タイトル:武士の魂3マスター:とりる

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/04/12 06:55

●オープニング本文


 銀河重工本社。KV開発室――。
 白衣を纏った長身の男が机の上に山積みにされた書類に、丁寧に目を通していた。
(高出力レーザー砲『種子島』は陸戦ほどでは無いにせよ、空戦でも十分に性能を発揮するようだな)
 男の名は草壁・誠十郎。銀河重工の新型KV『XGSS−03A シコン』の開発主任。
 彼が読んでいるのは傭兵による空戦テストの戦闘データであった。
「主任、お疲れ様です」
 そこへ、柔らかな声と共にコーヒーの入ったマグカップが差し出される。
 誠十郎が顔を上げると、小柄で童顔の女性の姿があった。
 彼女は南川・遥。誠十郎の部下で、補佐を勤めている。
 誠十郎は礼を言い、マグカップを受け取ってコーヒーを一口飲んだ。
「開発、順調ですね」
 遥がこちらを見て微笑む。
「そうだな」
 少しだけ口元を緩める誠十郎。遥を初めとした開発スタッフの尽力により開発は順調に推移。
 また、傭兵の働きにより有用な戦闘データを得る事が出来た事も大きい。
 前回のサイファーとスカイセイバーを対戦相手とした空戦テスト――
 誠十郎はやや苦戦するであろうと踏んでいたのだが‥‥結果は完全勝利であった。
(ふむ‥‥)
 誠十郎はまたコーヒーを一口飲む。
 シコン試作1号機の調整は完了。別の工場で組み立て中だった試作2号機もロールアウト。
 次は実機テストに移る所だが――
(上手く行き過ぎている‥‥)
 シラヌイ開発時の苦難に比べれば順調過ぎる。
 勿論、全力を尽くしているので、その結果と言えばそうなのだが‥‥。
(考えすぎか‥‥)
 そう思いつつ、誠十郎はコーヒーをこくこくと飲み干した。
 
 コツコツとヒールの音を立て、1人の女性が歩いてくる。
 彼女はシコンの開発スタッフの一員、青樹・由香子。黒いフレームのメガネがキラリと光る。
「また、随分と楽しそうね」
「そう見えるか?」
「ええ、とても」
 皮肉たっぷりに由香子が返してくる由香子。
「所で、試作2号機がロールアウトしたそうね」
 改めて由香子が言った。
「そう連絡があった。遥に行ってもらおうと思っているが」
「いえ。私が行きます」
「君が?」
 由香子は頷く。
「固定武装――『種子島』の開発は済んだし、試作1号機本体とのマッチングもクリア。ここでやる事はもう殆ど無いわ」
 傭兵から提供された『機体内蔵「雪村」』の運用データを解析。
 その結果も踏まえ、シコンとの同調は完璧。と由香子は自負する。
「うーむ‥‥」
「南川さんは忙しいようですし、調整も兼ねて私が受け取りに行きます。良いですね? 開発主任」
 怖い表情。脅迫とも取れるような言葉。
 由香子は遥をキッと睨んだ後、誠十郎に射抜くような視線を向けた。
「‥‥解ったよ。2号機は頼んだ」
「了解しました」
 そう言って由香子はまたヒールを鳴らして去って行った。



 数日後――。
 調整を終えたシコン試作2号機を載せ、銀河重工本社へと向う輸送機内。
 突然、爆発音と共に輸送機の機体が揺れた。
「何‥‥!?」
 今度は窓の外を光条が走る。
(プロトン砲‥‥!?)
 由香子は揺れる機内で座席に掴まりながら操縦席を目指した。



