タイトル:蟲喰い7マスター:とりる

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 難しい
参加人数: 12 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/08/14 04:44

●オープニング本文


前回のリプレイを見る


 九州某所。キメラプラント乙1号――。
 青白い光を放つ培養カプセルが無数に並ぶ部屋、研究室。
「‥‥」
 白衣姿の初老の男性。目の前には培養カプセルが3つ。
 男の名はプロフェッサー・芳賀。芳賀教授と呼ばれている。
 九州で起こる虫型キメラ事件の首謀者。
 ‥‥九州バグア軍が事実上壊滅した今でも、関係が無いとばかりに独自の研究を続けていた。

 しばらくして――
 プシューという音と共に3つの培養カプセルの扉が一斉にゆっくりと開いた。
 中に収められていたのは裸体の男女3名。
 1人は金髪で長身の青年。1人は20代前半と思しき美女。1人は筋肉質の壮年の男性。
 3人は目を開け、培養カプセルから出ると、机の上に用意してあった衣服を纏う。
「これで調整は終わりかァ? いい加減寝てんのもつまんねェぞ、アァ? 芳賀のじいさんよォ?」
 柄シャツを着た金髪の青年は芳賀教授にガンを飛ばす。
 ‥‥芳賀教授は特に臆することなく、答える。
「これで完了だ」
「ンならいんだけどよォ。ったくあのクソ傭兵ども‥‥調整の邪魔しやがって‥‥」
 ぶつぶつと呟く青年。彼の名は、翔。
「まあいいじゃない。これで完全になれたのだし」
「アァ、姉貴。そうだな」
 胸元と背中の開いた、黒のゴシックワンピースを着た長い黒髪の美しい女性‥‥名は舞という。
 彼女の言葉に翔は首をぶんぶんと縦に振った。
「‥‥いずれ、傭兵ともやり合う事になるだろう」
「俺は今姉貴と話してンだ! テメェは黙ってろオッサン!」
「‥‥」
 翔に怒鳴られ、和服を着た筋肉質の男性‥‥玄は押し黙る。
「あら翔ちゃんったら。お行儀良くなさいとお姉ちゃんいつも言っているのに」
「す、すまねェ! 姉貴!!」
 翔はわたわたと取り乱す。
「‥‥玄の言う通りだ。お前達3人には傭兵の相手をして貰う」
「アァん?」
 またガンを飛ばす翔。
「――傭兵とUPC軍の歩兵小隊の相手をして来いと言っている」
 芳賀教授は鋭い眼光で翔を見返す。凄まじい殺気。翔は思わず飛び退いた。
「‥‥わァったよ。行ってくりゃアいんだろ、行ってくりゃア」
 翔は汗を垂らしながら渋々同意する。
「お前達の肉体のテストにもなるだろう。程々に留めておけ」
「分かりましたわ」
「了解致した」
 妖艶に笑う舞と、頷く玄。そうして、3人は研究室を出てゆく‥‥。
「‥‥」
 静かになった研究室。
 芳賀教授は3人のスキャンデータを画面に表示させる。
 ‥‥3人の身体は、普通の人間とは明らかに異なっていた。
 翔の脚部は‥‥バッタの物となっている。
 舞の背中には‥‥クロアゲハの羽根が生えている。
 玄の臀部からは‥‥ハサミムシの尾が生えている。
 彼らは――
「改造強化人間」
 芳賀教授はぽつりと言った。
 捕獲した人間に強力な洗脳を施し、肉体を強化し、強化人間とした後‥‥
 キメラの肉体の一部を移植。戦闘能力を飛躍的に高めた存在。
 強化人間に、後からキメラの部位を移植する為、知能はそのまま。
「高い戦闘能力と高い知能の両立‥‥くくく」
 邪悪な笑みを浮かべる白衣の男。
 バグア的にはわざわざ使い捨ての兵器であるキメラの部位を移植するなど
 普通はしない、考えない事なのだが‥‥芳賀教授はあえてそれを選んだ。
 ハイブリッドバグズで得られた膨大な戦闘データ。それが彼の自信を裏付けていた。
「くくく‥‥私の理論を、あの3人が証明してくれる‥‥くくく」
 芳賀教授の笑い声が、薄暗い研究室に小さく響いた。

 ***

 相川小隊駐屯基地。ブリーフィングルーム――。
 そこには総勢32名の隊員が集結していた。
 皆を見回し、隊長である相川・俊一少尉が口を開く。
「全員揃いましたね。‥‥ここに再び全員が揃った事を嬉しく思います。皆さん、おかえりなさい」
 俊一少尉はにこりと微笑む。
「また皆と一緒に戦えるんだな」
「うん、そうだよ、たっちゃん。本当に良かった」
 深森・達矢兵長と牧原・蝶子曹長も笑い合う。
「治療の甲斐がありました‥‥」
 頬に手を沿え、俊一少尉の笑顔を横から眺め、うっとりとした表情を浮かべる米谷・里美少尉。
「うむ。やはり坊主や女子は元気でなくてはな」
 竹中・宗司軍曹もうんうんと頷く。
 ‥‥説明すると、これまで負傷し、戦線を離脱していた約半数の隊員達が復帰したのだった。
 殆どが少年少女のこの小隊。皆は仲間の復帰を心から喜んだ。

