タイトル:乙女分隊・南国マスター:とりる

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 9 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/07/31 11:37

●オープニング本文


 九州某基地――
「南の島‥‥でありますか?」
「そうだ」
 執務室で早乙女・美咲(gz0215)とその上司、高ノ宮・茜少佐が話をしていた。
「諸君らには東南アジアの無人島でキメラの駆除を行ってもらう」
「はあ‥‥」
 ぽかんとした様子の美咲。
「どうした。不満か」
「はい。いいえ、そのようなことはありません!」
「早乙女兵長。諸君ら‥‥α−01部隊は虫型キメラとの戦闘経験しかなかったな」
「はい」
 美咲は頷く。
「これは虫型以外のキメラへの対処法を身につける実戦訓練だ。特殊任務部隊である諸君らには柔軟な対応力が求められる。虫型キメラばかり相手にしていては今後、任務に支障が出るやもしれん」
 高ノ宮少佐は言った。
「‥‥」
 なるほど、と思う美咲。
「というわけだ。今回の任務の趣旨は理解できたか?」
「はっ!」
「よろしい。強敵と対峙してきた諸君らには容易い任務かもしれんが、今までとは勝手が違うと思え。‥‥それと、万が一のことを考え、傭兵を手配しておく。それでは出発準備にかかれ」
「了解しました!」
 びしっと敬礼した後、退室する美咲。
「‥‥」
 その背中を高ノ宮少佐は無言で見送る。
「あれ、嘘でしょ」
 高ノ宮少佐の斜め後ろに立ち、会話を聞いていた片瀬・歩美軍曹が口を開いた。
 彼女はα−01部隊‥‥通称乙女分隊の教官である。
「さて、何を言っているのかわからぬな」
 あからさまにとぼけた表情の高ノ宮少佐。
「柔軟な対応力云々、って話よ。まったく、普通にまた休暇を与えればいいじゃない」
「ふむ。‥‥まあ、そうもいかんのだ。軍人である以上、更に戦時下である以上、彼女らだけ特別扱いするわけにはいかぬ」
 高ノ宮少佐は椅子にもたれかかり、ちょっとだけ難しい顔をした。
「そうね‥‥」
 片瀬軍曹も少し寂しそうな表情を浮かべる。茜の気持ちは解っていた。普通に遊ばせてやりたいのは山々だが、こんなご時世である。任務を絡ませなければならないのは仕方がなかった。
「想い出は作れるうちに作っておくものだ」
「ええ」
 そう、青春は待ってはくれないのだ。戦時下だからこそ、余計に。
「また引率を頼んだぞ。比較的弱いキメラとは言え油断は禁物だ」
「了解しました。茜も、あんまり根を詰めないでよ?」
「ふっ、心配されるほど私は落ちぶれてはいない。お前こそ、早く彼氏を作るのだな」
「もうっ!」
 ははは、と笑う高ノ宮少佐であった。

●参加者一覧

百瀬 香澄(ga4089
20歳・♀・PN
勇姫 凛(ga5063
18歳・♂・BM
ヴァレス・デュノフガリオ(ga8280
17歳・♂・PN
最上 憐 (gb0002
10歳・♀・PN
米本 剛(gb0843
29歳・♂・GD
六道 菜々美(gb1551
16歳・♀・HD
蒼河 拓人(gb2873
16歳・♂・JG
リリィ・スノー(gb2996
14歳・♀・JG
ティリア=シルフィード(gb4903
17歳・♀・PN

●リプレイ本文

●南国の島で
 無人島に到着した傭兵達と乙女分隊(+片瀬軍曹)一行。
「白い砂浜‥青い海‥照りつける太陽。やっぱ夏はこうでなきゃな。キメラが陣取ってるってのが珠に傷だけど‥手っ取り早く片付けるとしよう」
 言ったのは金髪美人の百瀬 香澄(ga4089)。そう、まずはキメラ退治だ。一行は早速、3班に分かれて行動を開始。