 操縦席――。
「一体どうしたの?!」
 ふらつきながら由香子が現れた。
『メーデー! メーデー! バグアから攻撃を受けている!』
 護衛機のパイロットからの緊迫した通信。
 機長と副操縦士は必死に機体を安定させようとしていた。甲高いアラームが鳴り響く。
「聞いた通りだ! 奴らはUPC軍の防空網を強引に突破してきたらしい!」
「‥‥。敵は何? 数は?」
 一呼吸置き、由香子は機長に尋ねる。
「わからん。人型のようだが‥‥。ドラゴニュート1! 敵の機種と数を知らせろ!」
『ドラゴニュート1よりマスター。敵はタロス。その数5! 依然交戦中。我々が足止めしている間に離脱を――っ!?』
 閃光が迸った。あれはプロトン砲が超伝導コーティング――AECによって弾かれる光。
 護衛機のシラヌイ改4機が輸送機の盾になってくれているのだ。
 だがAECには回数制限がある。いつまで持つか判らない。
「通信機を貸して頂戴! 本社と連絡を取る!」
 由香子が怒鳴った。副操縦士が由香子に通信機を渡す。
 受け取ると、由香子はただちに銀河重工本社、KV開発室へ繋ぐ。
「私よ! 誠十郎! 聞こえる!」
『‥‥れだ。きこ‥‥る』
「こちらの状況は把握しているわね?」
『‥‥ぁあ』
「2号機を起動させるわ」
『‥‥なん‥‥って!?』
 ノイズが酷い誠十郎の声を遮るように、爆音が轟いた。
『ドラゴニュート2がやられた! 輸送機! 早く離脱しろ!』
 パイロットの悲痛な叫び。
「‥‥そういう訳だから。2号機は『私に任せて』貰うわ」
『君‥‥戦う気‥‥!?』
「そうよ。それしかないもの」
『‥‥無茶だ!』
 由香子は能力者――サイエンティストであった。しかし、実戦の経験は無い。
「2号機を守るにはそれしかないって言っているでしょう! 以上! 通信終わり!」
 乱暴に通信機を戻す。また爆音。
『ドラゴニュート3がやられた!』
「‥‥格納庫に行くわ」
 パイロットの声を聞きながら由香子が言うと、機長は無言で敬礼。副操縦士もそれに習った。
 格納庫へ走る――。



 輸送機の格納庫。由香子はシコン試作2号機のコクピットに滑り込む。
『これで出るんですか? 無茶ですよ!』
 機体の外で整備員が叫ぶ。
「粗方の調整は済んでいる。実戦テストって所ね」
 由香子はコンソールを操作しながら答える。
「敵の狙いは100%、このシコン。なら囮になって、輸送機を逃がすわ。機体を降下させる」
『そんな‥‥っ』
「システムオールグリーン。XGSS−03A・シコン試作2号機、起動!」
 駆動音が鳴る。計器類が機体のステータスを表示する。
『ハッチを開きます! それからシラヌイ用の武装コンテナを一緒に投下します!』
「解ったわ。ありがとう」
『幸運を!』
 輸送機のハッチが開く。
 9本のテールスタビライザーで姿勢制御を行いつつ降下する二等辺三角形状の機体。
 ‥‥ほどなく森林地帯へ着陸。武装コンテナも地面に落下。
 機体を歩行形態へ変形させ、コンテナから武装を取り出して装備する。
(デバイスドライバ‥‥インストール‥‥早く‥‥!)
 だが武装を扱う為のドライバのインストールには数十秒掛る‥‥!
 タロスが降下してきた。砲口に光が収束。光条が放たれる。
 ――が、衝撃は来なかった。目の前には傷ついた2機のシラヌイ改。AECを使用したらしい。
『こちらドラゴニュート1、および4。技術屋の姉さん、大した度胸だ。助太刀するぜ』
「助かるわ‥‥」
『ちなみに今のが最後のAECだ。新型の力、当てにしてもいいよな?』
「任せて頂戴」
 汗を垂らしつつも口元に笑みを浮かべる由香子。
(インストール完了。いける!)
 狐の耳と九尾を生やした漆黒の鎧武者が二振りの機刀を抜く。
 それと同時にカメラアイが赤く光った――。

●参加者一覧

櫻小路・なでしこ(ga3607
18歳・♀・SN
ソード(ga6675
20歳・♂・JG
アンジェリナ・ルヴァン(ga6940
20歳・♀・AA
龍深城・我斬(ga8283
21歳・♂・AA
時枝・悠(ga8810
19歳・♀・AA
Anbar(ga9009
17歳・♂・EP
孫六 兼元(gb5331
38歳・♂・AA
夢守 ルキア(gb9436
15歳・♀・SF

