タイトル:【AA】オペ子の憂鬱2マスター:とりる

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 15 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/06/11 08:30

●オープニング本文


 ラストポープ・UPC本部――
 コツコツと音を立てて廊下を歩く一人の女性。
 その歩調に合わせて、あごの辺りで切り揃えられた艶やかな黒髪が揺れている。
 彼女の名はオペレーターのクラヴィーア・櫻野(gz0209)。
 今は上司からの呼び出しで、執務室へ向かっているところだ。
 ‥‥そして、到着。コンコンとドアをノックする。
 すぐに「入って」との返答。
「失礼します」
 クラヴィーアは扉を開けて部屋の中へ入った。ちゃんと扉は閉める。
 上司の顔を見つめる。‥‥ちなみに女性、年齢は30代半ば。
「よく来てくれたわね」
 上司は微笑む。クラヴィーアも微笑み返す。
 ‥‥この人は自分のことをよく気に掛けてくれている。
 それにバリバリ仕事をこなす、キャリアウーマン。
 ゆえにクラヴィーアは彼女のことを慕い、尊敬していた。
 しかし‥‥。
「それで用件なんだけど――」
 嫌な予感。
 この上司は時たま、とんでもない仕事を押し付けてくるのだ。
 そういえば、前にもこのようなことがあった。
「北アフリカで行われている作戦については、もちろん知っているわよね?」
 きた!
 クラヴィーアはそう思った。
 大規模作戦のことは仕事柄よく知っている。
 とりあえず、頷く。
「ちょっと行って来てもらえるかしら」
「はぁぁぁ〜‥‥やっぱりですか‥‥」
 がくりとうな垂れるクラヴィーア。
「ごめんなさいね。例によって現地のオペレーターが足りないのよ。どこも人手不足で」
「‥‥はい」
 しょんぼりとした声で答える。
「やってもらいたいのは、前線での傭兵達のオペレート。‥‥と言っても、戦闘はしなくていいから、安心してちょうだい」
「‥‥」
 どうだかわからない。前回だって結局戦闘をするハメになったし。
 いや、それよりも――
「‥‥またあの服を着なきゃいけないんですね‥‥」
 憂鬱だ。ああ、憂鬱だ。
「あら、似合っていると思うけど。特注だから機能性も抜群♪」
「でも‥‥あのデザインはどうかと‥‥」
 あれは‥‥すごく恥ずかしい‥‥。
 もじもじとするクラヴィーア。
「それじゃあ、お願いするわね。なんだか旗色が悪いみたいだけど‥‥無理はしないで。無事に帰ってくるのよ。そうしたら、食事を奢るわ。貴女の好きな物をなんでも」
「えっ! 本当ですか?!」
 クラヴィーアの瞳が、急にキラキラと輝いた。
「うふふ、本当」
「私、頑張ります!」
 ビシィと敬礼するクラヴィーアだった。


 北アフリカ・UPC軍前線拠点――
 現地入りしたクラヴィーアを出迎えたのは‥‥乾いた風と、砂の大地。
「うぅ‥‥なによここ‥‥」
 既に挫けそう‥‥。
 基本的にオフィス勤務のクラヴィーアには少し酷な環境のようだ。
「お待ちしておりました。櫻野さんですね?」
 そこへUPC軍の兵士がやってきた。
 クラヴィーアは頷く。
「では、司令部へご案内しま――」
 そのとき、急に警報が鳴り響いた。
『エマージェンシー! エマージェンシー! 哨戒機が接近するHW編隊を捕捉! 目的は橋頭堡への攻撃と思われる。KV部隊はただちに発進せよ。繰り返す――』
「敵‥‥!?」
 そんな、いきなり来るとか‥‥!
「‥‥櫻野さん、状況が変わりました。格納庫へ急いでください」
 通信機で司令部と連絡を取っていたらしい兵士が真剣な顔で言う。
「え、でも‥‥」
「橋頭堡を破壊されたらおしまいです。‥‥傭兵達は既に待機中。貴女も直ぐに出撃準備を」
「‥‥」
 来て早々、これか。最悪だ。
 そんなことを考えながら、クラヴィーアは格納庫へ足を進めた‥‥。

●参加者一覧

ノエル・アレノア(ga0237
15歳・♂・PN
ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
ケイ・リヒャルト(ga0598
20歳・♀・JG
王 憐華(ga4039
20歳・♀・ER
雑賀 幸輔(ga6073
27歳・♂・JG
六堂源治(ga8154
30歳・♂・AA
ランディ・ランドルフ(gb2675
10歳・♂・HD
澄野・絣(gb3855
20歳・♀・JG
橘川 海(gb4179
18歳・♀・HD
リア・フローレンス(gb4312
16歳・♂・PN
ハミル・ジャウザール(gb4773
22歳・♂・HG
ソーニャ(gb5824
13歳・♀・HD
フィー(gb6429
12歳・♀・JG
ジャック・ジェリア(gc0672
25歳・♂・GD
リリナ(gc2236
15歳・♀・HA

