タイトル:【AC】復興への日マスター:とりる

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/08/28 13:36

●オープニング本文


 ここはラストホープの商店街。その一角に軒を構えるメイド喫茶。
 名前を『フェルマータ』という。店の規模は大きくないものの、常連客に支えられ、細々と営業していた。
 しかし――。

「皆、無事で良かったわ。本当に怪我とかはないのよね?」
 5人のメイドさんを前に、店長(オカマちゃん)が心配そうに言う。

 先の大規模作戦で、大移動を行い、前線に出たラストホープは‥‥
 ブライトンの駆るユダによって引き起こされた台風、複製体、その他バグア戦力の攻撃を受け‥‥
 決して少なくない損傷を負ってしまった‥‥。

 港付近だけではなく、上部構造物もダメージを受け、破片が落下。
 フェルマータが存在する商店街も建物が損傷するなどの被害が出た。
 幸い、フェルマータの店舗は衝撃により少し壁にひびが入った程度で済んだが‥‥。
 店長はメイドさん全員の安否を確認するまで、気が気ではなかった。

「はい! 大丈夫です! フェルマータのメイドは全員、ぴんぴんしています!」
 栗色の綺麗な長い髪をした美人メイドさん、フェルマータの筆頭メイド、ミカ・プライエルが手を挙げた。
 他のメイドさん、琴音、エリス、リリス、萌黄もぴんと背を伸ばし、ミカに倣う。
「良かったわぁ‥‥本当に良かったわぁ‥‥」
 店長は泣きそうな顔でメイドさん達に近づき、ミカの片手を両手でぎゅっと握った。
「ありがとうございます。店長も‥‥無事で良かったです」
 にっこり笑うミカ。

 そして店長と5人のメイドさんはテーブルにつき、これからについて話し始めた。
「私‥‥今回のことで、初めて命の危険を感じました‥‥。戦時中なのに、おかしいですよね‥‥」
 俯きがちに、ミカが言う。
「そうね‥‥ラストホープに残った民間人全てがそう感じたんじゃないかしら。
 これまでラストホープは平和だったから‥‥心の奥では『戦争なんてどこか遠くの出来事』だと思っていたのかもね」
 店長は真剣な表情で、皆の前に置かれたカップに紅茶を注ぎながら答える。
「ええ。この地球に住む限り、バグアの脅威はどこにでもあるというのに‥‥。
 軍人さんや傭兵さん達はあんな怖いところで、命をかけて戦っていたんですね‥‥」
 ミカは紅茶を一口飲み、呟いた。
「人は自分自身で経験しないと、本当の意味で理解しない、出来ないってことね‥‥」
 店長は目を閉じて何度も首肯する。
 そのまま皆は無言で、お茶を啜った‥‥。
「さて、浮かない顔をしていても仕方ないわ」
 ぱんぱんと両手を叩く店長。
「商店街の組合の会合が昨日あってね、近いうちに瓦礫の撤去をULTに依頼することになったの」
 瓦礫の撤去作業はなかなか進まなかった‥‥一般人には荷が重い‥‥。というわけで傭兵の出番である。
「それと同時にね、飲食店では炊き出しをしよう、って話になったの」
「それは良いですね!」
 メイドさん達が声を上げる。
「でしょう? だからうち(フェルマータ)も参加しようと思って。
 それにメイド喫茶は食事だけじゃない、癒しも提供することが出来る!」
 店長の言葉にメイドさん達は「おぉ〜!」となる。
「その通りです。私達は戦うことはできませんけれど、皆さんに癒しを与えることは出来るはず‥‥!」
 ぐっと拳を握るミカ。
 ラストホープが前線に出るに当たって、別の場所へ避難した民間人も多いが‥‥残った者も少なくない。
 ミカ達メイドさんや、店長もそうだった。ミカ達はラストホープ暮らしが長い。
 ここ、ラストホープが第2の故郷と言っても良かった。
「ラストホープに住む皆さんのために、私達に出来ることをしましょう! 皆さんが早く元気を取り戻すように!」
 ミカが声を張り上げる。店長と他のメイドさん達も「おー!!」と続けるのだった。

