タイトル:蟲喰い4マスター:とりる

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/05/15 13:40

●オープニング本文


前回のリプレイを見る


 相川小隊駐屯基地。ブリーフィングルーム――。
「皆さん、先日の作戦はお疲れ様でした」
 相川小隊の隊長、相川・俊一少尉が部下の皆を前にして労いの言葉をかける。
 彼らはここ2ヶ月の間に九州地方に存在する4つのキメラプラントを攻略していた。
「17号、16号、15号、13号‥‥。10番台のプラントは粗方潰した事になりますね」
 言ったのは俊一少尉の隣に立つ、相川小隊第4分隊長、米谷・里美少尉。
 ホワイトボードに貼ってある地図に記されたプラントのポイントに×印を描いてゆく。
「ほんと、人使いが荒いですよ。まったく」
 第2分隊長、深森・達矢兵長がぼやいた。
「ちょっと、たっちゃん。キメラプラントを叩くのが私達の任務なんだよ? 文句を言っちゃめーです」
 長い黒髪をポニーテールにした美少女が達矢のおでこを人差し指でつんと突付いた。
 彼女の名は牧原・蝶子。第4分隊所属。階級は曹長。
「めーって‥‥お前‥‥」
 達矢は頬をぼっと赤くしている。
 ちなみに達矢と蝶子は幼馴染であり、恋人同士であった。
「分隊長‥‥相変わらずリア充過ぎる‥‥」
「羨ましいぃぃぃですぅぅぅ」
 などと隊員達から声が上がった。相川小隊の隊員の大半は少年少女なのだ。
「い、いいからお前ら! 隊長の話を聞けって!」
 顔を真っ赤にした達矢が立ち上がって言った。蝶子はくすくすと笑っている。
「若いって‥‥いいのう」
 その様子を温かい目で見ている老人。第3分隊長、竹中・宗司軍曹。
 老齢ながらも肉体は衰えるどころか鍛え上げられており、歴戦の兵といった風貌だ。
 宗司軍曹は達矢の師匠でもある。
「ははは。さて皆さん、次の任務です。目標はUPC軍呼称『キメラプラント乙8号』となります」
 俊一少尉がポインターで地図を指し示す。
「8号? 9号ではないのですか?」
 里美少尉は首をかしげた。
「ええ、我々の目標は8号です。9号は傭兵の担当となります。今回は完全に別行動ですね」
「そっかあ。傭兵とは別行動ですか‥‥」
 俊一少尉の言葉に達矢は少しだけ残念そうな様子。
「どうしたの、たっちゃん?」
「いや、別に大した事じゃない。共闘出来ると思っていたからな」
 尋ねてくる蝶子に答える達矢。
 傭兵には蝶子の件で物凄くお世話になった‥‥。
 これまで共に戦えたのが嬉しかったのだ。
「まあ、傭兵とはいずれまた共に戦う事になるでしょう。それでは作戦の詳細を――」
 俊一少尉の説明に耳を傾けつつ、達矢は思う。
(キメラプラント乙9号‥‥あそこは確か‥‥実験施設とか聞いたような‥‥)

●参加者一覧

ノエル・アレノア(ga0237
15歳・♂・PN
神崎・子虎(ga0513
15歳・♂・DF
遠石 一千風(ga3970
23歳・♀・PN
旭(ga6764
26歳・♂・AA
アンジェリナ・ルヴァン(ga6940
20歳・♀・AA
砕牙 九郎(ga7366
21歳・♂・AA
ヨグ=ニグラス(gb1949
15歳・♂・HD
雪代 蛍(gb3625
15歳・♀・ER
冴城 アスカ(gb4188
28歳・♀・PN
ティリア=シルフィード(gb4903
17歳・♀・PN

●リプレイ本文

●キメラプラント乙9号攻略作戦
 高速移動艇で九州のUPC軍某基地へやって来た傭兵達。
 相川小隊は既にプラント攻略に出撃していた。

(実験施設‥‥どんなことをしていたのか、個人的に気になるところではあるけれど‥‥)
 ノエル・アレノア(ga0237)の手にある物。
 それは軍から渡された、今回の攻撃目標であるキメラプラント乙9号の資料。
(見たくない物まで見れてしまいそうな予感がする。でも目は背けずに、この想いを力に変えて――)
 ノエルはそっと目を閉じ、精神を集中させる。