●リプレイ本文

●アフリカの青空
 パイロットスーツに着替えて慌ただしく格納庫にやって来たクラヴィーアを、既に待機中だった傭兵達が出迎える。
「お待たせしてすみません!」
 ぺこりと頭を下げるクラヴィーア。
「いえ。お久しぶりです。‥‥えーと、その‥‥今回もよろしくお願いします」
 頬を赤らめて視線を泳がせるノエル・アレノア(ga0237)。
「アフリカの気候は‥‥本当にすごいですね‥‥早く終わらせてシャワーでも浴びてさっぱりしたいです」
 熱気の篭る格納庫内、手でぱたぱたと頬を仰ぐ王 憐華(ga4039)。
(「‥‥しかし、クラヴィーア様には言い様のない親近感を覚えるのはなぜでしょう?」)
 と、クラヴィーアを見つめる。
「【DR】の依頼のとき以来ね。今回もよろしく」
 挨拶する澄野・絣(gb3855)。「こちらこそ」とクラヴィーアは答える。
 その後、絣は橘川 海(gb4179)に話しかけた。
「大丈夫? 緊張してない?」
「大丈夫、リラックスしてるよっ」
 海はにこりと笑う。手には母から貰った幸運のメダルを握り締めていた。
 戦闘依頼はいつも緊張するけれど、絣の傍にいると落ち着く。
「私たちの力、見せてあげようねっ」
 同じチームの絣とフィー(gb6429)に笑いかける。
「‥‥ん‥‥二度目の‥‥空戦‥‥こなしてみせる‥‥」
 フィーはこくりと頷いた。
「今日のオペレーターさん可愛いね。胸の辺りが敵愾心をさそうけど」
 ソーニャ(gb5824)がクラヴィーアの身体を見回した後、感想を述べる。
「そうですね。情報によると、元アイドルらしいです!」
 ぴょんっと飛び跳ねる憐華。それに合わせてぽよんと揺れるたわわな二つの膨らみ。
「いや‥‥憐華さんもなんだけど‥‥」
「?」
 首をかしげる憐華。
(「‥‥あのスーツのデザイナー、確信犯ね」)
 ふう、ため息をついた後、ソーニャはまたクラヴィーアをじぃぃっと見つめる。
「はうっ!?」
 殺気のようなものを感じたクラヴィーアが声を上げた。
「どうした?」
 目の前に居たジャック・ジェリア(gc0672)が不思議そうに言う。
「な、なんでもありません」
 とクラヴィーア。
「まあ、なんというか、到着して早々ご苦労さん。こういう運命だと割り切っていってみよーか」
「‥‥そうですね。覚悟を決めるしかありませんね‥‥」
 しかしクラヴィーアはまだしょんぼりした様子。
「その‥‥元気出してください。クラヴィーアさんはあたし達が守ります。えと、オペレーターって憧れ‥‥? だから、絶対に絶対に、守ります‥‥!」
 と、安全メットを被った小さな少女、リリナ(gc2236)が懸命に言う。
 クラヴィーアは微笑み、リリナの頬に手を添える。

 皆が出撃前のささやかな雑談に興じている一方で、トラブルもあった‥‥。
「君、ちょっといいかね〜」
 整備兵に声をかけるドクター・ウェスト(ga0241)。整備兵は作業の手を止めずに「なんでしょうか」と答える。
「確認なのだが、戦闘中の武装のパージは可能かね〜?」
「‥‥可能ではありますが、意図的に武装を捨てた場合はUPCから保障されないそうなので、やるならそのつもりでお願いします」
 淡々と答える整備兵。
「な、なんだって〜!? それでは仕方ないね〜‥‥」
 パージするつもりでKVの行動を阻害する武装をKVに積んで来たウェストだったが‥‥それでは諦めざるを得ない。

 もう一方では――
「ちょ、ちょっと待ってくださいッス!」
 格納庫に響く六堂源治(ga8154)の声。他の傭兵達が何事かと振り返る。
「機体が‥‥違うじゃないッスか!!」
 手続き上のミスで、闘技場用の機体が搬入されてしまっていたのだ‥‥。
「残念ですが、今からでは間に合いません。今回はこの機体で出撃して下さい」
 と、整備主任から言われてしまう。
「‥‥」
 黙り込む源治。
 幸い武装はあるが、作戦を変更しなければならなくなった。

