タイトル:蟲喰い10マスター:とりる

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 難しい
参加人数: 12 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/01/23 05:17

●オープニング本文


前回のリプレイを見る


 相川小隊駐屯基地。相川・俊一少尉の私室――。

 煌々と蛍光灯の明かりに照らされた室内。
 机に置かれたPC。周りには山積みの書類。
 椅子に腰かけ、それをじっと見つめる俊一少尉の姿があった。
 画面に表示されているのは、近々決行される『キメラプラント乙2号攻略作戦』の、
 詳細な作戦プラン。彼は何度も何度も見直し、修正を加え、シミュレートを繰り返し‥‥、
 隊員達の生存率が向上するよう注力していた。
 キーボードを叩く音が響く‥‥。

 ***

 ふと、俊一少尉はキーを叩くのを止めた。
 ――所詮このようなデータなど気休めに過ぎない。
 彼はそのことを良く理解していた。
 実際の戦場ではイレギュラーが多過ぎる。
 敵のデータも予測に過ぎない。
 だが‥‥隊員の少年少女達を『必ず生還させる』ためには気休めも必要だった。
 バグアなどという異星人だか、異星体だか、わけのわからない連中との戦争‥‥、
 そんなものから少年少女達を解放したかった。
 ‥‥俊一少尉は前の隊に居た頃に死なせてしまった子らの笑顔を思い出す。
 心の底から滲み出てくる後悔の念。
 ‥‥ギリリと、奥歯を噛む。目に涙が浮かんでくる。
(良い大人が‥‥)
 俊一少尉は服の袖で涙を拭った。

 と、そこへ――
 コンコンと、ドアがノックされる。
「‥‥隊長、私です。米谷です」
 続いて若い女性の声。耳触りの良い、聞き慣れた声。
 俊一少尉は「どうぞ」と言う。すると少し間をおいてから、ドアが開き、
 長い黒髪を後ろでお団子状に纏め、赤いフレームのメガネをかけた知的な女性が姿を見せた。
 ――米谷・里美少尉。相川小隊第4分隊長。
「どうしました、里美さん」
 椅子を回転させて振り返り「こんな夜中に尋ねてくるなんて」と続ける。
「た、隊長に‥‥どうしても、お話ししておきたいことがありまして‥‥」
 真剣な表情で、かなり緊張している様子の里美少尉。
「今じゃないとダメですか?」
「‥‥ダメ、です」
 ダメと言われてしまった。
「今日は、心を決めて、ここに来ました」
 そういえば彼女が自分の私室を1人で訪れるのはこれが初めてかもしれない。
「あと数日で、作戦ですよね」
「ええ」
 里美少尉の言葉に、気圧されながら俊一少尉は答える。
「言えなくなってしまう可能性は0ではありませんので‥‥。
 私は‥‥後悔したくありませんので、言います」
 更に凄む里美少尉。
 自分は彼女に何か悪いことをしてしまったのか‥‥?
 などと俊一少尉は額に汗を浮かべ、考える。
「私は‥‥隊長‥‥いえ、俊一さんのことを‥‥」
 里美少尉の言葉はそこで一度途切れる。
「‥‥?」
 俊一少尉はここまで来ても、里美少尉の本意に気付けなかった。
 度を越えたにぶちんである。
「お慕いしています。心から、お慕いしています。1人の男性として」
 すぅーと息を吸ってから、はっきりとした口調で、
 里美少尉はその瞳でしっかりと俊一少尉を捉えて、言った。
「‥‥」
 ここまではっきりと言われてしまえば、
 鈍感すぎる彼の心にも、里美少尉の言葉が響く‥‥。
「‥‥いつから、ですか‥‥?」
 里美少尉の覚悟の篭った告白への返事を放置して、出たのがこの言葉である‥‥。
 相川・俊一。歴戦の指揮官。しかし恋愛においては残念らしい。
「‥‥分かりません。気付いた時には、俊一さんが隣にいるだけでドキドキしていました」
 お頬を真っ赤に染め、だがしっかりと俊一少尉の目を見て、里美少尉が言う。
 返事を聞くまで部屋から出て行かないつもりなのだろう。そういう覚悟だ。
「僕なんかでいいんですか? 軍人ですよ? いつ死ぬかもわからないのに‥‥」
「えっ‥‥それって‥‥」
 OKってこと? と里美少尉は思う。
「私だって、軍人です」
「あ‥‥すみません。そうですよね‥‥。突然のことで動揺してしまって‥‥」
「‥‥それで、あの‥‥私とお付き合いしていただけますか?」
 脈ありっぽい言葉を受けつつも、なかなか返事をもらえないので、
 里美少尉は一気に切り込む!
 すると今度は俊一少尉がすぅーと深呼吸し、
「僕なんかで良ければ、喜んで」
 にこりと微笑み、そう答えた。
 その返事とその笑顔で、里美少尉は一瞬気が遠くなった。
 くらりと眩暈を起こし、倒れそうになる。
 そこへさっと俊一少尉の手が伸び、抱き止められた。
「大丈夫ですか?!」
「は、はい‥‥。すみません、私、幸せ過ぎて‥‥」
 額に手を当てる里美少尉の身体を優しく抱き上げ、
 俊一少尉は自分のベッドへ腰を下ろさせた。
 この男、やる時にはやりおる‥‥。
「少し、お話ししましょうか」
 俊一少尉もベッドに腰を下ろす‥‥。

