タイトル:疾風、ソラを駆け抜けてマスター:とりる

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/10/21 06:37

●オープニング本文


 銀河重工・宇宙用KV開発――。

 ――『疾風』の名を冠した宇宙用KVは2機存在した。
 1機はG−43『ハヤブサ』の後継機を再設計し、宇宙対応機としたもの。その名はG−100『ハヤテ』。
 もう1機は突撃をコンセプトとした重装甲高機動の高級機。その名は『疾風』。

 銀河重工初の宇宙用KVとして競合し、名称まで同じだった2機。結果として採用されたのは‥‥
 前者。G−100『ハヤテ』であった。銀河重工上層部の判断はこうである。
 『まずはスタンダードとなる安価な宇宙用KVを販売し、シェアを獲得すべし』。

 G−100『ハヤテ』はG−43『ハヤブサ』の後継機開発計画を接収し、
 宇宙用KVとして再設計した、運動性と機動性に優れる、軽量小型の機体である。
 価格帯としては廉価機に分類される。
 選定の理由は安価であったことに加えて
 既に試作機がロールアウトし、実機テストが行われる段階にまで至っていたことが大きかった。

 対して『疾風』はペーパープランの段階であり、
 ストライク・アクセラレータや超伝導DCなどの高価な技術を用いた高級機。
 その開発費も相応のものとなることが予想された。

 ともあれ、却下されたとは言え、運用法が『突撃』のみという
 単純明快な『疾風』が魅力的なプランであったことには違いない。

 ***

 銀河重工本社。第2KV開発室――。
 白衣を着た50代前後の男性が慌ただしくPCのキーを叩いたり、
 デスクの上に山積みとなった書類に目を通したりしていた。
 そこへ――白衣を着た長身の男性‥‥
 GFA−01『シラヌイ』やXGSS−03A『シコン』の開発を手掛けた、草壁・誠十郎が顔を出す。
「お帰りなさい、先輩」
 誠十郎は優しい声で言った。嬉しそうであった。
「‥‥? おお、草壁くんじゃないか。どうしてこんなところへ」
 誠十郎の方を向き、作業の手を止める男性。
「先輩が本社へ戻られたと聞きまして」
「ああ、それで『お帰り』か。ありがとう。
 ははは‥‥熊本支社へ飛ばされたと思ったらまた逆戻りだよ。
 私は竜牙とオロチのVUが終わったら、あのまま隠居しても良いと思っていたんだがね」
 男性はぽりぽりと白髪混じりの頭をかく。
「そんな。せっかくまた第一線へ戻って来られたのに。先輩の力はまだまだ必要です」
 力強い口調の誠十郎。
「そう言ってくれると嬉しい‥‥のかな?
 まさか、一度外されたプロジェクトをまた任されることになるとは‥‥。複雑だよ」
「このプロジェクトはやはり、先輩が担当するべきだったんです。上もやっと理解したんでしょう。
 先輩が開発中の機体は‥‥あれの後継機なんですから」
 誠十郎はPCのディスプレイに目をやる。
 そこには戦闘機形態のKVの3Dモデルが映し出されていた。
 シンプルでコンパクトに纏まったデザインをしている。
「まあ‥‥基礎設計は私だが、大分手が加えられているね。
 君達のチームが開発した機体のデータも大きく反映されている」
「ええ、俺は良い機体だと思います」
「うむ。私もそう思うよ。だからこそこの最終調整を引き受けたんだ」
 男性は優しく笑う。
「‥‥そういえば、先行量産型がロールアウトしたとか」
「ああ、そうだ。次は実戦テストになるね。パイロットはULTの傭兵にお願いすることになるだろう」
「彼らならやってくれると思います。良い結果を、期待しています」
 誠十郎はキッと表情を引き締める。
「ははは。そうなると良いんだけどね」
 少しだけ困った笑顔を浮かべる男性であった。

 ***

 男性のPCに表示されているデータは以下のものとなる。

●G−100『ハヤテ』
価格:廉価機に該当

攻撃■■■□□
命中■■■□□
回避■■■■■
防御■■■□□
知覚■■■□□
抵抗■■□□□
装備■■□□□
生命■■□□□
練力■■■□□
(※この表はあくまで開発者の主観であり、質問をされても詳細な数値はお答え出来ません)

行動:3
移動:5
副兵装スロット:3
アクセサリスロット:2

機体特殊能力:
○アサルト・アクセラレータ
 威力増加と加速力を同時に得る複合攻撃補助システム。
 ストライク・アクセラレータのデチューン版。

 効果:1ターンの間、攻撃・知覚・移動を上昇させる
 練力消費:30

○超伝導AEC Type.C
 特殊電磁装甲を用いて抵抗力を大きく向上させる装置。エネルギーカートリッジ方式。
 抵抗力の上昇幅が減少した代わりに使用可能回数が増加。

