●リプレイ本文
●千糸とメリー
若草香る陽だまりで、メイドさんに膝枕をしてもらっているお嬢様の姿があった。
二人の名は皇 千糸(
ga0843)とメリー。
ここは屋敷から少し離れたところにある草原。春のうららかな日差しが心地よい。
時折吹く風に乗ってやってきた瑞々しい草花の匂いが鼻腔をくすぐる。
‥‥こうやって昼下がりを過ごすのが、二人の日課であった。
「まったく、地味なメイド服を着てなお自己主張の激しいバストね」
そう忌々しげに千糸が呟く。寝転がる彼女の目の前にあるのは圧倒的なボリュームを誇るメリーのバスト。二つのたわわな膨らみは重力に負けることなく美しい形を保っている。
「大きいからといって、良いことはそれ程ありませんよ‥正直お嬢様が羨ましいです」
千糸の慎ましい胸に目をやりながらメリーは答える。
「どうせ私は誰かさんと違って小さいですよーだ。‥ってか重っ! 3キロくらいあるんじゃない?」
重たげなメリーのそれを、両手を皿のようにして持ち上げてみる千糸。実際、重かった。
「あんっ、いきなり‥。でも最近はスレンダーな女性が好まれると聞きますよ。私も同意見です」
「‥取りようによっては若干危ない発言ね、それ」
そんな風に言いつつも、ちょっぴり嬉しく思ってしまう千糸。
「うふふ。お嬢様も自信を持ってください」
千糸の頬を撫でながら微笑むメリー。
少し間があって「そういえば」と千糸が言う。
「最近、お父様がそろそろ身を固めろだのなんだの五月蝿いのよねー」
身体をぐーっと伸ばす千糸。
「ウェディングドレス姿のお嬢様もきっと素敵ですわ」
微笑んだままメリーは首をかしげる。
「むー‥私が他所の男のものになっても気にならないっていうの?」
「はい。たとえお嬢様が誰かのものになろうとも、私がお嬢様のものであるということは変わらないのですから」
頬を膨らませる千糸にメリーは即答。
「‥ちょっと」
「はい?」
「顔、こっちに寄せて」
「こうですか?」
そのようなやり取りの後‥‥メリーの頭を掴み、唇を奪う千糸。
「――ん、やっぱり嘘の味がするわ」
「んふう‥お嬢様には敵いませんわね」
二人の口から甘い蜜が糸を引く。
「‥それはそれとして、今夜は私のものである貴女の身体を好き放題にして良い訳ね?」
「もちろんですわ」
それを聞くと、千糸は安心した表情で、再びメリーの柔らかな太腿の感触を味わい始めた‥。
●ファルルとカーシャ
屋敷の執務室にて――
書類に埋もれているお嬢様が一人。
「うー‥カーシャ、今日の残りの予定は?」
斜め後ろに佇んでいるメイドに尋ねる青いシルクのワンピース姿の女性、ファルル・キーリア(
ga4815)。
「3時より商談、4時より会議、それが終わり次第、政界の方々とのパーティにご出席、となっております、お嬢様」
ファルルの問いにカーシャと呼ばれたメイドさんは淡々と答えた。
‥カーシャというのは愛称であり、本名はカタリーナ・ヘルメスという。
黒と白を基調とした半袖のパフスリーブの、シンプルなデザインのメイド服を着ている。
「慌しいわね‥いつものことだけど‥」
「どれも重要事項です」
うなだれるファルルを注意するような、キツめの口調のカーシャ。
「分ってるわよ、もう一頑張りしましょ」
万年筆を握り机に向かうファルル。
数時間後――
高級ホテルの一室。もちろんスイートルーム。
「あー! 疲れたー!」
キングサイズのベッドにばたりと倒れこむファルル。
先ほど、パーティが終了したばかりだ。
「本日もお疲れ様でした、お嬢様。しかし社交場での立ち振る舞いはまだまだですね」
ぐったりとしたファルルにダメ出しをするカーシャ。
