タイトル:【OMG】天翔る乙女マスター:とりる

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/04/24 06:03

●オープニング本文


 月面基地――通称『崑崙』。
 度重なるバグアの妨害を受けながらも、軍と傭兵の活躍により着実に建設を進め‥‥そして。とうとう、駐在人員の派遣を迎える日がやってきた。
 ‥‥しかし。

「‥‥! 月方面、敵部隊が観測されました! その数多数‥‥母艦も出撃していると思われます!」
 オペレーターが、悲鳴に近い声を上げる。
「‥‥面倒臭ぇ、やっぱこうなんのかよ!
 ったく連中、見下してた相手が這い上がってくるのが、よっぽど気に食わないと見える」
 エクスカリバー級巡洋艦『オニキリマル』、艦長の土橋桜士郎(gz0474)は、いつも通り唯面倒臭そうに言った。
 そう、いつも通り。ここまできたら、やるべきことを為すのみだ。何が相手でも。
「まあ、何とかなんだろ。月面降下作戦は予定通り決行するぞ。
 ――邪魔な連中は蹴散らすだけだ」

 一方、バグア母艦。
「――ふ。再び強者と見えるか‥‥!」
 敵指揮官ダークミストは、人類の月面基地の完成を許したというこの事態に、むしろ笑みを浮かべていた。
「さあ、人類よ。本気で死合うぞ! 全軍前進! 月面基地を叩き潰す!」
 この状況ならば‥‥さぞかし、必死で抵抗してくるだろうな?
 ダークミストは嗤う。これまでの戦いはあくまで力試し。今こそ全力でぶつかりあう舞台は整ったのだ、と。

 人類は宇宙へさらなる一歩を刻むのか。宇宙の覇権をかけた闘いが、始まる。

 ***

 エクスカリバー級宇宙巡洋艦『オニキリマル』・戦闘指揮所。
「艦長、バグア艦三隻を捕捉しました」
 オペレーターより報告。
「来やがったな‥‥面倒臭ぇ。面倒事は勘弁なのによ‥‥仕方ねぇ、じゃあやるか。――全艦戦闘配置。僚艦に打電。スカイフォックス隊発進。後方の乙女隊にも打電しろ」
 艦長の土橋 桜士郎はいつものだらけた態度から一転、声を上げた。
「了解!」

 ***

 リギルケンタウルス級宇宙輸送艦(乙女隊母艦)・戦闘指揮所。
「艦長、『破軍星』旗艦、オニキリマルより入電です」
「要約して」
 若い女性オペレーターに指示をする、艦長の片瀬・歩美少佐。
「オニキリマル艦長、土橋少佐から片瀬艦長へディナーのお誘いです」
「‥‥。お断りして。本題は?」
「バグア艦三隻を捕捉した模様。KVの発進を要請してきています」
「わかったわ。――全艦戦闘配置! α−01部隊、および傭兵部隊全機発進! α−01部隊A・B・C小隊は敵の迎撃、D小隊は本艦の護衛に付かせなさい」
「了解しました」

 ***

 戦闘配置を知らせるアラームが鳴り響くKV格納庫――。
 そこにはずらりと漆黒の九尾の狐が並んでいた。
「わわ、いきなりこんな大きな戦闘だなんで‥‥宇宙へ上がって高価な機体があてがわてたと思ったら‥‥こういうことなの?!」
 やっぱりこき使われるってことじゃん! とか騒いでいるのは身体にぴったりフィットするパイロットスーツ姿の岩崎・智里准尉。
 彼女はα−01部隊(通称乙女隊)D小隊所属である。
「こらそこ! なにやってんの! さっさと機体に乗る! 私達の宇宙デビュー戦なんだからね! 気合入れていくよ!」
「りょ、了解!」
 同様にパイロットスーツを着用した隊長の早乙女・美咲(gz0215)中尉から怒られた智里はそそくさとKVのコクピットに滑り込んだ。
(――月面基地は絶対にやらせない!)
 美咲の瞳は、闘志で燃えていた。

