タイトル:南瓜の日マスター:とりる

シナリオ形態: イベント
難易度: 普通
参加人数: 25 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/11/10 10:39

●オープニング本文


 ラストホープの商店街に軒を構える『フェルマータ』という名のメイド喫茶。
 決して大きいとは言えないものの常連客に支えられ、今日も今日とて営業中。

 店内の一角――
「おぉ、これ見て! ハロウィンキャンペーンだって!」
 白衣を羽織った巨漢の客が声を上げる。
「ハロウィンキャンペーン‥‥? なになに? メイドさん達がコスプレをするのか‥‥」
 同じく白衣を羽織った無精ひげの客がコーヒーを啜りながら店内に貼られたチラシに目をやる。
 メイドさん達は普段からコスプレしているではないか! との声もありそうだが、否である!
 メイドさんはメイドさんという職業なのだ。決してコスプレではない。
 『ご奉仕の精神』を持ってさえいれば、メイドのコスプレをしたウェイトレスではなく、メイドさんなのだ。
 ‥‥とは、フェルマータの人気No.1、筆頭メイド、ミカ・プライエル(gz0357)が常日頃から語っていることである。
 新人のメイドが入ってくると、まずこの精神を叩き込まれるのだそうな。
「コスプレか‥‥面白そうね」
 白衣の下に改造制服とショートパンツ、黒のパンティストッキングを穿いた女性客がコーヒーに角砂糖を二つ入れながら言った。ミルクは入れないタイプらしい。
「ハロウィンのコスプレってことはアレだよね。ヴァンパイアは鉄板! ハイレグのレオタード‥‥琴音たんのナイスバディにはすごく似合いそうだお‥‥ハァハァ‥‥。もう堪りません!」
 突然興奮する巨漢の客。ちなみに琴音とはフェルマータのメイドさんの一人である。
「HENTAI自重」
 冷たい視線を向ける改造制服の女性客。
「まったくお前は幸せな奴だな‥‥」
 無精ひげの客はやれやれと言った感じで、オムライスをスプーンで口に運び、もくもくと頬張る。
「お待たせいたしました、栗ご飯セットです♪」
 そこへ改造制服の女性客の元に、レタス色の髪をしたメイドさんが注文の品を銀のトレイに乗せて運んできた――。


 閉店後。集まったメイドさん達を前に、店長が口を開く。
「いよいよ明日から『ハロウィンキャンペーン』が開催されるわ‥‥。前回大好評だったミカちゃん提案の『じめじめをぶっとばせキャンペーン!!』に負けないよう、頑張って頂戴!」
 メイドさん達は「は〜い!」と答える。
「ご主人様達に楽しんでいただけるよう、気合いを入れていきましょう」
 筆頭メイドのミカからも一言。今度は「おー!」と声が上がる。
「ULTに臨時の店員さん募集の依頼もしましたし、賑やかになるといいですね」
「ええ、そうね」
 微笑み合うミカと店長。果たして今年のハロウィンはどうなるのだろうか‥‥。

●参加者一覧

/ 神崎・子虎(ga0513) / 弓亜・優乃(ga0708) / 終夜・無月(ga3084) / Letia Bar(ga6313) / L3・ヴァサーゴ(ga7281) / Cerberus(ga8178) / 伊万里 冬無(ga8209) / 夜十字・信人(ga8235) / 瑞姫・イェーガー(ga9347) / 最上 憐 (gb0002) / 大鳥居・麗華(gb0839) / イスル・イェーガー(gb0925) / 紅月・焔(gb1386) / RENN(gb1931) / 千早・K・ラムゼイ(gb5872) / アリステア・ラムゼイ(gb6304) / 柚紀 美音(gb8029) / 来栖・繭華(gc0021) / ソウマ(gc0505) / ユウ・ターナー(gc2715) / フランエール(gc3949) / ティームドラ(gc4522) / 緋本 かざね(gc4670) / リズレット・B・九道(gc4816) / パトリック・メルヴィル(gc4974

●リプレイ本文

●ハロウィンコスの店員さん大集合!
 開店前。店内にはハロウィンをイメージした、思い思いのコスプレをした臨時の店員さん達が集まっていた。

「今日は宜しくお願いします‥‥」
 筆頭メイドのミカ・プライエルに挨拶する終夜・無月(ga3084)。
「ええ、こちらこそ。頑張って下さいね」
「はい‥‥。誠心誠意‥‥頑張ります‥‥」
 微笑む無月の衣装は包帯メイド。
 所々が裂けたり破れたりしており、その上に点々と赤い染みのある包帯を巻きつけている。
 左目には白い眼帯。首や両の手には鎖の付いた黒皮の首輪、拘束具を装備。
 ‥‥と、かなり気合いが入った衣装だ。なんというか、背徳的である‥‥。

