タイトル:Double stingマスター:とりる

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/08/31 23:22

●オープニング本文


 8月も後半、尚も暑い日が続く日本――九州某所。とある街。
 近くの森にキメラが出現したとの情報を受け、UPC軍の歩兵一個分隊、計8名が派遣されていた。
「あっついっすねー‥‥やってらんないっすよー」
 兵士の一人がヘルメットを被った頭から垂れる汗を手で拭いながらぼやいた。
「無駄口を叩くな」
「へいへい」
 分隊長から注意を受け、肩をすくめる兵士。そのとき‥‥
 カチカチカチ。
 そのような音が聞こえてきた。
「な、なんだ!?」
 突撃銃を構えて辺りを警戒する兵士達。
 ガチガチガチ。
 音が段々近づいてくる。
 そして――飛行音と共に、巨大なスズメバチ数体が出現!
「うわあああ!!」
「各員応戦!」
「りょ、了解!」
 兵士全員が突撃銃や軽機関銃を構え、フルオートで発砲。
 だがFF(フォースフィールド)に阻まれ、当然のように威力を大きく減じられてしまう。
「くっ‥‥対戦車ミサイルの使用を許可する!」
 分隊長が叫ぶと、兵士2名が背中に担いでいた対戦車ミサイルを構え、発射!
 雀蜂キメラは回避行動を取るがミサイルは誘導を続け‥‥命中。爆炎が上がる。
「やったか‥‥?!」
「いや、ダメだ!」
 少々ダメージを与えることは出来たものの、撃破するには至らない。
「分隊長! 我々だけでは対処できません!」
「‥‥仕方ない、一時撤退する! 総員、射撃しつつ後退を開始せよ!」
 命からがら逃げ出す分隊。後日、ULTにキメラの駆除依頼が出されることとなる。

●参加者一覧

ノエル・アレノア(ga0237
15歳・♂・PN
幡多野 克(ga0444
24歳・♂・AA
クラリッサ・メディスン(ga0853
27歳・♀・ER
米本 剛(gb0843
29歳・♂・GD
フェイス(gb2501
35歳・♂・SN
宵藍(gb4961
16歳・♂・AA
毒島 風海(gc4644
13歳・♀・ER
麻姫・B・九道(gc4661
21歳・♀・FT

●リプレイ本文

●新たな力
 件のキメラが出現しているという森にやって来た傭兵達。
「今回は蜂型キメラの退治ですね。こう暑いと、虫も大量発生したりするのだろうけど‥‥キメラまでは勘弁してもらいたいですね」
 汗を垂らしながら苦笑いを浮かべるノエル・アレノア(ga0237)。
「雀蜂のキメラ‥‥か‥‥。刺されると‥‥酷い事になりそう‥‥。手早く‥‥仕留めないと‥‥」
 赤ん坊から子どもサイズの雀蜂‥‥その針に刺されたらと思うと‥‥幡多野 克(ga0444)は少しぞっとした。
「このまま放置しておいては、周辺の住民にかなりの被害が出るかもしれませんもの。速やかに退治するのが賢明ですわね」
 知的な美女のクラリッサ・メディスン(ga0853)が言った。
「昔からあの羽音と軌道がどうにも‥‥」
 米本 剛(gb0843)は蜂が苦手のようである。
「市街地に侵入される前で良かった。スズメバチは危険ですから。キメラならば尚の事。早々に駆除してしまいましょうか」
「人の住む場所に現れるようになっては大変だからな‥‥早急に退治しなければ。毒を持っているのが、少々厄介か‥‥」
 フェイス(gb2501)と宵藍(gb4961)は一般人への影響を懸念。なるべく早く退治しなければ、というのは傭兵の共通認識だった。
「‥‥スズメバチキメラですか。滋養タップリで‥‥こう油でカラっと揚げると‥‥」
 毒島 風海(gc4644)は‥‥どうやらキメラを食べる気でいるらしい‥‥。
「幼虫は甘くて大変美味なんですが‥‥。今回は居ないようで残念です」
 キメラは基本的に生殖ではなく培養して作られるため、幼虫が存在するかは謎だ。
「へへ‥‥傭兵としての初依頼、気合い入れていくぜ‥‥!」
 今回が初めての依頼となる九道 麻姫(gc4661)。そのやる気が空回りしなければ良いが‥‥。
 森へ入る前に、全員が覚醒。
 上級クラス3名――
 ペネトレーターのノエル。脚の周囲に翼の形をした紋章が浮び上がる。
「新しい護る為の力‥‥まだまだ開発中らしいけど。過信せず振り回されないように、早く使いこなせるようにならないとね」
 エレクトロリンカーのクラリッサ。身体の周囲に様々な電子的なデータが浮び上がる。
「上級職への転職後、初めての実戦ですわね。どれくらい強くなったのか確かめてみるのも一興かもしれませんわ」
 ガーディアンの米本。盾の形をした紋章が胸の前に浮び上がる。
(「果たして自分に務まるか否か‥‥」)
 今回彼はダークファイターからガーディアンになった感触を確かめる為に参加したのだ。

