タイトル:【ODNK】戦女神3マスター:とりる

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 12 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/03/26 15:11

●オープニング本文


 α−01部隊駐屯基地――。
『次は君達の力も借りねばならん。すまないな』
「わかっております。叔父上」
 通信室で会話を行っている女性――と、モニターに映る男性。
 女性は高ノ宮・茜少佐。α−01部隊、通称乙女中隊の創設者だ。
 モニターに映る壮年の男性は森ノ宮・猛大佐。β−01部隊、KV連隊の総指揮官である。
『次の目標は飯塚市‥‥ついにここまで来たか』
「長かったですね‥‥」
『ああ‥‥』
 モニターに映る男性は感慨深そうに頷く。
 UPC軍は熊本決戦のときは逆に、九州バグア軍の喉元――春日基地へナイフを突きつけている状態だ。
『奴らを九州の地から追い出す日も遠くはない。もう一頑張り頼むぞ、茜ちゃん』
「了解しました。それでは現地でお会いしましょう」
『うむ』
 そうして通信は切れた――。

 基地・格納庫――。
 ハンガーに固定され、整備中の愛機、GFA−01S2シラヌイS2型を見つめる少女の姿があった。
「‥‥」
 無言で機体を見つめる。彼女の名は早乙女・美咲。α−01部隊、通称乙女中隊の隊長。
 初めはこの機体に振り回されたが‥‥今では何とか思い通りに扱う事が出来るようになった‥‥。
「早乙女」
 背後から声がかけられた。美咲は振り向く。――そこには片瀬・歩美大尉の姿があった。
 彼女は美咲にとっての恩師であり、心から慕っている人物である。
 片瀬大尉は美咲の隣までやってきて、手すりに肘を掛けて同じように機体を見つめた。
「早乙女もなかなかやるようになったわね。佐賀空港奪還作戦のとき、見ていたわ」
「大尉‥‥」
「強化型ゴーレムと互角に渡り合うんですもの。驚いた」
「いえ‥‥それは大尉のおかげです」
 それ相応の訓練は積んできたが、やはり教官を務めてくれた片瀬大尉の力が大きい。
「ふふ‥‥そう言ってくれると嬉し‥‥くはないかな‥‥」
「えっ!?」
(そんな‥‥! 私、がんばったのに‥‥!)
 褒めてくれないのだろうか‥‥? 美咲はしょんぼりする。
「だって、あなたくらいの年頃の子は本来、青春を謳歌しているはずなのに‥‥戦争ばかりで‥‥」
 今度は片瀬大尉が俯いた。
「いいえ! 大尉と少佐はいつも私達のことを思ってくれているじゃないですか! お花見をしたり、海に行ったり、クリスマスパーティーをしたり‥‥想い出はたくさんあります! ちゃんと青春してます!」
「早乙女‥‥」
「だから、私達は全力で戦えるんです! 日本‥‥いえ、世界中の子達が青春できるような世界にするために!」
「‥‥ふぅ。どうやら杞憂だったみたいね」
「そうです! 私達は大丈夫です! むしろ恵まれているほうだと思います」
 美咲はにっこりと笑って見せた。
「良かった‥‥」
 2人は微笑み合う。
「早乙女の言うような世界も、もう夢物語ではなくなってきている。そのためにも、頑張らなきゃね」
「はい!」
 美咲はびしっと敬礼した。

 ブリーフィングルーム――。
 集まった隊員達を前に、高ノ宮少佐が口を開いた。
「それでは作戦の内容を説明する」
 高ノ宮少佐はスクリーンに映された地図をポインターで指し示す。
「今回の作戦目標は、福岡県飯塚市」
 地図は真っ赤に染まっている――それが意味するものは――
「飯塚市は現在バグアの占領地域となっている。そこへ我々とβ−01部隊が協力して殴り込みを掛けるわけだ」
 α−01部隊が敵占領地域へ攻撃を掛けるのは初めてのことだった。
「β−01部隊が敵の拠点である飯塚駐屯地を攻撃し、制圧。我々が担当するのはここだ」
 高ノ宮少佐はビシィ! と地図の一点を指す。
「ワーム工場。目的はこれの破壊、もしくは確保だ。――確保する理由はわかるな?」
 その問いにB小隊隊長、九条・冴が挙手する。
「九条」
「はい。慣性制御装置ですね」
「その通りだ。慣性制御装置はこれからますます必要となる。数を揃えておいて損はない。‥‥まあ、確保は出来ればの話だ。優先すべきは破壊。確保を優先して作戦が失敗しては元も子もないからな」
「了解です」
 冴が答える。
「以上で説明を終わる。各自準備に取りかかれ」
「了解しました!!」
 一同は力強く敬礼。こうしてまた、人類の反攻作戦が開始される――。

