タイトル:武士の魂5マスター:とりる

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/07/28 15:44

●オープニング本文


 銀河重工本社。KV開発室――。
 椅子に腰掛けた背の高い男性と、少し屈んだ小柄な女性が並んでPCのディスプレイを眺めていた。
 画面に表示されているのはKVのデータのようである‥‥

 ***

『XGSS−03A シコン』

【機体性能】
 行動3
 移動5
 副兵装スロット4(固定武装込み)
 アクセサリスロット4

【固定武装】
○高出力レーザー砲「種子島」
 装弾数1発。リロード不可。一度の使用で練力50を消費。
 射程内、一直線上に位置する全ての敵に対して攻撃を行う。
 練剣「雪村」系の超濃縮レーザーブレード技術を転用し、高出力レーザー砲として再設計、開発された武器。
 名称は日本における鉄砲伝来の地に由来する。

【機体特殊能力】
○ストライク・アクセラレータ
 練力をSES兵装へ集中させると同時に、
 テールスタビライザーに内蔵されたスラスターの推力を一方向へ集中させる事で加速力を得る。
 練力50を消費し、1ターンの間、攻撃+100、知覚+100、移動+2の修正を受ける。

○超伝導AEC Type.B
 既存の超伝導AECをエネルギーカートリッジ方式に変更し、練力消費を無くしたタイプ。
 敵の知覚攻撃一回に対して、抵抗の数値に+200の修正を受ける。回数制限3。

○超伝導アクチュエータ Ver.4
 雷電やシラヌイに搭載されている装置の練力効率を高めた最新バージョン。
 練力20を消費し、1ターンの間、命中+50、回避+50の修正を受ける。

【機体概要】
 銀河重工が現時点での集大成として開発中の万能型KV。
 シラヌイS2型をベースとし、雷電の装甲材技術を用いて防御性能を強化。
 オフェンス・アクセラレータを応用した攻撃補助システムを搭載し、竜牙に迫る攻撃性能を獲得。
 開発ベースがシラヌイS2型である為、照準性能や運動性能も決して低くは無い。
 重量増加により低下した機体バランスを補う為、機体後部には多数のスタビライザーが設けられている。
 また、固定武装として掃射が可能な高出力レーザー砲「種子島」を持つ。

 ***

 画面の内容は以上。

「ついにここまで来ましたね!」
 小柄で童顔な女性‥‥南川・遥は胸の前で両手をぐっと握り、嬉しそうに微笑む。
「ああ、あと一歩という所か」
 白衣を纏った長身の男性‥‥草壁・誠十郎。『XGSS−03A シコン』の開発主任。
 彼は少し難しい顔を浮かべていた。
 ここに来て、当初の予定よりやや遅れが出ている。誤差の範囲内ではあるが‥‥。
 誠十郎は画面を見つめ、ほんの少しだけ眉をひそめた。
「主任‥‥?」
「どうした?」
 遥の声に、誠十郎は彼女の方を向く。
「もしかして、疲れてます? 大丈夫ですか?」
 遥は誠十郎に顔を近づけ、じっと覗き込んだ。
「いや‥‥疲れているのはいつもの事だ。大丈夫」
 眉間を親指と人差し指で揉み解し、微かな笑みを浮かべる。
「それならよ‥‥くはないです。主任の体調管理も補佐の役目ですから!」
 遥は強気な声で言った。彼女は誠十郎の補佐を務めている。
 2人は「今度お弁当を作ってきますね」「いやそんな事より開発を」などと話す。
 傍から見れば「うふふあはは」な会話。そこへ――
「先行量産型の話を聞いて来たんだけど、お邪魔だったかしら?」
 美しくもキツめな女性の声。
 2人が声のした方へ視線を向けると‥‥黒いフレームのメガネをかけたスーツ姿の女性が佇んでいた。
 誠十郎同様、白衣を纏っている。声に偽り無く美人である。ただし、やはりちょっとキツめ。
「由香子か。君は開発スタッフの1人なんだから、邪魔などという事は無い」
「本当かしら」
 シコンの固定武装の設計者である青樹・由香子女史はふん、と鼻を鳴らす。
「それで、先行量産型なのだけれど」
「ああ。8機がロールアウトした。評価試験が上手く行けば‥‥次は全規模量産だ」
(だが――俺は――)
 誠十郎の目は遠く‥‥まるで空の向こうを見据えている‥‥ように見えた。
 少なくとも隣に居る遥にはそう見えた。
「若干の遅れが生じているようだけれど」
 由香子が水を差す。遥は思わず心の中でずっこけた。
「それに関しては仕方が無い。外装はほぼ新規設計になってしまったからな」
「あなたらしくもないわね」
「‥‥」
 誠十郎は押し黙る。言い訳はしたものの、自分でも腑に落ちない。
 自分は最善を尽くしてきた。しかし‥‥KV開発とは1人の力でどうこう出来るものではない。
 ましてやシコンは銀河重工の、現時点での集大成‥‥開発には多大な規模と予算が掛かっている。
「‥‥兎も角だ、テストを行う。軍に適当な戦域を選定してもらい‥‥後は傭兵だな。ULTに依頼を」
「わかりました」
 遥は頷き、近くの電話の受話器を取る。
「では頼んだ。俺は少し席を外す」
 誠十郎は立ち上がり、開発室を出て行く。
(‥‥誠十郎‥‥)
 その後ろ姿を、由香子は心配そうに見つめるのだった‥‥。

