タイトル:【崩月】ネッテの厄・前マスター:とりる

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 普通
参加人数: 7 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/07/05 06:44

●オープニング本文


 月面基地『崑崙』――。
 日々成長しているこの基地には、軍人や作業員の他、ULT職員も駐留している。
「撃墜され、月面で救助待ちのKVパイロットがいるらしい。UPC軍所属だ」
「‥‥? それがどうかしたんですか?」
 上司の言葉に、クラリネッテ・櫻野は小首をかしげる。
 彼女はULTの研究職員。丸いメガネに二つの三つ編みおさげの少女である。
 どう見ても中学生くらいの幼い容姿。しかしこれでも十九歳。
 二十歳に満たない若輩ではあるものの、既に優秀な研究者、才女だ。
「うむ。それなんだが‥‥本部に依頼を出そうと思っている」
 クラリネッテ――愛称『ネッテ』を見て、上司は言う。ネッテは黙って耳を傾けた。
「UPC軍は相変わらず手が足りないようでね‥‥パイロットの救助は傭兵に依頼する」
(‥‥?)
 ネッテの頭上にクエスチョンマークが浮かぶ。
 そのくらいのことは日常茶飯事だ。わざわざ上司が自分に伝えることではないと思うのだが‥‥。
「不思議そうな顔だな。無理もない。‥‥実はKVパイロットが落着した地点‥‥そこには投下されたバグア製構造物が存在するのだよ」
「バグア製構造物‥‥キメラプラントですか?」
「恐らくは。普段ならばそのような危険物は発見次第軍が爆撃で破壊してしまうのだが、付近にパイロットがいるため、それは不可能」
 上司は少し含み笑いをする。
「もしかして、依頼にかこつけてキメラプラントの調査をするつもりですか?」
 ネッテは上司の目を見て、問うた。
「その通り。片端から破壊されてしまう投下型キメラプラントを調べる良い機会ということだ。そこで、ULTから調査隊を派遣したい」
「‥‥!? 行きます行きます! 私に行かせてください!」
 ネッテは手を挙げて、ぴょんぴょんと飛び跳ねた。
 制服の上からでもはっきりと判る豊満な二つの膨らみが低重力下でぽよんと揺れる。
「‥‥」
 上司はその様子に視線をずらす。本人は気付いていないがネッテは部署内で「スタイルが良い」と話題になっていた。
 さて、話を戻そう。彼女が飛び跳ねたのには理由があった。
 彼女は地上で勤務していたころから主にキメラプラントの調査・研究を行っている。
 ――大人しい顔のわりに研究のこととなると一直線。まあ逆に、興味の無いことに対しては消極的だが。
「では決まりだ。‥‥バグア製構造物は付近にパイロットが存在しても何の反応もないことから機能は失われていると思われる」
 ごほんと咳払いしたのち、上司はネッテに状況を説明。
「しかし君を一人で行かせるわけにはいかん。もう何人か募ろう」
 というわけで、ネッテは先輩の職員たちと共にキメラプラントと推測されるバグア製構造物の調査へ向かうこととなった。

●参加者一覧

ロッテ・ヴァステル(ga0066
22歳・♀・PN
幸臼・小鳥(ga0067
12歳・♀・JG
相沢 仁奈(ga0099
18歳・♀・PN
終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
ヨハン・クルーゲ(gc3635
22歳・♂・ER
立花 零次(gc6227
20歳・♂・AA
入間 来栖(gc8854
13歳・♀・ER

●リプレイ本文

●救助隊発進!
 撃墜されたUPC軍KVパイロットを救助する為、及びそのコクピットブロックの落着地点付近に存在するバグア製構造物の調査を行う為。
 月面基地『崑崙』から依頼を受けた傭兵の搭乗する7機のKVと、ULT職員の搭乗する小型艇が発進。

