タイトル:蟲喰い8マスター:とりる

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 難しい
参加人数: 12 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/09/27 19:42

●オープニング本文


前回のリプレイを見る


 九州某所。キメラプラント乙1号。
 青白く発光する無数の培養カプセルが並ぶ研究室――。

 白衣を着た初老の男性1人と、身体の一部が蟲と化した異形――改造強化人間の男女3名が相対していた。
「傷は癒えたか」
「はい」
「身体に問題はないか」
「問題ありません」
 白衣の男性‥‥芳賀教授と、ハサミムシの尾を持つ和服姿の筋肉質の男性‥‥玄が言葉を交わす。
「ったく、おっさんも不甲斐ねェなァ。あんな連中に苦戦するなんてよォ」
「‥‥能力者を、傭兵を甘く見るなよ」
 バッタの脚を持つ、柄シャツを着た金髪の青年‥‥翔の発言に対し、玄は鋭い視線を向ける。
「ハッ、この俺が油断なんてするかよ。甘くも見てねェっての」
「きゃっ、翔ちゃん素敵v」
 クロアゲハの羽根を持つ、黒のゴシックワンピースを着た長い黒髪の美しい女性‥‥舞が両手を口の前で合わせ、微笑む。
「オゥよ、姉貴! ‥‥あの傭兵ども、今度会ったら全力でブチ殺す」
 翔の瞳は殺意に満ち、ギラギラと光っていた‥‥。
「‥‥意気は良いようだな。その件だが、そろそろ奴らも目障りになってきた。
 前回は小手調べ程度だったが‥‥次はその言葉通り、全力でいけ」
「ホントかァ? 倒しちまってもイイんだなァ? 芳賀のじいさんよォ?」
「構わん」
「フン。なら好きに殺らせてもらうぜェ」
 翔は鼻を鳴らし、腕を組んで顔を背けた。
「全力、か。楽しみだな。前回打ち合った相手‥‥また相見えることができるだろうか‥‥」
「さあ? どうでしょうね? 傭兵ってけっこう気まぐれみたいだし?」
 愛刀を磨く玄と、首をかしげる舞。
「俺は誰だろうが関係ねェ。俺らのプラントにノコノコ乗り込んで来た奴らは即返り討ち、皆殺しだ」
 愛用の対物ライフルを手に翔が言った。
(敵をブチのめせば、姉貴は喜んでくれる‥‥! もっと俺を褒めてくれる‥‥!)

 ――改造強化人間と、ハイブリッドバグズを始めとしたキメラの脅威が、傭兵と相川小隊を待ち受ける――。

 ***

 相川小隊駐屯基地――。
「‥‥」
 ブリーフィングルームにて、作戦の説明を終えたのち、相川小隊の隊長である相川・俊一少尉が難しい顔をしていた。
「どうしたんです、隊長? 前回の作戦は上手くいったのに‥‥今回だっていけますよ、きっと」
 第2分隊長、深森・達矢兵長が俊一少尉に話しかけた。
「‥‥改造強化人間」
 ぽつりと言う。俊一少尉の手には前回の作戦の報告書。
「えっ‥‥?」
「いえ、また厄介なものが出てきたと思いましてね。ハイブリッドバグズだけでも手を焼いているというのに‥‥」
「今回も傭兵との共同作戦ですし、心配し過ぎなんじゃ」
 俊一少尉は「むぅ‥‥」と唸ったのち。
「傭兵も奴らには苦戦していました。それに‥‥我々は彼ら、傭兵に頼りすぎている面がある」
 HB以上の敵と戦うことになった場合、危険であると俊一少尉は言った。
「ですね‥‥用心するに越したことはないですね‥‥」
 達矢は少し俯く。
「特に第4分隊、衛生班は狙われ易い。ちゃんと‥‥蝶子さんを守ってあげてくださいね、達矢くん」
「は? はい。もちろんですけど。‥‥隊長も、里美少尉のこと、守らないと」
「大丈夫、彼女は強い。下手すると僕よりも、ね」
 微苦笑を浮かべる俊一少尉だった。

 ***

「‥‥あんなこと言われてますけど?」
「強い女は好みじゃないのかしら‥‥」
 少し離れた場所。言ったのは相川小隊第4分隊衛生官、牧原・蝶子曹長と、第4分隊長、米谷・里美少尉。
 彼女達は俊一少尉と達矢の会話に聞き耳を立てていた。
「だ、大丈夫ですよ! きっといつか想いは伝わるはずです!」
「ならいいんだけどねぇ‥‥」
 はあ、とため息をつく里美少尉。しかし‥‥。
「なんて、浮いた話をしている場合じゃないわ。気を引き締めないと。蝶子さんも、他の皆も、ね?」
 中指で赤いフレームのメガネを直し、第4分隊の面々に対して言う。
「了解しました!」
 びしぃっと敬礼する一同。

