タイトル:Super Pit Ep2マスター:とりる

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/09/24 18:52

●オープニング本文


 オーストラリア西部の都市、カルグーリー。
 都市周辺にはワームなどの防衛戦力が数多く配置され、物々しい雰囲気を漂わせている――。

 ***

 バグア軍スーパーピット鉱山基地。司令官私室。
 長い赤髪に無精ひげの男と、丁寧に整えられた白髪の男が相対していた。
「地上での勝敗は決したか‥‥」
 古い軍服を着た白髪の男――スーパーピット鉱山基地司令、ショーン・タムラ‥‥正確にはその人物をヨリシロとしたバグアが呟く。
「まさか、このままUPC軍に降伏する気じゃありませんよねぇ、司令?」
 体格の良い赤髪の男は厳つい顔をタムラ司令にグッと近づける。
「無論、違う。徹底抗戦だ。そのために迎撃の準備を整えている。‥‥本星のブライトン様は新たな力を得られたようだ。まだ勝機は失われていない」
 赤髪の男――バグア軍のエース、エリー・アスカリドをまっすぐに見返すタムラ司令。
「それならいいんですが‥‥」
 アスカリドはふんっ、と鼻を鳴らしてから顔を離し、直立する。
「私は常に、戦場に身を置きたいんですよ。バグアに下ったのもそのため。戦争は長引けば長引くほど良い‥‥」
 ニヤリと獰猛な笑みを浮かべる赤髪の男‥‥。
「そうするためには勝たなければな。機体の調子はどうかね?」
「上々ですよ。よくあそこまで私に合わせたチューンが出来たものです」
「君のデータは精査したからね」
 さて、とタムラ司令は立ち上がった。
「そろそろUPC軍の攻撃が始まる頃だろう。この地での戦闘が長引くか否かは君次第だ。活躍を期待させて貰う」
「了解です、司令」
 アスカリドは敬礼し、不敵な笑みを見せた。
「頼むよ」

 ***

 西オーストラリア。UPC軍前線基地。
 KVハンガー内。モニター前に1人の女性の姿がある。
「まさか遥々オーストラリアまで遠征することになるなんて‥‥」
 その、まだ少女の面影を残す女性が愚痴っぽく言い、スイッチをポチッとな。
「久方ぶりだ、雪。こちらは大詰めだが、そちらもまだまだ大変なようだな」
 凛とした雰囲気の女性がモニターに映り、話し出した。名は高ノ宮・茜中佐。
「ええ、ねえさま‥‥」
 ぽつりと答える茜の妹――高ノ宮・雪中尉。
 茜は現在月面基地『崑崙』に滞在中であり、これは茜からのビデオメッセージだ。
 人工衛星の中継も無く、バグアのジャミングもあるこの地域でリアルタイム通信は出来ないと言っていい。
「手紙は読ませて貰った。日本、九州のバグアは‥‥残党はともかくとして、一先ず片付いたからな。叔父上の部隊にお鉢が回るのも仕方あるまい」
 叔父上――108機ものKVを擁するβ−01部隊の司令官、森ノ宮・猛大佐。
 β−01部隊は現在、バグア軍スーパーピット鉱山基地攻略のため、西オーストラリアの前線基地まで出張って来ている次第である。
 1個小隊を任されている雪もまたしかり。
「雪‥‥この期に及んで死ぬなとは言わぬが、立派に戦え」
「はい。ねえさまも‥‥ご武運を」
 声は届かないが‥‥雪は宇宙で戦う姉を想い、キッとした表情で敬礼した。

 ***

「‥‥」
 荒野。砂っぽい風に吹かれている人影。
 ――少年傭兵のカレン・M・クオンジ(gz0438)。
 カレンは思う。傭兵でありながら宇宙へ上がらずに、ずっと地上で戦いに明け暮れる自分は何なのか? と。
 確かに地上で戦う者も必要だ。だが‥‥自分は‥‥地上に固執しているのか?
「‥‥」
 カレンはふと、日本に滞在してた際に観たロボットアニメを思い出す。
 自分は‥‥いわゆる『重力に魂を引かれた人間』なのではないか‥‥? などと考えて、心の中で少し苦笑する。
 今はとにかく戦うだけだ。祖国を取り戻すためでもなく、地球のためでもなく、目の前に敵がいる限り。ひたすらに。
 それが終われば‥‥LHで出会った‥‥あの少しうざったいお嬢様と‥‥じっくり話をしてみるのも良いかもしれない。
 カレンはギュッと片手を握り、自分の拳をじっと見つめた‥‥。