「今回は僕達だけなんだね‥‥」
 神崎・子虎(ga0513)はいつも一緒に戦ってきた相川小隊の人達が居ないと少し寂しいなあ、と思う。
「それじゃあ、ささっと片付けちゃおうか」

 遠石 一千風(ga3970)は胸に手を当て、真剣な表情を浮かべている。
(命を好き勝手に平気に作り変える、芳賀教授の思い通りにはさせない。
 全てのプラントは、私達が必ず破壊する)

(今日もプラント潰し、頑張ろう)
「なんか今回は妙に攻城戦っぽいなぁ。‥‥プラントの入り口が丘の上にあるから、かな?」
 旭(ga6764)は偵察兵からもたらされた敵の配置情報を確認しながら言う。

「キメラプラント攻略はこれで4箇所目‥‥か」
 旭と同じく敵の配置などを確認しているアンジェリナ・ルヴァン(ga6940)。
 傭兵達や相川小隊の活躍でプラントは減ってきているが、まだ大規模なものが残っている‥‥。

「ふーん、今回の敵も強酸を吐くのか‥‥。やっぱ『さ、酸だー!?』とか言わないとダメかね?」
 などと砕牙 九郎(ga7366)は皆に対して言ったが反応は無し。
「‥‥いや、バカ言ってないで真面目にやるか。怪我人が出ないようにしっかりしねぇとな」

 ヨグ=ニグラス(gb1949)は思う所があった。
 今回は戦闘の場を広く見れるような立ち位置で行動する予定である。
(丁度良い感じな傭兵の皆さん集まってるねっ。勉強勉強っ)

 心の中で決意を固める雪代 蛍(gb3625)。
(あたしだって‥‥唄以外にもやれるはずだから、自分のリズムでがんばる!)

「実験施設か‥‥ハイブリットバグスの手掛りが掴めるかしら?」
 冴城 アスカ(gb4188)は先の大規模で親友を亡くし、戦うことの意義を見失っていた。
 それでも九州に平和を取り戻す為、空元気で依頼に挑む。
 情報端末とデジタルカメラの貸与を申請したが‥‥
 今回の任務は情報収集ではないため、却下された。
 アスカは仕方なく、自前で用意しておいた市販の物をバックパックに詰める。

「いよいよキメラプラントのナンバーも1桁台‥‥ここからが正念場ですね」
 ティリア=シルフィード(gb4903)は口元をきゅっと結ぶ。
「今まで以上に攻略は困難になるでしょうけど、乙8号を攻撃する相川小隊には負けていられません」
(それに‥‥芳賀教授と言っていた、あの男を早く止めないと‥‥
 何の罪も無い人達の犠牲がますます増えることになる‥‥!)
(鞠子は嫌な奴だったけれど‥‥あんな風に実の親に身体を弄られて、駒にされて‥‥。
 そんなの、許しておけない‥‥っ!)
 ティリアは強化人間の最期を思い出し、奥歯を噛み締める。

 傭兵達は準備を整えると、今回は別々の場所で戦う相川小隊の健闘を祈り、いざ出発。

●VS砲戦型キメラ
 プラント付近まで軍用トラックでやって来た傭兵達。
 そこからは徒歩で移動し、二手に分かれてプラントがある丘の周辺の森へ入る。
 編成は以下の通り。

 A班:ノエル、一千風、蛍、アスカ、ティリア
 B班:子虎、旭、アンジェリナ、九郎、ヨグ

 傭兵達は2方向からプラントの入り口に接近。
 ブリットビートルの生体機関砲の弾幕を避けながら丘を登る。
 ハイブリットバグズC2型のプロトン砲やフェザー砲も飛んで来る。一同散開。

 閃光手榴弾を投擲可能な距離まで移動すると、子虎とティリアが無線機で通信。
「まずは邪魔なのを倒しておかないと、かな。ん、それじゃあ‥‥閃光手榴弾行くよ!」
『了解です!』
 タイミングを合わせてピンを抜いておいた閃光手榴弾を投擲。
 フラッシュを受けた敵群は怯んだ様子。

