タイトル:Super Pit Ep1マスター:とりる

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/07/07 22:09

●オープニング本文


 オーストラリア西部。
 かつてゴールドラッシュに沸いた都市‥‥カルグーリー。
 そこにはオーストラリア最大の露天掘り金鉱山が存在する。
 名をスーパーピット鉱山。バグアはオーストラリア全土を制圧したのち、これを基地化していた。
 大規模作戦『極東ロシア戦線』が展開された場所、ロシアのウダーチナヤ・パイプと同じ理屈である。
 露天掘り鉱山は基地化に適しているのだ。
 ‥‥もっとも、こちらの場合は『ゲート』やアグリッパの配置ではなく、完全な拠点化だが‥‥。

 ***

 バグア軍スーパーピット鉱山基地――。
 滑走路(厳密には、バグア機は慣性制御を用いて飛行しているので滑走を必要としないが、輸送艦などを駐留させておくための場所)に一隻のビッグフィッシュが降り立った。
 ‥‥無数の傷が浮かぶ船体。長い、苦難の船旅だったことが窺える。
 事実、このBFはインド・デリーでの決戦に敗退後、早々に脱出し、UPC軍の包囲網を潜り抜けてようやくここへ辿り着いた次第。
 BFが着陸すると‥‥搭乗ハッチが開き、一人の人物が姿を現す。
 パイロットスーツ姿の、長躯で体格の良い男。外見は三十代半ばほど。精悍な顔つきだが――髪と髭は伸ばし放題。
 砂っぽい吹き下ろしの風が彼の長く癖の付いた赤髪を揺らした。
「ったく‥‥まさか、ここまで来ることになるとはな」
 彼は鋭い目つきで基地を見渡した。
 ‥‥数多の戦場を駆け抜けた兵士の顔。誇りある武人ではなく、あくまで『兵士』の顔‥‥。
「長旅ご苦労だったな」
 ふと、声がかけられた、視線を向けると中年男性の姿がある。
 それを確認すると赤髪の男はハッチから飛び降り、滑走路に立つ。
「基地司令から直々に挨拶を頂けるとは」
 中年の男性はスーパーピット鉱山基地司令、ショーン・タムラ。UPC軍の将校をヨリシロとしたバグアである。
 ‥‥上官を見下ろすのは失礼だという、ごく当たり前の判断。
「オーストラリアへのUPC軍の攻勢も強まっている。我が基地には君のような歴戦の兵士が必要だ」
 タムラ司令が穏やかに言った。ヨリシロとなった将校は軍人ながらも生前は温厚な人物だったらしい。
 バグアはヨリシロとした人間の性格や知識の影響を受けるゆえに。
「そいつぁ‥‥高く買って頂いているようで。ともあれ、受け入れに感謝しますよ」
「アスカリドくん、ついて来たまえ。君へ渡す物がある」
 タムラ司令が赤髪の男の名を呼ぶ。
 ――アスカリド。エリー・アスカリド。バグア軍のエースである。

 ***

 スーパーピット鉱山基地。格納庫――。
 薄暗い格納庫内に明かりが灯り、光に照らされ、機体が浮かび上がった。
 ――ハンガーに固定されているのは紅色の強化型タロス。
「どうだね? 事前に貰った君の戦闘データを元に、我が基地で出来得る限り最高のチューンを施しておいた」
「ほぉ‥‥」
 タムラ司令の言葉を聞き、アスカリドは興味津々に機体を見上げる。
「助かりますよ。私のゴーレムは相当ガタがきていましたので」
「君には期待している。この機体で存分に戦果を挙げてくれ」
「了解です、司令。ご期待にはお答えします。――さっそくですが、この機体は動かせますか?」
 敬礼したのちに、アスカリドは尋ねる。
「ああ、整備は万全だが‥‥まさか、到着早々出撃する気かね? 無理をするな、休め」
「いいえ、司令。私の本分は戦いにあるんですよ。大丈夫です、少し慣らすだけですから」
「うぅむ‥‥」
 流石にタムラ司令は難しい顔をする。が、すぐに頷いた。
「いいだろう。ならばついでにあれも連れて行ってくれ」
「あれ‥‥?」
 タムラ司令が指さした方には多数のHWが鎮座していた。
 ――見たことのない形だ。陸戦型の現地改修仕様だろうか。
「UPC軍の進攻に備えて独自に改修した機体だよ。それのテストを頼みたい」
(‥‥)
 このタムラという司令官、温厚そうに見えて実はかなり好戦的なのではないか、とアスカリドは思う。
 しかも抜かりが無い。‥‥このようなタイプは好きだ。
(ふふ。ここなら、好きに戦争が出来そうだな)
「アスカリド君‥‥?」
「了解です、司令。それでは出撃の準備に入ります」
 再度敬礼して見せるアスカリド。