 効果:敵の知覚攻撃1回に対し、抵抗にプラス修正を受ける
 使用可能回数:5

○CRブースター
 機体後部に追加装備するロケットブースター。
 1度の出撃で1回のみ使用可能。使用後は切り離す使い捨て型。

 効果:1ターンの間、移動を上昇させる
 使用可能回数:1
(※機体特殊能力の効果による正確な上昇値はお教え出来ません。ご了承ください)

機体解説:
 銀河重工が開発した宇宙用KV。高速性を生かした迎撃機としての運用を想定。
 軽量・小型の機体であるため、兵装搭載量こそ少なめだが高い運動性と機動性を持つ。
 本機はこれまでに開発された銀河重工製KVの技術を継承しつつ、
 初めて傭兵に貸与された銀河重工製KV、G−43『ハヤブサ』への原点回帰とも言える。
 人型形態の外観はシラヌイ系。背部の2つの大きなプロペラントタンク(CRブースター用)が目立つ。
 推進機関はイオンエンジン。姿勢制御方式は反動推進スラスター。駆動系は流体圧アクチュエーター。
 コクピット周りはKVコクピットシステム。簡易ブーストを使用可能。AU−KV対応。

●参加者一覧

櫻小路・なでしこ(ga3607
18歳・♀・SN
榊 刑部(ga7524
20歳・♂・AA
狭間 久志(ga9021
31歳・♂・PN
三枝 雄二(ga9107
25歳・♂・JG
瑞姫・イェーガー(ga9347
23歳・♀・AA
美崎 瑠璃(gb0339
16歳・♀・ER
レベッカ・マーエン(gb4204
15歳・♀・ER
ラサ・ジェネシス(gc2273
16歳・♀・JG
ヘイル(gc4085
24歳・♂・HD
黒羽 風香(gc7712
17歳・♀・JG

●リプレイ本文

●G−100「ハヤテ」
 銀河重工製宇宙用KV、G−100『ハヤテ』の先行量産型の実戦テストを行うために、
 銀河重工の所有する飛行場へやって来た10名の傭兵達。

 傭兵達はスタッフから戦場である高度100kmへ到達するまでの手順と、
 宇宙空間での戦闘について入念な説明を受けたのちに、
 パイロットスーツへ着替えるために更衣室へ移動。
 自前で用意してこなかった傭兵には宇宙対応のパイロットスーツが貸し出された。

 ***

 女子更衣室――。
「ついにこの日が、ソラに上がれるんダー」
 感動して瞳をキラキラと輝かせつつ、ぷるぷる震えているラサ・ジェネシス(gc2273)。
 そして――着替え中の女性陣にちらりと目を向ける。
「胸囲の格差社会‥‥くっ」
 ギリギリとハンカチを噛む彼女。
「お前はまだまだ発展途上。気にすることは無いのダー」
 胸を張り、偉そうな口調でレベッカ・マーエン(gb4204)が言った。
 レベッカはスレンダーで整った体型をしている。

「ソラ‥‥楽しみですね。そして新型のG−100『ハヤテ』‥‥」
 おっとりなお嬢様、櫻小路・なでしこ(ga3607)は上を見上げてぽーっとしている。
 そしてラサの視線に気づいて‥‥
「ん? どうされました?」
 可愛らしく小首をかしげた。
 彼女は細身でありながら、出るところはしっかりと出ている。
 全身にぴったりとフィットし、身体のラインがはっきりと浮き出る宇宙対応のパイロットスーツ――。
 兵士からの苦情に屈せず、販売までこぎつけた開発者には敬礼しておこう。

 ***

 男子更衣室――。
 こちら‥‥男性陣はさっさと着替えを済ませ、渡されたマニュアルに再度目を通していた。
「ハヤブサ、ミカガミの系統である新しい機体というのは私にとっては魅力的ですね。
 良き機体であることをこのテストで実証してみたいと思います」
 言ったのは榊 刑部(ga7524)。
「ハヤブサの後継機の再設計って聞いてたけど‥‥どんな感じかな?」
 狭間 久志(ga9021)‥‥ハヤブサ乗りである彼は少なからず気になるようだ。
「シコンやシラヌイ系の技術もふんだんに盛り込まれているみたいっすね」
 スペックを参照しつつ三枝 雄二(ga9107)が答える。