 ***

 薄暗い研究室。カタカタとPCのキーを叩く音だけが響く。
「先輩‥‥」
 誠十郎はぽつりと声を漏らした。彼らしくも無い弱弱しい声。
「おや、どうしたんだね。君がこんな所に来るなんて」
 椅子に座りPCに向っていた白衣の男性が背後を振り返り、少し驚いたような表情を浮かべる。
 歳は‥‥五十前後といった所だろうか。髪には白髪が混じっている。
「‥‥」
 誠十郎は何も言わない。ただ、気弱な表情を浮かべている。
「まあ座ってくれ。こんなものしかないが‥‥女子社員でもいれば、温かい緑茶が出て来るんだが。
 あ、君はコーヒー派だったね」
 古びた冷蔵庫から小豆色の炭酸飲料のペットボトルを2本取り出しながら、はははと男性は笑う。
「‥‥」
 誠十郎は無反応。
 男性はペットボトルを差し出す。誠十郎は力の篭らない手で受け取った。
「なにか、あったのかね?」
 プロジェクトリーダーを任されるほどの君がここへ来るなど‥‥と男性は付け加える。
「やめて下さい! 先輩だって重要なプロジェクトに関わっているじゃないですか!」
 誠十郎は声を上げる。そしてはっとして、再び黙った。
「うーむ、私の場合はどうだろうねえ。重要と言えば重要だが‥‥どうなるかわからんし。
 それに接収されてしまったからね。もうやる事は殆どない」
 男性はぽりぽりと頭をかく。
「草壁くん、君は疲れているね。心も身体も。あれほどの計画の統括だ。仕方ない。
 だが大丈夫。君なら出来る。なんたって、私が見込んだ男だからね」
 男性はまた笑った。優しい笑みだった。
「それに君の傍には仲間‥‥というのかな? 少し違うか。まあいい。それが居るだろう。
 仕事でもプライベートでも、もう少し頼ってみてはどうかね」
「‥‥!」
 誠十郎は目を見開く。
「ははは。私は愚痴ぐらいならいつでも聴くが。君が頼るべきは私ではないと思うよ」
 男性はそう言い、炭酸飲料を煽る。誠十郎も倣った。
「先輩‥‥」
「ん?」
「やっぱり頭脳労働の後にはこれですね」
「ははは。そうだろう」
 薄暗い研究室に、男2人の笑い声が響いた。

●参加者一覧

漸 王零(ga2930
20歳・♂・AA
櫻小路・なでしこ(ga3607
18歳・♀・SN
アンジェリナ・ルヴァン(ga6940
20歳・♀・AA
井出 一真(ga6977
22歳・♂・AA
Anbar(ga9009
17歳・♂・EP
ソーニャ(gb5824
13歳・♀・HD
日野 竜彦(gb6596
18歳・♂・HD
ネオ・グランデ(gc2626
24歳・♂・PN

