タイトル:【AA】智覇の冒険4マスター:とりる

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/06/05 09:04

●オープニング本文


 北アフリカ戦線、UPC軍仮設基地。
 格納庫にて――

 暗闇の中、急にぱっぱっぱっとライトが灯り、ハンガーに固定された1機のKVを照らし出す。
「これがご依頼通り、あなたの戦闘スタイルに合わせてチューンした機体です」
 KVの横に佇む整備兵が言った。
「そう‥‥ですか‥‥これが」
「そういえばあなた、KVに乗ったことあるの?」
 機体を見つめる長身の少女に対して、メガネをかけた白衣の女性が尋ねる。
「相応の訓練は受けています」
「実戦経験は?」
「ありません」
「‥‥」
 要するに、ぶっつけ本番ということだ。
「‥‥まあ、あなたのことだから大丈夫だと思うけれど」
「いえ、少し不安はあります。‥‥補助シートに乗りますか?」
「全力で遠慮します」
 きっぱりと言い切る白衣の女性。
「‥‥ええと、それでは任務の方、よろしくお願いしますね」
「了解しました」
 ちょっと困ったような表情の整備兵に敬礼する長身の少女であった‥‥。


 チュニジア南部、砂原――
 KV1個小隊‥‥4機のPT−056ノーヴィ・ロジーナの姿があった。
「まさか、上陸した途端に敵の要塞があるなんてな」
「しっかりして欲しいですよ、命を懸ける方の身にもなれってんだ」
 愚痴を吐く、パイロット達。
 彼らはバグア軍ドーム型要塞攻略を前に、周辺に敵影が無いか偵察を行っている最中である。
「まあ、ドーム制圧には動員されずに済みそうなんで、そこはいいですが」
「俺は嫌っすね。撃墜スコアが稼げないじゃないっすか」
「お前はスコアのことばかりだな‥‥クルイーサ4」
 ふて腐れる部下に対し、溜息をつく小隊長。
 そのとき――
「隊長! レーダーに反応!」
 クルイーサ2の報告に、隊長は一瞬どきりとした。
 ここは敵地、アフリカ。強敵ばかりである‥‥。
「数は?」
「1です!」
「‥‥」
 ほっとする隊長。
 なんだ、1機だけか。なら司令部に連絡して増援を呼べばいいだけだ。
「機種はわかるか?」
「‥‥該当データあり。ゴーレムと思われます」
 タロスではない‥‥。心配して損した。
 すると――いきなり、クルイーサ4の機体が前に出た。
「なにをしているクルイーサ4!」
「敵は1機だけっすよ? スコアを稼ぐにはちょうどいいカモっす!」
「待て! 単機で突出するな!」
 クルイーサ4は制止を振り切り、ゴーレムのほうへと向かっていった‥‥。
 仕方なく、他3機も続く。

 ほどなく、ゴーレムを視認。‥‥それには砂漠系迷彩が施されている。
 やっと立ち止まるクルイーサ4の機体。
「クルイーサ4! 貴様、命令違反だぞ!」
「すんませんっす、でもコイツを倒せば‥‥」
 クルイーサ4のロジーナは手に持った150mm対戦車砲をゴーレムに向ける。
 だが――
 砂の中から4機のKVの周りに多数の巨大な蠍が出現!
「なんだ‥‥!?」
「キメラです! この数は‥‥! 既に包囲されています!」
 焦りの篭ったクルイーサ2の声。
「なにぃ‥‥! 罠‥‥か!!」
 奥歯を噛む隊長。
「た、隊長! 指示を!」
 クルイーサ3はヴァイナーシャベルを構える。
「おおお俺は‥‥!!?」
 クルイーサ4は混乱した様子だ。
「‥‥」
 このバカ野郎が! と怒鳴りつけたかったがそれどころではない。
「各機、応戦!」
 隊長が叫んだ。