 ***

「若人達はやる気十分のようじゃの‥‥」
 達矢や蝶子達の様子を、老齢ながらも衰えを感じさせぬ第3分隊長、竹中・宗司軍曹が銃の手入れをしながら見ていた。
「お前達も生き残れよ! 明日を作るのはお前達、若者なのじゃからな! わかったか?!」
「イエッサー!」
 一斉に敬礼する第3分隊の一同(メンバーは何故か日焼けした筋肉質の体育会系っぽい少年ばかり)。

 ***

「さて、そろそろ時間ですね。再度確認します。目標はキメラプラント乙3号。
 ‥‥あと3つ、3つです。全力を尽くし、作戦を完遂し、無事に帰って来ましょう!」
 俊一少尉の言葉に、隊員全員から声が上がった。

●参加者一覧

ノエル・アレノア(ga0237
15歳・♂・PN
神崎・子虎(ga0513
15歳・♂・DF
遠石 一千風(ga3970
23歳・♀・PN
旭(ga6764
26歳・♂・AA
アンジェリナ・ルヴァン(ga6940
20歳・♀・AA
砕牙 九郎(ga7366
21歳・♂・AA
瑞姫・イェーガー(ga9347
23歳・♀・AA
イスル・イェーガー(gb0925
21歳・♂・JG
ヨグ=ニグラス(gb1949
15歳・♂・HD
クラリア・レスタント(gb4258
19歳・♀・PN
ティリア=シルフィード(gb4903
17歳・♀・PN
天原大地(gb5927
24歳・♂・AA

●リプレイ本文

●キメラプラント乙3号攻略作戦
 相川小隊駐屯基地。ブリーフィングルーム。
 11名の傭兵と、相川小隊総員32名が集まっていた。

 セーラー服の似合う可憐な男の娘、神崎・子虎(ga0513)が深森・達矢に挨拶。
「達矢くん、久しぶり♪」
 彼の言うように久しぶりの再会であった。
「‥‥だけど、特に変わってなさそうだね♪ 今回もお互いに任務を遂行しようね☆」
 達矢は見知った顔に表情をほころばせ、「ああ。もちろんだ」と答える。

 ノエル・アレノア(ga0237)。浅黄色の髪をした少年は難しい顔をしている‥‥。
(強化人間も‥‥元は人間。今の彼らの性格も、元になった性格の一端なのだろうか)
 顎に手を当て、思案。
 強化人間は‥‥洗脳を受けている者もいれば、自ら望んで強化人間となった者も居る。
 敵の幹部――改造強化人間の3名は一体どちらなのだろうか‥‥。
 
 ‥‥ノエルはふう、と息を吐くと。
「地図を見る限り‥‥今回、傭兵側のルートは1本道‥‥大きな広場が2つあるだけ。
 前回の強化人間が防衛を担当している可能でいも十分考えられます」
 集まっている傭兵全員に対して言った。皆は首肯する。
「HBも手強く、油断ならないけれど‥‥彼らはもっと危険な相手。気を引き締めて行きましょう」
 そののちに、ノエルは想いの通じ合った仲‥‥
 恋人である空色の髪の少女、ティリア=シルフィード(gb4903)に声をかける。
「ええ‥‥そうですね。ノエルさん。油断は出来ない‥‥」
 ノエルとティリアはぎゅっと手を握り合う。
(あの改造強化人間3人を含め、ここに来て敵の防衛戦力も質・量共に以前とは比べ物にならなくなってきました‥‥)
 彼の温もりを肌で感じながら‥‥ティリアは考えを巡らせた。そののち。
「とにかく残り3つ、確実に潰して行きましょう」
 と、言う。ノエルは力強く頷いた。
 そこへ――
「とーぅ☆」
「わわっ!?」
 ノエルは背中に柔らかい衝撃を感じた。‥‥子虎が背後から抱き付いてきたのだ。
「2人とも、あんまり力を入れ過ぎちゃダメなのだ。リラックスリラックス☆」
 にこりと笑う少女と見紛う愛らしい少年。
「うん、そうだね」
「ふふ‥‥」
 ノエルとティリアも釣られて微笑んだ‥‥。

 開かれた窓からそよぐ涼しい秋風に赤髪を揺らしている美女が1人。
 長身、かつスレンダーな均整の取れた、引き締まった肉体。
 誰もが見惚れるであろうその風貌。しかし‥‥彼女の表情は曇っていた。
(改造強化人間‥‥。教授の下で戦うのは力や戦いをくれたからか。
 教授にとっては彼らも道具でしかない。娘のように。
 ‥‥何としても教授の暴挙を止めなければ)
 彼女の名は遠石 一千風(ga3970)。
 九州における虫型キメラ事件の首謀者、芳賀教授の陰謀を阻止すべく活動している傭兵である。

 堅牢な鎧に身を包んだ青年、旭(ga6764)。
「今回も大変になりそうだ。‥‥気合、入れないと」
 愛剣を磨きながら、きゅっと口元を引き締める。
 今回も激しい戦闘が予想させる。
 前回の改造強化人間戦は大いに苦戦させられた‥‥。
(‥‥)
 前回、彼らは本気を出してないようにも見られた。
 となると今回は‥‥。