「では皆さん。さっそくですが次の作戦です。目標は――キメラプラント乙4号」
 ホワイトボードに貼られた地図をポインターでビシッと指し示す。
「今回は傭兵との共同作戦になります。4号ともなれば‥‥激戦は必至。皆さん、分かりますね?」
 俊一少尉は真剣な表情で隊員達を見回した。
「また、怪我をする可能性は高いでしょう。重傷を負う可能性もまたあります。
 しかし、死なないで下さい。全員で生きて帰って来る、これが我が小隊の隊訓‥‥でなくて‥‥」
 そこでちょっと言葉を詰まらせる。数秒思案。
「ええと‥‥約束、です。約束ですよ。私との約束。守って下さいね」
 隊員全員から「了解!!」との返事。
「では各員、出撃準備に取り掛かって下さい」
「了解!」

●参加者一覧

ノエル・アレノア(ga0237
15歳・♂・PN
藤村 瑠亥(ga3862
22歳・♂・PN
遠石 一千風(ga3970
23歳・♀・PN
旭(ga6764
26歳・♂・AA
アンジェリナ・ルヴァン(ga6940
20歳・♀・AA
砕牙 九郎(ga7366
21歳・♂・AA
遠倉 雨音(gb0338
24歳・♀・JG
RENN(gb1931
17歳・♂・HD
冴城 アスカ(gb4188
28歳・♀・PN
ティリア=シルフィード(gb4903
17歳・♀・PN
天原大地(gb5927
24歳・♂・AA
白神 空狐(gc7631
21歳・♂・SN

●リプレイ本文

●キメラプラント乙4号攻略作戦
 相川小隊駐屯基地。ブリーフィングルーム――。
 12名の傭兵と、相川小隊総員32名が一堂に会していた。

 浅黄色の髪の少年、ノエル・アレノア(ga0237)は周りを見回す。
「相川小隊も持ち治ったようで何よりです。今回は傭兵側から人数を割く必要はなさそうですね」
(‥‥さ、僕も気合を入れ直そう。本番は、これからだろうから)
 ぐっと、両の拳を握る。

 ノエルの隣に佇む空色の髪の少女、ティリア=シルフィード(gb4903)が口を開く。
「いよいよプラントも5本の指で数えられるほどまでになりました。
 ここから先はこれまで以上の激戦は必至‥‥達矢さん達と合同で動けると言っても油断は出来ません。
 今まで通り、確実に潰して行くだけです」
 ティリアとノエルは互いに見つめ合い、手を重ねた。

 藤村 瑠亥(ga3862)はノエルと同様に小隊の面々に目をやる。
「キメラプラントに‥‥あの分隊か。いつの間にか大所帯になったものだな。
 まぁ、向こうは覚えてないかもしれんが、一緒した事もある」
 瑠亥の言う分隊とは別の部隊の事ではないだろうか。
 彼女達は現在、KV中隊となって九州解放に大いに貢献している。

 瑠亥の恋人、艶やかな長い黒髪を持つ少女、遠倉 雨音(gb0338)は顎に手を当てる。
(2年前に受けた対HB依頼‥‥あの時は、戦場となったプラントは乙11号プラントでしたが‥‥
 それも正規軍が封鎖をしているだけで、攻略までには至っていなかった筈‥‥)
 雨音の心配は杞憂である。キメラプラント乙11号は既に相川小隊によって制圧済みだ。
(今では1桁ですか。ここまでは順調‥‥なのでしょうか?
 一度死にかけましたから‥‥今回は、あんな事にならぬ様に‥‥ですね)
 過去の、HB・S改2型との戦闘を想起する‥‥。

 雨音にも劣らぬ黒髪の美女、アンジェリナ・ルヴァン(ga6940)は静かに目を閉じ、神経を集中させていた。
(後4つ‥‥か‥‥)
 キメラプラント攻略も佳境に入ったと見るべきだろう‥‥。

 砕牙 九郎(ga7366)は愛銃の手入れ中。
「大分潰して来たが、後少し‥‥。気合入れていかねぇとな。‥‥よしっと」
 銃の手入れが終わると、彼は過去のプラント攻略作戦のデータを端末に表示、動力炉に弱点がないか検証を行う。
 しかし‥‥プラントごとに動力炉の形状は違っていた。仕組みは恐らく同じだろうが‥‥人類には理解不能。
 弱点らしきものは見つからなかった。出来るのは動力ケーブルを狙う事くらいか‥‥。

 長身かつスレンダーな体型の美女、遠石 一千風(ga3970)は思案中‥‥。
(前回、最後に聞こえた声の主は誰だっだのだろう。虫キメラしかいなかったはずが。まさか強化人間?
 例え何があっても、私達傭兵と相川小隊全員の力が合わされば、教授の計画を崩せる筈)
 彼女の瞳には確固たる決意が秘められていた。

 旭(ga6764)は前回のプラント攻略作戦時に聞いた声の主について考える。
「カウントダウンも5を切ったのか。
 前回の3人? 3体? みたいに、見た事ないタイプがあれこれ出てきてもおかしくない、か」