 ***

 ――しばしの時が過ぎた。
 若い男女はベッドに腰掛け、お互いの想いを語り合った。
「‥‥そういうわけで、フラれたんですよ」
 俊一少尉が苦笑いをする。
 彼の話によれば学生時代付き合っていた彼女が居たのだが、
 士官学校に入学すると話したら「軍人とは一緒に居られない」と言われ、
 別れてしまったことがあったそうな。
「それでさっき‥‥」
「ええ‥‥やはりこういうご時世ですから、仕方ありません。
 彼女は今頃どうしているやら‥‥幸せであってくれれば良いのですが」
 遠い目をする俊一。
 現在の彼女を目の前にしてこの言葉である。やはり残念。
「昔の女の話はそこまでにしてください」
「ああ、これは失礼。痛い、痛いですよ」
 俊一の頬を引っ張る里美。
 彼は降参のポーズをしたので、放してやる。
「でも‥‥本当に嬉しいです。俊一さんが私の気持ちに答えてくれて」
 里美はメガネを上にずらし、ハンカチで目元を拭う。
 嬉し過ぎて涙が止まらなかった。
「いえ‥‥僕のほうこそ、気付いてあげられずにすみません」
「謝るの何回目ですか? もう良いんです‥‥」
 里美は俊一に寄り添う。
「‥‥ふう。守るべきものがまた増えました。次の作戦、負けられません」
 キッと表情を引き締め、俊一は里美の肩を強く抱く。
「里美さん‥‥」
「俊一さん‥‥」
 目を瞑る里美。
 2人の影が重なり、そして――。

 ***

「ゆうべはおたのしみでしたね」

「ばっ! 何言ってんだお前!」
 部下の少女の言葉に、相川小隊第2分隊長、深森・達矢兵長が噴き出す。
 その横で彼の幼馴染にして恋人の牧原・蝶子曹長がポッと赤らんだ頬に両手を当てた。
「うちの兵舎って造りが安いですから聞こえるんですよ。ねー」
「ねー」
 キャッキャと騒ぐ隊員の少女達。
「だ、だからやめろって!」

 ――そんな様子を見ながら俊一少尉と里美少尉は表情を緩める。
 これから作戦だというのに、この子達は‥‥。
「さてさて、青春も良いですがそろそろブリーフィングを始めます。今回の作戦の内容は――」
 ごほんと咳払いをし、俊一少尉は話し始めた。

●参加者一覧

ノエル・アレノア(ga0237
15歳・♂・PN
神崎・子虎(ga0513
15歳・♂・DF
遠石 一千風(ga3970
23歳・♀・PN
アンジェリナ・ルヴァン(ga6940
20歳・♀・AA
砕牙 九郎(ga7366
21歳・♂・AA
リュウセイ(ga8181
24歳・♂・PN
ヨグ=ニグラス(gb1949
15歳・♂・HD
ティリア=シルフィード(gb4903
17歳・♀・PN
テト・シュタイナー(gb5138
18歳・♀・ER
天原大地(gb5927
24歳・♂・AA
エイラ・リトヴァク(gb9458
16歳・♀・ER
那月 ケイ(gc4469
24歳・♂・GD

●リプレイ本文

●キメラプラント乙2号攻略作戦
 相川小隊駐屯基地。ブリーフィングルーム。
 傭兵12名と相川小隊総員32名が出撃前の準備や雑談をしていた――。

「前回の第2次キメラプラント乙3号攻略作戦‥‥、
 初戦の大敗の二の舞にならなくて良かったです。
 何より、幹部の1人を倒すことが出来たのは大きかったですね」
 空色の髪の少女、ティリア=シルフィード(gb4903)が言った。
「残すプラントは後2つ‥‥もう足踏みはしていられません。
 一気に攻略してしまいましょう!」
 そののちに、相川小隊の皆を見て、両手をぐっと握る。
「それから‥‥ええと、皆さん、ボクは状況次第で閃光手榴弾を使用します。
 使用する前には合図を出しますが、留意しておいてくださいね」
 仲間の傭兵や、相川小隊に伝える。「了解」「わかった」などの返答。