 A班――
 熱帯雨林が生い茂るジャングル内部を進んで行く。じめじめとしていて、汗で布が肌に張り付き少し不快だ。有栖はそう思った。
「凛も頑張るから早くキメラやっつけて、皆で南の島を楽しもうね」
 にこっと笑うアイドル傭兵の勇姫 凛(ga5063)に、班長を任された美咲が頷く。
「今回は万全ですので‥宜しく御願いしますねぇ」
 恰幅の良いスーツ姿の男性、ヨネモトタケシ(gb0843)が続いた。彼は前回乙女分隊と作戦を共にした際は負傷してしまっていたが、今回は大丈夫。
 六道 菜々美(gb1551)もおどおどしながらお辞儀をする。「菜々美さん、今回もよろしくなのだー」と歴が微笑んだ。

 しばらく進むと――
 ガサガサガサという音と共に、体長10mはあろうかという5匹の大蛇が出現。
 ‥見るからにキメラだ。「キシャー!」と襲い掛かってくる。一同はすぐさま戦闘態勢へ。
 ヨネモトが盾となり、凛、有栖、歴が前に出る。菜々美と美咲は援護を担当。
「南国の平和を守る為、焼き尽くせエクスプロード!」
「我流‥流刃! 続いて‥衝波!」
「今だ‥撃ち抜くッ!」
 全員の連携した攻撃によりキメラはあっけなく倒れる。見た目に反して弱かったようだ。

 B班――
 こちらも班長である冴の指示でジャングル内部を進む。‥鳥や動物の鳴き声がひっきりなしに聞こえる。まさにジャングル、といった感じだ。
「しかし暑いね‥」
 汗を拭いながら地図と方位磁石で現在位置を確認しているのはヴァレス・デュノフガリオ(ga8280)。
「舞浜さん、目の前だけじゃなく周囲も一応警戒してくださいね。私も見逃しとかありますから」
「わかりましたっ、気をつけますっ」
 仲良さそうに並んで歩くリリィ・スノー(gb2996)とちずる。慧子は後方を警戒。
「こんな無人島にまでキメラがいるとはね。何の意味があるのやら」
 香澄が呟いた。確かに、無人島にキメラを配置する意味は薄いように思える。だがバグアなりの考えがあるのだろう。そのとき――
「ガルルル!!」
 5匹の虎が姿を現した。咆哮と共に襲い掛かってくる。これは‥キメラだ。全員覚醒。
 ヴァレスが大鎌を構えて躍り出る。冴と慧子も前へ。
 香澄は槍を携えてフォローに回る。リリィはちずるの護衛に付く。
「はああっ!!」
 虎の首を刈るヴァレス。他の者も一斉に攻撃。‥ほどなくして、キメラは全滅。
 いかにも強そうな外見であったが見かけ倒しだったようだ。

 C班――
 こちらはジャングルの外周を海沿いに探索。
「‥ん。食べ放題の。為に。頑張る。‥あの木の実は。食べられそうかな」
 最上 憐 (gb0002)はきょろきょろと辺りを見回している。
「まっ、浮かれるにはまだ早いけどね。皆、気を引き締めて‥狩りに行くよ」
 真剣に索敵をする蒼河 拓人(gb2873)。きゃっきゃとはしゃぐ三門姉妹を注意する。
(「‥皆さんもう戦闘後のことを考えているような‥? 拓人さんと歩美軍曹は別みたいだけど」)
 皆の様子を見てティリア=シルフィード(gb4903)はそんなことを考えていた。

 砂浜を歩く一行。すると――ハイビスカスの群生を発見。
 拓人がすぐさま無線機でB班に連絡。憐はその場の全員に確認を取り、石を投げつけてみる。‥FFの発生を確認。キメラだ!
 ティリア、憐、早苗が武器を構えて前に出る。
「目の前だけに集中せずに、敵だけでなく味方の動きもしっかり見るんだ!」
 拓人と香苗は援護。
「フェンサーの新しい力‥その身で受けろっ!」
 小太刀でキメラの蔓を斬り飛ばすティリア。そこへ‥
「やあっ!」
「!?」
 横から蔓の攻撃。それを歩美が刀で斬り落とした。
「気をつけなきゃダメよ」
「ありがとうございます」
 そんなこんなでB班を呼ぶまでも無く殲滅完了。正直弱かった。