 いくつかの不安要素があったものの、出撃準備が完了。
「負傷するかもしれないが、地球の生命を救うため、我々は誰一人欠けることなくLHに帰るのだ〜」
 などと、息巻くウェスト。
「ドクターと一緒に戦えるなんて嬉しいですね」
 愛機のコクピットで目を輝かせるランディ・ランドルフ(gb2675)。
「白楼銀鬼の初陣‥‥頑張っていきます」
「‥‥フィー‥‥ポチまーくつー‥‥出る‥‥!」
 きっと表情を引き締める憐華とフィー。
 そして轟音と共に離陸していく16機のKV。

(「敵は空から‥‥アフリカに来てからは、空と縁があるッスね」)
 感慨にふける源治。自身が所属する小隊も、珍しく空戦をする機会があった。
「っと。考え事はここまで。ケイ、ジャック、迷惑を掛けてホント申し訳ないッスが‥‥頼りにしてるッスよ?」
 二人に通信を送る。
「ええ、こっちも頼りにしているわ」
「ああ、後ろは任せろ」
 ケイ・リヒャルト(ga0598)とジャックから返答。
「橋頭堡‥‥絶対に叩かせないわ」
 操縦桿を握り締めるケイ。

「レーダーに敵影を捕捉。数15。哨戒機からの情報通りです」
 後方のクラヴィーアからの通信。データが送られてくる。
「数‥‥多いですね‥‥大変だけど‥‥守らなくちゃ‥‥!」
 汗を垂らしつつも、ハミル・ジャウザール(gb4773)は気合を入れる。
(「戦い続ける、それが傭兵の本分だ。その本分は何の為に‥‥いや、考えるのはよそう。今はただ、本能に従って敵を撃破するのみ」)
 レーダーに映る赤い光点‥‥敵を見つめる雑賀 幸輔(ga6073)。
「班毎に分かれて行動でいいんですよね‥‥。よろしくお願いします、幸輔さん」
 同じチームの幸輔に通信を送るリア・フローレンス(gb4312)。「ああ」と答える幸輔。

「まもなく接敵します。皆さん、お気をつけて‥‥!」
 再びクラヴィーア機からの通信。

 それを聞き、幸輔が呟く。
「‥‥作戦開始」

 ここから先は各チームに分かれての行動となる。
 傭兵達は3機編隊を組み、速度を上げた。

●VS本星型HW
 ノエル、ウェスト、ランディが担当するのは本星型HW1機、小型HW2機。
 KV3機はウェストに速度を合わせ、敵機との距離を詰める。
「本星型は手強い‥‥ともかくあれを優先的に撃破しなければ僕達は追い込まれてしまうでしょうね‥‥」
 真剣な顔でノエルが言う。

 ランディ機、ウェスト機、増速。
「目標補足。ドクター、いつでもいけるよ!」
「行くぞ、コレがGSEだ〜!」
 GSEとはG放電装置の集中攻撃に、更に知覚攻撃を追加した連携攻撃のことである。
 ウェスト機、HL00対艦荷電粒子砲で本星型HWに放ち、リロード。
 極太の光条は命中し、敵の装甲を焼く。中程度のダメージ。
 ランディ機、アハト・アハトで射撃後、放電ミサイル「グランツ」を2発発射。
「超伝導アクチュエータ起動、アハト・アハト発射! 続いてグランツいけぇぇ!」
 しかし‥‥命中せず。
「くそ! 狙撃銃なんだぞ! 墜ちろ! 当たってくれよ!」
 悔しそうなランディ。敵は本星型‥‥侮れない。
 ノエル機、増速。本星型HWをロックオン。
「いっけぇー!」
 ホーミングミサイルFI−04を1発発射。命中。
 バグア式ファランクスの迎撃で威力が大幅に減衰。本星型HWのダメージは軽微。

 本星型HW、ノエル機に向けてプロトン砲を4度放つ。全弾命中。
「ぐううう!!」
 高熱により各部装甲が融解。ノエル機、大ダメージ。
 敵の攻撃は尚も続く。小型HW2機、プロトン砲でノエル機に集中砲火。全弾命中。
「うわあああ!?」
 致命的な損傷を受けてしまうノエル機‥‥。

 ノエル機、なんとか態勢を立て直し、試作型「スラスターライフル」で本星型HWに照準を定め射撃するが、回避されてしまう。
「くそぅ‥‥!」
 警告音の鳴り響くコクピットでノエルは悲痛な声を上げる‥‥。

 GSEは尚も続く。
 ウェスト機がG放電装置で、ランディ機が試作型G放電装置で本星型HWに攻撃。
 いずれも命中。中程度のダメージ。
「墜ちない? くっ、火力不足か?」

