タイトル:【ODNK】戦女神4マスター:とりる

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 15 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/06/21 09:56

●オープニング本文


 乙女隊駐屯基地。通信室――。
 モニターの前に腰掛けている高ノ宮・茜少佐の姿がある。
 彼女はα−01部隊、およびα−02部隊。通称『乙女隊』と呼ばれる部隊の創設者だ。
 ――モニターに映るのは壮年の男性。森ノ宮・猛大佐。
 108機ものKVを有するKV連隊、β−01部隊の総指揮官である。
 森ノ宮大佐がゆっくりと口を開く。
『ようやくだ、ようやくだよ‥‥茜ちゃん』
「叔父上‥‥」
 いつもの飄々とした態度ではなく、感情の篭った言葉を紡ぐ叔父を、高ノ宮少佐は見つめる。
『ようやく春日基地に手が掛かったんだ、俺達の土地を蹂躙した九州バグア軍の本拠地にな』
 春日基地の攻略はUPC九州総軍の悲願‥‥。
『俺達はこの戦いで、俺達の土地を、故郷を取り戻す』
「ええ‥‥」
『バグアの野郎を徹底的に叩きのめし、この九州から叩き出す。
 俺達β−01部隊は基地を包囲しつつ敵部隊に攻撃を仕掛ける。
 茜ちゃんの部隊には基地正面を担当して貰う。当然エース様が出張って来るだろう。引き締めろよ』
「了解です」
 高ノ宮少佐は上官に対し、敬礼。
『それと‥‥だな。β133小隊、それをそっちに出向させる』
「え‥‥? 叔父上‥‥?」
『お姉ちゃんの部隊と一緒に戦えた方が雪ちゃんも嬉しいだろう』
 森ノ宮大佐はふっと微笑を浮かべる。
「ご配慮‥‥感謝します‥‥!」
 雪ちゃん――高ノ宮・雪中尉。高ノ宮・茜少佐の実の妹。
『ははは。気にするな。俺に出来るのはこれくらいだ。
 ‥‥‥‥この作戦がまさに正念場。死なないでくれよ』
「叔父上も、どうかご無事で」
『わかっているさ。じゃあな』
 森ノ宮大佐が表情を引き締め、返礼すると、通信が切れた。

 ***

 乙女隊駐屯基地。ブリーフィングルーム――。
 高ノ宮少佐が入室。部屋には既にα−01部隊、およびα−02部隊‥‥
 そしてβ133小隊の全員‥‥合計20名の少女達が集まっていた。
 高ノ宮少佐の補佐である片瀬・歩美大尉も傍に付いている。
(‥‥)
 高ノ宮少佐はちらりと妹――雪の顔を見る。
 雪は視線に気付いたのか、こちらを見て、きっと表情を引き締めた。
 その瞳には闘志が宿っている。静かに燃えているようだった。
 どうやら心配はなさそうだ。高ノ宮少佐はそう思った。
 席に付いている全員を見回し、口を開く。
「α隊、およびβ133小隊の諸君。いよいよだ。いよいよここまで来た」
 力強い口調。
「今回の攻略目標は――九州バグア軍、春日基地!」
 スクリーンに表示された地図をポインターでビシッと指し示す。
「春日基地攻略作戦と同時に、福岡基地の攻略も行われる。こちらは主に人質の救出だな。
 諸君らα隊、およびβ133小隊の目標は春日基地正面に陣取る敵部隊の排除、殲滅。
 佐賀空港攻略作戦で取り逃した敵エースが出て来る事が予測される。注意せよ。
 ‥‥今回の作戦は諸君らがこれまでに経験してきた中で、最大規模となる。
 戦いは熾烈を極めるだろう。だが――勝て。その上で全員生き残れ」
 高ノ宮少佐は柄にも無く、熱弁を振るった。
「諸君らがこれまで戦ってきた、積み上げてきたもの――その結果が示されようとしている。
 九州バグア軍の根城を撃滅し、全員無事に帰って来るのだ! これは命令だ! 反論は許さん!」
「了解っ!!」
 全員が立ち上がり、敬礼する。
「‥‥帰ったら、ご褒美を用意しておく。だから、死ぬな。未来を作るのは諸君ら若者なのだ」
 最後に高ノ宮少佐は穏やかな笑みを浮かべて、ブリーフィングを締め括った。

 ***

 ブリーフィングを終えたα−01部隊、α−02部隊、β133小隊の面々。
 20人の少女達は食堂に場所を移していた。
 大規模な作戦前の食事‥‥という事で食堂のおばちゃんは奮発してくれた。豪華メニューだ。
 美味しい食事を口に運びつつ、乙女達はキャッキャと歓談に興じる。
 ‥‥少しでも作戦前の緊張を解そうをしているのだ。
 これはα−01部隊B小隊長、九条・冴の提案だった。隊長の早乙女・美咲は即了承。
 それははたから見れば――平時であれば――まるで女子高のような華やかな雰囲気。
 1クラスにはちょっと足りないかもしれないが‥‥そんな感じがあった。
 ――これが乙女達の本来の姿なのかもしれない。
 高ノ宮少佐や片瀬大尉が見たらきっとそう思うだろう。

 ***

 食事を一段落させた乙女達は、それぞれ、一言ずつ述べる。
「九条・冴です。この作戦に九州戦線の全てが掛かっていると言えます。
 私達は、私達の戦いに決着を付けましょう。‥‥月並みな言葉ですみません」