●海遊び!
 キメラ退治を終え、合流し水着に着替えた一行はいよいよ白い砂浜へと乗り出した。
「夏だ! 海だー!!」
 そんな雄叫びと共に年少組は海に吶喊!
「凛、ちゃんと男なんだからなっ!」
 今回はちゃんとボクサーパンツ水着を履いている。いつぞやは女子用のスクール水着を着ていた気がするけれども突っ込まないでおこう。
 トランクス水着の拓人や、日焼け止めを塗り水分補給も完了した青いセパレートビキニ姿のリリィ、そして美咲、有栖、ちずる、三門姉妹も次々と海へ飛び込んでゆく。
「それそれー!」
「やったな‥凛だって、負けないんだからっ!」
「舞浜さん、いきますよー!」
「うあっ! しょっぱいですっ!」
 きゃっきゃとはしゃぐ少年少女達。
「‥うん、正直たまりません」
 ビキニを着用し素晴らしいスタイルを見せ付けた香澄はその様子を眺めながら、ぐっと親指を立てる。至福の表情だ。隣には「うふふ」と微笑む黒ビキニ姿の冴。

「ていやっ!」
「うわわっ!!?」
 ナマコを手掴みして凛にぶつける拓人。普段は年齢相応に悪戯小僧のようである。驚く凛を見てお腹を抱えて笑った。

「‥ん。海と。空と。白い雲が見える」
「そうだねー」
「‥ん。磯の香りがする」
「美味しそうなのだー」
 ビーチサンダルを履いて麦藁帽を被り可愛いフリルの付いたワンピース水着を着た憐と、スク水姿の歴は砂浜に腰を下ろし、海を眺めている。‥この二人は基本的に食べ物のことしか頭に無いっぽい。

「皆さん‥楽しそう、です」
 菜々美は露出が低めの、紺色のワンピース水着。浮き輪で海にぷかーっと浮かび、漂っていた。
「ふう‥落ち着き、ます」
 水の中にいると心が安らぐ‥。自然な気持ちでいられる気がする‥。

「ほらほら二人とも、ぼーっとしてないで、せっかく海に来たんだから遊ばなきゃ」
 そういって歩美が憐と歴の手を引く。こちらは白いワンピース水着で露出は多め。なんというか‥大人の色気である。
 海に入った三人は菜々美も混ぜて一緒に遊んだ。急に話しかけられて戸惑う菜々美であったが、すぐに打ち解ける。犬掻きで泳ぐ歴の背にひょいと跨る憐。当然、ぶくぶくと沈む。慌てる菜々美と笑う歩美。

「もっと前です!」
「右だよ!」
「いや、左! 左!」
「にゃああ!? どっちですかあ?!」
 海から上がったリリィとちずる、三門姉妹はスイカ割りをしていた。夏の定番だ。
 目隠しされてバットを持ったちずるがふらふらとスイカの周りを回る。
「舞浜さん! 今です!」
「てぇいっ!」
 バットを振るうちずる。それは‥見事、スイカに命中し粉砕した。
「やりました!」
「すごいすごーい!」
 スイカ塗れになってピースサインをするちずると、拍手をする三人。

「俺と泳ぎで勝負だ!!」
 びしっと慧子を指差すヴァレス。前回のリベンジである。
「いいけど‥また私が勝つと思う‥」
 慧子はハイレグの競泳水着姿。普段から水泳で鍛えているだけにスタイル抜群だ。
「次こそ負けないぞ〜!」
 そういうわけで、競争開始。「うおおお」と初っ端からクロールで猛烈に飛ばすヴァレス。
 数分後――
 結局、慧子の勝利に終わった。ヴァレスはぜえぜえと肩で息をしている。
「‥だから言ったのに」
「勝ち負けはどうでもいい、勝負する事に意義があるっ!」
 堂々と負け惜しみを言い放つヴァレスであった。