 長く美しい黒髪をした美女、アンジェリナ・ルヴァン(ga6940)。
 彼女は目を瞑り、精神を集中させていた。
(‥‥‥‥)
 もはやお馴染みとなったこの光景。
 彼女にとっては単なる精神集中であるが‥‥
 武人として一種の極みを目指す――神々しさすら感じさせる雰囲気。
 それは相川小隊の年少の隊員達にとって心洗われる姿だった。必然的に視線が集まる。
 アンジェリナ自身も見られていることを感じてはいたが‥‥特に気にせず。

「さて、ここから終盤戦だ。踏ん張らねぇと」
 砕牙 九郎(ga7366)は愛銃、アラスカ454の手入れをしていた。
 使い込まれた無骨な拳銃‥‥こいつには何度も助けられた‥‥。
 甲虫型キメラやハイブリッドバグズの分厚い甲殻をぶち抜くにはこいつが一番だ、と彼は言う。

 瑞姫・イェーガー(ga9347)とイスル・イェーガー(gb0925)の夫婦は寄り添い、語り合う。
「イスル‥‥すごく危険な依頼だけど‥‥良かったの?」
「瑞姫が行くなら、僕はどこへでも付いて行くさ」
 心配そうな妻の顔を見て、夫は微笑む。
「これ以上キメラを増やすわけにはいかない、ね。悲しいけど‥‥今は倒すしか選択肢が無い‥‥かな」
「そうだね‥‥。ハイブリッドバグズっていう人型キメラは‥‥人間が材料だって聞いてる‥‥。
 悲しいよね‥‥倒すしかないなんてさ‥‥。助けることは出来ないのかな‥‥」
 瑞姫の瞳に涙が溜まる。それをイスルがハンカチで拭いてあげた。
「資料を見たけど‥‥あそこまで改造されてしまったら助けるのは無理だと思う‥‥。
 瑞姫、ツライだろうけど‥‥」
「うん、めそめそしてちゃダメだよね」
 表情をキッと引き締める瑞姫。
「攻略目標は敵の施設だし‥‥気をつけないとね」
 そう言ってイスルは愛する妻の手に、自分の手を重ねた。

 戦闘前のカロリー補給にどうぞ〜と渡された特大プリンをぺろりと平らげたヨグ=ニグラス(gb1949)。
「けぷ‥‥。さて、お仕事の時間ですっ。お給料のために頑張らねば!」
 プリンが大好きな少年、ヨグ。既に気合は十分のようである。
 彼のお給料の大半はプリン代に使われるのだろうか‥‥?

 灰色に近い綺麗な銀髪の可憐な少女、クラリア・レスタント(gb4258)。
「困難な作戦ですが‥‥やり遂げなくては。頑張りましょう」
 彼女はそう口にすると、首から提げた胸元の『【OR】青石のネックレス』をぎゅっと握り、しばし目を閉じる。
 ‥‥そののちに、ネックレスを大事そうに服の中へ仕舞い込んだ。

 まもなく出撃時刻となる。
 準備を整えた傭兵部隊11名と相川小隊の32名、合計43名の能力者達は‥‥
 敵のキメラプラントを叩くべく、いざ、出撃。

●大型ドーム空間攻略
 軍用トラックでキメラプラント乙3号付近までやってきた傭兵部隊と相川小隊は降車。
 徒歩でプラントへ接近。‥‥周囲に敵影がないことを確認すると、一斉に突入を開始した。

 突入後、通路を進むと‥‥少しして、道が2つに分かれた。
 地図にあった通りだ。相川小隊は右側の通路へ。傭兵部隊は直進する予定となっている。
「‥‥」
 視線を合わせる一千風と達矢。互いに健闘を祈り、頷き合う。
 相川・俊一少尉の合図で、相川小隊と傭兵部隊は別々に動き出す‥‥。

 ***

 青白く発呼するケーブルが血管のように壁面を這う通路を、
 点在するブリットビートルやレイビートルを撃破しつつ進む傭兵部隊。
 ほどなくドーム空間へ出た。ペネトレーター組が先行し、攻撃を開始――。

 ***

 しばらくして、ドーム空間の制圧を完了。
 敵戦力はブリットビートルとレイビートルが主体。
 ハイブリッドバグズM3型が複数、という感じであった。
 苦戦とまではいかなかったが‥‥M3型は新型の量産型ハイブリッドバグズ‥‥油断は出来ない。
 傭兵達は少なからず傷を負ってしまった。現在は応急手当中。
 手当の終わった者は培養施設の破壊活動を行っている。
 ドーム空間に銃撃音、培養カプセルが割れる音‥‥そして幼生キメラの断末魔が響く‥‥。

 ***

 小休止を終えた傭兵部隊は再度通路を直進。
 またも点在し、砲撃を行ってくるブリットビートルやレイビートルに銃撃や斬撃を集中させ、撃破。
 通路を行く。

(‥‥?)
 走りながら一千風は、違和感を覚えた。
 ここはキメラプラント乙3号――敵の重要拠点のはずである。
 しかし――敵の防備が薄い‥‥? 気のせいならば良いが‥‥。

 青白く発光する気味の悪い通路を走る。1本道だけあって‥‥長い。
 ‥‥大分進んだと思ったところで、次のドーム空間の入り口が見えた。

 傭兵達は軽く確認を行うと――先程と同じように、
 ペネトレーター4名、ノエル、ティリア、一千風、クラリアが先行して突入。
 まずは敵陣をかく乱する‥‥!