 ***

 着替えを終えた傭兵達は男女合流し、格納庫へ向かう。

 真っ先に機体のほうへ向かっていったのはラサ。
「この子が今回の相棒かぁ‥‥ヨロシク!」
 かなりハイテンションな様子で、機体の周りをぐるぐると回る。
「危ねぇよ嬢ちゃん! 邪魔だからあっち行ってろ!」
「わわわ!? 申し訳ないのダー」
 整備員のおっちゃんに怒られた。
 現在G−100『ハヤテ』の先行量産型10機は外付けロケットブースターの取り付け作業中。
 ‥‥邪魔をしてはいけない。ラサはすすすーっと下がった。

 その様子を見下ろしている美崎 瑠璃(gb0339)。
 ラサが怒られたところでくすっと笑った。そして。
「宇宙を駆け抜ける風! その名はハヤテ! ‥‥なーんちゃって。
 新型KVのテスト依頼って一度受けてみたかったんだよね。宇宙用なら尚更!
 あたしもこれが宇宙戦のデビュー戦‥‥。いい結果出せるように頑張るぞっ!」
 ぐっと両手を握り、気合を入れる。
 別件で参加した太原衛星発射センター関連の依頼がきっかけで宇宙へ興味を抱いた彼女。
 その後も宇宙関連の依頼を受けつつ‥‥
 一度ソラへ上がってみたいという胸の中の想いが日に日に膨らみ、熱を帯びてきた矢先、
 今回の依頼を本部で見つけ、喜び勇んで参加した次第だ。

 ***

 外付けブースターの取り付け作業と最終チェックが終わり、傭兵達は全員機体に搭乗。

「銀河重工の新型か‥‥。さて、どれほどの物かな? 試させて貰おうか」
 ヘイル(gc4085)は軽やかな手つきでコンソールを操作する。
「これが『ハヤテ』か。‥‥ふむ、ラスヴィエートと比べてはかなり運動性・機動性はいいのだな。
 その分装甲は薄そうだが」
 などと最初に触れてみた感想を述べる。

(ハヤテ、気分はどう‥‥? ボクは楽しみだよ。恐ろしくもあるけれど‥‥)
 瑞姫・イェーガー(ga9347)は目を閉じ、心の中で呟いた。
 未知なる宇宙への期待。そして不安。

(初めてのKV依頼が新型のテストとか不安ですけど、今後の為にも頑張らないといけませんね)
 新型‥‥まだ実戦テストが済んでいない機体だ。今回が初めての実戦となる。
 黒羽 風香(gc7712)の不安も仕方ない。
 彼女は首を横に振ってネガティブな考えを散らすと、
 口元をきゅっと引き締め、ヘルメットを被った。

 ***

 いよいよ、10機の先行量産型『ハヤテ』は離陸。滑走路から飛び立って行く。
 ある程度の高度まで来ると、そこから垂直上昇。高高度まで上がる。

 ‥‥高高度に到達。手順通り全機外付けロケットブースターに点火。一気にソラへと上がる。
「おー、ドキドキ! ‥‥って、はしゃぐと舌かみそうダ」
 言ったのはラサ。ブロック型コクピットシステムのおかげで、
 旧来のロケットとは違い、揺れはそれほど酷くないものの、やはり振動はある。

 十陣の疾風がソラへ向けて駆け上げって行く――。

●ソラへ
 10機の『ハヤテ』は高度100kmへ到達。

「軌道侵入確認、機体制御、火器管制、生命維持、問題なし。
 ‥‥宇宙(そら)か。まさか自分で来ることになるとは思っても見なかったっす」
 各種ステータスを確認しつつ雄二が言った。

「やはり綺麗ですね‥‥ソラから見る地球は‥‥」
 なでしこは思わず見とれる。
 全天周囲モニターの『下』に広がるのは薄く蒼い層が被った地上。
 この高度から地球は丸く見えないが、丸みを感じることは出来た。

