タイトル:ヒーローになりたいマスター:冬斗

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/09/14 00:18

●オープニング本文


「天爪先輩」
 一年振りに送られてきたメールは昔の仕事場の後輩からのものだった。
 週末、この仕事に就いてからは定期的にとれるようになった休日を前に、飲み屋で元後輩の相談を聞くのも悪くないかと天爪竜斗は待ち合わせる。

「『バグおと』観ましたよ。アレ先輩協力でしょ?」
「俺は大したことしてねえよ。あいつらプロ顔負けってくらい無駄に芸人根性あったからな。っていうかなんだその変な略し方は」
「それを手配したのは先輩の手腕ですって。傭兵達に仕事の仲介やってるんでしょ? そんな仕事まであるんですね」
「――関口、お前」
 元同業だけに天爪は元後輩の意図を察する。
「今度ウチで主催するコスプレイベントなんですけどね。役者がつかまらないんですよ。演技出来てアクションも派手な人材が。
 会場屋外ですからそれなりのアクション期待したいんですよね。天爪先輩――」
「あのな、ウチの依頼は基本UPCの仲介だぞ。バグア関係ない仕事は受け付けないんだよ」
「そうですか? なんか随分幅広く請け負ってるって聞きますけど。大体『バグおと』だってバグアあんまり関係ないでしょ?」
 妙な部分で耳聡い。
「お前、『役者みつからない』って嘘だろ? 初めから当てにしてたな?」
 頭を抱える天爪。相談なんか聞くんじゃなかったと。
『愚痴る暇あれば手段を探せ』は自分が教え込んだやり方の筈なのに。何故狙いがあると気付けなかったか。

「――言っとくが、受けるのは傭兵達だからな。志望者いなければ諦めろ」
 とは言いつつも、こういうのが好きな傭兵達は少なくない事を天爪自身よく知っている。
「‥‥まあ、『コスプレしながら治安を守る』とかいうたわけた依頼よりかはなんぼかましか」
「え? なんです、それ?」
「――なんだろう? いや、流してくれ」

●参加者一覧

相沢 仁奈(ga0099
18歳・♀・PN
犬塚 綾音(ga0176
24歳・♀・FT
紅坂・陽媛(ga0451
17歳・♀・FT
三島玲奈(ga3848
17歳・♀・SN
リュイン・グンベ(ga3871
23歳・♀・PN
宗太郎=シルエイト(ga4261
22歳・♂・AA
古河 甚五郎(ga6412
27歳・♂・BM
双寺 文(gb0581
19歳・♀・GP

●リプレイ本文

●かおすな舞台
 八月某日、イベント会場の一角で行われているコスプレショー。
 メインタイトルは『アポロンの鍵』。
 天の岩戸に閉じこもった太陽神アポロンを引きずり出すには力ある者の手で鍵を回さねばならないとか。
 そこまでは原作の話。
 岩戸を開けられない魔法学校の人間達は召喚術によって異界から力ある者達を呼び寄せた。
『アポロンを解き放った者には大いなる太陽神の力が与えられる』と。
 そして――。