 その後、傭兵達は二班に分かれて行動開始。

●VS雀蜂キメラ1
 A班。四方を警戒しながら森を進む。
「蜂は色に反応する、煙に弱いなどの印象があるけれど‥‥うーん」
 歩きながら腕を組み、考え込むノエル。
 キメラはバグアによって作り出された生体兵器である。
 元となった生物の、弱点となりえる習性などは排除されている場合が多い。
「はい、こちらもまだ‥‥。ええ、わかりました」
 クラリッサは無線機でB班と通信。
 事前に軍から入手した周辺の地図をもとに森を一定区画ごとに細分化。
 A・B班で捜索区画を決め、手分けして虱潰しに動いている。
 米本は鞘に収めた刀の柄に手を添えて、いつでも抜刀出来るようにしていた。
 神経を集中させているのか、空気が張り詰めてピリピリしている。
「集団行動か‥‥あまり得意じゃねぇが。ま、やる限りは協力させてもらうぜ?」
 言ったのは麻姫。
「傭兵はこうやって依頼ごとに、即席で班を組むことが多い‥‥と言うか、殆どがそうですからな。慣れる必要がありますよ」
「んー、そっかあ。群れるのは苦手なんだが‥‥まーしかたねぇ。‥‥んで、さっさと出てこねぇかな。雀蜂キメラさんよぉ」
 そんなことを話していると‥‥雀蜂キメラ(小)が5体出現。
「‥‥!!」
 出会い頭、ノエルは携えていた小銃S−01を反射的に構えて照準。引き金を引いて射撃。牽制する。
「出ましたか‥‥。ガーディアンとしては初陣‥‥まさに新兵、上手く馴染むと良いですが‥‥!」
 米本は心機一転、気合を入れ直す。二つの妖刀「天魔」を抜き、前へ出る。
「おいでなすったな‥‥。さて‥‥始めるか‥‥!」
 右手に燃えるような赤い刀身の炎剣「ゼフォン」、左手に透き通った青い刀身の「オーラブルー」を構える麻姫。
「一番はもらったー!! って、出遅れたー!?」
 などと言いながら米本を追う。
 小銃を仕舞い、ノエルも両手の爪を構えて米本と麻姫に追随。
「援護しますわ! 後ろは任せてください。毒針にはくれぐれも気をつけて!」
 クラリッサが声を上げ、エネルギーガンで射撃。雀蜂の動きを制限する。
「おうよ! 助かるぜ!」
 礼を言う麻姫。

「遅い‥‥!」
 素早く動き回る雀蜂。しかし翼――ペネトレーターとしての力を得たノエルには止まっているにも等しい。
 爪で何度も斬撃を加え、ズタズタに引き裂く。
 米本へ向けられる強靭な顎と、毒針による攻撃。
 両腕を交差させ、右手のルシッドガントレットと左手のメタルガントレットで防ぐ。
「‥‥くすぐったいですな」
 雀蜂の攻撃は、米本には通らない。強固な防壁を思わせるその姿はまさに守護神――ガーディアン。
「やぁっ!」
 一旦離れた雀蜂にソニックブームを放ち、叩き落す。
「ちっ! ちょこまかとぉ‥‥」
 麻姫はまだ戦いに慣れぬため、苦戦してしまう。
 そこにクラリッサの援護が入る。
 エネルギー弾により羽が融解。バランスを崩す雀蜂。
「サンキュ! おらよっ! せぇぇぇい!」
 紅蓮衝撃を使用。身体が赤いオーラに包まれる。動きの鈍った雀蜂キメラを斬りつけ、地に落す。
 クラリッサの周囲に、覚醒時と同じ様に様々な電子的なデータが浮び上がる。
 ウィンドウに表示される‥‥本人にしか解らない暗号。
 エレクトロリンカー‥‥最高の知覚を持つ支援のスペシャリスト。
 本能と直感によって敵の動きを先読みし――残る二体の雀蜂にエネルギーガンをそれぞれ二連射。
 身体を焼かれた二体の雀蜂は消し炭となった‥‥。

