●リプレイ本文
●急行
敵部隊と交戦中のアイリス隊の救援に向かう傭兵部隊、8機のKV――。
「くっ‥‥また性懲りも無く‥‥」
ディアブロ改『ゼロ』のコクピットでノエル・アレノア(
ga0237)は歯噛みした。
情報によるとアイリス隊と交戦しているのは前回現れた本星型HWやタロスを含む部隊らしい。
――ノエルは前回、本星型HWによって撃墜されていた。
「敵の数はかなり多いようですね‥‥」
続いて口を開いたのは夕凪 春花(
ga3152)。
機体は自身のイラストがペイントされたシュテルン。いわゆる痛KVだ。
(「‥‥さて、今度は一太刀でも浴びせられるといいわね‥‥」)
紅 アリカ(
ga8708)は前回苦戦を強いられた水色のタロスを思い浮かべた。
彼女の搭乗機はシュテルン『ブラックバード』である。
「アイリス隊の危機ともなれば、同じシラヌイドライバーとして放っておく訳にはいかないしな〜。ここは良い所を見せてやらないと」
言ったのはシラヌイ『アルタイル』を駆る、琥珀色の瞳をした美少年、Anbar(
ga9009)。
「同じアイリスの名前をもつ部隊‥‥どんな人たちなんだろうか?」
Anbar機の横を飛行するシラヌイS型『昇陽』。
パイロットの名は神撫(
gb0167)。彼は『アイリス』と言う小隊に所属している。
‥‥同じ名ゆえ、思うところがあるようだ。
「汎用型のシラヌイだ。知覚系武装を積んでおいたが、なんとかなるかな?」
ランディ・ランドルフ(
gb2675)は慣れぬ装備に若干の不安を抱いていた。
ちなみに彼の機体もシラヌイ。
「3度目は‥‥ない!!」
ミカガミB型『剣虎』に搭乗する堺・清四郎(
gb3564)は声を上げ、気合を入れた。
「シラヌイドライバーですか‥‥。傷のことを差し引いても、この機体で負けるわけにはいきませんね」
風雪 時雨(
gb3678)は今回、負傷を押しての出撃である。
搭乗機は翔幻改。機体に強い思い入れがあるのだろうか。
「待っていろ! シラヌイドライバー‥‥!」
そして清四郎が言い、8機のKVは速度を上げた――。
●戦闘開始
戦闘空域に到着した傭兵部隊。
連続して爆音が木霊し、アイリス隊と敵部隊が激しい戦闘を繰り広げているのが判る。
「こちらはゼロ‥‥ノエル・アレノア機です。覚えていらっしゃいますか? 本星型は惹き付けてみます‥‥どうか、それまで持ちこたえて下さい」
「【Gypsophila】よりアイリス小隊隊長機へ、本星型とタロスは俺たちが抑える。HW1編隊の相手を頼む」
ノエルと神撫がアイリス隊へ通信を送る。
【Gypsophila】というのは神撫のTACネームだ。
数秒置いてミラージュ中尉から「了解。救援を感謝する」との返答。
‥‥アイリス隊は少なからず損傷していたものの、全機健在であった。
傭兵部隊は全機増速。接敵に備える。
(「黒の本星型‥‥奴だな‥‥。奴には二度も顔に泥を塗られた‥‥ミカガミファイターであるこの俺の顔に‥‥。必ず、奴を地面に叩きつける!! 剣虎‥‥今一度俺に力を!」)
清四郎機は一直線に本星型HWを目指す。
「あの黒い本星型‥‥っ」
ノエル機は清四郎機に追随。
アリカ機、春花、ランディ機はタロス編隊へ。
神撫、Anbar、時雨機はHW1編隊へ向かう。
「北伐作戦でタロスの情報収集やったものとしては、その厄介さは一番知っているから何とかしないとな」
タロスを視認すると、ランディはタロスが戦場に出現して間もない頃の情報収集作戦を思い出した。
「‥‥ランドルフさん、前に出すぎよ」
「突出は危険です」
アリカ機と春花機から通信。
足の速いランディ機は必然的に先行する形となっていた。
意識して僚機と足並みを揃えなければこのようになる。
ランディが「了解」と答えようとしたとき――
警告音。タロス3機がランディ機を狙ってプロトン砲を放ったのだ。
「やばい! AEC起動! 対衝撃防御!」
ランディは咄嗟の判断で試作型AECを使用。
直撃するも、超伝導コーティングに阻まれ光の粒子は四散する。
損害は軽微。初撃は耐えた。しかし――尚も飛んでくるプロトン砲。
超伝導アクチュエータを起動し、回避行動を取るが狙いは正確で‥‥避け切れない!