「ふむ‥‥今回も動力炉の破壊を優先‥‥。
 これまで通り奥に進むほど強敵が待ち構えているのなら、
 最深部――動力室手前まではなるべく消耗を抑えていきたいところ」
 顎に手を当てて思案している浅黄色の髪の少年はノエル・アレノア(ga0237)。
「最深部到達までは戦闘よりも突破を優先‥‥ですね」
 ノエルの言葉にティリアが頷いた。2人は、恋人同士である。
「今回もよろしくお願いします、ティリアさん」
「はい、こちらこそです、ノエルさん」
 微笑み合う2人。

「相川小隊の皆、今回もよろしく♪
 残るプラントもわずかだし、きっちり潰していこうね♪」
 セーラー服姿の愛らしい少女のような少年、神崎・子虎(ga0513)が相川小隊の面々に挨拶。
(途中は足止め班の働きにかかってる‥‥けど‥‥、
 この作戦を上手く成功させるためには当然こっちもしっかり頑張らないと‥‥)
 にっこりと可愛く笑った後、子虎は少し難しい表情をした。
 天真爛漫そうな子虎であるが‥‥真面目なところもあった。
 また、覚醒するとそれが顕著になる。

 長身かつ整った肉体の美女、遠石 一千風(ga3970)は思いを巡らせる。
(今回もプラントの破壊‥‥。戦闘は一層激しくなるでしょうね‥‥。
 気も、身も引き締めなければ‥‥)
 などと考えながら相川小隊の面々を眺めていると‥‥、
 ふと、疑問が浮かんだ。何か、少しだけいつもと雰囲気が違う。
 作戦前は当然ピリピリとしていて、今もそうなのだが、
 今回は前回までと違い、柔らかな雰囲気もある。
 ‥‥一千風はしばらく観察。
 すると、その元が米谷・里美少尉であることに気が付いた。
 長い黒髪を後ろでお団子状に纏め、赤いフレームのメガネをかけた知的な女性。
 いつもはキリッとしているが‥‥今回は笑顔が絶えない。
(‥‥)
 一千風は思案し、思い当たる。里美少尉の想い人は確か‥‥?
(もしかして‥‥)
「小隊の力、頼りにしてるわ」
 相川小隊の隊長、相川・俊一少尉に話しかける一千風。
 俊一少尉は「ええ、こちらも傭兵の皆さんを頼りにしています」と答えた。

 艶やかな黒髪の美女、アンジェリナ・ルヴァン(ga6940)は――
「‥‥」
 例により、目を閉じ、静かに精神を集中させている。
 凛とした容姿、美貌を持った彼女。
 それゆえに、相川小隊の少年数名が彼女の様子に見入っていた。

「あと少し、一気に押し切るとするぜ」
 砕牙 九郎(ga7366)はこきこきと首を鳴らしつつ、愛銃の手入れ。
 このSMGと大口径拳銃には随分とお世話になっている‥‥。
(また頼むぜ、相棒)
 などと、銃に語り掛けてみる。

「さぁて、ぶつかるだけぶつかってくるか」
 浅黒い肌をした体格の良い青年、リュウセイ(ga8181)が言うと、
「リュウセイさんじゃないか。久しぶり!」
「お久しぶりです」
 相川小隊第2分隊長、深森・達矢と、第4分隊所属の牧原・蝶子が挨拶してきた。
「達矢に蝶子か。仲良くやってるみたいだな」
「はい、おかげさまで」
 蝶子はぽっと頬を染めつつ、達矢に寄り添った。
 リュウセイは蝶子がかつて強化人間、芳賀・鞠子によって囚われていた際の、
 救出作戦に参加した1人だった。
 そのため、達矢や蝶子は彼に大きな恩を感じている。
「リュウセイさんは元気だった? なんか雰囲気が少し変わったけど」
「まあ‥‥なんとかな」
 リュウセイは表情を変えず、曖昧に答えた。

「んと、いっつもわんさかキメラが出るので、今回はなるべく疲れないように進めればっ」
 子虎とも若干違った愛らしさを持つ少年、ヨグ=ニグラス(gb1949)が宣言(?)。
 今回、傭兵の作戦の基礎的な部分を提案したのは彼のようである。
 キメラプラント攻略作戦の内容は、その名の通り、キメラ生産施設の破壊である。
 キメラ生産施設に殴り込みをかけるのだから、
 大量のキメラを相手にするのは仕方ないのだが‥‥。
 ヨグが考えるように、動力炉がある最深部に到達するまで、
 如何に味方の消耗を抑えるかも重要ではあった。

