タイトル:ネッテの厄・後マスター:とりる

シナリオ形態: シリーズ
難易度: やや難
参加人数: 5 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/08/18 06:05

●オープニング本文


前回のリプレイを見る


 月面基地『崑崙』。KV格納庫。
「出撃準備、急げ!」
 居並ぶ12機のKV――背に輪を背負った機体『コロナ』――の足元で赤髪の女性が声を上げた。
 女性はスタイルの良いボディラインが浮かぶパイロットスーツ姿をしており、脇にはヘルメットを抱えている。
「ちょ、ちょっと待ってください大尉! 救出されたばかりで出撃だなんて、そんな無茶な」
 部下の中尉は慌てた様子で出撃を思い留まらせようとするが‥‥。
「機体はあるんでしょう? それなら出るわ。少しは休んだし、大丈夫。それにあたしは、恩はしっかり返すタイプなのよ」
 大尉と呼ばれた赤髪の女性は前回、傭兵達が救出したUPC軍のパイロットだった。
 本来は宇宙軍所属のKV中隊を纏める隊長である。名はリアナ・今井。日系ブラジル人。歳は二十代後半。
「一人の女の子がキメラプラントに取り残されてるの。これを放っておくわけにはいかないでしょ。ほら、さっさと準備をする!」
「‥‥りょ、了解です、大尉」
 今井大尉の真剣な視線を受け、部下の中尉は敬礼し、自機のコクピットへ向かった。

 ***

 ブリーフィングルーム。集まった傭兵達の前で、ULT職員の男性が口を開く。
「UPC軍の協力を取り付けることが出来た。我々は速やかにキメラプラントへ引き返し、櫻野君を救出する」
 スクリーンに前回の探索で得られたキメラプラントの内部構造が表示される。
「時は一刻を争う。宇宙服の酸素供給が無くなれば‥‥。しかし、キメラプラントの最深部には確かに空気が存在した。櫻野君は無事だと信じたい」
 ULT職員の男性は歯を噛み締め、ギリギリと拳を握った。
「キメラプラントまでの護衛はUPC軍のKV中隊にお願いする。傭兵の方々にはキメラプラントへ突入しての白兵戦を担当して貰いたい。勿論、私も同行する」
 前回、単独でキメラプラントへ引き返したネッテを置いて、態勢を立て直すために『崑崙』への一時撤退を決めたのは彼であった。
 ‥‥苦渋の、決断だっただろう‥‥。
「必ず、櫻野君を救出する。傭兵の方々には力を貸して貰いたい‥‥!」

 ***

 月面基地『崑崙』より離れた月面のクレーターに存在するキメラプラント――。
 周囲には大型の触手の塊‥‥宇宙触手キメラが犇めいていた。
 そしてその内部、最深部にて、丸メガネの少女、クラリネッテ・櫻野は目を覚ます。
「‥‥ん、んんっ‥‥」
 頭と視界がぼんやり。段々とはっきりしてくる。
(確か私は‥‥記憶媒体を取りに戻って‥‥それから‥‥)
 少し、頭がズキズキした。そこでクラリネッテ、愛称『ネッテ』はあることに気付く。
 ――宇宙服のヘルメットが外されていた! 近くの台に置かれている。
 手を伸ばそうとするが、動かない。どうして‥‥?
「‥‥っ!?」
 状況を確認してみれば、自分の四肢は触手によって縛られ、身動きが取れない状態にあった。
 ぬめぬめの感触が宇宙服越しでも感じられ、不快だ。
 とりあえず。
 ヘルメットを外していても呼吸することができる。この空間には空気がある。
 ‥‥一応能力者は、宇宙服無しで宇宙空間に放り出されてもすぐには死なないが。
 なにゆえ、キメラプラント内部に空気があるのか。そう疑問に思ったとき。
「やっと気が付いたか。実に興味深いね、君は」
 前方から声がした。ネッテはそちらに辛うじて動かせる顔を向ける。
 ――白衣を纏い、椅子に腰かけた三十代ほどの男性の姿があった。
「あの状況で、たった一人でここへ戻ってくるとは。よほどキメラプラントに興味があると見える」
「‥‥あ、あなたは」
「僕はビンセント。強化人間だよ」
 ビンセントと名乗った男は立ち上がり、拘束されて動けないネッテに近づく。
 そして白衣の懐から手術用のメスを取り出し、ネッテの首筋へ向けた。
「ひっ」
 小さな悲鳴。
 だがビンセントは笑った。
「怯えなくていい。別に取って食おうってわけじゃない。殺しもしない。ただ、僕は君に興味がある」
「‥‥‥‥」
 知的で整った容姿の強化人間、ビンセントは言ったが、ネッテは恐怖しか感じなかった。
「何が望みですが‥‥?」
「何も。僕は君を観察したいだけだ。それに、もうすぐ君のお仲間が助けに来るんじゃないかな。僕の作ったキメラと能力者――恐らく傭兵との戦闘を観戦させてもらうよ」
 ビンセントは、嬉しそうに笑う。
「こんな窮屈なキメラプラントに押し込められてるんだ。そのくらい、いいだろう? 君は助かる。心配しなくていい」
 ビンセントは手術用メスをくるくると回しながら続けた。
「次の戦いで僕は死ぬだろうね。まあいい。強化人間なんてそんなもんだ。‥‥君の助けが来るまで、僕の話し相手になってくれないか? さすがに拘束は解けないけどね」
「‥‥‥‥」
 どうしたものかと、ネッテは困惑した‥‥。

