タイトル:砂漠の姫君マスター:とりる

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/10/03 23:34

●オープニング本文


 ラストホープ。広場――。
 1人の少年がベンチに腰掛け、ただただ、ぼーっと過ごしていた。
 彼は能力者の傭兵。名はカレン・M・クオンジ。ULTにはそのように登録してある。
 普段はほとんど戦場で過ごしているが‥‥たまにLHへ帰ってきて、こうやって過ごすのだ。
「‥‥」
 しかし――今回帰って来て目にした光景は、前回見たものとは大きく異なっていた。
 先の大規模作戦――バグアによる攻撃――。
 瓦礫などは大分片付けられたようだが、破損した建物などはこの広場から眺めるだけでもよく分かる。
 修理中なのだろう。シートをかぶせられた建物も多い。工事の音が響く‥‥。
「‥‥?」
 そのとき、カレンの視界に妙なものが映った。
 ‥‥身なりの良い美しい少女が、広場の真ん中できょろきょろと不思議そうに周りを見回していた。
 ‥‥艶のある若々しい赤褐色の肌。少女も自分と同じ中東の出身なのだろうか。
 歳は‥‥自分より2〜3ほど上のようだが。
 などとカレンは思う。
「‥‥」
 きっと迷子か何かだろう。迷子と言うにはいささか年齢が高いが。
 カレンはすぐに興味を失い、視線を下に落とした。
 目を閉じ、少し昼寝でもしようかと思うと――
「ちょっとそこのあなた」
 すぐ近くで声がした。だが無視する。
「ちょっと? 聞こえているの?」
 うるさい。無視する。
「寝たふりをしてもダメ! 起きているのは分かっているんだから!」
 両肩を掴まれてがくんがくんと揺さぶられた。さすがに目を開け、視線を上へ。
 ‥‥先程の身なりの良い少女が目の前にいた。
「‥‥‥‥僕に、何の、用ですか」
 煩わしい。面倒。感じたのはそれだけ。
 人と接するのは苦手だ‥‥。
「あなたの出身についてお聞きしたいのだけれど。もしかして‥‥」
 少女はカレンの故郷の名を口にした。
「‥‥!」
 カレンはほんの少しだけ、驚いた表情をする。
「ねえ、違うの? 違ったら謝りますわ」
「‥‥いえ。その通りですが‥‥」
「やっぱり! こんなところで同郷の人と出会えるなんて! すごい偶然!」
 少女は嬉しそうに笑い、両手を重ねる。
「‥‥」
 まさか同郷とは。
 しかし、カレンにとってそんなことはどうでも良かった。
 立ち上がり、その場を去ろうとする。
 面倒はごめんだ。
「どこに行きますの? 話はまだ――」
 カレンは無視して少女に背を向け、歩き出す。
「ちょっと! お待ちなさい!」
 無視して歩を進める。
 だが少女は追って来た。進行方向に回り込まれる。
「はあ‥‥はあ‥‥。お願い‥‥待って。少しだけ、お話をさせて?」
 息を荒げながら言う少女。
 先程までの高飛車な態度とは違う。上目遣いにこちらを見つめてくる。
「わたくしの名前はファルリン・ヌーリ。あなたは?」
「‥‥カレン・M・クオンジ、です」
 観念したように、カレンは答えた。

 ***

 ‥‥カレンが座っていたベンチまで戻り、並んで座る2人。
「久しぶりに戻ってみれば‥‥まさかLHがこんなことになっているなんて‥‥ショックですわ」
「‥‥」
「お父様が強引に別荘へ連れて行くんですもの」
「‥‥」
 話を聞けば、どうやらこのファルリン・ヌーリという少女は、富豪の娘らしい。
 LHが先の大規模作戦にて、移動を決めた時点で家族と共に別所へ避難していたそうな。
「ねえ、これは一体どういうことなんですの?」
 少女が尋ねてくる。
「‥‥新聞や、テレビのニュースは見ないんですか?」
「そういったものはお父様が見せてくれませんの」
「‥‥」
 正直呆れた。
「‥‥ブライトンや、その他バグアの攻撃ですよ」
「ブライトン??」
 少女はきょとんとした表情。
「‥‥」
 どこまで世間知らずなんだ。この人は。
 頭痛がしてきた。箱入り娘にもほどがある。
 ‥‥軽く痛む額に手を当てつつ、カレンはファルリンに事情を説明してあげた――。