 ‥‥敵戦力はざっと見て黒いバッタのような頭部を持つハイブリッドバグズ、S3型1体。
 カブトムシのような頭部をしたハイブリッドバグズ、B3型が1体。
 カゲロウのような羽根が生えたハイブリッドバグズ、F2型が1体。
 先程も交戦したハイブリッドバグズM3型が5体。
 そして、例によって砲戦仕様の甲虫型キメラ、ブリットビートルとレイビートルが多数‥‥であった。

 すぐさま迎撃の砲弾や光線が飛んでくる。ペネトレーター組はそれを掻い潜りつつ接近。

「はあぁっ!」
 ノエルは純白の爪を振るう。
「やあぁっ!」
 ティリア二刀小太刀『永劫回帰』を振るう。
 その2撃はブリットビートル1体とレイビートル1体の甲殻に傷を付ける。
 衝撃によって後方の味方を狙っていた生体機関砲やプロトン砲の射線が外れた。
 ‥‥心の通った2名だからこそ可能な見事なコンビネーションである。

 一千風は神を斬るという名が付けられた直刀を振るう。
「ここまで来ると、今までのキメラのオンパレードか」
 斬撃によりブリットビートル1体の甲殻が割られ、体液が噴出した。
 刺激臭のするそれを一千風は身を捻って避ける。

 クラリアは小銃で銃撃。
「嘶け! シエルクライン!」
 そののち、【迅雷】を用いて回り込むように移動し、レイビートル1体に肉薄。
「虫の甲殻は堅くとも‥‥関節ならばっ!」
 関節部を狙って、魔剣『ティルフィング』を突き刺す。
 元々機動力の低いレイビートルだが、脚部の関節を潰されれば射線が取り難くなるだろう。

 残りのメンバーも追随。
 アンジェリナは刀・蝉時雨を抜き、駆ける。
 ペネトレーター組によってかく乱された敵陣へ飛び込む。
「‥‥!」
 刀が数度煌めく。‥‥ブリットビートルとレイビートルの砲身となっている長い角が切断された。
 その後も次々と角を切断し無力化していく。砲撃が出来なくなった甲虫型キメラなど、ただの的。
 体当たりくらいはしてくるだろうが‥‥最早脅威ではない。
 彼女は淡々と、角を切り落としていった。

「どんどんと数だけは多くなるね。でも、ここで手間取るわけにはいかない」
 子虎は天剣『ウラノス』を振り上げ、M3型へ向かって行く。
 だが緑のバッタ顔のHBは――速い。
「‥‥動きが速いのは苦手んだよね。でもこのタイミングなら‥‥!」
 M3型が接近し、打撃を繰り出してきた瞬間。子虎はそれを大剣で受け止める。
 渾身の力で拳を弾き返し、大剣を横に薙ぐ。M3型は後退し回避。
 しかし大剣のリーチもあってか、子虎の斬撃はM3型の甲殻を抉った。少量の体液が散る。

 旭が相手取るのは――B3型。分厚い甲殻。全身から生えた刃。そして両の手の甲から生えた肉厚の剣。
 明らかに重剣士タイプ‥‥かなりの威圧感。しかし‥‥臆するわけにはいかない。
 聖剣『デュランダル』の柄を握り締める旭。
 ――1人と1体が同時に踏み出した。真っ向勝負。――剣と剣が打ち合う音が響く。
(負けられない‥‥僕にはこの先があるから‥‥!)
 敵のパワーは凄まじい‥‥だが‥‥押し負けるわけには‥‥!

 九郎とヨグはS3型と交戦中。
「チッ、速ぇな」
「速過ぎるですよー!!」
 SMG『ターミネーター』で弾幕を展開する九郎。
 エネルギーキャノンMk−IIで砲撃を行うヨグ。
 しかしS3型のスピードは、前回の交戦データ通り凄まじく、銃弾も光線も捉えることが出来ない。
 ただ、牽制としては機能しており、2人は今のところ大きなダメージは受けていなかった。