「おおお! すごいヨ! ここがソラ!」
 テンション鰻登りのラサ。『下』はうっすらと蒼い地球。
 『上』は真っ暗な宇宙。星々の輝きも見えるが。

「ソラは慣れないのダー」
 レベッカは少し落ち着かない様子。
 しかし高度100kmでは地上とほぼ変わらない重力がある。

(これが戦争でなければ良かったのに‥‥)
 瑞姫は『下』に広がる地球を見て、そう思った。
 自分達は戦うためにここまで上がって来たのだ。

「ここが宇宙‥‥ですか。何て言うか、綺麗な場所ですね。
 ‥‥ちょっと落ち着かない感じもしますけど」
「そうだね‥‥綺麗だね‥‥。あたし‥‥大感激‥‥」
 風香の言葉に瑠璃がちょっと涙声で答える。
 そのとき――
 警告音。レーダーに反応。赤い点が複数。
「‥‥来た、敵だ。皆、準備はいいか? こちらは先行量産型‥‥実戦は初めてだ、無理はするなよ」
 ヘイルが皆に呼びかける。全員が感動ムードから一転、戦闘モードへ。
「作戦時間は1分間、下手に手間取ると袋叩きにされるっすよ」
 雄二が確認。傭兵達は事前の相談で撤退ラインを『生命が最大生命力の70%を切る』か、
 もしくは『交戦時間が1分を経過』と設定。必ず地球へ帰還するという固い決意が全員にあった。
「了解です。ハヤテの性能‥‥試させてもらいます」
「了解だよ。‥‥さて、1分でどのくらい落とせるかな」
 刑部と久志が答える。

 傭兵達、10機の『ハヤテ』は各エレメント(2機編隊)に分かれ、
 接近してくる小型宇宙キメラと戦闘を開始。

 ***

 エレメント1――
「宇宙キメラ‥‥」
 なでしこはズームサイトを使って敵影を確認。
 それは左右に発光する2つの大きなこぶのような器官がある、グロテスクな生物だった。

「タイガー1、FOX2」
 雄二機はさっそく子型キメラを射程の捉え、ミサイルを発射。
「命中。挙動は大気圏内を飛んでる時と違和感はないな、SESに感謝」
 ミサイルは確実に着弾し、小型キメラ1体が弾け飛んだ。

 エレメント2――
 刑部機はミサイルを発射しつつ接近。着弾し弾ける小型キメラ。
「目標ロック」
 トリガーを引き、ライフルで射撃。小型キメラは次々と弾ける。
 実戦データを得るため、レーザーガンも使用。光条が小型キメラを貫いて絶命させる。

「数だけは多いな‥‥」
 わらわらと接近してくる小型キメラに対し、ヘイル機はライフルとレーザーで弾幕を展開。
 多数のキメラが砲弾と光条を浴びて宇宙の藻屑となる。

 エレメント3――
「さーてこの子の凄いところを見せちゃうヨ。
 浮かれてないできちっとデータを持って帰らないとネ」
 ミサイルを発射して確実に敵を撃破するラサ機。

 久志機は機種を回頭しながらライフルで掃射。
 ワンテンポ速い攻撃も織り交ぜる。‥‥複数のキメラが弾けた。
(運動性はまずまず‥‥か)

 エレメント4――
 瑞姫機はライフルで牽制しつつ、レーザーガンで確実に敵を仕留め、一撃離脱を繰り返す。
 僚機の援護も忘れずに行う。

 ヘルメット越しに不機嫌そうな表情を浮かべる風香。
「綺麗な場所なのに、バグアの所為で台無しですね‥‥」
 連続でトリガーを引き、目の前の不快なキメラを一掃。

 エレメント5――
「宇宙高機動戦闘か。さあハヤテ、行くのダー」
 遠距離からミサイルによる先手を打ったのち、レベッカ機はライフルで射撃。
「当たらなければどうと言う事ないのダー」
 取り付こうとして来る敵は全て回避。反撃のレーザーを浴びせる。

「っとと、やっぱり空戦と同じみたいに戦うってわけには行かないか」
 瑠璃は不慣れなために若干戸惑いつつも、敵の攻撃を回避。
 小型キメラは取り付いての格闘攻撃しか出来ない様子。
「‥‥でも、まだまだこれからっ!」
 ライフルに連動するトリガーを引いて敵に砲弾を叩き込む。

●宇宙の脅威
 傭兵達が小型宇宙キメラと交戦している最中。
 一条の閃光が戦場に奔る。

 エレメント1――
「プロトン砲‥‥? 砲撃型キメラ‥‥」
 なでしこはすぐさまズームサイトで確認。
 古代生物のような長い尾を持ったキメラが大口を開き、こちらを狙っていた。
「あれをやります。前へ、出ます!」
「了解。援護するっす」
 雄二機の援護射撃を受けつつ、なでしこ機は一気に前へ。
 敵の砲撃が何度か来るが、距離があるうちは‥‥ハヤテの運動性能ならば‥‥!
「いきます! やあああ!!」
 アサルト・アクセラレータを使用。肉薄。
 ライフルで牽制ののち、人型へ変形。剣で斬り付ける。
「このままやるっす!」
 追い付き、砲弾を連続で叩き込む雄二機。‥‥砲撃型は沈黙。