 本星型HW、プロトン砲をウェスト機に4度放つ。全弾命中。ウェスト機、中程度のダメージ。
「やるではないかぁ〜!」
 小型HW2機、ランディ機にプロトン砲を集中砲火。
「く! 試作AEC起動! 緊急防御!」
 避け切れない! ランディ機、試作型AECを使用。
 超伝導コーティングに阻まれ、1発はほぼ無効化するが‥‥
「‥‥っ!?」
 他は全弾命中。ランディ機、致命的なダメージ。
「まだまだ、これからだ‥‥。シラヌイはこの程度で墜ちないさ‥‥」
 ランディは強がって見せるが、機体は悲鳴を上げていた‥‥。

 ノエル機、パニッシュメントフォース使用。本星型HWに向けてミサイルを3発発射。
「これなら‥‥どうだ!」
 命中。しかしダメージは軽微。
 ウェスト機、放電装置で小型HW1に攻撃。
「鬱陶しいね〜!」
 命中し、大ダメージを与える。
 ランディ機、アハト・アハトをリロード。本星型HWをロックオン。射撃。
「目指せ、狙撃屋。このアハト・アハトがあれば‥‥!」
 だが命中せず‥‥。

 本星型HW、プロトン砲でウェストに4度砲撃、命中。
 雷電改2の重厚な装甲が高熱により融解し、抉られる。ウェスト機、大ダメージ。
「コノ程度で、我輩の雷電を落せるものか〜!」
 小型HW2機はプロトン砲でノエル機とランディ機を狙う。
「「うわぁぁぁっ!!?」」
 2人の悲鳴が響く。2機は致命的ダメージ。特にランディ機は被撃墜寸前である‥‥。

 ノエル機、PF使用。本星型HWに対しミサイル3発発射。
「何としても、此処は守り通すんだ‥‥っ!」
 損傷が酷い機体‥‥そのコクピットでノエルが叫ぶ。
 ‥‥ミサイルは命中するも、やはりファランクスも迎撃を受け、ダメージは軽微。
 ウェスト機、荷電粒子砲を小型HW1に放つ。‥‥命中。光条に貫かれ、小型HW1は爆散。
 続いて8式螺旋弾頭ミサイルを小型HW2に向けて発射。命中。大ダメージを与える。
「やっと1機かね〜‥‥」
 ランディ機、アハト・アハトをリロード。放電ミサイルで本星型HWを攻撃するが、命中せず。

 本星型HW、プロトン砲をウェスト機に連射。全弾命中。ウェスト機、大ダメージ。
「このままでは〜‥‥」
 小型HW2、プロトン砲をノエル機に向けて連続で放つ。命中。ノエル機‥‥撃破寸前。

 ノエル機、PF使用。ミサイルを本星型HWに放つ。
「まだ‥‥まだ持ち堪えて、ゼロ‥‥!」
 愛機を信じて、ノエルは敵を見据える。
 ミサイルは命中。ダメージは軽微。
 ウェスト機、螺旋ミサイルを小型HW2に発射。撃墜。
 ‥‥小型HWは撃墜したものの、このままではジリ貧だ‥‥。
 ノエル機とランディ機は致命的損傷、ウェスト機も本星型の強力なプロトン砲を受け続ければ‥‥長くは持たない。
 3人がそう思ったとき、本星型HWは反転し、速度を上げて戦域を離れていった。
「撤退‥‥した‥‥?」


 ケイ、源治、ジャックが担当するのは本星型HW1機、小型HW2機。
 まずは3機とも増速。距離を詰める。

 ケイ機、K−02小型ホーミングミサイルで敵機3機をマルチロック。
「この弾数‥‥当たらないとは言わせない‥‥っ!」
 ミサイルレリーズを一気に押し込む。全弾発射。
 青空に白煙の尾を描き、ミサイルの波が敵編隊に押し寄せる。
 小型HW2機は飲み込まれ、爆炎の中に散っていく‥‥。
 しかし、本星型HWは健在。赤い壁とファランクスの迎撃により、ほぼ無効化されてしまった。
「コイツは囮‥‥本命はこっちッス!」
 源治機、電磁加速砲「ブリューナク」で砲撃。リロード。砲撃。
 本星型HWは回避運動。命中せず。
「さて、敵もそれなりに強いみたいだが、順番に排除していこうか。スピリットゴーストの砲戦能力から逃げられるかな?」
 ジャック機、ファルコン・スナイプを使用。200mm4連キャノン砲で全力砲撃。
 赤い壁に阻まれ、本星型HWの損害は軽微な様子‥‥。