「うふふ、またまた素敵なアルバイトを見つけましたですよ♪」
 アハハァと笑う伊万里 冬無(ga8209)。
「折角だから活用させて頂きますです♪」
 衣装は身体にぴったりと貼り付き、肌の色が透けて見えるセクシーな死神装束。
 下はミニスカートにガーターベルト+ストッキング。靴はワインレッドのハイヒール。
 そして紫のマントを纏っている。
「店長、少しご相談をよろしいかしら?」
 大鳥居・麗華(gb0839)が店長に話しかける。
「あらぁん。なにかしらぁ?」
 ごにょごにょと耳うちする麗華。大切な友人の誕生日を祝ってあげたいとの申し出だ。
「それはいいわねぇん。でもそれだけじゃなく、ちゃんと働いてくれるなら、OKよぉん」
 くねくねしながら答える店長。「女の子同士の友情って素敵ねぇん」などと呟いている。
「感謝しますわ。‥‥このサプライズ、驚いてもらえると良いのですけど」
 麗華の衣装は露出の多い狼娘のコスプレ。色は髪に合わせて統一している。
「上手くいくと良いですね」
 冬無、麗華と一緒に参加の柚紀 美音(gb8029)はヴァンパイアのコスプレ。
 上は黒ビキニ、下はローライズの黒のホットパンツ。背中には赤く足下まであるマント。
 瞳には赤のコンタクト。口には尖った犬歯を装着。

「イスル、錬、今日は力を合わせて頑張ろう」
 瑞姫・イェーガー(ga9347)は猫又のコスプレ。
 肩が露出した星の柄の黒い振り袖とレザーブーツ。
 頭には黒い猫耳、お尻には二つに分かれた猫尻尾を装備。
「‥‥なんだか毎年恒例になっているね‥‥。瑞姫と一緒に、ハロウィンイベントに参加するのは‥‥」
 イスル・イェーガー(gb0925)は黒い犬耳尻尾を付けて犬神のコスプレ。
 衣装は平安時代を思わせる水干。若干男の娘風である。
「恥ずかしいです‥‥」
 頬を赤らめた柿原 錬(gb1931)はメイド服を着用している。

 最上 憐 (gb0002)は黒のローブを纏い、大鎌を持った、ウサ耳死神メイド。
 ちなみに大鎌は本物の武器なので危険。すごく危険。
 また、接客時は邪魔になるため、休憩室に置いておくよう店長から釘を刺された。
「‥‥ん。どさくさに紛れ。ウサ耳を。全世界に。広める為に。来たのは。内緒」
 今回の彼女の目的は別にあるようだ‥‥。
「‥‥ん。大丈夫。私が。来たからには。一人前の。ウサ耳喫茶として。宣伝して。あげる」
 それは何か違うよ!

 恋人同士のアリステア・ラムゼイ(gb6304)と神代千早(gb5872)は一緒に参加。
「こんな感じでいいのかな‥‥?」
 アリステアは黒いマントを羽織ったヴァンパイアのコスプレ。
 髪はポニーテールにしておく。彼は愛らしい容姿をしているのでぱっと見は女の子だ。
「ほ、本当に、こんな衣装で大丈夫なんでしょうか‥‥」
 千早の衣装は赤のレオタード。脚には黒タイツを穿き、靴はブーツ。
 頭には悪魔の羽のカチューシャを付けている。
「ち、千早‥‥さん? ちょ、ちょっと頑張りすぎじゃないかなー‥‥と俺は思うんだけど‥‥」
 千早の大胆な格好に頬を染め、ぼそぼそと言うアリステリア。しかし彼女には聞こえていないようだ。

「にゅ、店長さん、ミカお姉ちゃん、今回もよろしくお願いしますの」
 小柄な身体にビッグなバストを持つ来栖・繭華(gc0021)が店長とミカに挨拶。
「よろしくねぇん」
「はい、こちらこそ。よろしくお願いします」
 ミカは微笑んで、繭華の頭を撫でてきた。気持ち良さそうにする繭華。
 そんな彼女の衣装は妖精をイメージしたもの。
 大胆に胸元が開いた、スカートの部分が短めなワンピース。
 頭には花の冠。背中には妖精の羽根の飾りを装備。
「にゅ〜妖精さんの仮装ですの〜。今回はポニーテールにしましたの〜」
「とってもよく似合っていますよ」
 お世辞ではなく、本当に良く似合っている。本物の妖精のようだ。
「ただ、胸元が少し大胆なような気もしますが‥‥」
 ちらりと目をやるミカ。
「にゅ‥‥着た時に破れちゃったので、ここだけこんな感じにしてもらったですの‥‥」
 繭華の胸は依然、成長中らしい‥‥!!