「フハハハハッ! 人間共よ、鍵は戴いた。太陽神の力は私にこそ相応しい!」
 ステージ背景の壁の上から高笑いを響かせるのは黒い甲冑に身を包んだ女、犬塚 綾音(ga0176)。
 演じているのは『魔王大系リュウバイト』の主人公、ガルダン。悪役だが、魔王なので主役である。『間違っているのは私ではない。世界の方だ』がキャッチコピーらしい。
「くっ、鍵を返しなさい! 貴方はそれを何に使うつもりっ!?」
 対するは『トライアングル・ブラッド』のヒロイン『シスター・ステラ』。
 演じているのはリュイン・カミーユ(ga3871)。
「知れた事よ、太陽神の封印を解き、その力で私の世界とこちらの世界を全て支配する。
 この大地は人間共の手に渡すのは惜しいからな!」
 よくぞ聞いたとばかりに嬉々として語る綾音。ちなみに『人間共』と書いて『ゴミども』『クズども』と読んでいる。
 清々しいまでの悪役っぷりはおそらく原作版だろう。アニメでは熱血騎士に主役を奪われている。
「何てこと‥‥!
 わかってるの? このままでは、其々の世界が壊れ、混ざり‥‥混沌の渦に‥‥」
「増え過ぎた人間を淘汰し、新世界を創るのもまた一興よ」
 やだなあ、そのまま『新世界の神になる』とか言い出しそうな勢いだ。流石原作版。
「こんな時に‥‥神父様はいない‥‥‥‥‥‥お金貸した侭なのにっ‥‥!!」
 それも何か違うだろ、と突っ込み。
 ちなみにリュインはステラに扮する為に赤毛のウィッグ。綾音は銀髪の為そのまんま。
 というか、女性的なコスチュームにアレンジしている為、銀髪でなければOVAキャラのマルソーに間違えられそう。
「はっ、そうじゃないわ!
 私達が帰るには、扉の鍵が必要。
 なのに‥‥カオス世界の支配を企む者や、瘴気に病んだ者達の妨害が。
 ――鍵を求め人々は集う」
 誰に喋ってるのか、最後の方は完全にナレーション口調。

●オリキャラ?
「ライトニングソード!!」
「きゃあっ!」
 綾音が剣を振るうと共にリュインの足元が激しく輝く。

「なかなかの演出ですね‥‥」
 舞台裏で天爪 竜斗(gz0059)が感心を向けているのは、裏方担当の古河 甚五郎(ga6412)。
「ふふふ‥‥バグアと戦うよりもこちらが本職と自負しております‥‥」
 ニタリと笑うガムテ職人。爬虫類系の笑顔が怖い。
「しかし‥‥ノリノリだな‥‥」
「犬塚さんがですか?」
「リュインさんもですよ」

「あうっ‥‥!」
 発光弾の雷を喰らった形となり、苦悶の悲鳴を上げるリュイン。
 知り合いから見れば『誰だお前』と突っ込みたくなる程のキャラ作り。
「くっ‥‥やめて! 何故私達が争わなければならないの!?」

「ヒロイン‥‥してますなあ‥‥」

「何故だと? 弱き者は敗れ去るのが世界の縮図。さあ、消え去るがいい!」
 とどめの雷を放つ綾音。
 動けぬリュイン。
 そこに、
「む‥‥?」
 立ち塞がる少女が一人。
「紅坂一剣流‥‥紅坂陽媛!!」
 少女、紅坂・陽媛(ga0451)は凛とした声で名乗りを――。

「ちょっ、紅坂さん本名っ!?」
 慌てる天爪に古河はしれっと返す。今回台本、小道具等の裏方作業はほぼ彼に任せていた。
「ええ、彼女アニゲあんまり詳しくないみたいだったんで。時代劇好きみたいですけど、この場で浮世の鬼を退治する侍のコスとかさせる訳にもいかんでしょ?」
「ま、まあ‥‥」
「それにコスプレはしてます。ちょうど彼女に似合う剣道少女をね」

『おー、美剣だー!』『狂子だー!』

 陽媛の衣装はライトノベル原作のアニメ『リアルファイト・スクールデイズ』の『美剣狂子』。
 異世界に担任の教師と共に召喚されて戦う現代ファンタジーだ。
 性格は自由奔放、深く物事を考えず、

「なんかよくわかんないけど、ひどいことするならボクが受けて立つよ!!」

 そう、こういうことをいう少女だったりする。
「ピッタリでしょ?」
 と、古河。
 ちなみにこの少女、二人を召喚した術師の少女と先生を取りあってるうちにだんだんヤンデレになり、キッチンで先生をめった刺しにしてしまうのだが、
「紅坂さんにはその事――」
「――言ってある訳ないじゃないですか」
 笑顔で応えるトカゲ職人。