「えーっと、神楽坂・有栖だ。困ったな‥‥あたしこういうの苦手なんだよな‥‥。
 まあとにかく頑張ろうぜ。高ノ宮少佐が言ってたご褒美の為にも!」

「犬飼・歴だよ。これからも美味しいご飯をいっぱい食べたいから、死ぬ訳にはいかないのだー」

「舞浜・ちずるですっ。私達がこれまで頑張ってきた結果が出る時ですっ。全力を尽くしましょうっ」

「‥‥坂城・慧子。バグアには一泡吹かせたい。この拳で」

「三門・香苗でーす。敵さんはねー、どかーんとやっちゃうんだよー」
「三門・早苗でーす。そうそう。ぐしゃーっとやっちゃいたいねー」

「森ノ宮・柚葉です。この一戦に勝利すれば、九州戦線に一応の決着が付くでしょう。
 各員、全力を尽くし、バグアを叩きましょう」

「森ノ宮・瑞葉です。あまり気張りすぎるのもいけませんので‥‥。肩に力を入れ過ぎないで下さいね」

「えとえと‥‥森ノ宮・紅葉です‥‥。精一杯、力の限り、頑張ります‥‥!」

「あたしは森ノ宮・双葉! バグアの野郎は叩き潰す! 絶対に故郷を取り戻すんだ!」

「横山・利瀬ですっ。先輩方と作戦を共に出来る事、光栄に思います!」

「岩崎・智里です。なんだか皆、思ったよりも落ち着いているね。
 あたしはなんだかそわそわしちゃって‥‥え? そんな事は無い? 失礼しましたっ!」

「工藤・麗美です。うふふ、これだけの仲間が揃えば怖いものはありませんわ」

「山口・麻奈です。冴先輩、美咲先輩、この様な場を設けて頂いてありがとうございます。
 凄く緊張していたんですけど、お陰で大分落ち着きました。皆さん、頑張りましょう!」

「うーんと、高ノ宮・雪です。私は‥‥ここに居ていいのかわからないんですけど‥‥。
 ねえさま‥‥じゃなくて、高ノ宮少佐の想いに答えられるよう、死力を尽くします!」

 最後に、α−01部隊隊長――。
「早乙女・美咲です。私の目標は地球からバグアを追い出す事‥‥。
 でもそれは荷が重いって気付きました。
 今は私達自身の為に戦いましょう。
 今、ここに居る私達の未来の為に戦いましょう!
 その結果が地球の皆を救う事に繋がるんだと思う。
 ‥‥全員で! 生きて! 帰って来ようね!!」
 美咲が思い切り叫ぶと、乙女達全員から「おー!!」と声が上がった。

●参加者一覧

時任 絃也(ga0983
27歳・♂・FC
セージ(ga3997
25歳・♂・AA
王 憐華(ga4039
20歳・♀・ER
百瀬 香澄(ga4089
20歳・♀・PN
鈴葉・シロウ(ga4772
27歳・♂・BM
カーラ・ルデリア(ga7022
20歳・♀・PN
ベルティア(ga8183
22歳・♀・DF
ヴァレス・デュノフガリオ(ga8280
17歳・♂・PN
瑞姫・イェーガー(ga9347
23歳・♀・AA
遠倉 雨音(gb0338
24歳・♀・JG
米本 剛(gb0843
29歳・♂・GD
仮染 勇輝(gb1239
17歳・♂・PN
夏目 リョウ(gb2267
16歳・♂・HD
流叶・デュノフガリオ(gb6275
17歳・♀・PN
奏歌 アルブレヒト(gb9003
17歳・♀・ER

●リプレイ本文

●決戦を前に
 乙女隊駐屯基地。春日基地攻略作戦に参加する為、15名の傭兵達が集結していた。

「悲願成就は目前だ。‥‥だが焦るなよ、焦りは隙を生みやがては崩壊を招く」
 乙女隊のメンバーを前に、時任 絃也(ga0983)が諭すように言う。
「誰一人欠ける事無く後で会おう。貴殿らの任務達成と無事を祈る」
 力強い言葉をかけ、敬礼して見せた。

(あの雨の日から2年半。長かったのか短かったのか。どちらにせよ、今回で決める!)
 セージ(ga3997)は初めて乙女隊に出会った頃を思い出す。
 その頃はまだ歩兵分隊で‥‥碌な訓練も受けていなかった。それが今では‥‥。
 セージは彼女達の悲願を果たすべく、そして自分が敗北を喫した敵エースに借りを返すべく‥‥
 ぐっと拳を握り、気合を入れる。

「さーて、いよいよ大詰めだ。グウの音も出ないくらいに叩きのめして、カッコ良く決めてやろうぜ」
 百瀬 香澄(ga4089)が乙女隊の皆に言い、片目を瞑る。
「そうそう、片瀬大尉。祝勝パーティの予算は多めに取っていてね?」
 片瀬・歩美大尉は「任せて。高ノ宮少佐がとっておきのご褒美を用意しているわ」と答えた。
「それじゃあ冴、また後でな」
「はい。香澄さん。また後で」
 香澄は九条・冴と軽く唇が触れ合うだけのキスを交わし、その場を後にした。

