タイトル:【BD】智覇の冒険5マスター:とりる

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 12 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/09/30 20:58

●オープニング本文


 バグアの突きつけてきた脅しと共に、ボリビア領内へはキメラが侵入を開始していた。本格的な侵攻ではなく、これも脅しの意味合いなのだろう。
「‥‥でも、この国にはそれに抗う力がない」
 国王ミカエル・リアは項垂れる。中立を標榜するボリビアの主権を尊重し、UPCは駐留していない。援助という形で持ち込まれた僅かなSES武器や能力者らの力では、長大な国境線はおろか、人里を守ることすら困難だ。それゆえに、彼は。
「ULTへ依頼を出す。それならば国是を犯してはいない‥‥。そうだとでもいうのか? それで納得させるにも限界はある」
 一歩を踏み出した若き国王に、摂政のマガロ・アルファロは不快げに眉をしかめてみせた。


 端正な顔立ちをした長身の少女が灰色の長い髪を揺らし、赤茶けた色の地面を踏みしめてジャングルの中を進む。
 彼女の名は智覇。ダークファイターの智覇。世界各地を点々とするキメラハンターである。
 ここはボリビア。バグアが放ったキメラの脅威に怯える国民達‥‥。智覇はUPC軍から依頼を受け、その討伐任務へ赴いていた。
 
 しばらく進むと、開けた場所に出た。そこには――始祖鳥のような姿をした巨大なキメラが二体!
「クエッ! クエッ! ギャアギャア!!」
 始祖鳥型キメラは智覇を見つけるとその逞しい脚を繰り出し、突進してきた。
 横っ飛びに避ける智覇。背負っていたガトリング砲を構え、着地すると同時にトリガーを引く。
 翼に命中。鮮血が飛び散る。しかしダメージは軽微の様子。そのとき――
「‥‥!」
 背後に殺気を感じた。智覇は別方向に跳躍。
 智覇が立っていた地面にもう一体の始祖鳥型キメラの尖った口が突き刺さる。
 咄嗟に避けなければ今頃串刺しかあるいは丸齧りにされていただろう‥‥。
 再び智覇はガトリング砲を背負い、腰に装備した二振りの短剣を引き抜き、踏み出す。
「やあああっ!」
 気合いと共に両断剣を付加した二つの短剣で始祖鳥型キメラの脚部を斬り付ける!
「ギャア! ギャア! クエエエエエッ!!」
 X字の傷を付けられ、もがく始祖鳥型キメラ。そこへもう一体が‥‥
「なっ‥‥!?」
 口を開いてこちらを狙っていた。口内に収束する光。プロトン砲――!?
 智覇は駆け、大急ぎで近くにあった背の低い樹木に身を隠す。屈んで目を閉じる。間もなく閃光。
 ‥‥目を開けると、身を隠していた樹木の殆どが消滅していた。
 智覇からは見えないが、頭に装着しているお気に入りのカチューシャも少し焼け焦げている‥‥。
 身を起こす智覇。せめてもう一撃、と思うが今度は‥‥ミサイルが飛んできた!
「!!?」
 智覇は慌ててUターン。樹木を盾に全速力で突っ走る。背後で爆発が巻き起こる。
 ‥‥これは無理だ。一人では、無理だ。機関砲らしき砲弾まで飛んできているし。
 そうやって智覇は戦略的後退を余儀なくされた。

 街に戻った智覇。彼女の身体は例によってボロボロであった。
 着用している黒のボディースーツはあちこちが裂け、白い肌が露出している。
 ‥‥切り傷擦り傷打撲も多数。腕に装備している手甲にもひびが入っていた‥‥。
 そんなわけで主治医の治療を受けながらラストホープのUPC本部へ通信。
 カメラに向かって智覇が真剣な表情で口を開く。
「智覇です。すみません。力及ばず、でした。しかしULTの傭兵ならば‥‥。噂を聞けば、上級クラスというものがあるそうですね。なんでも、生身でワームと張り合うことが出来るとか。どうか、力を貸していただけませんか。お願いします」
 包帯だらけの美少女はぺこりと頭を下げるのだった。

