タイトル:攻撃指令2マスター:とりる

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/06/05 00:33

●オープニング本文


 九州某所――
 キメラプラント乙1号。
 培養液で満たされたカプセルの中に浮かぶ二体のハイブリッドバグズを見つめる人物の姿があった。
 ‥‥昨年秋に始まった虫型キメラ事件の首謀者、プロフェッサー・芳賀である。
「この二体‥‥プラントを失ったとは言え、傭兵どもを退けるとは‥‥中々優れた個体の様だな‥‥」
 ハイブリッドバグズA型、及びS型。傭兵達とまともにやりあって唯一生き残った二体。
「くくく‥‥これはいい‥‥。更なる強化を施し、愚かなるUPC軍に打撃を与えてやろうぞ‥‥!」

 数日後――
 プラント破壊任務に当たっているUPC軍九州方面隊の被害が急激に増大していた。
 例の二体が現れたためだ。
「どうするのだ田尾中佐。このままでは被害が増える一方だぞ」
 九州方面隊某基地の会議室で頭を抱える将校が数名。
 事実、プラントの破壊に成功したのは能力者が関わった場合のみ。
 非能力者の正規軍だけでは成功したためしが無かった。
「貴官は私の隊を潰す気かね‥‥!」
「高ノ宮の小娘はこの状況で着実に戦果を上げているそうじゃないか。これでは我々の面子が‥‥」
 プラント破壊の全体指揮を命じられた田尾中佐に次々と非難が飛ぶ。
「わかっている、わかっている‥‥」
 人の良さそうな中年の男性‥‥田尾中佐はキリキリと痛む胃を押さえる。
 キメラプラントは例外なく地下に造られており、破壊するには歩兵戦力を投入するしかない。
 損害が増えるのは仕方が無かった。
「兎に角、これ以上の戦力低下は好ましくない」
「あの二体が居る限り、我々は手を引く」
「後は貴官の部隊だけで対応してくれたまえ」
 三人の将校が口を揃えて言った。
「待ってくれ‥‥それでは‥‥!」
「これは我々の総意だ」
「‥‥」
 確かに、無駄に兵士の命を散らすのは忍びない。
「解った。この件は傭兵に任せよう‥‥。私のほうから派遣を要請する」

 所は変わってラストホープ。
「UPC軍からキメラ討伐の依頼です」
 集まった傭兵達に説明を始めるクラヴィーア・櫻野(gz0209)。
「キメラプラント乙19号。ここを守っている二体のハイブリッドバグズを撃破して下さい」
 この二体のおかげで正規軍は多大な損害を被った。
「今回はプラントの破壊が目的ではありません。任務はあくまでバグズの撃破です。他には、例によって多数のビートルが確認されています。こちらの対処も必要でしょう」
 バグズだけに集中してビートルの群れに呑み込まれる‥‥なんてことになっては本末転倒だ。
「それでは、頑張ってください。ご武運をお祈りします」

●参加者一覧

御山・アキラ(ga0532
18歳・♀・PN
終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
潮彩 ろまん(ga3425
14歳・♀・GP
砕牙 九郎(ga7366
21歳・♂・AA
九条・縁(ga8248
22歳・♂・AA
レティ・クリムゾン(ga8679
21歳・♀・GD
遠倉 雨音(gb0338
24歳・♀・JG
仮染 勇輝(gb1239
17歳・♂・PN
赤崎羽矢子(gb2140
28歳・♀・PN
鳳覚羅(gb3095
20歳・♂・AA