「乙女諸姉。帰って来たら私の自慢なこのふわもこシロックマ毛皮を存分に好きにしていいんだよ?」
 言ったのは鈴葉・シロウ(ga4772)。
 いつもならふわもこ白熊ヘッドの彼は乙女達にもみくちゃにされている所だが‥‥
 流石に作戦前なので乙女隊の皆は「はい」と答えるだけだった。
(だからお願いだ。皆で触りに来ておくれ)
 心の奥に、願いを秘める。
「さて。それではお仕事さ」
 人差し指と中指で敬礼のようなポーズを取り、シロウは格納庫へ向かった。

 ベルティア(ga8183)はα−02部隊のメンバーに挨拶。
 また会えた事を喜び、一人前になれた事へ賞賛を送り、誰一人欠けなかった幸運に感謝。
 この戦いでも必ず生き残る事を約束をする。
「絶対ですよ、この約束は絶対守って下さいね」

 瑞姫・イェーガー(ga9347)は三門・香苗と三門・早苗の姉妹と話していた。
「サナ、カナ、ボクを悲しませないでよ。ボクも頑張るからさ」
「うん、がんばるー。バグアなんかドババーってやっちゃうから」
「がんばるよーバグアなんかグシャーってやっちゃうんだ」
 あくまでも無邪気な双子の姉妹。その様子に瑞姫は微苦笑した。

 艶やかな長い黒髪の少女、遠倉 雨音(gb0338)は――
 セージと同じように乙女隊のこれまでを振り返る。
(乙女隊の方々と共同作戦を行うのは1年半ぶりくらいになりますか。
 あの頃はまだ分隊規模で、どこかまだおっかなびっくりだった印象がありましたが‥‥。
 規模も前より大きくなりましたし、何より随分と逞しくなったように感じます。
 場数を踏んだから、でしょうか‥‥。
 彼女達にとっての総決算とも言える戦い、微力ながらお手伝いさせていただきます)
 暫く見ない内に成長した乙女隊。その力になりたいと、雨音は今回の依頼に参加したのだった。

 米本 剛(gb0843)はこの期に及んで歩美さんや乙女隊に危険だ何だとは言わずに‥‥
 共に勝利し、共に喜びを分ち合いたいと考えていた。
 それから決意を胸に、正式なお付き合いをしている片瀬・歩美大尉に向かって口を開いた。
「歩美さん、少しいいですかな?」
「あら、剛さん。なんですか?」
 にっこりと微笑む歩美。
「戦闘が終結したら‥‥2人きりで呑みに行くか、食べに行くかしましょう」
 いつもは受身になりがちな米本。しかしここは『攻め』で行く!
「勿論。楽しみにしていますね」
 了承の言葉。米本はほっと胸を撫で下ろした。
 これは‥‥必ず勝つしかあるまい‥‥。

 夏目 リョウ(gb2267)は恋人の早乙女・美咲の元へやって来る。
「美咲‥‥ついにここまで来たんだな、お互いに頑張ろうぜ。
 その、俺達の未来は、ここだってまだ通過点だしな」
 リョウはぎゅっと、愛する人の手を握る。
「うん。ここまで来られたのはリョウくんを初めとした傭兵さん達のおかげ。
 私、頑張るよ。精一杯頑張るよ。ここで決めなきゃ、女が廃るもん!」
 美咲は声を張り上げた。

 ほどなく出撃時刻となり、全員が格納庫へ向かう。
 機体へ搭乗し、いよいよ出撃――。

 ***

 春日基地付近。航空機形態でここまでやって来た合計36機のKVは‥‥
 無事着陸した後、歩行形態へ変形する。

 絃也の機体はR−01改。
「この一戦に九州戦線の全てが掛かっている、か‥‥」

 セージの機体はシュテルン・G『リゲル』。
(さて、この前の借りを返そうか)
 群青色の敵エース機の姿を思い浮かべた。
 今回の戦域では群青色のティターンが確認されている。
 恐らくは――奴だ。

 王 憐華(ga4039)の機体はガンスリンガー『ガスヴァ』。
(さぁ、遂に大詰めですね‥‥今回も舞い撃っていきますよ)

 香澄の機体はロビン改『TomLady』。
「行くとしますか。私は女の子との約束は必ず守る主義なんでね」

 シロウの機体は雷電改『飛熊』。
「良く言えば取り揃えて。悪く言えばどっち付かずな装備ですが――大丈夫だ、問題ない」

 カーラ・ルデリア(ga7022)の機体はイビルアイズ改『デスエンジェル』。
「どんな敵だろうと死天使の鎌で刈り取るだけなんやね」

 ベルティアの機体はガンスリンガー『フェネクス』。
「コッチで敵を引き付けてれば、乙女隊の援護になるんだよね? 頑張るゾ〜」

 ヴァレス・デュノフガリオ(ga8280)の機体はシュテルン・G『Deneb Cygni』。
「流叶、準備はいいか」
「ああ、ヴァレス。大丈夫だ」
 夫の言葉に答える流叶・デュノフガリオ(gb6275)の機体はシュテルン・G『皇騎』。
(此れが最後、か。
 彼女等と顔を合わせた事は無いが、共に戦った事を考えると、少し感慨深い‥‥ね。
 願わくば、最高の勝利を――)
 一瞬だけ目を瞑り、思いをめぐらせる。
 そして機体の装備をチェック。すると――
「‥‥ん?」
 違和感。流叶は機刀を装備してきたつもりだったのだが‥‥
 実際に装備されていたのはゼロ・ディフェンダーだった。
 しかし、作戦に支障をきたすほどの問題ではない。
 今から換装する事は不可能。仕方が無いので今回はこの装備で行く事にした。
(焦っているのか、私は‥‥)
 気をつけねば、と流叶は思う。