 多数のキメラに対し、応戦を開始するKV小隊。
 しかし蠍キメラの強酸攻撃に段々と追い詰められてゆく。
 それに、何より敵の数が多かった‥‥。
「くそっ!」
「うあああっ!?」
 音を立てて転倒するクルイーサ4の機体。
 そのコクピットへ‥‥蠍キメラの鋭い鋏が迫る――。
「や、やめろ! やめてぇ‥‥!」
 情けない声を上げるクルイーサ4。
「クルイーサ4ーーーっ!!」
 ‥‥しかしそこへ、弾幕の嵐が巻き起こる。
 クルイーサ4を狙っていた蠍キメラも弾幕を受け、体液を散らして悶える。
「ご無事ですか‥‥?」
 割り込んでくる通信。若い女性の声。
 それと共に――ガトリング砲「嵐」を放ちながらブーストを噴かして突っ込んでくる1機のKV。
 練機刀「月光」を抜き、蠍キメラ1体に突撃。
 白い閃光が数度煌くと、蠍キメラは体液を噴出して動かなくなった。
 刀を引き抜き、小隊のほうを向く‥‥突如現れた1機のKV。赤いバイザーフェイスが点灯する。
 それは――灰色と黒に塗られた――GFA−01シラヌイだった。
「もう一度お尋ねします。ご無事ですか?」
 また、若い女性の声。
「‥‥あ、ああ。すまない。助かった」
 あっけに取られていた隊長が我に返り、答える。
「君は‥‥誰だ? どこの所属だ?」
「私の名は智覇。傭兵です。助っ人のようなものを任されてます」
「‥‥」
 智覇‥‥そういえばそんな無茶ばかりする傭兵の話を聞いたことがあった気がする‥‥。
「退路は開きました。ここは私に任せて、あなた方は後退してください」
「しかし‥‥君一人では‥‥!」
 その言葉に、智覇は少しだけ口元を緩め‥‥
「大丈夫。まもなく私の仲間達が到着します」
 と、言った。

●参加者一覧

皇 千糸(ga0843
20歳・♀・JG
月影・透夜(ga1806
22歳・♂・AA
ファルル・キーリア(ga4815
20歳・♀・JG
神撫(gb0167
27歳・♂・AA
蒼河 拓人(gb2873
16歳・♂・JG
アレックス(gb3735
20歳・♂・HD
来栖・繭華(gc0021
11歳・♀・SF
シクル・ハーツ(gc1986
19歳・♀・PN

●リプレイ本文

●合流
 砂原を駆けるKVの列――。
「ほほぅ、智覇さんはKV戦は今回が初とな? ふっふっふ‥‥だったら先輩としては手取り足取り腰取り教えてあげねば」
 智覇の手を取り腰に手を回す‥‥ダンスのレッスンのような光景を思い浮かべる皇 千糸(ga0843)。乗機はS−01改。
「とは言っても、AIが操縦の補助をやってくれるから教える事とかはないか。結局は実践あるのみってことになるわね」
 適正もあるが、KV戦もやはり経験である。
「これで少しは砂漠での抵抗を軽減できるか?」
 事前に入手した砂漠戦のデータをKVに入力する月影・透夜(ga1806)。
 乗機はディアブロ『月洸』。
「ったく、深追いして取り囲まれて敗走って‥‥。後で説教が必要ね」
 件のKV小隊の話を聞き、不機嫌そうな表情を浮かべているファルル・キーリア(ga4815)。
 乗機はS−01改『S−01A TypeF』。
「単機で救援って‥‥無茶をしやがる。まぁ‥‥嫌いじゃないな、そういうの」
 言ったのは神撫(gb0167)。
 乗機はシラヌイS型『昇陽』。
「大規模のお手伝いに遥々到着したと思ったら、早速トラブル発生かな? さて、それじゃあ無茶しちゃった悪い子を後でお説教する為にもちゃんと連れて帰らないとね」
 蒼河 拓人(gb2873)が言う。
 彼の乗機はフェニックス『BARRAGE』。
「KV小隊がピンチで、それを助けにぶっつけ本番で智覇が出たって? ‥‥助太刀と行くか」
 前回、依頼を共にした際、智覇の本心を知らずにきつい事を言ってしまった。一言謝らねば。
 そう思うアレックス(gb3735)。
 TACネームは『St. Elmos 1(セントエルモ)』。乗機はシラヌイS型『カストル』。
「にゅ。い、一生懸命、智覇お姉ちゃん達のえ、援護と、部隊の人、ま、守るですの」
 幼い容姿に不釣合いな大きな胸が強調されたパイロットスーツを着用した来栖・繭華(gc0021)。
 乗機はアンジェリカ。
「全く‥‥無茶をするな‥‥」
 単独先行した智覇‥‥その行動に呆れたような口調で言うシクル(gc1986)。
 だが自分自身にもそういった節があり、彼女の気持ちを理解出来なくも無い。
 乗機はサイファー『Diamond Dust』。
「しかし‥‥私もそういうのは吝かではない。全力で援護する!」
 ――8名の傭兵はKVを加速させる。