(幸せオーラ全開のとこにゃ負けてられねーな)
 テト・シュタイナー(gb5138)は周りの空気を感じ取り、そのように思う。
 ともあれ、幸せオーラ全開というのは少し誇張し過ぎな気もする。
 重要な作戦前なので当然、相川小隊の面々は緊張感を持っていた。
 ただ、以前よりも幾分か柔らかいと言うだけで。
「うっし、張り切っていくぜ!」
 気合を入れるテト。その横で――
「テト姉さんと班を組めねぇのは残念だが、作戦を共にすることには変わりねぇ。
 姉さんが居ればあたしに恐れるモンなんてねぇぜ」
 エイラ・リトヴァク(gb9458)が力強く言った。
「嬉しいこと言ってくれるじゃねーか」
 テトはエイラの首に腕をかけ、頬擦りをする。

「‥‥」
 天原大地(gb5927)は‥‥プラントで待ち構えているであろう敵幹部、
 改造強化人間・玄のことを頭に思い浮かべていた。
 何度も敗北した相手‥‥。

(今度はあんな失態晒さないように、だな)
 軽い表情を浮かべながらも、そう考える那月 ケイ(gc4469)。
 失態――彼はそう思っているようだが、相川小隊の評価は違う。
 姉と認識していた改造強化人間・舞を失った際の、改造強化人間・翔の行動。
 それが異常だったのだ。あれほど『姉』に執着していたとは‥‥。
 とにかく、動力炉の破壊に成功し、敵幹部1人を撃破して見せたのだから、
 相川小隊は前回の傭兵達の働きを十分と評価している。

 そしてほどなく、出撃時刻となった――。

●ドーム空間・大型ドーム空間突破
 傭兵達と相川小隊は装甲兵員輸送車でキメラプラント乙2号付近まで移動。
 降車し、作戦の最終確認をした後、プラントへ突入を開始した。

 プラント内部――。
 最初の分かれ道で相川小隊は二手に分かれ、左右の道を行く。
 俊一少尉は別れ際、傭兵達に向かって「健闘を祈ります」と言って敬礼。

 ‥‥傭兵達はそのまま正面の通路を直進。
 迎撃に出てきた多数のブリットビートル、レイビートルを撃破しつつ前進。

 傭兵達は今回、班を3つに分けていた。
 ここからは便宜上、ABCとする。

 A班――
「いきますよ、ティリアさん」
「了解です。ボク達のスピードを生かして道を切り開きましょう」
 ノエルとティリアは先陣を切って道を開く。
 ノエルは爪・エーデルワイスと機械剣βで、
 ティリアは二刀小太刀『永劫回帰』でビートルタイプの甲殻を斬り裂く。

「スピードは2人に劣るけど‥‥火力なら僕だって!」
 子虎も負けじと天剣『ウラノス』を振るい、ビートルタイプの甲殻を叩き割る。

「数だけであたしらを倒せるかよ!!」
 エイラは超機械『カトブレパス』の電磁波で密集している敵に攻撃を行う。

 ケイはプロテクトシールドを構えつつ、小銃『シエルクライン』で銃撃。
 ガーディアンである彼はシールドによって、
 ビートルタイプの生体機関砲やプロトン砲を積極的に受け止めていく。
「クラス名に負けたくないんでね」

 B班――
 リュウセイはSMG・スコーピオンで銃撃。
「気構えだけは十二分に用意した。
 それでどうなるってもんでもねぇが、無いよりマシだ」

 AU−KV『パイドロス』を装着したヨグは超機械『扇嵐』で電磁波攻撃。
 いつもは知覚砲装備の彼だが、今回はテトが居るため、この装備らしい。
「まま、ココもぶっ壊してやりましょうっ」

 テトはエネルギーキャノンMk−IIで砲撃。
 放たれた光条がビートルタイプの甲殻を貫く。
「ほんと、鬱陶しいくらいに多いな!?」
 現在の敵‥‥キメラプラント防衛戦力の主力は、
 実体弾タイプのブリットビートルと、プロトン砲を装備したレイビートルである。
 これらはとにかく数が多い。

「邪魔になる奴だけ片付ければいい」
 大地はSMG『ターミネーター』で弾幕を展開。
 肉薄してくる敵は刀・血桜で対処。

 C班――
 並んで通路を走る美女2人。
 一千風は刀・神斬を、アンジェリナは刀・蝉時雨を用いて、
 ビートルタイプの角を叩き斬り、無力化していく。

 九郎は2人の後ろからSMG『ターミネーター』で弾幕を張り、
 要所要所で大口径拳銃・アラスカ454を撃ち込む。

 ***

 途中の通路・2つのドーム空間は敵の数こそ多かったものの、
 ビートルタイプしか居らず、さほど苦労せず突破出来た。

 傭兵達は大型ドーム空間に突入。
 ‥‥流石に、ここはそう易々と通してくれそうになかった。
 ハイブリッドバグズM3型が多数、
 大量のブリットビートル、レイビートルが防衛態勢を敷いていた。