(「んとんと‥‥ハロウィンも大好きだし、ウェイトレスさんも大好きなの! ユウも店員さんとして役に立てるかなァ‥‥」)
 ユウ・ターナー(gc2715)は腕組みしてうーんと唸っている。
(「まあ、まずはやってみないことにはね!」)
「よぉしっ、頑張るぞ☆」
 ぐっと手を握るユウ。彼女は前向きな性格のようだ。
 衣装は小悪魔な魔女っ子。とんがり帽子にかぼちゃパンツ。悪魔の羽と尻尾を装備。
「んー‥‥似合ってる、かなァ?」
「うん、似合ってる。大丈夫」
 長身で巨乳のメイドさんがやって来た。フェルマータのメイドさんの1人、琴音だ。
 ぐっと親指を立ててユウに突き出す。腰まで届くロングストレートの黒髪が揺れた。
「そっかァ。ありがとう!」
 にぱっと笑うユウ。

(「家令としての経験が生かせれば良いのですが」)
 ティームドラ(gc4522)は吸血鬼の仮装。
 気合いが入ったメイクをしており、犬歯も付ける。
 彼は元々強面なので‥‥かなり雰囲気が出ている。しかし、ちょっと怖いかも。

「コスプレしての店員のお仕事にドキドキしている」
 緋本 かざね(gc4670)は両手を胸に当てていた。
 初めての経験に胸が高鳴る。ちゃんと出来るだろうか‥‥?
 衣装は魔女っ子。紫がかった黒色の大きな帽子とマント。中はゴシックなワンピース。

 リズレット・ベイヤール(gc4816)は恋人にプレゼントを買いたいと思い、アルバイトを志望した次第。
「‥‥お姉様に喜んでもらう為です‥‥。恥ずかしくても頑張ります‥‥」
 コスプレのコンセプトは『ゴスロリ小悪魔っ娘』。
 頭には小さな角が二つ付いたカチューシャ。
 黒が基調の、フリルたっぷりのゴスロリ風ミニスカメイド服。
 悪魔の羽と尻尾を装備。脚にはオーバーニーソックス。もちろん絶対領域を形成。
「リゼ様、その衣装、とっても似合ってますねっ。今日は、がんばりましょうっ!」
 かざねが話しかけてくる。リズレットは「はい、がんばりましょう!」と答える。

「ふむ、実家の侍女達とは違うのですね‥‥。所で『萌え』って何ですかね?」
 パトリック・メルヴィル(gc4974)がメイドのミカに尋ねる。
 彼の衣装はテールコートに襟を立てた裏が赤地の黒マント。古典的な吸血鬼。
「ええと、難しい質問ですね‥‥『好き』という愛情表現の1つで間違いないと思います」
 と、ミカは答える。
 そんな風に雑談していると、まもなく開店時間となった。

●金髪ツインとハッピーバースデー
 神崎・子虎(ga0513)と弓亜・優乃(ga0708)が仲良く手を繋いで来店。
「今日は可愛くこの格好なのだ♪ どうかな? かな?」
 アリスコスチュームの子虎。手にはうさぎのぬいぐるみ。
「うん、似合っているわ」
 あくまで冷静に言う優乃。しかし内心では‥‥
(「‥‥ひ、人には言えないけど。私、可愛い年下っ子には胸にこみ上げるモノが‥‥何だか放っておけないというか。へ、平静に。平静に‥‥」)
 実はショタっ子大好き(?)な優乃。今にも爆発しそうな感情を必死に抑える。
「えへへ、ありがとうなのだ♪ あ、優乃さんも、とっても似合っているのだ♪」
「ありがとう、子虎君。嬉しい。‥‥ちょ、ちょっと恥ずかしいけどね‥‥」
(「ふむ、此処に来るのはケーキ作り依頼かしら。お世話になったお店だし、盛り上げてあげたいな」)
 などと考える優乃の衣装は魔女っ子。
「今回はお客さんだけど、よろしくなのだ♪」
 子虎は店長に挨拶。
「あらぁん、子虎ちゃん、優乃ちゃん、いらっしゃーい。楽しんでいってねぇん。‥‥子虎ちゃん、すっごく可愛いわねぇん。店員さんじゃないのが残念だわぁ〜ん」
「あは、ありがとなのだ♪」
 褒められ、ちょっぴり照れる子虎。
「お帰りなさいませ‥‥ご主人様、お嬢様‥‥。お席へ‥‥ご案内します‥‥」
 錬が2人を席まで先導する。
 その様子を観察していた子虎はアドバイスをしてあげる。
「可愛いけど、ちょっと硬いかな? リラックスリラックス♪」

 席に着いた子虎と優乃はパンプキンケーキを注文。まもなく運ばれてくる。
「えへへー、優乃さんあーん♪」
 子虎がケーキをフォークですくって口元に差し出してきた。
「えぇっ!? あ、あ〜ん‥‥」
 優乃は子虎の無邪気な笑顔に負けてぱくりと食べる。
「‥‥今度は僕にも〜☆」
「私も!?」
「もちろんなのだ♪」
 またしても無邪気な笑顔。優乃は『あーん』してあげるのだった。
「あ、優乃さん、クリームが付いてるよ〜♪ うん、美味しい☆」
「!?」
 頬に温かくぬめった感触。
 優乃は一瞬、何をされたのか解らなかった。
 子虎が優乃の頬に付いたクリームを舌でぺろぺろと舐め取ったのだ。
「‥‥」
「優乃さん?」
 無言の優乃。きょとんとする子虎。
(「‥‥子虎君なら、撫で撫でしても大丈夫かしら‥‥」)
 優乃はハァハァと息を荒げる。我慢はもう限界に達していた。
 がばっと子虎を抱き締め、頭を撫で撫でする。
「ゆ、優乃さん‥‥」
 ちょっぴりくすぐったそうな子虎。
「はあ〜幸せ‥‥。あ、お代の方は気にしなくても大丈夫。お姉さんに任せて。ね?」
 満足げな笑みを浮かべ、ウィンクする優乃であった。