●参加者一覧

神崎・子虎(ga0513
15歳・♂・DF
弓亜・優乃(ga0708
18歳・♀・FT
百地・悠季(ga8270
20歳・♀・ER
瑞姫・イェーガー(ga9347
23歳・♀・AA
最上 憐 (gb0002
10歳・♀・PN
イスル・イェーガー(gb0925
21歳・♂・JG
レイチェル・レッドレイ(gb2739
13歳・♀・DG
オリゼー・種小路(gb9422
17歳・♂・SF
来栖・繭華(gc0021
11歳・♀・SF
橘 緋音(gc7355
25歳・♀・GP

●リプレイ本文

●復興へ向けて
 瓦礫の撤去作業や炊き出しを行う為、メイド喫茶『フェルマータ』へ集まった10名の傭兵達。

「店長さんもメイドさん達も無事でよかったのだ。今日は一日頑張るからよろしく☆」
「フェルマータにもお世話になってるし、この辺でお手伝いできたら良いなと思って」
 セーラー服を着た可愛らしい男の娘、神崎・子虎(ga0513)と凛とした美人、弓亜・優乃(ga0708)。

「一先ず朝の分はこれでOK」
 炊き出しの準備を終えて、厨房から出て来たのは百地・悠季(ga8270)。
 彼女は集合時間よりもかなり早めに来て、厨房を借りて調理を行っていた。
 これまで調理に没頭していたので脳内で依頼内容の再確認。
 ‥‥ふと、兵舎からフェルマータに来るまでの道のり‥‥風景を思い出す。
(まさに嵐の襲撃は収まったのだけど‥‥その爪痕は酷くて‥‥。
 戦闘の影響‥‥瓦礫があちらこちらに散らばって手が廻らず片付かないそれらを見ていると‥‥
 身に怪我をしなくても気分が沈むのだろうし‥‥。
 だからこそ撤去の手筈を整える訳だし、炊き出しでお腹満たして安心させてあげるのも手。
 この体調下におけるあたしとしては、こちらを手伝えるわね)
 既にメイド服を着ていた悠季は表情を引き締め、カチューシャを整える。

 瑞姫・イェーガー(ga9347)とイスル・イェーガー(gb0925)の夫婦。
「すみません。守り切れず、市街地にも被害を出してしまって‥‥」
「‥‥お久しぶりです。無事で良かった‥‥」
 ミカと店長は「傭兵さんはよくやってくれました」「イスルちゃん達も無事で何より」と答えた。
(LHの皆にはいつもお世話になってるから、元気にしてみせる。
 それにここは、ボク達の第2の故郷なんだから!)
(敵と戦って周りに被害を出したのは自分達でもあるし、少しでも復興の役に立ちたい)
 2人の想い‥‥。
「早く元通りに出来る様に頑張らないとね‥‥」
「うん‥‥」
 固い絆で結ばれた夫婦はぎゅっと手を握り合う。

 一方で、『3食付き、おかわり自由』という条件を見て飛んできた最上 憐(gb0002)。
「‥‥ん。おかわり自由。食べ放題の為に。沢山。いっぱい。働くよ。働くよ」
 ご飯の為に気合は十分な様だ。

(ラストホープは安全な場所であって欲しかったけど‥‥戦況的にしょうがないのかなあ)
 金髪の美少女、レイチェル・レッドレイ(gb2739)は神妙な面持ちで腕を組んでいる‥‥。
「ともあれ、皆がまた安心して過ごせるように頑張らないとね♪」
 ぱっと表情を笑顔に切り替え。びしっと胸を張る。豊満な2つの膨らみがたゆんと揺れた。

「とぉっ」
 跳躍し店内に入ってきた男が1人。
 彼の名はオリゼー・種小路(gb9422)。
 変身ヒーロー風のコスチュームを着用。頭には鳥の姿を模った赤のハーフマスク。上着は虎柄のケープ。
 脚には緑の脚甲『グラスホッパー』を装備。‥‥という出で立ち。
「こんな時は『復興HERO』たる俺様の出番だぜ!」
 拳を突き出し、親指をぐっと立てる。

 小さな身体に大きなバスト、妖精の様な愛らしい少女、来栖・繭華(gc0021)。
「にゅ、頑張ってガレキの撤去をしますの」
「無理はしないで下さいね」
「はい、ですの。ミカお姉ちゃん」
 繭華は栗色の髪の筆頭メイドに頭を優しく撫でられ、くすぐったそうにした。

 個性的な傭兵のメンツの中でも一際目立つ美女が居た。
 赤のレザーのボンテージスーツを身に纏い、艶めかしい小麦色の肌を惜しげもなく披露。
 ダイナマイトボディにスペシャルなバストの持ち主。名を橘 緋音(gc7355)という。
(これを機に元気を取り戻してくれれば‥‥)
 そんな派手な外見の彼女だが、内心では真剣に依頼の事を考えていた。

