タイトル:首級が欲しいマスター:遠野

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/12/06 13:27

●オープニング本文


 UPCの小隊がその村を調査することになったのには理由があった。たまたま近くを通りかかった男から「村の様子がおかしいからしらべてくれ!!」と血相を変えて近くに駐屯していた軍に駆け込んできたためである。
その村は山を切り開いて作られていて、人口は百人にも満たない小さな村だ。尋常ならざる様子から軍は急いで小隊を編成して村に調査に向かわせたのだ。
「‥‥これはひどい」
 村に入った瞬間きつい血の香りに隊員の一人が眉をひそめ口元を抑えた。平屋の壁面、屋根、地面、所かまわず鮮血が浴びせられている。しかし不思議なことに死体はひとつも転がっていない。
「‥‥とにかく調査を始めよう」
 隊長は不審に思いながらも八名の部下と共に村を進む。
 彼らは能力者ではないためかなりの重装備になっている。隊長と四名の部下が対戦車ライフル、二名がロケッテランチャー、一名が戦車の装甲にも軽々と穴をあけられる、銃身130cmの強力なガトリングガンだ。とは言え心もとないことには変わりはない、慎重に進んでいく。
(恐らくキメラの仕業だろう、しかし‥‥キメラは逃走したのか?)
 隊長が思ったその時、後方でガラリと戸の開く音がした。一同は振り返り平屋から出て来たモノを見て、目を見開いた。
 フラリと人が出て来た、そしてその人には――首が無かった。
「なっ‥‥!!」
 さらにそれぞれの家からぞろぞろと首なしの人間が出て来る。さらに、慌てて対戦車ライフルを構えた隊員の首が突然切断された。首が無くなった体は銃の引き金を引くことなく崩れ落ちる。
「首が欲しい」
 殆どパニックに陥った一同が屋根を見るとそこには、隊員の首を抱えた男がいた。男が着ている白装束からのぞいているはずの両腕からは、代わりに刃渡り110cm程の日本刀のように鋭い刃が生えている。男はニッと嗤い、
「くれ」
 隊員達に向かってとび降りてきた。
「くそがっ!」
 隊員が着地の瞬間を狙って男に向かって射撃するが、男は再び大きく跳躍してこれを回避、別の家の屋根に着地した。隊員は再度狙いをつけようと銃を構えるが引き金を引くより先に男は隊員との距離を詰め、首を切り裂く。
「てっ‥‥撤退!!」
 自分達では手に負えないと判断し隊長は号令を叫ぶと、それを待っていた様に隊員達は一斉に入り口を駆け出す。
「そこをどけぇええええええええええええ!!」
 体に集ろうとする首なし共を、重い銃撃音を響かせながらガトリングガンで掃射していくが如何せん男の移動速度の方が速い、あっという間に次々と首を刈られていく。反撃をこころみようとしても射撃しても周りの首なしを盾にしながら進んでくるため攻撃が当たらない。とうとう最後の一人になった隊長が、男に腹を串刺しにされにされ高々と持ち上げられる。
「‥‥がっ‥‥!!」
 男は無造作に首を切り裂く。そして噴水のように吹き上がる血しぶきを浴びながら男は恍惚に表情を歪ませた。


軍はいつまでたっても帰って来ず、連絡も取れない隊員達を心配して捜索隊を村に向かわせた。そこで捜索隊が見た光景はかなり異様であった。
 血まみれの村を大量の首が無い人間が徘徊している。そして――その中にはUPCの軍服を着た者もいた。軍人だったモノは愕然としている隊員達を見つたらしく、緩慢な動作で隊員達の方向に向き直るとと銃口を向けた。


「依頼です」
 どこかロボットを彷彿とさせる作り物めいた笑顔を貼り付けながら少女のオペレーターは説明を始める。
「村がキメラまみれだそうです殲滅してください」
 そしてニコッと微笑み首をわずかにかしげながら、
「刀を両手につけたキメラもいるそうですよ? 寝首をかかれないように注意してくださいね」