「いいのよ、あんな脂ぎったおやじどもなんか」
「ですが――」
「‥カーシャ、ここなら他に誰もいないわ」
ファルルが言葉を遮った。
「あら、もう我慢できなくなってしまわれたのですか? はしたないお嬢様ですわね」
途端に、サディスティックな笑みを浮かべるカーシャ。
「そんな事言わないで‥」
泣きそうな‥でも艶っぽい声を漏らすファルル。
「うふふ、いいでしょう。たっぷり可愛がって差し上げますわ、御主人様」
ファルルのあごを持ち、口付けをするカーシャ。舌で唇を割って中へ侵入してくる。
「んっ、んんん‥」
ファルルはされるがまま。互いの蜜を交換し、唇を貪りあう。
カーシャの手が、カクテルドレス姿のファルルの開いた背中をなぞった。
敏感な部分を刺激されファルルはびくびくと身体をそらせる。
カーシャの手はそのまま下――スカートの内部を進む‥‥
そしてファルルの聖域へと到達したカーシャの指先が蛇のように這っていく。
執拗な攻めに、ファルルの嬌声が響いた。
「本番はこれからですよ、お嬢様」
口元を蜜で輝かせたカーシャの艶笑が、ファルルの瞳に映る。
そう、夜はまだこれからだ‥。
●アンジェリカとセバスチャン
私の名前はアンジェリカ 楊(
ga7681)。一応、お嬢様ということになるのかしら。
彼――私の前で給仕をしてくれているのは執事のセバスチャン。細身ですらっとした長身。知的な容貌に楕円形のメガネをかけている。黒髪で、瞳も黒だけど光に透けると紫に見えるのを私だけは知っている。いつも下から彼を見上げているもの。そんなこと絶対彼には言わないけど。‥彼は気付いているのかしら。意地悪な彼のことだからきっと‥。
両親を事故で失ってから、私はセバスと二人きりで暮らしている。
ある休日の午後――
予定より遅く帰ってきた私に、セバスはこう言った。
「今、何時だとお思いです? とうに予定時刻を過ぎていますよ」
きつい口調。でも心配してくれているのかな。
「子供じゃないんだから、ほっといてよ」
口から出た言葉はそれだった。彼は私の顔を見るとふっと笑って「そんな物言いではまだまだ子どもですね」と返してきた。いいじゃない、どうせ子どもですよーだ。
‥部屋には既にお茶の用意が整っていた。でも私は‥
「今日は天気が良いから、外がいいわ」
ただの我侭だけど許してくれるよね? だって私の執事だもの。
「全く、仕方がありませんね」
彼は魔法のようにあっという間に、テラスまでティーセットを運んでくれた。
‥紅茶を口にする私。彼は私の斜め後ろに佇んでいる。
「本日はどちらへお出かけだったのですか?」
そんなことを聞いてくる彼に私は‥
「どこだっていいじゃない。貴方には関係ないわ」
こんな風に返してしまう。すると彼はこう言った。
「関係大有りです。私はお嬢様の執事なのですから」
「彼氏とデート」
嘘。ただの買い物。彼はどんな反応をするかしら。
「そうですか。それは良かった。時間に遅れるくらいですから、さぞかし楽しまれたのでしょうね」
微笑む彼。‥な、なんとも思わないの? 嫉妬してくれないの? 私は悔しくなって涙を零してしまった。
「どうされました?」と、彼。「嘘に決まってるでしょ!」と私は声を上げる。
本当は甘えてるだけなの。なのにいつも照れ臭くて謝れなくてただ真っ赤になって‥。
「申し訳ありません。ついからかってしまいました」
本当? 私のこと、わかってくれてるよね? だからもう、意地悪言わないで‥。
「私がお嬢様だけの執事であるように、お嬢様も私だけのお嬢様でいてください」
耳元で囁くと、彼はいきなり唇を重ねてきた。目を瞑り、彼に身をゆだねる私。