●参加者一覧

時任 絃也(ga0983
27歳・♂・FC
漸 王零(ga2930
20歳・♂・AA
セージ(ga3997
25歳・♂・AA
王 憐華(ga4039
20歳・♀・ER
百瀬 香澄(ga4089
20歳・♀・PN
ヴァレス・デュノフガリオ(ga8280
17歳・♂・PN
瑞姫・イェーガー(ga9347
23歳・♀・AA
赤宮 リア(ga9958
22歳・♀・JG
米本 剛(gb0843
29歳・♂・GD
イスル・イェーガー(gb0925
21歳・♂・JG
ティリア=シルフィード(gb4903
17歳・♀・PN
奏歌 アルブレヒト(gb9003
17歳・♀・ER

●リプレイ本文

●飯塚市・ワーム工場攻略作戦
 飯塚市攻略作戦が開始され――砲声と爆音が轟く。
 傭兵部隊、α−01部隊、α−02訓練小隊は市内の敵がある程度片付くまで市外で待機中。

「それじゃ、行こうか。我が比翼。帰ったら一緒に風呂にでも入ってゆっくり休もう」
「いやん、零のえっち♪ もちろんOKですけど」
「それは頑張った後のご褒美ですね‥‥行きましょう、零さん、憐華さん」
 雷電改2『アンラ・マンユ』に搭乗する漸 王零(ga2930)が言うと、2人の妻がそれぞれ返事をする。
 王 憐華(ga4039)と赤宮 リア(ga9958)だ。まさに両手に花といったところだろうか。
「久しぶりに夫婦三人一緒の依頼ですね‥‥ちょっとわくわくしてきました♪」
 憐華の機体はガンスリンガー『ガスヴァ』。
(やはり祖国での戦いは特別な想いを感じてしまいます。日本からバグアを追い出す為の大事な一戦、負けられませんね。零さん、憐華さんと一緒なら、きっと上手くやれるハズ!)
 リアの機体はアンジェリカ『熾天姫 (Rote Seraphim)』。

「ようこそ、地獄の最前線へ。嵐を耐え抜けた者だけが根を張り大樹になれる。気張れよ」
 セージ(ga3997)がα−02訓練小隊の4名に通信を送り、発破をかける。
 元気よく「はい!」と返事をする4名。
 今回の作戦は敵戦力で言えば、前回訓練小隊が経験した佐賀空港奪還作戦に比べればマシなほうだ。
 しかし戦場である以上、命を落す危険はある。セージの言うように気を引き締めなければならない。
 セージの機体はシュテルン・G『リゲル』。

「戦果を上げれば乙女中隊の評価も上がるだろう♪ それで戦場に引っ張り蛸とかになると困るけど」
 ヴァレス・デュノフガリオ(ga8280)の機体はシュテルン・G『Deneb Cygni』。
 ヴァレスは乙女中隊の評価を気にしつつも、更に過酷な戦場へ投入されるのではないかと心配する。

「佳境、ってとこだな‥‥」
 ロビン改『Tomboy Lady』のコクピットで百瀬 香澄(ga4089)が呟く。
「ここで苦戦もしてらんないし、さっさと終わらせて、手土産貰って帰ろうか。な、冴」
「ええ、素早く工場の防衛戦力を無力化できれば良いのですが‥‥」
 α−01部隊B小隊隊長、九条・冴が答えた。今回の作戦は時間との戦いになる‥‥。
「私らなら出来るさ」
「そうですね。香澄さんが一緒なら心強いです」
 2人はメインモニターに映る互いの顔を見て微笑んだ。