●リプレイ本文

●XGSS−03A シコン先行量産型
 空を翔る8機のKV――。
 現在は飛行形態にて戦域まで移動中である。

「まだ試験があったのか。まあ、今後の搭乗機を見極めるには丁度良いな。
 しかし、先行量産型‥‥。制式量産型とはちょっと仕様が変わってたりするのか?
 とにかく試してみるか」
 コクピットシートに座る漸 王零(ga2930)が呟いた。
 先行量産というのは量産に先立ち生産ラインに問題が無いか試すものであり、
 基本的に先行量産型と全規模量産型とには仕様上の差異は無い。
 無論、今回のテストで問題が発見されれば改修が行われるが。

「シコンには注目して来ましたので、この先行量産型での実戦テストは待ちに待っていました」
 櫻小路・なでしこ(ga3607)は可愛らしい顔に笑みを浮かべ、実に嬉しそうな様子である。

(バグア機が相手だからこそ得られるデータを十分に取りたいものだ)
 凛とした黒髪の美女、アンジェリナ・ルヴァン(ga6940)はその様に思案する。
 彼女のシコンに対する想いはとても大きい‥‥。

「シコンもここまで来たんですねえ‥‥。
 後は、性能を何処まで引き出せるか、俺達次第という事ですね」
 感慨深げに言う井出 一真(ga6977)。

「いよいよ、シコンも実戦テストか。
 これが成功裡に終われば、いよいよ全ての傭兵に、シコンに乗る機会が訪れるんだな。
 ヘマなんかして、実戦配備が遅れない様に最善を尽くすぜ」
 琥珀色の瞳の美少年、Anbar(ga9009)は気合十分。

「試作機に続き、先行量産型にも乗らせて貰うわね」
 ソーニャ(gb5824)はコクピットのコンソールを撫でる。
「高性能な良い機体ね‥‥試作機で十分感じたわ。
 でも士魂の名を頂戴するにはそれだけでは駄目。必要なのは火力でも性能でもない別の何か」
 彼女は『士魂』という言葉に特別な想いを持っている様だ。
「ボクが見せてあげるよ。この子がただの高性能機なのか、それとも士魂の名に相応しい機体なのか」
 力強い口調で言った後、きゅっと口元を結ぶ。

「レーザーライフルと種子島以外はいつもと同じ類の装備か。
 G−03用意されてないのが少し残念だけど」
 日野 竜彦(gb6596)は機体の装備を再度確認。
 出撃前にマニュアルも熟読済み。万全の状態でテスト臨む。

(さて、遂に実戦テストまで漕ぎ着けたか。
 バグア相手では初だから、その点は警戒しなければならないが‥‥)
 その様に考えるメガネをかけた青年、ネオ・グランデ(gc2626)。
 シコンは試作2号機が一度実戦を経験しているが、十分なデータが得られた訳ではない。
「まぁ、考え過ぎても仕方ない。バグア相手に通用するって事をしっかりと証明してやらないとな」
 操縦桿を握る手に力を込める。

 暫くして――
「戦域に到達した。これより陸戦班は降下を開始する」
「了解しました。グッドラック、です」
 アンジェリナが言い、なでしこが答える。
 シコン4機が降下を開始。こちらはこれから地上のゴーレムと戦闘を行う予定となっている。
 残りの4機はこのままHWとの空戦に移行する予定である。

 傭兵達はそれぞれの胸に想いを秘め、戦闘を開始する――。

●VSゴーレム
 陸戦班――。
 無事に着陸した4機。傭兵達はすぐさまシコンを歩行形態に変形させる。
 ‥‥漆黒の鎧武者が4体現出した‥‥。
 頭部上部には狐の耳‥‥いや、見ようによっては天を突く鬼の角が二本。
 武士甲冑を纏った様な質実剛健を体現する雄壮な姿。
 機体背部には九尾‥‥9基のテールスタビライザーが展開。
(見事な造形だ‥‥)
 アンジェリナは自機以外の3機にメインカメラを向け、満足そうな表情を浮かべる。しかし。
(過去の試験で有用だった戦術、電撃戦がバグア機に対しても有用かどうか‥‥。
 この確証が得られなければただ地球製の機体に強いだけの機体になってしまう)
 表情を引き締めるアンジェリナ。
 対KV戦では優秀な結果を示したシコン。だがそれだけではいけない。
 今回の対バグア戦。この一戦に勝利してこそ、有用性が真に認められるのである。