●朝の部
 傭兵達はとりあえず皆で早めの朝食を摂る。その後に作業班が現場へ。

「イスル、そっちは任せるね」
「ん、了解。それじゃ行ってくるね」
「気を付けてね」
 白い髪のポニテのメイド‥‥瑞姫が夫のイスルを見送る。

「オムライス超美味かった、ごちそーさん。これで頑張れるぜ」
 紙ナプキンで口に付いたケチャップを拭き、オリゼーも立ち上がる。
 レイチェルと繭華も続き、店を出て行った。

 ***

 さて、炊き出し班はいよいよ食事の配布を開始。
 フェルマータの店先には既に多くの人が集まっていた。

(服装はどちらかというと執事服の方が落ち着くんだけど‥‥)
「あれ、優乃さんメイド服なんだ? んふふ、とっても似合ってるのだぞ♪」
 メイド服姿でもじもじしている優乃に子虎が声をかける。
「なななっ!? 子虎君たら‥‥もう!」
(‥‥普段こういうのを着た事ないから死ぬほど恥ずかしいわ‥‥)
 優乃は顔を真っ赤にする。

「はい、どうぞ♪ 慌てずゆっくり食べるんだぞ☆」
 爽やかな笑顔で食事を配っていくメイド服姿の子虎。
 子どもに渡す場合は屈んで目線を相手に合わせる。
 大人にも子どもにも、渡す時はしっかり目を見て必ず一言、励ます様な言葉をかけていた。
 そんな中――
「あ、あまり皆に見られると‥‥」
 視線が自分に集中し、優乃は恥ずかしさのあまり動けなくなってしまう。
 メイドさん目当てに来ている住民も多いので視線が集まるのは仕方ないのだが‥‥。
「ん、優乃さん? どうしたのー? おーい!」
 そんな様子を見て、子虎が優乃の目の前で手を振ったりするが‥‥カッチカチに固まっていた。
「‥‥えい♪」
 子虎は優乃にキス。
「‥‥えっ? あわ、あわわわ!?」
「これで気が付いた? 固まってちゃダメだよ。ちゃんと配らないと」
「う、うん。そうね‥‥」
「それに見られるのもお仕事の内☆」
 子虎がウィンク。
(私なんかで癒しを振り撒けるのかしら? でも‥‥ここは、羞恥心を捨てて頑張ってみる、か)
 意を決する。
「‥‥はい、おまちどおさまでした☆」
 子虎を真似てウィンクしつつ食事を手渡す優乃。それは住民に大変好評であったそうな。

 ***

 厨房――。
「余り無理できないけど、それなりに頑張るから宜しくね」
 悠季は同じく調理を担当するメイドのリリスと店長に改めて挨拶。
 2人は「よろしくお願いしまぁす」「よろしくねぇん」と答えた。

 大型のバットにずらりと並んだ炊き出し用のおにぎりやサンドイッチ。
 おにぎりは‥‥おかか、明太子、昆布、鮭、ツナマヨ、梅、辛子高菜の7種。
 サンドイッチは‥‥ハムレタス、ベーコンレタストマト、ツナ、タマゴ、トマトレタスの5種。
 その他、付け合せ等は沢庵、落橋、スティックサラダ。
 そしてほかほかの御絞り。
 飲み物は麦茶、烏龍茶、緑茶、紅茶。
 天気予報では今日も暑くなるという事なので基本は冷やしているが、温かい物もポットに用意。
 準備は万全だ。おにぎりやサンドイッチのバットが次々と搬出されていく。

 ***

 憐は持参したメイド服を着用。
「‥‥ん。メイド服。持参した。依頼で。愛用してるから。ある意味。私も。メイドかも?」
「‥‥ん。メイド服と。ウサ耳で。癒しを。振りまいて来る。ウサ耳好きに。洗脳して来るよ」
 普通に食事を配りつつ、それとなくウサ耳の良さ等をアピールしてウサ耳の布教を行っていた。
「‥‥ん。ウサ耳は。良い物だよ。長いし。ウサウサしてるし。楽しいよ?」
「‥‥ん。ウサ耳を。着用すると。普段。眠っている。力が。発揮されて。通常の3倍になるかもよ?」