 そして新型と思しきハイブリッドバグズ――。
 外見はM3型とほぼ同じだが角があり、
 体色はM3型が緑なのに対し、こちらは青である。

 A班――
「やっぱり居た‥‥ハイブリッドバグズ‥‥。
 初めて見るタイプも居ますね‥‥」
(外見はM3型とほぼ同じ‥‥ならば、
 接近戦で効果を発揮する能力でも備えている‥‥?)
 戦闘の構えを取りつつ思考するノエル。
「新型‥‥強酸以外の飛び道具を持っているかもしれません。注意しましょう」
 ティリアも二刀小太刀を構える。

「はん、どんな奴だろうと敵なら倒すだけだ!」
「突破が最優先だからね‥‥油断は出来ないけど、無駄な戦闘は避けて」
 エイラが声を上げ、子虎がなだめる。

「どんな能力を持っているやら‥‥」
 先頭に立ち、ケイは盾を構え、銃撃の用意。
 すぐさま敵が動いた。

 ***

 結論から言うと、新型――ハイブリッドバグズL型の能力は『統率』のようであった。
 要するに狼の群れを統率するリーダーのようなもの。
 L型を中心として、ブリットビートル・レイビートルが密集し、
 砲列を組み、濃密な弾幕を形成。
 その援護を受け、M3型がスピードを生かして傭兵達の連携を掻き乱してきた。
 傭兵達はこの防衛網に大いに苦戦。
 ‥‥仕方なく、強引に敵陣の中央を突破することを決める。

 B班――
 テトは傷ついた仲間に片っ端から【練成治療】をかける。
「回復が欲しい時はすぐに言えよ。俺様はそのためにいる!」

 ヨグは超機械による電磁波で進路上のビートルタイプを焼く。
「向こうも後が無いですから、切り札のような物を出してくるかもしれませんっ」
 それを聞き、リュウセイがSMGで射撃しながら口を開く。
「あの青い奴がその切り札じゃ‥‥ねぇよな」
 大地は二刀にて邪魔になるビートルタイプを切り伏せる。
「実際に見るのは初めてか? 奴らはハイブリッドバグズ。一応キメラ。
 戦闘能力は並みの強化人間以上という半端じゃなく厄介な奴らだが‥‥、
 敵の頭からすれば駒に過ぎないと思うぜ。緑の奴は量産型だしな。
 俺の読みでは、切り札が出てくるとすれば最深部だ」
「それじゃモタモタしてねぇで、さっさとここを突っ切らねぇと」
 リュウセイが言った。

 C班――
「同感だ」
 リュウセイの言葉に対するアンジェリナの返答。
「同じく。動力炉の破壊が最優先だからね」
 一千風も同様。とにかくここを突破しなければならない。
「相変わらず硬ぇな。くそっ」
 九郎は迫るM3型にSMGで弾幕を展開、動きを阻害し、拳銃の弾丸をぶち当てる。

 ***

 傭兵達はなんとか大型ドーム空間の突破に成功。
 A・B班の最深部突入を確認後、C班の3人は反転。
 C班の役割は――足止め。
 最深部へ続く通路に陣取り、最深部へ敵を通さないことが目的である。

「この瞬間から、虫1匹通さない」
 迫る地響き。追手だ。
 一千風は刀を構える。
「このような戦闘は乙27号戦以来か‥‥」
 言いながら、アンジェリナは一千風の横に並び、
「3人で、奴らを全て倒してしまって構わんのだろうな」
 刀を抜いた。
 ほどなく敵の姿が見えた。M3型だ。
(さて、2人に無理させねぇように踏ん張るか)
 九郎は一千風とアンジェリナの後方から支援を担当。銃撃を開始。

●VS敵幹部+足止め戦
 傭兵達A・B班は相川小隊と合流し、最深部へ突入。
 ‥‥最深部には複数のL型、多数のM3型、
 大量のブリットビートル・レイビートルが待ち構えていた。
 そして、敵幹部・改造強化人間の翔と玄の姿。

「ふん。今回は意外と早かったな」
 ハサミムシの尾を持つ改造強化人間、和服姿で筋肉質の男、玄が言った。

「コロスコロスコロスコロスコロス‥‥」
 その一方でギラギラと目を光らせている、
 バッタの脚を持つ改造強化人間の青年、翔。
 いつものような軽口は無く、ひたすら「殺す」だけを繰り返している。
 彼の周囲には殺気と狂気が渦巻いていた。
 