「うわああああっ!?」
機体が激しく揺れる。ランディ機は何発ものプロトン砲を受け、致命的なダメージを受けてしまった‥‥。
シラヌイS型と通常型のシラヌイでエレメントを組む神撫機とAnbar機。
移動力に劣る時雨機は2機の後方に位置している。
HW4機からプロトン砲の砲撃!
「「当たらない!!」」
アクチュエータを起動し、神撫機とAnbar機は余裕を持って避けて見せた。
「貴様との腐れ縁も今回で終わらせてやる‥‥!」
オープン回線で叫ぶ清四郎。
「この間のミカガミか‥‥よほど執念深いと見える」
若い男の声。本星型HWのパイロット、ルフト・シュピーゲルングだ。
ルフト機は清四郎機に狙いを定め、プロトン砲を連射。
「‥‥っ! 当たりはしない‥‥!!」
全力で機体を制御し、プロトン砲を全て避ける清四郎。
「‥‥ふ、ふはは。やるな。それでは――全力で相手をしてやる!」
「動きが変わった!?」
言ったのはノエル。
本星型HWの機動性が明らかに向上したように見えた。
すごく、速い――。
●死闘
「ランディさん、ランディさん! ご無事ですか?!」
心配そうな声。春花機からの通信だ。
「‥‥な、なんとか」
ランディは苦しそうな声で返答する。
プロトン砲の高熱により、ダメージはコクピット内にも及んでいる。
機体の状態は酷いものだった‥‥。飛んでいるのが不思議なくらいだ‥‥。
「はあ、はあ。このまま、何もしないで‥‥落とされるわけには‥‥。改造費が‥‥なかったから‥‥無改造だが、火力は‥‥どうだろうかな‥‥?」
ランディは霞む視界の中、タロス1機をロックオンし、アハト・アハトで射撃。
命中。装甲を焼くが‥‥あっという間に再生されてしまった。
「‥‥ランドルフさん!」
アリカ機がランディ機のカバーに入ろうとする。
しかしそこへプロトン砲の火線が飛び、水色のタロス――シュネー・シュトゥルムの機体が割り込んできた。
「‥‥!? ‥‥シュネーさん、と言ったかしら。私は紅 アリカ。覚えておいてもらえると嬉しいわね‥‥」
アリカは憎らしげにシュネー機を見つめ、トリガーに指をかける。
「紅 アリカ‥‥覚えました。でも、お兄様の妨げになるものは許しません」
プロトン砲が飛んでくる。しかしアリカ機には命中せず。
わざと外したのか‥‥? そんな余裕は‥‥!