 店へ新しいバットを取りに戻る際、周りと人に注意しつつ‥‥
「‥‥ん。注目。私が。回ったり。高速で。動いたりするよ」
 スキルを使用して高速移動やアクロバティックなアクション。
 並んでいる最中も退屈しない様にパフォーマンスを披露。
「‥‥ん。動いたら。お腹が。空いて来た。ご飯。まだかな」
 お腹を撫でる憐。しかしお昼はまだ先だ。

 緋音は食事を配りつつ、列の整理も行っていた。
「こちらの列にお並び下さいー」
 トラブルが起きない様に十分に配慮。
「ここが最後尾になります。あ、これ、持っていて下さいね」
 最後尾の人には判りやすい様に『最後尾』と書かれたボードを持って貰う。
「あらあら、横入りはダメよ」
 マナーの悪い住民に対してはちゃんと注意。

 列は大分長くなっていた。
 後ろの方の人達へ、緋音は持参してクーラーボックスに入れて冷やしていた飲み物を配る。
「少し時間が掛かりそうなので、冷たい飲み物をどうぞ」
 用意していた分は、あっという間に無くなった。

●昼の部
 こちらは瓦礫の撤去作業班。

 アンジェリカ『ドライアド』で現場へ乗り付けた繭華。
 彼女は最初に瓦礫の集積場と、使用可能な道を現場監督に尋ねる。
「にゅ、瓦礫を集める場所と使って良い道、教えて欲しいですの」
 現場監督は快く答えてくれた。地図も書いて貰って、コンピューターに登録。
 ナビ代わりに。他のKVへも転送。

 その後は人では持てない大型の瓦礫をKVで撤去。
 瓦礫を持って移動する時は足元に細心の注意を払う。
「にゅ、KVが通りますの。危ないので急な飛び出し等はご遠慮して下さいですの」
 外部スピーカーで呼び掛けも。
「にゅぅ‥‥小さい瓦礫は運べそうにないですの」
「それなら俺に任せな」
 オリゼーの声。
 彼はヘルヘブンで瓦礫撤去に励んでいた。
 小さな瓦礫はドーザーで一気に集める。
「ありがとう、ですの」
「いや、気にするな。協力するのは当然だからな」
 オリゼーは基本、大きい瓦礫から処理。
 移動の際は周りに注意を促し、速度は徐行を徹底。
 特大の瓦礫はピックで砕いて撤去。
 大きな物はKVで持ち運んで撤去。
 中位の物は数個単位でまとめてKVで持ち運んで撤去して行く。

 イスルもKVで瓦礫を撤去。
 物資輸送コンテナを利用して機材や細かい瓦礫を運ぶ。
「まずは瓦礫を退かさないとね‥‥そうしないと商店街も再開出来ないから。
 そっちお願いします。1、2、3で行きますよ‥‥」
「了解だ」
 大型の瓦礫を運ぶ際は他のKVと協力。

 レイチェルは愛機、リッジウェイ改『メル』で作業。
「よろしくね、メル♪」
 事前に機体前面の装備をバケットに換装。
 瓦礫を拾ってはバケットに纏め、入り切らなくなったら集積所へ。
 移動時は必ず周囲を見て人が居ないか確認。
「動きまーす♪」
 声かけも忘れずに。特にバックする際は安全確認を徹底。
「バックしまーす! 離れてくださーい! やっぱり安全第一、だよね♪」
 痛ペイントKVの大活躍である。

 KVで入り難い場所の瓦礫は、降りて自ら撤去へ。
 ちなみにレイチェルの服装は自前のメイド服。その辺のアピールはしっかりと。常時スマイル!
 お昼を過ぎる頃には、すっかり彼女は作業現場の兄ちゃんやおっちゃんのアイドルと化していた。

 ***

 昼間の作業を終えた作業班はフェルマータへ戻り、皆で一緒に食事。

 憐は待っていましたとばかりに、どんどんおかわりしてモリモリと食す。食す食す食す。
「‥‥ん。オムライスに。カレーに。蕎麦に。うどん。冷やし中華。飲み易い物ばかりだね。ある意味。全部。飲み物かも」
「‥‥ん。遠慮はしない。早い者勝ち。先手必勝。弱肉強食。食物連鎖‥‥冷やし中華の。きゅうりは。他の人に。譲るよ」