「イスル、頑張ろうね」
 アッシェンプッツェル『ヤクシニー』に搭乗する瑞姫・イェーガー(ga9347)が言う。
「うん、バグアからこの街を取り戻すんだ。‥‥瑞姫はくれぐれも無理をしないように」
 夫であるイスル・イェーガー(gb0925)が釘を刺した。妻は「了解」と苦笑気味に答える。
 イスルの機体はディアマントシュタオプ『ラーゼン』。

(α−02は訓練部隊だったか、どの程度の錬度かは知らんが、戦場に出て良いレベルと考える他ないか)
 そのように考える時任 絃也(ga0983)の機体はR−01改。
「此方の動きに連動して支援し貰えると助かる」
 絃也はα−02訓練小隊の教官である片瀬・歩美大尉へ通信回線を開く。
「わかりました。我々はお二方の後方から支援を行います」
 すぐに返答。作戦中に支援要請をしようとしていた絃也だったが、やはり確認は作戦前のほうが良い。

「やはり‥‥若過ぎる方々が戦うのは思う事がありますね。その為にも‥‥」
 オウガ『鬼獅子』に搭乗する米本 剛(gb0843)。彼は戦場へ送られる少女達を想い、心を痛めていた。
 いざという時は同じ奇襲班である歩美とα−02訓練小隊のメンバーを死守する覚悟である。

「福岡、鳥栖‥‥そして飯塚」
 コクピットで難しい表情をしているティリア=シルフィード(gb4903)。
 機体はスピリットゴースト『Merkabah』。
(九州のキメラプラント攻略も大詰めに来ているし、ここで一気に畳み掛けて、慣性制御装置も奪取する事が出来れば万々歳)
(ただ、二兎を追うものは一兎も得ず‥‥と言います。まずは拠点制圧が最優先、ですね)
 欲を出せば痛い目を見るかもしれない。ティリアは自分自身に言い聞かせた。

「‥‥慣性制御装置‥‥今後の為‥‥奪取したい所です」
 奏歌 アルブレヒト(gb9003)の機体はガンスリンガー『Schwalbe・Schnell』。
 慣性制御装置はいくら確保しても損は無い。数があればあるほど良い。



 数十分後。司令部から――
『飯塚市内に展開する敵戦力の約20%を撃破。β−01部隊第1大隊は飯塚駐屯地へ攻撃を開始。これより傭兵部隊、α−01部隊、α−02訓練小隊はワーム工場へ攻撃を開始せよ』
 との指令が下る。
「α01リーダー了解。これより作戦行動を開始します」
 α−01部隊、通称乙女中隊の隊長である早乙女・美咲(gz0215)が宣言。
 傭兵部隊、α−01部隊、α−02訓練小隊のKV29機は飯塚市内への突入を開始した――。

●陽動
 工場に接近し、敵を引き付ける役割を受け持つ陽動班のKV16機。
「敵影を確認。正面の敵戦力はタロス3機、ゴーレム8機、タートルワーム6機です」
 憐華からの報告。陽動班はA・Bに分かれて攻撃を開始。

 陽動班A――
 傭兵:王零、憐華、リア
 α−01部隊A小隊:早乙女・美咲、舞浜・ちずる、三門・香苗、三門・早苗

 担当する敵はタロス2機、TW3機、ゴーレム4機。
「ゴーレム4機は私達に任せて下さい」
 α−01部隊A小隊長の美咲より通信。
「了解した。タロスとTWは任せてもらおう」
 王零が返答する。