●参加者一覧

ノエル・アレノア(ga0237
15歳・♂・PN
漸 王零(ga2930
20歳・♂・AA
Anbar(ga9009
17歳・♂・EP
赤宮 リア(ga9958
22歳・♀・JG
ティリア=シルフィード(gb4903
17歳・♀・PN
アルテミス(gc6467
17歳・♂・JG

●リプレイ本文

●スーパーピット鉱山基地攻略作戦
 西オーストラリア。UPC軍前線基地。
 敷地内にはβ−01部隊――108機ものKV(+基地守備隊)が駐機しており、敵基地攻略作戦を直前に控えているだけあって、物々しい雰囲気に包まれていた‥‥。

 その一方、基地内のブリーフィングルームでは――
「久しぶりだな、兄弟。今回も宜しく頼むぜ」
 Anbar(ga9009)が部屋の隅で固形栄養食をもそもそと頬張っていた少年傭兵、カレン・M・クオンジ(gz0438)へ声をかけた。
 その表情は非常に愛想の良いにっこり笑顔。カレンに対し、親近感を抱いているためである。
「‥‥よろしくお願いします」
 カレンの返事はいつも通り素っ気無い。だがAnbarの事は『戦友』程度には感じていた。
 ――本人に自覚があるかは兎も角として。
 そんな所へ。
「ふわふわしてて気持ちの悪い宇宙より、しっかり地面に接して安心する地上戦の方がいいよね〜♪」
 長い銀髪を泳がせて、美少女がカレンに横から抱き付いた。‥‥いや、違う。正確には美少年。彼女ではなくて彼の名はアルテミス(gc6467)。
 このようにカレンと顔を合わすたび「好き好きー♪」と猛アピール。だがしかし、カレンは至ってノーマルなのであった‥‥。
「‥‥離れて下さい」
「えぇー! いいじゃない! スキンシップ♪」
 などというやり取りを目の前で見つつ、Anbarは苦笑してその場を離れた。
「高ノ宮中尉、ちょっといいかな」
「はい、何でしょうか」
 Anbarが次に声をかけたのは今回作戦を共にするβ133小隊の指揮官、高ノ宮・雪中尉。
「偵察機からの情報によると、俺達の担当する戦域では敵の戦力に比べてこちらの戦力が不足している」
 壁に設置された情報端末を操作し、データを呼び出しつつ説明。
「傭兵だけでは不安が残る。思う所はあるかと思うが、協力をお願いしたい」
 真剣な表情でAnbarは言った。
「別に思う所なんてありませんよ。要請、了解しました」
 雪中尉はビシッと敬礼し、潔く了承。‥‥ほっと安堵するAnbarだった。

「うん、何だか歳が近そうな人が多くて妙な安心感があるね‥‥」
 浅黄色の髪の少年、ノエル・アレノア(ga0237)が室内を見回し、ぽつりと呟いた。
「β−01部隊の方やカレン君はお久しぶりで‥‥元気そうで何より」
 また小さく呟いてから、
(皆にも、色々あったのかな)
 心の中でそのように思う。地上での戦いは収束しつつあるものの、まだ油断は出来ない。
 β133小隊やカレン、ブラック姉妹もずっと戦っていたのだろう。
「オーストラリア、か‥‥地上での大きな戦いは終結しましたが、まだここにはかなりのバグアの戦力が残っているんですね」
 ノエルの隣で、彼の恋人であるティリア=シルフィード(gb4903)が言った。
「だからちゃんと気を引き締めないと。‥‥ね、ティリアさん」
 若干緊張した様子の、ティリアの肩にポンと手を置き、ノエルは微笑む。
「はい。宇宙に目が向けられている今だからこそ、おかしなことをされる前にしっかりと叩いておかないといけません」
 ティリアは微笑み返した後、すぐに表情を引き締め直した。
(カレンさんとお仕事をするのは半年ぶり、かな。‥‥この前も思ったけど、カレンさん、会う度に少しずつ雰囲気が変わっている気がする‥‥?)
 そしてカレンへ視線を向け、首をかしげる。――ティリアはカレンの微妙な心情の変化を感じ取ったらしい。