 ロッテ・ヴァステル(ga0066)の機体はスレイヤー(Sp)『La mer bleue』。
「キメラプラント、ね‥‥此のまま放置する訳にもいかないし、パイロット達も無事に救助して‥‥確りと調査を行わなければ」
 彼女の依頼に対する意気込みは十分のようである。
(でも何故かしら‥‥此の嫌な胸騒ぎは‥‥?)
 発育のよい豊満な肉体、更にスポーツ――特に水泳によって引き締まったボディラインの浮かぶパイロットスーツ姿。
 その上からでもはっきりと確認できる、ふくよかな胸にそっと手を当てるロッテ。
 ――想定外の何かが、起こるかもしれない。言い知れぬ不安に駆られる。
「‥‥ダメね、こんな事では」
 ぶんぶんと首を振り、不安を振り払った。今は目の前の依頼に当たるのみ。

 幸臼・小鳥(ga0067)の機体はニェーバ。
「現地まで何事もないと‥‥いいのですけど‥‥そうはいかないですよねぇ」
 ロッテと同じく、小鳥も何やら嫌な予感がしていた。
 大規模作戦は一応の幕を閉じたが、月面は未だ混沌としている‥‥何が出てくるか判らない。

 相沢 仁奈(ga0099)の機体はスフィーダ『ドミニオン』。
「宇宙じゃヘタに這い出すコトもできへんやろし、きっちり救助してやらんとねぇ」
 宇宙空間は人類、いや、生物の生存を許さない過酷な場所。ただし宇宙キメラなど特殊なものを除くが。
 そこに一人取り残されているUPC軍パイロットの気持ちを考えれれば一刻も早く救助すべきだろう。
「せやけど‥‥バグアの構造物の調査かー‥‥なーんや、面白いコトになりそな気がすんねぇ♪」
 仁奈はロッテや小鳥と違って、わくわくしているといった感じ。
 待ち受ける未知の領域に‥‥着用したぴっちりなパイロットスーツにはっきりと浮かぶ、ロッテともまた違った肉付きの良いグラマーな肉体をくねらせる。

 終夜・無月(ga3084)の機体はミカガミB型『白皇 月牙極式』。
「櫻野‥‥ああ、彼女の従妹ですか‥‥。私は終夜・無月‥‥。宜しく御願いします‥‥」
 小型艇に搭乗しているULT職員のクラリネッテ・櫻野(愛称ネッテ)へ通信。
 無月はネッテの従姉であるULTオペレーターと顔見知りであった。

 ヨハン・クルーゲ(gc3635)の機体はドレイク『silberner Drachen』。
(救出に託けてバグア構造物の調査まで行おうとは‥‥なかなか強かな考えをお持ちの方も居るものですね)
 知的な容貌かつ品のある雰囲気を纏う青年はそのように思う。
 UPC軍的には『崑崙』の安全が最優先の為、月面に投下されるキメラプラントの類は即時、爆撃で潰されてしまう。
 という訳で今回のような機会は滅多に無いのだ。研究員が鼻息を荒くするのも仕方がない。

 立花 零次(gc6227)の機体はタマモ『荼枳尼』。
(行き先、調査対象はキメラの巣窟かもしれない。それなのにネッテさんは何やらワクワクしておられたような?)
 出発前に軽く挨拶を交わした三つ編みおさげ丸メガネ少女‥‥ネッテの心躍ったようなキラキラの表情を思い浮かべる。
 下手をすれば敵陣に飛び込む事になるかもしれないが、自分にできるのは彼女らを守る事だけだ、と淡泊に考える。

 入間 来栖(gc8854)の機体は幻龍『Cya』。
(何か‥‥わかると良いんですけれど‥‥)
 キメラ‥‥バグアとは何か。何故『敵』なのか? をもっと理解する必要があると小さな少女は考える。
 ――UPC軍にとって、バグアとは『侵略者』であり、『倒すべき敵』であり、『悪』である。
 もちろんこれは軍の考えであって、個人の考えとはまた相違があるかもしれないが。
「急ぎましょうっ!」
 早くパイロットを救助せねば‥‥。そのような想いを胸に秘め、来栖は機体を加速させた。