(「綺麗な海‥気持ちいいな‥」)
 ティリアは一人、沖のほうまで泳いできていた。青く透き通る海‥実に美しい。
 波の抵抗を感じつつ、思いっ切り泳いで、思いっ切り満喫中。
(「もうちょっと‥泳いでみようかな‥」)
 ここは遠浅なので流される心配は少ない。こんなに綺麗な海で泳ぐ機会は滅多に無いので出来る限り楽しむつもりだ。

 一方その頃、浜辺ではヴァレスの提案によりビーチバレーが行われていた。
 使用しているのは憐が持ってきたビーチボール。
 
 Aチーム:憐、リリィ、歴、菜々美
 Bチーム:凛、ヴァレス、美咲、慧子

 熱い砂浜での攻防が続く。慧子のスパイク! 菜々美がブロック! 二人の豊満な胸がぽよんと弾む。
「いいねぇ‥いいねぇ」
 その様子を眺めてまたも眼福状態の香澄。
「香澄さん、お顔が緩んでいますよ。他の子ばかり見ていると、私、ちょっと嫉妬しちゃいます」
 悪戯っぽく冴が言った。
「おっと、ごめんごめん」
 そんな妖しい会話をしながら二人は釣竿を手に、岩場へ向かった。

「煌く海を眺めながら、のんべんだらりと糸を垂れ。贅沢だねぇ」
 のんびりと釣りを楽しむ香澄。
「‥!? ヒットしました!」
 冴がリールを巻く。釣り上げられたのは‥多数の触手を持つ軟体生物。
「大きなタコですね‥って、きゃ!?」
「九条! それタコやない! クラーケンや!」
 ‥どうやらキメラが釣れたらしい。触手に絡まれ、吸盤に吸い付かれ悶える冴であったそうな。

「はっはっはっ、皆さん楽しまれているようですねぇ」
 ヨネモトはビーチパラソルの下、シートを敷いて読書中。
「さぁて、そろそろですかなぁ」
 いい時間だったので本を閉じ、いち早くバーベキューの準備に取り掛かる。

●バーベキュー!
 遊びまくってお腹が空いたら、今度はお待ちかねのバーベキューである!
 ヨネモトは自腹で大量の、良質の肉や野菜、魚介類などを用意するというすごい気合いの入りっぷりである。アロハシャツ姿なので袖は無いが腕まくりして、次々と食材を捌いていく。
 その間にヴァレスは火を熾す。他の者は串に肉や野菜を刺していく作業。
 ‥しばらくして、ジュージューと肉や魚介類が焼け、芳ばしい良い匂いが漂ってくる。素晴らしく食欲を誘う(ちなみに冴が釣ったクラーケンも一緒に焼かれていた)。
「さ〜焼けたよ♪ ほら、冷めないうちにどうぞ〜♪」
 ヴァレスがお肉などを皿に乗せて運んでくる。歓声が上がった。群がり、がっつく一同。皆、お腹がぺこぺこだったのだ。
 ‥ああ、何故こうも串に刺さった食材は美味しそうに見えるのだろう! ‥ああ、何故こうも野外で食べるご飯は美味しいのだろう! 視覚的要素と開放感のためだろうか。
「‥ん。その肉は。頂く」
「こっちのエビさんはいただくのだー!」
「‥ん。おかわり。まだまだ。行ける」
「こっちもまだまだいけるのだー!」
「‥ん。食べ放題は。速さが。命」
「負けないのだー!」
 例によって憐と歴は凄まじい速度で口に運んでいく。二つのブラックホール的胃袋の激しいバトル。終いには瞬天速や瞬速縮地まで使用する始末。
「やっぱり最上さんと犬飼さんは要注意ですっ」
 慌てて自分の分を確保するリリィ。
「ふう。美味しいですねー。えっと、食べれてます?」
 ちずるや三門姉妹を気にかける。‥そんな自分が「お姉さんっぽいです?」と思うリリィであった。
「ちゃんと食べてますよっ」
「美味しいよ!」
「すっごく美味しい!」
 満面の笑みのちびっこ三人組。それから、さっき割ったスイカもデザートとしてぺろりと平らげた。

