タイトル:智覇の冒険8マスター:とりる

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/04/30 23:59

●オープニング本文


 ラストホープ某所――。
 ここは智覇(gz0258)の主治医を務めている女医が所有する診療所である。
 しかしながら女医は普段、智覇と共に世界各地を飛び回っているため、大抵は休診となっている。
「よし、終わり。まったく問題は無いわ」
 メガネをかけ、白衣を着た知的な雰囲気の女性――二十代後半から三十代前半と思われる美人女医――が言った。
「‥‥」
 一糸まとわぬ姿で清潔なベッドに横になっていた智覇が目をぱちりと開ける。
「筋肉、骨格、内臓、脳‥‥極めて正常。そして――」
 主治医は智覇の‥‥一点の曇りもない真白な肌‥‥綺麗なヘソの付近にすーっと指を這わせる。
「‥‥っ」
 敏感な部分に触れられて、背中をびくりとさせる智覇。
「傷跡一つない肌」
 いつも最前線に突撃し、確実に戦果を挙げた上で傷だらけになって帰ってくる智覇であったが‥‥主治医による入念なケアのおかげで、このように綺麗な肉体を保っている。
(年頃の女の子だものね‥‥どこへ出しても恥ずかしくないようにしないと)
 主治医は智覇の顔を見つめて、微笑んだ。
「もう起きてもいいわよ」
「‥‥いつもありがとうございます」
 智覇は上半身を起こし、主治医に頭を下げた。
「どういたしまして」
 返事を聞くと、智覇はベッドから立ち上がり、近くのカゴに畳んで置いてあるボディースーツ‥‥の上にある下着を手に取り、長い脚を通す。
「そういえば、あなた」
 主治医が問いかける。
「なんですか?」
「宇宙へは上がらないの?」
「‥‥」
 ショーツに手をかけたまま、動きを止める智覇。
「いずれ‥‥とは思いますが‥‥今はまだ‥‥」
 言いながら智覇はショーツから手を離す。パチンとゴムが柔肌を打つ音。
「行きたくありません」
「何故?」
「宇宙には、お風呂が無いですから」
(それが理由!?)
 しかしまあ‥‥と主治医は思う。彼女の気持ちは理解できた。智覇の一番の楽しみは入浴なのだ。
 日々戦いに明け暮れる少女の、戦いとは関係のない楽しみ。それは大事にしてあげたい。
「あ、でも」
「‥‥?」
「宇宙要塞カンパネラには重力ブロックがあるって聞いたわよ? きっとお風呂もあるんじゃないかしら」
「じゃあ行きましょう」
(即答!?)
 座っていた椅子から前のめりに倒れそうになる主治医。
「いえ、確かにいずれは‥‥と考えてはいたんです。宇宙用機体の搭乗権を購入し、チューンも依頼してありますから」
「それならいいんだけど。ちゃんと考えていたのね」
「出発の準備を。‥‥主戦場は宇宙へと移りつつあります。来たるべき実戦に備え、宇宙空間での戦闘機動の訓練をしておきたいです」
 常に戦場の最前線に立つ智覇である。全体の戦況、情勢などは把握している。
「わかったわ‥‥いきなりね。話を振ったのはこっちだけど」
 ふう、と息を吐く主治医。
「それにしても‥‥」
「今度はなんですか?」
「あなた、いつまでスポーツブラなの? 戦闘時はともかく、今日みたいな休暇もでしょ?」
 智覇が手にし、着けようとしている白と黒のボーダー柄のそれを見て、主治医が言った。
「このほうが、動きやすいですから」

 ***

 数日後――。
 宇宙要塞カンパネラ。KVハンガー。
 ガントリーに固定されている人型形態の機体を見上げる智覇と主治医。
 ――灰と黒に塗装された、G−100『ハヤテ』。
「注文通りにチューンしておきましたよ」
 機体の傍に佇む整備員が言った。
「‥‥よい仕事です。感謝を」
 近くの端末で機体のデータをチェックし終えた智覇が頭を下げる。
 確かに、注文通りの性能となっている。しかし――。
「すぐに動かせますか? 機動試験を行いたいのですが」
 実際に動かしてみなければわからない。
「ええ、10分もあれば」
「では訓練の名目で出撃申請を。一応、実戦装備でお願いします」
 智覇の言葉に整備員は頷き、速やかに作業へ取りかかった。
 機械音と共にガントリーアームが動き、予め用意された兵装を機体に装着してゆく。
「実戦装備って‥‥必要あるの? カンパネラ周辺の敵は掃討されたはずじゃ‥‥」
「念のため、です」
 首をかしげる主治医に、真面目な顔で智覇が答えた。