 本星型HW、源治機に狙いを定め、プロトン砲で2度砲撃。命中。
「なっ‥‥!?」
 光線に機体を貫かれ‥‥源治機、撃墜。爆散。
 闘技場用に肉抜きされた機体は耐久力が低かった‥‥。
 続いてケイ機にも2度砲撃、命中。ケイ機、大ダメージを受ける。
「源冶ー!!」
 自機の損傷を気にも留めず、ケイは撃墜されたチームメイトの名を叫ぶ‥‥。

「よくも‥‥!」
 ケイ機、オーバーブーストBを使用。3.2cm高分子レーザー砲でドッグファイトを仕掛ける。
 レーザーを受け、本星型HWは中程度のダメージ。
「源治が落されるとは‥‥!」
 自分がカバーし切れなかったためだ‥‥。
 ジャックは歯噛みしつつ機体を増速。
「ケイ、俺が前に出る」
「でも‥‥!」
 反論しようとするケイだったが‥‥
「お前まで落とされるわけにはいかない!」
「‥‥分かったわ」
 ジャックの必死な声に、道を譲るケイ。
 ジャック機はFスナイプ使用。4連キャノン砲で本星型HWに砲撃。
 中程度のダメージを与える。

 本星型HW、プロトン砲をジャック機に連射、命中。高熱で機体の装甲が歪む。
 ジャック機、中程度のダメージ。

 ケイ機、オーバーブーストB使用。尚も本星型HWに追い縋り、レーザーを浴びせる。大ダメージを与えた。
 ジャック機、増速。Fスナイプ使用。4連キャノン砲の最後の砲弾をぶち込む。命中。
「弾切れか‥‥」
 真スラスターライフルに切り替え、再度攻撃、命中。本星型HWは致命的な損傷。

 本星型HWの動きは損傷で鈍ったようだが‥‥プロトン砲による砲撃は弱まらない。
 ジャック機は光線を何度も受け、大ダメージ。
「この野郎、やってくれるじゃないか‥‥」

 ケイ機、オーバーブーストB使用。またも本星型HWの背後を取る。
 やや後方に位置するのはジャック機。
「これで‥‥!」
「終わりだ‥‥!」
 レーザーと真スラスターライフルの砲弾が本星型HWを貫き、ついに‥‥撃墜。
 敵の機体は大爆発を起こし、空に散った‥‥。

●VS強化型HW(中)
 憐華、ハミル、ソーニャが担当するのは中型HW1機、小型HW2機。
 3機は敵機との距離を詰めるべく増速。

 中型HW、プロトン砲でソーニャに砲撃するも、ソーニャ機は易々と避けてみせる。
「当たらないよ!」
 小型HW2機はそれぞれハミル機と憐華機にプロトン砲を放つ。命中。2機の損害は軽微。

 ハミル機、憐華機、増速。
 ハミル機はI−01「パンテオン」、憐華機はI−01「ドゥオーモ」に兵装を切り替え。
「準備はいいですか?」
「了解です!」
 そして、ほぼ同時にミサイルレリーズを押し込んだ。コンテナから吐き出される無数のミサイル。
「「ソーニャさん!」」
 2人からの通信にソーニャは頷き、マイクロブースターを起動。
「いけー、エルシアン!」
 増速。ミサイルに紛れ、敵陣に突撃を敢行する。G放電装置で中型HWに攻撃。
 ‥‥大量のミサイルが爆炎と雷撃を巻き起こす。それに飲み込まれ、小型HW2機は爆散。
 中型HWも大ダメージを受ける。

 中型HW、プロトン砲でソーニャを狙うが、捉え切れない。
「こいつはボクが引き付ける‥‥! 2人は攻撃を‥‥!」

 ハミル機、増速。スナイパーライフルD−02で中型HWに射撃、リロード。
 砲弾は命中。中型HWの装甲を削り、小程度のダメージ。
 憐華機、増速。ブーストおよびツインブーストB使用。
「ブーストB起動‥‥P−C−P−S臨界‥‥銀翼展開‥‥天衝の戦姫の意地、魅せてあげます!!」
 憐華機の後方から銀色の粒子が放出される。
 KA−01試作型エネルギー集積砲で砲撃。リロード。中型HWに大ダメージ。
 ソーニャ、Mブースター使用。UK−10AAEMを4発発射。
「いけー、フルアタック!」
 全弾命中。中型HWに致命的なダメージを与えた。損傷部分から火花が飛び散る。

 中型HW、プロトン砲の狙いをハミル機に定め、4度砲撃、命中。
 ハミル機、大ダメージ。
「これは‥‥効きますね」
 苦い表情を浮かべるハミル。

「皆、いくよ。奴はもう虫の息だ」
「「了解!」」
 ソーニャ機からの通信に答える2人。
 ハミル機、増速。中型HWの背後に付き、レーザーを照射。
 憐華機、エネルギー砲で砲撃。リロード。再度砲撃。
 ソーニャ機、Mブースター使用。AAEMを4発発射。
「これでおちなさい!」
 ‥‥集中攻撃を受けた中型HWは火を噴いて墜落していき‥‥途中で爆発を起こし、四散した。