 瑞姫とイスルの夫婦は連携してF2型と交戦
「イスル、背中は任せたよ」
「OK。わかってるよ、瑞姫」
 近接戦を仕掛ける瑞姫を、イスルが射撃で援護する形である。
「援護射撃、行くよ‥‥」
 イスルはガトリングシールドにて【援護射撃】を使用。瑞姫を支援。
「瑞姫、横から仕掛けて‥‥!」
 弾幕を展開しF2型を正面に釘付けにする。無数の光弾が飛んでくるが‥‥なんとか耐える。
「わかった!」
 側面からF2型に接近する瑞姫。跳躍。パイルバンカー・ラブルパイルでの連続攻撃。
 F2型は回避運動。数発が命中。甲殻を削った。
 ‥‥F2型は方向を転換、お返しとばかりに瑞姫へ熱線を放ってくる。
「う、うわあああ!?」
 猛烈な熱量。片腕を焼かれる瑞姫。
「瑞姫! くそっ、飛行している奴はうざったい‥‥撃ち落とす!」
 ガトリングシールドでの弾幕。だが敵は回避。
 イスルはそのまま射撃を継続しつつ瑞姫の元へ。
「大丈夫?」
「うん‥‥なんとか。戦闘は可能だよ」
 瑞姫は武器をSMG『スコール』に持ち替え。
 射撃主体の戦法に切り替える。‥‥飛行している敵には、下手に近接戦を仕掛けないほうが良い。
「「悪いけど、動きを止めさせてもらうよ‥‥!」」
 2人はガトリング砲とSMGで弾幕を張り、F2型の甲殻をじわじわと削る‥‥。

 ***

 クラリアは甲虫型キメラと交戦中。
 砲撃を仕掛けてくる敵に対し、【迅雷】で接近するのはこれまでと同じだが‥‥
「傅け! ティルフィング!」
 剣による連続の斬撃。甲虫型の角を切り落とす。
 アンジェリナを真似た戦法。これが最も効率が良いためだ。
 ‥‥この時点で、甲虫型の大半を無力化することに成功していた。

 ***

「くうう! やあああっ!」
 B3型と1体1の攻防を繰り広げる旭。
 大剣を振るい、斬り付ける。が、反撃の突きが来る。
「ぐうっ‥‥!?」
 旭の身体のあちこちから滴る血‥‥。状況はこちらに不利だった。
 純粋な戦闘力のみを求めた結果、生み出されたのがハイブリッドバグズ‥‥。
 相手のほうが1枚上手のようだ。そこへ――
「「旭さん!!」」
 甲虫型を片付けたノエルとティリアが加勢。
 2人はB3型をスピードで翻弄しつつ、ヒットアンドアウェイで攻撃を仕掛けていく。
「助かりました‥‥」
 旭も大剣を握り直し、地を蹴り、踏み出す。
「はあああっ!!」
 上段からの斬撃。それはB3型の胸から脇腹にかけてを切り裂いた。体液が散る。
「はあ‥‥はあ‥‥」
「大丈夫ですか、旭さん?」
 爪を構えたノエルが隣で言う。
「一応‥‥まだやれます」
「では、一気に攻撃を集中しましょう」
 二刀小太刀を構えたティリアが言った。
「了解です」
 首肯。ノエルとティリアは左右側面からB3型へ襲い掛かる。
 旭は正面。先程と同じく大剣を上段の構え。‥‥敵の重装甲を破るにはこれが最良と判断した。
 ――3方向同時攻撃が繰り出される。‥‥B3型はゆっくりと崩れ落ちた。

 ***

「苦戦しているようですね‥‥」
「助かるぜ‥‥」
「感謝ですー」
 疲労の色が見えるヨグと九郎に、クラリアが加勢。
 ヨグと九郎はS3型のスピードに翻弄されっぱなしだった。
 身体中から生えた刃。敵の移動そのものが斬撃となる。
 致命傷ではないが、2人は傷だらけだった。
「じゃあ行くか」
 拳銃を構える九郎。
「りょうかいっ!」
 知覚砲を構えるヨグ。
「私が正面から行けばいいんですね?」
「ああ、俺達が援護する。‥‥それに、あれだけ弾幕を喰らわせたんだ。
 奴の甲殻は脆くなってる‥‥はずだ」
「わかりました」
 九郎の言葉にクラリアは頷き‥‥【迅雷】を使用。一気に飛び出す。
 銃弾と光線の援護が飛ぶ。S3型はそれらを避けつつクラリアに接近。激突。
「‥‥!」
 クラリアの鳩尾にS3型の拳が入っていた。
「ごふっ」
 吐血。だが、クラリアが手にしている剣は‥‥S3型に深々と突き刺さっていた。
「クラリアさん、はなれてっ!」
 ヨグの声。クラリアは血を吐きながらS3型を蹴り飛ばし、剣を引き抜き、後退。
 離れたところで、S3型にヨグの知覚砲の砲撃と、九郎の拳銃の銃撃が集中。
 ほどなく敵は体液塗れになって地に伏した。

 ***

「くうう‥‥さすがに1体5は厳しいのだ‥‥」
 M3型5体と交戦中の子虎。
 大剣を盾にして敵の打撃を何とか防ぐ。
 そこへ――2つの斬撃音。M3型2体が体液を吹き出して倒れる。
 それと共に凛とした女性の声が2つ。
「ごめんね、子虎くん」
「待たせてすまないな」
 アンジェリナと一千風が加勢。
 子虎の両脇を固めてくれる。
「一千風さん! アンジェリナさん! 待っていたのだ!」
「‥‥敵が動いた。注意して」
 一千風の声。M3型5体が迫って来ていた。
 うち2体は一千風とアンジェリナの不意打ちにより大ダメージを受け、動きが鈍い。
「まずはあの2体を狙う。いいか?」
「了解なのだ!」
 刀を構える2人の美女と、大剣を振り上げる美少年(男の娘)。
 ‥‥ほどなくM3型は全滅した。