 ***

 整備、および出撃準備が完了。
 美しいボディラインがはっきりと浮かぶパイロットスーツを着用した智覇がヘルメットを被り、機体のコクピットに滑り込んだ。
 着座と同時にシステムチェックを開始。
「チェック終了。システムオールグリーン。G−100『ハヤテ』、起動」
 全天周囲モニターにKVハンガーが映し出される。
 戦闘機形態の灰と黒のハヤテ――智覇機が発進位置まで運ばれていく。
「発進準備、OKです。コントロールをそちらへ渡します」
 カンパネラのオペレーターから通信。
「了解。‥‥智覇、出撃します」
 疾風が漆黒の宇宙空間へ躍り出る。

 ***

 宇宙要塞カンパネラ周辺宙域――。
 一通りの機動試験が終了。宇宙空間での機動には大分慣れた。
(やはり‥‥良い)
 地上とは勝手は違うが、これまでに乗っていた機体と同等かそれ以上の手応えがあった。
 機動力と運動性に優れる機体は自分好みだ‥‥と智覇は思う。
 そのとき――警告音。
「‥‥!」
 前方に敵性反応。智覇は即座にカメラをズーム。モニターのウィンドウに遠方の様子が拡大表示される。
 本体の大きさに対して大きな赤く発光するこぶを二つ持つグロテスクな物体、そして古代生物のような長い尾を持った物体。
 生物? いや――宇宙空間で生存している時点でキメラとしか思えない。そしてこれらは資料で見たことがあった。
「‥‥智覇機より管制室。状況は確認出来ますか?」
「確認しました。すぐに後退してください」
 管制室のオペレーターより指示。だが‥‥。
「私はここで足止めをします」
「ちょっと待って! 単機で足止めなんて‥‥!」
 主治医が通信に割り込んできた。
「あなたは、私の無茶無謀を何度も見てきたはずです」
「それは地上での話! もし宇宙で撃墜されたら――」
 生存の確率は地上よりもがくりと落ちる。KVコクピットシステム――脱出装置があるとはいえ。
「それでもやらねばなりません。カンパネラに敵を近づけるわけにはいかない」
 確かな意志が篭った言葉。
 ‥‥主治医は思う。あの子はそういう子だ。それはわかっている。
 しかし、ここは宇宙だ。少しの油断が即、死に繋がる。何が起こってもおかしくは無い。
 主治医は両手を握って胸に手を当てる。
「‥‥迎撃部隊、あるいは即応可能な傭兵の手配、頼みました」
「わかったわ‥‥。オペレーターさん、お願いします。邪魔をしてすみません」
「いえ。既に手配済みです。間もなく傭兵部隊がそちらへ向かいます。足止め、よろしくお願いします」
「了解。智覇機、迎撃行動に入ります。――CRブースター、点火」

●参加者一覧

白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
クラーク・エアハルト(ga4961
31歳・♂・JG
香坂・光(ga8414
14歳・♀・DF
乾 幸香(ga8460
22歳・♀・AA
瑞姫・イェーガー(ga9347
23歳・♀・AA
イスル・イェーガー(gb0925
21歳・♂・JG
レベッカ・マーエン(gb4204
15歳・♀・ER
来栖・繭華(gc0021
11歳・♀・SF

●リプレイ本文

●救援
 砲撃型キメラのプロトンビームを避けつつ、突破を図る小型キメラに対してレーザーガトリングと十二式高性能長距離バルカンで弾幕を展開する、智覇(gz0258)の駆る灰と黒のハヤテ。
 しかし、いかんせん敵の数が多く、そろそろ足止めをするのにも限界が見え始めていた‥‥。
 だが――智覇は諦めない。後方の宇宙要塞カンパネラには民間人もいる。宇宙キメラを通すわけにはいかない。それに、きっともうすぐ――
 そのとき、智覇機のレーダーに反応。後方から接近してくる機影を確認。IFF(敵味方識別装置)は友軍を示している。ワームではない。
 ‥‥八機のKV、傭兵部隊だった。援軍が到着したのだ。

