タイトル:幻想の光2マスター:とりる

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/12/31 11:50

●オープニング本文


 光のページェント――
 それは毎年12月1日から大晦日までの間、約百本にも及ぶ街路樹に電球を設置し、
 冬の殺風景な並木達を満天の星空の様な輝きに変身させるという素晴らしい催し物である。
 街は当然の如く、そのロマンチックなイルミネーションを見物に集まるカップル達で溢れていた。

「うわー、すっごく綺麗だねー」
「そうだね。今年は電球の数を増やしたみたいだよ」
「へえー、そうなんだー。ホントに綺麗‥‥」
「うん。でも‥‥やっぱり君の美しさには敵わないな」
「もう、お世辞ばっかりっ」
「お世辞なんかじゃないって」
 幻想的な輝きを眺めながら、キャッキャウフフしている一組のカップル。
 だがしかし――そこへ、場違いな異形の者が現れた。
「グルルルルル‥‥」
 低い、唸り声。カップルは驚いて振り向く。背後に立っていたのは‥‥毛むくじゃらの狼男!
 仮装などではない。正真正銘の化け物だ。
「きゃーーーーーっ!?」
 悲鳴を上げて尻餅をつく彼女。それを咄嗟に庇う彼氏。
「また、現れたのか‥‥」
 彼氏の額に冷や汗が伝う。‥‥そう、コイツは去年も現れ、大暴れしたキメラだった。
 傭兵の働きにより撃退されたのだが――再び現れてしまった。
「‥‥‥‥ガルルルルルルルルルルルルァァァァァ!!!!」
 狼男はカップルを睨み、天地を揺るがす雄叫びを上げる。
 ――その瞳には、涙が浮かんでいた。感じられるのは殺気というよりも――嫉妬心??
 心の底から「リア充しね! 爆滅しろ!」とでも言いたげな様子だったのである。
「うわぁぁぁ!!? やめろぉーーー!! 助けてぇーーー!!」
 そうして狼男は今年も、彼氏を掻っ攫い、闇に消えていった。
「たーかーゆーきーくぅーん!!」
 彼女の悲痛な声が、空しく響く‥‥。
 ――例によって彼氏は数時間後、素っ裸になって路上で震えているのを発見されたという。
 その頭は何故か、アフロヘアーになっていた。


「今年もまた“奴”が現れました」
 集まった傭兵達を前にクラヴィーア・櫻野(gz0209)が真剣な顔つきで言う。
 狼男のような姿をしたキメラが出現し、カップルを襲っているので退治して欲しい、と。
「気持ちはわからないでもないですが‥‥いえ、なんでもありません。兎に角、よろしくお願いします」
 ぺこりと頭を下げるクラヴィーア(24歳・彼氏なし)だった。

●参加者一覧

藤枝 真一(ga0779
21歳・♂・ER
新条 拓那(ga1294
27歳・♂・PN
紅 アリカ(ga8708
24歳・♀・AA
ジェイ・ガーランド(ga9899
24歳・♂・JG
天道 桃華(gb0097
14歳・♀・FT
ウラキ(gb4922
25歳・♂・JG
リティシア(gb8630
16歳・♀・HD
エリノア・ライスター(gb8926
15歳・♀・DG
夕景 憧(gc0113
15歳・♂・PN
有栖 真宵(gc0162
17歳・♀・SF

●リプレイ本文

●デートその1
 イルミネーションで彩られた街中――
「‥‥」
 一人しょんぼりしているのは新条 拓那(ga1294)。
 去年も同様の狼男退治の依頼を受けていた彼であったが、今年は恋人の都合がつかず、ソロでの参加である。
「‥‥」
 ゆえに、しんみりモード。カップルだらけの中で一人というのは余計に凹む‥‥。
 普段は感じることの無い虚無感に苛まれる拓那。そこへ――
「お待たせしました」
 ゴスロリ服を身に纏った美少女がやってきた。
 ややつり目、赤い瞳‥‥と、若干きつい印象を受けるが口調は柔らかい。
 彼女の名は有栖 真宵(gc0162)。メガネっ娘である。
「やあ。来てくれて助かったよ。この雰囲気で一人だと‥‥ね」
「‥‥お察しします」
 同時に苦笑。
 今回この二人は狼男を誘き寄せる為の偽装カップルとして行動する。
「じゃあ行こうか」
 拓那と真宵はまず近くのレストランで食事をとる事に。