 エレメント2――
「榊、いけるか? フォローは任せろ」
 ヘイルから刑部へ通信。
「勿論いけますよ。AA起動! 突貫します!」
 突進する刑部機。
「‥‥仲間はやらせん。AA‥‥スタンバイ。喰らえ!!」
 それをヘイル機が援護。
「はあああっ!!」
 ヘイル機の攻撃により傷が付けられた部分へ刑部機が斬撃を加える。‥‥敵は沈黙。
「なるほど‥‥通常の空中戦での空中変形に比べれば、機体の安定度は段違いですね。
 これは宇宙戦用に新しい機体の活用方法を考え直してみるべきなのでしょうね」

 エレメント3――
(『SES対応兵器の特徴は、高い反応速度と運動性能にある』
 ‥‥この好機にバリアのスイッチを押す奴は腰抜けだ)
 久志機は砲撃型の攻撃を回避しつつブーストを使用し一気に接近。
「機動力で勝負してる時に、喰らう前提の能力なんてアテにするかっ!!」
 敵の側面へ回り込み、ライフルを連射。
「久志殿! 突出し過ぎだヨ! 僚機のことも考えてヨ!
 まったく‥‥熱くなり過ぎダ」
 遅れてラサ機が追い付く。
「こっちも‥‥いくヨ!」
 AA使用。剣を振るい、連続の斬撃。砲撃型を撃破。

 エレメント4――
「AA‥‥起動。行く‥‥!」
 瑞姫機も砲撃型に肉薄。人型に変形。剣で何度も斬撃。表皮を斬り裂く。
「こちらも行きます‥‥!」
 風香機も同様に人型へ変形し剣による斬撃を加える。
 ‥‥身体中を切り刻まれた敵は沈黙。撃破。

 エレメント5――
「防御スキルを試す、超伝導AEC発動」
 レベッカ機は敵の光線を受け止める。‥‥損傷率は10%程度。
「反撃! AA発動! ハヤテ、撃ち砕くのダー」
 威力を高めたライフルで射撃。
「行っくよー! 必殺剣! 『瑠璃色の牙・宇宙進出の巻』っ!!」
 続いて瑠璃機が接近し、剣で斬撃を見舞う。
 ダメ押しにレベッカ機がミサイルを叩き込み、撃破。

●オービットダイブ
「流石に数が多いな。‥‥データの収集はそろそろ良いか?」
 ヘイルが言った。多数を撃破したものの、まだ残っている。
「交戦開始から1分経過。もう十分です。撤退しましょう」
「よし、撤退するぞ。CRブースター、点火!」
 刑部の返答。ヘイルの合図で2機は撤退を開始。

「風香、こっちもそろそろずらかろう。依頼は帰るとこまで込みなんだからさ」
「確かにそろそろ潮時ですね‥‥了解です。CRブースター点火」
 瑞姫と風香も同様。

「これはおまけです!」
 なでしこ機がAA使用のミサイルを全弾発射し、残りの全機が撤退。

「超伝導AEC‥‥あればこういう時には便利なんだけどね」
 敵との距離を取りつつ、AECのスイッチに指をかけ、呟く久志。
 もっともここまで離れればそうそう当たらないが。

「これより突入シーケンスに入る。次喋れるのは降りてからっす」
 敵と十分距離を取ってから雄二が言い、全機が再突入を開始。

「大気圏突入時のダメージって、超伝導AEC応用して軽減できないかなぁ」
 などと言いつつ、
「ソラ‥‥もっと居たかったナァ」
 ラサはすごく名残惜しそうだった‥‥。
 短い戦闘を終え、傭兵達は地球へと帰って行く‥‥。

 ***

 全員が無事に銀河重工の飛行場へ帰還した。
 さすがに皆疲労しているので、簡単に感想を述べる。

 なでしこ――
「良い機体ですね。使い勝手は良好です。拡張性の低さは‥‥性能を考えれば仕方がないと思います」

 刑部――
「敵との射程の関係上、先手を取られやすいことを考えれば、やはり『超伝導AEC』の搭載は正解だと思いますね」

 久志――
「お行儀のいい機体‥‥かなぁ。ハヤテの強味が回避力なら、AECもアサルトも要らないから、
 宇宙でも使える翼面超伝導流体摩擦装置か超伝導アクチュエータの代用品を載せて欲しいような‥‥」
 その言葉にスタッフは‥‥
「ハヤテの売りは高速性です。運動性を向上させる特殊能力を搭載していないのは、練力の消費を抑えるため。
 代わりに素の運動性‥‥基本性能は高いと自負しています。‥‥ともあれ、その意見は参考にさせてもらいます」
 と答え、依頼は無事に完了となった。

 これから配備されることとなる『G−100「ハヤテ」』。
 今回傭兵達が持ち帰った実戦データは大いに役立つことだろう。