●参加者一覧

ロッテ・ヴァステル(ga0066
22歳・♀・PN
幸臼・小鳥(ga0067
12歳・♀・JG
相沢 仁奈(ga0099
18歳・♀・PN
立花 零次(gc6227
20歳・♂・AA
パステルナーク(gc7549
17歳・♀・SN

●リプレイ本文

●クラリネッテ救出作戦
 月面基地『崑崙』。女子更衣室――。
「護衛対象から目を離すとは不覚も良い所だわ‥‥。何が何でも‥‥クラリネッテを連れて帰らなければ」
 身体にぴたりと密着するパイロットスーツに着替え終えたロッテ・ヴァステル(ga0066)はバタン! と、やや乱暴にロッカーの扉を閉める。
 ‥‥その端整な顔には悔しそうな表情が浮かんでいた‥‥。

 幸臼・小鳥(ga0067)はいそいそとブランド物のパイロットスーツに着替え中。
「まさか‥‥ネッテさんが居ないことに‥‥気が付かないなんてぇ」
 ネッテの姿をもっと注視していれば、こんなことには‥‥。
 小鳥の胸には後悔の念が渦巻いていた。
「今度は‥‥ちゃんと連れて帰らないとですけど‥‥キメラとかに襲われてないといいですがぁ」
 ネッテの安否も心配‥‥。愛らしい顔からは不安の色が窺える。

「前回はネッテちゃんだけ残してもうて勿体無‥‥もとい、申し訳のあらへんコトしてもうたからね。絶対に助け出したらんと‥‥!」
 ぴっちりスーツに身を包み、グラマーなボディを披露している相沢 仁奈(ga0099)は両手をぐっと握って気合をチャージ。

(一人で取り残されちゃうなんてとっても辛いよね‥‥)
 パステルナーク(gc7549)はそのように考えつつ、衣服をするすると脱ぎ、小麦色の健康的な肌を晒し、更には小柄ながらも豊満な肉体を晒し、パイロットスーツに袖を通す。
「そのクラリネッテさんって人、大丈夫かなぁ‥‥必ず助けるからもう少しだけ待っててね」
 ふくよかな胸と細く締まったウエストの流麗なボディラインがはっきりと浮かぶスーツを纏い、パステルナークは片手をきゅっと握り、呟く。
「ボクは崑崙からの合流だけど、皆よろしくねっ」
 皆に向かってニコリと笑って見せる。
(目標はクラリネッテさんを発見して全員で無事に帰ることっ)
 ――心に秘めるは強い意志。
 その言葉に3人はよろしく、と答えた。

 ***

 窓越しに月面が見渡せる待機所――。
 既に宇宙服へ着替えを済ませた立花 零次(gc6227)はソファーに腰を下ろしていた。
(くっ‥‥! 失態でした。護衛対象を見失い、あまつさえ我々だけ逃げ帰るなど‥‥)
 己の不甲斐なさに、拳を硬く握り締める。
 彼の思いもロッテ達と同じだった。
「汚名は返上させていただきましょう。確実に」
 声に出し、しっかりと目的を意識する。
「あまり気負わないでくれよ」
 ふと、横から声。――ネッテの上司だった。
「あのとき一時撤退を決めたのは私だ。櫻野君を置き去りにすると決めたのも‥‥」
「‥‥そちらも、ですよ。責任を感じるのは立場上、仕方ないと思いますけれどね。‥‥ネッテさんは必ず助け出します」
「ああ、そうだな‥‥」

