●リプレイ本文
●木漏れ日の再会
お花見の誘いを受け、乙女中隊の基地へやってきた傭兵達。
さっそく乙女達の出迎えを受けた。
「‥‥」
女性に対する苦手意識改善の為に参加した時任 絃也(
ga0983)。
しかし大勢の女性を前に、既に固まっている。
「よっ、元気にしてたか」
笑顔で挨拶するセージ(
ga3997)。
「花見か。北へ行けば頃合のが見れそうなんだけど‥‥ま、しょうがないな。葉桜も葉桜でいいもんだし、暑くなる前に外でパーッとやりますか」
と言い、百瀬 香澄(
ga4089)は九条・冴に近寄って軽くハグする。
「やほ〜♪ 今日はお誘い、ありがとね♪」
のんびりした口調で挨拶したのはヴァレス・デュノフガリオ(
ga8280)。
「こんにちは。誘ってくれてありがとう」
柿原ミズキ(
ga9347)が、ぺこりと頭を下げる。
「またこの様な良き機会に御招き‥‥ありがとうございます」
穏やかな表情を浮かべている米本 剛(
gb0843)。
彼は負傷しており、スーツの下は包帯だらけだったが‥‥
無用な心配をかけたくないので、そこは隠しておく。男の意地的に。
「今度は宴会か。ハードな毎日を送っているんだろうけど、元気な皆の顔が見られるのは本当に嬉しいな」
爽やかな笑顔を見せる夏目 リョウ(
gb2267)。
特に恋人である美咲の顔が見られるのが嬉しい。
「ご招待ありがとうございます。今日は思いっきり楽しみましょうねっ」
「はいっ楽しみましょうっ」
「「おー!」」
リリィ・スノー(
gb2996)の言葉に答える舞浜・ちずると三門姉妹。
(「大規模作戦が近い‥‥息抜きできる機会なんてもうないだろうし‥‥その分も、楽しまなきゃ!」)
と、ティリア=シルフィード(
gb4903)は考えていた。
来栖・繭華(
gc0021)は日傘を差して登場。
「は、初めまして。く、来栖・繭華と言いますの。こ、今回はよろしくお願いしますの」
おずおずと挨拶。
既に準備は整っていたので、早速お花見‥‥というか宴会開始!
●花見1
「おっけー、空は快晴、雲は白。絶好の宴会日和だ!」
言ったのは香澄。未成年組みのコップに『とれたてみったんジュース』を注いでいく。
アダルト組みのコップには米本が日本酒を注ぐ。
‥‥乾杯の前に、絃也が口を開いた。
「柿原がもうすぐ誕生日を迎えるそうだ、物の序になってしまうがこの場を借りて祝ってやって欲しい」
「そういえばそうでしたなぁ、ここは皆で柿原さんに祝辞を差し上げるのはいかがですかな?」
米本が重ねる。
「えっ‥‥いいよ‥‥悪いよ‥‥」
ミズキは俯いてモジモジし始める。
「せっかくだし、ね?」
美咲が微笑んでミズキの肩に手を乗せた。
こくりと頷くミズキ。
「と言う訳で、柿原の誕生日を祝して、乾杯!」
香澄が音頭を取る。
グラスのぶつかる景気の良い音が響いた。
「改めて誕生日おめでとう」
リョウと美咲が並んで祝いの言葉をかける。他の者達も続く。
ミズキは照れくさそうにしながらも――
「ありがとう。ボク‥‥嬉しいよ‥‥こんなに大勢で祝ってもらえて‥‥」
微笑みつつぽろぽろと涙を流す。
「ど、どうしたんですの? ミズキお姉ちゃん、どこか痛いんですの?」
その様子にあわあわとなる繭華。
「嬉し泣きだから問題ない」
セージが笑い、繭華の頭を撫でてやる。
その後、香澄が持参したザッハトルテを冴が切り分ける。
●花見2
「さて、余興として隠し芸でも披露するか?」
刀を持ち、剣舞を披露するセージ。
イメージは風。