●VS野良無人HW+宇宙キメラ
「周辺警戒。‥‥っても、不意に攻撃された時に小型艇が巻き込まれんよう、適度に距離は取らんとね」
 仁奈機は小型艇の傍で警戒に当たる。
「ウチらは側面の警戒やね、ロッテさん」
 ロッテ機、小鳥機と密接に連携。ちなみに月面なので常時人型形態での移動となる。

「すぐ行きます、もうちょっとだけ辛抱して下さいね」
 来栖は救助待ちの、UPC軍のKVパイロットへ通信。‥‥「了解」と、ハスキーで色っぽい女性の声が返って来た。
 てっきり男性だとばかり思っていた来栖はびっくり! 人材不足もあり、UPC軍には女性パイロットも多い。
 早急に救助せねば‥‥! 来栖は可愛らしい唇をきゅっと結んだ。
 そのとき――警告音。敵襲である。
「敵影を確認。敵種別は無人機と思われるHW、宇宙キメラ二種、砲撃型と小型ですっ。‥‥ナンバリング完了っ。データリンク構築開始‥‥!」
 ほどなく各機とのデータリンクを構築完了。
「全力で護衛しますっ!」
 結界輪を常時起動。死傷者0を最優先とする。
「ヨハンさん、頼りにさせてもらいますねっ!」
 来栖にとってヨハンは同じ小隊に所属する先輩であり、信頼のおける人物である。
「こちらこそ、そちらの管制を頼りにしています」
 とのヨハンからの返答に「ろじゃーですっ!」と、元気に再度返す。

「折角の月だというのに、出迎えが兎ではなくHWや宇宙キメラとは‥‥」
 簡易ブーストを起動。零次機はやれやれと思いながら、続いて兵装を選択。機体に突撃砲を構えさせる。

「この辺の敵は掃討しておかないとね‥‥!!」
 わらわらと寄ってくる快速の小型キメラを突撃砲で砲撃し、迎撃するロッテ機。
「小型艇には‥‥近寄らせませんよぉ!」
 小鳥機は突撃砲と機関砲で弾幕を展開。
「その通り。通す訳にはいかんなぁ!」
 突撃砲で砲撃しつつ、肉薄してくる敵は機拳で殴り飛ばす仁奈機。
 同小隊の3機は巧みに連携し、敵を撃破してゆく。

「敵機確認‥‥Boostによる戦闘機動を開始‥‥」
 無月機は生身での戦闘を意識し、主に機拳による近接格闘戦にて小型キメラを屠る。

「ターゲット確認。排除開始します」
 ヨハン機は自機のレーダーと、来栖機とのデータリンクを頼りに狙撃。レーザーにて敵を撃ち貫いていく。
「種子島弐式――シュート」
 距離が縮まれば兵装を切り替え。高出力レーザー砲で確実に敵を排除した。

 来栖機は小型艇の傍で護衛を行う。小型艇を中心に、自機の高感度・偵察用カメラと各機からの情報を併用し、全方位を警戒。
(早急なパイロット発見、救助をっ! そのために敵を排除しなければ‥‥!)
 各機との情報共有を密にし、砲撃型キメラのプロトンビームを特に警戒。
(小型艇が打たれたら、ひとたまりもないっ。油断はできません‥‥!」
 そのとき、カメラが砲撃型キメラの変形を捉えた。‥‥砲撃体勢。モニターのウィンドウにズーム映像が表示され、警告音が鳴る。
 来栖は即座に反応。白金蜃気楼の幻霧を展開し、小型艇を包み込んだ。
「やらせはしません‥‥!」
 複数のプロトンビームが小型艇を狙って飛ぶ――。

「そう簡単に当てさせる訳には、いきませんね」
 複数の光条が過ぎ去ると――小型艇の前面には肩を突き出した体勢の零次機の姿。肩部の装甲が赤熱している。
 幻霧によりプロトンビームの殆どは逸れたが、一発だけ直撃コースのものがあった。
 そこに零次機が割り込んで、超伝導RAを使用した次第。
「では、片付けますか」
 盾と刀を構え、マニューバAにて斬り込む。