「いくよっ! 紅坂一剣流――!」
 ヤンデレの期待を背負ってるなどとは露ほども知らぬ陽媛。綾音の懐に低く潜り、
「『浮き足落とし』!!」
 なんかすっごいマイナーな技を披露。
 しかし、それをくらってやる綾音ではない。
 足元狙いの技の強みは、飛んでかわす事で相手の動きを封じるところにある。
 だが、
「ライトニング――」
 綾音には魔法剣という飛び道具がある。
「あ、しまっ――」
 完全に陽媛の隙を捉えた綾音。
 雷を振り落とそうとする刹那、
「ぐっ――!?」
 重い炸裂音が響き綾音の身体が弾かれた。
 轟音のした側には長いスカートからショットガンを取りだしたリュイン。
「主は仰いました。――目には目を、灰は灰に」
 自分を守ってくれた少女を救う為、シスターは――、
「銃と喧嘩は江戸の華」
 言ってねえ。

●グラマー美女対決
 一方、会場の隅には、
「あるぇー? 6年ぶりぐらいに表舞台出れたと思ったら、ここTOFの会場じゃないんだー?」
 間の抜けた声を上げるのは、格闘ゲーム『ザ・トップ・オブ・ファイターズ』の『アンジュ』を演じる相沢 仁奈(ga0099)。髪はリュインと同じくウィッグ。
「どーりでアイツもいないワケだ。折角版権とかそーゆーの関係無いトコだってのにー」
 いや関係ないというか、色んなところから出てるから‥‥まあ『彼』も来られるのは間違ってはいないが。
 それにしてもこの少女、アンジュのコスが似合い過ぎである。
 特に‥‥なんというか‥‥その‥‥けしからん‥‥、
「ま、折角だしちょっと遊んでこーっとぉ♪」
 そう言って、騒ぎの中心――三人の女戦士の戦いの場に意気揚々と乗り込んでいく。
 黒騎士に銃を構える赤毛のシスターの背後に思い切り一撃を放とうと振りかぶり、
「待てぇーーい!!」
 別方向から思い切りの一撃を喰らってしまう。

 ◆◆
「ふぇー、随分賑わってるなー」
 観客達の人ごみの中、青い髪の少年がひとりごちる。
 やがて中央の騒ぎに気付くと突然声色を変え、
「――あれは!?」
 少年ははっきりと女性の声で、
「いさむ! 事件よ! 変わって!」
「え? なんだ、いきなりかよ!?」
 二種類の声を演じながらステージ裏に飛びこんでいく。
 間をおかず、双寺 文(gb0581)はピッタリと身体にフィットしたボディスーツを着たロングヘアの女となってステージに駆け出した。

「待てぇーーい!!」
 露出の高い銀髪の少女の背後に飛び蹴りを放ち――。

 ◆◆
「いやーんっ!
 あいたた‥‥もお、誰ー?」
 仁奈が振り返る先には、。
「貴女のやっている事は連邦アニゲ保護法第十二条に違反するわ!
 連邦捜査官、ブラッディー・シオンが拘束します」
 文が演じるのは漫画『超腕ブラッディー』の主人公『ブラッディー・シオン』。
 ただし『連邦アニゲ保護法』は創作。
「ブラッディー‥‥まさか『バーサーカー殺し』の!?」
 解説するのは助けられたリュイン。
「もう大丈夫よ。そこの二人、大人しく投降すれば危害は加えないわ」
 アニメ化もして人気上り調子と言わんばかりに元気ハツラツ。
「フン、政府の犬めが。この私を捕えられるものならば捕えてみよ!」
 敵が三人になっても怯まぬ綾音。
「言ったわね!」
 文が拳を固め、綾音に向かっていくも、
「おかえしー! へあっ!」
 仁奈の『テキトーパンチ』が文の横っ面に命中する。
 本気で殴っているので吹き飛び方がほとんどアニメのそれである。
 ゲーム原作ですらここまで飛びはすまい。
 背中からコスとは関係ない漆黒の翼が生えてたり。
「くっ、やったわね! 公務執行妨害もつくわよ!?」
 だがそんな警告は『アンジュ』には意味をなさない。
「篤と味わえー、アンジュ様の妙技をっ!」