●参加者一覧

白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
鳴神 伊織(ga0421
22歳・♀・AA
皇 千糸(ga0843
20歳・♀・JG
新居・やすかず(ga1891
19歳・♂・JG
ファルル・キーリア(ga4815
20歳・♀・JG
砕牙 九郎(ga7366
21歳・♂・AA
植松・カルマ(ga8288
19歳・♂・AA
斑鳩・八雲(ga8672
19歳・♂・AA
アセット・アナスタシア(gb0694
15歳・♀・AA
二条 更紗(gb1862
17歳・♀・HD
来栖・繭華(gc0021
11歳・♀・SF
シクル・ハーツ(gc1986
19歳・♀・PN

●リプレイ本文

●戦闘前
 智覇からの依頼を受けた総勢12名の傭兵達――。
 現在は街の酒場で戦闘前の打ち合わせを行っている最中である。
「今回は、無理はしても無茶はしなかったようだな。良い判断だ」
 天馬のジャケットを身に纏った青年が白い歯を光らせ、爽やかな微笑を浮かべる。
 彼の名は白鐘剣一郎(ga0184)。数多の戦場を潜り抜けたエースクラスの傭兵だ。
「キメラの特徴で他に気付いた事はあるか? 例えば飛翔高度がどの程度か、とか」
 その様に尋ねる剣一郎。智覇は知りうる限りのキメラの情報を皆に話した。
「‥‥ふむ。ならば跳ぶ前なら脚を潰す方が効果的か。空を自由に飛ぶ鳥であろうと、翼の力だけで空に上がれる訳ではないからな。飛ばれた場合は打ち合わせ通り翼を集中的に叩いて落とそう」
 剣一郎は顎に手を当て、皆に向かって提案する。頷く一同。
(「大型キメラ‥‥か。最近、この手の依頼が増えた感じです。そして‥‥智覇さんでしたか。噂の通り、随分と無理をする方みたいですね」)
「智覇さんお久〜。って、相変わらず傷だらけね。珠のお肌が勿体無い」
 長身の少女の両隣に佇む着物姿の美女二人。双方とも艶やかな長い黒髪をしている。
 ちらりと智覇の包帯を巻いた腕に目をやったのは鳴神 伊織(ga0421)。
 伊織はきりりとした瞳に、ぴんと張った糸のような雰囲気を持つ女性。
 絆創膏の貼られた智覇の頬に頬擦りするのは皇 千糸(ga0843)。
 千糸は雅な雰囲気ながらも柔和でフレンドリーな感じ。
 二人には外見的な共通点があるが、纏う雰囲気はそれぞれ違っている。
「およ? カチューシャが焦げちゃってる。よーし、じゃ代わりに良い物をあげよう」
 千糸はいつもと違う友人の様子に気付き、懐からごそごそと何かを取り出す。そして智覇の手に握らせた。きょとんとする智覇。
「それ予備だし、遠慮しなくていいわよ。それとも私とお揃いじゃ‥‥嫌?」
 智覇の掌の上にあったのは『鈴の髪飾り』であった。
「いえ、嬉しいです。ありがとうございます」
 微笑み、智覇は髪飾りを千糸と同じ位置につけて見せた。
「にしても‥‥酷い傷ね‥‥。そんな身体で戦って大丈夫なの? って言って、大人しく養生してくれる訳は無いか」
 智覇の身体を満遍なく舐める様に見回し、ファルル・キーリア(ga4815)が言った。
「大丈夫です。問題ありません」
 と、智覇は答える。傷は大した事ないらしい。彼女の基準では、だが。
 おいおい! DFのアイドル智覇ちゃんが助けを求めてるって?
 だったら元DFの自分が参上しねー訳にはいかないっしょ!!
「お呼びとあらば即参上! イケメンのデリバリーに参りましたッス!」
 そんな感じでガイアが囁いている系の男、植松・カルマ(ga8288)はテンション高めだ。
「にゅ‥‥また智覇お姉ちゃんが怪我していますの‥‥行く時は繭華達に声かけて欲しいですの‥‥」
 幼い容姿と身体つきに似合わぬビッグバストの持ち主、来栖・繭華(gc0021)。彼女は智覇の方を見てしゅんとしている。繭華の視線に気付いた智覇は「すみません」と、繭華の頭を易しく撫でた。
「久しぶりだな、智覇殿。約束通りお互い生きて再会できて何よりだ。今回の戦いもよろしく頼む」
 シクル・ハーツ(gc1986)が智覇に握手を求める。快く応じる智覇。
 ちなみにシクルも伊織や千糸と同じく着物姿だ。髪は黒ではなく月光の様な銀髪だが。