●参加者一覧

ノエル・アレノア(ga0237
15歳・♂・PN
時任 絃也(ga0983
27歳・♂・FC
百瀬 香澄(ga4089
20歳・♀・PN
鈴葉・シロウ(ga4772
27歳・♂・BM
風間・夕姫(ga8525
25歳・♀・DF
米本 剛(gb0843
29歳・♂・GD
夏目 リョウ(gb2267
16歳・♂・HD
ティリア=シルフィード(gb4903
17歳・♀・PN
美具・ザム・ツバイ(gc0857
18歳・♀・GD
ドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751
18歳・♂・DF

●リプレイ本文

●天翔ける乙女
 リギルケンタウルス級宇宙輸送艦(乙女隊母艦)、格納庫。
 各自のKVに搭乗し、出撃を待つ傭兵たち――。

 ノエル・アレノア(ga0237)の機体は宇宙用フレーム装備のディアブロ改『ゼロ』。
「宇宙‥‥遂に、ここまで着ちゃったって感じだね。外を見ていると、この身体ごと吸い込まれそう」
(ん‥‥色々と興味深い部分はあるけれども、まずは依頼を達成しないと)
 顔を引き締め。
(‥‥地上とはやっぱり勝手が違うよね。でも、もう少し頑張って、ゼロ)
 機体へ搭乗する前に恋人のティリア=シルフィード(gb4903)と二人で無事に帰還すると指切りして約束したのだ。落とされるわけにはいかない。

 時任 絃也(ga0983)の機体は宇宙用フレーム装備のR−01改。
「素直に宇宙対応機体にしておけばよかったのだろうが、俺の何かがそれを良しとしなかったか」
 絃也にとってR−01改は愛着があり、思い入れの強い機体のようである。
 そう簡単に他の‥‥宇宙用の機体に乗り換える気にはならなかったのだろう。
「作戦内容は艦隊防衛‥‥。敵の艦艇を落す事が出来れば話は早いのだろうが、現状では難しいか」
 現在の戦域に情報をメインモニターに呼び出し、参照する。
 ‥‥敵母艦の周囲には多数のタロスやHWが既に展開しているようだった。
 これでは、敵母艦に取り付くのは相当手間がかかるだろう‥‥。

 百瀬 香澄(ga4089)の機体はタマモ『ミズクメ』。
(ついに宇宙まで来ちゃったか。いやはや、ここまで来ると完全にSFだよね。現実になるとも、その登場人物になるとも思ってはいなかったけど‥‥)
 香澄は自分が宇宙に居り、これからKVを駆って宇宙空間で戦闘を行うということに、まだ実感が湧かないようである。
「ま、雑談はアレを追い返してから、だな」

 鈴葉・シロウ(ga4772)の機体はニェーバ『飛熊』。
「へぇー。月面の基地は崑崙なのか。となると太公望であるところの飛熊よ、縁があるものだね。HAHAHA」
 月面基地の名称に反応したシロウ。古代中国の伝説繋がりだろうか。
「いつもニコニコ貴女達のお傍に言い寄るビースト白熊マンです。‥‥っ!?」
 コクピット内でシャキーンと変身ヒーローのようなポーズを取り、軽く突き指して悶絶。だが能力者なのでそんなことは無問題。
「乙女さん方お久しぶりです。いやぁ、私も宇宙戦は初めてなんですよねぃ」
 乙女隊各機へ通信。「よろしくお願いします」と返って来た。

 風間・夕姫(ga8525)の機体はコロナ。
「初めての宇宙戦が乱戦とはな‥‥やれやれだ」
 いつもは黒のレザーな装いの夕姫だが、今回は宇宙空間での戦闘ということで、ボディラインがはっきり浮き出るパイロットスーツを着用している。

 米本 剛(gb0843)の機体は宇宙用フレーム装備のスーパーストロングホークII『破鷹』。
「宇宙(そら)ですか、いやはや‥‥自分みたいな古いタイプには辛いですね」
 苦笑する米本。自分が宇宙へ上がるなどとは想像していなかったのだろうか。
(何時もながらKV戦はあまり得意ではないですが、全力と万全は尽くしましょう。歩美さんとも久々に御会い出来ますね)
 米本が正式なお付き合いをしており、いつも心に想っている女性――乙女隊母艦の艦長、片瀬・歩美少佐の顔を思い浮かべる。
(楽しみではありますが‥‥艦長として忙しい様ならば寂しいですが会えなくても仕方ないかもしれません)
 艦長は多忙だ。今回顔を合わせるかどうかは‥‥不明。急な任務だったため、まだ会話も出来ていない。しかし――。
(今は戦時中、お互いの元気な姿が分かれば充分‥‥)
 米本は男の顔を見せた。