 ***

 瑞姫とイスルは一緒に食事。
「ご主人様、お昼ですよ」
「‥‥」
 その言葉に、頬を赤くするイスル。
「照れなくても良いじゃん。だってイスルはボクのご主人様なんだから」
「‥‥なんか改めて言われると少し‥‥」
 微笑みつつ、頬をぽりぽりとかく。

「やっぱり皆の笑顔を見られると嬉しいな‥‥わぁっ!?」
 急に風が吹き、瑞姫のスカートを捲り上げる。
「見たでしょ‥‥イスルのバカ!」

 ***

 子虎と優乃は仲良く食事。
「はい、優乃さん‥‥あーん♪ あや、僕も?」
 優乃にあーんして食べさせ合う。
「あれ、口にご飯粒ついているんだぞ♪ 取ってあげるー☆」
 ご飯粒を取ってあげる子虎。にっこりと笑う。
「うぅぅ、完全に子虎君のペースね‥‥」
(こうなったら夕食は仕返しを‥‥)

 ***

「あっちぃ御絞りとキンキンに冷えたドリンクがキクぅ〜っ。
 あ、塩茹でした枝豆ある?」
 悠季が手際良く用意。
 枝豆を摘まみつつ、冷やし中華をずるずると啜るオリゼーであった。

●夜の部
 夕方の瓦礫撤去作業と炊き出しは滞りなく終了。
 商店街の人々と、炊き出しを受け取った住民はホクホク笑顔だった。

 フェルマータの店内で夕飯。

 優乃と子虎は並んで座って食事。
「子虎君、少しこっち向いてくれる?」
「どうしたのだ?」
「‥‥んっ」
「!?」
 目を見開く子虎。‥‥優乃が付け合せのさくらんぼを子虎に口移ししたのだ。
「うふふ」
 してやったり、という表情を浮かべる優乃。

 ***

 オリゼーは自作したカレー饂飩をずるずる啜る。
「うめぇ! よく煮込まれたカレーと疲れたお腹に優しい饂飩のベストマッチング!」

 憐は余った炊き出しの分もガンガン消費。
「‥‥ん。全部。頂くよ」

 ***

「うっ!? ‥‥あれ、なんだか気分が‥‥」
「大丈夫‥‥? ずっと頑張っていたし、疲れが出たのかな‥‥」
 食事中、突然瑞姫がえずき、イスルが背中を擦ってやる。

 そこへ悠季とミカがやって来て、仮眠室へ運び、ベッドに寝かせて介抱。
「ミカさん、悠季さん、迷惑をかけて‥‥ごめんなさい」
「いいえ、それよりもどうしたのでしょう‥‥」
「いいのよ。気にしないで」

 暫くして――
「瑞姫、もう落ち着いたよね? では、少し早いですけど僕達は失礼します。お疲れ様でした」
 イスルは瑞姫を連れ立って先に帰宅する事に。
 おんぶして帰る途中――瑞姫が切り出した。
「イスル‥‥あのね‥‥ボク‥‥出来ちゃったかも‥‥」
「えっ‥‥?」

 ***

「良かったらシャワー使わせて貰えないかな? 一日働いて汗びっしょりだよ‥‥」
「構いませんよ。お風呂もありますけれど」
 ミカが答えた。
「ありがとう♪ 良かったら誰か一緒に入らない? カラダも洗ってあげるよ‥‥隅々までね」
 女性陣を誘いつつ、妖艶な笑みを浮かべて手をわきわきさせるレイチェル。

 ‥‥レイチェル、繭華、緋音、ミカの4人は一緒にお風呂へ。
「わあ! 3人共‥‥凄く‥‥大きいですね‥‥」
 スーパーバスト3人組に驚くミカ。
 ミカも大きい方なのだが、流石にこの3人には敵わない。

 ***

「店長さん、また何かあったらいつでも呼んでなのだ♪
 それじゃあ優乃さん一緒に帰ろうなのだ〜♪」
「うん」
 子虎と優乃は手を繋いで帰宅。

 帰り道――。
「優乃さん、その浴衣とっても似合ってる☆」
 いつの間にか浴衣姿になっていた優乃に目をやる子虎。
「まあね。この浴衣、子虎君が誕生日プレゼントしてくれた物だし」
「あ、そっか。着てくれて嬉しいのだ♪」
 その言葉を聞き、優乃は微笑み、子虎の頬に口付けをした。

 ***

 そんなこんなで、傭兵達による復興支援は終了。
 LHの住民はいくらか元気を取り戻し、商店街も近い内に営業を再開する事だろう。