 ***

 瑞姫はイスルはF2型との戦闘を継続中。
「敵もなかなか硬いね‥‥」
「でも‥‥あれだけの銃弾を受けたんだから‥‥無事ではないはず」
 培養カプセルを盾にしつつ、SMGとガトリング砲で銃撃を加える。
 熱線が来た。慌てて飛び退く。培養カプセルは蒸発。
 続いて光弾の連打。および波動による範囲攻撃。2人の生命力が削られる。
 だが、2人は踏み止まり、銃撃を加えのちに再び遮蔽物へ隠れる。
「行くよ‥‥瑞姫」
「だよね‥‥そろそろ決めなきゃ」
 瑞姫の言葉を聞くと、イスルは【跳弾】を使用。F2型に奇襲をかける。
「障害物があるなら、こういう攻め方だってあるんだよ‥‥。
 ‥‥瑞姫、今っ!!」
「了解!」
 瑞姫は走り、至近距離から銃撃を加える。
「喰らえぇ!」
 イスルも走り、側面から銃撃。
「悪いけど、これで終わり!」
 十字砲火をまともに浴びたF2型は‥‥墜落し、動かなくなった。

 ***

 敵を殲滅した傭兵達は傷の手当てを行う。
 対・上級クラスと思われる新型HB3体との戦闘により、予想以上に消耗してしまった。
 ‥‥手当を終えたのち、傭兵達は可能な限り培養施設を破壊し、最深部を目指す。

●VS敵幹部・前半
 傭兵部隊は予定通り途中の通路で相川小隊と合流。
 相川小隊も‥‥少なからず消耗している様子である。
 彼らはドーム空間を3つも制圧したのだ‥‥無理もない。

 まもなく、最深部へ到着する。警戒しつつ‥‥侵入。
 そこは前回同様、真っ暗闇だった。全員は更に警戒を強める。
「‥‥よォ、また遅かったじゃねェか。今回はサービスしてやったつもりなんだけどなァ?」
 ぱっと照明が灯り、柄シャツを着た金髪の青年が姿を現す。
 バッタの脚を持った――改造強化人間の翔。
「遅かったですわねぇ。のんびり屋さんなのかしら」
 ぱっと照明が灯り、ゴシックワンピース姿の妖艶な女性が姿を現す。
 クロアゲハの羽根を持った――改造強化人間の舞。
「ふん。前回俺に傷をつけたのはまぐれだったのか?」
 ぱっと照明が灯り、和服姿の筋肉質の男性が姿を現す。
 ハサミムシの尾を持った――改造強化人間の玄。

 ‥‥敵幹部3名が現れた。

「まぐれだと? 言ってくれる‥‥!」
 アンジェリナは真っ先に刀を抜き、玄のほうへ駆けた。
 ――が、玄は刀を抜こうともしなかった。
「っ!?」
 金属音。刀と剣が打ち合う音。
 ‥‥暗闇からHB・B3型が姿を現し、アンジェリナに攻撃を仕掛けたのだ。

 そして‥‥舞を守るようにF2型が飛行しながら出現し、
 翔を守るようにS3型が降り立った。
 今度は全ての照明が灯り、最深部の室内――ドーム状の空間の様子が明らかになった。
 ‥‥そこには多数のブリットビートル、レイビートル。そしてM3型の姿。
「お前らがよォ、あまりにもバカスカ動力炉をブチ壊すモンだからよォ、こういう布陣にさせてもらったわけだ。
 気づかなかったのか? アァ?」
 翔がガンを飛ばしてきた。
「‥‥!」
 一千風ははっとする。
 ‥‥これまでの通路に敵が少なかったのは‥‥このためか‥‥!
「これは‥‥わたし達を引き込むための罠‥‥!」
 ぎりりと奥歯を噛みしめる。
「とにかく、対応しなければ! 傭兵部隊は敵幹部と3体のHBをお願いします!
 我々は甲虫型とM3型を‥‥!」
 俊一少尉が声を上げ、相川小隊はすぐさま展開。甲虫型とM3型に対し旺盛な弾幕が飛ぶ。

「くっ‥‥了解です。子虎くん、僕達はS3型を!」
「わかった、ノエルン!」
 大剣を構える子虎。
「では‥‥ボク達は翔‥‥ですね‥‥」
「わかりました‥‥」
 二刀小太刀を構えるティリアと、銃を構えるクラリア。
「俺の相手は女2人か! 物足りねェなァ!!」
 殺意に満ちた翔の声。
「物足りないかどうかは‥‥お手合わせしてから言ってください!」
 銃撃を加えるクラリア。翔はジグザグに後退しながら避けた。
「ハッハー!!」
 反撃のロケットランチャーが飛んでくる。爆発。一同散開。
 破片によるダメージを受ける。
「くっ‥‥さすがは敵の最高戦力の1人‥‥いきます!」
 クラリアは踏み出した。
「謳え! ハミングバード!」
 【迅雷】で接近したのち、剣を振り被る。
「当たらねェよォ!」
 翔はまたも後退しつつ対物ライフルに持ち替え、射撃。
「‥‥っ!」
 それはクラリアの肩を撃ち抜いた。