 移動スキルを持つA班が先行。
 ノエル、一千風、アスカが【瞬天速】を、蛍とティリアが【迅雷】を使用。
 敵陣に飛び込み、撹乱を行うA班。

「やあああっ!!」
 ノエルはエクリュの爪で斬撃。ブリットビートルの甲殻が削られる。

 一千風は蛍の護衛に付く。
「簡単には入れてくれなさそうね」
 砲撃を行ってくるブリットビートルに対し、片刃の直刀・神斬で斬撃。
 複数のブリットビートルが包囲してくる。
 一千風は【残像斬】にてカウンターの攻撃を加えた。
「雪代さんには触れさせない!」
 前回は助けられた‥‥。今度は自分が助ける番だ。

 蛍は【ほしくずの唄】を歌って敵を混乱させ、同士討ちを狙う。
 その後、エネルギーガンの射撃と超機械『ラミエル』の電磁波攻撃を繰り出す。

 アスカは瞬天速でブリットビートルの背後に回り込み、背中に飛び乗る。
 拳銃を甲殻の隙間に捻じ込み、ゼロ距離射撃。
「お味はいかが? おかわりは幾らでもあるわよ!」

 ティリアは【疾風】を使用。
 砲弾や光線を回避しながら移動し、二刀小太刀『永劫回帰』で甲殻を斬り付ける。
 ブリットビートルやC2型の砲撃を阻害して回る。

 後続のB班が合流。
「何度も戦っていれば相手の動きくらいっ!」
 子虎は物理属性の大剣『カマエル』と、非物理属性の天剣『ウラノス』を使い分けて戦闘。
 数度打ち込んだ後、非物理攻撃の方が有効と判断。
 両手で持った天剣『ウラノス』をC2型の腕へ叩き込み、フェザー砲を破壊。

「また人型、か」
 旭は聖剣『デュランダル』の柄を両手で握り締める。
「いいさ。可能な限り増やさせない。既にいる分は‥‥全部倒してやる」
 構え、一気に振り下ろす。
 狙いは先程の子虎がフェザー砲を破壊したC2型。
 旭の攻撃はもう片方の、プロトン砲と一体化した腕を切り落とした。

 飛翔し、プロトン砲とフェザー砲を放ってくるもう1体のC2型。
 九郎はアラスカ454とSMG『ターミネーター』で銃撃。
「いっぱいいるねっ。でもまずは人型を優先っ」
 ヨグはエネルギーキャノンMk−IIで砲撃。
 光条はC2型の羽根を貫いた。C2型は墜落。
 そこへアンジェリナが接近。
「喰らってやる義理も無いが‥‥撃たせる義理も無いな」
 刀・蝉時雨を抜き、連続で斬撃を加える。
 C2型の主兵装である機械化された両腕を切り落とした。
 その後、アンジェリナはブリットビートルの主な攻撃手段‥‥
 生体機関砲の砲身となっている角を叩き切り、無力化して回った。

 ほどなく、入り口周辺の敵全てを無力化。プラント内部へと突入する。

●VSハイブリッドバグズD2型+I2型
 プラント内部。陣形を組んで通路を走る傭兵達。
 通路には多数のブリットビートルが居り、生体機関砲の弾幕を浴びせてきた。
 近接戦を主とする者が射撃を主とする者の援護を受け、肉薄し、剣や刀、爪などで撃破して行く。

 しばらくして動力炉付近へ到着。地図で確認し、部屋へ突入。
 そこには身体を分厚い甲殻で覆われた、蟻のような頭部をしたハイブリッドバグズD2型4体の姿。
 その後方には蜻蛉の頭部と羽根を持ったハイブリッドバグズI2型が1体、空中に浮遊していた。
 ハイブリッドバグズ達は侵入者に対し、すぐさま攻撃を仕掛けてきた。傭兵達は応戦。