●VS 宇宙触手キメラ
 再出撃の準備を整えた傭兵とULT職員は小型艇に搭乗し、すぐさま『崑崙』を出発。
 前回傭兵達が救出した今井大尉率いるKV中隊が護衛に付き、急ぎ、問題のキメラプラントが存在する小型クレーターへと向かった。

 ***

 小型クレーターに到着すると、傭兵達と職員1名はKV中隊の援護を受け、速やかにプラント内部へ突入。
 ‥‥内部は前回と違い、プラントが稼働しているせいか壁面が青白く発光していた。そこで傭兵達を待ち受けていたのは――
 盛大な歓迎。入り口から歩いてすぐの部屋の床が大量の触手キメラによってびっしりと埋め尽くされている。
 サンゴの上に群生するイソギンチャクのような無数の触手‥‥。
「改めて見ても‥‥何ともおぞましい光景ね‥‥」
 ロッテがうんざりした表情で言う。しかし――。
「わはぁ〜vv」
 仁奈は両手を組み瞳をキラキラと輝かせ、口端から涎まで垂らしている。
 それを横目で見て、やれやれとヘルメットのバイザー‥‥眉間の辺りに手を当てるロッテ。
 程無く触手群がこちらを発見、襲い掛かって来た。傭兵達は武器を抜き、職員も合わせて全員で迎撃へ。
 陣形を組むことを想定していたが今はそれ所ではない。まずは目の前の敵を全力で排除する。

 ***

(ネッテさんはご無事でしょうか。確かに、あそこには空気があった‥‥どうか無事であって下さい)
 長大な刀を両手で持ち、迫る触手を次々に斬り捨てながら零次は思う。
(‥‥しかし、このような大量の触手に捕まっては‥‥)
 触手に捕えられあんなことやこんなことをされているネッテの姿を思わず想像して赤面。
「いえ、今は一刻も早くココを突破する事に集中しなくては」
 ぶんぶんと首を振って煩悩を払い、刀を構え直す。

「はあああっ! こんな所で足止めを食っていられないのよ!」
 ロッテは脚爪とナイフを用い、触手群を斬り裂いていく。
 彼女は‥‥護衛という立場にありながら肝心のクラリネッテを置き去りにしてしまったことに、負い目を感じていた。
 それを払拭すべく、並々ならぬ気迫を纏い、敵を屠る。

「何か‥‥前よりあからさまに数が増えているようなぁ‥‥。うー‥‥近寄らないでくださぃー!」
 にゅるにゅると這い寄る触手群から、きゃあきゃあ言いながら逃げ回る小鳥。
 後衛タイプの小鳥には、この乱戦は少しばかり分が悪い。
 時折振り向いて、その小さな体格に不釣り合いなガトリング砲の掃射を浴びせる。
 その際の隙は手足の爪を光らせた仁奈が前へ出てカバー、知覚銃二挺持ちのパステルナークもサポートに付く。
「うっしゃ! 気張っていかんと!」
「ボク、相沢さんの邪魔にならないように頑張るからねっ」
 それでも肉薄して来る敵は職員が機械剣と知覚銃で排除。‥‥暫くの交戦後、最初の部屋の触手群は全滅した。

 ***

「ああぁ〜! 邪魔になったからしゃーないとは言え‥‥勿体無いなぁ〜‥‥」
 床に伏し、しんなりとしている触手を手の平で優しく撫でつつ、仁奈は心底残念そうな表情をする。
「‥‥仁奈‥‥貴女という娘は、本当にブレないわね‥‥ねぇ、小鳥」
 溜息をつき、ロッテが小鳥の顔を見る。小鳥は頷いて口を開いた。
「はぃ‥‥ですぅ。触手は奥にもたくさんいると思いますしぃ‥‥元気出してくださぃー」
「せやね! まだまだこんなもんでは物足りん!」
 小鳥の言葉で仁奈が復活。しぼんだ触手を片手でギュッと握り、上下に激しく動かしつつテンション急上昇。
「‥‥」
 ロッテは、頑張る方向性を間違えている仁奈と、少しずれた励まし方をした小鳥の双方に目をやり、側頭部に手を当てた。