「この程度の数ならば‥‥陽動などと言わず、一気に殲滅させる! コード【TA】アクティブ‥‥行くぞ、2人とも!!」
「了解しました! ええ‥‥じゃあ、まずは私から!!」
 憐華機、スナイパーライフルAAS−10kvを構えて狙撃による支援を開始。
 王零機、ブースト使用、猛烈な勢いで突進。ジャイレイトフィアーでタロス1に連続の突きを繰り出す。
「はあああああっ!!」
 穴だらけにされたタロス1は機能停止、撃破。
 試作型『スラスターライフル』をタロス2に対して連射。
「こいつはおまけだ!」
 命中。タロス2は装甲を貫かれ内部にまでダメージが及び致命的なダメージ。
「了解! トリニティ・アサルト参ります!!」
 リア機、SESエンハンサーとブースト使用、王零機に続き、前進。
 タロス2に接近すると、練剣『雪村』の超濃縮レーザーブレードを振り下ろし、半身を焼き斬る。
「再生する暇なんて与えませんよっ!!」
「生体部品ごと‥‥打ち貫く!!」
 王零機、下段から機杭『エグツ・タルディ』を全弾叩き込み、撃破。

「まだまだ! 舞い踊れ! 熾天姫!!」
 リア機、移動、エナジーウィングでTW2を膾斬りにし、一撃で撃破。
 移動、再度エナジーウィングでTW3を斬りつけ、これも一撃で撃破。
「これで最後‥‥いけっ!!」
 TW1をロックオン。プラズマリボルバーで射撃、命中。
 プラズマ弾はTW1の甲羅を融解させて貫き、大穴を空け、致命的なダメージを与えた。

 憐華機、ブースト使用、前進。DFスナイピングシュート使用。
「私だって敵を倒せるはず‥‥『デュアルフェイスシステム・スナイピングシュート』起動!!」
 兵装を電磁加速砲『ファントムペイン』に切り替えてTW1をロックオン。
「‥‥ガスヴァ‥‥敵を撃ち貫いて!!」
 トリガーを引く。砲撃。――命中。TW1は満身創痍で瀕死状態。
「まだだ‥‥『タルディ・ブレイク』‥‥遠慮はいらん‥‥全弾持っていけ!!」
 両肩の『【OR】強襲用追加ユニット「荒狂嵐」』のコンテナからベアリング弾を全弾発射。
 直撃を受けたTWは爆発、撃破。

 α−01部隊A小隊はゴーレム4機と戦闘を継続中。
「A小隊のフォローに回るぞ!」
 王零が2人の妻に通信を送ると「了解!!」との声が返って来た。



 陽動班B――
 傭兵:セージ、香澄、ヴァレス、瑞姫、イスル
 α−01部隊B小隊:九条・冴、神楽坂・有栖、犬飼・歴、坂城・慧子

「冴、準備できてるかい? こっちはいつでもいけるぞ」
 香澄が言った。担当する敵はタロス1機、TW3機、ゴーレム4機。
「準備は出来ています。ゴーレムは我々が引き受けます」
「わかった。私は冴を信じてるからな。‥‥さて、一丁やりますか!」
 α−01部隊B小隊の冴からの通信に答える香澄。



 ヴァレス機、前進。TW4をロックオン。
「目標確認。狙撃をする」
 8.8cm高分子レーザーライフル、通称『アハト・アハト』で狙撃、命中。リロード。
 レーザーはTW4の甲羅を貫き、大ダメージを与えた。
「鈍間な亀だ。当てるのは容易い」

 香澄機、マイクロブースター使用、前進。タロス3をロックオン。
「派手にやってこその陽動ってことで――SESオールグリーン、ターゲット補足!」
 DR−2荷電粒子砲のトリガーを引く。タロス3に極太の光条が放たれた。命中。
 タロス3の外装を融解させ、中程度のダメージ。

 セージ機、前進。試作型『スラスターライフル』でタロス3に射撃、命中。
「残念。ここは俺の間合だ」
 タロス3は装甲を削られ、中程度のダメージ。

 イスル機、機動力を生かして大きく前進。タロス3をロックオン。
 トリガーを引き、レーザーガン『デルタレイ』で射撃、命中。
「‥‥こっちだって伊達で新型を出しているわけじゃないんだよ」
タロス3は装甲が融解し、大ダメージ。