 白鐘剣一郎(ga0184)の機体はシュテルン・G『流星皇』。
「援軍参上だ。久し振りだな、智覇」

 クラーク・エアハルト(ga4961)の機体はクルーエル。
「作戦宙域に到着。作戦行動を開始します」

 香坂・光(ga8414)の機体は宇宙用フレーム装備のペインブラッド改。
「はいはーい、援軍到着なのだ♪ 智覇さん宇宙でもよろしく♪」

 乾 幸香(ga8460)の機体はハヤテ『アエーマ』。
「智覇さん、孤軍奮闘、お疲れ様です。一刻も早く、と駆け付けました。これより加勢します。全力を尽くしますね」

 瑞姫・イェーガー(ga9347)の機体はピュアホワイト『シャドークイーン』。
(母親になってみて私の遣るべき事に気がついた。新しい私の戦い方をしてみせる)

 イスル・イェーガー(gb0925)の機体は幻龍『ドラケン』。
(どうして無茶をするのかな、傭兵の女の子って。いや、それが当たり前なのか。 ‥‥って、台詞が年寄り臭かったかも。父親になったせい‥‥かな)

 レベッカ・マーエン(gb4204)の機体はコロナ。
「助けに来たのダー。さて、小型・高機動機体のコロナ、なかなかいい機体だな。さあ、お前の力見せてもらうぞ」

 来栖・繭華(gc0021)の機体はピュアホワイトXmas『アルテミス』。
「智覇お姉ちゃん、援軍に来ましたの」
(にゅ‥‥またお姉ちゃん一人で‥‥)
 繭華はカメラを智覇機に向け、拡大しウィンドウに表示する。

 智覇機と合流した傭兵部隊は大分前へ出ていた小型宇宙キメラ群を押し返し、小型キメラ対応、砲撃型キメラ対応に分かれて戦闘を開始した。

●VS小型キメラ
 小型宇宙キメラの対応を担当する、智覇機を含めたKV5機――。

 繭華機――
 彼女はさっそく複合ESM『ロータス・クイーン』で索敵を開始。
「小型キメラは全部で二十体。数が多いですの。注意してくださいですの」
 小型キメラ対応班各機から「了解」との通信。繭華はそののちに、データリンクを構築する。
「うにゅ、戦況情報が集まりましたので、みなさんに送りますの」
 カメラで捉えたデータを、各機へ逐一転送。
「‥‥!」
 敵の接近を許した場合には奉天製のアサルトライフルで牽制。
 ――そこに智覇機が接近し、一刀の元に斬り捨てた。
「大丈夫ですか? 繭華さん」
「ありがとうございますの、智覇お姉ちゃん」
 そして繭華は、後方の砲撃型キメラも警戒。
「プロトンビーム発射体勢のキメラさんがいますの、射線上から退避してくださいですの」
 砲撃の兆候を感知すれば、味方に注意を促した。

 剣一郎機――
「地上と条件が違うとは言え、宇宙での野良キメラの発生率はいささか高すぎだな」
 苦笑しつつ、剣一郎はアサルトライフルと十二式高性能長距離バルカンを適宜切り替え、トリガーを引いて弾幕を展開し、小型キメラを片っ端から潰した。
「新しい相棒はハヤテか。どうだ、乗ってみての感触は?」
 智覇機へ通信。「軽い機体です。私の性に合っています」との返答。
「それは重畳。なら初陣をしっかりと勝利で飾ってやらないとな」
 言いながら剣一郎は機体を人型形態に変形。接近していた小型キメラ数体を機拳『シルバーブレット』による連続の打撃を食らわせ、撃破。
「さすがに数が多いが‥‥敵の耐久力は低い。一気に畳ませて貰おう」
 再び機体を戦闘機形態へ変形。常にブーストを噴かしている剣一郎機は快速の小型キメラに追いすがり、機関砲の砲弾を叩き込んで肉片へ変えた。