 夏目 リョウ(gb2267)の機体はスフィーダ『大宇宙(てんくう)』。
(スフィーダの『大宇宙』を駆って、星の海へ初出撃。正義の剣で、月面基地に迫るバグアの軍を迎撃するぜ!)
 宇宙服としての機能も備えるAU−KVを装着した、気合十分な彼!
(やっとここに上がって来れたんだ‥‥世界の平和を取り戻す為にも、月面基地はやらせない!)
 せっかく一応の完成を見せた基地をやらせまいと、さらに気合を入れる!
「‥‥」
 だがしかし、実際彼は失敗続きでいろいろと落ち込み気味だった。
 それでも、初の宇宙戦気合いを入れ直して作戦に臨む。
(このままじゃあ、美咲に会わせる顔がない)
 愛する恋人の顔を思い浮かべると、心の底から闘志が湧き出てきた。

 ティリアの機体はニェーバ『Hedgehog』。
(この前の大規模作戦の時に、宇宙からク・ホリンの落下に合わせて大気圏突入して地上に逆落とし、なんてことはやったけど‥‥)
 前回の大規模作戦で行った戦術を思い出す。あれは‥‥相当に無茶をしたものだと我ながら思う。
(初めての本格的な宇宙戦、それにニェーバでの初実戦。緊張はする‥‥でも、あの時の逆落とし作戦の時に比べればまだ気は楽、かな?)
 今回の作戦に参加する傭兵は‥‥宇宙戦闘が初体験の者が多かった。ティリアもそうだ。
「行くよ、『Hedgehog』。ボクと君の宇宙での初陣‥‥。皆に負けないように頑張ろう」
 ぎゅっと、操縦桿を握る。

 美具・ザム・ツバイ(gc0857)の機体は天(Tian)『スカラムーシュ・Ω・ブースト』。
「月面基地のお披露目式じゃと言うのに、たったの3隻とはしけておるのう」
 物騒な事を言う美具。もっと盛大に歓迎式をしてくれることを期待していただけに、少々がっかり気味らしい。
 それ用にマルチロックミサイルに加えて五発の対艦ミサイルまで準備したというのに‥‥拍子抜けだ。と彼女は思う。
 しかしながらバグア戦艦の亜種であるバグア母艦が三隻というのはけっこうな規模だ。相手に不足は無いはず。

 ドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751)の機体はタマモ『フック・フォクス・イーノクス』。
「否が応でも月面基地は防衛する‥‥。準備はいいな? 『イーノクス』」
 そっと機体に語りかける、彼。

 乙女隊母艦のオペレーターより傭兵部隊各機に通信。
「α−01部隊、全機発進しました。続いて傭兵部隊全機、発進どうぞ」
 傭兵のKV(戦闘機形態)が順番に母艦から戦場へ射出されていく――。

 ***

 傭兵部隊はABCの三班に分かれて戦闘を開始。
 A班――エクスカリバー級宇宙巡洋艦の近くで撃ち漏らしの敵機を狩る米本機がBC班各機へ通信。
「最前線は御任せしました‥‥GOOD LUCK!」

 ***

 前衛として戦うC班――。
 シロウ機とドゥ機、リョウ機とティリア機が二機編隊を組んで行動する。

「宇宙の戦いでの一等お約束な戦術は『相手の母艦を落とす』なんですが‥‥。うん、まぁ、無理せずやれるところからやっていこう。‥‥ティリア嬢、いけるカナ?」
 シロウ機からティリア機へ通信。「いけます!」との返答。
「了解。じゃあ始めようか」
 プロトン砲が幾筋も飛ぶ宇宙の戦場。そこでシロウ機とティリア機は敵機をそれぞれマルチロックオン。
 ミサイルレリーズを押し込み、K−02ミサイルを発射。
「宇宙でマルチロックしてミサイルパーティーとか浪漫だよね」
 ティリア機は『オーブラカ』による『リーヴィエニ』Aも使用して連射。
「敵の出鼻を‥‥挫く!」
 小型ミサイルは次々と命中。HW数機が爆散した。タロス数機もダメージを負った様子。