 窓際の席に向かい合って座る二人。今は食後のデザートを待っている。
 しかし、真宵はどことなく落ち着かない様子。
 見かねた拓那が口を開く。
「はは。まぁ、お互い予行演習ってことで気楽にね。お仕事も大事だけど、とりあえずこの華やかさ、楽しまなきゃ勿体無いよ♪」
「そ、そうですね。ありがとうございます」
 微笑む真宵。‥‥二人は恋人というより兄妹の様である。
 まもなく、デザートが運ばれてきた。拓那はチョコサンデー、真宵はイチゴサンデーだ。
「せっかくですから半分ずつ交換しませんか? あ、こういう時は『あーん♪』とかやった方がいいんでしょうか?」
 急に積極的になる真宵に、拓那はコーヒーを噴出しそうになった。

 その後二人は公園へ乗り出し、出店で遊んだり、イルミネーションを眺めたり。
 腕を組んで歩いていたのだが‥‥拓那はどうしてもドキドキしてしまったそうな。
 まあ、真宵くらいの美少女が相手となれば致し方あるまい。


「‥‥こんな物の何がいいのか、やっぱり俺には解らんな。大体、どれだけの電気が消費されて、無駄に温室効果ガスが排出されるのか」
 仏頂面でぶつぶつ呟いている藤枝 真一(ga0779)。
 彼は去年も同じ様な事を言っていた気がする‥‥。
「もー! 相変わらずシンちゃん雰囲気台無しー!」
 その横で天道 桃華(gb0097)が抗議の声を上げる。
「‥‥俺にとっては瑣末な物さ。だって愛しい桃華の眩さが、すぐ側にあるのだから‥‥」
 真一はしゃがんで桃華の顔を見つめる。真剣な眼差しに彼女は――
(「え? え?」)
 彼の顔が近づく‥‥。
(「ちゅ、ちゅーする気なの? しかもいきなり唇? ど、どうしよう‥‥」)
 あわわとなるが鼓動は高鳴り、期待膨らむ。
 だがしかし、乙女の純情は無残にも打ち砕かれる。
「うぇぷしっ!!」
 盛大なくしゃみを放つ真一。
「あー、今夜は一段と冷えるな」
 ずびずびと鼻をすする。
 勿論近くにあった桃華の顔は被害甚大で、鼻水やら何やらでべたべたである。
「‥‥すまん」
 謝る真一だったが、桃華はぷるぷると震えるばかり。そして――
「うわーん! ひどいよー! こんなのってないよー!!」
 わんわん泣き出してしまった。今度は真一があわわとなる。
 期待が大きかった反動か中々泣き止まない桃華。
 真一はその顔をハンカチで拭いてやり、只管謝る事しか出来なかった‥‥。

 周りの目から逃げる様に場所を移した二人――。
 真一はベンチに座り、機嫌直しに桃華を膝の上に乗せる。
「うう、ひっく‥‥」
「だから悪かったって。もう泣き止んでくれ」
 彼女の頭を優しく撫ででやる。
「‥‥寒い」
「え?」
「だから寒いの! シンちゃんのコートで包んで下さい! じゃないとまた泣きます!」
 桃華からのお願いに真一はコートの前を開き、彼女を包んであげた。
「‥‥どうだ?」
 恐る恐る尋ねる。
「温かい。シンちゃん、温かいよ」
「‥‥そうか」
 お互いの温もりを感じ、幸せな一時が過ぎる‥‥。
 桃華の機嫌もいつの間にか治った様だ。
「ねぇ、シンちゃぁん、シンちゃんのお顔が見たいでぇす」
 甘えた声を出し、振り向こうとする桃華であったが――
「動くな!」
 緊迫感に満ちた声を上げる真一。
「ど、どうしたの??」
「その‥‥俺の一部がのっぴきならない状況に!」
 どうやら桃華と密着していた為に彼の一部が反応してしまったらしい。
 男性の生理現象というのは時として残酷だ‥‥。
「‥‥やっぱりシンちゃん最低ーーー!!」
 桃華のピコハンが唸る。