●リプレイ本文

●リベンジ
 キメラプラント乙19号手前にて――
「さて、一度能力者を退けたキメラ、どれほどの物か‥」
 まず口を開いたのは赤褐色の肌が艶かしい、豊満な体つきをした女性、御山・アキラ(ga0532)。強敵と相対することは戦士にとって喜ばしいこと。
「皆に‥いと高き月の恩寵があらんことを‥」
 終夜・無月(ga3084)は作戦の成功を願い、白い昼の月に向かって祈りを捧げる。
「昆虫怪人コンビはボク達がやっつける! 黄色いマフラーは、勇気の証なんだもん!」
 黄色いマフラーを風になびかせ、潮彩 ろまん(ga3425)は意気込んでいた。バグズの背後にいるのはきっと、あの悪い昆虫博士。阻止しないわけにはいかない!
「これ以上被害が出ない様にとっとと潰してやらねぇとな」
 言ったのは砕牙 九郎(ga7366)。バグズ二体により尊い兵士の命がいくつも失われた。ここでなんとしても止めねばならない。
「今度こそ確実に叩っ斬って経験値にしてやる」
 闘志に満ちた様子の九条・縁(ga8248)。前回仕留め切れなければこうなることは理解していた。が、実際被害が出ると堪える。今回はリベンジマッチだ。彼は彼なりにバグズを分析し、対策を立ててきた。
「生き残り、か。強化、或いは成長していると予想した方が良さそうだな」
 黒髪をポニーテールにしたラフな服装の美人‥レティ・クリムゾン(ga8679)はバグズが更に強くなっているのではないかと疑う。確かにその可能性は高い。
「前回の借り、返してやりましょうか」
 こちらも美しい黒髪の持ち主、遠倉 雨音(gb0338)。前回はプラントの破壊が優先であった為、避ける人数が少なく対応班が手酷くやられてしまったが‥今回は違う。バグズが目標だ。しかし、難敵であることに変わりは無い。油断は禁物である。
「この前のリベンジです。皆さん、よろしくお願いします」
 皆に向かってぺこりとお辞儀をし、ぎゅっと拳を握る仮染 勇輝(gb1239)。バグズを取り逃してしまった責任は自分にもある。負けるわけにはいかない。
「人間と虫のハイブリッド‥か」
 赤崎羽矢子(gb2140)が小さく呟く。聞けばハイブリッドバグズの材料は人間。キメラとされてしまった者はさぞや無念だろう。弔ってやるには、倒すしかない。
「バグズか‥また戦う事になりそうな‥そんな予感はしていたよ‥」
 鳳覚羅(gb3095)は、顔には微笑みを浮かべているが‥心は静かに燃えていた。前回はやられたが‥今回はそうはいかない。

 そして傭兵達は行動を開始する。
 度重なる戦闘で洞窟‥プラントの入り口付近の木々は焼け落ちて平地となっていた。
 密集し蠢くビートルの群れに向けて無月が魔創の弓、雨音が洋弓「アルファル」で弾頭矢を次々と射る。‥弾頭が炸裂し、吹き飛ばされるビートル達。
 続いてアキラはSMG、九郎はクルメタルP−38、縁はエネルギーガン、レティは大口径ガトリング砲、羽矢子はエナジーガンでそれぞれ射撃。‥無数の火線と光条が飛び、多数のビートルを薙ぎ払う。
 ビートルで犇いていた洞窟の入り口が見えた。そのとき――
「出やがったな!」
 縁が声を上げた。‥今回のターゲットであるハイブリッドバグズ二体が姿を現したのだ。
 そこでアキラが閃光手榴弾のピンを抜く。呼笛を鳴らした後、バグズに向けて投擲。まばゆい光が辺りを包む。間髪入れずに羽矢子が飛び出し、怯んだバグズA改に向けて獣突を繰り出し吹き飛ばす。
「分断成功!」
 傭兵達は3つに分かれ、各個撃破を狙う‥。

●対ビートル
 ビートルの対応を担当するのはレティと雨音。バグズ班が戦闘に集中するための露払い。重要な役割だ。
「数ばかりごちゃごちゃと‥嫌になるな」
 レティは大口径、大重量のガトリング砲を構え、弾幕を形成。ビートルを駆逐していく。
 圧倒的な打撃力により一つの群れが消滅した。
「――次」
 続いてバグズの援護に向かおうとするビートルの群れを掃射。折り重なっていくビートルの亡骸。そのとき、ガトリングの回転機構が緩やかに停止。
「弾切れか。リロードする。カバーお願い」
「了解です」
 レティの代わりに前に出る雨音。彼女もまた、SMGで弾幕を張る。ガトリング砲ほどではないが威力は十分。次々とビートルの息の根を止めていく。
「余計な横槍は野暮というもの。お引取り願いましょうか」
「そう、それが私達の役目。行かせはしない、虫ケラども」
 リロードが完了したレティ。ガトリング機構がアイドリングの後、再び強力な火線を形成。甲殻を削られ、貫かれ、砕かれ、倒れるビートル。背中合わせになって執拗に銃撃を加える二人の艶やかな黒髪が風に揺れた。
 見目麗しい乙女二人の横顔は‥ビートルの目には鬼か悪魔のように映ったことだろう‥。