「おいしいっ。どんどんいけちゃいます」
「ええ、やっぱりバーベキューは最高ね」
 ティリアは歩美と並んで座って食べていた。あまりの美味しさにカロリーなどは最早どうでも良い。今日はリミッター解除だ。

「まだまだありますからどんどん食べてくださいよぉ」
 ガンガン消費される食材を見つつ、肉を焼きながら「はっはっはっ」と笑うヨネモト。

「えっと‥お飲み物を、どうぞ‥」
「おっ、ありがとな」
 有栖にジュースの入った紙コップを差し出す菜々美。
 彼女は水着の上にエプロンを着け、臨時のウェイトレスさんとして動いていた。その姿はとてもよく似合う。可愛いっ。

「じゃあ聞いて‥『真夏色の流星(シューティングスター)』!」
 一通り食事が済んで、ある程度落ち着いたところで凛が新曲を披露し、場を盛り上げる。アイドル傭兵の本領発揮だ。ダンスも完璧である。

 一方、拓人は――
 ヨネモトとは別に、肉球マークのエプロンを着けて何やら調理中。
 アルティメットおたま、アルティメット包丁、SES中華鍋持参で、ヨネモトに負けず劣らず本格的だ。
 ‥間もなく漂ってくるカレーの匂い。それに釣られてカレーソムリエールの称号を持ち、「カレーは飲み物」と豪語する憐がやってくる。歴も付いてきた。
 拓人は憐と美咲と有栖と歴にカレーライスを振舞う。
「うん、ちょっと癖があるけど美味しい」
「なかなかだな」
「‥ん。そこそこ。といった所」
「結構いけるのだー」
 割と高評価。
「名づけて‥カレー塗れの竜虎、ハイビスカス添え。‥どう、おいしーい?」
「「!? ま、まさか‥」」
 スプーンを口に入れたまま固まる美咲と有栖。
「そう、材料は昼間倒したキメラだよ」
 にっこり微笑む拓人。当然、うげーっとなる美咲と有栖でした。
 憐と歴は気にせず平らげていたが。

「どうです‥御付き合い願えますかなぁ?」
 一仕事終えたヨネモトが歩美の前にやって来て日本酒を勧める。
「あら、せっかくだから頂こうかしら」
 コップにとくとくと注がれるお酒。
 二人は談笑しながら一杯やる。大人の時間だ‥。

 野外ライヴの後‥凛は浜辺で、写真とキーホルダーを見つめ、物思いに耽っていた。
(「‥も一緒にこれたらよかったな」)
 ふう、と溜息をつく。そのとき――
「それ、彼女さん?」
 後ろからひょっこり現れる美咲。その顔はすごく‥ニヤけている。
「わぁ、見ちゃ駄目なんだからなっ!」
 真っ赤になって慌てる凛。
「知ってるよ。その人ってエースなんだよねぇ。あんまり会えなくて、さみしい?」
「寂しくなんか、ないんだからなっ!」
 図星を突かれて更に焦る凛。美咲はくすくすと笑った。

「綺麗ですね‥」
「ああ‥でも九条には敵わないよ」
「うふふ、お世辞が上手いですね」
「お世辞なんかじゃないさ」
 先程の岩場で水平線に沈み行く夕陽を眺めている香澄と冴。二人の手は‥ぎゅっと握られていた。香澄の肩に頭を預ける冴‥。

●夜の浜辺で
 ――もうすっかり辺りは暗くなっていた。
『舞浜さん、一本どうです?』
『はい、リリィさん。やりますっ!』
 といった感じで超線香花火を始めた二人だったが「超」と付くだけあって中々落ちない。
 パチパチと静かに光を放ち続ける。‥でもその分、色々と話が出来た。

 ‥ようやく線香花火が落ちた頃、撤収準備が整った。
 一行は接岸しているクルーザーに乗り込む。
「また機会があればLHに来て下さいね。‥この前のゲームのリベンジもしたいですし」
「ええ、そうね」
 ちょっぴり苦笑いするティリアに微笑む歩美。
 ――そうして、南国を目一杯楽しんだ一行は島を後にするのだった。
 これは、貴重な想い出になることだろう‥。