 幸輔、リア、リリナが担当するのは中型HW1機、小型HW2機。
「こちら雑賀機。中型編成を捉えた。突撃する」
 幸輔機に追随するリア機とリリナ機。
 移動が低く、重量過多により行動が下がってしまっているリリナ機はやや遅れを取る形だ。

 中型HW、幸輔機に対しプロトン砲で攻撃。
「当たらん」
 だが幸輔機には命中せず。幸輔は冷静に機体を操り、敵の攻撃を見切った。

 リア機、ロックオンキャンセラー起動。増速。小型HWをロックオン。UK−10AAMを2発発射。
 ファランクスの迎撃を受け、威力が減衰。ダメージは軽微。
 幸輔機、増速。ファランクス・アテナイで弾幕を展開しつつ、ソードウィングを煌かせ‥‥
「お前の敵はこちらだ。余所見はさせん!」
 すれ違いざまに中型HWを斬り付ける。小程度のダメージ。
 リリナ機、味方機に追いつくべく増速。
「待ってくださいー‥‥っ!」

 中型HW、バグア式放電装置で幸輔機に攻撃。命中。幸輔機は大ダメージ。
「ぐ‥‥!」
 小型HW2機はリア機にプロトン砲を連射。全弾命中。リア機、中程度のダメージ。

 リア、キャンセラー起動。小型HW1に螺旋ミサイルを3発発射。
 命中。ファランクスの迎撃を受けるも、大ダメージを与える。
 幸輔機、ブーストを噴かして中型HWに追い縋る。ソードウィングによる斬撃。
 命中。中型HWは装甲を切り裂かれ、大ダメージを受けた。
 リリナ機、増速。スナイパーライフルRで小型HW2を狙い撃つ。
「スナイパーライフルR、いきます‥‥っ!」
 命中。砲弾はHWの装甲にぶち当たり、亀裂を生じさせた。中程度のダメージ。

 中型HW、放電装置を放ち、再度幸輔機に攻撃を行う。命中。幸輔機は致命的なダメージ。
「ぐあああああ!」
 小型HW2機はプロトン砲でそれぞれリア機とリリナ機を狙う。全弾命中。2機は大ダメージを受ける。
「正確な攻撃‥‥やはり指揮官が居ると違うのか‥‥」
「痛いですー‥‥」

 リア機、キャンセラー起動。小型HW1をロックオンし、螺旋ミサイルを発射。
 命中。装甲を貫き、内部にダメージを与え‥‥撃墜。
「やった、やりましたよ!」
 幸輔機、またブーストを噴かし中型HWの背後を取る。
「逃がさん‥‥!」
 ソードウィングの斬撃。中型HW、致命的なダメージを負う。
 リリナ機、リロード。SライフルRで小型HW2を狙撃。リロード。
「当たれー‥‥っ!」
 命中。小型HW2は中程度のダメージ。

 中型HW、放電装置で幸輔機に攻撃。続いてプロトン砲を連射。
 放電は幸輔機を撃墜寸前まで追い詰めるが、プロトン砲は命中せず。
「放電が止んだ‥‥弾切れか‥‥?」
 小型HW2、プロトン砲をリリナ機に連射。命中。リリナ機は致命的なダメージ。
「クロがー‥‥っ!?」
 愛機の損傷にあわあわするリリナ。

 リア機、キャンセラー起動。増速。
「リリナさん!? くそ、俺だって‥‥!」
 小型HW2に突撃! ブレードウィングで斬りつけ、撃墜。
「こちらも‥‥そろそろ幕だ‥‥」
 幸輔機、ブーストを噴かして最後の攻撃に移る。
 ソードウィングが金属音を響かせて中型HWの装甲を切り裂く。
 ‥‥腹を割られた中型HWはほどなく爆散した。


 絣、海、フィーが担当するのは中型HW1機、小型HW2機。
 3機は敵機との距離を調節するため、足並みを揃えて前進。
「千日紅とロングボウの力、見せてあげるっ!」
 元気よく言ったのは海。千日紅とは彼女の所属する小隊名である。

 中型HW、プロトン砲の光線を海機に向けて撃ち放つ。‥‥命中。海機、小程度のダメージ。
「きゃっ!」
「海!?」
 被弾した海に、絣が心配そうに通信を送ってきた。
「この程度‥‥かすり傷だよ!」
「それならいいけど」
 と言う絣。ほっと胸を撫で下ろす。