「話を聞く限り、件のキメラは相当な火力の様ですね‥‥。僕だと1、2発貰ったら川の向こうに旅立ちそうな気が‥‥」
「最近、何かデカいのばっかり相手にしてる気がすげぇするんだが‥‥」
 汗を垂らすJEの新居・やすかず(ga1891)とAAの砕牙 九郎(ga7366)。
 ワームとも互角に渡り合える打撃力を持つ上級クラス。しかし防御面はそうでもない。守りに特化したGDは別だが。
「やれやれ、恐竜に続いて始祖鳥とは‥‥お次はマンモスとでも戦うのですかね、僕は」
 苦笑する斑鳩・八雲(ga8672)。彼は近頃、太古の生物系のキメラの相手ばかりしている様だ。
「新しい力と私の可能性‥‥どこまでいけるか試させてもらうよ!」
 やる気‥‥いや、殺る気まんまんのアセット・アナスタシア(gb0694)。
 めらめらと闘志を燃やしている。
「鳥型のキメラ‥‥鳥、可愛くない鳥、ヤマアラシの様に武装しているとは、品性が感じられません」
(「まぁ、わたくしも品性があるとは言えない手合いですが」)
 色白のきめ細やかな肌に、膝まで届く長い黒髪をした少女、二条 更紗(gb1862)は何やらぶつぶつと呟いている。

「しかし、私達以外は見事に皆、上級クラスばっかりね」
 ふと、ファルルが言った。今回は上級クラス‥‥特にAAが多い。
 ファルルが気になったのはAAという表記。UPC本部で依頼を受けた際に表示されるエースアサルトの略称。
 ‥‥これを見ていると無性に悲しくなる。自分だけじゃない筈‥‥。胸囲的な意味で。
 ファルルは千糸や更紗、智覇に目をやった。その後、アセットや繭華の方を見て凹む。
 Aが1つ足りないのではないか? という突っ込みは勘弁してあげよう。

●キメラハント1
 街を出発した傭兵達。ジャングルの中を進み‥‥暫くすると開けた場所に出る。
 我が物顔で闊歩している二体の始祖鳥型キメラを発見。
「あれが例のキメラ‥‥。う〜ん、確かに重武装ね‥‥。まぁ、ワームを相手にするよりはマシかしら?」
「まあ防御面はワーム程じゃなさそうなのが救いと考えておきましょう」
 ファルルの言葉に答えるやすかず。耐久力がどれ程なのかは戦ってみなければ判らない。
 一同が近づこうとした瞬間、二体のキメラがこちらを向いた。口を開く。収束する光。
「!!?」
 放たれる極太の光条。プロトン砲。予想外の射程距離。一同は散開して何とか避ける。
 一息つく間もなく、今度はミサイルと機関砲弾が飛んできた。爆音が轟く。
 しかもミサイルはクラスター弾だった。広範囲に爆発が巻き起こる。
 傭兵達は少なからずダメージを受けながら爆炎の中を駆け抜ける! 一気に距離を詰めなければ危険だ‥‥!

 ――接近に成功した一同。しかしそれまでに爆風や破片による被害を被った。
 また、これからこの二体を分断しなければならない。

 一同は武器を構え、始祖鳥型キメラA・Bそれぞれに攻撃を加える。
 銃弾や音速波により傷つき、怒り狂って突進してくる二体のキメラ。
 傭兵達は二方向に分かれて誘導を開始。ほどなく分断に成功!