 また、翔は、装備もいつもとは異なり、かなりの重武装であった。
 確認出来る限りでは対戦車ミサイルのような形状の武器を両肩両脚に装備。
 両手には2挺のガトリング砲。他にも武器を隠しているかもしれない。

 翔の対応を担当するA班――
(あの様子‥‥やっぱり‥‥。それに武装‥‥)
 ノエルは直感的に、翔がこの場で最も放置出来ない存在と判断。
(舞を倒した傭兵を狙ってくる‥‥よね‥‥。
 相手をする覚悟は、当に出来ている。
 それにその気であれば、プラントごと傭兵を倒そうとしてくるはず。
 でもそんなことをさせはしない‥‥!)
 
(舞を倒す切っ掛けを作ったのはボク達‥‥真っ先に狙ってくるかもしれない‥‥)
 ティリアはごくりと唾を飲む。

「予想以上の重装備‥‥。でも今回で決着をつけないとね。いくよ!」
 大剣を振り上げる子虎。

「殺すだと? ふざけんな! あたしが逆に倒してやる!」
 エイラは殺気をピリピリと肌に感じ、汗を垂らしつつも虚勢を張る。

「前回のリベンジといきますか」
 ケイはシールドを構えて、皆の一歩前へ。

「‥‥コロスコロスコロスコロスコロス‥‥、コロスッ!!」
 翔は叫びと共にA班に向けてミサイルを全弾発射。
 A班の全員が避けようと動くがミサイルはA班の面々を正確に追尾し――
 爆発が巻き起こる。

 ‥‥直撃こそ免れたものの、A班の傭兵達は先制攻撃を受け、
 大ダメージを負ってしまった‥‥。
 なんとか態勢を立て直し、各自武器を構え、翔との戦闘を開始。

 相川小隊も、ハイブリッドバグズやビートルタイプと交戦を開始する。

 ***

 玄の対応を担当するB班――
「あんたが玄か‥‥。俺は別に話をする気はねぇ‥‥いくぜ」
 リュウセイはペイント弾を装填したSMGで銃撃。目潰しを狙う。
 ‥‥玄は尾の鋏を盾にし、易々と防いだ。

 ヨグは玄に接近、近距離から超機械で攻撃。
「くらえーっ!」
 大地は二刀を抜き放ち、近接戦を挑む。
「‥‥玄、また会えて嬉しいぜ」

 テトは後方から知覚砲で砲撃を開始。
「何でもかんでもくっ付けりゃいいってもんじゃねーだろ!」

 ***

 最深部へ続く通路――。
 突破を図る敵の足止めを行うC班。
 一千風、アンジェリナ、九郎の3人。

 敵はハイブリッドバグズM3型数体を先行させ、
 それを後方からビートルタイプが砲撃で援護してくるという戦法を取って来た。
 物量に任せた攻撃ではないため、常時圧力が加わる‥‥というわけではないものの、
 狭い通路内でもM3型のスピードは死んでおらず、また、ビートルタイプの援護もあり、
 3人は苦戦を強いられていた。これもL型の統率能力‥‥。

 一千風は刀と脚甲を用いてM3型の移動による『斬撃』と渡り合う。
「皆も等しく戦っている‥‥負けられない‥‥!」
 足止めという目的上、道を開けるわけにはいかない。
 一千風は敵のM3型と違い、機動力を生かせずいた‥‥。
「A・B班の皆が動力炉を破壊するまで、膝を折るわけには‥‥!」
 叫びつつ、M3型が突撃してくるタイミングで刀を一閃。

 アンジェリナは1対1でM3型を撃破していた。
 大きくは動けないため、敵の攻撃は紙一重で回避することを心がけていたが‥‥、
 やはり全て避け切ることは出来ない。鎧には無数の斬痕。
 身体も傷つき、黒のアンダーシャツが赤く染まっている‥‥。
 しかし。
「良いだろう‥‥これが私の戦いだ」
 アンジェリナの瞳は光を湛えたまま。
 刀を構え直し、敵を迎え撃つ。