●デートその2
「‥‥この時期の街は本当に綺麗よね。期間が短いのが残念だわ‥‥」
「逆に、短いからこそ良いのかもしれないな。‥‥ホワイトクリスマスとなればもっとムードも出るだろうが、今年はどうだろう」
 幻想的な輝きを眺めつつ、腕を組む若い夫婦の姿がある。
 紅 アリカ(ga8708)とジェイ・ガーランド(ga9899)だ。
 仲睦まじい二人は屋台で粉物などを買い、つまみながらゆっくりと公園を散策する。
「そう言えば、最近は電飾の類で家の庭とか壁や玄関先なんかを飾る家が増えているんだよな。サンタの人形が付いたのとか、ホームセンターにも売っているし。‥‥うちでもやってみようか?」
「‥‥それはいいわね。是非やりましょう、ジェイさん」
 ジェイの提案に微笑み、頷くアリカ。
「それでは張り切るか。来年は賑やかなクリスマスになりそうだな」
「‥‥うふふ」
 アリカは彼の肩に頭を預け、ジェイは彼女の肩を抱く。
「‥‥ジェイさん‥‥」
「アリカ‥‥」
 寄り添い合って歩んでいく二人。もしかしたら来年は家族が増えているかもしれない。


「ほらほら、憧君、次はあっち〜! うわぁ〜、このお洋服可愛い〜!」
「あうあう〜‥‥」
 夕景 憧(gc0113)の腕をがしっと掴み、街を練り歩くリティシア(gb8630)。
 きゃっきゃとはしゃぎ、ショッピングを楽しんでいる。
 しかし憧の方はたまったものではない。
 あちらこちら買い物に引きずり回され、荷物を持たされ、食事を奢らされ‥‥etc.
 綺麗な人だなぁ〜と思ってふらふらと付いて来たのが運の尽き。
 フランス人形のような愛らしい容姿をしたリティシア――その正体はかなり強引な人物だった。
 人を外見で判断してはいけないという例である。
「憧君、刀見えてるよ。ちゃんと隠して!」
「はうっ!? ご、ごめんなさい!」
 リティシアに注意され、慌てて武器を服に隠す。
「もう! 今は任務中なんだからね! ちゃんと意識を持ってね!」
「‥‥」
 ぷんすかと怒るリティシア。憧は(余計な事を言うと何をされるか判らないので)黙っているが‥‥
(「この人こそ、ちゃんと依頼だって自覚はあるんだろうか‥‥」)
 とか心の中で思う。
「あ〜!! クリスマスセールだって! あそこは普段すごく高いから手が出せないんだけど‥‥すぐ行かなきゃ!!」
 リティシアはまた憧の手を引いて‥‥もとい、引きずって行く。
「ちょっちょ〜!」
 彼はこの後も、散々買い物に付き合わされる事になるのだった。