「先日はよく頑張ったし、大分一人前っぽくなったからな。兄となった縁もあるので、一緒に喫茶店に食事にでもいこうか」
(「兄として何かをしてやろうと思うとは、俺も変わったな‥‥2年前よりも」)
 などとCerberus(ga8178)に誘われ
「ほんと! いくいくー♪」
 と、ほいほい付いて来たLetia Bar(ga6313)。
 着いた先はメイド喫茶『フェルマータ』。ハロウィンコスのメイドさんに席へ案内される。
「‥‥」
 注文をし、品物が運ばれてくるまで店内を眺めるLetia。
 すごく忙しそうな様子に‥‥ウェイトレス時代の血が騒ぎ出した!
「ケロ兄‥‥ごめん、ちょっと行ってくる!」
「え? おい!」
 Letiaはだっと席を立ち、メイドのミカに、店員として働かせて貰えないか願い出る。
「かなり忙しそうだねぇ‥‥ちょいとお手伝いさせてよ? 損はさせないから☆」
「うーん‥‥どうしましょー! 店長ー!」
 店長に伺いを立てるミカ。その結果、正規募集の店員ではないため報酬は出せないが、代わりに店内での飲食料金を割引きしてくれることになった。
 Letiaは黒のミニスカヴァンパイアの衣装に着替え、さっそく接客業務へ。
「ヴァンパイアメイドのレティさん、参上っ♪ おかえり、ご主人様。まずは一噛みさせて‥‥くれるよね?」
 来店した客を満面の笑みで出迎える。

「この店は、来る度に賑わいを増しているな」
 メイドさんに癒されにやって来た男が1人、来店。
 彼の名は夜十字・信人(ga8235)。歴戦の傭兵である。
 ‥‥店内を見回してみれば、ハロウィンコスの店員さん達がせわしなく歩き回っている。
 と、そこへ――彼の前に2人の店員さんが現れた。
 冬無と麗華だった。顔にはすっごい笑みを浮かべている。
「‥‥どうやら、ハロウィンが本物の悪魔を呼び出してしまったようだ‥‥」
 冷や汗を垂らす信人。
「トリック・オア・トリート♪ あはは、いらっしゃいませです♪」
「わたくし達がお席へご案内しますわ」
 両腕をがしっと掴まれ、席へ連行――もとい、案内される。

 遡ること数分前。
「また‥‥来てしまった‥‥。これも傭兵の運命(さだめ)か‥‥」
 紅月・焔(gb1386)が来店。顔にはガスマスクをつけており、すっごい怪しい。
 店員さんに警戒されながらも席へと移動する。
「コスプレも良いっすなぁ‥‥。やっべ! オラ、何だかワクワクしてきたぞ! ぐへへ‥‥」
 席へ腰を下ろすなり、飲み物を注文し、店員さんウォッチングを開始。
 ガスマスクの下で下品な笑みを浮かべる。
 ハイレグレオタードのヴァンパイアコスの店員さんやらをガン見。
 黒髪ロングのメイドさんのスタイルは素晴らしい。
 レタス色の髪のメイドさんは‥‥貧乳もまた良い。
「グヘヘ‥‥オレサマメイドマルカジリ」
 意味不明である。数分後、そこへ――
「‥‥で、またお前か、ガスマスク」
 心底うんざりした顔の信人が店員さん2人に案内されてきた。
「やあよっちー。奇遇だナ! ようこそ冥土喫茶、ヘルマータへ」
「店名が違うだろうが。‥‥はあ、まあいい‥‥」
 こいつ相手だと突っ込む気も失せる‥‥と考える信人。こめかみに手を当てた。
「にゅ、夜十字さん達、いらっしゃいませですの。ご注文は何にいたしますの?」
 注文を取りに妖精さん――のコスプレをした、繭華がやって来た。
「ふむ‥‥実に似合っているよ」
 うんうんと頷く信人。
「ありがとうござますの。嬉しいですの」
 キャッキャウフフする2人。
「‥‥」
 煩悩メーターが鰻登りの焔。2人の間に割って入るように注文。
「オーダー! ふーふークリームシチュー2つ! ピーマン入りで!」
「なにっ!? ガスマスク、貴様‥‥!」
「かしこまりましたの。少々お待ちくださいですの」
 繭華はぺこりとお辞儀をして、奥へ下がって行った。
「もう頼んじゃったから遅いよ。フフ、観念するんだね、よっちー」
「なんだこのミッション‥‥」
 信人は頭を抱えてテーブルに突っ伏した。