 暫くして、戦域に到達。ガトリング砲の射撃音が響き渡っている。
 灰と黒のシラヌイ――智覇機を発見。
 智覇機はガトリング砲の弾幕で蠍キメラにダメージを与え、練機刀で確実に止めを刺していた。
「あれでKV戦初めてって‥‥。いくらエミタの補助があるとはいえ、初心者とは思えない動きだわ‥‥。損傷が大きくなりそうな戦い方っていう事を除けば、だけどね」
 少し驚いた様子のファルル。
「待たせたわね! 智覇さん!」
 千糸が智覇に通信を送る。
「‥‥千糸さん?」
 蠍キメラの強酸を避けながら智覇が答える。
「貴女の窮地とあれば駆けつける。私ってば有言実行の女!」
 コクピットでぐっと拳を握る千糸。
「助かります。千糸さんには助けられてばかりですね」
 笑みを浮かべる智覇。
「あなたが智覇殿か? あなたと共に戦うのは初めてだな。よろしく頼む」
 シクルからの通信。智覇は「こちらこそ」と答える。
「無事か? 単機なんて無茶をする‥‥」
 神撫からの通信。
「噂通りの先行っぷりだな。合流して一気に叩くぞ」
 続いて透夜から。
「蠍を出来るだけ集めるぞ。榴弾砲を用意してある」
 神撫が智覇に作戦内容を説明。
「老兵の意地、見せてあげるわ」
 そしてファルルが言い、傭兵達と智覇は戦闘を開始する。

●VSデザートスコルピオン
 後退中のクルイーサ隊‥‥KV小隊を護衛するのは拓人機と繭華機。
 状態を確認した所、損傷はまだそれほど酷くなかったので、そのまま後退して貰う。
 拓人機は真スラスターライフルとプラズマライフルで射撃し、追い縋る敵を蹴散らす。
「あっ、道中にまだ隠れてるかもしれないからそこには気をつけてね?」
 悪戯っぽく言う拓人。「留意する」と答える小隊長。
 KV小隊の位置を常に確認しつつ、拓人機と繭華機は地殻変化計測器を設置。
 地中から出現する敵に備える。データは2機がそれぞれ受け取り、味方全機に送信する形だ。
「にゅ。あ、蒼河さん、データリンク構築完了ですの」
「了解、繭華ちゃん。無事撤退させるのが目的だから、とりあえず敵を抜かす訳にはいかないね」
 と答える拓人。
 拓人機はライフル2挺で弾をばら撒く。
 繭華機はレーザーキャノンで蠍キメラを榴弾砲の範囲内に誘導していく。
「にゅ、そ、そっちじゃなくて、こ、こっちですの」
 そのとき――計測器に反応。
「そ、蒼河さん!」
「こっちでも確認した!」
 周囲に複数の蠍キメラが出現。2機はすぐさま迎撃。
 非物理の方が有効なようなので、プラズマライフルを撃ち込んでいく拓人機。
「こ、これでどうですの?」
 繭華機は蠍キメラの鋏攻撃をドラゴンスタッフで牽制し、レーザーカノンで仕留める。
 ‥‥損害を受けた蠍キメラ群は地中へ退避しようとする。
「にゅ、に、逃げちゃダメですの」
 レーザーキャノンを放つ繭華機。
 甲殻を焼かれた1体が動きを止める。
 計測器からの情報で敵の位置を確認。‥‥こちらから離れてゆく。
 拓人機は多目的誘導弾を発射。その後、SライフルD−02で射撃し、砂を抉る。
 そこへ、爆音と共に誘導弾が着弾。蠍キメラ数体が絶命した。
「‥‥逃がさないよ」
 不敵な笑みを浮かべる拓人。