 クラーク機――
「――さあ、怪我なく全員で帰還しましょう」
 高分子レーザーライフル『プレスリー』による射撃を開始。だが距離があるので初弾は命中せず。小型キメラは運動性も高い。
(噂だと智覇さんは結構無茶をするらしいからな‥‥カバーできることがあればカバーしよう)
 クラークは智覇機へ回線を開いた。
「こちらで援護しますよ。智覇さんも無理しないで。ハヤテは硬い機体じゃないですからね」
「援護感謝します。‥‥しかし、『当たらなければどうということはない』です。いざというときにはAECもあります。ご配慮ありがとうございます」
 智覇からはそのような返答。
(わりと余裕があるのかな? 他人の心配の前に、自分がまず宇宙になれないと。いつもの装甲服からハードシェルスーツに着替えたけど‥‥うん宇宙だと重みがないな)
「うーん、なんというか、重力を感じられないのは変な感じがします」
(人間、やっぱり重力感じてないといけないかも)
 などと考えつつ、射撃を行う。今度は命中。レーザーに貫かれ、小型キメラは爆散した。
「せっかくの新型です。その力、もっと見せてもらいましょう」
 『プレスリー』を連射。リロードを挟みつつ、遠方の小型キメラに牽制を行う。
(最近は宇宙が戦場になることが多いですからね。慣れておきませんとね。敵は宇宙キメラ‥‥慣らしとしては‥‥最適‥‥なのかな?)
「クラークさん!」
 管制を担当する繭華より警告。小型キメラが急速接近。
「っく、姿勢制御が」
 宇宙空間での戦闘機動に戸惑いを覚えつつ、人型形態へ変形。兵装を切り替え。練機爪『レビン』で斬撃。
「消えろ!」
 小型キメラを引き裂いた。
(くそ、いつもの装甲服じゃないから着心地が‥‥)
 着心地を気にする余裕はあるようだ。

 光機――
「しかし、初めての宇宙かー。ちょっと緊張するけど頑張るのだ! ‥‥でも、このスーツはちょっと恥ずかしい」
 身体にぴったりと密着するパイロットスーツ。浮き出る自分の幼児体型に‥‥光は肩を落とす。
「まあそれはともかく! 宇宙キメラを倒すのだー!」
 宇宙用フレームを装備した機体なので性能は若干低下しているが、乗り慣れた機体のほうが安心できる。
 ふと、小型キメラが数体密集しているのを発見。光機は距離を詰める。
「纏まってたらこっちのものなのだ♪ いけ、褌の力を借りて――必殺・真雷光破!」
 人型形態に変形し、【ヴォルテックスマッシャー】を撃ち放つ。――光波と電撃により、小型キメラは消し飛んだ。
「ちゃんと近接戦だって出来るんだよ♪ 必殺の右ストレートー♪」
 生き残った小型キメラに機拳『シルバーブレット』を叩き込んで、KO。

 幸香機――
「いかに腕が立つと言っても、宇宙では勝手が違いますよ。もう少し自分を大切にして下さいね」
 智覇へ通信を送る幸香。「了解」との返答。
「さて、いきますか」
 操縦桿を握る幸香。機体を加速させた。
 強気な表情の彼女。その豊満な肢体がパイロットスーツの上からでもはっきりと確認できる。
 光とは対照的だ。智覇もそのスタイルを見れば少し落ち込むかもしれない‥‥ほどに。
「‥‥捉えた」
 それはともかく戦闘だ。
 遠距離から高速ミサイル『イースクラ』を放ち、少し距離を詰めてアサルトライフルで射撃し、仕留めていく。
「‥‥! 甘い!」
 肉薄してくる小型キメラには、即座に機体を人型形態に変形させ、ディフェンダー・プラスで叩き斬る。
 

●VS砲撃型キメラ〜敵掃討
 砲撃型キメラの対応を担当するKV3機――。
 ‥‥砲撃型キメラは後方に控えているため、こちらの3機はまず小型キメラを突破する必要があった。
 小型キメラ対応班の援護を受け、3機は突破。砲撃型キメラへの攻撃を開始する。

 瑞姫機――
「イスル、援護お願い。私は戦闘に入ったら皆を支援するクイーンとして振る舞うから」
 瑞姫機からイスル機へ通信。
「了解‥‥。ならこっちはクイーンに仕えるナイトかな‥‥? 武器は剣じゃなくてライフルだけどね」
 と、頼もしい返答が返って来た。
「野良宇宙キメラが相手とは言え、全力で行く。クイーンの力を‥‥見せつけてみせる」
 夫の力強い(?)言葉に勇気付けられた瑞姫は複合ESM『ロータス・クイーン』にて索敵を開始。
 ‥‥ほどなく敵を補足。
「砲撃型キメラ、五体を確認。二人とも、攻撃よろしく」
 イスル機とレベッカ機から「了解」との返答。
 瑞姫機は【ヴィジョンアイ】での支援も行う。