 瑞姫の機体はアッシェンプッツェル『ヤクシニー』。
(やってみせる‥‥サナとカナの為にも‥‥。どんなに敵が強大でも‥‥)

「正面の敵は此方で引き受けます。早乙女さん、乙女隊の皆さん――御武運を」
 乙女隊に通信を来る雨音。彼女の機体は雷電改『黒鋼』。
 すぐに「了解です。ありがとうございます」との返答。

 米本の機体はオウガ『鬼獅子』。
(自分には勝たねばならん理由ができた。必ず、生きて――)

 仮染 勇輝(gb1239)の機体はフェニックスA3型『Chronus(クロノス)』。
(‥‥どんな敵だろうと、俺は叩き潰すだけ‥‥)

「行くぞ『蒼炎』!」
 リョウの機体はVUされたリヴァイアサン『蒼炎』。

「‥‥前回来た時は‥‥ダム・ダルの撃破で手一杯でしたが‥‥今度こそ制圧します」
 奏歌 アルブレヒト(gb9003)の機体はガンスリンガー『Schwalbe・Schnell』。

 傭兵部隊と、乙女隊・片瀬大尉・β133小隊は二手に別れ戦域へ向かう。

●春日基地攻略作戦・正面
 傭兵部隊15機は戦域に到達。
 敵陣後方に砲台を確認。ほどなく敵からの砲撃が開始される。
 全機回避運動。

「作戦通り、敵前衛との距離がある内に砲台を可能な限り潰す」
 絃也から全機に通信。
 絃也機と憐華機はSライフルで、瑞姫機と奏歌機はレーザーガンで狙撃。
 ヴァレス機はアハト・アハトで狙撃。
 最後に雨音機が大型榴弾砲を連続発射。
 無数の砲弾と光条が飛び、爆炎が巻き起こる。
 ――砲台の約半数が沈黙した事を確認。
「敵前衛接近だよん」
 電子戦機に乗るカーラ機から全機に通信。
 傭兵達は各班に分かれて行動を開始した。

 ***

 D班(砲台+TW対応)――。
 憐華、香澄、ベルティア、奏歌。

 D班は敵前衛を迂回して、後衛に位置するTWと砲台に側面から攻撃を行う。

 残存の砲台とTWからプロトン砲の猛射が来た。全機回避運動。
 しかし数発被弾。全機中程度のダメージ。

「‥‥っ。まずは邪魔者掃除から始めますかね、と」
 香澄が言い、D班の4機は砲台に狙いを定める。
「それじゃ次は私のターン。ど〜んとブチかましちゃうからね」
 香澄機とベルティア機は荷電粒子砲を発射。

 奏歌機はレーザーガンを連射。
「‥‥狙いは外しません‥‥全員で‥‥生還する為にも」

 憐華機はSライフルで狙撃を行う。
「動かない的相手に外す訳には‥‥!」
 極太の光条と、レーザーと、砲弾に貫かれ、全ての砲台が沈黙。

 ***

 次の狙いはTWである。香澄機は前進。

 奏歌機はレーザーガンをTW5に連射。
 命中。甲羅と砲塔を貫き、致命的なダメージを与える。

 憐華機、DFSSを起動。
「やらせません‥‥ガスヴァ、撃ち抜いて!!」
 Sライフルで3度狙撃。狙い違わず砲弾は命中。
 しかし甲羅に阻まれ、ダメージは殆ど無し。

 ベルティア機は敵をLライフルの射程に収めるべく、前進。

 TW1〜10、プロトン砲でベルティア機に集中砲火。
 ベルティア機は遮蔽物を利用しつつ、回避運動。全弾回避。

 ***

 香澄機は前進。LカノンをTW4に照射、命中。甲羅を焼き、大ダメージを与える。

 奏歌機はレーザーガンでTW5に射撃。命中。撃破。
 続いてTW4に射撃。命中。爆発。撃破。リロード。

 憐華機は再びSライフルでTW6を狙撃。リロード。狙撃。
 2発命中。甲羅を傷つけ、小程度のダメージを与える。

 ベルティア機、LライフルをTW7に連射。
「TWのプロトン砲にワンホールショット! 出来たら良いナ〜」
 命中。レーザーは砲塔を正確に射抜き、致命的なダメージを与える。

 TW1〜TW3はプロトン砲で香澄機に集中砲火。香澄機は回避運動。
 TW6〜TW10も同様に香澄機へ集中砲火。
 香澄機は遮蔽物を利用して全弾を防ぐ。

 ***

 香澄機はLカノンをTW3に連続照射。命中。TW3は爆発。撃破。

 奏歌機はレーザーガンをTW6に連射。命中。TW6は爆発。撃破。

 憐華機はSライフルでTW7に3度狙撃。
 命中するが、やはりTWは物理攻撃に対して耐性が強い。

 ベルティア機、LライフルをTW7に射撃、命中。TW7は機能停止。撃破。
 続いてTW8に連射。命中。大ダメージを与えた。

 TW1はプロトン砲を香澄機に連射。香澄機は回避。
 TW2も同様に連射。香澄機は回避運動を取るが、命中。
 香澄機は装甲を焼かれて大ダメージを受けてしまう。
「‥‥負けないよ。『また後で』って約束したからな」
 首から提げたレフトハート・ペンダントを握り締る。
 香澄の脳裏に浮かぶのは同じ戦場で戦う想い人の顔‥‥。