 I2型を守るように展開するD2型。
「キメラも連携してくるっていうの‥‥?」
 その様子を見た一千風が呟く。
 D2型1体が一千風へ突進してきた。両手で組み合う形となる。
 一千風は投げ飛ばそうとするが‥‥
(重い‥‥!)
 そう簡単には行かなかった。
 相手はただ単に力押して来ている訳ではない。格闘型だけあり、体術を用いるようだ。
「‥‥!?」
 逆に床へ叩き付けられてしまう一千風。
「ぐぅ‥‥っ!!」
 D2型の口が開く。強酸のブレスが来る‥‥!
 と、そこへ――
「やらせないわよ!」
 アスカが【瞬天速】で一気に接近。
 飛び蹴りを叩き込み、D2型を後退させ、一千風から引き離した。
 脚甲『ペルシュロン』と脚甲『グラスホッパー』を用いた連続蹴りを繰り出す。
 続いて【急所突き】を使用。脚部の甲殻の隙間を狙ってローキックを放つ。
 まともに受けたD2型の身体が揺らいだ。
 よろめきつつ、D2型は反撃の拳を突き出して来る。
 アスカはそれを回避し【残像斬】でのカウンター攻撃。
「どう? 結構速いでしょ? 私の特技よ」
 そしてD2型の背後から打撃音。
「やられてばかりでは‥‥!」
 体勢を立て直した一千風が、脚甲『望天吼』で蹴りを叩き込んでいた。
 D2型がアスカに気を取られているうちに背後に回り込んでいたのだ。

 旭と蛍は前衛後衛に分かれてD2型1体と戦闘中。
「!? 当たる訳には!」
 D2型が口を開くモーションを見極め、強酸のブレスを回避する旭。
 そして間接部を狙って聖剣『デュランダル』の斬撃を加える。
「少しでも‥‥援護になれば‥‥」
 蛍はやや距離を置いてエネルギーガンで射撃を行う。

 九郎と連携しD2型1体と戦闘中のアンジェリナ。刀でD2型の腕を斬りつける。
「――っ」
 だが、甲殻を傷つける事は出来るものの、切り落とすには至らない。
 アンジェリナは早々に手足を切り落とすつもりだったが‥‥
 ハイブリッドバグズD2型は防御・抵抗特化。そう簡単には行かなかった。
「これは長期戦になるかもしれねぇな」
 アンジェリナの後方から射撃支援を行っている九郎が苦い表情を浮かべた。
 先程から銃弾をずっと浴びせているが甲殻を少しずつ削るのみで貫く事は出来ていない‥‥。

 ペネトレーターのノエルとティリアはD2型1体と戦闘。
 2人は連携し、スピードで翻弄する作戦。
 エクリュの爪と短剣――メイル・ブレーカーで攻撃を行うノエル。
 ノエルと入れ替わり立ち代りに二刀小太刀『永劫回帰』で斬撃を加えるティリア。
 2人の攻撃は、すぐに致命傷とは行かないものの、徐々にD2型の分厚い甲殻を削って行く。

「僕だって多少の遠距離戦は出来るんだよ、食らえ!」
 大剣を振るい、【ソニックブーム】を放つ子虎。
「いっけー!」
 エネルギーキャノンMk−IIで砲撃を行う、AU−KV『パイドロス』を装着したヨグ。
 2人の攻撃は飛行しているハイブリッドバグズI2型を確実に捉え、ダメージを与える。
 反撃の波動による範囲攻撃。2人は避けきれずに貰ってしまう。
「ぐぅぅ‥‥」
「くぅぅ‥‥」
 2人の少年は踏ん張って何とか耐える。
「もう一度ー!!」
「落ちろーーー!!」
 再度【ソニックブーム】による斬撃とエネルギーキャノンMk−IIの光条が飛ぶ。
 命中。斬撃により甲殻を切り裂かれ、光条に身体を貫かれたI2型は墜落した。
 指揮官型ゆえに、耐久力はそれほど高くなかったようだ。