 ***

「まぁ‥‥そんなことが‥‥」
「‥‥そういうわけです」
「大変‥‥でしたわね‥‥」
 大変? それだけで片付けるのか、この人は。
 カレンは少しだけ眉間にしわを寄せる。‥‥が、すぐに元に戻した。
「‥‥僕が知っていることは話しました。それでは」
 カレンは立ち上がる。今度こそ帰る。
「待って!」
 呼び止められるが、無視。
「待って! カレン・M・クオンジ!」
 あんな‥‥箱入り娘と‥‥、硝煙と血の匂いが染みついた自分とでは‥‥。
 カレンは振り返る。
「僕と、あなたとでは、住む世界が違います。あなたの平和を‥‥大切にしてください」
 カレンには珍しく、強い口調で言う。
 そして、踵を返して去っていく。ファルリンは、今度は追ってこなかった‥‥。

 ***

 数日後――。
 カレンは中東の戦場に居た。
 今は基地のブリーフィングルーム。
 室内には戦場に生きる者達の、独特の雰囲気が漂っていた。
 やはり自分の居場所はここだ‥‥。
 カレンはそのように思った。

 今回の任務はバグア軍の小型要塞の攻略。
 なんでも、中には敵エース機も存在するらしい。
 ‥‥気を引き締めなければ。
 カレンはぶんぶんと首を振り、頭の中に浮かぶファルリンとの会話を掻き消し、ぐっと奥歯を噛んだ。

●参加者一覧

UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
鈴葉・シロウ(ga4772
27歳・♂・BM
ゲシュペンスト(ga5579
27歳・♂・PN
Anbar(ga9009
17歳・♂・EP
鹿嶋 悠(gb1333
24歳・♂・AA
フローラ・シュトリエ(gb6204
18歳・♀・PN
不破 霞(gb8820
20歳・♀・PN
張 天莉(gc3344
20歳・♂・GD
カズキ・S・玖珂(gc5095
23歳・♂・EL
アルテミス(gc6467
17歳・♂・JG

●リプレイ本文

●カレンの事情
 中東某基地。出撃前。ロッカールーム――。
 1人の可憐な少女‥‥もとい、少年のアルテミス(gc6467)が
 パイロットスーツへ着替え中のカレン・M・クオンジを問いただす。
「LHでお姉様系お嬢とデートしてたって聞いたよ!? 何かかっぷるを目の敵にして監視してる秘密結社からー」
「‥‥」
 カレンは無言。煩わしそうな表情。
「ずるいー! 今度ボクともデートー! デートー!」
「‥‥PX(基地の売店)での買い物くらいなら付き合いますよ」
 ふう、とため息を吐き。そっけなく、カレンはそう言った。

 ほどなく出撃。

 ***

 戦域へ移動中の11機のKV――。

 UNKNOWN(ga4276)の機体はK−111改『UNKNOWN』。
(ほうほう、カレンがナンパ‥‥)
「よし、オペレーターからの依頼‥‥遂行しよう」
 などと彼はコクピット内で呟いた。

 鈴葉・シロウ(ga4772)の機体はシコン『飛熊』。
「士魂です。シコンじゃなくて、士魂です」
 発音は同じだが、表記の問題なのだろうか? ‥‥彼にはこだわりがあるらしい。
「やぁ始めまして少年君」
 そしてカレンへ通信を送る。
「人類の半分は女性だ。つまり女性に優しいということは世界の半分に優しいということですよ?」
「‥‥何故、女性の話が出てくるのか知りませんが、それは実に平和的ですね」
 若干棘のある口調で、カレンは答えた。

 ゲシュペンスト(ga5579)の機体はスレイヤー『ゲシュペンスト・フレスベルグ』。
「ここ最近は砂漠に縁があるな‥‥」
 メインモニターには何もない、だだっ広い砂原が広がっている。
 それを目にしながら、彼は何を思うのか‥‥。

 Anbar(ga9009)の機体はシコン『ルムア』。
「この任務の成否は俺達の‥‥いや、占領地奪還に関わってくる。
 手を抜くわけにはいかねえよな。全力を尽くさせてもらうぜ」
 Anbarもシロウと同じく、カレンへ通信。
「宜しく頼むな、兄弟。必ず任務を成功させようぜ!」
「‥‥依頼は完遂させるつもりです」
 淡々とした口調。
 Anbarは故郷へ強い想いを思っているようだが‥‥
 カレンは自分の故郷に対し、あまり思い入れなどは無いらしい。声色からそう窺えた。

 鹿嶋 悠(gb1333)の機体は雷電改『琥虎(ことら)』。
(アフリカを解放したとは言っても中東の方も大人しくはしてくれませんか‥‥。
 木の幹を倒せれば一番ですが、今は枝葉からきっちり処理をしていきましょう)