 柿原 錬(gb1931)は感情や本能を抑え、冷静かつ知性的に行動するべく心を落ち着かせる。
(冷静に、冷静に‥‥。いつも通りやればいい‥‥)
 錬は胸に手を当て、ゆっくりと深呼吸をした。

 相川小隊に挨拶する長身かつ豊満な体型の美女、冴城 アスカ(gb4188)。
「皆、お久しぶりね‥‥今回も厳しい戦いだけど、必ず生き残るわよ」
「ああ、勿論だ」
「たっちゃんには私が付いているから大丈夫です!」
 深森・達矢兵長と牧原・蝶子曹長が答えた。

 天原大地(gb5927)は険しい表情を浮かべていた。
(キメラプラントを作った奴がどういうつもりかは知らねェ。だがコレじゃまるで、あの男の再来だ)
 過去に対峙した研究者との出来事を回想‥‥。大地はその研究者と芳賀教授を重ねているようだ‥‥。

 狐の面を被った些か奇妙な風貌の男性、白神 空狐(gc7631)。
(さてさて、相手が蟲なら‥‥さっさと掻っ喰らっちまうかね)
「まぁ、月並みだけど‥‥全員無事で帰って来いよってね」
「ええ、そのつもりです」
 相川小隊隊長、相川・俊一少尉は深く頷く。

 程無く出撃時刻となり、一同はブリーフィングルームを後にした――。

●ドーム空間攻略
 軍用トラックでキメラプラント乙4号付近まで移動した傭兵部隊と相川小隊。
 周辺を警戒しつつ入口へ接近。一斉に内部へ突入。
 相川小隊の銃撃にてプラント内部・入口付近に居た甲虫型を撃破。
 その後、傭兵部隊と相川小隊は二手に分かれる‥‥。

 ***

 点在する甲虫型を撃破しながら通路を進む傭兵部隊。
 暫くして、ドーム空間の入口付近へ到達。
 手順を確認し、まずはペネトレーター組が先行して突入。

 ノエル、瑠亥、一千風、アスカが移動スキルを使用。
 展開される弾幕と無数に飛ぶ光線の中を一気に駆け抜け、甲虫型の群れへ飛び込む。
 ティリアは移動スキルを持たない為、若干出遅れる形となった。

「まずは統制を乱す‥‥! やあああっ!」
 ノエルは甲虫型に肉薄し、機械剣を甲殻に突き刺す。

「蟲が‥‥わらわらと!」
 瑠亥は散弾銃で射撃し、甲殻に風穴を空けつつ接近。
 素早く散弾銃を背中に仕舞い。二刀小太刀を抜いて斬撃。甲虫型をX字に切り裂く。蟲の体液が舞った‥‥。

 一千風は刀での斬撃で角を切り落とし、脚甲で背中を思い切り蹴り付け、ぐしゃりとひしゃげさせ撃破。
「もう流石に見飽きたわ」

 アスカは敵の懐に潜り込み、足払いで体勢を崩させる。
 そして背中に飛び乗り、甲殻の隙間にガンズトンファーを捻じ込み‥‥
「喰らいなさい」
 ゼロ距離射撃。連続する銃撃音。甲虫型はびくびくと痙攣し動かなくなった。

 ティリアは二刀小太刀を振るって甲殻に何度も斬撃を見舞う。
「相変わらず、うじゃうじゃと‥‥でも、数だけ居たって!」

 PN組の撹乱により敵の統制は乱れた。そこへ後続が突入。

 旭は脚甲を装備し、【虚闇黒衣】と【迅雷】を使用し光線を防ぎつつ接敵。
 跳躍。着地と同時に蹴りを繰り出す。
 爪先が甲殻にめり込み、内部まで達し、体液が噴出した。
 旭は足を引き抜くと、脚甲を外して仕舞い、大剣を装備。
「はあああっ!!」
 上段からの重い一撃。甲殻を割られた甲虫型は沈黙。そのまま大剣での戦闘に移行。

 アンジェリナは刀を振るって砲身となっている甲虫型の角を切り落とし無力化した後に頭部を破壊。
「‥‥ふん」
 砲撃型は厄介。早々に潰す。‥‥最早慣れた物だ。黙々と、次々撃破していく。

 九郎はSMGで弾幕を張りながら接近。銃弾は確実に敵の甲殻へ突き刺さる。
 【豪力発現】を使用。甲虫型を蹴り飛ばして同士討ちを狙う‥‥が
 甲虫型は味方が射線上に居る場合、射撃は行わない様だった。

「行きます‥‥!」
 雨音は【制圧射撃】を使用。SMGにて猛烈な弾幕を展開。敵の動きを阻害する。

「撃ち抜く‥‥!」
 そこへ錬が知覚銃で的確な射撃を加えていく。甲虫型は甲殻を焼かれるか、または貫かれた。

「よっと。接近戦はにーさんに任せるってね」
 空狐は二挺拳銃にて【援護射撃】でのサポートを行う。

「了解したぜ」
 大地は援護を受けながら、刀による斬撃で甲殻を切り裂き、確実に撃破していった。

 ***

 甲虫型の半数以上を片付けた傭兵達は各個撃破へ。

 旭はレイビートルの対応を行っていた。
 光線を【虚闇黒衣】で受け止めながら、大剣を振り被り、一撃の下に切り伏せていく。
「熱っ!? ぐうう、けど‥‥丈夫さには自信があるんだよね。――やあああっ!!」
 大剣を横に薙ぐ。側面から光線を放ってきた甲虫型に斬撃。また一匹を撃破。