 一真は接敵前に機体の動作確認を行う。
「スタビライザーに装甲、種子島と積んでるだけあって重量はあるな‥‥。
 トルクは高いから支障はないけど、初動で気持ち『置いていかれる』かな?
 その分入力を早めた方がスムーズな機動が出来そうだ‥‥」
 などと独り言を口にする。

「レーダーにて敵影を補足。お出でなすったぞ」
 ネオが言った。敵はゴーレム4機。情報通り。
「それじゃ、行くか!」
 Anbarが続ける。3人から「了解」との返答。
 4機の鎧武者が獲物に向かい、地を駆ける‥‥。

 ***

 敵はシコン4機を射程に収めるや否や、プロトン砲を連射してきた。
 無数の光条が飛ぶ。4機は一斉に回避運動。
 テールスタビライザーが自動制御で的確な形態を取る。
 ‥‥光条は全て空を切った。
「ふむ、やはり運動性も悪くない」
「‥‥っと。初撃から貰う訳にはいかないな」
「中々良い反応です」
「この距離でシコンを捉えられる物かよ!」
 4人がそれぞれ言う。
 遠距離からプロトン砲での先手‥‥バグアの常套手段。
 しかし、シコンはそれを見事回避して見せた。

 ***

 敵機‥‥ゴーレム4機を視認。
「仕掛ける」
 アンジェリナ機はブーストとSAを使用。
 一気に敵との距離を詰めると同時に擬似慣性制御により敵側面へ回り込む。
 ゴーレム1機に肉薄。長大な砲を突き付ける。
「――貰った!」
 トリガーを引き、至近距離から高出力レーザー砲『種子島』を発射。
 眼前の1機を支点とし、射程内の他の敵機へも掃射を行う。
 閃光が奔り、ゴーレム4機を呑み込んだ。
 ‥‥光が収まると、表面装甲を焼かれたゴーレム4機の姿があった。
 それなりのダメージを受けた様子。
 『種子島』は、敵を射程内に収めてさえいれば、範囲攻撃が可能である。

「シコンの力、存分に発揮しよう‥‥重武神騎乗師、ネオ・グランデ、推して参る」
 ネオ機は前進し、ゴーレム1に照準。マシンガンを連射。
 無数の砲弾がゴーレム1の装甲に弾痕を付けていく。

「攻撃を集中させます」
 一真機も前進しゴーレム1に照準。マシンガンとレーザーの射撃を加える。
 装甲を貫き、融解させ、内部にもダメージを与えた。風穴から火花が散る。

「連携なんてさせるかよ」
 Anbar機は前進。敵を分断するべくマシンガンを連射。
 ゴーレム4は砲弾を受け、装甲を削られる。

 損傷が激しいゴーレム1は機剣を振い、アンジェリナ機に斬撃。
「‥‥っ」
 アクチュエータを使用。しかしこの距離では避け切れない。
 練機刀で受け止めるも、衝撃によりダメージを受ける。

 ゴーレム3機は砲撃。ネオ機、一真機、Anbar機はアクチュエータを使用。
 3機の鎧武者は弾幕を避け続ける。‥‥ネオ機が被弾。損傷は軽微。
 一真機とAnbar機は無傷。

 ***

 アンジェリナ機は再びSAを使用。機刀を抜き、ゴーレム1に連続の斬撃!
「やぁぁぁっ!」
 ゴーレム1の胴体を両断。敵機は爆発。撃破。

「数的優位はこっちの物!」
 一真機もSAを使用。一気に前進。
 ネオ機がマシンガンを連射しそれを援護。
 砲弾を受け、隙を見せたゴーレム2の懐に飛び込みんだ一真機。
 陽光と月光による赤と白の二閃。それは装甲を割り、内部にまでダメージを与えた。