 運んできたのは金髪ツインテールのメイドさん、エリスと、銀髪セミロングのメイドさん、リリスだった。ちなみに2人は姉妹である。
「‥‥!?」
「おお、来た来た」
 目を見開く信人と、るんるん気分の焔。
「お待たせいたしました。ふーふークリームシチューになります」
 エリスとリリスがテーブルにシチューの入った皿を並べていく。
 信人は冷や汗だらだら。そして――
「ご主人様、あーんしてください」
 やはり、信人に『あーん』してくれるのは、エリスだった。
 彼は未だ‥‥『金髪ツインテール恐怖症』を克服していない。
 しかも、スプーンの上に乗っているのはピーマン‥‥!!
「‥‥」
 信人はガチガチと歯を鳴らし、震えて口を開かない。
 彼は‥‥過去のトラウマにより、ピーマンが苦手だった。
 虫は食べられてもピーマンは食べられない、というくらいに。
「? ご主人様?」
 不審がるエリス。焔のほうは楽しそうに、リリスに食べさせて貰っている。
「ご主人様‥‥やっぱり私のこと‥‥」
 エリスの瞳が潤む。
(「!? ‥‥くっ! いかん!」)
 信人は過去にエリスを泣かせてしまったことがあったのだ。
 また泣かれてしまったらものすごく困る。
「‥‥」
 沈黙に耐えかね、信人は観念したように口を開いた。
 スプーンの先が突っ込まれ、口の中にピーマンが入ってくる。
 もぐもぐと咀嚼した後‥‥信人は失神した。

「‥‥しゅじんさま」
 声が聞こえる。身体をゆさゆさと揺さぶられる。
「‥‥ご主人様!」
 信人は目を開いた。視界がぼやけている。
(「俺は‥‥何を‥‥?」)
 記憶も曖昧だ。‥‥ええと、確かシチューを食べて‥‥。
 段々と視界がクリアになっていく。そこには――
 かざね、ユウ、メイドのエリスの、金髪ツインテール3人娘の姿。
 信人を取り囲み、心配そうに顔を覗き込んでいる。
「‥‥!!?」
 状況を理解した瞬間、信人はぶくぶくと泡を吹き、白目を剥いて再び気絶した。
「「「ご主人様!?」」」
 慌てる金髪ツインテ娘達。
「なあよっちー‥‥うちの小隊にもメイド服の支給とか‥‥提案したいんだが。‥‥聞いてる?」
 聞こえていなかった。

 ふりふりひらひらふわふわの白ロリ服を着たL3・ヴァサーゴ(ga7281)が来店。
「招待状、貰ったけど、これは一体‥‥」
 封筒と一枚の紙を手に、フェルマータの店内へ足を進める。
「ヴァサーゴさん! さぁさぁ、お嬢様、此方にどうぞですよ♪」
「いらっしゃいませですわ♪ トリック・オア・トリート、お菓子をくれないと悪戯しますわよ♪」
「トリック・オア・トリート! お菓子くれなきゃ悪戯しちゃうぞ♪」
 冬無、麗華、美音が一斉に出迎える。
「‥‥って、皆、何を‥‥!?」
 いきなりのことに驚くヴァサーゴ。
「ちょっと早いですが誕生日おめでとうですわ♪ こう言うのもよいでしょう?」
「我の‥‥誕生祝い‥‥? ‥‥それは‥‥その、嬉しい、けど‥‥」
 ヴァサーゴは頬をぽっと赤らめ、下を向く。
「お菓子を持ってないとは‥‥それはいけませんね。悪戯をしちゃいます♪」
 そのままヴァサーゴは3人に席へ連行されてしまう。

 コの字型の席へ着いたヴァサーゴ。左右は麗華、美音に固められ、近くには冬無も座っている。
(「ふふふ、上手いこと引き込めましたです♪ 作戦開始ですね♪」)
 冬無はテーブルの下から手を伸ばし、麗華と美音のお尻にタッチ。
「「ひゃあっ!?」」
 2人から悲鳴が上がる。
「あら、お客様。お触りはいけませんですよ?」
「え、何事‥‥?」
 ヴァサーゴに自らの罪を被せ、濡れ衣を着せる冬無。
(「はふぅ〜♪ 良い手触りです♪」)
 その間も麗華と美音のぷりりんとしたお尻を揉みしだき、堪能。
「あぁ! ヴァサーゴ‥‥そんな、ダメですわ! あぁぁっ!」
「ヴァサーゴさん‥‥大胆です‥‥。あぁん!!」
(「うふふふ‥‥♪」)
 冬無は心の中で悪い笑みを浮かべている。しばらくして、手を離した。
「‥‥ふう、あなたがそういうことするとは思いませんでしたわ。お返ししませんとね?」
 麗華が反撃に転ずる。ヴァサーゴに抱きつき、その愛らしい胸を撫で回す。
「だ、だから違う‥‥麗華、止め‥‥」
「はふ〜。ヴァサーゴさんの味、美味しいです」
 美音もヴァサーゴの首筋を指の腹でなぞり、かぷり。甘噛みして血を吸う真似。
「ふぁぅ!? み、美音っ‥‥そこ、ふぁぁ‥‥」
 首筋が弱いヴァサーゴは悶える。その様子を冬無は指を加えてみていたが‥‥
「う、うぅぅ、ううううううう〜! もう我慢が出来ませんです!」
 我慢出来ずに乱入。もう揉みくちゃだ。
「はぅ。気持ちいい♪」
 美音はどさくさに紛れて冬無と麗華の首筋にもかぷり。
 ‥‥当然、騒ぎを聞きつけた店長からお叱りを受けてしまった。