無常なる神の流派――
時には優しく凪ぎ――
時には激しく荒れ狂う――
直角で鋭角な動き。不思議と見る者を魅了した。
香澄がLHの広場で見つけた桜の香水を振り撒き、香りだけでも桜を楽しませる。
そして忘れてはならない桜餅も用意。
ヴァレスはまず坂城・慧子に声をかけた。
「中隊にも慣れてきたかな? 順調そうじゃない♪」
「うん‥‥。森ノ宮姉妹は‥‥双葉は生意気だけど‥‥悪い人達じゃないし」
「もし、次に対戦することがあったら、負けないからね♪」
「こっちこそ」
軽く拳をぶつけ合う二人。
セージは神楽坂・有栖の隣に座って話をしている。
「どうだ、KVは。生身とは随分勝手が違うだろう」
「そうだなぁ、でも訓練時間がハンパないから」
もう慣れた‥‥というよりも、慣れなければ任務どころの話ではない。
「ここ最近、危険な依頼の連続で本当に疲れた。まあ、仕事を選べるだけ贅沢なんだろうが‥‥」
「だから今日は休もうぜ。休む事も必要だって高ノ宮少佐がいつも言ってる」
のんびりとする二人。
絃也は距離を保ちつつ乙女中隊の面々に挨拶していく。
「先回世話になったが、面識が無かったので挨拶だけでもしておこうと思ってな、今後轡を並べる事もあるかもしれんので、その時はよろしく頼む」
米本とティリアは森ノ宮姉妹に挨拶。
「米本と申します。どうぞ宜しく」
「多分、これから何度も顔を合わせることになると思います。同じフェンサー同士、仲良くしてくれると嬉しいです」
米本と柚葉、ティリアと瑞葉が握手を交わす。
紅葉はもじもじしている。双葉は何か気に食わない様子。
ティリアが「どうしました?」と尋ねるが双葉は「ふんっ」とそっぽを向いてしまう。
「あの子は瑞葉にべったりですから、やきもちを焼いたのでしょう」
と柚葉が説明。
ヴァレスは続いて紅葉に声をかける。
「やほ♪ こうして面合わせて話すのは初めてだね、ヴァレス・デュノフガリオだ。宜しくね♪」
「ええと‥‥あの‥‥」
元気よく自己紹介するヴァレスに、紅葉は少し気圧されてしまった。
「無理しなくて大丈夫♪ 話なんてのはテキトーにのんびり、思った事を言えばいいだけさ♪」
「はい‥‥」
紅葉は頷き、話している内に段々と打ち解けていく。
ふと、隅っこの方に座り、羨ましそうにこちらを見つめている繭華に気付いた。
「ほら、そんなとこいないでさ。こっちに来て皆で話そうぜ♪」
手招きをするヴァレス。
「い、いいんですの‥‥?」
「もちろん♪」
繭華はびくびくしつつも輪の中へ。
「にゅ‥‥お、お姉ちゃんたちは姉妹と‥‥き、聞いたですの。姉や妹が居ると‥‥ど、どんな気分ですの‥‥?」
と、森ノ宮姉妹に質問する繭華。
「瑞葉ねえさまは大好き!」
「瑞葉ねえさまは‥‥優しいです‥‥」
声を揃える双葉と紅葉。
「手のかかる子達ですけど、可愛いですよ」
うふふと微笑む瑞葉。
「双葉‥‥紅葉‥‥お前達は訓練のメニュー追加だ」
米神にぴくぴくと青筋を立てる柚葉。
「「そんなぁ!」」
うなだれる双葉と紅葉。
「柚葉ねえさまは厳しい方ですけれど、本当は優しくて、頼られているんですよ」
瑞葉が繭華にこっそりと耳うちしてくれた。
ミズキは三門姉妹と一緒に過ごしている。
「サナ、カナ、クリスマス以来だよね。今日もよろしく。さぁ、何から食べようか」
ほうれん草とベーコンのキッシュと大量のおにぎりを広げる。
「どうしてかな‥‥こういう時にしか会えないのかな、一度もさ。一緒に戦ってみたいのに」
「戦いより楽しい方がいいと思うよ?」
早苗が答える。