●対A型改
 ハイブリッドバグズA型改を担当するのはアキラ、無月、ろまん、覚羅、勇輝の五名。戦力を集中し、一気に倒してしまおうという考えである。
「‥参ります‥!」
 先手を取ったのは無月。急所突きを乗せた月詠で斬り掛り甲殻を削る。また、攻撃だけではなく、常に周囲の状況に気を配る。
「そこだっ」
 アキラは疾風脚を使用し命中と回避を引き上げ、無月が攻撃を行った部位にエネルギーガンを連射。更に甲殻を削る。
「君に小手先の技は通用しないのは分かった‥ならば技を圧倒する力で勝負してあげるよ‥!」
 前回の戦闘で教訓を得た覚羅は巨大且つ、絶大な威力を誇る竜斬斧「ベオウルフ」を振り被る。つまり、純粋な力と力のぶつかり合いだ。その重い斬撃に‥ついにバグズA改の甲殻に亀裂が入った。
「お前達がどんなに強力でも、ボクには頼れる仲間達がいるんだ!」
 仲間とタイミングを合わせ、ろまんは月詠を見舞い瞬天速で一撃離脱を図る。
「この前の借りは‥ここで返す!」
 勇輝は小太刀・氷雨を使って首筋を斬りつけ、すぐさまバックステップで距離を取る。バグズの足の付け根に神経瘤を探したがそれらしいものは見当たらなかった。

 傭兵達の息の合った攻撃を受け、身体中に傷を負い、体液を流すバグズA改。特に覚羅から受けた傷が深い。
 しかしやられてばかりではない。スパイクが追加され更に凶悪となった拳が次々と傭兵達を襲い、大ダメージを与える。
S型改には劣るものの素早い動きで回避を許さず‥
(「思ったより速い‥!?」)
 凄まじい打撃で受けの上からゴリ押してくる。
「クッ‥! 以前より重い攻撃だね‥」
 勇輝と覚羅は汗を垂らした。
 アキラ、無月、ろまんも肩で息をする。
 だがやはり、数では傭兵達のほうが有利――

「舞うが如く‥」
 無月が動いた。急所突きを使用し、一点集中攻撃を行う。
 その連撃はまるで舞踏の様‥。
「数で掛かるのは趣味じゃないが、圧倒させてもらう!」
 無月の攻撃で注意が逸れた隙に貫通弾を込めたフォルトゥナ・マヨールーで射撃するアキラ。よろめくバグズA改。
「鳳さん! 今だ!!」
「はあああっ!!!!」
 覚羅の龍斬斧の打ち込みに合わせて勇輝が鞘に収めた雲隠に豪破斬撃を付加し打ちつけ、威力を増幅。甲殻を突破し深々と斬り裂く。
「加速装置っ‥食らえ! 岩をも穿つ‥必殺! 波斬剣! 六段突き!!」
 そこへ、ろまんが限界突破と疾風脚を使用。目にも留まらぬ月詠の6連撃を繰り出す。最後の一撃で思いっきり突き刺し‥
「この世に悪の蔓延る例無し!」
 そう叫ぶと共に刀を引き抜いた。体液を噴出し、崩れ落ちるバグズA改。