●参加者一覧

旭(ga6764
26歳・♂・AA
ラウル・カミーユ(ga7242
25歳・♂・JG
鈍名 レイジ(ga8428
24歳・♂・AA
アレックス(gb3735
20歳・♂・HD
孫六 兼元(gb5331
38歳・♂・AA
殺(gc0726
26歳・♂・FC
ハンフリー(gc3092
23歳・♂・ER
ドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751
18歳・♂・DF

●リプレイ本文

「こいつはひでぇ‥‥ったく、バグアも相変わらず趣味が悪ィ」
 村の中を徘徊しているゾンビ達を見てアレックス(gb3735)は吐き捨てるように呟く。ゾンビ達はまだ襲ってくる気配はない。
 アレックスは一見すると毒づいているだけのように見えるが、彼自身故郷の村をキメラに襲われたことがある。まるで噴火直前の火山のように心の内側では怒りが燃え盛っていた。
「死者の住む村、か‥‥笑えねェな」
 鈍名 レイジ(ga8428)も苦々しく言う。
「命を奪うだけじゃ足りずに奪う事までさせて、それを俺達に討てってんだ相変わらずいい趣味してやがるぜ」
「ここがそうか、如何にもって感じだな」
 殺(gc0726)も辺りを眺め呟く。彼の赤眼が一瞬剣呑に光る。
「この辺りの人達の為にも少しでも脅威を減らしておかないと‥‥な」
「ホント、如何にもって感じダヨネー」
 ラウル・カミーユ(ga7242)が小銃に弾を込めつつ言う。
「血まみれの家屋に徘徊するゾンビキメラって、典型的ホラーって感じ、あとは逃げ惑う美女でもイレバ、完璧にB級ホラーだネ」
「もっとも、この場にいるのは逞しい男ばかりだがな」
 ラウルの飄々とした言い方にハンフリー(gc3092)はため息混じりに答えた。そして、先ほどから気炎を吐いている、逞しいの代表格であろう孫六 兼元(gb5331)に自然と目が移る。
「バグアも外道なモノを作り出したな! ならばワシが、その怨嗟の鎖を断ち切ってやる!」
 そう言って白い歯を見せ豪快に笑った。八重歯がきらりと光る。
 対して、旭(ga6764)は静かに呟く。
「嫌な光景だ、ちゃんと、死者を眠らせてあげないと」
 思わず剣を握る手に力が入る。死後なお、眠れない死者を弔わなくてはならない。
「そうだね‥‥はやく決着をつけてしまおうか」
 ドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751)はそう言うと目を閉じる。
「イグニッション」
 そして静かに呟き覚醒した。


 傭兵達は話し合った結果、二班に分かれることになった。先頭を先行するのは、旭、殺、ハンフリー、アレックスだ。さらに十字路を一本挟んで進むのは兼元、レイジ、ドゥ、ラウル。
「じゃあ、まずは試しに‥‥」
 旭は懐から閃光手榴弾を取り出した。これは殺傷能力こそないが、主に凄まじい閃光と音で敵をかく乱する目的で使われることが多い。旭はこれで首の無いゾンビ達がどうやって敵を判別しているかを調べる心積もりらしい。
「みんな、投げるよ! 喰らえ浄化の光っ!」
 口でピンを引き抜きゾンビの群れに向かって投げる。地面に落ちた閃光手榴弾は少しの時間をおいて炸裂した。
「‥‥で?」
 しばらくしてアレックスが呟く。ゾンビたちが手榴弾に反応した様子はない。
「あー‥‥お、オッケー。予想通り」
 旭はある程度予想していたらしく、予定通り村に侵入しようとした。
 その時だ。突然ゾンビ達が徘徊をやめ、一斉に傭兵達のほうに体をむけた。
「‥‥首を」
 低い男の声。傭兵達がハッとして声がした方向を見やると、村の入り口近く平屋の上に男が立っていた。腕の代わりに生えた刀がギラリと光り、男は絶叫した。
「首をよこせええええええええええぇ!!」
 その声を合図にしたかのように、ゾンビ達がこちらに向かって歩いてきた。
「行くぜ! インテーク開放‥‥イグニッション!」
 叫んでアレックスが覚醒、ゾンビへと向かう。
 レイジは軽く舌打ちをした。
「閃光手榴弾に釣られたか? ‥‥探す手間が省けて結構だぜ」
 そういって、ドゥと共に男がいる平屋の上に飛び乗り、男と対峙した。
「覚悟してね。君が今まで刈った人間達より僕達は厄介だと思うよ?」
 ドゥが先手を取り銃撃するが、男は軽く身を捻り回避。男はニヤッと笑った。
「首を‥‥よこせ‥‥」
 そう言って、二人に向かって突っ込んできた。