「ボクも、同じ様な小隊に入ってるんだ。一度離れてたけど‥‥ボクの性に合ってたし、親友の力になりたくて」
それで良かったのかは分からない。
小隊についての想いが、ミズキの胸に溢れてくる。
「あっ、何でもないよ。みさきちを見てたら昔の事を思いだしちゃっただけだから」
「ボクは命の恩人に憧れて傭兵になったんだ。なのに上手くいかない。守らなきゃいけない人に心配掛けて情けないよ」
ずずっと鼻をすする。
「ボクは‥‥何の為に‥‥あっ、なんで、こんな時に」
ミズキの瞳から涙が零れ落ちる。
早苗はハンカチで涙を拭い、香苗はミズキの手を握った。
「ありがと‥‥」
香澄は冴とべたべたしていた。ぴったりと肩をくっ付けて手を握り合う。
「折角の機会だから、改めてじっくり見てみようと思ってさ。その可愛い顔を」
香澄が言い、必要以上に冴に迫る。
冴の頬が桜色に染まると、香澄は満足げな笑みを浮かべる。
冴かわいいよ冴。ちゅっちゅしたいよぉ。
「香澄さん‥‥」
とろんとした表情の冴の顔が近づき、二人は甘い口付け。
唇を離した後、香澄は葉桜を見上げ――
「桜、来年は一緒に見れるといいな」
と言った。冴はゆっくりと首を縦に振る‥‥。
リリィは親友であるちずると一緒。
「あはは、すっかり宴会になっちゃってますね。でも皆で賑やかに騒ぐのって、楽しくていいですよね」
「はい、とっても楽しいですっ」
にっこり笑顔のちずる。
(「‥‥最初は心配だったんです。KVに乗る事になって、中隊になって、危ない任務も増えるみたいだったから。でも、全然そんな事なかったんですよね。認められたって事は実力があるって事だし、沢山仲間がいるんですから♪」)
ハムスターのように料理を頬張るちずるを見て、リリィは笑みを浮かべる。
しばらくて、高ノ宮・茜少佐と片瀬・歩美大尉がやって来た。
「遅れてすまぬな」
「皆、楽しんでいるみたいね」
「お久しぶりです」
「来たか」
「お待ちしておりましたよぉ」
ティリア、絃也、米本がそれぞれ挨拶。
ティリアはさっそく歩美に、持参した鮪のユッケと筍の煮物を出し、酌をする。
「人から教わって作ってみたんですが‥‥お口に合います、か‥‥?ボク、いつも自炊程度ですから、味の保障は出来ないですけど‥‥」
「美味しいわよ、とっても。お酒にもぴったり」
歩美は微笑む。
絃也は‥‥茜に、この様に切り出してみた。
「失礼する、貴女がこの隊の創設者と聞いているんだが、少し質問させて貰っても構わないだろうか」
「ああ、構わぬぞ」
茜は酒を煽りながら答えた。
「質問と言っても対したものではないんだが、なぜα−01部隊は女性のみなのかと思ってな」
「ふむ。それは‥‥軍人と言えど、彼女らは年頃の女子。前線では男も女も無いが‥‥やはり、乙女。能力者には若者が多いからな‥‥せめてもの配慮と言う訳だ」
「‥‥そういう事だったのか」
もっと深い訳でもあるのかと思っていた絃也は少し拍子抜け。
実際には上層部へのアピールという側面もあったが、茜はあえて話さなかった。
米本、歩美と杯を交わす。
「見頃の桜で花見も良いですが、葉桜も中々‥‥」
「この時期は緑が綺麗で、私も好きです」
新緑が陽光を浴びてキラキラと輝いている。
しばしの間の後、米本が何やらごそごそとやりだした。
「遅くなりましたが‥‥その‥‥昇進祝いと言う事で」
歩美に『【Steishia】ハートキーネックレス』を差し出す。
「まあ、ありがとう! 素敵‥‥」
名目上はあくまで『大尉昇進』の御祝いとしてだが、米本の本心は‥‥?