「トドメだ!」
 Anbar機がゴーレム2に照準。マシンガンを連射。
 砲弾は狙い違わず敵機を撃ち抜く。ゴーレム2は損傷が限界に達し、爆発。撃破。

 残るゴーレム2機は一真機に攻撃を集中。砲弾と光条が飛ぶ。
 アクチュエータを使用し回避運動を取りつつ、機刀で砲弾を受け止める。
 プロトン砲は――避け切れない。AECを使用。光条が特殊電磁装甲に阻まれる。損傷は軽微。
 だが近距離からの射撃は確実に一真機の装甲を削る。

 ***

 アンジェリナ機はゴーレム3に接近。連続で機刀を振う。
 装甲に斬痕を付け、中程度のダメージを与える。

 ネオ機はブーストとSAを使用。敵側面へ回り込み‥‥
「種子島行くぞ! 目標を纏めて撃つ!」
 トリガーを引き、レーザーを掃射。
 ゴーレム2機の装甲が融解。大ダメージ。
「そこだ‥‥剣旋烈花・紫陽花」
 機刀による追撃。ダメージを受けたゴーレム3の機体にスパークが奔る。

「畳み掛けますか」
「了解だ!」
 一真機とAnbar機もブーストとSAを使用し、敵の側面へ移動。種子島を一斉掃射。
 ゴーレム3は致命的なダメージ。大破寸前。
 ゴーレム4も装甲が融解し、大ダメージ。

 ゴーレム3の反撃。アンジェリナ機に光条と砲弾が飛ぶ。
 回避運動を取るも避け切れない。AECを使用。光条は大幅に威力が減じる。
 が、砲弾は装甲を抉り、中程度のダメージを受ける。

 ゴーレム4はAnbar機に対し砲撃。
 アクチュエータを使用し回避運動。しかし数発被弾。損傷は軽微。

 ***

 アンジェリナ機はゴーレム3へ機刀による斬撃を加える。
 両腕を切り落とした後、胴体に鋭い突きを見舞う。ゴーレム3は爆発。撃破。

 ネオ機とAnbar機はレーザーを連続照射。ゴーレム4の装甲を焼く。
 そこへ一真機が接近。機刀を連続で振う。
 ゴーレム4は地に伏し、小爆発を何度も起こして機能停止。撃破。
「ふう。良い機体に仕上がっている様ですね。ただ、難を言えば‥‥。
 機体のデザイン上、今回の様な装備だと近接戦闘したくなってしまうのが難点でしょうか」
 機刀を収めながら、一真は冗談交じりに言った。

 敵陸上戦力を全て撃破。陸戦テスト終了。

●空戦
「レーダーに反応。強化型HW6機です」
「情報通りだね」
 なでしこからの通信にソーニャが頷く。
「来たか‥‥。最高の結果を出す‥‥とは約束できないけど、全力を尽くします」
 竜彦は苦笑する。
「では――参るぞ!」
「了解!」
 王零機と竜彦機はブーストとSAを使用。膨大な推力を得て一気に前へ出る。
 2機はそれぞれHWをロックオン。ほぼ同時にミサイルレリーズを押し込む。
「「行けっ!」」
 翼下からミサイルが切り離され、白煙の尾を引きながら敵機へ向い‥‥命中。
 敵2機に大ダメージを与えた。

 なでしこ機とソーニャ機は先行した2機を追い、増速。

 HW4機が突出して来た王零機と竜彦機に向けミサイルを連続発射。
 命中するも、損傷は軽微。

 残りのHW2機は竜彦機の側面へ移動。フェザー砲を浴びせて来る。
 回避運動を取るが避け切れない。咄嗟にAECを使用。特殊電磁装甲により無効化。

 ***

 王零機と竜彦機が先行したのには理由があった。それは‥‥囮。
 なでしこ機とソーニャ機はブーストとSAを使用。一気に加速し、敵側面へ出る。
 先行した2機に群がる敵を種子島の射程に収め‥‥トリガーを引いた。
 閃光が奔り、HWを包み込む。掃射を受けたHW4機は装甲が融解し大ダメージ。

「作戦は成功したか‥‥では我も」
 SAを使用。加速しつつ旋回。HW2機に対し、種子島の掃射。
 高出力のレーザーを受けた2機は大ダメージ。

「このタイミングだ‥‥!」
 竜彦機は旋回。SAを使用。射線上にHW2機を確認。
「食らえ‥‥!」
 トリガーを引く。種子島を発射。閃光。‥‥HW2機は大ダメージ。
「まだだ」
 兵装をSライフルに切り替え。HW6を狙撃。砲弾は命中し、敵1機が火球と化した。撃墜。