●リプレイ本文

●シコン試作2号機救援
 編隊を組みつつ、全速で現場へと急行する8機の飛行形態のKV――。

(どうか――わたくし達が到着するまで‥‥無事でいてください‥‥)
 心の中で祈る櫻小路・なでしこ(ga3607)の機体はマリアンデール『藤姫(ふじひめ)』。

「いくよフレイア。銀河重工の新型機をバグアの手に渡すわけにはいかない」
 愛機のコンソールを撫でるソード(ga6675)の機体はシュテルン・G『フレイア』。

「ふむ‥‥バグアの襲撃‥‥か」
 思案の表情を浮かべるアンジェリナ・ルヴァン(ga6940)の機体はシラヌイS2型。

「もう試作機が2機も出来てたのか‥‥」
(ま、色々と言ったが俺もこの特盛り機体の発売は楽しみなんだ‥‥こんなところじゃ蹴躓かせねえ!)
 龍深城・我斬(ga8283)の機体はシラヌイS2型『剛覇』。

(ロールアウト直前に狙われたって報告書を割りと見るが、兵法の常道なのかバグアの趣味なのか)
(何にせよ、ファームライドのような展開はごめんだぞ)
 時枝・悠(ga8810)の機体はアンジェリカ改『デアボリカ』。

「ここでシコンの試作機を失う訳にはいかねえしな。とりあえず、護衛機が健在のうちに辿り着かねえとやばいな。急ごうぜ」
 Anbar(ga9009)の機体はシラヌイ改『アルタイル』。

「試作機は、もう実戦に耐える完成度なのか? 興味深いが、今は勇ましい技術者殿のレスキューが先決だな!」
 孫六 兼元(gb5331)の機体はオウガ『天之尾羽張(アメノオハバリ)』。

「やらせるわけにはいかない――大空を駆けろ、イクシオン!」
 夢守 ルキア(gb9436)の機体は骸龍『イクシオン』。

 8機のKVは一斉にブーストを吹かした――。

●VSタロス
 『XGSS−03A シコン試作2号機』と、残存の護衛機であるシラヌイ改2機は‥‥
 5機のタロスと交戦中であった。5機のうち1機はトサカが付いており、有人機と思われる。
 巨大なウォーアックスを振り回し、攻撃を仕掛けてくる。
 相当に手強い‥‥戦闘を初めて経験する青樹・由香子もそれはひしひしと感じた。
(このままでは‥‥)

 そのとき、航空機の飛来する音が轟く。――傭兵部隊の到着である。
「騎兵隊のお出ましだ」
 アンジェリナの声が外部スピーカーから響く。
 傭兵部隊は全機降下。
「ナンバリング完了。データを転送するよ」
 ルキア機は垂直着陸しつつ敵をナンバリング。データを味方全機へ送る。
 傭兵部隊全機、歩行形態に変形。戦闘への介入を開始。

「タロスがひのふの‥‥沢山だな。ま、狙いが分かってる以上、好きにはさせねえっての」
 我斬機が機拳『G・シュラーク』を構え、ファイティングポーズを取る。

「どうやら‥‥間に合ったようですね」
「シコンはお前らには渡さない!」
 なでしこ機とAnbar機から声。

「一旦下がり、仕切り直せ! キミには、やって欲しい事がある!」
 続いて兼元機から通信。由香子は気分が高揚しているのか「でも‥‥!」と言う。
 そこへアンジェリナが――
「落ち着いて聞いてくれ」
 と、諭すような口調で通信を送る。
「その力が、その剣があればこの場を切り抜けられる可能性がある‥‥協力してくれ」
 アンジェリナはシコンの固定武装である高出力レーザー砲『種子島』の実戦での使用‥‥
 その旨を由香子に説明する。少しだけ間があった後、由香子は承諾した。