 ***

「ボクとイスルの相手は‥‥このお姉さんかな‥‥」
「そうみたいだね‥‥」
 敵は飛行・浮遊している‥‥。
 F2型と似たような性質と判断した瑞姫とイスルはSMGとガトリング砲を構える。
「あら、カップル? ならどちらか片方を先に‥‥うふふ、なんてね〜」

「ボクの相手はこいつかっ。飛んでるのは厄介っ!」
 ヨグが言い、知覚砲を構える。
 視線の先にはF2型。そして‥‥
「どうして弟さんに愛してるって言わないのですか!!」
 ヨグは声を張り上げた。舞に対する問い。翔にも聞こえるように、わざと大声で。
(僕はお見通しだっ)
 と、プリン好きの少年はどや顔。
「ん〜? どうゆうこと? 私は翔ちゃんのこと、すっごく愛してるけど? ねえ、翔ちゃ〜ん!」
「おうよ! 姉貴! 『俺は姉貴さえ居れば』誰にも負けねェ!! こんな奴らにもなァ!!」
 やや離れたところから大声で返答。すごく嬉しそう。それと共に激しい銃撃音。
 ‥‥返って敵にやる気を与えてしまったらしい。ヨグは頬からぽたりと汗を垂らす。
「でもっ! ボク達だって負けないっ!」
 知覚砲を構えて発射。

 ***

「くっ、邪魔だ!」
 アンジェリナは刀を一閃。横に薙いでB3型を退ける。
 再度、玄を見据えて――両手で刀を構え直す。
「私を、世間一般のエースアサルトと思わないことだな」
「は、ははは。残念だが、お前の相手は俺ではない」
「なんだと? ‥‥っ!」
 また玄との間にB3型が割り込んできた。
(こいつ‥‥! 私を奴と戦わせないつもりか‥‥!)
 アンジェリナは刀を振るい、仕方なく迎え撃つ。

「今回も相手お願いするわ」
「‥‥僕の名前は旭。死合う相手として、覚えてくれると嬉しい」
「アンジェリナさんは持っていかれちまったか‥‥しょうがねぇ、こっちはこっちでやるしかねぇな‥‥」
 刀を構える一千風。大剣を振り上げる旭。SMGを構える九郎。
「良い心意気だ‥‥では――参る!」
 玄は神速の抜刀と共に踏み込んできた。
 斬撃と鋏の一撃により3人は身体を切り裂かれる。血が、飛び散った。

●VS敵幹部・後半
 ノエルと子虎はS3型と交戦。
「こんな状況じゃ‥‥出し惜しみなんかしていられない! 子虎くん!」
「わかってるよ! ノエルン!」
 【瞬天速】を用いて高速戦闘を行うノエル。【急所突き】も追加して打撃力の向上を図る。
「来る‥‥!」
 ノエルがS3型を追い込んだ。子虎の正面に来る。敵の攻撃の瞬間――
「やあああ!!」
 【豪破斬撃】を使用し、大剣を振るい、上段からの一撃。甲殻に亀裂が走る。
「ぐっ‥‥まだまだぁ!」
 攻撃を受けつつも、続いて【ソニックブーム】での追撃。
 更に待ち伏せていたノエルが【急所突き】を使用しての爪の斬撃を何度も叩き込む。
 こちらも大ダメージを受けている‥‥しかし、そうしてでも早く倒さなければ‥‥2人は‥‥。

 ***

 クラリアとティリアは翔と交戦中。
 しかし――引き撃ちを徹底している翔。やはり『こう広い空間では向こうに分がある』。
 『狭い空間に誘い込む』か『激昂させて判断力を低下させる』か、しなければ‥‥。

 2人は2方向から同時に攻撃を仕掛けるが、後退して避けられてしまう。
 クラリアは全スキルを使用。地面を這うようにして一気に肉薄。
「くらえっ‥‥チェスト――!!」
 剣を振り上げ、下方から斬り上げる。
「ちっ‥‥」
 それは翔のバッタ脚を少しだけ傷つけた。奇異な戦法に、少しだけ回避が遅れたらしい。
「痛ェんだよオラァ!!」
 強靭な脚力による蹴り。まともに受けたクラリアは吹き飛ばされ、壁に叩き付けられてしまう。
 ぐったりとする彼女‥‥。
「クラリアさん!」
 ティリアの注意がそれる。そこへ――
「よそ見してんじゃネェよ!」
 対物ライフルが放たれる。
「あ――」
 その銃弾はティリアの腹部を貫いた。
 倒れ伏すティリア。腹部からはどくどくと真っ赤な液体が流れ出る。
「気が緩み過ぎなんだよ!」
「ティリアさん‥‥? うわあああ!!」
 駆け付け、絶叫するノエル。
「なんだぁ? お前の女だったのかぁ?」
「お前がぁ! お前がぁぁぁ!!」
 鬼の形相で、ノエルは爪を振るう。翔は後退。
「ダメだよノエルン! 迂闊に近づいたら! 2人ともまだ息はある!」
 だがノエルの耳には届かない。
「ハッハー!」
「ぐあぁ!?」
 蹴り飛ばされるノエル。子虎の近くの床に激突。
「纏めてお陀仏しろやァ!」
 そこに、ロケットランチャーが放たれた‥‥。