 神撫機とシクル機は智覇機と連携し、囮となって多数の蠍キメラを引き付ける。
「敵を一箇所に誘導するから、纏めて吹き飛ばしてくれ」
 シクルは計測器を設置し、地中からの不意打ちを警戒しつつ、ファルルに通信を送る。
 ファルルから「任せておいて」と返答。
「さぁ、うまく集ってくれよ‥‥」
 神撫機は超伝導アクチュエータを常時起動。
 ファランクスで弾幕を展開しつつシクル機、智覇機と固まらないように機敏に動く。
「俺はこっちだ。当てて見やがれ!」
 ラスターマシンガンで蠍キメラの動きを牽制。傷ついた個体もついでに仕留め‥‥
「せやぁっ!」
 すれ違い様に機刀「建御雷」を振るい、連続で斬撃を加える。
 身体をぱっくりと割られた蠍キメラは体液を噴出し地に伏す。
 シクル機、20mmガトリング砲で敵を牽制、誘導を行う。
 離れた敵には機剣「白虹」を用い、一撃離脱で攻撃を仕掛ける。
 甲殻をずたずたにされた蠍キメラが突進してくる。‥‥鋭い鋏が迫った!
「‥‥っ!」
 寸での所で避け、カウンターのメガレーザーアイ!
 攻撃を受けた蠍キメラは一瞬動きを止める。シクル機は一気に接近。
「零距離‥‥もらった! 全弾くれてやる!」
 機杭「エグツ・タルディ」をぶち込む。
 ‥‥身体に大穴を空けられた蠍キメラは動かなくなった。
 一方、智覇機は二刀流の構えを取り、近接戦を行っている。
 その後も3機は奮戦を続け、蠍キメラを巧みに誘導していった。

 今回の作戦の要とも言える千糸機とファルル機。
「旧式のS−01だからって、舐めてるのかしら?」
 ファルルが言った。今となっては、正規軍以外ではあまり見かけることの無いS−01が2機。
 ゴーレムは――有人機かは分からないが――どうやらこちらには興味を示していないようだ。
 というか、後方から動かない。
「その思い違い‥‥教育してあげるわ!」
 ゴーレムに対し、いきなり榴弾砲を発射!
 降り注ぐ榴弾。ゴーレムは回避運動。命中するも、損害は軽微な様子。ファルルは舌打ちした。
 だが‥‥本来の目的はそれではない。
 千糸機はファルル機の援護。ブレス・ノウを使用し、スラスターライフルで射撃を行う。
「砂に潜るのは厄介ねー」
 仲間の計測器からのデータや、実際眼で見て現れる兆候がないか注意しておかないと‥‥。
 今回は敵の正確な数が分からないから特に。
「ま、罠のネタは割れてるんだから、いくらでも対処のしようはあるわ」
 トリガーを引く指に集中する。
「‥‥ん、こっちの方がいいかしら?」
 甲殻に阻まれ、どうもライフルの効きがイマイチだ。
 千糸はリボルバーに切り替え、再度射撃。
 甲殻を焼かれた蠍キメラが身を震わせる。やはり、非物理の方が有効らしい。
 ‥‥そうこうしている内に、囮班が蠍キメラ群を纏める事に成功。
「獲物は罠にかかったようね。私の榴弾の網は半端じゃないわよ? 覚悟なさい!」
 ファルル機はブレス・ノウを使用。榴弾砲を残弾全て叩き込む!
 轟音と共に着弾し、爆炎が巻き起こる。
 囮班の攻撃でダメージを受けていた蠍キメラ群は‥‥次々と身を焼かれ、息絶えてゆく。
「これはおまけってとこかしらね」
 千糸も残存の敵に対しグレネードを撃ち込む。
 ‥‥そうして、蠍キメラは一掃されたのだった。