 一方、パステルナークは人差し指を突き出し、撃破した触手に顔を近づけ、恐る恐るつついてみる。
「うねうね‥‥もう動かないよね‥‥」
 それはまだ生命活動を停止して間もないため生暖かく、ぬるりとしていた。その時。
 触手が、ビクンッ! と、ほんの少し動いた。
「わあっ!?」
 慌てて飛び退くパステルナーク。だがそれ以降は動かない。恐らく死後硬直のようなものだろう。
「はあぁ〜びっくりした‥‥」
「何をやっているんです?」
「‥‥ええと、どんなものかちょっとだけ興味があって‥‥」
 零次に尋ねられ、パステルナークはおろおろと答える。
「‥‥」
 本人に悟られないように、パステルナークの顔をチラ見する零次。
 パステルナークの小麦色の頬には‥‥先ほど触手がビクッと動いた際に飛び出たものと思われる‥‥白濁した体液が付着していた。
 ある意味、危険。零次はごくりと生唾を呑み込んだ。

 ***

 一息つき、とりあえずここからどう進むか話し合い。
「ネッテさんには発信器か何かが?」
 零次が職員に問うた。「このジャミング下では当てにならない」との返答。
「前に通ったっていうルートが良いと思うんだけど、どうかな?」
 挙手してパステルナークが提案。出発前に聞いた話では、前回はスムーズに奥まで進めたらしいし、と思う。
 それに零次は賛成。
「闇雲に探しても時間の無駄ですし、真っ直ぐに突破したい所です」
 特に反対意見もなく、そのような方針となった。

「何があるか分からへんし、ロッテさんと零次さんにはある程度温存して貰て、ウチが率先して斬り込んでキメラを排除してくね。パステルちゃんと上司さんは援護よろしくぅ♪」
 仁奈が言って、一番先頭へ。2人は頷き、彼女のすぐ後ろへ。
「上司さんにはスキルでの回復をお願いしたいですね」
 零次の要請に職員は「わかった」と答える。

 ***

 通路を進む一行。結構歩いたがあれから敵には遭遇していない。
 ‥‥間もなく開けた場所に出た。
「頭上とか気を付けた方がいいよね」
 パステルナークがそう言ってから頭上を見上げると――天井に、大量の触手の塊が張り付いていた。
「あー‥‥」
 汗をだらだらと垂らす。
 間髪置かずに触手群は一斉に降下。「コンニチワー」と言わんばかりにお出迎え。再び戦闘。

「にゃっ、しまっ‥‥みゃー!? に、仁奈さん助け‥‥ひゃ、ちょ、何を‥‥してるんですかぁ!?」
「小鳥ちゃんの未成熟な肉体に大量のぬるぬるな触手が巻き付いて‥‥むっはー!!」
 仁奈が小鳥に絡み、何か凄い事になっている。
「やぁぁぁん! だめぇぇぇ!」
 パステルナークの悲鳴も上がる。
「くっ‥‥こいつら‥‥どこを触って‥‥!」
 更にロッテの恥じらいを秘めた声。
「「‥‥」」
 男性2人には目や耳の毒。そんなこんなで四苦八苦しなら進んで行った――。

●VS Dr.ビンセント
 触手の粘液でぬとぬとになりながらも、どうにかこうにか最深部へ到達した一行。
 前回も通った気密隔壁らしきゲートをくぐると‥‥そこには‥‥。
 一人の、白衣姿の男が立っていた。――その後ろには四肢を触手に拘束され、磔にされたネッテの姿がある!
「やあやあ傭兵諸君、待っていたよ」
 整った顔立ちの男はニヤリと口元に笑みを浮かべる。‥‥男は宇宙服を着ておらず、生身。
 やはりここには空気がある。
「みな‥‥さん‥‥」
 弱弱しく声を発するネッテ。‥‥どうやら無事らしい。
「なるほど、あなたがあの趣味の良いキメラの主、というわけですか。ネッテさんは返していただきますよ」
 零次が明らかな敵意を向けて男に言い放ち、刀を抜こうとする――
 だが、仁奈が一歩前へ出て手を伸ばし、それを遮った。
「ちょっと待って欲しい。あいつに聞きたいことがある。‥‥なんであんな――触手キメラを作ったん? や、別に思う処はあらへんねんけど、ちょい気になってなー」
 すると男はニコリと微笑んだ。
「まずは自己紹介をしよう。ああ、君達はしなくて構わない。僕はビンセント、強化人間だよ。ああいったキメラを作ったわけは――」
 傭兵達と職員は息を呑む。
「ごく単純、触手に蹂躙される女体を眺めるのが好きだから」
「っ!? 黙りなさいこの変態‥‥!!」
 ロッテは即座に、あんなキメラを作るのは変態だと断言。
「まさかネッテさんを‥‥?」
 零次は少しやつれたネッテの顔に視線を向けた。
 ――ヘルメットが外され、髪はやや乱れているが‥‥宇宙服を脱がされたような形跡はない。一応。
 そして刀を抜き、敵意を殺気へ変質させる。
「彼女には何もしていないよ? 話し相手になってもらっていただけさ」
 ビンセントと名乗った男はネッテに近づき、彼女の顎を撫でる。
「ネッテちゃんに近づかんといてや!」
 仁奈が叫び、手足の爪を向ける。
「とにかく‥‥ネッテさんを‥‥返して貰いますよぉっ。私が‥‥援護しますから‥‥倒しちゃってくださぃー!」
 うんしょと、小鳥が武骨なガトリング砲を構える。
 ビンセントの前に大量の触手キメラが出現。交戦開始。