「地上での戦いは決したというのに、まだ抵抗を続けるなんて‥‥バグアにも意地というものがあるのですね」
「そうなんだろうな。まったくもって迷惑な話だが」
「ええ。きちっと引導を渡して差し上げましょう。私達の未来のためにも‥‥」
 赤髪の美女、赤宮 リア(ga9958)は夫である漸 王零(ga2930)の肩に頭を預ける。
「ああ‥‥」
 王零は妻の手触りの良い髪を優しく撫でた。
 今は戦わねばなるまい。自分達の次の世代が武器を取らずに済むように‥‥。

 程無く、出撃時刻となった。傭兵達とβ133小隊は格納庫へ向かう。

 ***

 準備を整え、KVに搭乗した傭兵部隊は出撃。β−01部隊も敵基地の存在するカルグーリーを包囲しつつ展開中である。
 傭兵部隊の編成は以下の通り。

 A班――。
 こちらは敵指揮官機対応を行う。
 王零の機体はヴァダーナフ『ダーナヴァサムラータ』。
「さて‥‥新型のマッチングも終わったし、本腰を入れて戦わせてもらおうか」

 リアの機体はアンジェリカ改『熾天姫(Rote Seraphim)』。
「今度は遅れを取るわけにはいきませんからね。新型の力、期待しています」
 自分は夫を信じて共に戦うのみ‥‥と、リアは目を閉じて胸に手を当てる。

 B班――。
 こちらは傭兵が担当する戦域のうち、戦線右翼の担当。
 ノエルの機体はヴァダーナフ『ゼロ』。
「ティリアさん、アルテミスさん、よろしくお願いします」
 同班の二機へ通信。

「了解です、ノエルさん。砲撃は任せて下さい」
 ティリアの機体はスピリットゴースト・ファントム『Merkabah』。

「カレンと同じ班じゃないのは残念だけど、がんばるよ!」
 アルテミスの機体はシコン改『カリストー』。

 C班――。
 こちらは戦線左翼の担当。
 カレンのシコン改、及びブラック姉妹のガンスリンガー改が2機。

 D班――。
 こちらは戦線中央の担当。
 Anbarの機体はシコン改『ルムア』。
(行くぜ、相棒‥‥)
 パイロットスーツ姿の彼はぎゅっと操縦桿を握る。

 そして、β133小隊‥‥高ノ宮・雪中尉率いるシラヌイ改が4機。
 
 傭兵部隊は各班に分かれ、担当戦域へ向かう――。

●VS陸戦強襲型HW+TW
 敵基地防衛線付近に到着。
「‥‥敵部隊を確認。敵さんはもうこっちに気付いてるみたい」
 アルテミスがレーダーに目をやりながら各機へ通信を送る。
 そこには敵機を示す赤い光点が多数表示されており、移動を始めていた。
「陸戦HW群が高速で接近中! それと――あの紅色の奴!!」
 辛酸を舐めさせられた、忘れもしないあの機体‥‥正確に言えばパイロット! アルテミスはギリギリと奥歯を噛み締める。
 知覚狙撃砲で射撃し、敵部隊を牽制。
「あの赤いタロス‥‥前回はしてやられましたが、二度も同じ相手にやられはしません! 必ず一泡吹かせて差し上げましょう!!」
 リアが声を張り上げた。目を吊り上げ、戦士の表情となる。
「それじゃあ‥‥先手必勝、派手に狼煙を上げる」
 王零は兵装を選択。機体に大型榴弾砲を構えさせ――トリガーを引き、連続で撃ち放った。
「全弾くれてやる!」
 轟音。榴弾が敵直上で炸裂。着弾。敵陣で爆炎が巻き起こる。
「HW数機の撃破を確認。流石です!」
 リアが王零へ通信。レーダーから赤い光点が数個消えていた。

「よし、まずは可能な限り速やかに陸戦HWの数を減らしましょう」
 後方に位置するTWからの、反撃と思われるプロトン砲による砲撃を回避しつつ、ノエルは同班へ通信。
「了解です。作戦通りに!」
 ティリアは兵装を長距離バルカンに切り替えながら返答。
 アルテミス機も合わせ、B班は戦線右翼へ展開する。