 フローラ・シュトリエ(gb6204)の機体はディアマントシュタオプ『Schnee』。
「油断はできないわねー。気を引き締めておかないと」
 愛らしくも凛々しい表情をきゅっと引き締める彼女。

 不破 霞(gb8820)の機体はディアマントシュタオプ『黒椿』。
「敵エース機、か‥‥」
 彼女の脳裏に映るのは――バグアの精鋭機、一騎当千を体現する機体、シェイド。
(‥‥比べるな、霞。奴は次元が違う‥‥)

 張 天莉(gc3344)の機体は天(TIAN)『天雷』。
「宇宙へ行く前に地上戦のおさらいですね‥‥」
 バグアの勢力下にある宇宙への道が見えてきた今日。
 彼の乗る機体、天(TIAN)は、VUを行えば宇宙対応が可能である。

 カズキ・S・玖珂(gc5095)の機体はシュテルン『NICOLETTE』。
(この仕事を始めてから、若い兵士は何人も見てきた。だが、未だに慣れない。
 彼らは、無条件に平和で幸せでなければならないのに。
 俺達の力では、それも守れないのだろうか)
 孤独に戦う少年傭兵、カレン・M・クオンジ。その姿を見てカズキは、胸を痛めていた‥‥。

 アルテミスの機体はガンスリンガー『オリオン』。
「砂漠でデート♪ よし、今度はちゃんと戦えるってことを見せようっと」
 ここは戦場‥‥それがデートと言えるのかはわからないが、アルテミスはご機嫌だった。

 そして最後に、カレンのデザートカラーのサイファーE。愛称は特に無い。
 11機のKVが砂原を駆ける――。

●敵防衛網突破
 敵小型要塞付近に到達。その周辺は‥‥多数の蠍キメラで犇めいていた。
 やはり防備が固められている‥‥まずはこれを突破しなければならない。

 傭兵達は地中にも蠍キメラが潜んでいることを警戒。
 UNKNOWN機、ゲシュペンスト機、天莉機、カズキ機、アルテミス機が地殻変化計測器を設置する。
「全機へデータリンク構築‥‥‥‥完了」
 言ったのはゲシュペンスト。
「これで多少なりともマシになればいいが」
 常に蠍キメラの動きを把握出来るわけではないが‥‥出現予測くらいは出来るだろう。
 奇襲への対策である。

 ***

 シロウ機は固定武装である高出力レーザー砲を起動させつつ、
「いや、嫌いじゃないですよ? 私も利休とか織部とか千生とか言って戦術ぽいことしてましたし。
 しかしうむ。もっと格好良く呼びたい」
 などと言う。パネルに『RDY』の表示。
「そちらは準備OK?」
 同じシコンに搭乗するAnbarへ通信。「もちろん、掃射準備完了だ」との返答。
 射程内、射線上には多数の蠍キメラが位置している。
「では‥‥」
「行くぜ‥‥!!」
 2人は同時にトリガーを引く。
「掻き毟れ!」
「ぶち抜け! 種子島!」
 シロウ機とAnbar機、シコン2機が高出力レーザー砲『種子島』で掃射。シロウ機はSAも併用。
 ――2条の閃光が蠍キメラの群れの一角を貫く。

 ‥‥射線上の蠍キメラは高出力レーザーをまともに受け、
 身を焼かれ力尽きるか、または大ダメージを受けた。
 敵陣に穴が開いた。

 シロウ機はそのままSAの加速を使って突撃・突入。
 Anbar機も続き、更に他の機体も続く。

 ブーストを使用し、巨大拳で蠍キメラを叩き潰しながら前進するUNKNOWN機。
「カレン、大事なことなのだが」
 ふと、彼はカレンへ通信。
「どんな子にナンパされたのかね?」
「‥‥‥‥」
 沈黙。
「‥‥すみませんが、戦闘に集中します」
 しばし間を置いて返答。
 その質問には答えたくない、という意味を含めた言葉。
 ナンパ‥‥そのような事実は無いのだ。
 あれはファルリンが自分と同郷ではないかと、声をかけてきただけのこと。
 カレンは少し表情を歪めた。‥‥皆、そのような話が好きなのだろうか。
「‥‥」
 カレンは首を振り、思考を戦闘モードへ戻す。
「あの御仁は何時も俺達の予想の斜め上を飛んで行きますからね‥‥気にしたら負けですよ」
 続いてライフルで射撃し、蠍キメラを蹴散らしながら前進する悠機からの通信。
「そのようですね‥‥」
 とだけ答える。