 海機、ミサイル誘導システムを起動。K−02ミサイルで小型HW2機をマルチロック。
 ミサイルレリーズを押し込み、全弾発射。ついでに螺旋ミサイルも混ぜる。
 押し寄せるミサイル群に対し、小型HW2機はFFを前面に集中展開。
 ファランクスの迎撃も合わせて威力を減衰させるが‥‥致命的な損傷。
 あちこちの装甲が吹き飛び、スパークしている。
「残念! 私の本命の矢は、そっちじゃないんだからっ」
 Mブースターを使用した絣機と、Mブーストを使用したフィー機が一気に突っ込んでくる。
 ミサイルの弾幕に紛れて接近していたのだ。
「残念、気付くのが少し遅かったわね」
 絣機、レーザーガン「オメガレイ」を照射し、小型HW1を撃墜。
 フィー機、ロケットランチャーを小型HW2に撃ち込む。命中。しかしまだ落ちない。
「く、しぶとい‥‥。でも‥‥絣さんが1機落とした‥‥!」

 中型HW、絣機に対しプロトン砲を連射。絣機、ラージフレア展開して1発は回避するものの、他は何発か貰ってしまう。
 大ダメージを受けてしまった‥‥。
「でも‥‥そう簡単には落とされないわよ!」
 小型HW2、フィー機にプロトン砲を連続で放つ。全弾命中。フィー機、大ダメージを受ける。
「きゃあああ!?」

 絣機、Mブースター使用。プラズマライフルに切り替えて中型HWに射撃。
 命中。プラズマ弾が装甲を焼き、大ダメージを与える。
 海機、ミサイル誘導システム使用。螺旋ミサイルを3発発射。
 命中。ファランクスの迎撃を受けて威力が減衰。中型HWに小程度のダメージ。
 フィー機、小型HWの背後に付き、レーザーを照射。
「‥‥ボクは‥‥撃たないで‥‥後悔するより‥‥撃って‥‥後悔する‥‥方が‥‥良い‥‥!」
 命中。レーザーにより装甲を穴だらけにされた小型HWは力なく墜落してゆく。撃墜。

 中型HW、プロトン砲で海に集中砲火を加える。命中。装甲表面が融解。海機、大ダメージ。
「今のは‥‥効いたかな‥‥」

 絣機、Mブースター使用。プラズマライフルを連射、中型HWにドッグファイトを仕掛ける。
「海を落とさせはしないわよ!」
 命中。中型HW、大ダメージ。
 海機、SライフルD−02で中型HWの損傷部位を狙撃。リロード。もう一度狙撃。
「私の矢は返し、あなたを穿つ!」
 2発とも命中。中型HWに致命的なダメージ。
 フィー機、増速。後ろにぴったりと張り付きレーザーを浴びせるが、中型HWへのダメージは軽微。

 中型HW、絣機の背後を取る。
「こいつ‥‥!」
 プロトン砲を連射。‥‥それは狙い違わず絣機を撃ち抜いた。絣機は黒煙を吹き上げて落下していく。
「絣さんーーーーー!!!!」
 親友の名を叫ぶ海‥‥。

「‥‥‥‥っ」
 涙を必死で堪え、奥歯を噛み締める。
「‥‥許さない‥‥絶対に許さない!!」
 そして、敵機を睨みつけた。ミサイル誘導システム起動。
 親友‥‥絣の安否が気に掛る。でも――今は――目の前の敵を、倒す!
「駆けてパンテオンっ! サハラを越える赤い風を起こしてっ!」
 思いっきりミサイルレリーズを押し込んだ。コンテナから100発にも及ぶミサイルが一斉に射出される。
 中型HWはFFを前面に集中展開。ファランクスが起動し迎撃が行われる。しかし――
 海の執念が宿ったかのように、ミサイル群は次々と中型HWに突き刺さってゆく。
 ほどなくして‥‥中型HWは爆炎に飲まれ、四散した。

●乙女達のシャワータイムと純情少年
 無事‥‥とは言えないものの、HW編隊を撃退した傭兵達とクラヴィーアは前線拠点へ帰投。
 撃墜された源治と絣は‥‥脱出に成功しており、UPC軍によって回収された。
 怪我も打ち身程度。だがここは苛酷な環境。回収が遅れればどうなっていたことか‥‥。
「絣さんー! 良かったー! 良かったよー!!」
 海が絣に泣きつく。絣は困った様子で、海の頭を撫でた。
「すみません、ご心配をお掛けしましたね‥‥」
「でも、無事で安心した」
 微笑むフィー。

 源治のほうは――
「いやー、死ぬかと思ったッス」
「‥‥まったく。冷や冷やしたよ」
「ホントにもう。‥‥ま、まあ、心配なんかしてなかったわよ? 源治なら必ず生きてると思ってたし、ね‥‥」
 水をがぶ飲みする源治を見て苦笑するジャックと、何故かちょっぴり頬を赤らめているケイであった。