 少し落ち着いた4人。
 ヴァサーゴに冬無が紅茶を入れてあげたり、美音がお菓子を食べさせてあげたりする。
 ふと、ヴァサーゴは麗華に抱きついた。
「どうしましたの、ヴァサーゴ?」
「何故、って‥‥? ‥‥一番、暖かくて、気持ち良い、から‥‥」
「そうですか、うふふ」
 麗華はヴァサーゴの髪をそっと撫でた‥‥。

 そして改めて、冬無、麗華、美音は、3人で協力して作ったケーキで、ヴァサーゴの誕生日を祝う。
「うふふ♪ はい、皆様。いきますですよ〜♪ もっと密着していきましょうです♪」
「ちょ、伊万里! くっ付きすぎですわ! ‥‥まあ、今回は許して差し上げますけれど‥‥」
「ヴァサーゴさん、おめでとうございます♪」
 4人はケーキを囲んで、ヴァサーゴを中心にして写真撮影。ぱしゃり。
(「‥‥願わくば、この幸‥‥永久に、失われぬ事を‥‥」)

●もう1つのハッピーバースデー
 瑞姫とイスルは一緒に接客を行う。
「いらっしゃいませ、お館様」
「‥‥お席へご案内します‥‥」
 客を瑞姫が出迎え、イスルが席まで案内する。
「今日は何をご所望で‥‥?」
「良ければボクが考えたメニューも頼んで欲しいですにゃ」
 イスルが注文を聞き、瑞姫はカボチャとキノコのグラタンキッシュを勧める。
 客は「じゃあそれと、コーヒーを下さい」と言った。
「嬉しいにゃ♪ それじゃ早速作りますから、少々お待ち下さいにゃ」
「お飲み物はすぐにお持ちいたします‥‥お館様」
 奥へと下がる2人。そのように接客を続ける。
 仲睦まじい様子の瑞姫とイスルは、実は夫婦であるのだが、他の店員には内緒にしていた。
「あんまりばれないようにしないと。ボロは、どうしても出ちゃうだろうけど‥‥」
 小さく呟く瑞姫。
「‥‥ボクはバレてもいいと思うけどな‥‥」
 イスルも呟き、微笑んだ。

 接客が一段落した頃。
「あっ、そうだ。錬を驚かせてみようか?」
 などと瑞姫が言い出す。
「フフフっ‥‥隙アリ!」
 錬の後ろから忍び寄り、メイド服のスカートを捲る。
「えっ? きゃあああっ!!」
 女の子のような悲鳴。
「あ、えっと、その‥‥ごめん」
 思わぬ反応に、瑞姫はとりあえず謝る。
 イスルは顔を赤らめている。下着も女物だった‥‥。
「‥‥まあ、程々に、ね‥‥」
 苦笑しつつ、瑞姫へ柔らかく注意するイスルであった。


 店内で働くLetiaの様子を眺めているCerberus。
「やけにスカートが短くないか? 悪い虫がつかなければいいが」
 ぼそぼそと言う。早足で歩くと‥‥スカートの中が見えそうでハラハラする。
 しばらくして、Letiaが『あつあつカレーライス』を運んで来た。
「ケロ兄、どうこれ似合う?」
 テーブルに注文の品を置いた後、くるりと回って見せた。
「ああ、すごく似合っている」
(「少し大胆な気もするがな‥‥」)
 Cerberusは心の中で呟く。
「えへへ、ありがとっ! じゃぁケロ兄に『ふーふーあーん』のサービスっ」
 スプーンでCerberusにカレーを食べさせてあげるLetia。

「あ、繭華さん!」
 繭華を発見した美音は挨拶代わりに首筋をかぷり。はむはむぺろぺろ。
「にゅ! 柚紀お姉ちゃん、くすぐったいですの〜」
「はふ〜。可愛いです♪」
 そっくりな容姿の2人は子犬のようにじゃれあう。
「‥‥はあ、はあ。ふにゅ、店長さんに怒られそうですし、そろそろお仕事に戻りましょうですの」
 繭華が荒い息を吐きながら言った。
「むぅ〜、そうですね」
 確かにまた店長を怒らせてしまったらお給料が少なくなってしまうかもしれない。
 美音はこくりと頷き、それぞれ接客に戻る。

 一通り接客業務を行ったLetiaが着替えてCerberusの席に戻ってきた。
 そこには箱入りのケーキが用意されており‥‥
「少々早いが、ハッピーバースデー。レティ」
 Cerberusは妹の顔を見て、微笑む。
「ふわっ! 誕生日ケーキだ! ‥‥これ、ケロ兄が?」
「ああ‥‥」
「ありがとっ! うん‥‥すっごく美味しいっ」
 切り分けられたケーキを一口食べてみて、感涙するLetia。
「レティ‥‥?」
「ごめん、こういうの久々でさ‥‥。嬉しいな。ほんとに、ほんと、ありがとう‥‥ケロ兄♪」
 Letiaは涙を拭い、笑顔を浮かべる。