 イスル機――
「支援します、一気に行って下さい」
 隙を見て、小型キメラ対応班の支援しつつ、彼は瑞姫機を護衛する。
「‥‥とは言え、地上と宇宙とじゃ動きの自由度が違うね‥‥。でも、此方も外してばかりってわけじゃないよ」
 スナイパーライフルで砲撃型キメラを狙撃。――砲弾は命中し、敵の巨体に穴を空ける。
「‥‥っ! 動きはすごいけど‥‥無茶をする‥‥。あれは‥‥若さゆえかな‥‥?」
 智覇機の戦闘機動を見ての、イスルの感想。
「支援するよ‥‥ただし、無謀はなしの方向でお願い」
 ズームサイトに切り替え、狙いを定めトリガーを引き、狙撃。智覇機に接近していた小型キメラ一体を撃破し、智覇機を支援。
「了解。支援に感謝します」との通信が送られてきた。

 レベッカ機――
「この機体なら回避は容易なのダー」
 一定の間隔で飛んでくるプロトンビームを華麗に回避しながら、彼女は積極的に前へ出る。
「そこか。ETP発動、距離を詰めて近接戦闘を仕掛ける」
 エミオンスラスター『プロミネンス』を起動。コロナの回避性能、照準性能はかなり高い。
 敵への距離を詰め、攻撃に移る。人型形態に変形。
「プラズマリング、斬り裂くのダー」
 光輪『コロナ』にて強力な斬撃を加えたのちに、レーザーガトリングを至近距離から浴びせる。‥‥砲撃型キメラ一体を撃破。
「次の攻撃目標へ向かうのダー」
 レベッカは軽やかに機体を躍らせた。

 ***

 剣一郎機より、警戒中のピュアホワイト二機へ通信。
「周囲に敵影を認めず。繭華機、瑞姫機、そちらはどうだ?」
 繭華は「敵はもうこの宙域にはいないみたいですの」と、瑞姫は「同じく。掃討完了だね」との返答。
「ならば任務完了だな」
 そうして傭兵部隊と智覇機、合計9機のKVは、宇宙要塞カンパネラに帰投した‥‥。

●ソラのお風呂
 重力ブロック――。
 風呂場へ行く前に剣一郎が智覇に話しかけた。
「いつも怪我をしてる印象だったが、今回は問題なかったようで何よりだ。これも彼女の支えあってといったところか?」
「ええ、彼女のサポートなしでは、今の私はありません」
 と、智覇は答える。

 続いてクラーク。
「自分の機体って、好みにペイントしたり改造したりしたいですよね?」
 などと智覇に訊いてみる。
「いえ。まあ、否定はしませんが‥‥灰と黒は私のパーソナルカラーです。機体は、性能こそ強化していますが、外装はまったく弄っていません」
 智覇はそのように話した。機体に愛着はあるものの、原型を留めないような極端な改造はしない主義らしい。

 ***

 さて、いよいよお待ちかねのお風呂タイム。
 女湯――。
「宇宙でお風呂に入れるなんて思わなかったけど、結構ちゃんとしたのがあるんだねー。すっごーい♪」
 風呂場ではしゃぐ光(全裸)。身体を洗ってから、湯に浸かる。
「むー、智覇さんお肌すべすべで綺麗だねー。この綺麗さはあたしも負けそうっ」
 智覇は「そうですか?」と首をかしげた。
「にゅぅ‥‥智覇お姉ちゃん、一人で戦場に行っちゃ嫌ですの‥‥」
 一緒にお湯に入っている繭華は智覇の膝を占領中。
 智覇は「すみません」と繭華の頭を撫でた。今回は訓練中にキメラに出くわしたので、仕方が無かったのだが。
「宇宙でお風呂というのも贅沢ですね。任務成功の何よりにご褒美ですよね」
 その横で、幸香が豊満な肉体を披露しつつ、湯船に浸かっている。
「「‥‥」」
 言葉を失う光と智覇。ちなみに繭華のそれは、もはや規格外という認識らしい。

「帰ったら、また忙しくなるから‥‥あともう少し、ゆっくりしても良いよね‥‥」
「宇宙で風呂に入ることが出来るとはな」
 瑞姫とレベッカもゆったりとお湯を楽しんでいた‥‥。

 ***

 一方、男湯では――。
「宇宙を眺めながらの風呂か。ある意味かなりの贅沢だな」
 剣一郎が風呂でリラックス中。その肉体はかなり鍛え上げられている。
 クラークの姿は‥‥見えない。
 イスルは‥‥隅っこのほうでお湯に浸かっていた。
(まったく、以前の瑞姫といい、あの子といい、女の子なのに無茶ばかりしてる。‥‥随分と説教臭くなったかな、僕も。‥‥成長したのか、歳を食ったのか‥‥)
 などと、彼はのぼせるまで考えていたそうな。