 一方、他の傭兵達は予定通り村に侵入し、村の中央に向かった。男の方はドゥと、レイジが引き付けているが、機動力では相手が上。おまけに屋根上という限られた空間では不利だ。そこで村の中央にある広場を制圧し、そこで男を仕留めようと思ったからである。
「今はただ、1分1秒でも早く連中を弔う為に終わらせてやる!」
 アレックスは群がるゾンビをショットガンで吹き飛ばし、さらにガトリングガンに持ち替えると廃屋にむかって射撃。廃屋は中にいたゾンビ共々、あっという間に穴だらけになる。
 殺も二本の刀を駆使して、颯颯で袈裟懸けに斬り、ライトピラーで突き刺す。
そのまま身体を回転させゾンビを引き裂き、後方に控えていたゾンビを回転の反動で強烈な一撃を加え、斬り捨てる。殺の攻撃で崩れた前衛にハンフリーが盾を構え突っ込みゾンビを突き飛ばす。そして倒れたゾンビを切り裂き、むかってくるゾンビの脚を払いのけた。
「もう眠れ」
 さらに倒れたゾンビを踏みつけ旭は大剣を構えて、前に出る。
「そこをどけえええええ!」
 風を唸らせ大剣を横になぎ払いゾンビの胴を寸断する。しかし、大振りの攻撃で隙ができてしまいゾンビに動きを拘束された‥‥が。
「はあっ!」
 豪力発現により、ゾンビの拘束を解き、ふらついた所に回し蹴りを食らわせ吹き飛ばす。
 傭兵達は畳み掛けるような連撃で、着実に広場に近づいていった。


「おお、派手にやってるネ」
 後方からA班に続くラウルは目の前にいたゾンビを撃ち抜き、呟く。
「ガッハッハッ! わし等も負けてられんな!」
 孫六は刀を担いでゾンビの前方に立ち、右足で踏み込み刀を振り下ろし、袈裟懸けに切りつける。さらに腰を落とし、刀を下げ、切っ先を後方に向け居合い抜きの構え。刹那、思いっきり踏み込み強力な斬撃を浴びせた。
 ラウルは短く口笛を吹く。
「〜♪ やるネェ、じゃあ僕も頑張っちゃおうかナ」
 そういって、孫六に続き刀を無造作になぎ払い、逆手の銃を撃込み沈黙させる。
「ゴメンねー、うろつくのも疲れたっしょ。オヤスミー」
 言葉とは裏腹に口調は軽く、一切の容赦も躊躇もなしにゾンビを打ち抜いていく。
 ゾンビをなぎ倒しつつ進んでいき、十字路の手前に差し掛かるとラウルが前を進む孫六を呼び止めた。
「あ、待っテ」
「ん? どうした」
 ラウルは十字路前まで来た。
「いや、軍人サンいるカナ? と思って――」
 ラウルが十字路の左右に伸びる道を確認しようと身を乗り出す、と同時に重い銃撃音が鳴り響きラウルが吹き飛び壁に叩きつけられた。
「‥‥ほ、ほらネ」
 撃たれたラウルが肩を抑えながら立ち上がると同時に、十字路の左右からゆらりと対戦車ライフルを持った軍人ゾンビが4体出て来た。
「む、数が多い」
 孫六が刀を構えると、ゾンビも銃を構え、一斉に発砲した。
 幸いにも軍人ゾンビが撃つ弾はなかなか命中しない。しかし傭兵達も、寄り来るゾンビ達を相手にしながら、銃撃の間をくぐり抜けるの難しい。ラウルが発砲するも他のゾンビが壁になって、肝心の軍人ゾンビにあたらない。
「面倒だ、全て吹き飛ばす! ラウル氏は離れてくれ!」
 とうとう痺れを切らした孫六が刀を最上段に構え、切っ先を天に向ける。
「まとめて吹き飛ぶがいい!」
 振り上げた刀を思い切り地面に叩きると十字に衝撃波が発生。まわりのゾンビや廃屋を吹き飛ばした。