 霞機は練機刀で進路上の蠍キメラを切り払いつつ前進。

「数的優位を確保した奴がやりそうなことと言えば大体は相場が決まってるもんだが、さて‥‥」
 ゲシュペンストは機体を躍らせる。
「まだ乗り始めてから日が浅い新しい機体だ。もたついて強酸のシャワーを浴びさせたくは無いんでな」
 無数に飛んでくる強酸を回避。

 フローラ機は――霞機と同じく、練機刀で進路上の敵を焼き斬り、排除しながら前進。
「確実に数を減らして行きたいわね」

 天莉機――
「天雷、出ます! やあっ!」
 進路上のダメージを受けた蠍キメラに機槍を突き刺し、撃破しつつ進む。

 カズキ機はマシンガンで弾幕を展開しながら前進。

「蝶のように舞い、蜂のように刺すってかっこいいよね。それがボクの理想形!」
 アルテミス機はDFバレットファストを起動。
「カレンとお揃い〜♪」
 滑らかな動きで、ゼロ・ディフェンダーを振るいながら前進。

 各機、蠍キメラを撃破しつつ目標へ向かう。

●敵エースの思惑
 傭兵部外は蠍キメラの群れを突破。
 要塞を守る目標のゴーレム部隊と接敵。

 情報にあった紅色の敵エース機は射撃による牽制ののち、その場から離れて行く。
 敵エース対応のUNKNOWN機、シロウ機、霞機はそれを追う。
「ふむ。あれは射撃が得意そうだ、な」
「牽制にしても正確な射撃でしたね‥‥くぅ、装甲に少し損傷が」
「黒椿、全開でいくぞ‥‥!」

 ***

 その他の8機はゴーレム部隊と戦闘を開始。
 ゲシュペンスト機――
 盾を構えてチェーンガンによる砲撃を防ぎつつ、肉薄。機杭を連続で打ち込む。
 敵がよろけた隙に跳躍。
「究極! フレスベルグキィィィック!!」
 叫びと共に、脚部に装備したドリルによる蹴り。ゴーレムの増加装甲を打ち砕いた。

 Anbar機――
 ゲシュペンスト機と連携。
 SAを使用。ライフルで弾幕を展開したのち、一気に接近。
 プロトン砲の砲撃が来る。AECを使用。光条は特殊電磁装甲に阻まれる。
 懐に飛び込むと機槍を構え、ゲシュペンスト機の攻撃により、
 増加装甲が剥がされた部分へ突きを繰り出す。
「はあああっ!」
 激しい金属音。機槍は火花を散らし、敵の装甲を貫いた。

 悠機――
 近接戦を仕掛けようとするフローラ機の援護を行う。
 中距離からライフルで弾幕を展開。敵の動きを阻害する。

 フローラ機――
 HBフォルムを起動。
「そうそう捉えさせはしないわよ」
 飛んでくるプロトン砲を回避。悠機の援護を受けつつ、接近。
 ‥‥間合いを詰めると、練機刀による斬撃を繰り出した。
 増加装甲を切り裂き、その下の装甲までダメージを与える。

 天莉機――
「有人ゴーレムが5機、速やかに落したいところですが‥‥」
 やはり周囲に残る蠍キメラが厄介。放っておくわけにはいかない。
「――敵機捕捉。カバーに回ります」
 レーザーガンを連射し、蠍キメラを次々と撃破して行く。

 カズキ機――
 マシンガンで射撃。ゴーレムは間合いを詰めてくる。
「接近戦を挑んでくるか‥‥ならば、答えるまで」
 兵装を機剣に切り替え。敵機の曲刀と激しい打ち合いを行う。
 カズキ機は盾による殴打で手数を増やそうとするが、
 盾は攻撃用ではないので敵にダメージを与えることは出来なかった。

 アルテミス機――
「カズキさん、援護するよ!」
 アルテミス機はDFバレットファストを継続中。
 カズキ機と近接戦を行う敵機の側面に回り込み、散弾砲を連射。
 敵機は体勢を崩す。
 その隙にカズキ機が斬撃を加え、増加装甲を切り裂いた。
「助かる」
「いいってことだよ、えへん」

●今、ここにいる仲間のために
 敵エース機はある程度離れると、移動を止め、攻撃を仕掛けてきた。
 無数に飛ぶミサイル。3機は回避運動。

 UNKNOWN機は巨大拳で攻撃を仕掛けるが――
 敵エース機は後退して回避。砂中に潜んでいた蠍キメラを盾‥‥
 あるいはデコイ代わりに使って、何度も防ぐ。
 どうやら敵エース機はUNKNOWN機を相手にするつもりは無いらしい。
 UNKNOWN機は兵装を対空砲に切り替え。
 牽制射撃を行い、霞機の接近を援護する。