 ***

 D班――。
 Anbar機は狙撃砲、知覚砲、機関砲と距離により兵装を使い分けながら射撃。
「やはり強襲型‥‥速いな‥‥。奴らを分断出来れば‥‥」
 敵は交戦経験のある高速タイプ。みるみるうちに距離を詰められ、多数のロケット弾が飛来する。
 回避運動。自機の周囲に着弾。爆炎。‥‥中央を担当するD班には圧力が集中していた。
 β133小隊は機関砲や狙撃砲で応戦中。
(どうする‥‥ここで使うか‥‥?)
 トリガーを引きながらAnbarは思案した。掃射により敵を最も多く巻き込めるタイミングは今しかない。
 だが――TWは後方から動かず、ここからでは攻撃は届かない。
 しかし。敵群を分断することを考えれば‥‥自ずと答えは出た。兵装を切り替え。
「いくぜ‥‥種子島壱式改、発射!」
 長大な砲を敵群へ向けるAnbar機。直後、高出力レーザーが連続で放たれた。閃光にHW群が呑み込まれる。

 ***

 B班――。
「只管砲撃してくるTWが厄介ですけど、HWが減って徐々にこちらの前線が上がっていけば自然と仕掛けるチャンスは出てくる筈です」
 ノエル機は突撃してきたHWの刃を盾で弾き、その隙に双機刀を連続で振るい、叩き斬る。一機撃破。
 ティリア機は弾幕を展開。更に狙撃砲と、FスナイプBを使用した4連キャノンでTWを牽制。
「それはちょっと楽観的じゃない? このままTWに撃たれ続けるのは心臓に悪いよ。ボクが前へ出る。援護お願い!」
 アルテミスはスキル二種を起動。ファランクスでHWを牽制しつつ、機体を加速させる。
「ノエルさん、どうします?」
「彼の言うことも一理ありますね‥‥あちらに援護をお願いします」
「わかりました」
 ティリア機は弾幕をアルテミス機周辺の敵へ向ける。
 ‥‥ノエルの判断はこうである。TWを最後まで残しておくのは確かに適切ではないし、ティリア機は物理攻撃特化であるためTWに対し有効では無い。
 自機の兵装も物理のみだった。ならば有効な攻撃手段を持つアルテミス機に任せるのも良い。
 ノエル機はアルテミス機に追随し、双機刀で斬り込む。
「今だ! いっけー!」
 アルテミス機は射線上にHW数機、中央にTW一機を捉え、種子島壱式改を発射。高出力レーザーにより、ティリア機の弾幕で損傷していたHWが爆発。
 TWも装甲の大部分が融解。そのまま速度を維持し、肉薄。機槍で砲塔を潰してから本体へもう一撃。TW一機が沈黙。

 ***

 D班――。
「B班が前へ出たか‥‥それなら! SA、及びアクチュエータ起動、近接戦へ移行する!」
 Anbar機が突貫。一気にHWとの距離を詰め、威力を高めた機槍で貫く。――すぐに引き抜いて次の目標へ。HWは爆発。
 β133小隊も近接戦へ。