 空狐は二挺拳銃の銃口を甲虫型に向ける。
「近づかせるかよってね‥‥吼えな、バラキエル! パラポネラ!」
 一斉射撃。‥‥だが赤い壁に阻まれて中々ダメージを与えられない。
 それを見ていた九郎が言う。
「半端な物理攻撃じゃ奴らの甲殻は突破出来ねぇ、援護を頼む」
「‥‥了解したよってね」
 空狐は頷き、今度は敵の動きを阻害する様に銃撃を加えた。

 九郎の目の前には‥‥HB・M2型。
「量産型のHBか‥‥だからと言って油断は出来ねぇな」
 量産型だから弱い、などという事は決して無い。
 九郎は打撃と強酸のブレスを警戒し距離を取りながらSMGを連射。
 弾幕で甲殻を削り、薄くなった所へ、リボルバーの銃撃を確実に当てていく。
 甲殻を突破され、内部を貫かれたM2型1体が体液を噴出しながら倒れた。

「僕だって‥‥やれる筈‥‥!」
 錬はM2型に対し知覚銃で射撃。甲殻を焼く。
 M2型の反撃。連続の打撃の後、強酸のブレスを放ってきた。
「く、ぐうう‥‥」
 AU−KVの装甲の一部が融解。打撃によるダメージもある。
「でも‥‥!」
 冷静さを失ってはいけない‥‥!
 錬は先程の銃撃で焼き焦がした部分に照準。
 再度知覚銃で射撃。甲殻を融解させ内部までダメージを与えた。

 ノエル、ティリア、一千風の3人は連携して攻撃。狙いは甲虫型。
「行きます、ティリアさん! 一千風さん!」
「わかりました、ノエルさん!」
「了解です‥‥!」
 ノエルの機械剣が甲殻を焼き切る。
 ティリアの二刀小太刀による斬撃が更に傷を広げる。
 一千風が刀で斬り付け、トドメを刺す。
 それを繰り返し、確実に敵を撃破。
 流石に無傷とは言えないが、3人は弾幕と光線を極力回避しつつ、次々に甲虫型を屠っていった。

 瑠亥はM2型2体を相手に立ち回る。
「厄介だな‥‥」
 強酸のブレスを回避しつつ、二刀小太刀で斬り付ける。が、側面からもう1体のM2型の打撃が来る。
「やらせません‥‥!」
 そこへ雨音がSMGで銃撃。M2型は一旦後退。
「助かる」
「いえ。また来ます!」
「――はぁっ!」
 雨音の【援護射撃】でのサポートを受けながら、瑠亥は拳を繰り出してくるM2型に斬撃を放つ。
 ‥‥1体が倒れた。
「こちらも‥‥!」
 SMGの弾幕でM2型の甲殻を削る雨音。そして片手の拳銃で狙いを付け、銃撃。身体を貫かれた1体が沈黙。

 アンジェリナは【急所突き】を使用しつつ、刀を振るってM2型と交戦していた。
「‥‥!」
 刀による斬撃と、拳による打撃の応酬。
(搦め手ではなく、単純に近接戦に強いだけの敵ならば‥‥相手にし易いと言える‥‥)
 打撃を手甲で受ける。その隙に、刀を突き出し、M2型の腹に突き刺した。体液が噴出す。もがくM2型。
「‥‥やぁぁぁっ!!」
 アンジェリナは刀を引き抜き、振り上げ、今度は袈裟斬りを見舞う。体液を滴らせ‥‥M2型は倒れた。

 アスカと大地は連携してM2型3体と交戦。
 アスカはM2型の打撃をガンズトンファーで受け止める。
「‥‥っ。中々良い攻撃ね。でもっ‥‥!」
 反撃。トンファーによる打撃、及び脚甲による蹴りを放つ。それを受けたM2型の甲殻に亀裂が走る。
「アスカ、無理はするな!」
 SMGによる銃撃。銃弾が何発も突き刺さり、甲殻が砕けた。
「OK、解ってるっ!」
 アスカは甲殻が砕けた部分にハイキックを叩き込む。‥‥M2型1体を撃破。
「それなら良いが‥‥」
 大地は強酸のブレスを警戒してか、徹底して距離を取って交戦していた。
 アスカの近接攻撃に合わせてSMGの銃弾をM2型に浴びせる。
 基本は大地の銃撃によって甲殻が削られた部分にアスカが近接攻撃を行う、といった戦法だった。

 ***

 それから暫くして、ドーム内の敵の殲滅を完了。
 傭兵達は傷の手当てをした後、培養施設の破壊を行う。
「やっぱり爆弾や、ちまちました操作で破壊するのは性に合わないわ」
 アスカは操作盤を探したが、それらしき物は見当たらない。
 ‥‥というか、どういう仕組みになっているのかさっぱり理解出来なかった。
 バグア由来の技術を用いて造られた施設である。致し方ない。
 という訳でガンズトンファーで銃撃。培養カプセルを片っ端から破壊していく。
「やるからには徹底的にやらないとね」
 他のメンバーもそれぞれの獲物で培養カプセルをメタメタに破壊。‥‥軽いストレス解消になりそうだ。
 ただし、キメラの幼生の断末魔は非常に不愉快だったが‥‥。こればかりは何度聞いても慣れない‥‥。

 ***

 培養施設の大半を破壊した傭兵部隊は、次のドームへ向かう。

●大型ドーム攻略
 ドーム空間を制圧した傭兵部隊。相川小隊も滞り無く進攻し、同様にドーム空間を制圧した。
 傭兵部隊の現在位置は大型ドーム空間の入り口付近。反対側の入り口付近には相川小隊が待機している。
 無線で連絡を取り合い、タイミングを合わせて、同時に‥‥突入!