●VSデザートゴーレム
 透夜機とアレックス機は――
 砂漠系迷彩が施されたゴーレムと相対していた。
 先程の榴弾を避けた動き‥‥。こいつは‥‥有人機と見て間違いないだろう。
 油断は禁物だ。――まず飛び出したのは透夜機。
「厄介なプロトン砲‥‥先に潰させてもらう!」
 そこへアレックスがMSIバルカンRの弾幕で援護。
 ゴーレムは弾幕を避けつつ、チェーンガンとプロトン砲を放ってくる。
「くっ‥‥!」
 透夜機はハイディフェンダーで受け流そうとするが、強力な砲撃に押されてしまう。
「一旦下がれ透夜! 今度は俺が行く!」
「了解!!」
 横っ飛びにジャンプして射線から逃れる透夜機。
 続いてアレックス機が飛び込む。
 今度は透夜機がスラスターライフルで射撃し、それを援護。
 同じ様に回避行動を取りつつ、砲撃してくるゴーレム。
 アレックス機はチェーンガンを機盾で受け、プロトン砲はジグザグに動いて避ける。
 だが‥‥砂に足を取られ、体勢を崩してしまう。砲撃が来る!
「しまっ――」
「アレックスー!!」
 叫ぶ透夜。眩い閃光がアレックス機を包み込む。
 しかし‥‥アレックス機はほぼ無傷であった。咄嗟にAECを展開したのだ。
「ふう、危ねェ」
 この地形では機動性を生かすことは出来ない‥‥厄介だ。
 そんな事を考えていると曲刀を構えたゴーレムが突進してくる。
 アレックス機を何度も斬撃が襲う。機盾で防ぐが――
「ぐぅっ!?」
 右肩の装甲を少し、断ち切られてしまった。
「下がれ!」
 透夜からの通信。
「くそっ!」
 機槍をゼロ距離から撃ち込みゴーレムの体勢を崩し、アレックス機は一旦離脱。
 透夜機の弾幕の援護が入る。‥‥仕切り直しだ。

 このままでは埒が明かない。2人は賭けに出ることにした。
 それは――2機による連続攻撃。同時にブーストを使用。
 透夜機の後ろにアレックス機が付き、一気に接近。
 チェーンガンとプロトン砲を喰らうが‥‥構わない。そのまま後方へ抜ける。
 そしてハイディフェンダーを地面に突き刺し、急旋回。
 しかしゴーレムが曲刀を構え、透夜機に上半身を向ける。
 ――なんという反応速度! だが!
「曲刀は斬ることに特化しているが、横からの衝撃には弱い!」
 Aフォースを使用。建御雷で袈裟斬り!
 曲刀が砕け散り、ゴーレム本体にもダメージを与える。
 そこへ――ブーストを吹かしたアレックス機が突撃をかけた。
「今だ! 『ルーネ・グングニル』、オーバー・イグニッション!!」
 機槍をゴーレムの腹部へ深々と突き刺す。
 内部で爆発が起こる。機槍を引き抜き、距離を取るアレックス機。透夜機も続く。
 数秒後、ゴーレムはスパークし、大爆発を起こして四散した‥‥。