 霞機は間合いを詰めると、EBシステムとHBフォルムを同時に起動。
 練機刀で斬り付ける。敵エース機は銃剣で捌きつつ、突きを繰り出してくる。
「銃剣で刀の間合いだと‥‥? ‥‥そういうことかっ!」
 敵エース機は蹴り‥‥ではなく脚部、
 足の爪先から延ばしたレーザーブレードで斬撃を見舞ってきた。
 直前で相手の意図に気付く霞だったが、回避が間に合わない。
 霞機の片腕が切り落とされ、砂上に落ちる。

「やってくれますねぇ‥‥。士魂×ミサイル=浪漫力。
 そう、我らは銀の剣で絶望の海を割り断つために、とね」
 シロウ機は兵装をミサイルポッドへ切り替え。霞機に一旦後退を促す。
「さぁ、飛熊。受ける痛みも撃ち果たす悦びも全て飲み込んで、もっと強くなろう」
 アクチュエータを起動し、トリガーを引く。無数のミサイルが放たれた。
 敵エース機は回避運動。そこへ――レーザーの光条が奔る。
 ‥‥アルテミス機の長距離からの狙撃による援護だった。
 虚を突かれた敵エース機はミサイルが数発被弾。
 敵エース機は踵を返し、紅色の機体を赤く発光させ、
 その場を離れ、再びゴーレムと他の傭兵機が戦闘を行っている地点へ向かう。

 ***

 ゴーレム部隊、および蠍キメラと交戦中の8機。
 Anbar機がライフルで弾幕を張り、ゲシュペンスト機が肉薄。
「これで‥‥!」
 機杭をゴーレムの胸に連続で打ち込む。‥‥ゴーレムは間もなく機能停止。

 悠機は引き続きライフルの射撃でフローラ機の援護を行う。
「そろそろ仕掛け時ですよ」
 見ればゴーレムの装甲は弾痕だらけ。
「了解!」
 フローラ機はEBシステムを起動。練機刀による斬撃を連続で繰り出す。
 一撃目で頭部を斬り飛ばし、二撃目で腹部を薙ぎ、三撃目で袈裟斬り。
 ‥‥ゴーレムは斜めに両断され、大爆発を起こした。

「計測器に反応‥‥後ろ!?」
 天莉機の背後の地中から蠍キメラが出現。
「くぅ、避け切れない‥‥か」
 D.Re.Ss・Aを使用。装甲をパージ。鋏による攻撃を緊急回避。
「反撃‥‥です!」
 機槍が蠍キメラを貫いた。

 カズキ機は機剣を振り被り、敵機と攻防を繰り広げる。
「狙撃屋さんは狙撃がお仕事♪ ずどんといくよ、ずどんと」
 そのゴーレムの側面からアルテミス機がアハト・アハトで狙撃。
 レーザーが敵機を貫いた。その隙にカズキ機がトドメを刺す。

 そこへ――赤く発光した敵エース機が急速接近。
「‥‥!?」
 アルテミス機は狙撃主体ゆえ、ターゲットとされたようだ。
 銃剣による突きが来る。――避け切れない! アルテミスは目を瞑る。
 だが、2機の間に割り込む機体があった。‥‥先程までゴーレムと交戦していたカレン機だ。
 アルテミス機を庇って突きを受け、機体を貫かれる。爆発。‥‥カレン機、大破。
「カレンー!!」

 遅れて敵エース機対応の3機が追い付く。
 UNKNOWN機が巨大拳を何度も振るう。
 攻撃を回避しようとする敵エース機。だが避け切れず一撃を受け、片腕を潰された。
 ‥‥すると、敵エース機から黒い煙が吹き出した。‥‥周辺にスモークが展開される。
 敵エース機は地中の蠍キメラのデコイも用いつつ、
 残ったゴーレムを引き連れてその場から逃走して行った。
 どうやら、要塞は放棄するらしい。

 それから傭兵部隊は要塞周辺の敵残存戦力を掃討。任務を完了した。
 ‥‥カレンは脱出しており、少し怪我をしていたものの、無事であった。

 ***

 基地へ帰還した一行。
 カレンは医務室で治療を受ける。
 アルテミスは泣きそうな顔で‥‥いや、泣きながら傍に付いている。
「お疲れさん、坊や」
 カズキはその様子を遠くから見つめ、そのように呟き、その場を後にするのだった‥‥。