●そうきたか
 形勢は三対二。いや、三対一対一と言った方が正確か。
「フッ、数で来るというのなら――」
 綾音が剣をかざす。
「来るがいい! 我がダークバイト、シュネルよ!!」
 自らの戦闘メカ――『リュウ』を召喚する。
 ダークバイト――とにかく咬むらしい。しかもダークに。

 しかし、眩い閃光と共に現れたのは――、
「ワタシ・ハ・イキノビルコトガ・デキルカ?」
 宇宙戦士ガンジムの主人公モバイルスーツ、『ガンジム』。
 勿論サイズは人間大である。

「これは‥‥!」
「ふふふ‥‥私が作りました。ダンボール製です」
 誇る古河。裏方ここに極まれり。
 中身は着ぐるみスト・宗太郎=シルエイト(ga4261)。
「だ、大丈夫なんですか‥‥? 今八月なんですけど‥‥」
 温度計は37度を指している。ガッデム地球温暖化。
「何を言ってるんですか。遊園地やデパートの屋上にはゴロゴロいますよ?」
 まあ確かに‥‥。

「こ、これは‥‥!」
 ここにきて初めて動揺を見せる綾音。
 召喚した愛機が全然別のものになっているのだ。
 しかし、宗太郎――いやさガンジムはボイスチェンジャーで作った機械音声で、
「マスター・ガルダン‥‥ワタシヲ・ミチビイテ・クレ」
 そう言われては命じねば悪役がすたる。
「――よかろう、いけ、シュネルよ! あの娘共に地獄を見せてやれ!」
 シュネルではないのだが。
「ガンジム、イキ・マース!」
 ちなみにこれの量産型は『ダム』というらしい。

●真打ち登場
『ダンボールを着て能力者相手にどうアクションをするのだろうか』
 その問題はガンジムの圧倒的な火力によって解決した。
 といっても空砲の小銃を使ったビームライフルではあるが。
 何故ガンジムが悪役かと聞かれれば

『いや、ほら、『連盟の白い悪魔』って呼ばれてますから』
 と古河。

「きゃあっ!」
 刀が武器の陽媛はなす術がない。
「このぉっ!」
 リュインがショットガンを構えるも、
「おっと、貴様の相手は私だ!」
 綾音が雷の魔法剣でそれを邪魔する。

「あっちゃ〜、寝坊してもうた」

 乱戦の最中、
 人込みをかき分けるセーラー服の少女。
「ちょっくらごめんよ〜、ってきゃあっ、どこ触ってるねん!
 ‥‥ええい、昇天上等!」
 炸裂音と共にその場一帯が煙に包まれる。

「ちょっ、無茶は‥‥!」
「大丈夫、あの場の客はエキストラ達です」

 それでいいのかと思いつつも場を見れば、ズタボロに擦り切れたセーラー服を着た三島玲奈(ga3848)。
「私はネタとマジを繋ぐ者。空飛ぶ漫談師玲奈や。アレを探さな世の中ネタまみれになるで!」
『アレ』とは? 無論鍵の事だろう。
 というか、この状況を『ネタまみれ』で済ますとは‥‥。
「にしても酷い世界や。妄想と現実を混同する人間多すぎ‥‥」
 いや、妄想も何も現にこの場に現れてしまっている。
「さて、時間が無い、こっちから仕掛けて行くか」
 破れたセーラー服を乱暴に脱ぎ捨てる。その下には――、
「ぶるまー言うねんてな? 体操着に重火器が『萌え』って聞いたで」
 観客の歓声を浴びつつステージに移動。上部の綾音と宗太郎――いやさガンジムに視線を向ける。
「む?」
「ヒョウテキ・ガ・フエタ・ヨウデス」