 B班――こちらは少人数で、もう片方のA班がキメラ1体を倒すまで引き付ける役割である。
 樹木に身を隠し、銃で射撃する伊織。
 だがすぐに捕捉され、砲弾が飛んでくる。その度に隠れる木を移す。
 伊織は仲間に警告後、閃光手榴弾を投擲! フラッシュ!
 閃光に目をやられたキメラの動きが鈍る。その隙に距離を詰めて懐に潜り込み、猛撃を使用した刀で斬り付ける。羽毛と鮮血が散った。続けてもう一撃! と、思うが‥‥翼下に装備された砲塔が旋回。掃射を行ってきた。
「‥‥っ」
 攻撃を中止し一旦下がる伊織。
「倒せるなら、それに越した事はありませんが‥‥」
 目的はあくまで時間稼ぎである。今、無茶をする必要はない。
 八雲は散弾銃で射撃しつつ、刀から音速波を飛ばして牽制を行う。
「確かに倒してしまっても文句は出ない‥‥と思いますが、や、難しいかもしれませんね」
 武装部分を狙って攻撃しているが‥‥目立った効果は見られない。
 相当頑丈に作られている様だ。狙いを翼に変更。また音速波を飛ばす。
「やぁっ!」
 SMGで弾幕を張るやすかず。物ともせずにキメラが接近。
 別の銃に持ち替え、左右の脚に射撃。もう一度射撃。今度は部位狙いのスキルを使用。
 銃弾は確かに突き刺さり、キメラの歩行速度が下がった。これを好機と見たやすかずは再度SMGに持ち替え、ペイント弾の弾倉に交換しキメラの目を狙って射撃。目潰しだ。
 だが――ミサイルと砲弾が飛んでくる。
「‥‥!?」
 慌てて樹木に身を隠すやすかず。樹木はミサイルの直撃を受け爆発炎上。やすかずも転倒してしまう。砲弾が肩を掠め、鮮血が散る。
「ぐぅっ!」
 ミサイルとバルカンの照準はキメラの目に依存しておらず、別にセンサーがあるらしい。
 肩を抑え、やすかずはよろよろと身を起こす。
「大丈夫か?! くっ‥‥! 武器が危険すぎる!」
 やすかずとキメラの間に割って入るシクル。空刃を飛ばし、牽制。やすかずの手を引き、距離を取る。
 少人数で当たるのは厳しい相手だった‥‥。

●キメラハント2
 A班――こちらは多人数で掛かり、一気にキメラ1体を倒すという役割。
 手間取ればそれだけB班の危険が増す。速やかに処理しなければならない。
「智覇、今回前衛は俺たちが引き受ける。援護射撃を頼むぞ」
 剣一郎が言った。「了解です」と答える智覇。
「にゅ、い、行きますの」
 ガトリング砲を構える智覇の隣で練成弱体を使用する繭華。
 刀を携え、剣一郎は駆け出す。バルカン砲の猛射を括り抜け、懐に踏み入る。
 そして刀を両手で握り締め――猛撃と急所突きを使用。
「その脚、貰った‥‥! 天都神影流、斬鋼閃・裂破!」
 豪剣一閃! キメラの逞しい脚部に深々と斬痕を刻む。斬り落とすまではいかないものの大ダメージを与えた。キメラは痛みに、けたたましい鳴き声を上げる。
「智覇さん、いくわよ」
「はい」
 千糸はSMGと知覚銃、智覇はガトリング砲で前衛を援護射撃。翼を狙う。
「射抜くわ‥‥!」
 ファルル、即射を使用。知覚弓を4度射る。全て命中。矢がキメラの身体に突き刺さる。
 貫通弾を銃に装填し、九郎は側面からキメラを銃撃。武装を狙う。しかし八雲と同じくあまり効果は見られない。表面を傷つけた程度だ。機械化されている部分の耐久力は高い。
「なら、直接食らわせてやるまで!」
 豪力発現を使用。樹木を利用しての三角飛び。キメラの上へ出る! そのまま刀を振り上げ、豪破斬撃を重ね、翼を斬り落とすつもりで唐竹割りを叩き込む!
「コイツで! どうだあああっ!!」
 命中。鋭い斬撃音。キメラの翼から鮮血が飛び散るが‥‥斬り落とすには至らなかった。
「ちっ‥‥」
 着地する九郎。そこへキメラの鉤爪の攻撃が来る。避けようとするが胸を引き裂かれる。続いて脚部の鉤爪。今度は腹を裂かれた。そして蹴りが入る。吹き飛ばされる九郎の身体。先程利用した樹木に叩きつけられた。キメラが口を開く。プロトン砲が放たれ、九郎を包み込んだ‥‥。
「ぐ‥‥は‥‥」
 身体から煙を上げ、がくりと膝を付く九郎。これが新米能力者であったなら‥‥消し飛んでいたかもしれない‥‥。
「九郎さん‥‥?! くっ、委細構わず突貫、刺し、穿ち、貫け!」
 リンドヴルムを装着した更紗が竜の角と翼を使用して突撃を掛け、キメラの全身に知覚槍を突き立てまくる!
「いくよコンユンクシオ、私達の敵は強敵だ‥‥!」
 大剣を振り上げ、アセットも吶喊。
「足止めの人達の行動が無駄にならない為にも、ここは一気に決める‥‥。強靭、無敵、最強‥‥そんな敵はいないんだから、切り崩せる隙はある!」
 跳躍。スマッシュと強刃を使用。
「一撃必殺! チェストぉぉぉ!」
 大剣を思いっきり、力いっぱい振り下ろす。その切っ先はキメラの身体に食い込み、胸元から腹部まで斬り裂いた。血飛沫が上がる。
「おぉっと! これはチャンスじゃねぇッスか?」
 キメラがよろめいた隙に接近、脚部に剣を叩き込むカルマ。
 致命的なダメージに、絶叫を上げるキメラ。翼を広げ、駆け出し、飛翔しようとする。
 それを逃す剣一郎ではない。仲間に注意を促した後、閃光手榴弾を投擲。フラッシュ! 妨害を行う。更にそこへ――
「うっとおしいから墜ちろ!」
 竜の翼で更紗が肉薄。咆哮を打ち込み、地面に叩き付ける。
「飛べない鳥の仲間入りだ、無様に這い蹲れ」
 その上で更紗は落下の力を利用し、槍を翼に突き刺した。すぐに引き抜き、後退する。
 キメラはもう瀕死である‥‥。
「タイミングを合わせて一斉攻撃だ。行けるか?」
 剣一郎が言った。頷くA班の一同。
 銃と弓と剣と槍の一斉攻撃がキメラを襲い、そして――
 全スキルを使用した剣一郎、渾身の一撃。
「‥‥‥‥天都神影流『秘奥義』神鳴斬」
 剣一郎が言うと、キメラは力を失い、動かなくなった。