 九郎はSMGと拳銃で2人の援護を続けていた。
「これはこれで、戦い難いな‥‥」
 予想とは違った敵の動きに、戸惑いを覚える。
 
 長い、戦いだった。

●VS敵幹部・後半

 B班――
 超機械で電磁波攻撃を行うヨグ。
 【竜の鱗】で防御を高め、玄の刀によるダメージは【竜の血】によって回復。
「頑丈さなら負けはしないよっ」

 大地は二刀で連続の斬撃。玄はそれで一刀のみで対処。
「相変わらずの剣捌きだな‥‥!」

 そこへ。
「重体程度は覚悟の上、肉を切らせて骨を断つ!」
 リュウセイが武器を大剣・セベクに持ち替えて玄に接近、大剣を振り被る。
「そぅら、この一撃は痛いぜ!」
 横薙ぎの斬撃。玄の表皮を切り裂く。
「なるほど。良い一撃だ。肉を切らせて骨を断つ、と言ったな?
 ――甘い! 俺の剣は肉も骨も断ち切る!」
 尾の鋏で大地を抑え、ヨグに向けて片手で空刃を放ち、牽制。
 そののちに二刀により、リュウセイに向けて斬撃を繰り出す。
「‥‥がぁっ」
 X字に身体を切り裂かれたリュウセイはその場に倒れ伏す。
 流血が血だまりを作っていく‥‥。

「く、仲間が‥‥」
 練成治療をかけたいがそんな余裕は無い。テトは唇を噛む。
「俺様が回復だけだと思ったら大間違い。爆ぜやがれ!」
 【電波増強】を使用したエネルギーキャノンMk−IIで砲撃。
 それは命中し、玄の胸を焼き焦がす。
「硬いのが自慢のようだが‥‥俺様の火力はその上を行くぜ?」
 更に砲撃を続ける。玄は回避運動。
「確かにかなりの火力らしいな‥‥ならば、潰させて貰う!」
 神速の踏み込み。
「!?」
 テトが反応した時には、自分の身体から血飛沫が上がっていた。
 そのまま倒れ込む。

 仲間が倒れていく中、大地は‥‥。
(まったくよ‥‥仮にも示現流の端くれの俺が、
 ニ乃太刀想定で動く、だと?
 無様なモンだ‥‥。だが、そうしてでも‥‥)
「俺はアンタに勝つ! ――玄ッ!!」
 血桜・蛍火の二刀を握り締め、【剣劇】と【両断剣・絶】を使用。連続の斬撃。
 玄は二刀を交差させて受け止める。
「まだだ!」
 大地は返しの刀で再度【剣劇】と【両断剣・絶】による連続攻撃。
 怒涛の攻撃を受け、玄の身体から鮮血が舞う。しかし――
 ハサミムシの尾を持った改造強化人間の目がギラリと光る。
 巨大な鋏が伸び、大地の腹を切り裂いた。
「‥‥っ! ヨグ‥‥! いけぇ‥‥っ!」
 大地の振り絞った声。
「は、はいっ!!」
 超機械による電磁波が、大地の攻撃によって傷ついた玄の身体を焼いた。
 だが、玄はまだ立っていた。大地は床に倒れている。
 ‥‥相当なダメージが入ったはずだ。それでもまだ、目の前の敵は立っている‥‥。
 異形の、血塗れの筋肉質の男の姿に、ヨグは本能的に恐怖を覚えた。
「‥‥くぅ!」
 歯を食いしばり、電磁波を連続で放つ。
 玄は身を焼かれつつも神速の踏み込み。テトをやった時のように。
 二刀がヨグの身体を、纏ったAU−KVの装甲ごと刺し貫いた――。

 ***

「がはっ‥‥かはっ‥‥。
 俺様はまだ‥‥倒れるわけにはいかないんだ‥‥」
 テトは床に這いつくばりながら、手さぐりで、取り落としてしまった知覚砲を探す。
 ‥‥斬られた傷が焼けるように熱い。血も止まらない。
 しかし、今も足止めをしてくれている仲間のために‥‥動力炉を‥‥。

 ***

 A班――
 5人は2挺のガトリング砲による凄まじい弾幕に晒された。
 ケイが盾となり、なんとか接近し、攻撃を加えるが‥‥、
 翔の攻撃は衰えることを知らなかった。絶えず銃弾が襲い掛かってくる。

 しばらくして――弾幕が消えた。
 翔はからからと砲身が回るガトリング砲を床に捨てる。
 ‥‥どうやら弾切れらしい。
 A班の傭兵達が好機! と、思ったのも束の間。
 翔はハンドキャノン(超大型のリボルバー)2挺に持ち替えて銃撃してきた。

「ぐっ‥‥はあああっ!!」
「やあああっ!!」
 ノエルは【瞬天速】を使用。ティリアは【迅雷】を使用。
 爪と機械剣、二刀小太刀で息を合わせて斬撃を加える。

「速い‥‥でもせめて援護をっ!」
 子虎は【ソニックブーム】を放つ。
「了解だ‥‥!」
 エイラは超機械による電磁波で攻撃。

 素早く移動し蹴りを放ってくる翔。
 ケイはそれをシールドで受け止める。
「‥‥っ」
 手がビリビリと痺れた。

 敵の弾幕は無くなったが‥‥、
 ガトリング砲の重量により低下していた機動力が戻り、傭兵達は更に苦戦。
 ‥‥だが、翔も確実にダメージを受けていた。
 血を流しつつも銃弾が無くなったハンドキャノンを投げ捨て、
 2つのコンバットナイフを抜き、蹴り技と共に完全な近接戦へ移行。