「ちっ‥‥さすがにしぶといか」
 平屋の屋根の上でレイジは舌打ちをした。相手は素早く、足場は狭い。瞬天速で飛べるとはいえ無限に使えるわけではない。
「これはいち早く広場まで追い詰めないと、だね」
 ドゥも銃で、すばしっこく屋根から屋根へ飛び移るキメラを攻撃しながら答える。
 と、キメラが二人のいる足場に飛び移ってきた。刀がレイジの首筋めがけて薙ぎ払われようとする。
「首をよこせえええええええええっ!」
 間一髪、コンユンクシオで受け止める。刀がぶつかり合い火花が散った。
「‥‥! くびくびうるせえんだよ!! クソがぁ!!」
 刀をはじき返し、がら空きになった胴に一太刀を浴びせる。
「ぐっ‥‥」
 体勢を立て直し、反撃しようとするキメラにドゥが銃を発砲。キメラは向かいの屋根に飛び移り後退した。
「うん、この調子で行けば‥‥」
「ああ、行けるぜ!!」
 レイジはキメラに向かって不敵な笑みを浮かべる。
「熱くなるのはこれから、だろ? ‥‥さぁ、駆け抜けるぜ!」
 レイジの周りで火花が激しく、バチバチと散った。


「あれが広場‥‥か?」
 殺が言う。見れば前方に大きな広場らしきものが見えた。
「ああ、たぶんな‥‥だが」
 アレックスの言葉を旭が引き継ぐ。
「軍人ゾンビ‥‥がまだ出切っていませんよね」
 アレックスや旭が不安を抱えながら進んで行くと、広場の入り口に差し掛かった。
 その時。
突如廃屋の影から、ゾンビが飛び出してきた。ゾンビが携えている黒々と光るガトリングガンがこちらを向いている。
「しまった!」
 傭兵達に向かって銃弾の雨が浴びせられ体勢を崩した。さらに追撃しようとガトリングガンの銃口が回りだす。
 しかし、冷静に渾身防御を使って攻撃を凌いだハンフリーが盾を構え突撃して行き、浴びせられる銃弾を盾で逸らしながら間合いを詰め、抜き去りざま斬撃を食らわせた。
「所詮は死人‥‥他愛のないことだ」
 1拍おいてゾンビの胸から血が噴き出しがっくりと膝をつく。
「よし、今だ!」
立ち上がった傭兵達がゾンビに集中攻撃しとどめをさし広場に到着した。
 広場は円形になっており、既にライフルを構えたゾンビやロケットランチャーを携えたゾンビや、村人のゾンビがワラワラといる。
「よし、まずは僕が! 十字撃を使うから気をつけて!」
 旭は迅雷を使い、一気に広場の中央まで移動する。そして間髪入れず大剣を振り上げ、思い切り地面に叩きつけた。十字の衝撃波があたりの物を吹き飛ばす。
 さらにロケットランチャーを構えた軍人ゾンビに殺も迅雷を使い、風のような速さで間合いを詰め、胴をライトピラーで貫く。
「人として生まれたなら、人として死ぬ。それが出来ないなら、俺が人としてアンタ達を殺してやる」
 そのまま斜め上に切り裂き、返す刃で袈裟懸けに切りつけ、止めを刺した。
 衝撃波で吹き飛んだ軍人ゾンビの一体が、まだ息があるらしく、地面に這いつくばったままふらふらと対戦車ライフルを構え、殺に狙いを定め引き金を引こうとする。しかし銃弾が発射される直前、銃身をアレックスは思い切り踏みつけ、狙いを逸らす。
「もう足掻かなくていい‥‥安らかに眠れ」
 思わず柔らかな口調になる。哀れだった、死んでなおキメラの道具になって動き続けるその姿が。
 ショットガンをゼロ距離で発砲。今度こそただの死体に戻って、動かなくなる。