 ウェストは敵機との交戦データを確認中。
「電子機ではないが、ないよりマシだね〜」
「さすがドクター、敵の分析にも余念が無いですね」
 興味心身でそれを見つめるランディ。
「ランディ君は無茶しすぎだね〜。被弾率がハンパないよ〜」
 本星型HW相手に無改造の機体で挑むのは‥‥冒険だったようだ。

 格納庫の外で、乾いた風と、ギラギラした日差しを浴びている幸輔――。
「ここに居たんですね。お疲れ様でした」
 そこへやって来て、冷えた缶コーヒーを差し出すリア。
「ああ、すまないな」
 缶を受け取り、プルタブを開けて一気に煽る。
「戦闘では助かりました。俺も幸輔さんを見習わないと」
「いや‥‥。今回は俺も危なかった‥‥」
 一歩間違えば撃墜されていたかもしれない。気を引き締める必要がありそうだ。
(「北アフリカでの戦いは‥‥まだ続くか‥‥」)
 幸輔はアークエンジェル作戦の行く末を想い、遠い目で青空を見つめた。

「お疲れさま‥‥クロ‥‥」
 ハンガーに固定された愛機の名を呼ぶリリナ。
 かなりのダメージを受けてしまった所為で‥‥装甲はボロボロだ‥‥。
 内部も損傷してしまっていることだろう。修理に時間が掛りそう‥‥。
「ゴメンね‥‥あたし‥‥もっと強くなるから‥‥」
 小さな決意を心に固める。するとそこへ――
「‥‥リリナさん。今日は随分頑張りましたね」
「クラヴィーアさん‥‥」
 オペレーターのクラヴィーアが通りかかった。
 優しそうなお姉さん‥‥。リリナはお話をしてみたいと思っていた。
「あ、そういえば、憐華さんからシャワーに誘われたんですけど、リリナさんもどうですか?」
 クラヴィーアの言葉に、リリナはこくこくと頷いた。

 女子用シャワールーム――
 前線拠点に風呂は無い。水が貴重なこの土地で、シャワーがあるだけでもマシである。
 そこから‥‥キャッキャと乙女達の話し声が聞こえてくる‥‥。
「ふ〜‥‥気持ちいい〜‥‥。噂には聞いていましたがクラヴィーア様のはすごいですね‥‥。私も人の事は言えませんけど‥‥」
「そ、そうですか?」
 並んでシャワーを浴びながら、憐華とクラヴィーアが話している。一体何がすごいのだろう。
「あの二人ずるいよね、ずるいよね。リリナもそう思うよね?」
「??」
 ソーニャがリリナに話しかける。しかし幼いリリナには意味が分からず、首をかしげた。
「あの、さっきから気になっていたんですけど、猫耳と尻尾が‥‥」
「ふぅ‥‥え? きゃっ! 私ったら!!」
 クラヴィーアに指摘されて、自分の頭とお尻にあるものに気付く憐華。
 ‥‥彼女は覚醒しっぱなしだったのだった。

 シャワー上がり――
 4人は脱衣場で、バスタオルで身体を拭く。
 ソーニャは尚もじぃーっと憐華とクラヴィーアを見つめている。
「‥‥あっ!」
 リリナが何かを思い出し、バッグの中をごそごそとやり始めた。
 そして取り出したのは小型のクーラーボックス。
「つ、冷たい飲み物ー‥‥っ、どうぞっ」
 そう言って持参したジュースなどを皆に配る。
「ありがとうございます、リリナ様」
「丁度喉が乾いていたんですよね」
「気が利くね」
「えへへ‥‥」
 喜んでもらえてよかった。
 皆はバスタオル姿のまま、冷たい飲み物をぐいっとやる。
 そのとき――
「ふぅ〜‥‥疲れた。早くシャワー‥‥シャワーが浴びたいよ‥‥」
 がちゃりと扉が開き、ノエルが姿を現した。
「‥‥えっ?」
 女性陣と目が合う。
「「「‥‥‥‥‥‥き、きゃーーーーー!!!!」」」
 巻き起こる、悲鳴。
「すすすすみません!! 間違えました!!」
 顔を真っ赤にして慌てて扉を閉めて出て行くノエル。
「‥‥まあ、ノエル様になら、別に見られてもいい気がします」
「顔を真っ赤にして、可愛かったね」
「うーん‥‥確かに‥‥」
 憐華とソーニャとクラヴィーアは何か頷いている。
 リリナはずっと「?」状態であったが。

 このような感じで最後は平和に、任務は終了したのだった。