 ‥‥西オーストラリアでの新たな戦いが幕を開けようとしていた‥‥。

●参加者一覧

漸 王零(ga2930
20歳・♂・AA
ゲシュペンスト(ga5579
27歳・♂・PN
魔宗・琢磨(ga8475
25歳・♂・JG
Anbar(ga9009
17歳・♂・EP
エリアノーラ・カーゾン(ga9802
21歳・♀・GD
赤宮 リア(ga9958
22歳・♀・JG
美空(gb1906
13歳・♀・HD
アルテミス(gc6467
17歳・♂・JG

●リプレイ本文

●荒野の大地で‥‥
 西オーストラリア、UPC軍前線基地。KVハンガー(格納庫)。

 格納庫の外で、赤髪の美女が風景を眺めていた。さわさわと、風に長く美しい髪が揺れる。
「ここがオーストラリアの地‥‥」
 彼女の名は赤宮 リア(ga9958)。この地は未だ、バグアの支配地域が多い。
「ふむ‥‥この地には面白い敵が居る‥‥。そんな空気を感じるな」
 背後からふと、声がした。リアが振り返れば、漸 王零(ga2930)の姿。
 彼は歴戦の傭兵として、戦いの匂いを感じているのだろう。
 ちなみに王零とリアは夫婦である。
「さぁ、行こうかリア。あんまり無理はしないようにな」
「んっ。‥‥はい、大丈夫です。行きましょう、零さん」
 軽く口付けを交わした後、王零がリアの肩を優しく抱き、共に格納庫へと戻る。

 ***

「地上の戦い‥‥。さっさと終わらせてしまいたい所だが‥‥」
 ハンガーに固定された愛機を眺めつつ、カウボーイハットのつばを弄り、ゲシュペンスト(ga5579)が呟いた。
 バグアとの戦いの主戦場は宇宙へと移ったが、地上もまだまだ戦火が絶えない。

(荒野での戦いか。‥‥ガンマンの本懐って奴なのかもしれないな)
 窓から外の赤茶けた大地を見つめ、魔宗・琢磨(ga8475)はそんな想いに浸っていたが‥‥。
 アナウンスによる呼び出し。何事かと行ってみると‥‥整備班長より説明があった。
「なんだって!?」
 大気圏内用‥‥宇宙未対応のKVが宇宙用SES搭載武器を使用する為には、地上であっても宇宙用フレーム(キット)が必要、との事。
「要するにお前さんの機体の武装、宇宙用の狙撃砲は使えないってこった」
 整備班長はやれやれといった風に言った。更に続ける。
「よくあるトラブルだな。ま、他の武装でも十分戦えるだろ。宇宙用フレームに換装している時間は無い。今回はこれで出てくれ」
「‥‥」
 無言で、がくりと項垂れる琢磨であった‥‥。

「ふう。やっぱり心地良いものね。地球の重力という物は」
 金髪に赤目の美女、エリアノーラ・カーゾン(ga9802)は床を踏みしめる。
 確かに自分の重さを感じる。やはりここが‥‥自分の故郷。
 などと、ここ暫く宇宙で戦っていた為に思ってしまう。

「この地に巣食うバグアのお手並み拝見であります」
 空色のショートヘア、頭頂部のアホ毛をぴょこんと揺らして、美空(gb1906)がビシッと敬礼。
「オーストラリア各地に転戦しつつある他の姉妹に負けじと、美空もこちらにお世話になりに来たのであります」
 そのように、今回作戦を共にするUPC軍パイロットと会話をしていた。

「久しぶりだな、兄弟。今回も宜しく頼むぜ」
 琥珀色の瞳の美少年、Anbar(ga9009)が顔なじみの少年傭兵、カレン・M・クオンジ(gz0438)に挨拶。
 カレンは「よろしくお願いします」と短く、いつもの仏頂面で返してきた。
「そんな無愛想じゃ女にモテないぜ。折角の美形なんだから、笑顔。笑顔だ」
「モテたいとは微塵も思いませんが」
 仏頂面は崩れない。と、そこへ――
「じゃあ男にはモテたい?」
 そのような‥‥質問が‥‥。
 二人が声のしたほうを向けば、アルテミス(gc6467)がにこにこと笑っていた。
 ――見た目は可憐な美少女。しかし、アルテミスは男である。
「ふふふー♪ カレンとお揃いのシコン(改)をゲットして、ラヴラヴデートだね♪ む‥‥お邪魔虫は撃退ー」
 カレンにすり寄りつつ、近くに居たブラック姉妹をがるるぅと威嚇。