 I2型――指揮官が撃破されると、D2型は統制を失い、混乱した様子となった。
 非常に分厚い甲殻を持つために撃破するのに手間取ったが、なんとか始末に成功。

 傭兵達は傷の応急手当を行った後、動力炉が存在する最深部を目指す――。

●VSハイブリッドバグズI2型(バックアップ)
 傭兵達が最深部の部屋に足を踏み入れると、警報が鳴り響き、室内が赤く染まった。
「一体なんだ‥‥?」
 旭が辺りを見回す。
「あ、あれっ!」
 蛍が指差したその先には――1つの培養カプセルが佇んでいた。
 プシューという音と共に扉が開き、1体の人型キメラが姿を現す。
「これは‥‥!?」
 思わず声を上げるノエル。
「バックアップ‥‥だとでも言うのか‥‥?!」
 険しい表情を浮かべるティリア。その人型キメラとは、先程倒したはずのI2型であった。
 このキメラプラントにはバックアップとして、もう1体の指揮官型が存在していたようだ。
 I2型は羽根を広げると、空中へ舞い上がる。そして――傭兵達に両手を向ける。
 無数の光弾が降り注ぎ、波動による範囲攻撃が室内を満たした。
 傭兵達は大ダメージを受けてしまう。
「‥‥くっ」
「このままじゃやべぇな」
 光弾の嵐、連続で遅い来る波動の波。逃げ場は無い。

「ここは俺に任してくれねぇか?」
 九郎がアンジェリナの顔を見て言う。
「俺が足場になるからさ、奴を地面へ叩き落して欲しいんだ」
「‥‥わかった」
 アンジェリナは頷く。
「じゃあ、行くぜ!」
 【豪力発現】を使用する九郎。その手を足場にしてアンジェリナが大きく跳躍!
「はあああああっ!!」
 アンジェリナは絶妙なタイミングで【天地撃】を使用。
 空中から猛烈な攻撃を続けるI2型へ刀を振り下ろし、床へ叩き落した。
「今だ!!」
 着地したアンジェリナが叫ぶ。

「いくよ、2人とも!」
「わかりました、ノエルさん!」
「おっけー! ノエルン!!」
 ノエルは爪、ティリアは二刀小太刀、子虎は大剣。
 それぞれを構えて、落下したI2型に突撃し、斬り付ける。

「一千風、いくわよ?」
「ええ、アスカさん。ここは‥‥破壊する!」
 アスカと一千風も踏み出し、脚甲で蹴りを繰り出す。

「ライト――ブリンガーッ!!」
 【両断剣・絶】と【エアスマッシュ】を使用した必殺技を放つ旭。

「あたしの歌聞いてね。異論は聞かないよ」
 駄目押しに蛍は【ほしくずの唄】を歌う。

「これで、おしまいーーー!!」
 最後にヨグが【猛火の赤龍】を使用したエネルギーキャノンMk−IIの光条を叩き込む。
 ‥‥怒涛の連続攻撃を受けた2体目のI2型は、静かに機能を停止した。

 敵防衛戦力のほぼ全てを撃破した傭兵達は動力炉を破壊。
 続いて培養施設へと向かった。
 ‥‥培養施設の機能はまだ生きているようだった。非常電源に切り替わったのだろう。
 放置すれば勝手に停止するだろうが、傭兵達は念のため破壊する事に。
 そのとき――施設の大型モニターが点き、見覚えのある初老の男性の上半身を映し出す。
『くくく‥‥バックアップまでも撃破するとは‥‥やるではないか』
「!?」
 傭兵達は一斉にそちらを向いた。
 初老の男性――それは九州の虫型キメラ関連の事件の首謀者、芳賀教授。
「何のつもりだっ?!」
 ティリアが画面に向かって怒りをぶつける。
 芳賀教授は「只の戯れだ」と答える。
「娘を失っても、今回の結果を見ても、まだ続けるつもり?」
 一千風が問う。
『くくく、無論だ。私の目的はその先にあるのだから――』
 そこで、映像は途切れた‥‥。

 その後、アスカは端末を調べデータを収集しようとしたが‥‥
 データは全て異星語と思われる物で構成されているため理解不能。
 また、手持ちの記憶媒体にコピーする事は不可能だった。市販品では致し方ない。

 傭兵達はデータの収集を諦め、培養施設を完全に破壊した後、キメラプラントを脱出したのだった。