 瑞姫機はイスルに続いて前進。
「イスル、前に出るよ。援護お願い」
 すぐさま夫から「了解」との返答。



 タロス3はTW3機を置いて前進。サーベルでセージに連続で斬りかかってくるが‥‥
「怖いぐらい鋭い狙いだな。しかし、正確過ぎだ。逆に読みやすい」
 セージ機は回避運動。命中せず。
 TW4は重機関砲を香澄に連射、砲弾は香澄機を捉え、命中。
 香澄機は機盾『レグルス』で防御。中程度のダメージ。
「くぅっ‥‥やってくれるね」
 TW5は重機関砲を瑞姫機に連射、避け切れずに命中。
 瑞姫機は機盾『レグルス』で防御。中程度のダメージ。
 TW6も重機関砲を瑞姫機に連射、回避行動を取るがまたも弾幕を避け切れず、命中。
 瑞姫機は機盾『レグルス』で防御するが大ダメージを受けてしまう。
「うわあああ!? ううぅ‥‥ヤクシニーの初陣なのにさ‥‥ボクがこんな状態でゴメン‥‥」
 コクピットで瑞姫は、負傷した自分の身体を抱き締める‥‥。



 ヴァレス機、8.8cm高分子レーザーライフルでTW4を狙撃、リロード、もう1度狙撃。
「‥‥!」
 2発とも命中。TW4の甲羅には風穴が空けられ、致命的なダメージ。

 香澄機、レーザーカノンをTW4に照射。
「いけるか‥‥?」
 命中、TW4は耐久限界に達し、爆発。撃破。
「まだだ!」
 旋回し、DR−2荷電粒子砲をタロス3に撃ち放つ。
 命中。タロス3は外装を吹き飛ばされ、致命的なダメージ。

 セージ機は機刀『建御雷』を振るい、タロス3に2度斬りつける。
「一緒に踊ろうぜ。死と破壊が奏でる舞踏曲を」
 大きな斬痕が刻まれたタロス3は機能停止。撃破。
「おっと、まだ舞踏曲は終わらないぜ?」
 TW5をロックオン。プラズマライフルで射撃、命中。TW5は甲羅が融解し大ダメージ。

「瑞姫‥‥!!? くそっ、やらせはしない‥‥!!」
 イスル機、EBシステム使用。TW5をロックオン。
 レーザーガン『デルタレイ』のトリガーを連続で引く。
 レーザーは狙い違わずTW5を貫き、撃破。

 瑞姫機、TW6をロックオン。レーザーライフルWR−01Cを連射。
「この距離なら‥‥!!」
 命中。TW6、装甲が融解。大ダメージ。



 TW6は損傷している瑞姫機に狙いを付け、プロトン砲を連射してきた。
 回避が間に合わずに命中。
「切り札はまだある‥‥! ツヴェルフウァロイテン!!」
 瑞姫は咄嗟にツヴェルフウァロイテンを使用。
 ‥‥大破は免れたものの、瑞姫機は致命的なダメージを負ってしまう‥‥。
「瑞姫ぃーーー!!」
「大丈夫‥‥だよ‥‥。生きてる‥‥から‥‥」
 愛する夫の声に、瑞姫は弱弱しく答えた。



 ヴァレス機は8.8cm高分子レーザーライフルをリロードしつつ前進。
 香澄機は旋回、TW6をロックオン。DR−2荷電粒子砲を発射。
「これで最後だ。昇天しな」
 光条はTW6を貫き、撃破。

 α−01部隊B小隊はゴーレム4機と交戦中。
「冴! 今援護に行くからな!」
 香澄が言いながら機体を躍らせる。

●奇襲
 陽動班の作戦は成功。敵が引き寄せられ、防備が薄くなっている。
 伏せていた奇襲班はA・Bに分かれ側面から攻撃を開始。

 奇襲班A――
 傭兵:ティリア、奏歌
 α−01部隊C小隊:森ノ宮・柚葉、森ノ宮・瑞葉、森ノ宮・紅葉、森ノ宮・双葉

 敵はTW2機、ゴーレム4機。
「火力支援で道を拓きます。柚葉さん、お願いします!」
 ティリアが声を上げる。
「了解しました。ゴーレムはお任せを」
 柚葉が返答。ゴーレム4機はα−01部隊C小隊が担当する。