 そこはこれまでのドームより2回りほど広い空間だった。
 傭兵達が前を見回すと‥‥甲虫型の群れ。M2型の姿は今の所見られない‥‥が。
 代わりにバッタの頭部をした、黒と緑のHB11体を確認。まずその11体が動いた。
 こちらに向かって突進して来る。――速い!
 相川小隊はすぐさま展開。甲虫型に対し、統率の取れた銃撃を開始。
「甲虫型はこちらで対応します! 傭兵部隊はHBを!」
 俊一少尉が叫ぶ。傭兵部隊全員が一斉に戦闘行動を開始。

 ***

 緑のHBも素早いが‥‥黒のHBの素早さは段違いだった。
 瑠亥、雨音、ノエル、ティリア、一千風の5人が対応に当たる。

 黒のHB――S3型は全身から生えた刃を持って傭兵達の間を駆け抜ける。
 移動その物が斬撃となり、傭兵達の肉体を傷つけ、真っ赤な血が飛ぶ。

 瑠亥はS3型の圧倒的な機動力に対抗すべく、【迅雷】を使用した高速戦闘で対応。
 すれ違う瞬間に二刀小太刀で斬り付ける。しかし甲殻を幾らか削ったのみ。
「相変わらず固い蟲だ‥‥!」

 雨音はSMGによる【制圧射撃】で行動を阻害しようとするも、S3型は回避。
「なんて速さ‥‥!」
 過去、大いに苦戦させられ、自分自身も殺されかけたS改2型――。
 しかしこの黒いバッタ顔のHBは、それよりも速い――!

 ノエルと一千風は【瞬天速】を使用し、瑠亥と同様に高速戦闘で対応を試みる。
(高速格闘型‥‥何とか追いついて見せないと‥‥負けられない!)
「どんな強力なキメラだろうと、絶対負ける訳にはいかない」
 S3型と正面からぶつかるノエルと一千風。機械剣と刀が振るわれる。
 ――それはS3型を捉えた。が、やはり甲殻を削ったのみ。
「ぐあぁっ!?」
「きゃあぁっ!?」
 全身の刃による斬撃を受け、ノエルと一千風の肌が切り裂かれ、鮮血が散る。

「ノエルさん! 一千風さん! ‥‥くっ!」
 移動スキルを持たないティリアは中々攻撃の機会を見出せずにいた。
「ならば‥‥!」
 わざと前に出て、標的になる。S3型が突撃して来た。
 ティリアは【疾風】を使用し、反撃を試みる。――インパクト。
「‥‥っ」
 二刀小太刀がS3型の甲殻に、わずかに食い込み傷を付けるが、ティリアも刃によりダメージを受ける。
 5人の傭兵は苦戦を強いられた‥‥。

 ***

 アスカと大地は緑のバッタ顔のHB――M3型2体の対応に当たる。
 アスカは【瞬天速】を用いた高速戦闘で対応。
「速い‥‥けど、付いていけない訳じゃない‥‥!」
 肉薄し、ガンズトンファーの打撃と脚甲の蹴りを打ち込む。甲殻に亀裂が入る。
 M3型はS型のダウングレード版である様だ。攻撃手段はS3型に同じく打撃と全身の刃‥‥。
「こっちは追いつけねぇが‥‥それなら攻撃してくる瞬間を狙えば良い!!」
 大地はSMGで射撃し牽制しつつ、敵の攻撃の瞬間に刀を振るって反撃。
 ダメージを受けるが、敵の甲殻も削られる。

 旭とアンジェリナはM3型2体の対応。
 旭は【迅雷】を使用しつつ交戦。ただしPN組とは違い、追いつくまでには至らない。
 重装備をしている為だ‥‥。大地などと同じく反撃を当てていく。
「来た‥‥! やあああっ!!」
 敵が拳を繰り出すと同時に大剣を振り上げる。打撃と斬撃。双方にダメージ。
 威力では旭の方が上か‥‥。流石に大きな獲物を持っているだけの事はある。
 M3型は旭に拳を打ち込んだまま動かない(一瞬だが)。
(動きを止めた? チャンス!)
 再度斬り付けようとする旭。しかし‥‥M3型の口が開き、強酸のブレスが放たれた。
 この至近距離では避ける事など無理。
「ぐううう!?」
 身を焼かれる激痛に旭は表情を歪める。
(こいつ‥‥M2と同じ強酸のブレスを持っているのか‥‥!)