歩美はネックレスを受け取り、さっそく付けてみる。
「どうです? 似合います?」
「はい、とてもお似合いですよぉ」
米本が答えると‥‥
頬に、柔らかい感触。一瞬、何が起こったか解らなかった。
酔っている上にプレゼントまでされて上機嫌になった歩美が米本の頬にキスをしたのだ。
「うふふ、お礼です」
「ななななな!!?」
柄にも無く顔を真っ赤にして米本は慌てふためく。
(「羨ましいなぁ‥‥」)
指を咥えてその様子を見ているティリアであった。
一方で、リョウと美咲は二人だけの空間を構築していた。
「桜は流石に散ってしまっているけど、葉桜というのも悪くはないかな‥‥。何より、美咲と一緒に眺められるなら、どんな満開の桜よりも素敵な時間だからね」
「そんな‥‥リョウくんったら‥‥」
美咲は頬染めて照れた様子。
‥‥そんな彼女が可愛い。愛しくてたまらない。
「大好きだ‥‥美咲。一緒に、こんな時間をずっと続けて居られる平和を、絶対に取り戻そう」
リョウは美咲の瞳を真っ直ぐに見つめる。
「うん、私、がんばる」
うなずく美咲。
「でも、無茶は駄目だぜ」
優しく彼女の身体を抱き締めて、口付けするリョウ。
美咲は目を瞑り、彼に身を預けた‥‥。
「‥‥」
木漏れ日の下、セージがシートを敷いて横になっている。
(「あの頃の新人が今はもう一人前か、時の経つのは早いな。俺はこいつらに負けないよう成長出来ているだろうか‥‥」)
彼女達と初めて出会った冬の日を思い浮かべ、感慨に更ける。
よくここまで成長したものだ‥‥。自分も、もっと‥‥。
その隣では――
「ふにゅ‥‥ご、ごめんなさいですの‥‥」
疲れて眠くなってしまった繭華を瑞葉が膝枕していた。
「構いませんよ」
穏やかな笑みを浮かべる瑞葉。
「ずーるーいー!」
という双葉の声を無視し、瑞葉は繭華の髪を優しく撫でる‥‥。
●戦地へ赴く者達へ
夕暮れになるまで宴会を楽しんだ一同。
片付けを終え、傭兵達が帰り支度を整えた頃――。
「これ、あげるね。誕生日プレゼント」
美咲がミズキに何かを握らせる。
ミズキが掌を開いてみてみると‥‥可愛らしいピンクのヘアピンがあった。
「時間がないから、こんなものしか用意できなかったけど‥‥」
「ありがとう、嬉しいよ、みさきち!」
「わわっ!?」
ミズキは美咲に思い切り抱きついた。
「他の皆さんには、私からこれを」
ミズキ以外の傭兵達には歩美から『羽根の栞』がプレゼントされた。
「大したものではないけれど、お守り代わりに」
傭兵達はそれぞれ受け取り、礼を言う。
「あぁそうそう、こうして会ったんだし、最後にエール交換とかどうよ?」
香澄が提案。
無論、反対する者はなく、傭兵と乙女中隊でエールの交換をする事に。
「フレー! フレー! 乙女中隊! 頑張れ頑張れ乙女中隊! おー!」
「フレー! フレー! 傭兵さん達! 頑張れ頑張れ傭兵さん達! バグアなんか追い出せー! おー!!」
声を張り上げる一同。基地の兵士達が何事かと振り返る。
その様子を上官二人は温かく見守っていた。
「次は満開な桜で宴会する為に、お互い気合張って行こうか!」
ぐっと拳を握る香澄。
「さぁて、ちょいと団体旅行にきますか♪」
黒の小隊制服を身に纏い、表情を引き締めるヴァレス。
「来年こそは満開の桜の下で皆一緒にお花見したいです。その時の為に頑張りましょうっ! 絶対に無事に帰ってきます。次の目標は皆で海に行く事ですよっ」
リリィはちずるときつく握手。
「頑張ってきます。信頼できる仲間と、この二つのお守りがあるから‥‥きっと、大丈夫」
美しい曲刀・シルフィードを撫でるティリア。
そのまま傭兵と乙女中隊、上官二人は一緒に記念撮影。
そして――戦地へ向かう傭兵達の背中を、乙女達は見送るのだった。