「じゃあ、いくぞ!」
 我斬機、前進。一番近い敵機に機体を向ける。

 なでしこ機、DR−M高出力荷電粒子砲でタロス2に砲撃するが命中せず。
 しかし牽制が目的なので問題は無い。
 ブーストを使用し、敵との距離を詰める。

 ソード機、大きく移動。タロス1(有人機)の目の前に出る。
 95mm対空砲『エニセイ』をタロス1に連射、命中。
 タロス1、大ダメージ。

「派手に行こうか。デアボリカ、フルドライブ」
 悠機、ブースト+ブースト空戦スタビライザー+SESエンハンサーを使用。
 タロス1の背後に回りこみ、練剣『雪村』を振るい、連続で斬り付ける。撃破。

 Anbar機、前進。強化型ショルダーキャノンでタロス3に砲撃、命中。小程度のダメージ。

 ルキア機、ブースト使用。大きく移動し、シコン試作2号機の直衛に付く。
「シコンのパイロット、青樹・由香子、聞こえる? 私は傭兵のルキア。直衛と指示をするよ」
 由香子から「了解」との返答。

 兼元機、ブースト使用、前進。機槍『天雷』でタロス4に連続の突きを繰り出す。
 命中。タロス4は大ダメージ。

「G−M1マシンガンで牽制、練機刀『月光』で受防」
 ルキアからの通信。指示が来る。しかし――
「助けに来てくれたのは嬉しいけれど‥‥そこまで細かい指示は必要無い」
 由香子からはそのように返答くる。
 エミタAIによる補助のおかげで、由香子はルキアが想像していたよりも戦えていた。

 シコン試作2号機、超伝導アクチュエータVer.4使用。
 3.2cm高分子レーザー砲をタロス3に連続照射。
「貴女の指示に頼っていたら咄嗟の判断が遅れてしまう」
 命中。タロス3に中程度のダメージ。
「んー、まあそれならいっか‥‥」
 ルキアは頬に指を当て、首をかしげる。
 ‥‥戦闘ではその時その時の判断が重要になる。
 1秒遅れれば命に関わる、といった事も少なくない。

 アンジェリナ機、ブースト使用、突進。機剣『レーヴァテイン』でタロス5に斬撃。
 命中。タロス5は中程度のダメージ。



 タロス2、プロトン砲でルキア機を狙い、連射するがルキア機は全弾回避。

 タロス3とタロス4はソード機を前後から挟み撃ちにする。
 サーベルで何度も斬りかかってくるが‥‥ソード機は回避運動。命中せず。

 タロス5、サーベルでお返しとばかりに連続で斬撃を放ってくる。
 アンジェリナ機はすれすれのところで避ける。

●高出力レーザー砲『種子島』
 傭兵部隊の到着により戦況は一転。
 指揮官機と思われるタロスを撃破した事により敵は混乱。
 人類側に有利な状況となっていた――。

「いきます、由香子さん!」
「わかったわ!」
 なでしこから由香子へ通信。
 シコン試作2号機、ストライク・アクセラレータと超伝導アクチュエータVer.4を使用。
 なでしこ機、ファルコン・スナイプ改を使用。

「高出力レーザー砲『種子島』‥‥いきなさい!」
「DR−M・掃射モード‥‥いきます!」
 2人がトリガーを引いたのはほぼ同時だった。
 シコン試作2号機、高出力レーザー砲『種子島』を発射。タロス3、タロス4に対して攻撃。
 なでしこ機、DR−M高出力荷電粒子砲の掃射モードでタロス2、タロス3、タロス5に対して攻撃。

 高出力レーザー砲と高出力荷電粒子砲による十字砲火。
 光の本流に飲み込まれるタロス4機。

 追撃。
 シコン試作2号機、3.2cm高分子レーザー砲をタロス3、タロス4に照射、命中。
 なでしこ機もG−193レーザー砲をタロス2に連続照射、命中。
 タロス2、大ダメージ。
 タロス3、致命的なダメージ。
 タロス4、タロス5、大ダメージ。

 シコン試作2号機とマリアンデールによる掃射は、タロス4機に多大なダメージを与えた。



 我斬機、ブーストと超伝導アクチュエータVer.2を使用。前進。
 練鎌『リビティナ』を振るい、タロス2を連続で斬り付ける。
「ショーは終わりだ、見物料は支払って貰うぜぇ!」
 命中。タロス2、致命的なダメージ。