(初めての広域での戦闘‥‥。障害物の多い宙域では足場等に利用して上手く立ち回れたけど、今回はそう言ったものはない‥‥。確実に避けて、確実に撃破しないと)
 ドゥ機は戦闘機形態にてライフルで射撃したのち、レーザーで追撃。すぐさま離脱。という戦法を取る。

「蒼炎とは違い、装甲が心許ないか‥‥。でも、今までとは、ひと味違う戦い方を見せてやるぜっ!」
 リョウ機は戦闘機形態で機体を加速させる。ライフルで照準、銃撃を浴びせ、
「これ以上、船にも基地にも近づけさせはしない。行くぞ『大宇宙』、大武装変だっ!」
 人型形態に変形。機剣を振り被り、HW一機を叩き斬った。爆発。
「星への願いを胸に抱き、明日の平和を詰む為、学園特風スーパーカンパリオン、宇宙の海に只今参上!」
 キメ台詞。しかし。
「リョウさん!」
「!?」
 タロスが接近。リョウ機に向かって機関砲を連射。装甲が抉られる。
「‥‥!」
 そこへティリア機が割り込み、堅牢な装甲を盾にした。ライフルで牽制射撃。タロスは距離を取る。
「すまない」
「いえ、しかしその機体は装甲も耐久力も少し心許ないです。あまり無茶はしないでください」

●VSタロス・HW
 B班――。
 こちらも前衛を張り、戦闘を行う。

「それじゃ一丁気合入れて、始めるとしようか」
 香澄は機体を躍らせる。
「状況開始。頼むよ、『ミズクメ』!」
 新しい機体の名を呼ぶ。
 タロス一機をターゲットして、ミサイルで弾幕を展開。ライフルで射撃しつつ接近。
「何時何処でも私の役割一つだけ。撃ち、貫くのみ!」
 距離を詰めて、トリガーを引き、荷電粒子砲を発射。
 タロスの胸部に穴が空いた。

「纏めて撃ち落とす!!」
 夕姫機もタロスに対し荷電粒子砲を連射。
 高威力の非物理攻撃に手足を消滅させられるタロス。

 初撃でブースト+マルチロックミサイルを敵部隊にお見舞いした美具機。
「久しぶりのアーマゲドンスプラッシュは一味違うぞい」
 今度はタロスの集中している地点に超大型対艦誘導弾を発射、範囲攻撃。
 それに怯んだところで対艦ミサイルをぶち込む。
 攻撃を受けたタロスの装甲がボロボロとなる。

●VSバグア母艦
 艦隊付近で打ち漏らしを潰すA班――。

 ノエル機は機刀を振るってHWを叩き斬る。爆発。
「くっ‥‥練力消費が‥‥激しい」
 宇宙用KVとの差を痛烈に感じる‥‥。
(僕もこの先を想えば考えないといけない‥‥)

 米本機は突破してきたHW群に対しライフルで射撃、そしてミサイルで弾幕を展開して撃破。
「むむっ‥‥これは‥‥」
 だがしかし、ノエル機と同じく練力がみるみるうちに減少。

「まともな宇宙戦はこれが初か、勝手は違うだろうが、成すことは同じ。ここより先は通行止めだ」
 絃也機は接近する敵機に対し、Aファングを使用したSライフルでの狙撃や、機関砲での弾幕で対処。
 突破を図る敵機を次々に撃破、叩き落としてゆく。

 A班の三機は頻繁に補給をしつつ戦闘続行。

 ***

 前衛の活躍により敵の数は減りつつあったが‥‥このままではこちらもかなり消耗してしまう。
 そう考えた美具は『破軍星』旗艦である『オニキリマル』の艦長にG5弾頭ミサイルの使用を進言。
 返答は「それをやるなら射線上の敵を排除してくれ」とのこと。
 G5弾頭ミサイルは確かに強力で大型目標には有効な兵器だが、敵護衛機がいたのでは簡単に落とされてしまう。
 美具はティリア機とシロウ機に協力を要請。「了解」との返答。

 ティリア機がブーストを使用し、前へ出る。
「ミチェーリ起動、オーブラカ全砲門展開‥‥フルファイアッ!」
 飽和攻撃により敵部隊の動きを鈍らせる。そこへ――
「ではいくぞ、シロウ殿? 全弾くれてやるのだ」
「了解。パーティー第二弾だぜ」
 二機による、残りのマルチロックミサイル全弾発射。
 漆黒の戦場に無数の爆発が巻き起こる。――道が開いた。