‥セバス、私だけの執事‥。
●ミルファリアとウィル
朝6時。カーテンの隙間から差し込む日の光でミルファリア・クラウソナス(
gb4229)は目を覚ました。心地よい布団の温もり。もうちょっとだけ、とミルファリアは再び身体を傾ける。すると――彼女の目の前に、幸せそうに寝息を立てる金髪の少年の顔があった。
「ちょ‥な、なん‥何で‥僕のベッドで‥?!」
驚いて飛び起きる。
「ふみゅ‥おはようございまふ、ミルフィお嬢様」
目を擦る少年。彼の名はウィル。これでもミルファリアの執事だ。
彼は時折こうやってベッドに潜り込んでくる。
理由を聞けば「温かいから」だそうな。困ったものだ。
ミルファリアはベッドを出て「朝食にしますわよ。顔を洗ってらっしゃい」と溜息まじりに言った。
食卓――
テーブルに向かい合って座る二人。この家ではもう当たり前の光景だ。
「ねえねえ、ミルフィお嬢様、ふーふーして?」
スープの皿を持ってやってくるウィル。猫舌な彼は熱いものが苦手なのだった。それだけなら良いのだが「食べさせて♪」とまで言ってくる。
「自分のご主人様にあーんしてもらう執事が何処に居るんですの‥」
そう言いつつも、結局やってあげてしまうミルファリアだった。
朝食後――
「ネクタイが曲がっていますわ‥ほら髪もボサボサ‥」
ウィルの服装や髪を直してあげているミルファリア。まったくどちらが使用人なんだか。
一方にこにこしているウィル。
「大体‥ウィルさん、貴方は執事としての品格という物を‥」
「〜♪」
「聞いてない‥」
がくりとうなだれるミルファリア。「どうしたの?」と顔を覗き込んでくるウィル。
「なんでもありませんわ」
‥ウィルは彼女の顔をじっと覗き込んだまま。
「な、なんですの?」
「ミルフィお嬢様、ボク‥キスしたい!」
「‥!? ‥キキキ‥キス‥?」
あわあわするミルファリア。突然何を言い出すのこの子は!
「いいよね? ね?」
「ちょ、待ちなさ‥んっ」
ウィルは返答を聞かずにミルファリアの唇を塞いだ。
「‥ぷはあ。キスって気持ちいいね」
「そ、そうね‥」
頬を染めるミルファリア。
「ボク、ミルフィお嬢様のこと好きだから。絶対守るから」
「ぁ‥えと‥好き‥? ‥僕もその‥ウィルさんの事‥その‥」
「こんなに甘えさせてくれるご主人様そうそういないもん。ミルフィお嬢様、大好き!」
胸に飛び込んでくる彼を抱きとめるミルファリア。
やっぱり貴方は僕の話を聞かないのね、と思う。でも凄く嬉しかった。
「僕も、大好きですわ」
●嶺と衛
穏やかな日差しの下、せわしなく庭を駆け回るメイドの姿を眺めながら、椅子に腰掛け読書をしているお嬢様、九条・嶺(
gb4288)。
メイドさんの名前は衛。茶色いショートカットの髪を揺らし必死に蝶を追いかけている。その姿はまるで子犬。身体が小さいわけではないのだが、なんとなくそのような雰囲気なのだ。様子を窺っていると‥‥あ、転んだ。
「あらあら」
うふふと笑う嶺。
「ご主人様ぁ〜」
べそをかきながらこちらへやってくる衛。着ているメイド服はノーマルのクラシックスタイルで、スカートの丈はジャスト膝下。しかしせっかくのエプロンドレスが土で汚れてしまっている。
「あ、あのぅ〜」
怒られるかな? とびくびくしながら嶺の顔を上目遣いに見る衛。
「大丈夫、怒ったりしませんわ」
微笑む嶺。
「ご主人様〜!」
抱きついてくる衛。
「こ、こら、衛! こっちまで汚れちゃったじゃないの!」
「ごめんなさいぃ〜」
しゅんとする衛に溜息をつく嶺であった。
夜――
「ご主人様、お風呂が沸きました」
嶺の私室へやってくる衛。
「そう」
読んでいた本をぱたりと閉じる嶺。