 アンジェリナは【急所突き】を使用した刀による反撃で対応。
「いくら速くとも、攻撃の瞬間には接近せねばなるまい」
 M3型の拳、もしくは身体中から生えた刃が迫る瞬間に刀による斬撃を見舞う。
「――はあっ!」
 敵の攻撃は手甲で受け、ダメージを極力軽減していた。
 こちらもダメージを受けるが、確実な手段だ。
 強酸のブレスには警戒しなければならないが、純粋な戦闘能力ではアンジェリナに分がある。

 空狐、九郎、錬はM3型2体の対応。‥‥苦戦中である。
 空狐が【二連射】を使用し二挺拳銃で射撃するも、敵は素早く、全く当たらない。
「速過ぎだよ‥‥ってね‥‥」
 しかし‥‥牽制にはなる。
「俺と錬が前に出る! 援護を頼むぜ!」
「ん、了解ってね」
 九郎は接近して来るM3型に対し、SMGとリボルバーで猛射を行う。
「喰らえよ!」
 錬は知覚銃を連射。
「当たれぇ!」
 銃弾と光線はM3型の甲殻を傷つけ、焼く。
 M3型2体が3人の間を通り抜けた。‥‥僅かに間をおいて血飛沫が上がる。
 ――身体中の刃による斬撃。
「があっ!?」
「うわぁ!?」
「‥‥っ!!」
 傭兵3人は膝を突き、荒い息をする。

 ***

「傭兵さん達も苦戦している様ですね。我々も前に出ます。達矢くん、宗司さん、里美さん!」
 俊一少尉の言葉に3人から「了解!」との返答。
 俊一、達矢、宗司、里美の分隊長クラス4人がM3型4体と交戦。
「他の隊員は弾幕を維持、引き続き甲虫型の排除を!」
 俊一少尉の指示が飛ぶ。
「蝶子は援護を頼む!」
「わかった、たっちゃん!」
 蝶子は知覚砲による砲撃で4人の援護を行う。

 ***

 S3型対応――。
 相変わらずの高速戦闘が続いていた。

 雨音はSMGでの【援護射撃】でサポートに徹する。
「直接ダメージを与えられなくとも‥‥!」

 瑠亥は【迅雷】を使用しつつ二刀小太刀で斬撃。
 これで何度目か‥‥こちらもかなりのダメージを受けているが‥‥S3型も傷口から体液を滴らせている。
 それなりのダメージを与えている様だ。――またS3型が接近して来た。拳が飛ぶ。
 瑠亥は【回転舞】を使用して回避。
(ここだ‥‥!)
 【残像斬】を使用してのカウンター。二刀小太刀で脚部に斬撃を加える。
 S3型の動きが僅かに鈍った。その隙に――ノエル、ティリア、一千風が3方向から囲む様に接近。
 ノエルは【急所突き】を使用した短剣による斬撃。
 ティリアは【円閃】を使用した二刀小太刀による斬撃。
 一千風は【急所突き】と【限界突破】を使用した刀による連続の斬撃。
 3方向同時攻撃。S3型に大ダメージを与えた。
 刃による反撃を防ぐべく、3人はすぐに散開。

 瑠亥が【迅雷】を使用して接近、すれ違い様にS3型へ二刀小太刀を振るう。
「――終わりだ」
 S3型は大量の体液を噴出し、崩れ落ち、動かなくなった‥‥。

 ***

 繰り出されるM3型の拳を、アンジェリナは手甲で受け止める。
 M3型は身体中から体液を流し、満身創痍。アンジェリナの頬にも傷と、血が伝った跡がある。
「‥‥はあああっ!!」
 気合と共に刀を振り上げ、【急所突き】を使用し、十字に斬り付ける。
 M3型は耐久力が限界に達したか、そのまま膝をつき、前のめりに倒れた。
「‥‥」
 アンジェリナは寄り掛かって来るM3型の亡骸を蹴り飛ばし、げしっと踏み付けた。
「この体液の臭い‥‥どうにも好かんな」

 その頃、アスカや大地、旭、空狐と九郎と錬も、大ダメージを受けながら、なんとかM3型を撃破。
 相川小隊の分隊長クラス4人もM3型を撃破。

 傭兵達は余裕があれば相川小隊の治療を〜と考えていたが、そんな余裕は無かった。
 相川小隊には第4分隊、専門の医療班が存在するので、その心配は無い。
 逆に医療班からの治療を受ける傭兵達。‥‥治療が済み次第、次のドームへ向かう‥‥。

●VS改造強化人間
 もう1つずつドーム空間を攻略した傭兵部隊と相川小隊は‥‥最深部付近に到達。
 大型ドーム空間の時と同じ様に、同時に突入。
 ――中は、暗かった。壁面を這う動力ケーブルのみが青白く、微かに発光している‥‥。