●対S型改、そして‥‥
 五名がA型改と激闘を繰り広げていた頃――
 
 ハイブリッドバグズS型改を担当するのは九郎、縁、羽矢子の三名。この三名は足止めであり、先にA型改を倒してしまい、後に全員でS型改を倒そうという作戦だが‥‥
 三人は、苦戦を強いられていた。S型改の力が予想以上だったのだ。
「無理しないで! 皆があっちを仕留めてくるまで‥持ち堪えるよ! ‥ぐっ!?」
 バグズS型改の蹴りを細身の剣‥ハミングバードで受ける羽矢子。S型改のスピードは凄まじく、攻撃を避けることもままならない。
「なんて速さだ‥! ‥元は人間だったんだろうけど、キメラになってしまった以上、ここにお前たちの居場所はないんだ‥だからせめて‥バグアから解放して、安らかに眠らせてあげる!」
 羽矢子は瞬足縮地を使用して回り込み、フェイントに獣突を乗せた蹴りで弾き飛ばそうとするも避けられてしまう。
「テメーの相手は、俺たちだってばよ」
 九郎は羽矢子に攻撃を仕掛けようとするS型改を、クルメタルP−38で射撃し牽制しつつ、真っ赤な刀身の壱式で急所突きを織り交ぜ斬りかかる。数度、S型改の甲殻を掠めた。
「‥前より速くなってやがる‥」
 縁は剣と銃を距離によって使い分けていた。
 ある程度接近したところでエネルギーガンを連射、牽制。続いてバグズS型改の蹴りが来る。クロムブレイドで受ける。ずしんと衝撃。‥やはり前より重い。攻撃力も上がっているようだ。カウンターの斬撃を脚に見舞う。少し甲殻を削る。
 縁は徹底的に、脚のみに攻撃を集中していた。最初に比べ若干動きが鈍ったようにも見えたが‥速いことに変わりは無い。これでは足止めなどと言っている場合ではなかった‥。全力でやらねば‥こっちがやられる。
「やあっ!!」
 ハミングバードを一閃、急所突きで脚を狙う羽矢子。今度は捉えた。しかし脚ではなく胴に命中。
 九郎は蹴りを避け、軸足に攻撃をしようとするも、回避しきれず逆に攻撃を受けてしまう。姿勢を下げていたため、丁度頭部に‥ぐわんぐわんと視界が揺れる。
 縁に向かって蹴りを放つS型改。縁はクロムブレイドを盾代わりにする。そしてやはり脚に向けて、超近距離でエネルギーガンを連射。さすがにこれは避けられなかった。ダメージを受け震えるS型改。
 3人はタイミングを合わせ、回避させまいと一斉に飛び掛る。が、バグズS型改は回し蹴りを放ち、3人纏めて吹き飛ばした。受け身を取り、すぐに体勢を立て直し真っ先に反撃を仕掛ける九郎であったがカウンターの連続蹴りを受けガードを崩される。S型改は跳躍。見れば、踵に鋭い鎌のようなものが生えていた。刹那、胸を斬り裂かれ‥倒れる九郎。踵落としを食らったのだ。
「この野郎! 死んで俺の経験値になれぇぇぇぇぇ!!」
 背後から斬りつける縁。確かに、S型改に傷をつけた。が‥腹部に鋭い痛みが走る。
「な‥に‥!?」
 バグズS型改の肘から、鋭い棘のようなものが突き出し、それが‥自分の腹に突き刺さっていた。下腹部を生暖かいものが濡らしてゆく。
 これまで足技のみしか使わなかったS型改。油断‥していたのか? そう思いつつ、意識を失う縁。
 次の瞬間、バグズS型改は羽矢子の目の前に迫っていた。膝蹴り。膝からも生えた太い棘が、羽矢子の鳩尾を貫く。
「が、はっ!?」
 吐血する羽矢子。しかし‥力を振り絞ってハミングバードを振り下ろす。それは‥バグズS改の片腕を斬り落とした。

 そこへ、A型改の対応に回っていた五名が合流。
「皆さん!?」
 目の前の惨状に声を上げる勇輝。
 他の四名がバグズS型改を取り囲む。すると――
 斬り落とされた片腕の傷口から体液を流したまま‥今まで堅く閉じられていた口を開き、咆哮するS型改。A型改が倒されたことを悟ったのか‥? まさか、悲しんでいるのか‥?
 そして背中の羽を広げ、飛翔して去る。身体中のあちこちに受けた傷から、体液が滴り落ち、辺りに散った。
 追撃しようとする皆であったが、無月に制止された。
「損耗が大きすぎます‥。ここは‥撤退したほうがよろしいかと‥」
 三名が負傷。五名もダメージが大きい。まともに戦えそうなのはビートル班の二人のみ。
「くっ!」
 唇を噛む勇輝。

 8名はそれまでビートルを抑えていたレティ、雨音と合流。
 アキラと雨音がSMGで弾幕を張る。
 レティは九郎を支え、ろまんは羽矢子を支えていた。
「面目ないです‥」
「いや、気にするな」
 レティに頭を下げる九郎。格好悪いところを見せてしまった‥。
 無月が閃光手榴弾を投擲。それが合図となって一行は撤退を開始。

 帰路、意識を取り戻した縁。
 最後に見たバグズS型改の姿が目に浮かび、一時混乱するが皆に状況を説明される。
「‥ちくしょう! ちくしょおおおっ!!」
 またも煮え湯を飲まされるとは‥覚羅と勇輝に肩を担がれ、縁は悔しそうに叫んだ‥。

 数日後――
 バグズ一体を取り逃したものの、キメラプラント乙19号からバグズの姿は無くなり、結果として依頼は一応の成功となったことが傭兵達に伝えられるのだった。