「悪い‥‥待たせた‥‥」
 待ち合わせの時間に少し遅れてやってくるウラキ(gb4922)。
「遅い! 心配したんだからな!」
 ウラキのお相手、エリノア・ライスター(gb8926)はご立腹の様子。
 彼女は「ウラキとカッポーゥ!」と内心では凄く楽しみにしていたので無理はない。
「本当に悪い。寒かっただろうし‥‥これ、飲んで‥‥それから行こうか」
 頬を膨らませるエリノアにウラキはホットコーヒーを手渡す。
「‥‥ふ、ふん。今回は特別だからな」
 プルタブを開け、コーヒーを飲み干すエリノア。
 なんとか許して貰えたらしい。空き缶をゴミ箱に捨て、二人は歩き出す。
 しばらくして――
「‥‥」
 周りを見回すウラキ。自分達以外のカップルは例外なく手を繋いだり、腕を組んだりしているではないか。
(「‥‥手、繋いだ方がらしく見えるか‥‥」)
 手をワキワキさせ、ウラキは思い切ってエリノアの手を握ってみる!
「!?」
「‥‥こちらの方が、温かい」
 驚くエリノアに、ウラキは少しだけ頬を染めて言った。
「そうだな。任務だからな。うん、任務なら仕方ねぇ!」
 エリノアはそう念を押し、手を握り返してきた。
 ‥‥二人はゆっくりと街中から公園まで歩いて行く。
(「任務♪ 任務♪」)
 エリノアは手を握るだけでは物足りず、ウラキの腕にぎゅっと抱きついている。
「この時期は‥‥街の雰囲気が変わる、ね。クリスマスは‥‥こういうものなのか」
 ふと、ウラキが言う。
「確かにまぁ、そこそこ綺麗なページェントだけど‥‥。私の故郷にゃクリスマスマーケットっつーのがあってさ。街いっぱい‥‥いや、国中が電飾で飾られるんだ。もっとスゲェんだぜ!」
 故郷を想い、少しだけ寂しそうな表情を浮かべるエリノア。
「いつか見てみたいな‥‥エリノアさんの故郷」
 ウラキは優しく微笑む。

「小腹が減ったな。ヴルストでも食おうぜ」
 公園に到着すると、エリノアは真っ先に屋台へ向かい、カリーヴルストを買って来た。
「一本だけかい?」
「勿論、分けて食うんだよ。こうやってな」
 片側を咥え、ウラキにも同じ事をやる様に促す。
 赤面しながら両端から食べてゆく二人。‥‥残念ながら途中で折れてしまったが。

「‥‥そうだ、忘れてた。これやるよ」
 鞄からオルゴールを取り出し、ウラキに差し出す。
「少し気が早いが、私からのクリスマスプレゼントだ」
 にっこり笑うエリノア。
「これを‥‥僕に? いいのかい?」
「だからやるって言ってるだろ」
「ありがとう‥‥。でも参ったな、僕も何か用意してくるべきだった」
 頭をぽりぽりとかくウラキ。
「いいっていいって。気にすんな。‥‥それよりウラキ、頭にゴミがついてるぞ。ちょっと屈んでみ?」
「ん? こうかい?」
 ウラキはエリノアの顔の位置まで姿勢を下げる。すると――
 ちゅっ! ‥‥エリノアが、ウラキの唇を奪った。
「‥‥ぁ‥‥ぅ‥‥。す、隙だらけだぞ、ウラキ上等兵ッ!」
 耳まで真っ赤になっているエリノア。
「‥‥」
 ウラキは暫く、硬直したままだったそうな。

●VSロンリーウルフ
 ウラキの硬直が解けた頃、そいつは現れた――
「グルルル‥‥」
 毛むくじゃらの狼男――ロンリーウルフ!
「くっ‥‥ここに来たのか‥‥」
 どうやら街一番のラブラブカップルと認定されたようだ。
 先程の『不意打ちキッス☆』が効いたのだろうか。
 ウラキは銃を抜く。しかし、所持していたのは彼のオリジナル武器であり、簡単に説明するならば‥‥珈琲豆鉄砲? 攻撃力が低く、当てにならない。つまりはピンチ!
「グラアアア!!」
 ロンリーウルフが雄叫びを上げて襲い掛かってくる。
「武器間違えた‥‥。くそ‥‥タカユキの二の舞になってたまるか‥‥って、うわぁぁぁ!? 助けてぇぇぇ!!」
 ウラキはロンリーウルフの肩に担がれ、掻っ攫われてしまった。
「待てこの野郎ー! ウラキを返せー!」
 エリノアは追跡しつつ、無線で仲間に連絡する‥‥。