 程無く、出撃時刻となった。
 全員がKVに搭乗。骸龍も合わせて、全機偵察任務へと出撃。

●偵察任務
 荒野を駆ける12機のKV――。
 今回の任務はバグア軍スーパーピット鉱山基地への攻撃の前段階。進攻ルート上の偵察。
 その地域における敵の配置等を調べる事も任務に含まれる。

 王零の機体は雷電改2『アンラ・マンユ』。
(我が愛機‥‥まだ‥‥やれるか‥‥?)
 これまで長らく共に戦場を潜り抜けた愛機のコンソールをそっと撫でる。

 ゲシュペンストの機体はスレイヤー(Sp)『ゲシュペンスト・アイゼン』。

 琢磨の機体はガンスリンガー改『魔銃機神トゥールティース』。
「ようやくお前の三つ目の顔を使ってやれそうだぜ‥‥」

 Anbarの機体はシコン改『ルムア』。
「行くぜ、相棒。今回はお前の兄弟が2機もいる。心強いな」

 エリアノーラの機体はニェーバ『ビリュザー』。
「うっわ、久々の地上戦で機体が何か重っ苦しい気がするわ」

 リアの機体はアンジェリカ改『熾天姫 (Rote Seraphim)』。
「地上でのKV戦は久しぶりですね。やはり宇宙や月での戦いに慣れてしまっただけあって、軽装で来たにも関わらず、動きが重く感じます」

 美空の機体はヴァダーナフ『ボルケンクラッツァー』。
「今回の出撃は今まで苦楽を共にしたハギョーを生贄にし、新たに召喚した新型KVの初陣であります」

 アルテミスの機体はシコン改『カリストー』。
(カレンに今度こそカッコイイ所を見せるー。回避もするし頑丈な機体になったからきっと大丈夫!)
 隣を駆けるカレン機へ通信。
「ねえねえ、カレン! シコン乗りの先輩だから、戦い方とか教えて! 教えて教えてー!」
「‥‥。シコン改は大気圏内用万能機『シコン』の改良型。『種子島壱式改』が目立ちますが‥‥戦い方は乗り手次第ですよ」
 意外にも、カレンは真面目に答えてくれた。普段はそっけないが、戦いに関しては真剣なのだろう。

 ***

「新型機の力、得と見せて貰うのでありますよ」
 美空は出撃前に敵と遭遇する可能性が高い地点をピックアップ。前衛に布陣し、索敵。敵の早期発見に努める。
 が‥‥それは骸龍の役割だ。尤も、カメラの数は多いに越した事はないので美空機も骸龍とのデータリンクで十分に役立っている。
 暫く進んだ所で――警告音。敵機接近。骸龍のカメラが捉えた情報。

 敵部隊は多数の陸戦型HWと紅色の強化型タロス、という編成だった。
 後者は明らかに指揮官機であり、エース‥‥と思われる。

「あのワラワラと居る陸戦HWだけど。‥‥結構、動きが速い?」
 敵部隊の動きを観察していたエリアノーラが言った。敵もこちらに気付いた様子。
(フォースフィールドと合わせて、あのソードウィングっぽいので突撃とかされたら、避けるの大変そう‥‥)
「うんまぁ、ウチの子は回避を最初から捨ててるから良いけど」

「出撃前にも言ったけど、カレンにはボクたちと一緒に雑魚の相手をしてほしいな。‥‥あのHWは雑魚じゃないかもだけど」
 アルテミスより、カレンへ通信。「了解です」との返答。