「ここが、最深部‥‥動力室だよな‥‥?」
「その筈ですけど‥‥」
 動力炉の破壊を担当する九郎と錬が前へ足を進めると‥‥銃撃音。
 錬の目の前に銃弾が着弾。同時に光弾と波動が飛ぶ。
「なんだ?!」
「うわあああ!?」
 2人は慌てて飛び退く。全員が警戒態勢。
 すると――パッパッパと照明が灯った。そこに居たのは‥‥
「よォ、遅かったじゃねェか」
 柄シャツを着た金髪の青年。手には対物ライフルを携えている。銃口からは煙。先程の銃撃はコイツだ。
 ‥‥この青年の脚部は、バッタの物となっている‥‥。
「待ちくたびれたましたわ」
 ふわぁ〜と口に手を当てて欠伸をする、ゴシックワンピース姿の妖艶な女性。
 ‥‥彼女の背中には、クロアゲハの羽が生えている‥‥。
「新型のHBを退けた様だな‥‥その実力‥‥如何ほどの物か、試させて貰おう」
 和服姿の、筋肉質の男性。腰には鞘に納められた2本の刀が差さっている。
 ‥‥彼の背中‥‥いや、臀部からはハサミムシの尾が生えている様に見える‥‥。

 その他、大量の甲虫型、及び多数のM2型の姿を確認。しかし何故か、すぐには攻撃を仕掛けて来ない。

(‥‥? あの時の声‥‥。ん‥‥僕達の目的はあくまで動力炉の破壊。
 ならば、今回は彼らを抑え込むのが僕達の勤め)
 ノエルはキッと、彼らの後方にある動力炉を見据える。

(羽の生えた女性型‥‥光線と波動‥‥。あれは、鞠子のデータを基に作られたタイプ‥‥?!)
 ティリアは目を見開き、驚いた様な表情を浮かべる。

「新型‥‥いや、強化人間か」
「あの風貌は‥‥」
 瑠亥と雨音が言った。
 キメラにしては知性が感じられるし、キメラの様な部位はあるがHBに比べると人間の原型を留めている。

「この間、出会ったのは貴方達ね」
 一千風は警戒を強める。彼らの声には聞き覚えがあった。

「いかにもボスって感じだね‥‥」
 旭は3人? 3体? を見回す。明らかにこれまでの敵とは違う。HBとも違う。

「この間の奴らか‥‥」
 アンジェリナは静かに刀を抜き、構える。

「奇妙な姿だね。でもやる事は同じ‥‥ってね」
 空狐も二挺拳銃を構える。

「いよいよ幹部クラスのお出まし、って所かしら‥‥」
 アスカは頬に汗を垂らす。

「なんだァ? 仕掛けて来ねェのかァ? そんならこっちから行くぜェ!!」
 バッタ脚の青年が声を上げると、ロケットランチャーを放って来た。爆発が巻き起こる。
 それが合図になったのか、甲虫型が砲撃を開始。M2型も向かって来る。
 残りの2人も動いた。

 ハサミムシの尾を持つ男は二刀を抜き、斬り掛かってきた。大地も刀を抜き、打ち合う。
「行け! コイツは俺が相手取る!」
 九郎と錬に向かって叫ぶ。「了解!」との返答。
 しかし甲虫型が多く、動力炉には近づけない。砲撃も激しい。まずは甲虫型を排除しなければ‥‥!

 ***

 相川小隊も展開し、応戦を開始。
 動力炉から見て両翼の甲虫型、M2型に向け弾幕を展開する。

 九郎、錬、ノエル、瑠亥は中央、動力炉周辺の敵の排除に当たる。
 九郎はSMGとリボルバー銃撃。
「ったく、まだこんなに残っていやがったか」
 錬も知覚銃を両手で構えて正確な射撃を加える。
「見せてやるよ、人の力って奴を」

 ノエルはM2型に肉薄し、機械剣を振るう。
「早くこいつらを片付けないと‥‥!」
 瑠亥もM2型に対し二刀小太刀で斬撃。
「ああ、そうだな‥‥!」

 ***

 アンジェリナとアスカはバッタ脚の男の対応――。
 バッタ脚の男は軽機関銃の銃弾をバラ撒いてきた。
 アンジェリナが刀を構えて斬りかかると、凄まじい脚力で後方に跳躍。対物ライフルに持ち替えて銃撃して来る。
「引き打ちか‥‥くっ」
 表情を歪めるアンジェリナ。やり難い相手であった‥‥。
 アスカと連携し、必ず側面か背面を守る様に動く。
 アスカは――
「どうしたの? その立派な脚は飾りかしら? 銃器なんか捨てて掛って来なさい!」
 その様に大声でバッタ脚の男に言い、挑発をする。しかし‥‥。
「アァん? テメェはバカかァ? そんなクソ安い挑発に乗るかっての。
 それにそう言うならよォ、テメェもよォ、そのトンファーに偽装した銃を捨てて掛かって来いやァ! オラァッ!!」
 再びロケットランチャーが放たれる。アンジェリナとアスカは回避運動。直後に爆発。破片によるダメージを受ける。
 その後も軽機関銃による激しい銃撃。弾幕が展開される。
「ハッハー! その程度かァー?!」
「ぐっ‥‥」
「くぅっ‥‥」
 手甲で庇いつつ、銃撃を避けるアンジェリナ。
 アスカは蹴り技を繰り出そうとするがバッタ脚の男は引き打ちを徹底しており、中々近づけない。
 仕方なくガンズトンファーで射撃し、応戦。
「男なら正々堂々と戦いなさいよ!」
「うっせェよ! 女ァ! これが俺、翔様の戦い方なんだよォ! 殺し合いに卑怯もクソもねェんだよ!」
 対物ライフルの銃弾がアスカの肩を切り裂く。血が舞った。
「きゃあっ!?」
「良い鳴き声だなァ! 女ァ!」
(‥‥どうすれば‥‥)
 アンジェリナはこの状況を打開するべく、思案するが‥‥こうも広い空間では圧倒的に相手が有利だった‥‥。