●UPC軍KVパイロット救助
 周辺の敵を掃討しつつ、KVのコクピットブロックが落着した現場、月面の小型クレーターに到着した一行。

「周囲に残敵無し‥‥取り敢えず、大丈夫かしら‥‥?」
「こちらも反応はないですねぇ‥‥たぶんもう大丈夫かとぉ‥‥」
「でも油断はできんからね。むしろ、今が一番無防備やし」
 現在、パイロットの救助作業中。幸い、パイロットには傷一つなく、多少衰弱している程度だった。
 ロッテ機、小鳥機、仁奈機は零次機を加えた4機で小型艇で四方に展開し、警戒。他3機はやや広めに展開中。

 ***

「パイロットを救助‥‥小型艇への収容を確認」
 無月機より各機へ通信。

 これより、調査班(傭兵4名、研究職員2名)はバグア製構造物の調査に移る。
 KVに搭乗していたロッテ、小鳥、仁奈、零次は降機。白兵戦の準備を整える。

「私は引き続き小型艇の護衛に就きます。お気をつけて」
 ヨハンから激励の通信。
「同じくですっ!」
 来栖機も、調査班の安否に気を配りつつ、引き続き小型艇を護衛。

 ***

 十数分後、調査班は無事構造物内部への侵入を果たした。現在は入り口付近を調査中。
 外壁を調査した所、手動の扉――入口を発見した。罠臭いが‥‥一応外壁に銃撃をしてみた所、FFの展開は確認されず。
 やはり機能は停止中らしい。さて、中に入ってみなければ調査はできない。危険は覚悟の上。
「熱心なのは良いですが、夢中になって転んだりしないようお気を付け下さいね」
 零次は、身体にぴったりフィットするパイロットスーツを身に纏ったネッテの傍に付いてエスコート。
「大丈夫ですよ、地上と違って低重力ですし。それより早く進みましょう!」
「ですからあまり急かずに‥‥」
 早くも、大人しそうな顔に似合わない好奇心の旺盛さを発揮しようとするネッテを宥めつつ、一行は内部の調査を開始した――。

●キメラプラント(?)調査
 バグア製構造物内部――。
 入り口付近の調査が終了し、危険は無いと判断。
「さて行こか、ネッテちゃん達♪」
 ネッテと同じく、るんるんとした、好奇心の色が窺える仁奈。
 しかし表情を引き締め。
「ウチとロッテさんが先行して安全確保に回るね。何があるか分からんから、兎に角慎重にいかんと」
「そうね。何処から何が出てくるか解らないから‥‥十二分に注意しないと」
「ですねぇ‥‥キメラプラントかもしれない訳ですしぃ‥‥」
 ロッテと小鳥が答える。
(いざと言う時には盾になれるようにしておきましょうかね)
「我々傭兵が先行します。複雑な機械等がある場合はネッテさんの助言を頂きながら、という事になるかと思いますが」
 そんな訳で、傭兵を先頭にして内部の探索を開始。
 ‥‥‥‥内部は真っ暗だった。ライトを頼りにして一行は進んでゆく。
 暫く進むと、
「ちょっと皆さんストップですぅ。これはなんだと思いますかぁ?」
 小鳥が何か発見したらしい。皆がライトで照らすと――広い通路の両壁面をびっしりと覆う、無数の球体。
 小鳥位の身長ならば、丸まればすっぽり入れてしまいそうな大きさ。
 言われてネッテともう一人の職員が慎重に調べると‥‥ネッテが端末らしき装置を発見。
「これは生きてますね」
「では櫻野君、調査を」
 ネッテの言葉に、上司の男性が指示を出す。
「わかりました!」
 数分後‥‥。
「やはり異星語で記述されていますね。この場での解読は不可能です。持ち帰って精査しなければ」
「‥‥ふむ。では記録を」
「はい!」
 上司が記憶媒体(特別な物で非常に高価)をネッテに差し出し、ネッテは受け取って端末に無理矢理接続した。
 記録には時間が掛かる。ネッテは暇潰しに端末周辺をきょろきょろと観察。
 すると――赤くて丸いボタンを発見。いかにも押してくれ! と言わんばかりの。
(‥‥)
 キメラプラントの調査に関しては好奇心旺盛なネッテがこれを押さない筈は‥‥無かった。
 嬉々とした表情でぽちっとな。
 次の瞬間、それまで暗かった室内が赤い照明に照らされる。それと共に警告音。――空気が、ある?
 両側面、無数の球体が一斉に解放。そこから‥‥大量の触手型キメラが出現した!