 TW8〜TW10はプロトン砲で香澄機に集中砲火。香澄機は回避。
「これ以上貰う訳にはいかないんだよ」

 ***

 香澄機は前進。LカノンをTW2に連続照射。
「これはさっきのお返しだ」
 命中。甲羅を融解させ、致命的なダメージを与える。

 奏歌機はレーザーガンをTW8に連射。命中。撃破。リロード。

 憐華機、SライフルでTW9を狙撃。リロード。狙撃。
 2発命中。だがやはり砲弾は甲羅に阻まれてしまう。

 ベルティア機はリロードしつつ前進。
 LライフルをTW9に連射。命中。中程度のダメージを与える。

 TW1は重機関砲を香澄に連射。
「だから当たる訳にはいかないんだよ!」
 香澄機はアリスシステムを起動。回避。
 TW2も重機関砲を香澄に連射。これも回避。

 TW9・10は重機関砲でベルティアに集中砲火。ベルティア機は回避。
「当たらないよーだ」

 ***

 香澄機はLカノンをTW2に照射。命中。TW2は高熱に耐え切れず爆発。撃破。
 続いてTW1に連続照射。命中。大ダメージを与える。
「ちっ。まずいな‥‥」
 時間が掛かり過ぎている。仲間はどうなっているのか‥‥。

 奏歌機は前進。レーザーガンをTW9に連射。命中。致命的なダメージを与える。

 憐華機はSライフルでTW9を3度狙撃。
 命中するが、効果は確認出来ない。

 ベルティア機はLライフルをTW9に射撃、命中。撃破。
 続けてTW10に連射、命中。大ダメージ。

 TW1は重機関砲を香澄機に連射。有栖システムを起動した香澄機には命中せず。
 TW10は重機関砲をベルティア機に連射。ベルティア機は軽々と回避。
「へへーん♪」

 ***

 香澄機はレーザーカノンをTW1に連続照射。命中。TW1は爆発。撃破。
「あと1機だ! 決めろ奏歌!」
「‥‥了解です‥‥」
 奏歌機は前進。レーザーガンをTW10に連射。
 命中。最後のTWが爆発。全てのTWを撃破。
「これで全部か?」
 周囲を警戒する香澄。
「くぅ‥‥非物理兵装を積んでくるべきでした‥‥」
「‥‥今はそのような事を‥‥言っている場合ではありません‥‥」
 悔やむ憐華に対し奏歌が珍しくやや強めの口調で言う。
「みんな、大丈夫かなぁ‥‥?」
 仲間の安否を心配するベルティア。こちらは4機とも健在で損傷は許容範囲内だが‥‥。
 D班は他班の様子を確認するべく動き出した。

 ***

 時は遡り、傭兵部隊が各班に分かれた直後‥‥。

 C班(タロス対応)――。
 絃也、ヴァレス、雨音、リョウ、流叶。

 C班は敵前衛、タロス部隊の対応を行う。

 ヴァレス機はマルコキアスをタロス1に連射。弾幕を張る。
「まずは頭数を減らす」
 命中。装甲をズタズタにし、大ダメージを与える。

 絃也機はタロス2をロックオン。Sライフルで4度狙撃。
 命中。4発の砲弾は正確にタロス2を貫く。爆発。撃破。
「タロスの回復は厄介だが‥‥攻撃を集中し一気に落とせば、さして問題ではない」

 流叶機はマルコキアスをタロス3に連射。弾幕を張る。
 命中。次々と放たれる砲弾を受け、タロス3は爆発。撃破。
「その通り。タロスは一気に倒すに限る」

 雨音機とリョウ機は待機。下手に前へ出ると敵の集中攻撃を受ける可能性がある為だ。

 タロス1、4、5は前進。距離を詰めてくる。

 ***

 ヴァレス機はマルコキアスをタロス1に連射。再び弾幕を張る。
 命中。砲弾の嵐に晒されたタロス1は爆発。撃破。

 絃也機は兵装をスラスターライフルに切り替え。タロス4に連射。
 命中。猛射を受けたタロス4は爆発。撃破。
「タダで通すと思うな、そこまで温くはない」

 流叶機はマルコキアスでタロス5に連射。
 命中。外装を吹き飛ばし、生体部品にまで傷を付け、致命的なダメージを与える。
 リロード。

「ライフルチェンジだ‥‥くらえっ!」
 リョウ機はLライフルで援護射撃。

「捉えました。そこです‥‥!」
 雨音機はスラスターライフルをタロス5に連射。命中。タロス5は爆発。撃破。

 雨音は索敵を行う。
「周囲に敵の反応はありません」
「情報通り敵は5機だったという訳か‥‥」
 ヴァレスが呟く。
「よし、ならば他班の加勢に向かう。ヴァレス、流叶、夏目はB班へ。
 俺と遠倉はA班へ行く。いいか?」
 絃也の提案に全員が「了解」と答えた。

●決戦
 B班(強化型タロス対応)――。
 カーラ、米本、勇輝。

 B班の3機は‥‥牙城・このえの側近が乗る強化型タロスと対峙していた‥‥。

「以前死合った側近の最後の御一人か‥‥。
 自分は米本剛、貴殿の名を刻みたいが名乗りはしてくれませんかな?」
 米本がオープン回線で強化型タロスに語りかける。

 しばし間が空き、澄んだ女性の声が返ってきた。
『‥‥いいでしょう。我が名は牙城・このえ様の側近が一人、白川・桜。
 先に逝った側近二人の遺志を継ぎ、お相手致そう』
 強化型タロスは熱剣を構えた。