 ***

「うわあああ!」
「ぐああああ!」
「あはは、うふふ」
 舞と交戦中の瑞姫とイスル。
 2人は銃撃で対応していたが‥‥単純に火力で負けてしまっている。
 遮蔽物を使おうにも、最深部にはそのようなものは無い。
 『もっと対応出来る人数が居れば‥‥』。
 熱線を受けて全身に火傷を負ってしまう。
「イスルぅ‥‥」
「瑞姫ぃ‥‥」
 2人は床に這いつくばりながら、手を重ね合わせた。
「なかなかのコンビネーションだったけど、それだけじゃ私には勝てないかな?」
 そして無慈悲にも、再度2人へ熱線が放たれた‥‥。

 ***

 ヨグはF2型と交戦。
「飛ぶなっ。落ちてろっ」
 知覚砲と熱線や光弾、波動の撃ち合い。
「当たれー!!」
 F2型の羽根を貫き、墜落させることに成功するも、火力は変わらず。
 こちらも、単純な火力では負けていた‥‥しかし、
 ヨグは【竜の血】を用いて戦っていたため、状況は五分五分。
 ほどなくして‥‥F2型を撃破。
「あは、あははっ。ボク‥‥勝ったよ‥‥」
 だが‥‥ヨグもまた、生命力が限界に達し、その場に倒れた。

 ***

 一千風、旭、九郎は玄と交戦中。
 刀と刀が打ち合い、刀と大剣が打ち合い、SMGの銃撃は分厚い皮膚によって防がれる。
「どんだけ硬いんだよ、このおっさん‥‥」
 九郎がぼやいた。
「それは褒め言葉と受け取るが?」
 鋏の一撃が来る! 3人が目を合わせた。
 一千風が刀での斬撃。旭が全スキルを用いての斬撃を尾に叩き込む。
「ぬぅ‥‥!」
 だがその瞬間、玄の両手はフリーとなった。
 両手の刀から斬撃を飛ばす。それは銃撃を行おうとした九郎へ襲い掛かった。
 ‥‥血飛沫を上げて倒れ伏す九郎。
「尾を狙うとは、なかなかやるな。しかし、手が少し足りなかったようだな?」
 ハサミムシの尾は、斬痕が刻まれ血を流しているものの、健在。
「「‥‥!?」」
 玄は一千風と旭を睨みつける。
 神速の踏み込み。一千風と旭の腹部から血が舞った。

 ***

「こいつ‥‥! 厄介な‥‥!」
 アンジェリナは重剣士を極めたようなHB・B3型と戦闘。
 何度も刀と剣とで打ち合う。既に双方斬り傷だらけ。
 実力は‥‥自分の勘が正しければ‥‥五分五分‥‥。
 本来なら2人以上で戦うべき相手‥‥。
「だが‥‥!」
 剛剣一閃! 踏み込みと同時にアンジェリナの強力な斬撃。
 それと同時にB3型も踏み出していた。2つの刀から繰り出された斬撃が‥‥
 アンジェリナの身体を鎧ごと斬り裂く。
 1人と1体が倒れ伏したのはほぼ同時だった‥‥。

 ***

 床に倒れている一千風‥‥。
「せめて‥‥動力炉だけでも‥‥」
 一撃で動力炉を破壊できる知覚砲を持つのは‥‥ヨグだけ。
「ヨグ‥‥さん‥‥?」
 倒れているヨグに目を向けるが‥‥動かない。
 そこへ翔が跳躍して来て、着地した。
 軽機関銃を乱射し、ヨグの知覚砲を破壊。
「残念だったなァ」
「力押しだけでは」
「我らには勝てん」
 敵幹部3名の言葉が段々、いや、意識が遠退いてゆく‥‥。

 ***

「隊長! 傭兵さん達が!」
「‥‥っ」
 M3型と交戦中の達矢が声を上げ、俊一少尉が確認。
 ‥‥傭兵は全員戦闘不能となっていた。
「これ以上の戦闘の続行は不可能と判断します! 総員撤退!
 第3、4分隊は負傷者の搬送を! 第1、2分隊は殿を務めます。
 達矢君、行けますね?」
「くそっ! くそっ! ‥‥了解です!!」

 ‥‥撤退を開始する一同。追撃は、熾烈を極めた‥‥。