●胸ぺったんレディース
 任務を終え、仮設基地に帰還した傭兵達。KV小隊も無事に帰還出来たようだ。
「今は上官に、こってり絞られている頃だろうね。しっかり反省するといいけど」
 とは拓人の談である。

 格納庫――
「お疲れさん。その、何だ‥‥この間はキツい言い方して悪かった!」
 機体から降りてきた智覇に対し、アレックスが真っ先に声をかけ、頭を下げた。
 智覇は少し意外そうな顔をした後‥‥微笑んだ。
「お気になさらず。まさかアレックスさんから謝られるとは思いませんでした」
「どういう意味だ? まあ、一人で行くってのは後から来る連中を信頼してるのかも知れないが、程々に、な」
 智覇は頷く。

「ふぅ、終わったか。智覇もKVでの初陣おつかれさま。どうだった?」
 続いて話しかけてきたのは透夜。
「やはり生身と勝手は違いますが、思っていた程ではありませんね」
「ほう。余裕だな」
 顎に手を当てて笑う透夜。
「いえ、空戦ではこうはいかないでしょうし。私はまだまだです」
 機体を見上げる智覇。結構損傷してしまっている‥‥。

 そこへ、神撫がやって来きて‥‥
「単機で突っ込むなんて無理をするな」
 智覇に向かって手を振り上げる。
 それを見た智覇はバックステップで下がり、両手で手刀の構えを取った。
「そんなに警戒しなくても‥‥」
 ビンタに見せかけて頭を撫でてやろうとしただけだったのだが‥‥。
「あ、すみません。つい、癖で」
 構えを解く智覇。
 癖ってどんな癖だ‥‥。
「兎に角、心配する人もいるんだから‥‥な?」
 苦笑する神撫であった。

「また機会があれば共に戦おう。だからそれまで生き延びてくれ」
 シクルがその様に話しかけてきた。
「ええ。でも、『それまで』とは‥‥」
「ふふ、その時はまた同じことを言うさ」
 シクルは微かに笑みを浮かべた。

「智覇さんお疲れ〜」
 次にやって来たのは千糸。智覇は「お疲れ様です」と頭を下げる。
「へぇ、灰と黒のシラヌイかー。いい機体ね。KVもガトリング砲を装備してるのね‥‥智覇さんのトレードマークって所かしら」
「ええ。馴染みのある武器ですから」
「う〜ん‥‥。智覇さんなら武装をもう少し攻撃寄りにしてもいい気がするわ」
 そこへ口を挟んだのはファルル。
「攻撃寄り‥‥ですか。追々考えてみます」
 智覇はそう答える。
「それはそうと、シャワーでも浴びたいわね、砂だらけな所だったし」
「あ、私もー」
 ファルルの言葉に千糸が手を挙げる。
「それなら一緒に行きましょう」
 智覇が言い、3人は一緒に格納庫を出た。
「うにゅ‥‥」
 その様子を後ろから見つめる小さな影に、3人は気付かなかった‥‥。

 女子用シャワールーム――
 千糸、ファルル、智覇の3人は並んでシャワーを浴びて汗と砂を洗い流す。
 ここには仕切りがあり、頭と足だけが見え、身体は隠されているタイプだ。
 ‥‥非常にもどかしい!
「ふぃ〜」
「生き返るわね」
「温泉のほうがいいですけれど、これもまた‥‥」
 気持ち良さそうにお湯を浴びる3人。そこへ――
「ふにゅ。繭華も、混ぜて欲しいですの」
 たゆんたゆんと、たわわな胸を揺らしてやって来る小さな少女!
 勿論タオルなどはつけていない!!
「「「‥‥」」」
 例によって絶句する、慎ましい胸の女子3名であったそうな。