●VS雀蜂キメラ2
 B班。奇襲を受けぬよう、A班と同様に四方を警戒。
 克は耳を澄ませ、羽音などが聞こえないか警戒している。
「了解。そちらも気をつけて。オーバー」
 フェイスは無線機を耳に当てA班と通信。
「情報では、雀蜂キメラは威嚇音を出すようですね。色濃く元生物の習性が残っているようで」
 先にも述べたように、弱点となる習性は排除される場合が多いが‥‥それ以外はそのままということもある。
 宵藍はフェイスの言葉に頷く。
「木々で視界が悪い‥‥やっぱり音で判断したほうが良さそうだな」
 行動を開始する前にGooDLuckを使っておいたが効果はあるだろうか。まあ気休め程度だが。
 そんなことを考えているセーラー服にガスマスク姿の少女、風海。
 手にはビスクドール型の超機械を抱いている。
 ふと、克の視線を感じた。
「‥‥あ、気になりますか? ビスクドールの武器なんて珍しいですよねー」
「いや‥‥そうじゃなくて‥‥」
「あ、もしかしてマスクですか? ‥‥実は昔、火鉢で手を滑らせて‥‥顔に酷い火傷を‥‥」
 風海は視線を下げ、重い口調で語る。
「‥‥ごめん。踏み入ったこと聞いて‥‥」
 悪いことをしてしまった‥‥。と思う克。
「‥‥まぁ、全部嘘なんですが。マスクを集めたり被るのが趣味なので。可愛いでしょ?」
「‥‥‥‥」
 複雑そうな顔で黙り込む克。
 そのとき――ガチガチガチという威嚇音と、ブブブブブ‥‥という羽音。
「‥‥音が。来るか?」
 エネルギーガンを握る宵藍。

 雀蜂キメラ(小)が5体出現。
「いきます‥‥!」
 風海が自分以外の全員に練成強化を使用。
「その煩い羽音‥‥全力で止める」
 月詠を抜き放ち、雀蜂キメラを見据える克。
「色と良い、大きさと良い」
 小銃「バロック」を構えて高速のエイミング。
「狙いやすくて助かります」
 フェイスは鋭覚狙撃を使用。連続で銃弾を叩き込み、速攻で雀蜂一体を叩き落す。
「‥‥!」
 毒針での攻撃を刀で受け流す克。
「はぁ‥‥っ!」
 横一線。斬撃を加え、雀蜂一体を胴体から真っ二つにする。
「見下ろされるのは癪なんでな、落ちてもらおうか」
 エネルギーガンを連射する宵藍。身体を焼かれた雀蜂キメラ一体が落ちる。
 一般的な虫型キメラと同様に非物理攻撃には弱いらしい。
「わ、私の半径85cmには近付かないでくださいよぉぉ!?」
 風海は超機械「ビスクドール」を振り回し、何度も電磁波を発生させ、また一体が落ちた。
「‥‥っと」
 マガジンを交換。フェイスは再び狙いを定め、射撃。最後の小型雀蜂が落ちる。
「動きは素早いですが‥‥ワンパターンです」