 他の皆がエリノアに合流すると、どうやらLウルフを見失ってしまった様子。
「私としたことが‥‥ウラキ! ウラキー!!」
 彼女は愛しい彼の名を叫ぶ。他のメンバーも捜索を開始。
 しばらくして‥‥
「ウラキ君を発見しました!」
 ジェイが声を上げた。皆が駆けつけると‥‥そこには‥‥
 素っ裸に剥かれ、路上にうつ伏せで倒れている、変わり果てたウラキの姿があった‥‥
 頭は何故かアフロヘアーになっている‥‥。
「‥‥なんて‥‥ひどい‥‥」
 アリカが口元を押さえ、よろめく。それを支えてやるジェイ。
「ウラキ! 目を開けてくれよウラキ! ちくしょう、何だってこんな事を!」
 彼の身体を抱き、号泣するエリノア。
 そのとき――暗闇からゆらりとLウルフが出現。拓那を攫おうとする。
「わっ!? やられることは去年と同じなのかよー!?」
 悲鳴を上げる拓那。だが――
「拓那さんを離して下さい!」
 真宵を初めとした一同が助けに入り、Lウルフをボコボコにする。
「キャウンキャウン!」
 か弱い声を上げて拓那を落とすLウルフ。
「またこんな事やってるなんて‥‥二年連続で一人なのね。流石にちょっと可哀想」
 それを見て、桃華が口を開いた。
「もう暴れないの、ね。あたしがコレあげるから」
 うずくまっているLウルフに特製ケーキを差し出す。
 ‥‥Lウルフはクンクンと匂いを嗅いだ後、ぱくりと口にした。
 すると――
「!!!?」
 声にならない声を上げ、悶絶するLウルフ。もんどりうって倒れた後、びくんびくんと痙攣する。
 ケーキは確かに桃華の愛情たっぷりなのだが‥‥分量などが超テキトーだったのだ‥‥。
「グルァァァ!! ガルァァァ!!!!」
 あまりの不味さに怒り狂い、今度は憧を攫おうとするLウルフ。
「助けて〜!」
 だがやはり――
「むっかぁ! 憧君は渡さない!」
 リティシアを始めとした皆に再度ボコボコにされ、阻止された。
「キャインキャイン!」
 頼りない声を上げ、Lウルフは今年もまた逃げ出して山へ帰って行く。
 あまりの速さに唖然とする一同。追撃する暇も無かった。
「行っちゃったね‥‥あ、ケーキはシンちゃんの分もあるからねー♪ こっちはチョコケーキよ♪」
 ――全力ダッシュで逃げる真一。
(「あんなモンを食わされてたまるか!」)

 その後、皆はデートを再開した。

●煌きの下で
 桃華と真一はラーメン屋で食事する事に。
「もう! なんで逃げるのよ。はい、ケーキ♪」
「いや、それは断固遠慮しておく。‥‥それより、受け取ってほしい物がある」
「なぁに?」
 きょとんとする桃華に、綺麗にラッピングされた包みを渡す真一。
 嬉しそうに包みを開ける桃華だったが‥‥その中身は‥‥
 純白のスパッツだった。
「‥‥いつかはウエディングスパッツを贈りたい所だが」
 あごに手を当て、なにやら満足そうな真一。
「‥‥」
 桃華は唖然としている。
「どうした? お前に似合うと思ったんだが」
「はぁ〜〜〜‥‥ありがと、シンちゃん」
 桃華は呆れつつも、お礼を言うのだった。
(「まあ、シンちゃんらしいかな」)


 なんとか復活したウラキと、エリノアは屋台のおでん屋に来ていた。
「初めて食べるよ‥‥悪くないね、こういうのも」
 大根を箸で割って口に運ぶウラキ。
「だろ? 私は洒落た店より屋台のほうが好きだ」
 ホクホクと煮卵を頬張るエリノア。
「そういえば‥‥怪我とか、無い‥‥か?」
 ウラキは心配そうな顔をする。
「全然。ウラキこそ大丈夫か?」
「‥‥あはは、僕はまあ‥‥」
 ただ苦笑するしかない。
「くしゅん!」
「寒いのか? さっきまで裸だったもんなあ」
 くしゃみをしたウラキを気にかけ、肩を寄せるエリノア。
「はは、ありがとう、エリノアさん」
「ふふふ」
 ‥‥こうやって過ごす時間が、貴重に思えた。
 二人の夜がゆっくりと更けていく。

 ちなみにウラキは、アフロヘアーのままだった。