 ソード機、ブーストとPRMシステム・改を使用。
「PRM『アインス』!」

 悠機、レーザーガン『フィロソフィー』を連射し、ソード機を援護。

「このタイミングです! シャイニングヘキサグラム!!」
 ソード機、タロス4に接近。練剣『雪村』で六芒星を描くように斬り付ける。
 そして中心に『【OR】試作型女神剣「フレイア」』を突き刺す。
「浄化!!」
 タロス4は爆発。撃破。

 Anbar機、量産型機槍『宇部ノ守』の連続突きをタロス2に繰り出し、撃破。

 ルキア機、ピアッシングキャノンでタロス3に連続砲撃。
「守られるKVじゃダメだ、戦うKVじゃなきゃ」
 命中。タロス3、致命的なダメージ。
「骸龍は顕著だから、こんなに惹かれてるのかな。ね、イクシオン」

 兼元機、ブーストの上で【ツインブースト・OGRE/B】を使用。
「KV兵法・入身!」
 タロス3に肉薄。右脇腹に真デアボリングコレダーを連続で叩き込み、撃破。

「レーヴァテイン――フル・インパクト!」
 アンジェリナ機、タロス5に機剣『レーヴァテイン』で何度も斬撃を加え、撃破。

●帰還
 敵の襲撃部隊を撃破した傭兵部隊は、シコン試作2号機を近くのUPC軍基地まで護衛。
 元の護衛機であるシラヌイ改2機も同行。
 基地に到着すると、シコンの開発主任である草壁・誠十郎とその部下、南川・遥が出迎えた。

(ご無事で‥‥良かった‥‥)
 コクピットシートにもたれかかり、なでしこは目を瞑って胸に両手を当ててほっと息を付く。

「任務完了。ご苦労様、フレイア」
 ソードはコクピットを降りて、歩行形態の愛機の脚部装甲を撫でる。

 アンジェリナはベンチに座り、あごに手を当てて考え込んでいる。
「個人的に‥‥今回のバグアの襲撃が偶然か、それとも故意なのかが気になる」
 後者なのだとしたら、どこから新型機輸送の情報が漏れたのかが疑問だ。
「それに関しては調査を依頼しておくわ。内部にスパイがいないとも限らないし‥‥ね」
 隣に座る由香子が言った。さすがに疲労の色が見える‥‥。
 2人は会話をしながら温かいコーヒーを啜った。
 アンジェリナは由香子が戦闘に巻き込まれた事で、精神的ショックを受けているかもしれないと心配したが‥‥彼女は意外とタフらしい。
 まあ、新型機を守るために非戦闘員であるにも関わらず出撃するくらいの覚悟があるのだから当然かもしれないが。

「シラヌイS2型からシコンへのバージョンアップとかってやってくれんかね? 金とか沢山掛かっても良いから‥‥うん、無理だよね」
 我斬はシコンの開発主任を前にしてそのように言ってみたが‥‥自己完結する。
「ああ、無理だな」
 苦笑する誠十郎。

「ふう、FRの二の舞は避けられて何より‥‥」
 悠は滑走路にて、背中に両手を当てて沈み行く夕陽を眺めている。

「‥‥何とか護り切れたか。シラヌイドライバーの1人として、シコンの量産化が早く実現するように祈っているぜ」
 誠十郎にAnbarが言った。
「感謝するよ、シラヌイドライバー。その期待に答えないといけないな」
 2人はぎゅっと握手を交わした。

(さて、この一件で如何ほど開発に影響が出るのか‥‥)
 兼元は柄にも無く(?)愛機を見つめながら考えをめぐらす。
「いずれにせよ今回の戦いは、決して無駄では無いはずだ!!」
 彼はそう言ってガッハッハ!! と豪快に笑った。

「これ、シコンの戦闘を撮影した映像データだよ」
 ルキアが骸龍の偵察用カメラで記録したデータの入ったディスクを遥に渡す。
「ありがとうございます。これは‥‥参考になりそうですね」
「ふふ、いい機体に仕上がるといいね。でも私のイクシオンはまだまだ新型にも負けないんだからっ」
 ぺろりと小さく舌を出し、にっこり笑うルキアであった。