●VS雀蜂キメラ(大)
 A班が雀蜂キメラ(小)を倒し終えて間もなく、二体の雀蜂キメラ(大)が出現。
 ただちにB班へ連絡し、合流。
「ボスの登場か‥‥やってやるぜぇ!」
 後先考えず突撃する麻姫。
 大型の雀蜂キメラ二体が毒針から毒液を広範囲に散布してくる。
「しまっ‥‥!?」
「きゃあああ!?」
 悲鳴を上げる風海。
「毒か‥‥しかし、当たりさえしなければ!」
 克はレイシールドで防ごうとするが身体を全て覆うことは出来ず、毒を浴びてしまう。
「ぐ‥‥!」
 避けようともせず、両手のガントレットで受け止める米本。
 ノエルは瞬天速、宵藍は迅雷で範囲外に逃れる。
 毒を受けてしまった麻姫、風海、克、米本‥‥。
 麻姫と風海は苦しそうに膝を突いている。
 克と米本は辛うじて立ってはいるが、ダメージを受けてしまっていた。
「皆さん‥‥!?」
 周りを見回し、叫ぶノエル。その肩に手が置かれた。
「落ち着いて。治療は私に任せてください。その間、ノエルさんと宵藍さんは敵を引き付けていてくださると助かります。フェイスさんは援護をお願いします」
「了解しました」
 フェイスは鋭覚狙撃を使用。銃を構えて射撃。羽を狙って動きを鈍らせる。
「わかった!」
 宵藍はエネルギーガンで射撃しつつ、月詠で側面から斬りかかる。
「いきます!」
 ノエルは瞬天速で雀蜂を翻弄。
「皆さんに癒しを‥‥!」
 クラリッサは練成治療を麻姫、風海、克、米本に使用。一時的にではあるが、ダメージを全回復。
 ついでに雀蜂二体に練成弱体をかける。
「今ですわ!」
「くっ‥‥ふざけやがって‥‥! いい加減逝きやがれぇ!!」
 紅蓮衝撃を使用する麻姫。炎剣を両手で握り締め、雀蜂に飛び掛って力いっぱい振り下ろす。
 熱気を纏った斬撃。甲殻を切り裂き内部までダメージを与える。
「少しだけ‥‥効きましたよ‥‥お返しをさせていただく!」
 流し切りを使用。両手の二刀で斬り付ける米本。
「もらった! そこだぁぁぁ!!」
 ノエルは敵の背後に回り込み、黄金の拳を叩き込む。
 腹部を貫かれ、大型雀蜂一体が落ちた。
「よくも‥‥やってくれたね‥‥」
 側面から流し切りを連続で打ち込む克。
「外殻は硬そうだが‥‥!」
 宵藍はエネルギーガンで関節を狙って射撃。
 そしてフェイスが――
「では、トドメと行きますか」
 急所突き、鋭覚狙撃、影撃ちを使用。狙いを定め、トリガーに指をかける。
 ‥‥回転する弾丸が大型雀蜂の頭部を撃ち抜いた。
「任務‥‥駆除、成功と」

「‥‥これまで以上の攻撃力を手に出来たみたいですわ。これならば、皆さんと肩を並べて十分に戦えますわね」
 クラリッサが救急セットで毒を受けた仲間を治療しながら呟く。
 エレクトロリンカーとしての力を確かに実感することができた。
 ちなみに雀蜂キメラの毒は時間と共に消えるようだった。
「ふぅ‥‥なんとか終わったか。えっと‥‥ありがとな‥‥」
 頬をぽりぽりとかき、照れながら礼を言う麻姫。
「いえ、支援役として当然のことですわ」
 微笑むクラリッサ。
「なにを‥‥しているんだい‥‥?」
 克が風海に話しかけた。
「ハッ‥‥!? えとその、あまりお役に立てなかったので‥‥せめて滋養にいいものを、と‥‥」
 彼女はこそこそと雀蜂キメラの死骸を回収しようとしている。
「雀蜂の揚げ物は…滋養があるって聞いたけど‥‥。美味しいのかな‥‥? でも‥‥こんなに大きいと‥‥。揚げるだけでも‥‥大変だよね‥‥。というか、能力者にも効く毒を持つキメラだから、食べるのは危険だと思う‥‥」
「むう‥‥それじゃあ止めておきましょうか‥‥」
 すごく残念そうな風海。
「もう居ないよな‥‥」
 宵藍は念のため森を再度探索。
「‥‥」
 フェイスは依頼後の一服。
 夕陽を眺めながら紫煙を吐き出す。今日も暑かった‥‥。

 こうして、傭兵達によってキメラは退治されたのだった。