 ティリア機はTW7をロックオン。ファルコン・スナイプ使用。
「砲撃支援なんてさせない‥‥! これで、落ちろッ!」
 200mm4連キャノン砲で連続砲撃。命中。
 TW7は外装を吹き飛ばされ、大ダメージ。

 奏歌機はTW8をロックオン。
「‥‥あれを無力化すれば」
 プロトン砲の砲塔を狙い、レーザーガン『フィロソフィー』を連射。
「‥‥無人機なら‥‥工場を攻撃しないよう‥‥プログラミングされていると‥‥良いのですが」
 命中。TW8の砲塔がレーザーに貫かれて爆発。更に誘爆し、TW8は致命的なダメージ。



 TW7はプロトン砲でティリアに砲撃を行ってくる。
 命中。ティリア機は表面装甲が融解し中程度のダメージ。
「くっ、この程度で‥‥」
 砲塔が破壊されボロボロのTW8は敵を重機関砲の射程に収めるべく、のろのろと前進。



 ティリア機、ファルコン・スナイプ使用。200mm4連キャノン砲で再度連続砲撃。
「残り全弾発射! いけっ‥‥!!」
 命中。爆炎が巻き起こる。TW7は致命的なダメージ。

 奏歌機はTW8に対し、レーザーガン『フィロソフィー』を連射。
 レーザーは甲羅を貫いた。爆発。TW8を撃破。
 続いてTW7をロックオン。レーザーガン『フィロソフィー』で射撃。
「これで‥‥トドメです」
 命中。TW7は爆発。撃破。

 αー01部隊C小隊はゴーレム4機との戦闘中。優位に進めている。
「こちらはこれで終わりですね‥‥C小隊の援護に向いましょう」
「‥‥わかりました」
 ティリアの言葉に頷く奏歌。



 奇襲班B――
 傭兵:絃也、米本
 α−02訓練小隊:片瀬・歩美、横山・利瀬、岩崎・智里、工藤・麗美、山口・麻奈

 敵はタロス2機、TW2機、ゴーレム2機。
「予想より少ないか‥‥?」
「陽動が上手くいっているのでしょうな」
 絃也の言葉に米本が答える。
「ゴーレム2機の相手はこちらで行います。お二方は他の敵を」
 歩美からの通信。
「ゴーレムと正面からやり合うのは危険です‥‥!」
「大丈夫。剛さん、私達を信じて」
 米本が言うが、歩美は冷静に返してくる。
「‥‥。解りました。しかしそちらが危なくなればすぐに駆けつけますよ」
「うふふ、頼もしいですね。それでは」
 通信終了。戦闘開始。



 絃也機、ブースト使用、前進。タロス4をロックオン。
「‥‥捉えた。撃つ」
 トリガーを引いて試作型『スラスターライフル』を連射。
 砲弾が次々と命中しタロス4は致命的なダメージ。

 米本機、ブースト使用、前進。『ツインブースト・OGRE/B』を使用。
「出し惜しみせず‥‥押させて頂く! やあああっ!!」
 ゼロ・ディフェンダーでタロス5に連続で斬撃を加える。命中。
 装甲を斬り裂かれたタロス5は大ダメージ。



 タロス4は前進、サーベルで絃也機を斬り付けて来る。絃也は回避運動。命中せず。
 タロス5も前進、サーベルで米本機に斬撃を放ってくるが‥‥
 『ツインブースト・OGRE/B』で回避が上昇している米本機には命中せず。
「踏み込みが甘い! 当たりませんよ」
 TW9は重機関砲で弾幕を展開。絃也機は回避運動。命中せず。
 TW10も重機関砲で弾幕を展開。米本機は全て避け切った。TW10の攻撃は命中せず。



 絃也機は大剣‥‥デモンズ・オブ・ラウンドを両手に握って振り被る。
「はあああああっ!!!!」
 気合いと共にタロス4に強烈な斬撃。一刀両断。タロス4は爆発。
 続いてTW9をロックオン。試作型『スラスターライフル』で射撃。
 命中。砲弾はTW9の甲羅を突き破り、撃破。

 米本機、再度ブーストと『ツインブースト・OGRE/B』を使用。
「せやああああ!!」
 ゼロ・ディフェンダーでタロス5に連続斬りを放つ。
 命中。タロス5はバラバラに斬り裂かれ、機能停止。撃破。
 米本機はそのままTW10に接近。