「機体を真紅に染めた敵にはシンパシーも感じますが、だからこそ、余計に負けられません!」
 リアが気迫の篭った声を上げる。

 一行は事前の打ち合わせ通り二手に分かれて、敵部隊との交戦状態に突入。

●遭遇戦
 HW対応――。

 ゲシュペンストはトリガーを引き、機関砲で射撃。HWを牽制しつつ、データリンクで送られてくる強化型タロスの動きを注視。
「奴は‥‥もしや‥‥?」
 あの強化型タロスのパイロットは、かつて遭遇した銃剣を持つ紅色のエースゴーレムのパイロットと同一人物ではないか? という考え脳裏に浮かぶ。
「何か知っているのですか?」
 対応に当たっているリア機より通信。
「確証はないが‥‥中東で一度遣り合った奴に動きが酷似している。引き際を的確に見極める冷静さに加えて機体の随所に隠し武器を仕込んだ面倒な相手さ」
 自分が確認しているのは爪先のレーザーブレードと煙幕、とゲシュペンストは言った。
「了解です。情報、ありがとうございます」
 リアからそのように返ってくる。
「‥‥さて、巧く行けばそれでよし、ダメだったならダメだったでやりようはあるもんさ」
 シコン改3機へ通信。‥‥彼らには、思惑があった。

「長距離射撃、俺は苦手だが‥‥『トゥールティース』は大好きなのさ!」
 愛機のコクピットで声を上げる琢磨。しかし。
「‥‥今は長距離射撃、出来ないけどな。すまん、愛機」
 使用不能の、宇宙用の狙撃砲から機関砲に切り替え。
 盾で敵の攻撃を防ぎつつ、
「そーらッ! こっちの水はあーまいぞーってな!」
 引き付けるように、HWに対しチェーンガンの砲弾をばら撒く。

「骸龍のパイロットさん。遠慮なく私の機体を盾にして頂戴。これでもタフな方だと思うし」
 エリアノーラ機から骸龍へ通信。
(骸龍の護衛。これ最優先)
「回避? ンな時間あればカウンターの一発でも入れてやるわよ」
 基本は盾を構えて、そのまま盾役となる。
 ‥‥エリアノーラ機は当然、集中砲火を受けた。だが堅牢な装甲と盾で只管に耐え凌ぐ。
「敵の攻撃は背後の骸龍へ向けない」という強い意志で交戦。
(骸龍、被弾すれば一発で吹き飛びそうで怖いし)
 隙があれば狙撃砲や突撃砲で援護射撃。防戦中は基本、無理の無い範囲で反撃を行ってゆく。

「むむむ‥‥紅い敵機ってイヤな記憶しかないなぁ。前の三倍くらい強そうだし‥‥」
 アルテミスは強化型タロスの対応に当たっている味方機の映像に目をやり、顔をしかめた。
「ともあれ、ボクたちはHWの迎撃を優先!」
 敵との距離が詰まるまでは知覚狙撃砲で牽制。
 包囲されないようにしつつ、なるべく一方向に敵を集めて――
「アルテミス、兄弟、そろそろ行くぜ」
 Anbar機から通信。
「了解!」カレンからも「了解、準備完了」との返答。
「『種子島壱式改』一斉掃射!!」
「必殺っ! って、うあっ! 技名考えてなかった!」
 Anbarの声を合図に、3機の鎧武者がタイミングを合わせて『種子島壱式改』を発射。
 アルテミス機は【超伝導アクチュエータ】を使用。射線をずらしつつ、連続掃射。
「続けて、いっけー!」
 多数の光条が荒野を奔る。眩い閃光にHW群が呑み込まれた――。

 光が止むと‥‥レーダーに映る、敵機を示す赤いマーカーの数が減っていた。
 HW群は大ダメージを受けた模様。
「よし、敵を分断して各個撃破する」
 Anbar機は機関砲、知覚砲、狙撃砲で射撃。

 ***

 強化型タロス対応――。

 リア機は【SESエンハンサー】を常時起動。
「さぁ、貴方のお相手は私達が務めます!」
 基本はヒットアンドアウェイ。Pリボルバーでの射撃も織り込みつつ、慎重に立ち回る。
 距離が詰まればブーストを使用。回り込みつつEウィングによる格闘戦。その攻撃は敵機の装甲を浅く抉る。
 しかしタロスは、致命傷となる攻撃は寸での所で避けて見せた。反撃の突きがリア機を掠める。
「‥‥っ! 他にどんな暗器を隠し持っているか判りません。注意して下さい!」

「了解した」
 王零の返答。彼は妻と連携し、機杭で攻撃を繰り出し、武器破壊を狙う。
 攻撃は数度タロスを捉え、実体剣で防がれる。だが火花が散るのみで、刃こぼれは見られない。