「御陀仏丸! オーバーセンス」
「御意!」
 背後にスモークが焚かれ、そこに映ったのは女侍。
『漫談師キングダム』略してマンキンの主人公の相棒『御陀仏丸』。
 演じているのは玲奈自身。映像である。
 そうなると自ずと玲奈の役も知れてくる。
「御陀仏丸inハリセン」
 ハリセンは御陀仏丸愛用の武器で、
「in――アンチマテリアルライフル『フタマタノツルギ』」
 ライフルが光を放つ。
「逝け、オーバーセンス・スピリットオブライフル!」
 マンキン主人公・笠倉匠(かさくら・しょう)銃口を壁上の二人に向け、放つ。

「ありがとう、玲奈さん! これで懐に潜れるよ!」
 飛び道具の援護を受け、陽媛が駆け出す。

「紅坂一剣流――『浮き足落とし』!!」
 流行ってるのかそれ。
 だが今度の相手はダンボールに身を固めた宗太郎。
 流石にその体躯では――、
「ワタシガ・ガンジム・ヲ・イチバンウマク・ツカエルンダ!」
 宗太郎は着ぐるみストの意地を見せ、跳んだ――。
 だが、
「スピリットオブライフル、真空滅陀撃ち!!」
 玲奈の銃撃がガンジムの胴体に炸裂する。
 飛ばせて落とす、格闘の基本である。

●真・真打ち登場
「さて、そろそろ舞台もクライマックスです。私も行ってきますね」
 後はよろしくと天爪に託して古河は更衣室へ。

 仁奈と文のバトルはアクションスターも真っ青の本格派となっていた。
 なにせグラップラー同士の対戦である。
 勿論『魅せる』事のプロである本職に技術では及ばないものの、迫力でそれをカバーする。
「よいしょっ! あちょーっ!」
 仁奈が気の抜けた声で放つ蹴りを受け止め、
「うぉぉりゃーーーっ!!」
 文は顔に不似合いなパワフルさで迎撃する。
 だが仁奈は拳を紙一重にかわすと、
「おばか――さんっ!」
 鷲掴みにした文の頭に踵を落とす。
 そこで決まったはずだった。
 しかし、
「――馬っっ鹿ヤロぉぉぉぉぉぉぉぉう!!」
 文は仁奈の蹴り足を掴み、蹴り落とされた勢いのまま自分ごと仁奈を床に叩きつけた。
「いやーんっ!」
「人様の頭を踏みつける等と一体どういう教育を受けてきたんだお前はぁぁぁッ!!」
 燃える瞳でヘンな説教をかます文。
 ちょっとキャラがズレてるがノリでカバー。

 この二人は勝手に戦っているのでいいとして、

 もう一つの戦場には最後の戦士が登場する。
『ブーーラーージーール!!』
 メインテーマをBGMに現れるトカゲライダー。勿論中の人は職人、古河甚五郎。
「あうっう、あうぅ〜〜!!」
 訂正。トカゲライダーはこんな風に鳴かない。
 そしてバイクにも乗らずに回転突撃。
 これ絶対ピラルク食ってる野生児入ってます。文といい、どうして混ぜるのか。
 ふざけてはいるものの、ビーストマンの獣突、威力は充分だ。
 目標は? そんなの決まってる。
 新顔は少ない方の味方だ。

「――っつぅ!!」
 玲奈を弾き飛ばし、リュインに向かって放射能を吐く。
 放射能!?
「くっ、これがヴァンパイアの本気!?」
 断じて違います。
 混ざっているのは野生児だけではないようで。

「――ふう、カオスな状況になってきましたね‥‥。
 まあ、いつも通りといったところですか」
 舞台は盛況だ。
 天爪はイベントの成功に安堵するのだった。