 ***

 仁奈とパステルナークは先ほどまでの通路と同じく先頭に立ってキメラを排除。
 開いた道へロッテと零次が飛び込み、ビンセントへ攻撃を加える。――初撃の爪と刀は、両手の手術用メス、計十本で受け止められた。
 小鳥は遊撃として弾幕を張り、仲間を援護。職員――ネッテの上司も援護に専念する。

 傭兵達は善戦した。‥‥だがしかし、触手キメラの圧倒的物量に押され、ロッテ、小鳥、仁奈、パステルナークはネッテと同様、捕えられてしまう。

 ***

 触手にぎっちりと拘束された傭兵達‥‥。
「いやぁ‥‥いやですぅ‥‥離してくださいぃ‥‥ひゃ! んあ! にゃあああ!?」
 小鳥の無垢な身体をぬらぬらした触手が這い回る。

「あぁぁ‥‥でもうちはネッテちゃんを助けんと‥‥ひっ!? そ、そんな処まで‥‥!? ひあぁぁぁんっ!!」
 触手の動きに翻弄され、いつしか身を委ねる仁奈。

「そ、そんなに擦っちゃ‥‥だめ! らめ! らめぇぇぇ!」
 未知の快楽に、パステルナークは半ばパニックとなる。

「こ、この位どうってこと‥‥はぁ、くぅ‥‥や、やめなさい! 離して! 離してぇぇぇ!!」
 あろうことか、一番乱れているのはロッテ。気丈な振る舞いは虚しくも崩れ、触手のされるがままとなる。

「フフフ、絶景だね」
 ビンセントは腕を組み、嬉々とした表情で乙女達が触手に蹂躙される様を眺める。
 だが――
「あの‥‥」
「何だい?」
「気持ちは解らなくもないですけどね――」
「がはぁ!?」
 ビンセントは急に吐血。‥‥彼の腹からは、刀の剣先が突き出ていた。
「俺達のことを忘れてもらっては困ります」
 背後には刀の柄を握った零次の姿。続いてネッテの上司が連続で銃撃。
 ビンセントは女性陣を触手で弄ることに集中するあまり、男性2名の存在を頭から消し去っていた。
 強化人間はばたりと床に倒れ伏す。
「随分あっけないですね」
「なに‥‥本望さ‥‥」
「では、さようなら」
 ぐさり。
 零次がビンセントの胸に刀を突き立て、終了。女性陣を解放した後に触手キメラを掃討した。

●帰還
「動けますか? 抱えた方が良いでしょうか?」
 床にへたり込んでいるネッテを気遣う零次。
「あ、大丈夫です。すみません、ありがとうございます」
 ネッテは零次の手を借りて立ち上がった。
「‥‥全く‥‥心配をかけさせて‥‥」
 ロッテは優しくネッテの頬に触れる。
「大丈夫だった? もう安心だよっ」
 続いてパステルナークが声をかけた。
「あなたは?」と尋ねられると「崑崙で合流した傭兵だよっ」と答える。
「わざわざすみません。私なんかの為に‥‥」
 ネッテは恐縮。パステルナークは「気にしないで♪」と笑った。
「ああそうそう、記憶媒体も回収しておきませんと」
 零次がネッテのヘルメットと当初の目的の物を回収し、一行は最深部を脱出した。

 ***

 元来た通路を戻り、プラントを出る。その時。
「きゃっ!?」
 ネッテの悲鳴が上がる。手を繋いでいた小鳥や、今度こそと護衛に付く零次らが何事かと目をやる。
 ‥‥何の事は無い、仁奈がネッテのぷりぷりとしたお尻にタッチしたのだ。
「だって素敵やってん♪」

 外でも大型触手キメラの掃討は殆ど済んでいた。
 傭兵達とネッテ、上司が小型艇に搭乗し、クレーターを離脱した後、KV中隊は一斉にプラントへ攻撃、完全に破壊。
 一行は帰路へ着くのだった‥‥。