 TW10は慣性制御を用いて高速回転を開始。近接戦用ニードルで米本機を斬り付けて来る。
「むぅっ‥‥!?」
 米本は咄嗟に機体を動かして回避。命中せず。



 絃也機、TW10に肉薄。デモンズ・オブ・ラウンドで十字に斬り付け、最後に突き刺した。
 TW10は痙攣しつつスパークする‥‥。大剣を引き抜き、絃也機は後退。
 TW10は大爆発を起こした。撃破。

 α−02訓練小隊はゴーレム2機と戦闘。1機は既に撃破していた。
 現在は残る1機を包囲しつつ、集中攻撃を行っている。
「心配する必要はありませんでしたな」
「だから言ったでしょ」
 米本と歩美の会話である。

 こうして傭兵部隊、α−01部隊、α−02訓練小隊はワーム工場の防衛戦力を殲滅。
 無力化する事に成功した。

●突入
 ワーム工場の防衛戦力の無力化に成功したα−01部隊、α−02訓練小隊は警戒しつつ一旦合流。
 工場内に突入し制圧する班と、留まって周辺を警戒する班とに分かれる。
「外の警戒は俺達が引き受けるが」
 乙女中隊に工場への突入を提案するヴァレス。
 このように、簡単な話し合いが行われ、すぐさま編制が決まった。

 突入班:
 漸 王零
 百瀬 香澄
 赤宮 リア
 米本 剛
 ティリア=シルフィード
 奏歌 アルブレヒト
 α−01部隊A・B小隊

 合計14名。

 残留・警戒班:
 時任 絃也
 セージ
 王 憐華
 ヴァレス・デュノフガリオ
 瑞姫・イェーガー
 イスル・イェーガー
 α−01部隊C小隊
 α−02訓練小隊

 合計15名。

 突入班の14名はKVを降り、破壊した外壁の穴から生身でワーム工場へ突入する――。



 工場内の通路を走る14名。
 通路の天井には警備システムと思われるガンタレットが設置されていたが銃撃ですぐさま破壊していく。
「元の見取り図によれば‥‥制御室と指令室が存在するはずですが」
 出撃前に入手しておいた資料を見ながら米本が言った。
 ‥‥このワーム工場は、元々は銀河重工の工場だった。
 しかしバグアに占領されてしまい、現在はワーム工場として稼動している。
 ちなみにかなり改造されているようで‥‥元の見取り図はあまり当てにならないかもしれない‥‥。
 壁や床を這う、不気味な蛇のような無数のケーブルのようなものを見て、米本はそう思った。
「‥‥過去のこういったワーム工場攻略のデータによると、指令室には指揮官‥‥もしくは工場長のような‥‥ボス的なバグアが存在する可能性が高そうです」
 淡々と喋る奏歌。
「じゃあ私達が指令室に向かったほうが良さそうだな」
 香澄が冴の顔を見る。
「ええ、戦闘能力に関しては傭兵のほうが高いでしょう」
 頷く冴。
「それでは私達、α−01部隊A・B小隊が制御室の制圧へ向います。指令室の制圧は傭兵さん達に任せました!」
「バグアは機密保持の為に自爆を多用します。早くしないと‥‥この工場自体が爆破されてしまうかもしれませんっ。急ぎましょうっ」
 エクセレンターの美咲と、サイエンティストのちずるが言った。
「つまり‥‥我らは頭を叩けばいいんだな? 了解した」
「任せて下さい!」
 王零とリアの夫婦が武器を構える。
「やはり時間との戦いですね‥‥行きましょう。乙女隊の皆さんもお気をつけて!」
 ティリアの声で突入班は二手に分かれ、行動を開始した――。