「‥‥これで広場は制圧完了かな?」
 旭が辺りを見回しながら言う。動くゾンビは視認できなかった。
 するとラウルと孫六が広場に到着した。
「おお! 広場は制圧完了か!」
「ま、アトは本日の悪役を倒せばいいだけカナ?」
 ラウルが飄々と言った直後。
 広場の中央付近に何かが激突した。みればキメラが苦悶の表情を貼り付け起き上がり、屋根の上を睨みつけていた。
 屋根の上には、肩で息をするドゥとレイジの姿があった。
「はぁ‥‥はぁ‥‥ざまぁねぇな‥‥畜生」
 呼吸を整えたドゥが叫ぶ。
「フィオレのお嬢さんじゃないが今日がアンタの終焉だ! ヤフーリヴァが告げる!」
 ドゥが銃撃し、キメラが飛びのくが着地点を狙いラウルが発砲し、脳天を撃ち抜く。絶叫を上げ頭を押さえよろめく。
「うん、ナイスショトだネ」
 唸り声を上げラウルに切りかかろうとするキメラだが、間に旭が入り刀を受け止める。
「く、首を‥‥よこせ‥‥」
 旭はわざらしく困った表情を浮かべた。
「欲しいって言われてもなぁ‥‥君には無理だと思うよ?」
 そう言って大剣にぐっと力をこめ、はじき返す。
 さらに切りかかろうとするキメラに向かって殺は苦無を二本投げつけた。難なく弾き飛ばすキメラだが一瞬、懐に隙ができた。
 そしてそれを見逃す殺では無い。
 一瞬で間合いを詰め、ライトピラーで斬り付ける。
「アンタにくれてやれるのは、『死』と言う言葉と『地獄』と言う名の世界だけだ」
 冷たく言い放ち、体を捻り回転。遠心力を利用し、先ほどよりも強力な一撃を加える。
「がああああああぁ!!」
 大きくよろめくキメラ、そしてその背後にレイジが回りこみ剣を構える。
「うおおおおおおおおおお!!」
 キメラが気づき、防御しようとした時にはもう遅い。強力な剣の斬撃はあやまたずキメラの首を狙い、跳ね飛ばした。首の無くなった体はよろよろと二、三歩程あるき、正面に倒れ込んだ。
「因果応報‥‥報いだな」
 ハンフリーがポツリと呟いた。


戦闘終了後、孫六の提案でキメラが集めた首を探し出し弔ってやろうということになった。
「人型がコレクションで一ヶ所に集めてたりしそー」
 ラウルが冗談交じりに言いながらひょいと一軒の家を覗き込む。するとラウルの表情が凍りついた。
 家の中。立ち込める腐臭。壁に取り付けられた棚の上、床、所狭しと首が整然と置かれていた。その様子は地獄絵図でさえかくや、といった有様だった。
「‥‥随分趣味がいいバグアがいたものだ、見つけたらお礼位はしたいね」
 覗き込んだドゥが奥歯をかみ締め言葉を搾り出した。
「‥‥ああ、本当に趣味が悪ィ」
 アレックスは拳を握り締める。より一層バグアに対して憎しみの炎が燃え上がる。
 その後首を丁寧に埋葬してやる。
「想い残さず逝くがよい」
 孫六が合掌すると、他の傭兵達もそれにならう。
「僕は神サマ信じてナイから十字は切らないケド、眠れるとヨイね」
「どうか安らかに‥‥」
 アレックスも黙祷を捧げる。
「寂しいモンだな。顔もわからないままの相手に手を合わせる、なんてのは」
 レイジもまた村人の安らかな眠りを心の底から望んだ。

 傭兵達は様々な思いを込め、手を合わせる。
 しかし、こんな悲劇は二度と起きて欲しくないという思いだけは皆の共通の願いだった。