 ‥‥その様子を遠くから見ている店長。本当は飲食物の持ち込みは禁止なのだが‥‥
 しっかり働いてくれたので、今回だけは見逃してあげることにした。

●トリック・オア・トリート
「いらっしゃいませ、お嬢様方。ゆっくりしていってもらえれば、俺も嬉しいよ」
 主に女性客の対応を行っているアリステア。
 席に案内し、注文を聞いて戻る時‥‥
「さっきの子、女の子かな?」
「えー、でも『俺』って言ってたよ?」
 きゃっきゃとする女性客達の声が聞こえてくる。
 接客が一段落したアリステアが休憩室のドアを開けた。中には千早の姿。
「やー、疲れたね」
「はい。でも楽しいです。あ、お茶をどうぞ」
 椅子に座ったアリステアに紅茶の入ったカップを出す千早。
「ありがとう。カンパネラで学祭は聞いたことないし、その代わりみたいな感じで、俺も楽しめてるよ」
 にっこりと微笑む彼。2人でのんびりとお茶‥‥。
 しかし2人きりというのは‥‥年頃の男女であり、恋人同士であるアリステアと千早は意識してしまう。
「え、えっと‥‥アリステアさんは、こういうの、私に似合うと思いますか‥‥?」
 思い切って尋ねてみる千早。
「いい感じ‥‥じゃないかな‥‥?」
 ぎこちなく答えるアリステア。
 彼女の衣装は真っ赤なレオタード。艶かしい黒タイツ脚に視線が行ってしまう。
「そ、そうですか。喜んで、良いのですかね‥‥?」
「うん‥‥似合っているよ」
「ありがとう‥‥ございます」
 言った後、真っ赤になる2人。
「ハロウィンが終われば、次はクリスマスだね‥‥。今年はどうしようか‥‥」
「どうしましょうね‥‥そちらも楽しみです」

 接客中の憐。彼女は配膳時に「トリック・オア・トリート」ならぬ「ウサ耳・オア・摘み食い」と客に聞き、ウサ耳の場合は白のウサ耳カチューシャを客に被せて回っていた。
 そしてまた、カボチャのプリンを運んできた憐が尋ねる。
「‥‥ん。ご主人さま。ウサ耳・オア・摘み食い?」
 突然のことに「??」となる客。少し間が開いて「じゃあウサ耳」でと答えた。
「‥‥ん。ウサ耳。どうぞウサ。料理も。どうぞウサ。ごゆっくり。ウサ耳の。加護をウサ」
 客の頭にウサ耳の付いたカチューシャを被せる。‥‥そのときの憐の表情は、どこか満足気だった。
 また、手が空いているときは外で客引きを行う。
「‥‥ん。今。ハロウィンキャンペーンを。開催中」
「‥‥ん。ウサ。ウサ。ウサ。ウサ耳」
 ウサ耳をぴこぴこと動かす。何事かと足を止める通りすがりの人々。
「‥‥ん。そこの人。ウサ耳喫茶に。入らない?」
 そのように客をちまちまと集める憐。ウサ耳喫茶ではありません!

 接客中の繭華。
「ふにゅ! ふにゅ! がんばりますの!」
 店内を小さな妖精さんがひらひらと飛び回るように、一生懸命配膳を行う。
 その姿は愛らしくも、どこか幻想的で‥‥魅了される客も多かったそうな。

 接客中のユウ。
「トリック・オア・トリート!」
 と、元気に笑顔で客を出迎える。
(「ちょっとドキドキするケド、立派なウェイトレスさんとして頑張るんだカラっ!」)
 お客様へのサービス精神と可愛らしさを忘れずに。
 その姿勢は客から好評得て、店長からも褒められた。
 ちなみに、出来ればローラーブレード颯爽と配膳したかったが‥‥
 店長から「危ないのでNG」と言われてしまった。しかしそんなことではくじけない。
「こちら、パンプキンパイになりますv ごゆっくりお楽しみ下さいv」
 料理を運ぶときも笑顔を振り撒く。
 ある程度接客を行ったら、キッチンに入ってお菓子作りも手伝ってみる。

 接客中の無月。
「いらっしゃいませ、御主人様…」
 少々儚げな微笑で迎える。
「2名様ですね‥‥お席へご案内します‥‥」
 彼が歩くと、包帯や服の切れ目が揺れて、肌がちらちらと見える。
「ご注文はお決まりでしょうか? ‥‥此方が本日のお勧めとなっております‥‥」
 恭しくオーダーを取る無月。自分の身体に視線が集中するのがわかるが、特に気には留めなかった。

 接客中のティームドラ。主に女性客へ対応。
「いらっしゃいませ。当店ではお客様にご満足頂けるよう誠心を込めて努めて参ります」
 さすがと言うべきか、様になっている。
「どうぞ、楽しい一時をご堪能下さい」
 微笑むと、鋭い犬歯が見える。女性客らは怯えることもあったが‥‥まあそれはそれで雰囲気作りに一役買っていた。