 HW2機がなでしこ機を狙う。プロトン砲とフェザー砲が飛ぶ。
 アクチュエータを使用し回避運動。フェザー砲が被弾するも表面装甲を焼いたのみで損傷は軽微。

 同じくHW2機が王零機に対しフェザー砲を猛射。
 アクチュエータを使用し避け続けるも、被弾。だが致命傷ではない。
 この程度ならばAECを使う必要は無いと判断。

 残る1機がソーニャ機に光条を放つ。アクチュエータを使用し回避運動。
 だが距離が近い為、被弾してしまう。損傷は軽微。

 ***

 王零機は兵装をLライフルに切り替え。
「落ちろ」
 連射。レーザーがHW4を貫き、爆発。撃墜。

 なでしこ機もLライフルを連射し、HW1を撃墜。
「もう一手‥‥!」
 HW2をロックオン。ミサイル発射。
 ‥‥命中。敵機の外装を吹き飛ばし、大ダメージを与える。

 ソーニャ機は兵装をSライフルに切り替え、狙撃。
「いけー! シコン!!」
 砲弾は正確にHW5を貫き、撃墜。
(証明なさい。極限状態おいて尚、貫き通す意志。
 限界を超え、砕け散る瞬間まで侍の意志に応える、そんな機体である事を。
 例え自分より強い相手でも研ぎ澄ました意思が可能性を開く。そんな機体である事を。
 生と死の分水嶺。その狭間でこそ真価を発揮する機体である事を)
 確固たる意思を持ち、ソーニャは次の敵に狙いを定める。
 HW3をロックオン。ミサイルを発射。
 ‥‥命中。敵機は火を噴き、黒煙を上げて墜落していった。撃墜。

 竜彦機は旋回し、増速。HW2をロックオン。敵は既に満身創痍。
「貰った!」
 ミサイルを発射。‥‥命中。敵機は爆発四散。撃墜。
「こっちはこれで終わりか? 今回の敵はこれで終わり?」
 竜彦はモニターやレーダーをきょろきょろ見回す。
 ‥‥敵機の反応は無い。
「ミッションコンプリート、ですね」
 なでしこの嬉しそうな声が聞こえた。

 敵航空戦力を全て撃破。空戦テスト終了。

●性能評価
 実戦テストを終えた8機のシコン先行量産型はUPC軍基地へ帰投。
 傭兵達は通されたミーティングルームで休憩しつつ、感想を述べる。

「やはり実戦となると簡単には行きませんでしたね」
 言ったのは一真。普段は雑魚扱いされがちなゴーレムであるが‥‥
 それはかなりチューンされたKVに搭乗した場合の話。
 無強化のKVで挑むとなると、ゴーレムは今でも尚、手強い敵である。
「しかし、圧倒するまでには至りませんが、戦闘を優位に進められたのは事実です」
 と、彼は続けた。

「先行量産型ともなると‥‥初期設計データに比べ、操縦性がかなり改善されているな」
 アンジェリナは初期のシミュレーターでのテストを思い返していた。
 操縦性の改善は戦闘データの蓄積による物だろう。
 これなら即戦力になりそうだ、と彼女は言った。
「うむ、十分以上の戦力になるな」
 ネオが頷く。
「それには同意する。その証拠に我ら空戦班は然程苦戦しなかった」
「こちらは圧倒と言っても良い位でしたね」
 画面に空戦の戦闘データを表示する王零と、微笑むなでしこ。

「発売が楽しみだぜ」
「早く実戦配備される事を祈ってるよ」
 Anbarと竜彦、少年2人が言う。

「武士道とは、死ぬ事と見つけたり。
 間違えないでよね。死を見つめ、如何にして生きるか。
 生きる為、成す為の『士魂』。そんな言葉なんだよ」
 同席するスタッフに対し、ソーニャが語る。
 そうして、その場はお開きとなった。

 傭兵達はこのシコンが、人類の新たな剣となり得る事を願うのだった。