「衛、こちらへいらっしゃい」
「はい、どうしました?」
無防備にやってきた衛。嶺はその手首を掴み、ベッドに押し倒した。
「ご主人様!?」
「うふふ。お風呂に入る前にもうひと汗かかないとねぇ」
舌なめずりをする嶺。
ばたばたと暴れる衛を押さえつけた。
「どうせ逃げられないんだから、観念しなさい」
「はぅ‥」
大人しくなる衛。嶺はそれを確認すると、ボタンを外し、衛の胸の部分を肌蹴させる。露になる白い肌。ボーイッシュな容姿に似つかわしくない巨乳。つきたての餅のようなそれを両手で強めにこね回す。
「あ、あふぅ‥痛いです‥ご主人様‥」
悶える衛。
「この位のほうが良いのでしょう?」
その感触を十分に堪能した後、嶺の手は下へ向かった。スカートを捲る。
「そこはダメですぅ〜汚いですぅ〜!」
昼間のメイド服は着替えたが下はそのままだった。
臙脂色のスパッツが露になる。嶺が趣味で下着代わりに穿かせているのだ。
無論、その下には何もつけていない。
たっぷりと汗を吸い込んだそれは、ぴっちりと肌に張り付いていた。
嶺はそこへ顔を近づけ、くんくんと匂いを嗅ぐ。
「確かに、汗臭いわね」
「だ、だめぇ!」
泣きそうな声の衛。
「うふふ。可愛いわ」
見るとそこは、薄い布が密着して縦に入ったスリットがくっきり浮き出ている。
嶺はそのまま秘密の場所へ顔を埋めた‥‥
●シャーミィとアレックス
お屋敷の中でもひときわ大きな部屋。水草の揺れるアクアリウムを眺めながら、お嬢様のシャーミィ・マクシミリ(
gb5241)が唐突に、執事に向かって切り出した。
「ねぇ、今日は私がメイドになってあげる」
「お嬢様、何をいきなり‥」
困惑する執事の名はアレックス。タキシードに棒タイ姿で長身。無駄な筋肉のない引き締まった身体つきをしている。‥生真面目な性格の彼は、わがままなお嬢様にいつも振り回されてばかりだ。
「良いから、ちょっと待ってて」
シャーミィはやおらその場で服を脱ぎ始めた。慌てて顔を背けるアレックス。
「これでよし。さあ、そこに座って」
フリルたっぷりのメイド服に着替えたシャーミィは無理矢理アレックスを椅子に座らせる。
「ご主人様、何か御用はございませんか?」
悪戯っぽく笑うシャーミィに対し慌てるアレックス。
「お嬢様に用など言いつけられませんよ」
シャーミィはその言葉を遮り‥
「いいこと? 今日は私がメイドなの!」
強要してくる。結局いつものお嬢様じゃないか、と思うアレックス。
「‥ではあの、紅茶などをいただけますか?」
渋々注文する彼。
「なんで敬語なのよ」
シャーミィはぶつぶつ文句を言いながら部屋を出て行きティーセットを持ってくる。
そして意外にもてきぱきと紅茶を淹れ始めた。
「お上手なのですね、お嬢様」
「だから敬語はやめて! お嬢様っていうのも!」
「す、すみません‥」
しゅんとするアレックス。
「アレックス‥旦那様がいつも淹れているのを見ていますから。このくらいお手の物です」
にこりと笑うシャーミィ。ティーカップを差し出してくる。
アレックスはそれを受け取り、口をつけた。
(「いつか、こんな感じじゃなくて普通に淹れてあげたいな‥」)
紅茶を飲むアレックスを見ながらシャーミィはそんなことを考える。これって‥恋?
「美味しいよ、シャーミィ」
とびきりの笑顔を浮かべるアレックス。それにシャーミィは思わずドキッとしてしまう。
「どうしたの?」
「な、なんでもないわよっ! ‥ないです」
赤らめた頬を隠しながら必至に取り繕うシャーミィ。
(「いつものお礼にと思ったけど、こんなのもありだよね‥」)
思い付きも捨てたのもではないと思うシャーミィであった。