 時間はお昼過ぎ。ソウマ(gc0505)が来店。
(「前にフェルマータへ来たのは7月頃だったかな‥‥。今はもう11月‥‥」)
 遠い目をする彼。顔色も良くない。
「すみません、癒しを1つ‥‥下さい‥‥」
 数ヶ月の間でソウマは色々な経験をした。
 辛い事、悲しい事、許せない事。勿論楽しい事もあったが。
 その所為で心が疲れてしまっていた‥‥。
「お帰りなさいませ、ご主人様。ええと、癒し、ですか? とりあえずお席へどうぞ」
 メイドのミカが出迎え、席まで案内。
 ソウマは特大サイズのチョコパフェとホットチョコレートを注文。ミカは下がっていく。
 しばらくして、リズレットが注文の品を運んできた。
「お待たせしま――ひゃあああ!!?」
 躓いて、ソウマに頭からホットチョコレートをぶっかける。
「ほあちゃーーー!!?」
 ‥‥ソウマの運は凶のほうに働いたようだ。
「はわわ! すみません!」
 慌てておしぼりで拭くリズレット。そこへミカがやってくる。
「あらあら、申し訳ありません。‥‥ここは私がやるので、リズレットさんは接客に戻って」
「はふ、すみません‥‥」
 リズレットはしゅんとして奥へ下がっていく。
 ミカは「大丈夫だから」とリズレットを慰めた。
 そして、濡れたソウマの身体を丁寧におしぼりで拭いてやる。
「ありがとうございます、ミカさん」
 綺麗になったソウマが礼を言う。
「いえいえ、こちらこそ。ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
 ミカはぺこりと頭を下げた。
「お詫びと言っては何ですが、よろしければチョコパフェを『あーん』して差し上げます」
「えっ!? 本当ですか?!」
 前回はミカが忙しく、『あーん』してはもらえなかった。
「本当ですよ」
 にこりと微笑むミカ。
「では、是非! お願いします!」
「はい♪」
 そしてソウマはトラブルから一転、幸せな甘い一時を味わうのだった。

 接客中のかざね。
「お帰りなさいませ、ご主人様♪ 今日の私の衣装、どうですか?」
 魔女っ子衣装のかざねが客を出迎える。客は「可愛いよ」と微笑んだ。
「ありがとうございます! お席へご案内いたしますね♪」
 かざねはツインテールをなびかせて接客業務を行う。
 一段落したら、今度はキッチンに入ってケーキ作りのお手伝い。
 同じくお菓子作りを希望したユウと一緒になった。
「ターナー様、上手ですね」
「そうカナ? かざねもなかなかだと思うよっ♪」
 仲良く作業する2人。

 先ほど失態を演じてしまったリズレット――
「はあ、失敗してしまいました‥‥」
 しかし凹んでいてもしょうがない。気を取り直していかねば。
(「‥‥それにしても、この衣装‥‥すごく恥ずかしいです‥‥」)
 リズレットの衣装はスカートがかなり短い。
「‥‥し、下着が見えてしまいそうです‥‥あぅぅ‥‥」
 頬を染めながら、スカートを押さえつつ配膳などを行う。

 接客中のパトリック。
「ようこそ、お嬢様方。血を捧げに来てくれたのですか?」
 などと、演技も交えて客を迎える。
 客を席まで案内し終えたところに――
「きゃああぁ!?」
 悲鳴。リズレットが倒れこんでくる。
 咄嗟に抱きとめてやるパトリック。
「‥‥パトリック様‥‥ありがとう‥‥ございます‥‥」
 礼を言うリズレット。
 その可愛らしい顔を見て、パトリックは抱擁を少しだけ強めてみる。
「え、えっと、もう‥‥大丈夫ですから‥‥その‥‥」
 リズレットは頬を赤らめて困惑した様子。
「その失敗も愛らしい。つい、手を出したくなりますね」
 などと、パトリックはリズレットを口説いてみる。
「‥‥略奪愛も、一興ですかね」
 妖しげな笑み。
「‥‥へっ!? ‥‥こ、困るのです‥‥リゼにはお姉様が‥‥あぅ‥‥」
 リズレットは耳まで真っ赤にして黙ってしまった。
「‥‥ふふ、冗談です」

 そんなこんなで日が暮れる。
「今日は楽しかったのだ♪ 来てくれてありがと〜。元気が戻って来たのだ」
「ん。良かった。こっちこそ、誘ってくれてありがとう」
 閉店近くまで楽しんだ子虎と優乃。
 子虎が優乃の腕に抱きつき、仲良く帰ってゆく。

 閉店後――。
 頑張った店員さん達に、待望のお給料が手渡された。
「皆、今日はお疲れ様。ハロウィンキャンペーンは大成功よ! ありがとう!」
 わっと歓声が上がる。
「私からも。お疲れ様でした。せっかくですし、良ければお茶会でもしましょうか」
 ミカ言った。また、わーっと声が上がる。

 そうして『ハロウィンキャンペーン』は幕を閉じたのだった。