「二人とも、一旦下がって欲しいであります」
 美空機は煙幕を展開し、隊長機と思われる強化型タロスへ向け、ブーストで加速。突撃。
【Fアセンション】を使用し、敵の右翼から攻撃。
 巨大鉄球による格闘攻撃後、【Fビートダウン】で更に連続攻撃。
「ウラウラウラ〜! であります」
 ――大振りな攻撃は易々と避けられる。
 構わずに巨大鉄球で足元の地面へ叩き付けた。凄まじい衝撃により土が抉られ、舞い上がる。
 タロスは体勢を崩したと思われたが慣性制御による機動で持ち直し、その勢いのまま巨大な実体剣を振るう。
「!?」
 美空機は機関砲で弾幕を張るも――鋭い斬撃により胴を両断され、機体の上半身が地面に転がった。数度、小爆発。
「美空さん!!」
 リアが、思わず叫んだ‥‥。

●エリー・アスカリド
 HW対応――。

 ゲシュペンスト機は跳躍。
「究極ゥゥゥッ! アイゼンッ! キィィィック!!」
 落下と共に脚部のドリルで損傷したHWへ蹴りを喰らわす。
 至近距離で砲撃を受けるが構わずドリルを掘り進め、ついにHWに大穴を空けた。
 離脱と同時に爆発。

「素早いようだが‥‥こっちも負けないぜ! 貫くっ!」
 Anbar機はスキル2種を使用。間合いに飛び込み、機槍の突きでHW一機を撃破。
 すぐに反撃。他のHW数機からプロトン砲が来る。
 AECを使用。大幅にダメージを軽減。

 エリアノーラ機。敵の突撃は盾で受けた後に機槍で反撃。
(確実に堅実に。焦ったら負け)
 ――HWのロケット弾が飛ぶ。即座に【リーヴィエニB】で迎撃。
「少し前へ出る。骸龍さんだけは巻き込めないからね」
【ミチェーリ】よって敵の動きを阻害。

 そこへアルテミス機の狙撃。HW一機を貫き、撃破。
 彼は中距離を保ち、味方を支援。
 敵が近ければ散弾砲で牽制、突っ込んで来る敵機の間に入り、機槍でカウンター。
 反撃は機槍の鍔で受け止める。
「この程度‥‥!」

 ***

 強化型タロス対応――。

 リア機がまたタロスへ肉薄し、連続の格闘攻撃を加える。
 敵の反撃。上段から実体剣を振り下ろす。
 避けるリア機。しかしそれはフェイント。横薙ぎの斬撃が来て、リア機は弾き飛ばされた。
 タロスの機体が機体色の紅よりも赤く発光。加速し、HW対応班の方へ‥‥!
 だがそれを妨げる者が居た。王零機がブーストを噴かせて、突進。背後から体当たりを喰らわせた。タロスは体勢を崩す。
「悪いがやらせんよ‥‥あれが帰ればこちらの勝ちなんだからな」
 続いて、剣で突きを繰り出す。
 タロスは反応。実体剣で逸らしつつ、柔軟に稼働する脚部‥‥爪先から練剣を伸ばし、王零機の剣を持つ腕を斬り落とした。
「――っ!?」
 王零は即座に機体を後退させるが、多数のミサイルが迫り――直撃。爆発。

「ちょっ、まっ、こっち来んな!?」
 タロスが骸龍へ迫る。慌てる琢磨。
「小回りで‥‥ガンスリに勝てると思うなってェなぁッ!!」
 そうしつつも【BF】を使用。拳銃で迎撃。
 タロスは射撃を気に留める事も無くプロトン砲を放ち、その光条は琢磨機を貫いた。

 ついにタロスが最後の砦であるエリアノーラ機へ襲い掛かると思われたが――反転。残存のHWを引き連れて撤退して行った。
「全く、やれやれだぜ」
 Anbarが安堵の息を吐く。彼らがHWの半数以上を撃破したのだった。

 そうして、任務は何とか完了。損害も大きかったが‥‥。

 ***

 基地。格納庫――。
「これまで耐えてきたが‥‥流石に‥‥」
 大破した愛機を見上げて、王零は複雑な心境を抱く。

「ちわ〜っす、初めまして! 同じガンスリ使いの魔宗っす。おぉ‥‥噂以上に綺麗(なKV)っすねぇ‥‥」
 絆創膏を頬に貼った琢磨がブラック姉妹に挨拶し、彼女らの機体を眺める。
「やっぱいいなぁ、うん。最高っすよね、ガンスリンガーはッ!」
 
「カレンはなんでオーストラリアに来てるの?」
 アルテミスは椅子に座り、尋ねる。彼は「戦場が僕の居場所だからです」とだけ答えた。

 スーパーピット鉱山基地をめぐる戦いは、まだ始まったばかり‥‥。