「目標、バグア母艦! G5弾頭ミサイル一斉発射! ケチるなよ!」
 エクスカリバー級三隻から一斉にミサイルが射出された。

「やらせはしない!」
 ノエル機は戦闘機形態でライフルとミサイルを撃ち放ち、G5弾頭を護衛。

「重力下では最前線で戦えていたが、宇宙ではこの位置か。まぁ、この機体でいけるところまで行くほかあるまい」
 常にブーストを起動している絃也機。タロスに肉薄し、大剣を振るい、両断する。

 米本機はSブーストB+での急降下、急上昇攻撃を試みようとするが、その特殊能力は広域・障害マップ間の移動時に効果を発揮するものであり、広域マップのみのこの宙域では不可能な戦法だった。

「やっほー。狩りの調子はどんな様子?」
 香澄はα−01部隊B小隊長、九条・冴に通信。
「こちらは順調です。今はそれよりも敵の撃破を」
「ん、それもそうだな」
 レーザーガトリングで弾幕を張る。

「入れ食いだな、このまま押し切る!」
 夕姫機はG5弾頭ミサイルの迎撃に追われる敵機の背後からLライフルなどを浴びせ、次々と撃破していく。

「蒼炎と比べると、変形のロスは感じるが、宇宙の海とは良く言ったもんだな‥‥追いすがれ、大宇宙!」
 リョウ機はメテオ・ブーストを使用。
「今だっ! カンパリオンスーパーリュウセイクラッシュ!」
 傷ついたタロスを機剣でぶった斬る! 爆発。

 ドゥ機はFETマニューバAを使用。敵に追いすがり、ミサイルを一斉発射。敵に打撃を与える。

 半数以上を撃墜されるも、傭兵たちの護衛によりG5弾頭は敵母艦に到達、命中。
 衝撃により敵母艦の巨体が揺さぶられる。
 あちこちで爆発を起こすバグア母艦三隻は間もなく撤退を開始。

 任務は無事完了。

●初陣後‥‥
 母艦に帰還した傭兵たちと乙女隊。
 今はそれぞれに休息を取っている。

 ノエルとティリアは二人きりで、ぼんやりと艦の外――宇宙空間を眺める。

 香澄は冴と私室でいちゃいちゃ。

 米本とリョウはそれぞれの恋人の元へ。

 夕姫はパイロットスーツ姿のまま、機体のチェックを行っている乙女隊の面々を眺めていた。
(ここにも格差が‥‥まぁ私には関係無いか)
 何の格差かはお察し。
「しかし‥‥ハードシェルスーツじゃなく全員パイロットスーツとは度胸があるな。まぁ、全員スタイルは良いから隠す必要もないんだろうが」
 腰のラインとかがいいな、とか考える。
「タマモが十六機も配備‥‥」
 格納庫に並ぶ機体に目をやる。多数の漆黒の狐――壮観だ。
「良かったなお前ら、高性能機に乗れて。だが‥‥これからは激戦区をたらい回しだろう」
 そして夕姫は乙女たちに話しかける。
「新鋭機が配備されたという事はそれに見合った戦果を上げられると期待されてるって事だ。そうなれば戦闘が激しい場所に回されるのは当たり前の話だろ」
 乙女たちは「頑張ります」「うえー」などの反応。
「まぁ、暫くは雑魚相手が続くだろうさ。ヤバイ奴を相手する事になった時はまた私達が呼び出されるだろうしな。雑魚掃除なんて、敵ネームドを相手するよりはよっぽど楽な仕事だ」
 にこりと笑って見せる夕姫。

「筋肉に語りかける程に自信があるわけではないけれど、細マッチョを心がける身としては‥‥大丈夫だ、問題ない」
 それをやや離れた場所から見つめる影。白熊マン、シロウ。
「問題なのは乙女達のスーツ姿に眼福を得られるかどうかなのDA!」
 そんなことを口走ると、夕姫から「頭冷やそうか、真空で」と怒られた。
 シロウは「ご勘弁を!」と泣きつくが夕姫は「すぐには死なないし」と冷笑。
 絶望しかけた白熊マンだったが、夕姫は「冗談だ」と笑い、事なきを得るのだった。