「うあっ!?」
 蹴り飛ばされたノエルは床に膝を突く。
「‥‥っ」
(翔の心境は少し理解出来る気がする‥‥。
 僕だってあの時、一歩違っていたらどうなっていたか‥‥)
 傍らで、肩で息をしているティリアの顔を見る。
(でも、僕達にも譲れないものがある‥‥)
 最愛の恋人の手をぎゅっと握る。温もりを感じる。
「ノエルさん、いきましょう。彼の悲しい戦いを終わらせてあげましょう」
 ティリアの言葉。

 改造強化人間の翔。
 後に相川小隊が入手した情報によって明らかになるが、
 その正体は頭脳と身体能力が優れる以外はごく普通の大学生だった。
 芳賀教授によって拉致され、洗脳され、強化され、改造され‥‥。
 今は死にもの狂いで戦っている。
 彼が戦う理由は――「姉貴を殺した奴らを殺してやる」。
 しかし、彼には舞と呼ばれていた改造強化人間との血縁は無かった。
 芳賀教授による、洗脳をより強力にするための擦り込み。
 バグアの手先となり過ごした短い時間の中で生まれた絆もあっただろうが、
 それは所詮、偽り‥‥。

「うん‥‥ティリアさん」
 ノエルは頷き、恋人の手を離す。爪と機械剣を構える。
「僕は‥‥絶対に、本当に護りたいものがあるから戦う!
 翔! お前とは違う!!」
 二刀小太刀を構えたティリアと共に地を蹴る。
「僕も! ありったけの攻撃を‥‥!」
「あたしだってまだ‥‥一撃ぐらいは入れられる‥‥!」
 子虎とエイラも続く。

 ケイが声を上げ、【仁王咆哮】を発動して翔の注意を引き付ける。
「こっちだ、余所見するなよッ!」
 ――狂乱状態の翔には十分な効果。

 ティリアの二刀小太刀による斬撃。
 子虎が跳躍、上段からの大剣での一撃。
 エイラの機械槍による渾身の突き。
 3方向からの同時攻撃。

 ケイは銃で射撃しつつ後退。

 そして――
「はあああぁぁぁぁぁっ!!」
 【瞬天速】で急接近。【急所突き】を使用したノエルの黄金の拳が翔の鳩尾に入る。
 翔は大量の血液を吐き出し、ノエルに寄りかかるようにして、力尽きた。

 次の瞬間、爆発音が響く。

 ***

 少し前。
 エネルギーキャノンMk−IIを構えたテトが、伏せたままの状態で照準。
 狙いはもちろん――動力炉。
「いけぇぇぇ!!」
 知覚砲から放たれた光条が目標を貫き、爆発を起こし、黒煙を噴き上げた。
「やって‥‥やったぜ‥‥」
 テトはそれを見ると、満足そうに目を閉じ、大の字になって倒れた。

 ***

「動力炉の破壊を確認‥‥!
 くぅ‥‥、きついけど‥‥、皆‥‥早く脱出しよう! 長居は無用!」
 子虎が苦しそうに、出来る限りの声を振り絞る。
 相川小隊は負傷者を搬送。ただちに撤退を開始。

 それから第3分隊が最後まで戦い続けたアンジェリナ、一千風、九郎と合流。
 殿を務め、相川小隊の攻略したルートで全員がプラントから脱出した。

 ***

 キメラプラント乙1号――。
 青白い光を放つ、無数の培養カプセルが並ぶ室内。
 大型のスクリーン。そこで‥‥一連の虫型キメラ事件の首謀者、
 芳賀教授がキメラプラント乙2号での出来事を監視していた。
「翔が死に、2号は落ちたか‥‥。しかし、玄は生存‥‥奴は本物だったようだな‥‥」
 正直なところ、翔は失敗作だ。
 なかなか精神が安定しなかったため、舞を姉と擦り込んだのだが、
 返って逆効果になった。当初はかなりの性能を見せたものの‥‥やはり失敗作。
 高い知性と高い戦闘能力の両立には程遠い。
 再び不安定となった精神を補うため、気休めに重武装を施してみたが‥‥、
 特に意味は無かったようだ。だが――
「くくく。私の研究も間もなく完成を迎える。待っているぞ、傭兵共‥‥」