 ***

 構造物外部――。
 こちらでも異変が起きていた。構造物から‥‥大量の大型触手キメラが放出され始めたのだ。

 無月機はすぐさま反応。待機状態からBoost機動へ。小型艇に迫るキメラを突撃砲で迎撃する。
 ヨハン機も同様に動く。小型艇に張り付き、練機剣にてキメラを撃破。‥‥幸い、強くはないようだ。
 しかし――
「なんて数だ。中の皆さんは‥‥?」
 宇宙服には通信機が付いており、極近距離ならば通信可能。
 トランシーバーを宇宙服に接続すれば、一応内部と外部の通信が可能だったのだが‥‥。
「つ、通信不能ですっ! 急にジャミングが‥‥!」
「では、【情報伝達】を」
「ろ、ろじゃーですっ!」
 ヨハンは迎撃で手一杯。故に来栖が【情報伝達】で緊急事態を内部へ伝えた。

 ***

 内部――。
 ある意味、外部よりも大変な事になっていた。

「‥‥っ。何を考えて、こんなキメラを‥‥! や、やめなさい! んあぁっ!」
「ひゃ‥‥ちょ、何ですか‥‥これぇ!?」
「にゅるにゅるするわぁ〜宇宙にもこんなキメラがおるんやねぇ‥‥はぁぁぁ〜♪」
「だ、だめぇ、そんなとこ‥‥ひゃあああ」
 ロッテ、小鳥、仁奈、そしてネッテの4人が触手に捕えられていた。
 ‥‥触手の塊。宇宙触手キメラと言った所だろうか。
 触手からはぬめぬめの粘液が分泌されている。宇宙服の上からでも多大な刺激を女性陣に与えてきた。
 その時。斬撃音と銃撃音。‥‥彼女らを捕えていた触手が体液を散らす。
「全く‥‥」
 刀を構えた零次と、拳銃を構えたネッテの上司。
「外にもキメラが出現したようです。脱出しましょう」
 内部の触手キメラも急激に増加中。調査班は即座に入口へ引き返した。

「はぅぅ‥‥こんなキメラがいるなんて‥‥聞いてないですぅ」
 小鳥は涙目になりながら殿を務め、後方の触手群へ弓を構えた。
「一気に射る事も‥‥出来るのですよぉ! そこ‥‥ですぅ!」
【死点射】を使用。一度に何本もの矢を射る。

 進行方向からも触手群が襲い掛かって来た。それらはロッテ、仁奈、零次が近接戦で排除。ネッテと上司は援護。

 ***

 調査班はなんとかキメラプラントから脱出。手早くKVに搭乗し、起動。他3機と合流。
 上司も小型艇に搭乗。発進準備を整える。
 しかし‥‥そこで上司はある事に気が付いた。ネッテの姿が見えない。傭兵へ通信。
「櫻野君が居ない。そちらには居るか?」
 モニターに映る傭兵達は皆、首を横に振る。
「‥‥まさかあの後、一人で戻ったというのか‥‥バカな‥‥!」
「今からネッテさんの救出へ戻ります」
 零次からの通信。
「ダメだ」
 だが上司はそれを却下。
「何故です?」
「外を見れば解るだろう!!」
 キメラプラント周辺は既に触手キメラで溢れ返っていた。
 迎撃しているが、このままでは全員、呑み込まれてしまう。
「キメラの数、更に増大ですっ!」
 緊迫感の篭った来栖の報告。‥‥上司は決断を下す。
「我々はこの場を離脱、『崑崙』へ帰投する」
「そんな‥‥!」
「態勢を立て直し、戦力を整え、再び櫻野君の救出へ戻る‥‥!!」