●VSエリー・アスカリド
 A班――。
 王零機とリア機は敵指揮官機、紅色の強化型タロスと交戦。
 教訓から近接戦を避け、一撃離脱を徹底。
 しかしタロスの攻撃は苛烈で、徐々に損傷が増していく。
「くっ、なんて正確な射撃!」
 リア機が被弾。装甲の一部が融解。
「コイツ!」
 王零機が射撃し、タロスは回避。反撃のミサイルが飛ぶ。
 避け切れずに盾で受ける。大きな衝撃。
 タロスは大剣の切っ先を二機へ向ける。
「どうしたどうした? その程度かぁ? 機体は良いようだが‥‥怖気づいたか?」
 敵機から男の声が響いた。
(接触を図って来た? いや、これは挑発)
(時間稼ぎは当にお見通しか‥‥)
 二人の頬を汗が流れ落ちる。
「射撃ばっかじゃつまんねぇんだよぉ!」
 タロスは突進。突きを繰り出して来る。
 二機は後退し散開。敵は速度を緩めず、ジグザグの機動。多少の被弾は気にせず王零機に接近。短剣を取り出し、投擲。
 それは王零機の胸部に突き刺さり、爆発。
「ぐあっ!」
 警告音。致命的な損傷。
「そっちにやる気がねぇなら、やる気にさせるまでよ!」
 敵機が赤く発光。肉薄し、大剣を振り被る。
 リア機が割り込むが斬撃に弾かれた。続く攻撃を王零機は剣で受け止め、火花が散る。
「‥‥リア、仕掛けるぞ」
「ですが!」と、リアは言いかけるが戦域図を見てハッとした。HWの数が減少している。――ならば。
「わかりました。参りましょう」
「DMSシフト‥‥モードNアクティブ。――さぁ、狩らせてもらうぞ」
 王零機はFアセンションを使用。敵機の斬撃を弾き返す。
「貴方みたいな人がいるから戦いが終わらないんですっ!!」
 側面からリア機が接近。スパークワイヤーで敵の足元を狙い、暗器を封じようとするが、敵機は易々と回避。
「単調な攻撃に当たるかよぉ!」
 敵機の足先から練剣が伸び、リア機は逆に片腕を斬り落とされ、プロトン砲の追撃を受ける。
「きゃあああっ!?」
「貴様ぁ!!」
 王零機が敵機に連続の突きを繰り出す。対して敵機は大剣による連続の斬撃。
 ――突きと斬撃の応酬。双方に大ダメージ。
 その中で敵機は片肘を王零機に向けた。カバーが開き、無数の針が射出。王零機は咄嗟に回避運動。
「っ!?」
 一瞬の隙が生まれた。それを敵が見逃す筈もなく、
「バカが!!」
 横薙ぎの斬撃。王零機は胴を両断され、地に転がった。何度も小爆発。大破。
「よくもぉ!!」
 それを目にしたリアは機体のスキルを全開。残った腕から練剣を伸ばし、斬り掛かる。
「はあああっ!!」
 敵機は大剣を盾にするが大威力に耐えられず斬り刻まれる。
「覚悟ぉっ!!」
「それはテメェだぁ!」
 敵機は残った柄を投げ捨て、両手の甲から練剣を伸ばし、リア機の四肢を斬り裂いた。
 ――リア機の練剣は敵機を袈裟斬りにしたのみ。
 両腕両足を失ったリア機は夫の機体と同じく地面に落ちる。
「動いて! 動けぇ!」
 リアの叫びが、虚しく響く‥‥。

 ***

 D班――。
「Anbarさん」
「どうした?」
「ここは我が小隊で引き受けます。仲間の救援に向かって下さい」
「‥‥了解した!」

 ***

 時を同じくして、B班もA班の元へ駆けつけていた。
 戦線はカレンとブラック姉妹、β133が支えている。
 ‥‥到着すると、すぐに状況を把握。
 ティリアとアルテミスから悔しそうな声が上がる。
「こうした戦いで、この先も家族を奪われる人達が出るっていうなら‥‥僕はお前の戦いを全力で否定する」
 双機刀でタロスへ斬り掛かるノエル機。
「テメェも傭兵だろうが! 同類の癖によぉ!」
「違う! 僕はお前なんかとは違う!!」
 叫びと共に斬撃。他三機からの援護もある。
(チッ‥‥分が悪りぃぜ‥‥)
 タロスの全身の装甲が一斉に開放。――そこに詰まっていたのは小型ミサイルだった。
 傭兵達が反応する間もなく、大量のミサイルが降り注ぐ。
 ‥‥爆炎が止むと、その場からタロスの姿が消えていた‥‥。

●戦争狂の末路
 荒野を満身創痍のタロスが駆ける‥‥。
「基地、応答しろ、基地! 替えの機体を!」
「アスカリド‥‥君か‥‥」
「司令? どうしたんです司令?」
「基地は‥‥陥落した‥‥。私も‥‥もう長くは無い‥‥。我々の‥‥敗北だ‥‥」
「なんだと‥‥?」
 通信はそのまま途切れた。その時、機体が小爆発を起こし、停止。
 機体ダメージが限界に達したらしい。アスカリドは脱出しようとするが――
 ハッチは開かなかった。これまでの罪を償えと言わんばかりに、頑なに。
「クソがぁ! 開け! 開けよこの野郎!!」
 機体が激しくスパークする。小爆発が連続する。
「ここで終わりだってのか‥‥? この俺が‥‥?」
 まだ足りない。もっと戦いを。戦争を。
「‥‥畜生ォォォッ!!」
 男の惨めな叫びと共に、紅色の強化型タロスは爆発四散した。