 通路を抜け、広い部屋に出た傭兵達。ごうんごうんと機械の稼動音が聞こえる‥‥。
 周りは用途不明の機材だらけ。あちこちにケーブルらしきものが這っているのは通路と同じだが‥‥。
「きゃっ!?」
 一歩踏み出したリアが思わず声を上げた。足元にぶにょっとした感覚があったのだ。
「おっと。大丈夫か?」
 体勢を崩したリアを王零が支えてやる。
「ありがとうございます、零さん。でも‥‥その‥‥」
 頬を赤らめてもじもじするリア。
「どうした?」
 リアの身体を支えたまま王零は首をかしげる。
「手が‥‥お尻に‥‥」
「あっ! すまん。咄嗟の事だったからな」
 ぱっと手を離す王零。
(零さんに触れられるのは嬉しいんですけど‥‥今はそういう状況じゃないですし‥‥)
 などと考えるリア。今は重要な任務中なので、これ以上は自重する。
 


 どうやら床には生体部品のようなものが使われているらしい。歩く度に不快感を覚える。
「‥‥‥‥ここはワームの生産ラインでしょうか?」
 周りを見回す奏歌。床は黒く、踏んだ感触はぶにょっとしており、壁はうねうねしたケーブルだらけ。
 そして部屋の中は用途不明の機材だらけ。‥‥人類には理解し難い構造をしているようだ。
 そのとき――部屋に警報が鳴り響いた。
 警報と共に黒いマスクとアーマースーツを装備した強化人間らしき人型のバグア兵が数名出現。
 光線銃を連射してくる。傭兵達はそれぞれの武器を手に、応戦――。



 ――若干苦戦したものの、数分も経たずにバグア兵全員を撃破。
「簡単に聞くから簡潔に答えろ。ワームはどこだ?」
 と、香澄が尋ねてみたが返答は無く、問答無用で攻撃してきたのでこちらも全力で迎撃。
 傭兵の大半は上級クラス、そうでなくても歴戦の勇士である。
 バグアの一般兵ごとき敵ではなかった。‥‥傭兵達は指令室を目指し、また走り出す。



 しばらく進むと、目的の指令室らしき場所が見えた。
 傭兵達は扉を破壊して一気に突入。
「‥‥!?」
「どうも、『泥棒』です」
 米本はにやりと笑う。
「貴様らが侵入者か‥‥」
 そこに居たのは‥‥資料で見かけられる、一般的な『バグア』だった。
 身体中を甲殻に覆われた異星人をヨリシロとしたバグア‥‥。
「あなたが責任者ですかな?」
 米本が問う。
「その通りだ」
 返答と同時に武器を構える傭兵達。しかし――
「動くな」
 バグアが言った。手にはスイッチらしきものを持っている。
「これを押せば工場が爆破される。一緒に消し飛びたいのか? 速やかに武器を捨て――」
 バグアがそう言おうとした瞬間。
「――やらせないよ」
 香澄が双槍『連翹』を、スイッチを持ったバグアの腕に突き刺していた。
 【瞬天速】を使用した目にも留まらぬ攻撃。バグアはスイッチを取り落とした。
「やあっ!」
 リアがエネルギーガンを放ち、それを破壊。
「グギギ‥‥貴様ら‥‥!!」
 流石に焦った様子のバグア。
「これで容赦する必要は無くなったな」
 魔剣『ティルフィング』を構える王零。
「御覚悟を!」
 炎斧『インフェルノ』を振り上げる米本。
「一瞬で終わらせます‥‥!」
 両手の二刀小太刀『永劫回帰』を光らせるティリア。
 傭兵達がじりじりとバグアへ迫る。そして――様々な暴力的な音と、断末魔が響いた。



『工場』『制圧』『成功』
 【情報伝達】で外に居る残留・警戒班の憐華に連絡する奏歌。
 そしてその報せはすぐ全員に伝えられた。
 ‥‥制御室へ向った乙女隊も、そこに居たバグアを瀕死まで追い詰めて脅し‥‥
 製造中のものも含めた工場内にあるヘルメットワームの自爆装置を全て解除させていた。

 工場内のバグアを全て始末し、突入班が全員脱出した後、KVで工場の屋根を慎重に破壊。
 HW数機を確保する事に成功した。

 β−01部隊のほうも、少なからず損耗したものの、飯塚駐屯地を制圧。
 こうして攻略作戦は成功。飯塚市はバグアの手から解放されたのだった。