「『盾に隠れた』練剣にやられた奴がいるらしいが‥‥さて、この盾の後ろには何があると思う?」
 続いて勇輝が通信を送る。白井・桜とやらは「知りませんね」とだけ答える。
「不死鳥乗りの仮染だ。覚えておけ」
『私の記憶に留まるかどうか、それは貴方の力量次第です』
 それが戦闘開始の合図となった。
「言ってくれる‥‥!」
 勇輝機は前進。
 米本機も続いて前進。

「ロックオンキャンセラーを展開するよん。せいぜい無駄弾をばらまくといいやね」
 カーラ機も機体を前進させる。

『では――参ります』
 強化型タロスの機体が赤く発光。前進し一気に距離を詰めてくる。
 米本機は迎撃。ブーストの上でTBO・Bを使用。
「吼えよ『鬼獅子』‥‥その真価を見せなさい!」
 ゼロ・ディフェンダーとソードウィングによる連続攻撃。
 しかし――強化型タロスは米本機の側面に回り込み、避けて見せた。
「なんと‥‥!?」
 反撃。強化型タロスは熱剣を振い、米本機に連続の斬撃を見舞ってくる。命中。
「歩美‥‥さん‥‥」
 米本機、大破。

 ***

 勇輝機はLカノンを強化型タロスに連続照射。
 しかし強化型タロスを捉える事は出来ない。

 カーラ機、ロックオンキャンセラーを使用。前進。
「にゃはっ、死天使の舞、その目に焼き付けるといいよん。
 ‥‥自分達の罪、その命で購って。散りなさい」
 機鎌を振り被る。
「あはっ。これで、終わりよ!」
 だが空振り。命中せず。

 強化型タロスは尚も赤く発光している。
 チェーンガンをカーラ機に連射。
「なっ‥‥!」
 砲弾を受け、装甲が弾け飛ぶ。
 カーラ機、大破。

 強化型タロスは前進。勇輝機は迎撃。
「俺のは誰かと違って隠すだけじゃねぇんだよ!」
 刀で縦一閃に斬りかかった後――逆手に持った練剣で連続攻撃を行う。
 しかし‥‥命中せず。
 勇輝機の背面に回り込んだ強化型タロスは熱剣で連続攻撃。
「‥‥なに?!」
 勇輝機、大破。

 ***

 ヴァレス機、流叶機、リョウ機が到着。
「く‥‥遅かったか」
「‥‥強化型タロス‥‥」
「お前、よくも!!」
 沈黙した味方機にカメラを向ける3機。
 すぐさま攻撃に移る。

 ヴァレス機はマルコキアスを強化型タロスに連射。
 命中。強化型タロスの装甲を傷つけ、中程度のダメージを与える。

 流叶機はブーストを使用。前進。一気に間合いを詰める。
 ゼロ・ディフェンダーで強化型タロスに連続の斬撃。
 命中。強化型タロスに大きな斬痕を刻み、大ダメージを与える。

 リョウ機はLライフルを強化型タロスに連射。
「頼むぞ『蒼炎』、お前の新たなる力を見せてやれ!」
 命中。強化型タロスの装甲を焼き、中程度のダメージを与える。

 強化型タロスは尚も赤く発光。
 プロトン砲をヴァレス機に放つ。命中。
「くぅぅぅ‥‥!」
 ヴァレス機、大ダメージ。
 続いてプロトン砲をリョウ機に放つ。命中。
 リョウ機、大ダメージ。
「まだ‥‥まだだ!」

 強化型タロスは熱剣で流叶機に連続で斬りかかる。命中。
 流叶機は装甲を切り裂かれ、大ダメージを受けてしまう。
「やるな‥‥。だからこそ‥‥か‥‥」
 この短時間で味方機3機を撃破するその実力は確からしい‥‥。

 ***

「流叶、援護する!」
 ヴァレスが叫び、マルコキアスを強化型タロスに連射。
 命中。受けた砲弾により強化型タロスの外装が崩れ落ちる。大ダメージを与えた。

「美咲の夢、俺の夢、そしてこの戦いに命をかける全ての人達の為にも‥‥
 俺は絶対に負けられない‥‥システム・インヴィディア発動、今、俺は青き流星になる!
 リョウ機、ブーストとインヴィディアを使用。前進。
「蒼炎斬Deマキシマム!!」
 蒼い燐光を煌かせ、強化型タロスに双機刀による斬撃を見舞う。

 流叶機はPRMシステム・改を攻撃に使用。
「これで終わりにしよう‥‥」
 ゼロ・ディフェンダーを両手で保持し、強化型タロスに連撃を与える。
(このえ様‥‥これで‥‥)
 強化型タロスは静かに沈黙した。撃破。