●キメラハント3
 飛翔するキメラB。爆弾が投下される風切り音の後、爆音。広範囲に爆炎が上がる。
 こちらもクラスター弾だった。とても避け切れる物ではなく、B班の面々はじわじわとダメージを受けてゆく。だが‥‥
「待たせたな。では化鳥退治の幕引きと行こうか」
 剣一郎の声。A班が合流。
「遅かったじゃないですか」
 焼け焦げた着物をぽんぽんと叩く八雲。
「すまない。手こずってしまった」
 苦笑いを浮かべる剣一郎。
「では、全力で行きますか」
 八雲は刀を構え直し、飛翔しているキメラへ向かう。
 九郎がやった様に樹木を使った三角飛びで高度を取り、天地撃を使用。
「さて、大人しく地面に這い蹲って頂きましょう。――斑鳩流、彗星三式」
 飛翔中のキメラを強引に地面へ叩きつけた! その後、閃光手榴弾を投擲。
「ふにゅ。一気に畳み掛けますの」
 繭華は練成弱体を使用。
「シャドウオーブの攻撃は物凄く痛いですの!」
 その後、超機械からエネルギー弾を飛ばして攻撃。
 キメラは痛みにもがきつつ、ミサイルを発射してきた。標的は――智覇。
「!?」
 この近距離では避け切れない!
 ――そのピンチを救ったのは友人である千糸だった。
 千糸は撃ち落しでミサイルを迎撃。爆風から智覇を庇って一緒に地面に倒れ込む。
「うひゃー‥‥ハードね、全く」
「ありがとうございます、千糸さん」
「ふふん、これが上級クラスパゥワァよ」
 互いの吐息が感じられそうな距離で密着したまま、千糸は不敵に微笑んだ。
「一気に参ります! やあぁっ!!」
 両断剣・絶を使用し、舞う様に斬り付ける伊織。
「これ以上の反撃はさせません!」
 SMGによる制圧射撃で身動きを取らせ無い様にするやすかず。
「これで‥‥!」
 抜刀・瞬を使用。忍刀でキメラの喉首を掻き切るシクル。
「っしゃー! トドメは頂きッス!!」
 両断剣・絶を使用したカルマ。直刀を振い、キメラの頭部をかち割った。
 色々な物を飛び散らせ、キメラは生命活動を停止する。
 こうして、傭兵達は苦戦しながらも依頼を完了。

 繭華は帰り道、ずっと智覇と手を繋いでいた。
 街へ戻った一行。酒場。
「そういえば、智覇さんは転職なさらないのですか?」
 八雲が思い出したように尋ねてみる。すると智覇はこのように答えた。
「‥‥私はDFである事に誇りを持っています。暫くは、転職する事は無いでしょう」
「もしするとすれば、それは――」
 智覇は楽しそうに会話する千糸や繭華の顔を見て、少し笑みを浮かべた。