒正しい観賞の仕方なのだとか。

「御苦労だった、三人共」
 黒マントを翻して労う竜彦に
「ボ、ボク男を見せられたでしょうかっ!?」
「無理。とっても可愛らしい女の子」
 コスプレ効果か普段より五割増しくらいにツッコミの厳しいミオに『はにゃ〜ん』と泣く怜央。
 だからそういうところが女の子なのではなかろうか。

「休んでいる暇などないのでありますっ!」
 かなたの服装から着替え、本来のドラグーンの姿となる美空。
「これだけは――これだけはやらねば気が済まないのでありますよ! 全ドラグーンを代表して!」
 なんか勝手にやたら重いものを背負う美空。山程の機材を愛車ミカエルに詰め込んで再び会場へ。

「皆は知っているだろうか!? 時代の流れに埋もれていった名作の数々を!
 思い出さねばならない! それはアニメを愛する我々消費者の責務なのだから!!」
 壇上で再び竜彦が弁を振るう。演説はセロのお家芸だ。
 だがその後ろにもう一人の演説好きがいる事を忘れてはならない。
「――では紹介しよう! 『機甲創生期モスピータン』!!」
 両手をクロスからがばっと開いてのもじが会場中央を促す。
「わーたーしーのーセーリーフー!!」
 これぞセロレクイエム。

 のもじに促された先にはスポットライトを照らされた美空が。
 注目の中RIDEアーマー・モスピータンを装着。女の子だがあえてモスピータン。青いし。
 中身のミカエルはカプロイア製。コンペティションのメイン三社の者ではない為、角も立たない。尤もそれを気にするゲストがこの場にいるのかどうかは不明であるが。
 ごっついRIDEアーマー姿で握手&サイン会を開く美空。笑顔にも汗が滲んでいる。
 その横には不釣合いなステッキをかざしてモスピータンの解説をする怜央。
(『是非ご一緒させてくださいっ!』)
 その熱意はどこから――、

『男は誰も FIGHTING DREAMERBOY
 十字架刻んだ FIGHTING DREAMERBOY
 コバルトー色のー男ーの夢ーどこにー♪』

「はにゃーん、男の歌だよー!」
 これか。

 喝采を浴びせるギャラリー。対象は怜央。
「あ、ありがとー! 私そんなに男らしいかな? 女の子なのに困っちゃうな‥‥」
 漢アニメ・モスピータンと魔法少女のギャップがウケているという事実は黙っておいてあげた方が彼の為だろう。

「哀れな事だ」
 懐かしきモスピータンに感動している(おまえいくつだ)ギャラリーの一人に後ろに立つのが大好きなのもじが。
「貴様達もかつてはは父の背中に憧れて新型KVを生み出そうとする夢溢れる少年だったに『決まっている』。
 兵器開発の醜い現状に重度のトラウマを受けそのようなヲタク青年達になってしまったとしか『考えられん』」
 上から目線性善説で白鳥座舞踊を踊りだすのもじ。ちなみにアニメ版。
「ちょ、阿野次さん! それはやり過ぎ――」
 台本にないお節介を焼くのもじを止めようとする天爪だが、古河にがっちりとホールドされる。
「どこへ行くつもりだリュギ。貴様にはまだ役目が残っておる」
「へ? あの‥‥だって河馬社長‥‥」
「リュギをやらなくていいなどと誰が言ったか、フン!」
 ボディブローで沈静化させぐったりした天爪を連れ出すコガウザーさん。
 どっちかというと天爪の方が変身前のコガウザーさんのような‥‥。
「さあ更生してやる粛清してやる働きたいでござるを口癖にしてやる。タンタンドゥ」
 そのポーズから何を繰り出すつもりかのもじ、絶対零度か?
 だが後に何人かの重役から『息子が立派になったありがとう』と感謝の言葉を頂いていたり。

●ザ・本気
「宴もたけなわ、楽しんでくれている事を感謝する」
 壇上に三度上がる竜彦。その姿はうって変わり白一色。
 セロの衣装を捨て、ブリタニウム98代目皇帝・トゥルーシュとなる竜彦。北欧の血を引いているせいか素顔もよく似ている。
 男性向けの演目の多い中、女性客にもいい清涼剤となるだろう。
 トゥルーシュ後ろをやたらと気にしている。確かに二度あることは三度あるというし。
「アニメのみでは諸君等も食傷であろう! 新たな余興を用意した!」
 実は全然食傷でもないのだが、そう言ってトゥルーシュの指差す先には眞耶。
 フィーオではない。まるで竜彦に倣った様に黒から白へ。いや、竜彦が眞耶に合わせたというのが正解か。
 白の着物の映える舞妓姿。朱をひとさし添えるのは変わらない。
「皆様方の為に‥‥舞を一手‥‥」
 後に仲間達は語る。
(『アレは反則っすよねえ』)
(『上手過ぎる。伝統芸能。本格派』)
 IMPのミオも流石に元舞妓のマジ踊りには敵わなかったとか。
 ちなみにそのミオは――、

「IMP観に来るといい。歓迎。三次元には興味ない?」
「NO! ナガトサン出るなら観にイキマース!!」
 あざとい、流石ミオ、あざとい。