アリカ機はシュネー機に向け、スラスターライフルとツングースカで射撃。弾幕を展開。
だがシュネー機は易々と砲弾を避け続ける。
(「‥‥馬鹿な! 能力強化を使っているの‥‥?」)
前回とは明らかに動きが違っていた。
「敵の布陣と動き‥‥指揮官はこのタロスですかっ」
シュネー機を警戒しつつも、まずは無人機を減らすべく、春花機は距離を詰めてレーザーカノンによるドッグファイトに移行する。
レーザーの雨を受けたタロス1機は中程度のダメージ。しかし損傷はみるみるうちに再生してゆく‥‥。
「たった2機で本星型に挑むのは無茶かもしれん‥‥。だがそんな道理、俺の無理でぶち壊す!!」
清四郎機は急上昇から急降下しつつ、すれ違いざまにアハト・アハトでルフト機に射撃。
「例え一矢でも‥‥!」
一陣のレーザーがルフト機の装甲に突き刺さる! それは少ないながらも確実にダメージを与えた。
(「前回は完全に大敗だったけど‥‥でもそれを乗り越えてこそ、僕はまだ戦える」)
攻撃後、離脱する清四郎機へノエル機がカバーに入る。パニッシュメント・フォースを使用。
「貴方の言うように、確かに未熟かもしれない‥‥でも僕は決して一人じゃない。仲間と共に、未熟なりに成長する。そういう頑張り方だってあるんだ!」
AAM3発を発射。ミサイルが白煙の尾を引き、ルフト機へと襲い掛かる。
ルフト機は2発を回避し、残り1発は命中するもファランクスの迎撃によりダメージを大幅に軽減された。
(「ほう‥‥」)
2機の連携に、意外そうな表情を浮かべるルフト――。
神撫機、HW4機をロックオン。
「まずは数を減らす。この一撃でどこまで削れるか‥‥K−02、いけぇ!」
アクチュエータを使用。ミサイルレリーズを押し込み、K−02ミサイルを全弾発射。
「木を隠すには森の中。弾を隠すには弾の中‥‥ってね!」
ついでにピアッシングキャノンで射撃。
――無数のミサイル群が津波となってHW1編隊を飲み込む。
HW4機はFFを前面に集中展開。ファランクスの迎撃も加わり‥‥ほぼ無効化されてしまった。
「そう簡単にはいかないか‥‥」
ちなみにピアッシングキャノンの砲弾は有人機と見られるHWに命中。小程度のダメージ。
「ミサイル対策は万全ってわけか‥‥! でもこれはどうだ!」
Anbar機、放電装置で無人機らしいHWに連続攻撃。大ダメージを与える。
「早く2人に追いつかなければ‥‥」
時雨機は2機と距離が空いてしまっていたので追いつくべくブーストを使用。
「ぐうっ!」
負傷中の身には堪える‥‥。
タロス1機がランディ機に向けてプロトン砲を発射。
それは狙い違わず標的を貫く。
「父さん‥‥母さん‥‥僕の――」
爆散。ランディ機、撃墜。
「ランディさぁぁぁんっ!!」
「‥‥ランドルフさん‥‥くっ」
悲痛な声を上げるアリカと春花‥‥。
ランディ機を撃墜したタロスを含む無人機3機。今度は春花機を狙ってプロトン砲を連射してきた。
「きゃあああっ!?」
機体のあちこちの装甲が高熱によって融解。春花機、致命的な損傷。
「‥‥すみません、離脱しますっ」
ダメージが危険域に達した春花機は黒煙を吹き上げつつ戦域から撤退してゆく。
「仲間を失い、それでも抵抗しますか、アリカ」
シュネー機、アリカ機を捉え、プロトン砲を連続で放つ。
「‥‥! 避け切れない!」
プロトン砲を受け、翼がいくつか消失してしまった。中程度のダメージ。
無人機とは比べ物にならない出力だ‥‥!
HW4機、攻撃のために前に出てきた時雨機に向けてプロトン砲の集中砲火を浴びせる。
「ぐあああああっ!?」
致命的なダメージ。‥‥時雨機は装備の関係上、距離を詰めるしかなかったのだ‥‥。
「やるようになったな! ミカガミのパイロット! そしてディアブロのパイロット!」
ルフト機は清四郎機を射線上に捉える。
「‥‥だが、まだだ! まだ物足りん!」
プロトン砲を連射。清四郎機は避けられず、全て貰ってしまう。致命的なダメージ。
「く、そっ‥‥!」
●敗北
「‥‥このままでは‥‥」
アリカ機は懸命に攻撃を行うが、やはり多勢に無勢。
アハト・アハトに切り替えてシュネー機を撃つも即座に再生されてしまう。
タロス4機の集中攻撃に晒され、機体が悲鳴を上げる‥‥。
「‥‥!」
時雨機、HW1機とドッグファイト。
後ろに付かれ、なかなか振り切れない。
太陽を利用しハンマーヘッドターンからの反撃に移る!