 ***

 A班(ティターン対応)――。
 セージ、シロウ、瑞姫。

 3機は群青色のティターン――牙城・このえ機と対峙していた。

「よう、久しぶりだな。人は敗北を知る事で強くなれる。今回は俺が勝たせて貰う」
 ティターンに機刀の切っ先を向けるセージ機。

 シロウ機とセージ機は前進。スラスターライフルで弾幕を張る。
「悪いけど時間稼ぎに付き合って貰うよ? お嬢ちゃん」
「悪いな。ここから先は通行止めだ」

 瑞姫機はレーザーガンをティターンに連射。
「牙城・このえ‥‥敵同士でなければ出会う事なんて無かったのにね」
 ティターンは回避。命中せず。

『ほう、足止めだと‥‥?』
 ティターンの機体が赤く発光。
『そのような生温い考え、私には通用しない事を教えてやる――!』
 大きく前進。一気に距離を詰めてきた。
 セージ機は迎撃。PRMシステム・改を攻撃に使用。機刀で斬撃を繰り出す。
「さあ‥‥一緒に踊ろうぜ。生と死の狭間で踊る舞踏曲を」
『残念ながら、貴様にあるのは死だけだ』
 ティターンは全て回避。反撃。熱剣でセージに連続攻撃。命中。
「牙城‥‥!!」
 セージ機、大破。

 続いてティターンは手の甲から伸ばした練剣でシロウ機に斬撃。命中。
 シロウ機は致命的なダメージ。
「‥‥ああ。キツイねぇ敵強いねぇ怖いねぇ。だが。だからどうしたと言ってやろう」
 シロウ機はミサイルポッドを一斉発射。立ち上る爆炎。
 ――ティターンはそれを抜けて来た。
「なっ‥‥」
 追撃。ティターンは練剣を一閃。命中。
 シロウ機、大破。

 ***

「そんな‥‥まさか‥‥こんなのって‥‥」
 目の前で起こった事を飲み込めずに、瑞姫は動揺を隠せずに居た。
 それでも瑞姫は震える手で‥‥レーザーガンの照準を‥‥
 ティターンに合わせる。連射。しかし‥‥命中せず。
『狙いが甘い!』
 気が付くと、ティターンはすぐ眼前に迫っていた。
 熱剣で瑞姫機に連続の斬撃。命中。
 瑞姫機はツヴェルフウァロイテンを使用。
 だが耐え切れない。熱剣により機体をバラバラに切断される。
「サナ‥‥カナ‥‥」
 瑞姫機、大破。

 ***

『この程度か? この程度なのか? 我ら九州バグア軍を追い詰めた人類の力はこの程度なのか?!』
 牙城・このえの声が外部スピーカーから轟く。落胆の色。怒りの色。

 そこへ絃也機と雨音機が到着。大破した3機の仲間の機体がモニターに映る。
「これは‥‥!」
「酷い‥‥」

 絃也機はそのままティターンに突貫。大剣でティターンに連続の斬撃。
「いい加減、退場願おうか」
 命中。ティターンの装甲を切り裂き、大ダメージを与える。
『漸く骨のある者の登場か。早々に退場しては勿体無いではないか‥‥!』

 雨音機、アクチュエータを使用。
「援護します、絃也さん‥‥!」
 重機関砲をティターンに連射。ティターンは回避。命中せず。

 ティターンは尚も赤く発光。ガトリング砲を雨音機に射撃。
 命中。雨音機は装甲を貫かれ、中程度のダメージ。
「くぅっ‥‥!」
 続いて熱剣で絃也機に連続の斬撃。
 命中。絃也機は幾つもの斬痕が刻まれ、大ダメージを受けてしまう。
「一撃でこれ程とは‥‥!」

 ***

 絃也機はAファングを使用。大剣を何度も振い、斬撃を加える。
 ティターンは生体部品まで損傷し、大ダメージ。

 雨音機はアクチュエータを使用。重機関砲をティターンに連射。
 ティターンは損傷具合から考えられないほど滑らかな動きで弾幕を回避。

『次はこちらから行かせて貰う』
 ティターンは熱剣で絃也機に連続攻撃。
 命中。絃也機は致命的なダメージ。大破寸前。
「ぐあっ!?」
 小爆発。コクピット内にまでダメージ。警告音が鳴り響く。
『これで――仕舞いだ!』
 ティターンは練剣で凄まじい速度の突きを放つ。狙いはコクピット‥‥!
「絃也さん!!」
 雨音機が咄嗟に盾を構えて間に入った。練剣が盾を貫き雨音機に突き刺さる。
「今です!」
 雨音が声を張り上げる。

 ***

「ぐふっ‥‥がはぁ‥‥」
 雨音が作ってくれた隙。それを逃す訳にはいかない。
 絃也は血を吐きながらAファングを使用。
 満身創痍の機体にしっかりと大剣を保持させる。
「はあああっ!!」
 ティターンに、渾身の突きを繰り出す。
『――ふっ。悪くない人生であった。礼を言うぞ、人類の兵よ』
 大剣に機体を貫かれたティターンは、ほどなく大爆発を起こした。
 雨音機はブーストを使用し、絃也機を抱えて、巻き込まれる寸前でその場を離脱。

●帰還
 絃也が目を覚ましたのは白いベッドの上だった。
 ベッドの周りには乙女隊の数人が集まり、心配そうに絃也を見つめている。
「んっ‥‥俺は‥‥」
 絃也が目を開けると、乙女達がわっと声を上げる。
 すぐ片瀬大尉に注意されてしまったが。
「ここは基地の医務室。お前はティターンを撃破したのだ。名誉の負傷という奴だな」
 すぐ傍に居た高ノ宮少佐がふっと笑みを浮かべる。作戦は無事成功したらしい。
 無論、乙女隊の機体も無事ではなかったが、幸い大きな怪我を負わすには済んだようだ。
「そうか‥‥。次に何かあればまた手を貸そう」
 絃也は横になったまま、ほんの少しだけ笑みを見せる。
「すまんが、暫しの休息を取らせて貰うか‥‥」
 そしてそのまま、また目を瞑った。