 ***

 一千風、旭、大地はハサミムシの尾を持つ男の対応――。
 大地はSMGを仕舞い、両手に刀を持ち、二刀流の構えで挑む。
 刀と刀で打ち合いつつ、ハサミムシの尾を持つ男に語り掛ける。
「アンタ、名前は?」
「‥‥名か、俺は玄と言う。改造強化人間の玄」
「改造強化人間‥‥それでその風貌か‥‥。なぁ、折角だから、一騎打ちといかないか?」
 二刀による斬撃。玄は一刀のみで受け止める。
「面白い‥‥だが、そうもいかない様だ」
 一千風が【瞬天速】を使用し高速で接近、【急所突き】を使用した刀で斬りかかる。
 旭も【迅雷】を使用し接近、大剣で斬撃を放つ。
 ‥‥玄は一千風の刀を一刀で、旭の大剣を尾の鋏で受け止めた。
「お前の仲間はやる気の様だが‥‥?」
「‥‥」
 大地は押し黙る。
「‥‥心配は無用。俺は一度に‥‥3人までなら相手に出来る」
 二刀と鋏に力を込める玄。3人は弾かれた。
「やるじゃねェか‥‥玄! なら‥‥!」
 大地は【剣劇】と【両断剣・絶】を使用。最大火力による攻撃での一発勝負に出る。高威力の、連続の斬撃。
「僕も‥‥!」
 旭も【両断剣・絶】を使用。大剣を振り被る。
「やぁっ‥‥!」
 続いて一千風も刀を振るう。
「ぬぅ‥‥?!」
 それは確実に命中し、玄の身体を切り刻む。が‥‥倒すには至らなかった。
 3人は一旦後退。
「ふふ‥‥はは。やるではないか。では‥‥お返しと行こう‥‥!」
 額から血を流しながら、玄は二刀から斬撃を飛ばし、尾を伸ばして鋏の一撃。
「ぐあっ‥‥!」
「があああ!?」
「きゃあああっ!!」
 空刃を受けた大地と旭は倒れ伏す。巨大な鋏の一撃で腹を切り裂かれた一千風もまた、横たわる‥‥。
(尻尾の鋏‥‥ここまでリーチがあるの‥‥?)
 血の溢れる腹を押さえながら、遠のく意識を何とか保ちながら、一千風は思った。

 ***

 雨音、空狐、ティリアはクロアゲハの羽を持つ女性の対応――。
 雨音は既に浮遊・飛行している女性に対しSMGの弾幕で行動の阻害を狙う。
「飛行型は厄介ですね‥‥」
 ティリアは【エアスマッシュ】で攻撃。打ち落としを狙う。
「落ちろ!」
 クロアゲハの羽を持つ女性はひらひらと舞う様に空中を移動し、避け続ける。
「うろちょろと‥‥目障りってね」
 空狐は【急所突き】を使用。二挺拳銃による銃撃を加える。しかし赤い壁に阻まれて効果は見えない。
「あらあら、可愛らしい攻撃だこと。‥‥そぉれっ、お返し!」
 光弾が放たれた。直撃。空狐は膝を突く。
「私は舞。よろしくね」
 女性はにこりと微笑むと、波動を放って来た。
 範囲攻撃。すぐには効果範囲から逃れられない。
「ううっ‥‥」
「ぐううっ‥‥」
 生命力を削られる苦痛に歯を食いしばる雨音とティリア。
「これはおまけね♪」
 舞が両手をかざすと、そこから二条の熱線が放射された。
「‥‥!!」
「雨音さんっ!!」
 咄嗟に【疾風】を使用したティリアが雨音を庇って床に転がる。
「ティリアさん‥‥助かりました‥‥くっ‥‥」
「いえ‥‥くぅっ‥‥」
 直撃は避けられた物の、2人はかなりのダメージを受けた‥‥。

 ***

「そろそろ行きます! イグニッション・ファイア!」
 敵が粗方片付いた所で錬がバイク形態のAU−KVに跨り、突撃を敢行。
「援護する!」
 九郎が弾幕を展開。‥‥錬は動力炉に肉薄。近距離から知覚銃で射撃を加えるが、耐久力が高いらしく中々破壊出来ない。
「く、は‥‥せめて‥‥手助けを‥‥」
 雨音は倒れたまま、貫通弾が装填してある拳銃を構え、【狙撃眼】を使用。連射。命中。
 錬は尚も銃撃‥‥程無く、動力炉は黒煙を上げて停止した。
「‥‥チッ、時間切れかよ。帰るぜ」
「分かったわ、翔ちゃん」
「‥‥了解致した」
 動力炉の破壊を確認すると、改造強化人間の3人は戦闘を中止。後方のハッチから撤退して行った。

 ともあれ作戦は成功。
「『汝平和を欲さば、戦への備えをせよ』‥‥か、やれやれだってね」
 相川小隊医療班の治療を受けながら、空狐が呟いた。