‥‥だがHWに搭載されているのは重力センサーであり、太陽の光などは無意味だった。
HWは慣性制御により急停止。時雨機は再び背後を取られてしまい、プロトン砲を受け‥‥撃墜。
「風雪さんが‥‥!」
「くっそぉぉぉっ!」
神撫が声を上げ、Anbarも悔しげに叫ぶ。
「よくも!」
神撫機、有人HWの後ろに付きピアッシングキャノンで牽制しつつ、スラスターライフルを撃ち込む。
「落ちろぉぉぉっ!!」
Anbar機、スラスターライフルで射撃。無人HW1機を蜂の巣にし、撃墜。
清四郎機とノエル機は連携してルフト機にダメージを与えていく。
しかし本星型HWの耐久力は高く、決定打には至らない。
「そろそろ幕だ。落ちろ」
ルフト機、清四郎機に向けてプロトン砲を発射。
命中。
「なっ――」
清四郎は目を見開く。
瞳に映るのは禍々しい漆黒の本星型HW。
――これで終わりだと思うな――。
清四郎の唇がそう動いたような気がした。
次の瞬間、清四郎機は大爆発を起こす。
「清四郎さん!!」
ノエルが叫ぶ。
「次はお前だ!!」
「くっ!」
ルフトは次にノエル機を捉え、プロトン砲を連射。全弾命中。致命的な損傷を受ける。
「ふん、まだ落ちないか」
「僕は‥‥絶対に諦めない。今まで共に生き抜いてきた愛機を信じて、往くのみ‥‥」
損傷した、警告音の鳴り響くコクピット内。破片を受け、額から血を流しながらノエルは言った。
「ふっ‥‥」
それを聞き、ルフトは口元に笑みを浮かべる。
専用回線を開き、シュネーにこう伝えた。
「撤退だ」
すると――交戦中だった敵機全てが反転し、撤退してゆく‥‥。
後方に待機していた爆撃型HWも同様に撤退。
「皆、生きてる?」
HW編隊1つを撃破したアイリス隊が、数の減った傭兵部隊に合流。
ミラージュが通信を送るも、返答は無かった‥‥。
基地へ帰投した傭兵部隊とアイリス隊――
ランディ、時雨、清四郎の3名は機体が爆発する寸前に脱出しており、なんとか無事であった。
今は病院に搬送され、治療を受けている。
「うあああ〜」
春花はペイントが酷いことになった愛機を見て、悲鳴を上げる。
自分のイラストが歪んで悲惨な状態になっていた‥‥。
「ご苦労様」
「あ、これは‥‥イスルギ中尉」
神撫の元へミラージュ中尉がやって来た。
缶コーヒーが差し出される。
「すみません、自分達が不甲斐ないばかりに‥‥」
コーヒーを受け取り、神撫はしょんぼりした様子で言った。
結果的に基地は守られたが‥‥何故あのタイミングで敵が撤退したのか解らない。
「それはこちらも同じ。あなた達が来てくれなければどうなっていたか‥‥」
「中尉‥‥」
「だから気にしないで。奴にはまた今度、礼をしてやりましょう」
ミラージュ中尉は表情を引き締める。
美しい金髪が夕陽に照らされて、輝いて見えた。
「了解です。‥‥そういえば、俺の部隊も『アイリス』って名前なんですよ。陸戦専門ですけどね。同じ部隊名で同じシラヌイドライバー。これからもよろしくお願いします」
「ええ、よろしく」
ミラージュ中尉は微笑み、二人は握手を交わした。
「‥‥」
ノエルは基地の敷地内の芝生に腰を下ろし、膝を抱えて夕陽を眺めていた。
頭に浮かぶのは神撫と同じ疑問。
――何故あのタイミングで敵が撤退したのか――。
‥‥やはり、情けだろうか‥‥。
「くそ‥‥っ!」
ノエルは奥歯を噛み締める。悔しくて、悔しくて堪らない。
(「何度倒されても、何度コケにされても、何度でも立ち向かってやる‥‥っ!」)
心の中で誓う。ノエルの黄金の瞳には確固たる意志が宿っている‥‥。
ふと、風がノエルの前髪を吹き上げ、おでこに貼られた絆創膏がちらりと見えた――。