 ***

「大丈夫かよ?! ホントに心配したんだぞ! 無茶すんなよ!」
 ベッドに寝かされているセージの傍で神楽坂・有栖が涙目で声を上げた。
「はは‥‥見事にやられちまった。それよりもあんまり騒ぐな。迷惑だし、傷に響く‥‥」
「わわっ! ごめんっ!」
 慌てる有栖を見て、セージは苦笑した。

 ***

「神は言っている――ここで死ぬ運命ではないと――」
 シロウはそんな声と共に目を覚ました。
 周りを乙女数人が囲んでいる。
 状況を把握。自分は死にかけたらしい。
「この傷が癒えたら、一番いいモフり方を頼む」
 包帯でぐるぐる巻きになった白熊マンはそんな事を言って、ぐっと親指を立てた。

 ***

 ベッドに寝かされているカーラ。
「にゃは、やられちった☆」
 元気はあるらしく、そのように軽口を叩く。
「ネームド相手に近接戦は無謀だ。余程チューンされた機体でなければな」
 カーラに対して高ノ宮少佐がそのように言う。
「まあ、そなた達が稼いだ時間も決して無駄ではあるまい。今はゆっくり休め」
 高ノ宮少佐はそう続けた。

 ***

 瑞姫は絃也と同じようにベッドの上で目を覚ました。
「あ、起きたー!」
「死んじゃったかと思ったー!」
 香苗と早苗が抱きついてくる。
「いたた‥‥痛いよ、サナ、カナ。‥‥でも、無事だったんだね‥‥良かった‥‥」
 瑞姫は引っ付いている双子の姉妹を優しい目で見つめた‥‥。

 ***

 勇輝はベッドの上で、悔しそうに奥歯を噛み締めていた‥‥。
(手も足も出なかった‥‥。くっ‥‥)
 だが‥‥。
(俺は、もっと強くなる‥‥!)

 ***

「剛さんたら、張り切りすぎたんじゃない?」
「ははは、面目次第もありませんな‥‥」
 ベッドに寝かされた、包帯でぐるぐる巻きの米本と歩美が話している。
「まったく、それでは暫く一緒にお食事は無理ね」
「‥‥申し訳ありません」
 がくりと肩を落とす米本。
「でも‥‥生きて帰って来てくれて嬉しいわ‥‥」
 米本の身体を、歩美が優しく、傷に障らないように包み込んだ‥‥。

 ***

 軽傷で済んだ傭兵達は基地の食堂に集まっていた。勿論乙女達も一緒。

(皆で無事に帰って来れた‥‥負傷しちゃった人達も居るけど‥‥良かった‥‥)
 憐華は両手を豊満な胸に当て、皆の帰還を喜んだ。

「冴、約束通り無事に帰ったぞ」
「ええ、こちらも」
 香澄と冴の視線が近距離で絡まり、顔が近づいてゆく‥‥。
 今度は再会の、濃厚なキス‥‥。

 ベルティアはα−02部隊の4人と会話。
「お疲れ様。良かったら今度、一緒にケーキを食べに行きましょうね」
 4人は頷き、嬉しそうににっこり笑った。

 ヴァレスは坂城・慧子と会話中。ただしヴァレスには流叶が寄り添っている。
「これが最後ってなぁ寂しいな。俺、喫茶店やってるから、暇な時にでも立ち寄って♪
 なーんか片っ端から負け続けだった気がするなぁ。次は、負けねぇぞ♪」
 明るい口調でヴァレスが言った。
「‥‥最後じゃない。私達の戦いは続く‥‥。九州も完全じゃないし、関東だって。
 それに世界はまだまだ‥‥。だから‥‥その時は‥‥よろしく」
 慧子はびしっと敬礼した。

 雨音は美咲と会話。
「ご無事で何よりです、早乙女さん」
「雨音さんも無事で良かった!」
 にぱっと笑う美咲。釣られて雨音も微笑む。

「これで九州戦線に一応の決着が付いたのでしょうか‥‥」
 奏歌は複雑な――傍から見れば無表情だが――表情を浮かべていた。
 だが事実、九州での戦いは一段落だろう。

 雨音と話している美咲の所へ、リョウがやって来た。
「ちょっといい?」
 美咲は「うん、いいけど」と言う。雨音は気を利かせてその場をすすっと離れた。
「‥‥未来の6月に向け、これは美咲を必ず幸せにする約束に‥‥受け取ってくれないかな?」
 リョウは美咲の手を取り、指に青空の指輪を嵌めた。
 そして――美咲の唇を奪う。
「んんっ‥‥」
 美咲はそのまま受け入れる。
 リョウは唇を離し、窓の外を見つめた。どこまでも広がる青空。
「俺はこれからも未来の為に戦うよ、美咲。君との未来の為に」
「うん、私も」
 美咲はリョウの手を握り、一緒に澄んだ青空を見つめた――。

 ***

 こうして、乙女達の戦いは一応の終幕を迎えた。
 しかしバグアが存在する限り、彼女達は戦い続けるだろう。
 そう、傭兵諸君の力を借りて。